合理的在庫管理は 編著者 - JRS経営情報サービス

情報番号:01050529
テーマ:合理的在庫管理は
編著者:株式会社テクノソフト
(関連情報:01050525〜01050539)
1.合理的在庫管理は
適正在庫:
会社にとってもっとも好ましい在庫のことをいいます。過少在庫では、欠品
による販売の機会を損失する危険があります。また、過剰在庫では、資金繰り
を圧迫し、現在のように多品種化や商品のライフサイクルが短くなっている状
況では、デットストックとなリ、使用されないまま処分しなくてはならないよ
うなことを生じる危険が高くなります。
金額から見た適正在庫:
販売面からは、売上げを伸ばし、利益を上げるにはよい品質の商品を在庫し
ておく必要があり、下記の指標が目安になります。
適正在庫量=標準年間売上高÷標準商品回転率
商品回転率=売上高÷(材料+商品+貯蔵品)
数量から見た適正在庫:
過去の販売実績(売上高)をもとに販売予測(需要予測)を行ない、リードタイ
ム(発注から納品までに要する期間)を考慮して在庫数量を決めます。
販売予測の方法として、勘と経験による方法と、統計的手法を用いた時系列
分析法があります。
勘と経験による方法は、資料不足の際にはよい方法ですが、予測のプロセス
が不明確、データと結果の関連性が乏しいという欠点があります。
時系列分析法は、「将来の動きは、過去のデータの延長として推移する」とい
う前提のもとに、過去の数字を分析し、その延長線から将来の数字を予測する
ものです。目安法(フリーハンド法)、単純平均法、移動平均法、両分法、最小
二乗法等種々の方法がありますが、表計算ソフトが市販されています。目安法、
両分平均法が簡単で実用的です。移動平均法、最小二乗法は、精度の高い予測
が行えます。
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過少在庫基準と過剰在庫基準:
受注した商品が品切れだったり、品薄状態で納品できないというのが過少在
庫であり、売れると思ったものが売れ残った状態が過剰在庫です。これらは発
注ミス、作業ミス、保管ミス等さまざまなミスで引き起こされ、できるだけ避
けなければなりません。
過少在庫を防ぐための在庫の最低基準が「最小在庫量」であり、これに対して
これ以上の在庫を持ってはいけないという基準が「最大在庫量」です。
在庫管理する場合、「一日平均出庫量の何日分」という捕らえ方が便利です。
「最小在庫量」は、一般的には下記のように決めます。
最小在庫量(基礎日数)=リードタイム(日数)−1日
出庫量に変動がある場合には下記のように決めます。
最小在庫量(日数)
=最小在庫量(基礎日数)+[(1日当たりの最大出庫量−1日当たりの平
均出庫量)÷1日当たりの平均出庫量]
「最大在庫量」は次のように決められます。
最大在庫量=(平均在庫量×2)−最小在庫量
平均の在庫量は、期首在庫と期末在庫の平均、12ヶ月合計の単純平均、実
際の最大在庫と最小在庫の平均などが使われます。
2.在庫は悪、0在庫ということを聞くが?
在庫は、お金(資本)が眠っていることを意味します。また、仕入れのために
お金を借りると、金利がかかります。保管料や倉庫料も必要です。商品が売れ
ない場合には、在庫はデッドストックとなリ、倉庫にかかるコストのほかに管
理のための経費も必要となります。さらに、これらの在庫処分のために廃棄又
は値引き販売すれば売上げや利益に悪影響を与えます。このような意味で、在
庫は悪です。従って、必要なものを、必要な量だけ、必要なときにつくり、在
庫をゼロにできれば理想的です。
しかし、過少在庫の場合には、下記のような問題を生じます。
・ 製造工程に支障をきたす。
・ 出荷停止や欠品を生じる。
・ 販売の機会を逃す。
・ 発注回数が増え費用がかさむ。
これらの問題、特に販売のチャンスを逃さないために、在庫が必要となりま
す。
一方、過剰在庫では、次のような問題があります。
・ 資金が眠った状態になる。
・ 借金でまかなった場合には金利がかかる。
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・
・
売れなかった場合には、デットストックとなる。
保管・倉庫料がかかる。
従って、適正な在庫を持つことが重要になります。
ところが、消費者のニーズが多様化し、多品種少量生産となリ、商品のライ
フサイクルが非常に短くなってきているのが趨勢です。このため生産者サイド
の適正、経済性だけを考えるプロダクトアウト(生産者中心)では、企業として
生き残れなくなってきています。
そこで、消費者のニーズを生産に取り込むマーケットイン(消費者中心)が生
産の基本となってきています。
消費者のニーズに柔軟に対応するために、「必要なものを、必要な量だけ、
必要なときにつくる。」という「ジャスト・イン・タイム(JIT)」という究極の在庫
管理方式が考え出されました。この方式は、価値を生まない在庫のコストを徹
底的に排除するという活動から生み出されました。商品からはじまって、工程
中の仕掛品、部品、原材料の在庫をゼロにしようというものです。
この方式の最終的なねらいは、資本を効率的に回転させることで、利益を拡
大しようとするもので、ものをつくらないということです。JIT の理念に基づ
く生産システムが「トヨタ生産方式」と呼ばれるものです。
JIT 生産方式を有効に運用する手段として「かんばん方式」があります。製造
のある工程が次の工程に部品を送ったら、前工程に送ってもらう部品名、納入
時期、数量などを示した「発注指示書」送ります。これを「かんばん」といいます。
これにより需要の変化に応じた生産の微調整を行ない、在庫を発生させないよ
うにします。
かんばん方式を導入するに当たっては、不良品を後工程に送らない、工程の
安定化・合理化、生産の平準化などの前提条件が必要となります。
3.健全な在庫管理の構築
在庫は、お金(資本)を眠らせ、仕入れのためにお金を借りた場合は金利がか
かり、保管料や倉庫料も必要です。また、商品が売れない場合には、在庫はデ
ッドストックとなリ、倉庫にかかるコストのほかに管理のための経費も必要と
なります。さらに、これらの在庫処分のために廃棄又は値引き販売すれば売上
げや利益に悪影響を与えます。しかし、過少在庫の場合には、欠品を生じ商機
を失する危険があります。したがって、適正な在庫をもつ必要があります。
在庫を管理するためには当然コストがかかり、このコストは価値を生むわけで
はありませんから、できるだけ効率的に管理する必要があります。
ABC 分析:
多品目の製品・商品に対して効率的な管理方法をおこなうために用いられる
のが「ABC 分析」と呼ばれる方法です。重要度の高い商品について重点的に管理
するために、重要度により製品・商品を分類します。在庫品の中の 20%の数量
で全体の金額の 80%前後を占め、在庫品全体の 80%前後は、全体の金額の 20%
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にしかならない傾向があるということを利用すれば、効率的な在庫管理を行う
ことができます。
① A グループ:主力製品と呼ばれるグループで、売上げに対する貢献度の高い
ものであり、在庫の動きは早く、欠品した場合には、販売の機会を失うこ
とによる損失の大きなものです。数量は多くないので厳密な管理を行って
もそれほどコストは高くなりません。
② B グループ:主力製品を補完する商品がこのグループに入ります。このグル
ープには、A グループから降格になったもの、A グループに昇格する成長過
程にあるものが含まれます。降格になったものは過剰在庫にならないよう
に管理する必要があり、成長過程にあるものはその動向に注意を払う必要
がありますが、いずれも在庫管理は緩やかでよいと考えられます。
③ C グループ:売上げへの貢献度が低く、経営上さほど重要でない製品のグル
ープです。このグループには、B グループから降格したもの、在庫の動きが
ないもの、新商品が含まれます。降格商品は返品、在庫の動きがないもの
は廃棄処分等の処置が必要になります。新商品については、その動向を見
守るための分析が必要になります。しかし、在庫の管理は最も緩やかでよ
いと考えられます。
これらのグループに分類する方法として、パレート図があります。横軸に、
売上げ数量、縦軸に売上金額を取り、横軸には、売上金額が高いものから低い
ものへの売上げ数量の累計を、縦軸には売上金額の累計をプロットします。売
上金額の 80%を占めるものが A グループ、売上金額の 80%から 95%にあるも
のが B グループ、売上金額の 95%から 100%の間にあるものが C グループと言
うように分類します。
在庫回転率:
在庫の売上げへの貢献度及び適切性を見る有効な指数です。
在庫回転率(回)=一定期間中の出荷金額÷同期間中の平均在庫金額
計算の対象期間は週、月、旬、半年、年などが使われますが、月と年で多く
の場合行われます。
平均在庫を求める方法として、次の三つがあります。例として対象期間を月
とします。
① 月初と月末の在庫を合計し、2で割ります。あまり精度はよくありません
が、簡便な方法でよく使われます。
② 目安法と呼ばれ、一定期間の在庫の平均を使います。比較的簡単なのでよ
く使われます。
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③ 一定期間の平均の傾向をとります。両分平均法といわれ、将来の傾向が判
断でき、販売や生産の予測の道具となります。
在庫回転率を次のように評価し、適切な対策をとることが重要です。
種類
原材料回転率
仕掛品回転率
製品回転率
回転率が大きい
回転率が小さい
・生産に対する材料供給に支障 ・発注と納入の方法を再検討
がないかチェックする。
する。
・支 障 が な け れ ば 在 庫 削 減 を ・動きのある原材料は、発注−
検討する。
納期−出庫の状態を分析し、
・支障があれば在庫を少し増
より細かな重点管理をする。
やし、現場の改善を早急に ・動きの少ない材料は、支障の
実施する。
ない程度に圧縮し、死蔵品
は処分等の対策を講じる。
・欠品が多く発生しているかど ・販売面での売上げ拡大策を検
うかをチェックする。
討する。
・欠品の真因を突き止め対策 ・ロット生産を流れ生産に切
をとる。
り換える。
・売上げが拡大している場合 ・構 成 部 品 の 生 産 の 同 期 を あ
には生産の抜本的見直しを
わせる。
する。
・外注への依存を見直す。
・顧客に対する品切れが発生 ・製品の訴求力、魅力度を全
してないかをチェックす
体にわたって調べる。
る。
・品種や品数が急増して否かを
・受注形態の変化を調査する。 調べる。
(編著者)
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