第 1章 成田空港を取り巻く環境と運用状況 2996億円で最も多く、前年度比10.6%増を記録して おり、半導体等電子部品が航空貨物に占める割合は 18.6%となっている。このほか、前年度比13.3%減に とどまった映像機器以外は、全ての品目で前年度比プ ラスを示しており、半導体等電子部品に続いて額が大 きい化学製品と科学光学機器が、それぞれ11.6%増 と11.3%増を記録した。伸び率では、 航空機が62.8% 増や音響機器が35.5%増、食料品が23.1%増、衣類 及び同付属品が21.6%増と20%を超える高い水準に 達している。 輸入は化学製品が2兆8913億円で最も多く、前年 度比では3.9%増を示している。貴石および半貴石が 34.9%増、航空機が31.2%増で30%台の伸びを記録 したほか、工業用ダイヤモンドが22.2%増、航空機用 内燃機関と時計および部分品が27.9%増、事務用機 器が23.7%増、電気計測機器が22.1%増、ダイヤモン ドが22.7%増、金属製品等も20%台の伸びを示した。 半導体等電子部品も1兆9860億円で23.8%という高 い伸びを記録し、前年度のマイナスからプラスに転じて いる。食料品や生きた動物、化学製品、医薬品などが 1桁台の伸びにとどまったものの、前年度比でマイナス を記録した品目はなかった (表1-14参照) 。 4 航空市場動向 国際航空運送協会 (IATA) が発表した2013年の年 間輸送データによると、 旅客需要が前年比5.2%増と引 き続き伸びる一方、貨物需要も同1.4%増を示して、前 年のマイナスからプラスに転じた。 (1)IATA 年間輸送データ:旅客需要 旅客需要の伸びは人キロベースで前年比5.2%増 を記録した。2012年の同5.3%増に比べてわずか0.1 ポイントながら低下したものの、過去30年間における 旅客需要の平均伸び率と同水準を示している。年間 の供給輸送力 (座席キロ) が前年比4.8%増を記録し たのに対し、平均ロードファクターは79.5%に達して、 2012年に比べて0.4ポイントの上昇を記録した。 国際線における旅客需要の伸び率は前年比5.4% 増となり、国内線における旅客需要の同4.9%増を上 回っている。国際線と国内線を合わせた総旅客需要 の伸びを地域別に見ると、中東地域が同11.4%増を記 録して最も高い水準を示しており、 同7.1%増のアジア・ 太平洋地域、同6.3%増の中南米地域、同5.2%増のア フリカ地域が続いている。先進国市場である欧州地域 と北米地域は、それぞれ、同3.8%増と同2.3%増を記 録して、 地域別では最も低い伸び率となっている。 IATAのトニ ー・タイラー 事 務 総 長 兼CEOは、 2013年のIATA加盟航空会社の旅客輸送実績につい て、 「経済環境が極めて厳しい状況だったにも関わら ず、需要は堅調に推移し、2014年に向けて改善の傾 向が進んでいることを明確に示した」 と説明。 「年間平 均ロードファクターが79.5%を記録したことも、航空会 社による効率化の努力が過去最高の水準に達してい ることをはっきりと裏付けるものだ」 と評価している。 2013年における国際線旅客需要は、全体で前年比 5.4%増を記録しており、供給輸送力の伸びが同4.9% 増だったことから、ロードファクターは79.3%を示して、 2012年の水準を0.4ポイント上回った。 58 3. 貿易動向と航空貨物 4. 航空市場動向 アジア太平洋地域では、2013年における旅客需要 が前年比5.3%増を記録し、主要3地域の中では最も 高い伸び率となり、 アジア太平洋地域での2012年にお ける同5.2%増からもプラス幅を拡大している。2013 年の年初は需要の動きが鈍かったものの、第3四半期 には日本や中国といった主要国の経済が力強い足取 りを取り戻し、同地域における旅客需要も急伸する形 となった。供給輸送力は同5.2%増を示しており、ロー ドファクターは2012年と同水準の77.7%となってい る。 欧州地域では、2013年における旅客需要が前年 比3.8%増を記録し、2012年における同5.3%増から 伸び率が低下した。供給輸送力が前年比2.8%増を 示す一方、ロードファクターは2012年を0.5ポイント上 回る81.0%に達して、世界各地域の中では2番目に高 い水準となった。第2四半期以降におけるユーロ圏の 経済改善と、消費者信頼感や景況感が上向いたこと などが、国際旅行需要の力強い動きをもたらしている。 2012年後半まで低迷が続いたユーロ圏の労働市場 も、12月には安定する形となった。 北米地域では、2013年における旅客需要は前年 比3.0%増を記録して、2012年における同1.3%増か ら改善されたものの、世界各地域の中では最も低い伸 び率にとどまっている。供給輸送力が同2.2%増に抑 制されたことから、ロードファクターは2012年を0.8ポ イント上回る82.8%に達して、世界各地域の中では最 も高い水準となっている。米国経済は、雇用の伸びが 上昇すると同時に、 消費者支出も拡大するなど、 改善の 兆しを示しつつある。 中東地域では、2013年における旅客需要が前年 比12.1%に達して、 世界各地域の中で最も高い伸び率 となったものの、2012年における同15.4%増は下回っ た。同地域における航空需要は、サウジアラビアとアラ ブ首長国連邦を中心とする地域経済の好調な動きに NA スを取ることが難しくなっている」 と指摘している。 地域別に見ると、アジア太平洋地域では、2013年 における航空貨物需要は、前年比1.0%減にとどまっ た。域内経済は、各国ごとに好不調にばらつきがあ り、貿易量についても、同様の状態となっているものの、 2013年末から状況の改善が進み始めている。2013 年は需要が減少する一方で、供給輸送力は同0.8%増 とプラスを示した。 欧州地域では、2013年における航空貨物需要が 前年比1.8%増を記録し、アジア太平洋、北米の両地 域を合わせた主要3地域の中では、最も高い成長率と なっている。域内での2013年第4四半期における製 造業生産は、過去2年半で最も高い伸びを示したもの とみられており、特にドイツの経済見通しが改善されつ つある。 北米地域では、2013年における航空貨物需要が 前年比0.4%減にとどまり、マイナスを示した。同地域 の経済活動指標は、2013年末から2014年の年初に かけて改善されているものの、2013年初頭の水準ま でには回復していない。 中東地域では、2013年における航空貨物需要は、 前年比12.8%増を記録した。同地域は、欧州における 経済状態の改善や域内の湾岸諸国における堅調な経 済成長の恩恵を受ける形となっている。また、中東の 航空会社各社は、拡大するアフリカ発の航空貨物市場 においても、 大きなシェアを確保している。 中南米地域では、2013年における航空貨物需要 が前年比2.4%増を記録したものの、2012年に比べる と伸び率が低下した。特にブラジル経済の減速が、域 内の貨物需要全体に影を落とす結果となっている。し かし2013年第3四半期からは、堅調な回復の兆しも見 えてきている。 アフリカ地域では、2013年における航空貨物需要 は前年比1.0%増を記録した。同地域では、2013年 の年初は好調な滑り出しを見せたものの、年央から減 速の兆しが表れて、下半期を通じて需要の伸び悩みが 続く形となっている。特に、南アフリカなどの域内主要 国における経済の低迷や域内貿易量の低下が、航空 貨物需要にマイナスの影響を与えた。 第1章 (2)IATA年間輸送データ:貨物需要 2013年における航空貨物輸送は、 トンキロベースで 前年比1.4%増を記録した。航空貨物市場は、2013 年上半期における需要の動きが非常に鈍かったもの の、下半期には加速傾向が強まって、航空貨物量の堅 調な増加軌道に戻っている。供給輸送力は需要の伸 びを上回る2.6%を示し、 ロードファクターは45.3%とい う低調な水準となった。 地域別の需要動向にも大きな差異が見られ、中東 地域と中南米地域では、それぞれ、前年比12.8%増と 同2.4%増という開きが生じている。世界の航空貨物 市場全体の40%近くを占めるアジア太平洋地域では、 航空貨物需要が同1.0%減を記録して、マイナスにとど まった。 IATAのタイラー事務総長兼CEOは、2013年にお ける航空貨物市場について、 「下半期から一部で改善 の傾向は表れたものの、年間を通じて見ると厳しい年 だった」 と総括し、 「2014年も困難な年となるものとみ られる」 と予想。世界貿易が航空貨物需要を上回る速 度で拡大していることに言及すると同時に、 各国政府に よる保護主義的な施策が国際貿易そのものに影響を 及ぼしている、という見方を示しており、 「旅客需要が 比較的好調に推移する一方で、貨物市場の環境は厳 しい状況で、航空会社にとっては、需要と供給のバラン 4 01 支えられる形となっており、アフリカなどの発展市場向 けのビジネス関連需要が底堅い成長を続けている。し かし、供給輸送力が同12.8%という高い伸びを示した ことから、ロードファクターは2012年における77.4%か ら2013年は77.3%に低下した。 中南米地域では、2013年における航空旅客需要 は前年比8.1%増を記録し、2012年における同8.4% 増を下回ったものの、その伸び率は中東地域に続く2 番目の高い水準となっている。同地域における航空旅 客需要は、コロンビアやペルー、チリといった域内各国 における好調な経済成長が支えている。供給輸送力 は同7.4%増に抑制されたことから、ロードファクター は79.2%まで上昇し、2012年の水準を1.3ポイント上 回った。 アフリカ地域では、2013年における航空旅客需要 が世界平均をわずかに上回る前年比5.5%増を記録し たものの、2012年における同7.5%増から伸び率は低 下している。供給輸送力は同5.2%増にとどまっており、 ロードファクターは2012年を1.9ポイント上回る69.0% に上昇したものの、世界各地域の中では最も低い水準 となった。各国経済の活発な成長や貿易産業の発展 が続いていることなどにより、 域内全体の需要環境は良 好な状態が維持されている。しかし最近になって、経 済の減速が顕著となっている南アフリカなど一部の地 域では、 航空需要も弱含みで推移する結果となった。 A A IR PORT IT 2 R (3)ボーイング社新造機市場予測 ボーイング社が2014年7月に発表した 「2014年度 最新市場予測 (2014 Current Market Outlook) 」 に よると、今後20年間での新造機の需要は、機数ベース で3万6770機、金額ベースで5兆2000億ドルと予測さ れており、2013年における市場予測よりも4.2%増加 している。 同社の民間航空機部門では、 「市場の動きは活発 で、効率性に優れた新型機が運航を開始しており、行 きたい時に、行きたい都市に向けた空の旅を楽しむ旅 4. 航空市場動向 59 第 1章 成田空港を取り巻く環境と運用状況 客によって、航空旅行市場は拡大している」 と分析して いる。 今回の予測が前回を上回った大きな要因として同 社では、単通路機市場を挙げている。この市場では、 LCCの参入が続き、最も活発な動きをしながら、最速 で市場全体が拡大していくと予想されており、単通路 機の新造機需要は2万5680機に及び、需要予測機数 全体の約70%を占める。 同社における受注やデリバリーの機数に基づくと、 単 通路機の中心となるのは160席クラスで、運航における 柔軟性や効率性を兼ね備えたこのクラスの航空機需 要が高まることは確実という。同社は、 「次世代737800型機や737MAX8型機は、収益拡大に向けた最 大のビジネス機会を航空会社に提供することになる」 と している。 同社の予測では、新造双通路機の需要は8600機 で、787-8型機、787-9ドリームライナーに代表され る200〜 300席クラスの小型ワイドボディ機が主流 になると試算している。また、市場のニーズが大型機 から787-10型機や777X型機といった効率性の高い 双発機に移行する傾向が継続しているとしている (表 1-15参照) 。 (4)エアバス社新造機市場予測 エアバス社は2014年2月、今後20年間におけるア ジア太平洋地域での新造の旅客機と貨物機のデリバ リー機数が1万940機に及び、世界市場の37%を占 めることになるという見通しを明らかにした。この機数 は、欧州、北米、 中東を上回る規模で、金額にすると1兆 8000億ドルに達する。アジア太平洋市場の場合、他 の市場と比較してワイドボディ機 (双通路機) の需要が 高いため、金額ベースでの世界市場に占めるシェアは 42%に及ぶという。 同社によると、アジア太平洋市場で運航される旅客 機の数は、4960機から20年間で1万2130機へ倍以 上に拡大する。これは、年間の平均成長率が世界平 均を上回る5.8%増で推移していくためで、運航中の機 材のうち、3770機が入れ替えられることになる。 また、アジア太平洋地域では大都市化も進むため、 2032年における世界の大都市89のうち25が同地域 に存在し、航空旅客需要もこれらの都市へ集中してい く見通しだ。こうした拡大する航空需要に対応するた め、空港の発着枠に制約がある地域では、より大型の 航空機を利用することが空港混雑を回避する解決策と もなる。 同社では、アジア太平洋地域における今後20年間 でのワイトボディ機の需要規模は4130機となり、世界 全体のワイドボディ機需要の46%を占めると予想して いる。 同社の代表的ワイドボディ機であるA330型機がア ジア太平洋地域の国際線で多数運航されており、この 傾向が今後も続き、同型機や新型のA350XWB型機 といったワイドボディ機の需要が3350機まで拡大する と予測。また、A380型機のような400席以上の大型 機の需要については、780機程度になる見通しという。 単通路機の市場では、新しく登場するLCCの存在に よって、比較的大型となるA320型機やA321型機の 需要を押し上げると見込まれている。同社によると、 2000年以降、LCCの運航する機材は50%ほど大型 化してきているという。今後20年間におけるアジア太 平洋地域での単通路機の需要規模は6810機と見込 まれており、世界市場全体の3分の1を超える見通し だ。 一方、貨物機の市場でも、 アジア太平洋地域が世界 全体の需要を牽引するものとみられ、約300機が運航 されている同地域での貨物機数は、2032年には3倍 以上の約970機に達すると見込まれている。ただ、大 多数が旅客機からの転用となるため、新造の貨物専用 機の需要は270機程度と見込まれる。世界の他地域 と同様に、貨物機全体のうち3分の1は、45トンから70 トンを積載できるA330型機などの中型の貨物機需要 によって占められるという。 表1-15 新造機のデリバリー機数/2014年~2033年 (1)機種別 (ボーイング社予測) 機種 リージョナル機(90席以下) 単通路機(90~230席) (200~300席) 小型ワイドボディ 中型ワイドボディ (300~400席) (400席以上) 大型ワイドボディ 計 60 4. 航空市場動向 機数 (2)エリア別 エリア 金額(10億ドル) 2,490 100 25,680 2,560 4,520 1,140 3,460 1,160 620 240 36,770 5,200 アジア太平洋地域 機数 13,460機 北米 7,550機 ヨーロッパ 7,450機 中東 2,950機 南米 2,950機 ロシア/C.I.S 1,330機 アフリカ 1,080機 計 36,770機
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