チャレンジ2018

新中期労働政策ビジョン
チャレンジ 2 018
−
今後5年の到達目標と
株式上場を展望した目標 −
九州旅客鉄道労働組合
はじめに
私たちは、2007 年 7 月の第 17 回定期大会において「2008 年新ビジョン」を策定し、これまでこ
のビジョンに基づいた運動を展開してきました。
日本は現在、少子高齢化、そして人口減少が急速に進んでいます。総人口は 2008 年をピークと
して減少に転じており、合計特殊出生率は 2012 年で 1.41 となっています。将来の推計人口を見る
と、2010 年に1億 2,700 万人程度であった総人口が、2050 年に1億人を切り、9,700 万人程度へと、
今後 40 年の間に約 25%も人口が減少することが想定されています。一方で、15 歳~ 64 歳のいわ
ゆる労働力人口は、2010 年の約 8,100 万人から 2050 年には約 5,000 万人と、実に 3,000 万人もの
減少となります。
こうした人口減少社会はほぼ確実に到来し、JR産業をはじめとした様々な産業がこのような人
口減少社会に適合した構造転換が求められることになると想定されます。しかし、私たちはどのよ
うな環境の中でも日本社会を、そして地域社会を支え続け、そして、豊かな社会を後世へと引き継
いでいく使命を今後も担い続けなくてはなりません。
そのためにも、これまで先人たちが苦労して蓄積してきた「人的資源」を今後一層有効に活用し
ていくことが求められており、社会と労働者を結びつける企業活動の中で、如何に一人一人が意欲
的に業務に向き合うことができるか、上述の通り労働力人口が減少する段階ではその意義は一層重
くなってきます。
JR九州労組は、九州におけるリーディングカンパニーとして、私たちが将来において目指すべ
き雇用や労働のあり方を模索し、その実現を図るという中長期的な取り組みを指向し、「2008 年新
ビジョン」を策定しました。私たちは、このビジョンに基づき中長期的視点に立って、労使協議を
中心としてその実現に向けた活動を展開してきたところです。
このような中、労働政策ビジョンの改訂期を迎え、1年をかけて討議を行ってきました。そして
何より、目先の労働条件向上に拘るのではなく、つくる 2016 において具体的に記載された「株式
上場」を見据えた将来展望を念頭において、あるべき働き方を明確化することに心がけました。更
にはすべての組合員に展開できるビジョンとなるよう細部にわたり調査・検証を行ってきたところ
です。
本ビジョンは、目標を明確にしたうえで、検討してきた課題及び目標設定にあたっての考え方を
後述で解説する構成としています。
策定した新ビジョンのもと、すべての職場の組合員の皆さまと共に、次世代を見据えた具体的な
目標づくり、要求づくり、そして継承元年としての役員育成も視野に、組合員のための組合員によ
る労働運動を展開していきましょう。
-1-
~ 目 次 ~
◎安全の確立に向けて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
◎事業別収支の安定化に向けて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
◎ JR 九州を取り巻く諸課題の解決と中期産業政策の達成に向けて ・・・・・・・・ 5
◎ゆとり・豊かさを基軸とした中期労働政策の実現に向けて
・・・・・・・・・・・・・・・ 7
◎賃金水準の中期目標達成と安心して働く事のできる雇用制度の充実に向けて
【新ビジョン策定プロジェクト構成】
委 員 長 中原 博徳
事 務 局 芦原 秀己
委 員 上野 真 木村 智隆 北村 公次 住吉 一家
原川 朋大 鎗光 俊勝 中村 芽 田頭 正憲
木戸 幸生 佐田 勝也 久木﨑 功 佐藤 守洋
久松 辰也 仲本 友三 奈須 亮二 山下 雅人
延時 勝敏 前原 弘志
-2-
・・・・・・・ 30
◎安全の確立に向けて
安全は、事故防止と労働災害防止の2つの視点での未然防止策が必要であり、鉄道事業という多
くの部外原因の影響を受ける特性からも、有効的な対策の実施が求められます。
事故防止については、2002 年の鹿児島本線列車衝突事故や 2003 年の長崎本線列車脱線事故、
2012 年の鹿児島本線鹿児島中央駅構内列車脱線事故等を踏まえ、非常運転や近隣のり面・規程類
の整備を行い事故の再発防止に努めています。鉄道の安全は事故の歴史であり、同じ過ちを繰り返
さないためにも、ヒューマンエラーを視野に入れたハード・ソフト両面の対策が必要です。また、
安全を最前線で支えているのはグループ・協力会社を含めたJR関係労働者です。すべてのJR関
係労働者が安全最優先を徹底し、不安全箇所の改善やヒヤリ・ハット、社員の声等を活用して未然
防止に努めるとともに、労働組合として意見を集約し、適宜指摘を行うことで安全を確立していく
ことが重要です。
労働災害防止については、「すべてのJR関係労働者の死亡事故・重大労災ゼロ」を最重点テー
マに掲げ今日まで活動を行ってきました。組合員の若年化が急加速する今日において、業務委託の
推進と技術や知識の継承が課題とされる中、グループ・協力会社と一体となった労働災害防止への
取り組みが求められます。例として、現場での安全衛生委員会を活用した労働者視点での防止策の
立案は非常に有効的であり、委員会の運営や議題内容・広報等の充実が求められます。また、安全
創造館を有効に活用し、安全意識の向上及び過去の歴史の継続的な再認識が重要です。
-3-
◎事業別収支の安定化に向けて
JR九州発足当初、鉄道事業は 288 億円の赤字のほとんどを占めていました。しかし、業務委託
をはじめ、業務移管やワンマン化、各種効率化施策を推進し、収支改善に努めてきましたが、不採
算路線を多く抱える九州においては、2012 年度においても 117 億円の赤字収支です。しかし、こ
の鉄道事業の赤字を補てんすることこそが経営安定基金の要件であり、経営状況に応じて要件の解
釈が変更されてはなりません。
少子高齢化と人口減少を迎えている九州において、鉄道事業の運営や経営の在り方について、意
見・提言を行うと共に、労働組合としてのチェック機能を十分に果たしていく必要があります。
旅行事業においては、IT活用等への積極的な参入と九州の強みを活かした商品の分別等による
収支改善を図っています。国内商品はもとより、国際情勢に大きく左右される海外商品の安定的な
運営が求められます。
事業開発では、マンション事業の安定的な経営の継続や、用地の有効的な活用、カードビジネス
の黒字化、2013 年度に参入したシルバー事業の展開を注視し、外食産業等を含めて提言を行って
いく必要があります。
病院事業では、少子高齢化の影響が徐々に現れ、一般入院患者が増加している一方、療養患者数
確保が伸び悩む状況です。しかし、がん化学療法等の導入により診療機能は充実しており、介護・
リハビリ等を含めた安定経営が求められます。
-4-
◎JR九州を取り巻く諸課題の解決と中期産業政策の達成に向けて
1 JR九州を取り巻く諸課題の解決に向けて
1987 年4月1日、鉄道の再生及び自立した経営を確立するため、国鉄改革が実施されました。
JR九州は、九州内の鉄道を維持運営する使命を持ち、赤字経営を「経営安定基金」の運用益や
各種支援策で補てんし経常利益を確保する形で発足しました。会社発足当時、288 億の赤字を抱
え運賃改定を毎年行わなければ経営できない経営状況の中で、営業努力や労使一体となった各種
施策に積極的に取り組み、消費税導入及び改定時を除けば、今日まで1回の運賃改定のみで経営
を行ってきました。
JR九州の経営において経営安定基金の運用益が経営の大きな下支えとなっている状況は現在
も同様でありますが、その運用益は発足当初の 283 億円から 2012 年度には 97 億円まで減少し、
非常に厳しい経営状況と言わざるを得ません。しかしながら、JR九州には多くのお客さまに安
全で快適な鉄道を利用して頂くという公共交通機関としての責務を全うする義務があります。
よって、不採算路線を多く抱えるJR九州においては、経営支援策(経営安定基金の運用益確
保及び税制特例)の恒久化又は、基本的スキームの見直しが必要不可欠であり、今後もJR連合
及び関係議員団、地方自治体と一体となった取り組みが必要です。
【経営安定基金運用益の推移】
350
300
(億円)
283 283 282 281 279
275
250 237
250
215
200
179 167
150
156
165 170 169
147 142 149 143 151 141
120 113 111
100
101 97
50
0
1987
1989
1991
1993
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2 中期産業政策の達成に向けて
これまでの各交通事業は、事業者ごとに施策展開を行うことが主となっており、事業者間での
連携が不足し、お客さまのニーズに適応しているとは言い難い状況でした。また、九州において
はマイカー普及率が高く、輸送機関別では鉄道が 5.4%に留まっているのに対し、マイカーは 76
%にも上っています。
昨今の少子高齢化と急速な人口減少により、九州においては 2015 年度に 1,281 万人と予想さ
-5-
れる人口が 2030 年には 1,123 万人まで減少すると見込まれ、65 才以上が占める割合は 27.6%か
ら 32.2%まで 4.6%増加すると想定されています。このような環境下の中、鉄道事業を安定的に
運営していくためには、九州の強みである自然の魅力を国内外問わず最大限に発信し、特に海外
から多くのお客さまを取り込む必要があります。そのためには、地域により密着し、鉄道沿線の
企業や駅周辺に活気と賑わいをもたらす企業へと成長しなくてはなりません。
交通政策基本法の基本理念である、鉄道を基軸とした、航空・海上交通・コミュニティバスや
循環バス、自動車や自転車等のフィーダー交通と連携し、各交通産業の機能と特性を最大限発揮
した総合交通体系の整備が求められます。例えば、主たるフィーダー交通であるタクシーと鉄道
が連携し、自宅から旅行先まで1つの旅行プランとして提案する等、高齢化社会を見据え、産業
の枠を超えた事業展開と主要都市部における交通結節点の整備が望まれます。
【九州の人口と年令構成の推移】
120
1,300
1281
100
27.6
1,250
30.1
31.5
割合(%)
1183
60
40
32.2
1,150
1123
59.3
57.2
56.4
56.2
20
0
1,200
1,100
1,050
13.1
12.6
12.1
11.5
2015年 2020年 2025年 2030年
0~14才
15~64才
65才~
参考 総務省「国勢調査」
-6-
人口
1,000
人口(万人)
80
1237
◎ゆとり・豊かさを基軸とした中期労働政策の実現に向けて
公正でゆとり・豊かさが実感できる社会の実現、企業福祉のあり方
すべての組合員がゆとりある生活運営を行うためには、各々のライフプランを設計し、自己実現
に向けて取り組む必要があり、生活運営と密接に関係している企業福祉の充実が重要である。
【基本的な考え方】
○ 充実したライフプランの設計と生活運営を行うためには、豊かで安定的なくらしと健
康増進が必要である。
○ 次世代育成支援の充実に向け、企業全体で育児・介護に協力可能な職場づくりと、時
代に即した福利厚生制度の充実が必要である。
○ ワーク・ライフ・バランスの充実を実現するため、労働時間の短縮(休日増)及び労
働時間管理の徹底と合わせ、ゆとりある要員配置が必要である。
【目標】
1 新ビジョンで達成すべき目標
⑴ 定年年齢 65 才の実現
⑵ 定期健康診断項目の充実・拡大
⑶ 人間ドック受診項目拡大と広報活動の充実
⑷ 職場内コミュニケーションツールの新設
⑸ 社宅・寮のリニューアルの推進
⑹ 勤務箇所に応じた居住施設の配備と待遇
⑺ 持家に関する各種支援制度の改善
⑻ 年間休日数 113 日の実現
⑼ 年間総労働時間 1,800 時間の達成
⑽ 休暇制度の拡大と運用改善
2 株式上場までに達成すべき目標
⑴ 改正労働契約法の早期適用
⑵ 次世代育成支援制度の確立
⑶ 匿名性に優れた相談窓口の設置
⑷ パートナースタッフの福利厚生制度の充実
⑸ 年間休日数 112 日の実現
-7-
【検討課題】
1 組合員のライフプランの確立支援
⑴ ライフプランの設計及び、自己実現を図るための支援策の検討
⑵ 次世代育成支援策の充実及び、安心して働き続けることができる制度の実現に向け
た検討
2 組合員の心身の健康増進対策強化
⑴ 定期健康診断の受診率維持と診断項目の充実
⑵ 人間ドックの受診率向上
⑶ メンタルヘルスの対策
⑷ その他
3 福利厚生の充実
⑴ JR九州親愛会の安定的な運営 ⑵ 社宅の充実
⑶ 寮の充実
⑷ 持家制度の確立
⑸ パートナースタッフの制度の充実
4 労働時間短縮及び適正な要員配置について
⑴ 年間休日数の改善
⑵ 年間総労働時間の改善
⑶ 休暇制度の改善
⑷ 適正な要員配置
5 ワーク・ライフ・バランスの実現
6 地域社会への貢献
1 組合員のライフプランの確立支援
就職後、長期にわたりJR九州の社員として過ごすうえで、結婚・出産・育児・住宅購入等、
様々なライフサイクルに遭遇します。その中で、各々異なるライフプランの設計と老後を見据え
た資産形成を行っていくことが重要です。また、豊かで安定的なくらしを営むためにも各種制度
を活用するとともに、より時代に即した制度の充実が必要です。
⑴ ライフプランの設定
就職から退職までのライフサイクルと、老後を見据えたライフプランの設定を早期に行う
ことで、各種福利厚生制度の活用と安定した生活運営を行うことが大切です。
次図は年齢別収支の推移(イメージ)です。高卒で入社し、結婚や出産、マイホーム購入
等の各ライフプランを設計した場合、年間収入と年間支出(左軸)の差額である貯蓄残高(右
軸)は 50 才まで順調に増加するものの、50 才から急降下し 65 才時点で1千万円程度になる
見込みです。よって、老後の安定的な生活を考慮すれば、退職手当が重要な資産になること
が分かります。
-8-
【年令別収支の推移(イメージ)】
9,000
40,000
8,000
35,000
収支(千円)
30,000
6,000
25,000
5,000
20,000
4,000
15,000
3,000
10,000
2,000
5,000
1,000
0
貯蓄残高(千円)
7,000
18才
23才
28才
33才
38才
年間収入
43才
48才
年間支出
53才
58才
63才
0
貯蓄残高
参考 文部科学省「平成 25 年度学生納付金調査」
<前提条件>
年齢
条件
※基準内賃金は基本給及び扶養手当のみ、
18 才
高卒入社
基準外賃金は見込まず、仕事給昇給は区
21 才
S2級昇進
24 才
C1級昇進
27 才
C2級昇進
30 才
E級昇進
32 才
結婚
33 才
第一子出産
35 才
第二子出産
37 才
マイホーム購入
48 才
第一子高校入学
50 才
第二子高校入学
51 才
第一子大学入学
53 才
第二子大学入学
57 才
第一子大学卒業
59 才
第二子大学卒業
61 才
マイホームホーン完済
分Ⅲを適用
※結婚、出産、子の進学については、参考
文献「2014 年版賃金改定のための物価と
生計費資料(労務行政研究所)」による全
国平均値
-9-
⑵ 長期雇用の維持
ライフプランの確立において、最も重要になるのが安定して働き続けることができる制度
です。働くことに喜びと達成感を感じ、すべての組合員が安心して生活できる長期雇用の維
持が重要です。
現在、JR九州の定年年齢は 60 才ですが、2013 年度より開始された嘱託再雇用の全体化に
伴い、65 才までの雇用が維持されました。しかし、この制度は単年度契約であり、労働契約
法に定める単年度契約の反復更新5回以上で、無期労働契約に転換できる制度も適用されま
せん。よって、安定した生活設計を行うためには、定年年齢を 65 才まで引き上げる制度の確
立が必要です。また、老齢基礎年金の満額支給開始年齢引き上げに伴い、現在では 65 才で満
額支給される制度ですが、加速度的な少子高齢化と人口減少が進む日本においては、満額支
給開始年齢の更なる引き上げが想定されます。
また、パートナースタッフの雇用制度においても、2013 年度より施行された改正労働契約
法により、2013 年4月から有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたとき、個人の申
し出によって有期雇用から無期雇用へ転換できるようになりました。この法改正により、最
長で 2020 年度の契約から無期雇用への転換が可能になりますが、これまでのパートナースタ
ッフの活躍や今後のモチベーションの維持向上のためにも、早期の無期雇用への転換が必要
です。
【日本の人口推移】
(万人)
14,000
80.0%
12,000
70.0%
60.0%
10,000
50.0%
8,000
40.0%
6,000
30.0%
4,000
20.0%
2,000
0
10.0%
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
2060
14才以下人口
15~64才人口
65才以上人口
14才以下割合
生産年齢人口割合
高齢化率
参考 総務省統計局「国勢調査」
- 10 -
0.0%
⑶ 次世代育成支援
次世代育成については、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によれば、結
婚前後の妻の就業継続割合は 1985 年当初から上昇しているものの、第一子出産前後では依然
として 60%以上が退職を選択していることが分析されています。しかしながら、育児休業制
度を利用した場合の就業継続は 9.3%から 24.2%に上昇しており、次世代育成には支援制度
の充実が必要不可欠であると言えます。
JR九州においては、厚生労働省が推進する次世代育成支援対策推進法に基づき、社員全
員で子育てを支援する環境整備を目標とした行動計画が策定されています。しかし、結婚・
出産を経て退社を選択する女性組合員も多く、現行の制度では社員全員で子育てが支援され
ている環境とは言い難い状況です。女性の場合、出産・育児による短時間勤務は欠格条項か
ら除外されているものの、休職後の仕事給昇給が欠格される制度が改善されていない点や、
男性の育児休職の取得状況をみても、次世代育成支援は非常に困難な環境です。 よって、多くの女性組合員が求める短時間勤務制度の適用職種の拡大や、出産前・育児中
に安心して就業できる職種への転換、保育事業等への参入を視野に入れた事業所内での保育
施設の設置や時間単位での有給休暇取得等の整備が必要です。また、嘱託再雇用制度と連動
した次世代育成支援制度の確立やJR九州の年齢構成を視野に入れた長期的な支援制度の確
立が求められます。
例えば、主要駅に保育施設を設置し、出産後に事業所内で育児を行いながら就業すること
で、出産後の雇用が確保されるとともに、子の成長に合わせ職場復帰も可能になります。また、
育児・養育に精通している高年齢者が保育施設で就業するという選択肢も増え、主要駅での
一時保育の充実を図ることで、地域と密着した運営が可能になります。
このように、次世代育成においては女性の結婚・出産後の就業継続に対する選択肢を広げ、
より育児を行いやすい環境を構築することが重要です。また、高年齢者が持つ育児の知識を
幅広く活用し、社員全員が子育てを支援する環境整備の早期実現が必要です。
【結婚・出産前後の妻の就業継続割合】
(%)
80.0
60.0
40.0
20.0
39.0
9.3
70.9
65.1
62.3
60.3
39.3
13.0
38.1
17.6
70.5
39.8
38.0
22.0
24.2
0.0
1985~89
結婚前後
1990~94
第一子出産前後
1995~99
2000~04
2005~09
育児休業制度を利用して就業を継続した割合
参考 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
- 11 -
これまでの成果 実施年度
件名
詳細
2人目以降の子、60 才以上の父母 3,300 円→ 3,500 円
1993
扶養手当
1994
扶養手当
配偶者 13,000 円→ 13,500 円
2人目以降の子及び父母 3,500 円→ 4,000 円
1996
扶養手当
配偶者 13,500 円→ 14,000 円
1997
扶養手当
配偶者 14,000 円→ 15,000 円
2004
看護休暇
小学校就業の始期に達するまでの子の看護を行う場合
の休暇5日 / 年度
昇給要件
育児休職・介護休職中の昇給及び資格試験受験が可能
育児休職
1才6ヶ月未満の子を養育する場合まで拡大
介護休職
同一の対象家族において通算 365 日まで拡大
介護休暇
連続 93 日を限度
2006
18 才以上の子で修業年限1年以上の学校等在学中の者
は 24 才に到達する日の属する年度末まで対象を拡大
所定外労働時間免除
3才未満の子の養育→小学校就業の始期に達するまで
の子
2007
休暇制度
配偶者の出産に伴う入退院時の積立保存休暇使用拡大
(3日)
2008
雇用制度
短時間勤務
2010
乗務員嘱託再雇用制度の新設
欠格条項から除外
育児休職
再取得可能
介護休暇
要介護状態の家族介護を行う場合の介護休暇 B 新設
積立保存休暇
小学校修業の始期に達するまでの子の看護を追加
雇用制度
57 才以降の現職活用拡大
雇用制度
60 才以降の嘱託再雇用の全体化
2012
育児休職手当金
2013
扶養手当
親愛会育児休職手当金の改善 10%→ 20%
子の扶養手当 4,000 円→ 4,500 円
- 12 -
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
改正労働契約法の早期適用
定年年齢 65 才の実現
次世代育成支援制度の確立
2 組合員の心身の健康増進対策強化
就業するうえで最も重要なのが心身の充実です。定期的な検査を行い、身体のメンテナンスと
健康増進を図ることが重要です。近年では、高ストレスによるメンタルヘルスが増加しており、
有効的な健康増進対策の確立が求められます。
(1) 定期健康診断の受診率維持と診断項目の充実
現在の定期健康診断は、冬季と夏季の年2回実施されており、その受診率は 99%台を維持
しています。また、2013 年度から 30 才での血液検査の実施が開始されました。今後も安定的
な受診率の維持と合わせて、加速度的に進化を続ける医学に対応した検査項目の追加や検査
方法の導入及び、女性特有の検査項目の追加が必要です。
しかしながら、女性の定期健康診断に関するアンケート結果によれば、男性と同一の施設・
日程での受診には抵抗があると共に、女性受診時間帯にも男性が受診している現状が見受け
られ、実施方法の改善が求められます。
- 13 -
【労働安全衛生法と現行制度の比較】
労働安全衛生法
JR九州
①既往歴及び業務歴の調査
①既往歴及び業務歴の調査
②自覚症状及び他覚症状の有無の検査
②自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③身長・体重・視力及び聴力の検査
③身長・体重・視力及び聴力の検査
④胸部エックス線検査及び喀痰検査
④胸部エックス線検査及び喀痰検査
⑤血圧の測定
⑤血圧の測定
⑥貧血検査
⑥貧血検査
(赤血球・血色素)
(赤血球・血色素・ヘマトクリット)
⑦肝機能検査(GOT・GPT・γGTP)
⑦肝機能検査(GOT・GPT・γGTP)
⑧血中脂質検査(中性脂肪・HDLC・LDLch)
⑧血中脂質検査(中性脂肪・HDLC・LDLch)
⑨血糖検査
⑨血糖検査
⑩尿検査(尿糖・尿蛋白)
⑩尿検査(尿糖・尿蛋白)
⑪心電図検査
⑪心電図検査
⑫大腸がん検査
※下線は労働安全衛生法を上回って実施している項目 ⑵ 人間ドックの受診率向上
人間ドックは、ジェイアール健康保険組合が主体となり受診率の向上に努めていますが、
40%前後に留まっています。公益社団法人人間ドック学会の 2012 年度調査結果によれば、受
診者のうち 92.8%が異常を発見されており、比率は年々増加傾向にあることが分かります。
近年では、高ストレスによる生活習慣病の進行が疑われ、心身異常の早期発見を目的とした
人間ドックの受診が求められています。
JR九州では、受診可能医療機関の拡大や、各種特典等の取り組みにより、受診率向上を
働きかけていますが、医療機関による受診項目の違いや特典が異なることも受診率低下の要
因のひとつと考えられます。
また、被扶養配偶者の人間ドック受診についても 35 才以上3才毎に日帰り 5,000 円で実施
しており、JR九州病院においては、配偶者との同時受診を無料で実施する等、受診率の向
上に向けた取り組みが行われています。このような各種取り組みを活用し、被保険者のみな
らず被扶養配偶者と合わせた受診率向上が求められます。
受診率向上に対する方策として、受診可能医療機関や診断項目の拡大、産婦人科検査料の
補てんをはじめとした受診に対する選択肢の拡大、一泊二日の各種増収旅行商品と人間ドッ
クとのタイアップの他、制度や受診方法等の基本的な運用に対する広報活動が必要です。
- 14 -
【人間ドック受診者と異常発見者の推移】
(万人)
330
92.2%
320
310
290
87.7%
88.6%
93.0%
91.0%
90.5%
90.4%
94.0%
92.0%
91.6%
300
280
92.8%
90.0%
88.2%
89.0%
270
88.0%
260
87.0%
250
86.0%
240
2005
2006
2007
2008
2009
受診者数
2010
2011
2012
85.0%
異常発見割合
参考 人間ドック学会「2012 年人間ドックの現状」
【九州地区の契約病院】
長崎
福岡
JR九州病院
日本会員掖済会 長崎病院
井上病院健診センター
新小文字病院
佐世保共済病院
福岡和白総合健診クリニック
杏林病院
貝塚病院
熊本
北九州健診診療所(西日本産業衛生会)
日赤熊本健康管理センター
健康保険熊本総合病院健康管理センター
ウェルネス笹丘クリニック
玉名地域保健医療センター
ウェルネス天神クリニック
健康保険人吉総合病院予防医療センター
ウィメンズウェルネス天神デュアル
高野病院総合健診センター
聖マリア病院
にしくまもと病院
飯塚病院
大分
日本予防医学協会福岡診療所
大分県地域成人病検診センター
大分労働衛生管理センター(西日本産業衛生会)
高木病院予防医学センター
大分総合健診センター
福岡山王病院
健康保険南海病院健康管理センター
福岡健診診療所(西日本産業衛生会)
宮崎
福岡徳洲会病院
宮崎市郡医師会成人病検診センター
都城健康サービスセンター
佐賀県医師会成人病予防センター
共立病院
唐津赤十字病院
今村病院検診センター
鹿児島
佐賀
新行橋病院
今村病院分院
林内科胃腸科病院
済生会川内病院
※下線は 2008 年以降に拡大した契約病院 - 15 -
⑶ メンタルヘルスの対策
独立行政法人労働政策研究・研修機構の 2012 年度調査によれば、社員数とメンタルヘルス
を自覚する社員数は比例傾向にあり、1,000 人以上の企業のうち 73%がメンタルヘルスの社
員を1名以上抱えている状況です。その原因は、職場での人間関係等、コミュニケーション
に関するものが大多数を占め、出向や転勤等で環境が変わった際に多く発症しているという
分析結果が示されています。また、近年の常態化した長時間労働がメンタルヘルスを発症さ
せているとの分析もあり、日本全体の労働人口の減少と求められる労働力との差を長時間労
働で補てんする仕組みそのものの改善が求められています。
【メンタルヘルスを1名以上抱える企業規模の割合】
80%
80%
70%
70%
60%
60%
50%
50%
40%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
0%
120%
120%
100%
100%
80%
80%
60%
60%
40%
40%
20%
20%
0%
0%
73%
73%
52%
52%
43%
43%
30人未満
30人未満
56%
56%
52%
52%
30~49人
30~49人
50~99人
50~99人
53%
53%
100~299人
100~299人
300~999人
300~999人
1000人以上
1000人以上
【メンタルヘルスを持つ社員の第一相談相手】
13%
13%
3%
3%
5%
5%
6%
6%
38%
38%
47%
47%
28%
28%
6%
6%
30~49人
30~49人
相談窓口
相談窓口
49%
49%
5%
5%
50~99人
50~99人
職場の上司
職場の上司
2%
2%
9%
5%
5%
3%
2%
6%
2%
6%
30%
30%
9%
29%
29%
3%
27%
27%
49%
49%
50%
50%
51%
51%
13%
13%
100~299人
100~299人
職場の同僚
職場の同僚
11%
11%
300~999人
300~999人
家族・友人
家族・友人
参考 独立行政法人労働政策研究・研修機構
「職場におけるメンタルヘルスケア対策に対する調査」
- 16 -
14%
14%
1000人以上
1000人以上
その他
その他
メンタルヘルスを抱えた社員が最初に相談する相手では、職場内が圧倒的に多いことが分
析されており、特に注視すべきは職場の規模と比例して上司及び相談窓口の果たす役割が増
加傾向にあるということです。
JR九州では、2014 年4月1日から、出向者に対するストレスチェックシステムの導入が
実現しました。ストレスチェックシステムは、メンタルヘルスを必ず防止できるものではあ
りませんが、自身が自覚していないストレスを数値で示し、心身状況を把握することで一定
の成果があると考えられます。しかしながら、システムに依存しない、より効果的な未然防
止策の提案が急務であり、その第一歩が職場内コミュニケーションの充実です。
職場内コミュニケーションの一環として、フィードバック面談や安全衛生委員会の活用は
基より、より多くの組合員が職場の上司又は同僚と意志疎通を図るため、事業所懇談会等の
コミュニケーションツールの新設が望まれます。また、2012 年度から実施している安全衛生
委員会との意見交換会を継続し、職場内の問題点の抽出や過剰労働等の未然防止に努めるこ
とが重要です。
メンタルヘルスケアの充実に対しては、職場内外を問わずコミュニケーションが最も重要
であり、「孤独感の払拭」を目的とした各種手引きやQ&A、匿名性の高いインターネット等
を活用した窓口の開設と合わせて、職場内でのメンタルヘルスに対する理解及び対応の充実
が求められます。
- 17 -
⑷ その他
働き続けるうえで最も重要な身体の健康増進対策は、健康診断や人間ドック、メンタルヘ
ルス対策の他にも、適度な運動や食事等の自発的に防止可能な対策をはじめ、インフルエン
ザのように感染するものまで多岐にわたります。現在では、インフルエンザの予防接種費用
をジェイアールグループ健康保険組合が一部負担する制度が実現しましたが、感染症である
ため家族への拡大又は家族からの感染が懸念されています。よって今後は、本人のみならず
配偶者や子を含めた家族への予防接種費用負担の拡大が望まれます。
これまでの成果 実施年度
件名
詳細
1997
休暇制度
勤続 25 年以上の社員にリフレッシュ休暇
2日、積立保存休暇5日以内を新設
1999
休暇制度
積立保存休暇使用事由に人間ドックを追加
2005
人間ドック負担金
JR九州病院における人間ドック受診時の
自己負担額の改善(5,000 円→ 4,000 円)
2008
ストレスチェックシステム
2009
インフルエンザ予防接種
2012
健康診断検査項目拡大
2014
ストレスチェックシステム
導入
インフルエンザ予防接種費用の一部負担を
新設
30 才で血液検査を実施
出向者への制度拡大
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
健康診断検査項目の充実・拡大
人間ドック受診項目拡大と広報活動の充実
職場内コミュニケーションツールの新設
- 18 -
匿名性に優れた相談窓口の設置
3 福利厚生の充実
⑴ JR九州親愛会の安定的な運営
JR九州親愛会では、現在は黒字収支を維持していますが、将来的には会員年齢の若年化
による収入減が見込まれます。コミュニケ―ションの場として多くの活動を継続することも
重要ですが、収入に応じた制度の見直しを適宜行うとともに、次世代育成及び相互扶助の視
点に立った制度の改善と既存の制度の幅広い広報が求められます。
【JR九州親愛会収支の推移】
(千円)
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
12,406
2008
7,202
7,455
7,808
10,040
2009
2010
2011
2012
収入
支出
4,236
2013
収支
⑵ 社宅の充実
持家を推進するJR九州において、持家までの準備期間として各県に社宅が整備されてい
ます。しかし、老朽化が著しい施設も多くリニューアルや増改築が十分であるとは言い難い
状況です。また、施設においては入居が難しく、勤務箇所の最寄りの社宅に入居できず、遠
方からの通勤を余儀なくされるケースも発生しています。更には、使用料において年齢及び
居住年数に応じて加算される年齢係数についても、高年齢者の負担が大きくなっていること
は言うまでもなく、賃金支給率が低下する 55 才以上の組合員についても年齢係数の改善等、
よりよい福利厚生制度への改善が望まれます。
これらの状況を鑑み、老朽化が著しい既存の社宅用地の有効活用を目的とした社宅併用マ
ンションの建設や、2013 年度から参入したリフォーム事業を活用し、民間マンションの一部
社宅化や、エコロジカルな居住施設となるべく、屋根上や駐車スペース等への太陽光パネル
の設置による光熱費の割引等、組合員のライフサイクルと一体となった社宅整備及び地球環
境を意識した居住施設への転換が望まれます。
- 19 -
【社宅使用料金】
・使用料金算出・・・社宅基本料金×構造別建築面積×(1-逓減率)×年齢係数
・基本料金(円 / ㎡)
構造規模
地域区分
50㎡未満
50 ~ 65㎡
65 ~ 80㎡
80㎡以上
コンクリート
ブロック
指定地域
218
265
345
400
その他地域
193
232
303
352
指定地域
243
294
384
445
その他地域
214
259
338
391
鉄筋
コンクリート
※指定地域は福岡市、北九州市及び首都圏等
・逓減率
経過年
0 ~ 15 年
16 ~ 25 年
26 ~ 35 年
36 ~ 45 年
46 年~
逓減率(%)
0
5
10
15
20
・年齢係数
年齢・居住期間
40 才以上 かつ 10 年以上
45 才以上 かつ 10 年以上
51 才以上
55 才以上
年齢係数
1.3
1.5
2.0
2.5
⑶ 寮の充実
独身者や単身赴任者の居住施設として社員寮が整備されています。また、女性が入寮でき
る民間マンションの一部借り上げや賃貸マンション併用の新吉塚寮も完成しました。今後は
女性寮の更なる拡大と防犯設備等を含めた充実が望まれます。しかし新寮の建設が前進して
いる一方で、若年化の進展により入寮待ちが続くケースや、社宅と同様に勤務箇所最寄りの
寮に居住できず、長時間通勤や賃貸住宅に入居する組合員も少なくありません。また、2013
年度に導入された寮・社宅駐車場料金の徴収については、付近の地場駐車場料金との整合性
により料金が設定されており、寮使用料と駐車場料金を合わせれば、援助金給付後の賃貸住
宅の料金とほぼ変わらない金額まで上昇しています。
更に、独身寮に入寮できず、付近の代用寮(社宅)に入寮した時に、使用料金の差が発生
する問題も発生しています。
ついては、勤務箇所最寄りの寮への入寮待ちに伴い賃貸住宅に居住する組合員への一部補
助制度の実現とともに、寮・社宅使用料及び駐車場料金の見直し等を含めた改善、総合的な
福利厚生制度の改善が求められます。
- 20 -
【寮使用料金】
・使用料金算出・・・寮基本料金 × 一人当たりの居住専用面積 + 設備加算額
・基本料金 (円 / ㎡)
地域区分
基本料金
指定地域
320
その他地域
284
・設備加算額 (円)
設 備
加算額
居室内にバス・トイレが付いている
500
居室内に炊事設備が付いている
500
【社宅・寮駐車場料金】
社 宅
寮
西新、長崎、大分、九品寺
美野島、長崎
料 金
5,000 円
大里、折尾、東郷、香椎鎧坂、雑餉隈、小笹、
門司、小倉、折尾 、竹下、
南福岡、香椎水谷、佐賀、日進、南大分 、島崎、 佐賀、早岐 、中津、熊本、
春日 5 丁目、新大江、唐湊、鹿児島、宮脇町
鹿児島、宮崎
3,000 円
後藤寺、志免霞ヶ丘、千鳥、鳥栖、加布里、
羽犬塚、唐津、早岐、柳ヶ浦江須賀、滝尾、
臼杵、津久見、二本松、前田、西宮、宝来町、
南延岡緑ヶ丘、土々呂、北原町
1,000 円
鳥栖、唐津、佐伯、
出水、吉松、南延岡
※更地の場合は上記によらず一律 1,000 円 - 21 -
【社宅・寮のリニューアル及び新増築の推移】
リニューアル
年度
社宅
寮
1990
新 築
社宅
増 築
寮
寮
千鳥
1992
竹下
1993
日新、小笹
1996
南福岡
美野島
長崎
1998
1999
香椎水谷
南福岡
2000
香椎水谷
長崎大橋
R1・R2
2001
小倉、竹下
美野島
2002
2004
門司大里
R32・36
門司
2005
門司大里
R32 ~ 37
長崎大橋 R7
鳥栖、熊本
2006
佐賀
宮脇町 R2・5
宮崎
鹿児島
2007
鳥栖 R3
折尾、唐津
2008
鳥栖
大分
大分
2009
鹿児島
2010
春日
2013
社宅
雑餉隈 R3
熊本
吉塚
⑷ 持家制度の確立
ライフプランにおいて、結婚後に多くの組合員が検討するマイホームは、人生で一番大き
な買い物です。JR九州も持家推進を行っており、所有住宅一時金、所有住宅援助金制度や
利子補給制度等が整備されています。また、2013 年 10 月1日以降に所有住宅援助金を支払わ
れるものから、条件を満たした場合の新幹線等によるモニター通勤が実現しました。
今後は、持家取得後の転勤等により自宅に居住できない場合の支援制度の充実が求められ
ます。
- 22 -
これまでの成果 実施年度
1996
件 名
詳 細
住宅援助金
持家:購入から5年間 2,500 円/月→ 3,000 円/月 6年目以降 1,000 円/月→ 1,500 円/月
借家:2,000 円増額
2005
入寮制度
2007
住宅援助金
2009
利子補給
2010
住宅取得一時金新設
転勤に伴う 35 才以上の独身者への入寮制限緩和
所有住宅援助金対象者が転勤により転居する場合の援
助金の継続給付
限度額を 700 万円に改善
300,000 円
⑸ パートナースタッフの制度の充実
パートナースタッフの福利厚生については、住民税の給与控除や 2012 年より購入券が 40
枚に改善されましたが、居住に関しては前進が図られていません。パートナースタッフの重
要性や貢献を考慮し、更なる福利厚生制度の改善が必要です。
また、2019 年度から適用開始される改正労働契約法の観点からも、雇用形態の新設等を視
野に入れた福利厚生制度の確立が急務です。
これまでの成果 実施年度
件 名
詳 細
1991
制度新設
パートナースタッフ制度をJRグループで初めて新設
有給休暇 選挙権・その他公民としての権利行使の場
合(必要な時間)
生理のため就業が困難な場合(毎潮1日)
1993
休暇制度新設
結婚する場合(結婚の日から3日以内)
無給休暇 生理のため就業が困難な場合(毎潮1日)
結婚する場合(結婚の日から3日を超え5日以内)
年休付与
1994
1995
勤続1年での付与日数改善(10 → 11 日)及び、勤続
3ヶ月での付与日数改善(5→ 10 日)
隔日交代手当新設
300 円 / 回
乗務指導手当新設
500 円 / 日
- 23 -
実施年度
件 名
詳 細
購入券使用範囲拡大
父母を追加
忌引休暇制度改善
祖父母を追加(血族2日、姻族1日)
1997
期末手当加算額新設
0~ 50,000 円の加算額を新設
1998
職務加給新設
1996
一般旅行業取扱主任者の有資格者(4,000 → 4,500 円)
1999
技能手当改善
2000
技能手当新設
国内旅行業取扱主任者の有資格者で指定されたもの
(1,700 → 2,000 円)
損害保険募集業務に従事するもの(2,000 円 / 月)
その他
在籍3年以上の雇用契約終了時に 30,000 円分の旅行券
贈呈
夜間特殊業務手当新設
病院において深夜時間帯に看護等の業務に従事した場合
購入券配布枚数改善
10 → 15 枚
2001
2002
出札業務及び旅行業に従事する者のうち、技能が社員
同等と認められるもの(300 円 / 日)
技能手当改善
列車内におけるサービス等の業務に従事する者のうち
指定するもの及び旅行業に従事する者のうち指定する
もの
・客室乗務員
パーサー 5,000 円
チーフ 3,000 円
サブチーフ 2,000 円
・旅行業
チーフリーダー 5,000 円 チーフアドバイザー 3,000 円
インストラクター 3,000 円
期末手当加算額改善
上限額の改善(50,000 → 100,000 円)
リーダー手当新設
駅業務、及び総合販売センター業務者
・駅
リーダー 2,000 円
・総合販売センター
リーダー 3,000 円
サブリーダー 2,000 円
2003
看護休暇新設
職務加給改善
2004
労働協約
改札業務を追加
パートナースタッフの労働協約を締結
育児休職制度新設
介護休職制度新設
2005
半休制度新設
休日数の改善
非現業部門特休日改善(55 → 56 日)
- 24 -
実施年度
件 名
詳 細
忌引休暇制度改善
祖父母の忌引休暇を改善(血族2→3日)
2005
時間外労働免除
小学校就業の始期に達するまでの子を養育する場合
職務乗車証交付
在籍1年以上で自社線を交付
購入券使用範囲拡大
対象者に配偶者・子を追加
2006
休暇制度改善
生理休暇(有給)日数改善(毎潮1→2日)
期末手当支給率改善
継続雇用期間による支給月数改善
短時間勤務制度新設
育児を行うための始終業時刻の変更
2007
その他
定期健康診断受診時の新幹線利用
有給休暇新設
裁判員の職務に従事する場合
2008
その他
研修センター入所中の自由席特急券代用証交付条件見
直し
社員採用試験新設
勤続3年以上のパートナー社員で社員採用試験に合格
したもの
2009
その他
インフルエンザ予防接種の一部助成
勤続4年以上のパートナー社員(一般)で採用試験に
合格したもの
EPS制度新設
2010
育児休職・介護休職改善
1才6ヶ月未満の子を養育する場合
資格取得一時金新設
2011
購入券配布枚数改善
15 → 40 枚
その他
2012
超勤単価改善
2013
リーダー手当改善
住民税の給与控除開始
超勤単価B・Cを社員と同等に改善
駅・総合販売センターのリーダー手当改善
(2,000 円・5,000 円 → 3,000 円・5,000 円)
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
社宅・寮のリニューアルの推進
パートナースタッフの
勤務箇所に応じた居住施設の配備と待遇
福利厚生制度の充実
持家に関する各種支援制度の改善
- 25 -
4 労働時間短縮及び適正な要員配置 鉄道業は労働集約型産業であり、その特殊性から多くの勤務種別が存在しています。JR九州
では2種類の日勤のほか、隔日が6種類、3交代が2種類、変形においては 12 種類の種別が設
定されています。JR連合では、従来から年間総労働時間 1,800 時間を目指しており、JR各社
においても総労働時間にはバラつきが見受けられ、JR九州においても年間総労働時間 1,800 時
間は達成できていない状況です。
⑴ 年間休日数の改善
JR九州の年間休日数は 109 日であり、JR他社と比較しても低水準でJR九州労組が掲
げる完全週休2日制の 122 日には遠く及ばない状況です。十分な休養による作業効率の向上
と、ワーク・ライフ・バランス確保の観点からも年間休日数の早急な改善が必要です。
【JR各社年間休日数】
(日)
125
120
120
115
118
114
112
110
107
109
108
105
100
JR北海道
JR東日本
JR東海
JR西日本
JR四国
JR九州
JR貨物
これまでの成果 実施年度
1987
1989
1991
1993
1996
1997
2001
2011
年間休日数
94
95
97
104
105
107
108
109
⑵ 年間総労働時間の改善
年間総労働時間は年間休日数と密接に関連しており、1日あたりの労働時間と年間総労働時
間をJR各社で比較した場合、JR九州は1日あたりの労働時間が長く、逆にJR東海は短い
結果となっています。よって、年間休日数は単純に日数のみで比較することはできず、年間総
労働時間と合わせて改善することが重要です。
JR各社と比較した場合、JR北海道は 112 日、JR西日本は 118 日と休日数は多いように
見受けられますが、1日あたりの労働時間が長く年間総労働時間で見れば、必ずしも多いとは
言い切れません。1日の労働時間がJR九州と最も近いのはJR東日本で、この数値を参考と
すれば、JR九州の年間休日数は現状では 113 日程度が適していることになります。
- 26 -
【JR各社年間平均総労働時間と1日当たりの労働時間】
年間平均労年
働間
時平
間均
(労
時働
間時
)間(時間)
1950
1900
2000
1850
1950
1800
1900
1750
1850
7.49
1881
1700
116
1853
JR北海道 JR東日本
JR東海
1776
1853
JR西日本
年間総労働時間
JR北海道 JR東日本
JR東海
1879
7.31
1956
1881
年間休日数年間休日数
114
1903
7.41
1853
1776
7.25
1650
7.31
1956
1853
7.5
7.7
7.41
7.58
7.25
7.45
1700
1800
1650
1750
7.6
7.45
7.56
7.49
7.7
7.58
7.56
1903
JR四国
JR九州
1879
JR貨物
1日当たりの労働時間
JR西日本
年間総労働時間
JR四国
JR九州
7.4
7.6
7.3
7.5
7.2
7.4
7.1
7.3
7
7.2
7.1
7
一日当たり一
の日
労当
働た
時り
間の
(労
時働
間時
)間(時間)
2000
JR貨物
1日当たりの労働時間
【JR九州とJR東日本との比較】
112
116
110
114
114
113
108
112
106
110
108
109
114
JR東日本
113
JR九州
109
九州ベース休日数
年間休日数
106
JR東日本
JR九州
年間休日数
九州ベース休日数
<算出方法>
• (1日当たりの労働時間差 × 年間労働日数)/ 1日当たりの労働時間
=(7.45 - 7.41)×(365 - 114)/ 7.45 =
1.35 • 114 - 1.35 = 112.65 ≒ 113
⑶ 休暇制度の改善
これまで、積立保存休暇の使用事由拡大や日数の改善、短時間勤務等、多くの休暇制度が
新設・改善されてきました。大きな成果を上げてきた一方で、積立保存休暇や生理休暇をは
じめとした各種休暇の取得率向上に向けた制度そのものの運用方法の改善が求められていま
す。よって、今後は制度の改善と合わせて幅広い広報が必要です。
⑷ 適正な要員配置
適正な要員配置については、年度初の要員は整っているとされているものの、退職や休職、
研修や資格取得及び転勤等により、一年を通して適正とはいえない要員配置になっています。
- 27 -
安全創造館等の各種研修や複数の発表会が連立し、特に若年層には大きな負担が掛かってい
ると言えます。また、JR九州における 2012 年度の年休取得実績は 13.7 日の取得に留まっ
ています。加えて、希望日での取得は更に低下することが見込まれ、各種効率化施策等に伴
う1人当たりの業務負荷は増加していると考えられます。休養の適正とワーク・ライフ・バ
ランスの充実及び、最優先課題である安全に関する知識の継承、更に技術継承を目的とした
各種教育・OJTの確実な実施のためにも、ゆとりを持った要員配置が必要です。
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
年間休日数 113 日の実現
年間総労働時間 1,800 時間の達成
年間休日数 112 日の実現
休暇制度の拡大と運用改善
5 仕事と家庭の両立の実現について
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けては、世代・性別等に隔たりなく、すべての労働者に
共通する課題であり、長時間労働の是正や働き方の見直し等を進めることが重要です。特に鉄道
業においては、多くの勤務種別が存在しているため、多様で柔軟な働き方をいかに確保できるか
が最大の課題です。
2013 年度の女性組合員アンケート結果によれば、全体の 43%はワーク・ライフ・バランスが
取れていないと回答されました。職種別では客室乗務員及び旅行業において 50%以上が取れて
いないと回答しており、職種間でのバラつきが大きいことからも、1人当たりの業務量や要員配
置について調査検証が必要です。また、ワーク・ライフ・バランスが不調となる主な原因におい
ては、労働時間が不規則であるが 58%を占め、鉄道業特有の多くの勤務種別が足かせになって
いることが分かります。職種別では、業務量が多いとの回答に病院、旅行業、非現業が同率程度
回答されており、旅行業では業務量の多さに加え、不規則かつ労働時間が長いためワーク・ライ
フ・バランスが不調であることが分かりました。
十分な休養を確保し、より質の高い労働を行うためにも労働時間の見直しをはじめ、次世代育
成に向けた育児に対する職場全体が支援可能な制度の実現や、既存の制度の取得しやすい環境整
備が求められます。また、連合が推奨する「働くことを軸とする安心社会の実現」に向け、育児
や介護等多様な個別課題に対する選択肢の拡大も重要な課題です。
- 28 -
【職種別ワーク・ライフ・バランスの実態】
100%
90%
80%
70%
取れていない
43%
取れている
57%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
駅 乗務員 客乗 総販
病院 旅行 工務
取れている
車両 非現
取れていない
【職種別ワーク・ライフ・バランス不調の主な原因】
休みが取りにくい
労働時間が長い
その他
11%
12%
90%
80%
70%
7%
12%
100%
60%
労働時間が不規則
58%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
業務量が多い
駅 乗務員 客乗 総販 病院 旅行 工務
労働時間が不規則
休みが取りにくい
車両 非現
業務量が多い
労働時間が長い
その他
6 地域社会への貢献について
これまで、JR九州労組では東日本大震災をはじめ、連合愛のカンパ、NPO法人貧困村自活
自立支援ネットワークへのカンパ、公益財団法人オイスカを主とした地域活性化ボランティアや
回収ボランティアを継続して実施しています。これまで、ボランティア休暇の新設や、積立保存
休暇の使用事由拡大等、地域社会への貢献に向けて着実に前進しています。
各種ボランティアを通じて地域とのふれあいやその重要性を認識し、自治体活動等へ積極的に
参加できる環境整備が必要です。
- 29 -
◎賃金水準の中期目標達成と安心して働く事のできる雇用制度の充実に向けて
目標賃金(水準)の達成、個別課題の解消、安心して働くことのできる雇用のあり方
【基本的な考え方】
○ 必要な生計費を月例賃金で賄える安定した生活を送るために、必達目標賃金へ早期到
達が必要である。
○ 新賃金・昇進制度の検証を継続的に行い、賃金制度の個別課題の解決が必要である。
○ 嘱託再雇用制度の改善をはじめ、安心して働く事のできる制度の確立が必要である。
【目標】
1 新ビジョンで達成すべき目標
⑴ 全年令層において必達目標賃金へ到達
⑵ 55 才以降の基本給支給率 100%の達成
⑶ 多様な働き方の導入
⑷ 都市手当の廃止による基本給の底上げ及び経過措置の新設
⑸ 第二基本給の改善及び勤続年数 38 年以降の退職手当支給率の設定
⑹ 育児休職・介護休職取得者を仕事給昇給欠格条項から適用除外
⑺ 65 才(年金支給開始年令)までの定年延長
2 株式上場までに達成すべき目標
⑴ 現行の賃金水準向上
⑵ 55 才以降の基本給支給率改善
⑶ 嘱託再雇用制度の労働条件改善
⑷ 改正労働契約法に基づいた無期雇用契約制度の導入
- 30 -
【検討課題】
1 賃金水準について
⑴ JR連合の設定する目標・必達目標賃金の達成
⑵ 必要な生計費の確保
⑶ 新賃金・昇進制度の検証
2 賃金制度の個別課題について
⑴ 55 才以降の基本給支給率の改善及び労働条件の改善
⑵ 都市手当の見直し
⑶ 退職手当制度の見直し
⑷ 昇格・昇進制度の見直し
⑸ 仕事給昇給の見直し
3 安心して働き続ける事のできる雇用制度について
⑴ 65 才定年制の実現
⑵ 嘱託再雇用制度の改善
4 パートナー社員の雇用制度について
改正労働契約法に則った無期雇用契約への早期転換
1 賃金水準について
JR九州労組は、目標賃金として、
「必達目標賃金」(全産業 1000 人以上規模の中位数(Q2))
を設定してきました。2013 年度の賃金実態調査結果においては、35 才ポイント以外は必達目標
賃金に到達しておらず、特に賃金が減額される 55 才ポイントでは、目標賃金との乖離が大きい
実態が明らかになりました。
【2013 年度賃金実態調査結果(抜粋)】
25 才
30 才
35 才
40 才
45 才
50 才
55 才
必達目標賃金
217,900
263,700
305,000
341,300
373,000
400,100
422,600
JR九州労組
214,000
254,000
320,700
326,500
363,100
392,800
334,100
(指数)
98.2
96.3
105.1
95.7
97.3
98.2
79.1
また、2007 年度に導入された新賃金・昇進制度の検証においては、30 才代の中だるみが解消
される等、制度導入時に想定した賃金カーブに近づきつつありますが、50 才以降において年令
給が増加しないことや、55 才以降の基本給支給率による賃金の低下が課題として浮き彫りにな
っています。更に、仕事給昇給における等級在級年数による区分やフィードバック面談に対する
不満、昇格試験受験率、昇格試験合格後の待機年数等、改善すべき課題が多く存在しています。
- 31 -
【2006 年度賃金実態調査結果と 2013 年度賃金実態調査結果の比較】
450
(千円)
400
350
300
250
2006年
200
2013年
150
100
20才 25才 30才 35才 40才 45才 50才 55才 60才
<注意事項>
※ 所定内賃金での比較
(2006 年度は高卒一般が対象、2013 年度は高卒・E級以下が対象)
※ 2006 年度データの注意事項…34 才~ 39 才のデータ無し
※ 2013 年度データの注意事項…40 才~ 47 才のデータ無し
一方、生活していく上で必要となる生計費が十分に確保されているか検証を行いました。都道
府県人事委員会が 2013 年に発表した標準生計費(消費支出)を年令別に推計し、税金や社会保
険料(非消費支出)を付加して得られた推計値を必要生計費として算出したところ、JR九州労
組の実態は 40 才以降のポイントでその水準に達していませんでした。JR九州労組の賃金水準
は「月例賃金で賄えない生計費を賞与で補填している」といえます。また、必達目標賃金が必要
生計費に近似していることから、必達目標賃金に到達させることは、「毎月必要となる生計費を
月例賃金で賄える」水準へ到達する事といえます。
- 32 -
【賃金実態調査結果と必要生計費の比較(2013 年度)】
(千円)
450
400
350
300
250
200
150
100
25才 30才 35才 40才 45才 50才 55才
賃金実態
必達目標賃金
必要生計費(九州地区の標準生計費を基に推計)
※ 賃金実態
2013 年度賃金実態調査結果より抜粋
※ 必達目標賃金
2013 年度賃金実態調査結果より抜粋
※ 必要生計費 2014 年版賃金決定のための物価と生計費資料(労務行政研究所)
(注)必要生計費の算出は次によります。
「2014 年版賃金決定のための物価と生計費資料(労務行政研究所)」(参考文献)
• 推計の基となるデータは、九州内で高額となる佐賀市、鹿児島市を適用します。
• 標準世帯(夫婦と子供2人、夫のみが就業)の推計とします。
• 年令別の家族構成を次の通りとします。(全国平均値)
1人世帯 … 31 才まで 2人世帯 … 32 才(結婚)
3人世帯 … 33 才(第1子出産) 4人世帯 … 35 才(第2子出産)
• 子が経済的に独立する年令 … 22.5 才
⑴ JR連合の設定する目標・必達目標賃金の達成及び必要な生計費の確保
JR連合は『JR連合中期労働政策ビジョン「2014 ~ 2018」~JR関係労働者にとって相
応しい働き方と今後5年の到達目標~』を発表し、今後5年間で、全単組が必達目標賃金を
達成する中期目標を発表しました。
前述したとおり、必達目標賃金は必要生計費に近似している事や、賞与が業績見合いによ
り変動する要素を持っていることから、毎月必要となる生計費を月例賃金で賄える水準に到
達する事で、安定した生活が送れるよう賃金の底上げを図る必要があります。
- 33 -
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
全年令層での必達目標賃金への到達
現行水準の向上
⑵ 新賃金・昇進制度の検証
新賃金・昇進制度において既に課題となっている以下の課題の解決に取り組む必要があり
ます。
また、新賃金・昇進制度導入時に検討してきた前提条件が晩婚化等の影響を受け、現状と
合致していない問題も発覚しています。今後の検証活動においては、課題として認識する必
要があります。
賃金実態調査においては、調査項目の見直しを行い、さらなる課題の抽出とその解決に向
けて取り組む必要があります。
① フィードバック面談
② 昇格試験の受験率、試験合格後の昇格待機年数等
③ 時間外労働(超過勤務、早朝時間の業務及び自宅での業務等)
2 賃金制度の個別課題について
⑴ 55 才以降の基本給支給率の改善及び労働条件の改善
① 55 才以降の基本給支給率の改善について
年金支給開始年令の引上げ(55 才から 60 才)に伴い、定年が 55 才から 60 才に延長されま
した。この時、55 才以降の基本給支給率が設定されました。当初、基本給支給率は3分の2
でしたが、労使協議により 55 ~ 56 才時は最大で 82%、57 ~ 59 才時は最大で 78%まで改善
してきました。
賃金実態調査でも明らかになっている通り、55 才以降の賃金水準は必達目標賃金と大きく
かけ離れており、当事者である組合員からも多くの不満が寄せられているのが現状です。「同
一価値労働・同一賃金」の観点からしても、100%の支給が当然として改善を行う必要があり
ます。
また、賃金の減額が家計収入に直接大きな影響を与えることから、当面の間は補填のため
に新たな貸付制度の新設等が求められています。
- 34 -
【 55 才以降の基本給支給率(2014 年4月1日現在)】
2007 年度
初年令
2014 年度
初年令
52 才
一般社員の基本給支給率
医療社員の基本給支給率
55 ~ 56 才
55 ~ 56 才
57 ~ 59 才
57 ~ 59 才
59 才
77.8%
74.0%
77.8%
74.0%
51 才
58 才
78.1%
74.2%
78.1%
74.2%
50 才
57 才
78.3%
74.4%
78.4%
74.5%
49 才
56 才
78.5%
74.6%
78.5%
74.7%
48 才
55 才
78.7%
74.9%
79.0%
75.1%
47 才
54 才
79.1%
75.2%
79.3%
75.4%
46 才
53 才
79.5%
75.6%
79.5%
75.6%
45 才
52 才
80.0%
76.1%
79.8%
75.9%
44 才
51 才
80.7%
76.7%
80.2%
76.2%
43 才
50 才
81.4%
77.4%
80.4%
76.6%
42 才
49 才
82.0%
78.0%
80.4%
76.6%
41 才以下
48 才以下
82.0%
78.0%
80.0%
76.0%
これまでの成果 基本給支給率
実施年度
件 名
55 ~ 56 才
1987
57 ~ 59 才
JR九州発足
55 才定年
定年延長
定年年令 55 才 → 60 才
基本給支給率の設定
55 才以降の基本給支給率 2/3
1990
70%
1996
2/3
基本給支給率の見直し
原則出向年令まで
2000
基本給支給率の見直し
72%
68%
2005
基本給支給率の見直し
77%
73%
2007
新賃金・昇進制度の導入
74.0%~ 82.0%
69.5%~ 78.0%
74.2%~ 82.0%
69.8%~ 78.0%
2010
基本給支給率の見直し
平成 19 年度初年令 42 才以上の者を
対象として 0.2%~ 0.3%の改善
74.4%~ 82.0%
2014
基本給支給率の見直し
70.1%~ 78.0%
平成 19 年度初年令 42 才以上の者を
対象として 0.2%~ 0.3%の改善
- 35 -
【JR他社との比較】
会社名
55 才以降の基本給支給率
JR 九 州
55 ~ 56 才…82%(最大)
57 ~ 59 才…78%(最大)
JR 西日本
92%
JR 東 海
100%
② 55 才以降の労働条件の改善について
前述したとおり、55 才以降の基本給支給率により賃金は抑制されているものの、業務上
の責任や職制は何ら変わりがないのが実態です。更に、後輩社員への技術継承や教育等の観
点からも重要な世代であることは間違いありません。基本支給率の改善は当然としながら、
負担を軽減するための多様な働き方を検討する必要があります。
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
基本給支給率 100%
基本給支給率の改善
多様な働き方の導入
⑵ 都市手当の見直し
都市手当については、地域の物価差を解消することを目的として国鉄時代から引き継がれ
た制度です。しかし、地域の物価差は居住地に対して影響するものであるものの、勤務地に
対して支給されるという矛盾があります。また、都心部だけが本当に物価が高いかといえば
そうでもなく、都道府県人事委員会の発表した標準生計費によれば、九州内では佐賀市や鹿
児島市といった都市手当の支給地域に該当しない都市が高額となっています。働くエリアに
対して支給される賃金の例として、JR他社では寒冷地手当の設定がありますが、比較的温
暖な気候である九州において同様の措置は馴染みません。従って、九州においては働くエリ
アによって賃金に差をつける事は馴染まないとの認識に立ち、都市手当を廃止することで、
全組合員の基本給が向上するような見直しが求められています。なお、見直しに当たっては、
既に都市手当を支給されている者が不利益とならないよう、経過措置を設けることも必要で
す。
- 36 -
【都市手当の支給状況(2013 年度 賃金実態等調査結果)】
支給人数(割合)
支給額(平均)
4,804 人(46%)
13,143 円
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
都市手当の廃止による基本給の底上げ
経過措置の新設
⑶ 退職手当制度の見直し
JR九州発足時に、第二基本給が導入されました。現行制度での第二基本給は、年令給昇
給及び仕事給昇給額の 40%を占めており、退職時の基本給に占める第二基本給(累計額)の
割合は年々増加傾向にあります。このため、退職手当の支給金額は、低下傾向にあることが
想定できます。退職手当は賃金の後払い的要素を含めており、その金額が低下することは、
私たちの賃金が低下していることと同じです。第二基本給を改善することにより、退職手当
支給金額の低下に歯止めをかける必要があります。
また、退職手当支給率については、勤続年数 37 年で最大となるよう設定されています。こ
れは 18 才で入社した場合、55 才で最高値に達することから、55 才定年を前提とした制度で
あると言えます。現在は定年が 60 才になる等、雇用環境が変化しており、勤続年数 38 年目
以降の退職手当支給率を設定する等、雇用制度に見合った退職手当制度に改善する必要があ
ります。
【退職手当の支給状況(2013 年度推計値)】
① 基本給 350,000 円
② 第二基本給累計額 74,000 円
③ 退職手当算定基礎給 ①-②+ 12,000 = 288,000 円
④ 退職手当額 ③× 60 = 17,280,000 円
※ 18 才高卒入社、勤続年数 37 年以上で退職した場合の試算値。
※ 基本給及び第二基本給累計額は、2013 年度賃金実態調査結果より抜粋。
※ 12,000 円は特別昇給。
(勤続年数 10 年以上 6,000 円、効績章受章者 6,000 円)
- 37 -
【JR他社との比較】
会社名
退職手当制度
第二基本給
JR 九 州
勤続 37 年で頭打ち
40%
JR 西日本
勤続 37 年で頭打ち
30%
JR 東 海
ポイント制による計算
無し
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
第二基本給の改善
勤続年数 38 年以降の退職手当支給率の設定
⑷ 昇格・昇進制度の見直し
昇格試験の受験状況は、2013 年度賃金実態調査結果では下表の通りとなりました。高年令
になるにつれ、「受験資格はあるが、受験しない」という割合が多くなっています。
【昇格試験の受験状況(2013 年度賃金実態調査結果より抜粋)】
年代
10 代
20 代
30 代
40 代
50 代
受験率
8%
28%
41%
15%
4%
また、フィードバック面談の実施状況は、2013 年度賃金実態調査結果では、下表の通りと
なりました。特に、
「面談を希望しても実施されない。」等の意見も出されており、面談の見直し・
改善が求められています。
【フィードバック面談の状況(2013 年度賃金実態調査結果より抜粋)】
受けた
受けていない
勤務時間内
勤務時間外・超勤有
勤務時間外・超勤無
62%
27%
3%
8%
試験合格後の昇格待機年数については、2013 年度賃金実態調査結果では、下表の通りとな
りました。C2級者(E級試験合格者)までは、
概ね3年以内で昇格できていますが、E級者(M
1級試験合格者)以上は、長期昇格待機者が多数存在しています。後述する仕事給昇給にも
影響することから、試験合格者への早期発令や、仕事給昇給制度の見直しが必要です。
- 38 -
【昇格試験合格者の待機状況(2013 年度賃金実態調査結果より抜粋)】
現在等級
1年
2年
3年
4年
5年以上
計
C2級以下
82 人
51 人
21 人
3人
1人
158 人
E級
55 人
23 人
16 人
9人
29 人
132 人
M1級以上
15 人
17 人
15 人
10 人
34 人
91 人
⑸ 仕事給昇給の見直し
新賃金・昇進制度では、勤務成績による区分と等級在級年数による区分により仕事給昇給
額が決定する仕組みとなっています。2013 年度の賃金実態調査結果によると、勤務成績によ
る区分は概ねⅢ評価以上となっていることが判明しましたが、等級在級年数による区分では、
1~4年よりも5~8年の方がⅠ・Ⅱ評価の比率が低い実態が明らかになりました。
【仕事給昇給の状況(2013 年度賃金実態調査結果より抜粋)】
区分
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
計
1~4年
7%
20%
43%
3%
74%
5~8年
2%
5%
17%
2%
26%
計
9%
25%
60%
5%
100%
※ 四捨五入により合計が 100 となっていません。
等級在級年数による区分は、制度導入時より危惧していた課題でもあり、今後は見直しを
前提として、昇格試験の受験回数、平均等級在級年数、昇格待機状況等を抱合的に調査し、
実態を詳細に把握する必要があります。
また、次世代育成支援等の観点から、育児休職・介護休職取得者の仕事給昇給欠格条項の
適用除外が求められています。次世代育成支援や要介護者等の弱者への支援は社会からも求
められているものであり、JR九州においても同休職の取得を慫慂しているところです。職
場での雰囲気作り等、これらの休職を取得しやすい環境の整備も必要ですが、休職を取得し
たことにより不利益となる制度では問題があるとしか言えません。
さらに、2006 年度より採用形態が拡大し、大卒(専門職)の採用が始まりました。大卒(専
門職)は、初任給調整により採用時の賃金が底上げされていますが、2年目以降は初任給調
整の減が影響し、同年令の高卒社員との差が広がり続ける等の課題があります。
- 39 -
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
育児休職・介護休職取得者の
仕事給昇給欠格条項適用除外
3 安心して働き続ける事のできる雇用制度について
2001 年4月から年金満額支給開始年令が段階的に引き上げられ、2013 年度からは報酬比例部
分の支給開始年令が段階的に引き上げられています。これにより、60 才以降は無年金となる期
間が発生し、男性の場合 2025 年には 65 才まで無年金となります。JR九州においては、2013
年度に課題であった「57 才原則出向制度」の廃止、及び「60 才定年退職後の再雇用制度」の導
入を行いましたが、再雇用制度は1年契約の不安定な雇用状態であることや、極端に低下する労
働条件の改善が求められています。
⑴ 65 才定年制の実現
前述したとおり、年金支給開始年令は段階的に引き上げられており、男性の場合は 2025 年、
女性の場合は 2030 年に 65 才までが無年金状態になることが決定しています。また、日本の
超高齢化社会の実態を鑑みると、今後、そう遅くない時期に更なる引き上げも予想すること
ができます。
現行の再雇用制度は1年契約の不安定な雇用状態であり、安心して生活を続けていくため
には、雇用の確保が大前提です。年金支給開始年令に見合った定年制の実現を目指す必要が
あります。
- 40 -
【年金支給開始年令早見表】
定 額 部 分
報酬比例部分
生 年 月 日
男性
女性
男性
女性
S 27. 4. 2 ~ S 28. 4. 1
65 才
64 才
60 才
60 才
S 28. 4. 2 ~ S 29. 4. 1
65 才
64 才
61 才
60 才
S 29. 4. 2 ~ S 30. 4. 1
65 才
65 才
61 才
60 才
S 30. 4. 2 ~ S 31. 4. 1
65 才
65 才
62 才
60 才
S 31. 4. 2 ~ S 32. 4. 1
65 才
65 才
62 才
60 才
S 32. 4. 2 ~ S 33. 4. 1
65 才
65 才
63 才
60 才
S 33. 4. 2 ~ S 34. 4. 1
65 才
65 才
63 才
61 才
S 34. 4. 2 ~ S 35. 4. 1
65 才
65 才
64 才
61 才
S 35. 4. 2 ~ S 36. 4. 1
65 才
65 才
64 才
62 才
S 36. 4. 2 ~ S 37. 4. 1
65 才
65 才
65 才
62 才
S 37. 4. 2 ~ S 38. 4. 1
65 才
65 才
65 才
63 才
S 38. 4. 2 ~ S 39. 4. 1
65 才
65 才
65 才
63 才
S 39. 4. 2 ~ S 40. 4. 1
65 才
65 才
65 才
64 才
S 40. 4. 2 ~ S 41. 4. 1
65 才
65 才
65 才
64 才
S 41. 4. 2 ~ S 28. 4. 1
65 才
65 才
65 才
65 才
【年金支給開始年令引上げのスケジュール】
男性 定額部分
女性 定額部分
男性 報酬比例部分
女性 報酬比例部分
65
63
62
61
60
59
58
年度
2013
2018
2025
- 41 -
2030
【年金支給開始年齢】
64
⑵ 嘱託再雇用制度の改善
嘱託再雇用制度は 2013 年度に導入した制度ですが、賃金はもとより、休暇等の制度におい
ても社員より低位にあり、改善を求める声が多くあります。
基本給については、退職時の等級を基に定額であり、その水準は非常に低いものです。期
末手当Bも合わせて、年金満額支給相当額を目指して努力する必要があります。
期末手当Aについては、1ヶ月分と低い水準です。期末手当は業績に応じた支給が原則で
あり、一律低水準であることは、同じ1年契約のパートナー社員の制度と比較しても整合性
がなく、同様の制度が求められています。
また、積立保存休暇の新設や、次世代育成支援の観点から扶養手当の新設も求められてい
ます。
【JR他社との比較】
会社名
60 才再雇用時の基本給
JR 九 州
150,000 ~ 198,000 円
JR 西日本
1,230 ~ 1,640 円(時給)
JR 東 海
160,800 ~ 201,200 円
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
年金支給開始年令(現時点では 65 才)
に合わせた定年制の実現
嘱託再雇用制度の改善
4 パートナー社員の雇用制度について
2013 年4月1日、労働契約法が改正され、有期雇用契約が反復更新されて通算5年を超えた
時に、労働者からの申し込みがあれば無期雇用契約に転換しなければならない制度が施行されま
した。法の趣旨に則れば、2013 年4月1日以降に契約した有期雇用契約が反復更新期間に適用
されるため、実際に無期雇用契約に転換されるのは、有期雇用が1年契約である場合は 2019 年
4月1日からとなります。
JR九州においては、パートナー社員が対象となります。JR九州労組はこれまでもパートナ
ー社員の待遇改善に努めてきており、社員登用制度や労働条件の改善など、さまざまな成果を勝
ち取ってきました。
今回の法改正に伴い、無期雇用契約制度の導入時期を早急に明確にする必要があります。また、
- 42 -
無期雇用契約の内容については、2013 年4月1日以前の有期雇用契約を反復更新期間に適用し、
労働条件は社員と同等とする等、現行制度より改善する必要があります。
法の趣旨に則って制度を整備することは当然ですが、法を上回る制度が求められています。
【改正労働契約法の適用スケジュール(参考例)】
2013.4.1
2014.4.1
2015.4.1
2016.4.1
2017.4.1
2018.4.1
2019.4.1
●契約(1年) ●契約(1年) ●契約(1年) ●契約(1年) ●契約(1年) ●契約(1年) ●契約
無期雇用契約
希望者はこの
間に申し込み
今後の具体的な目標 新ビジョンでの到達目標
株式上場までの到達目標
パートナー社員の無期雇用契約への
転換制度の早期新設
- 43 -