M&A失敗と成功事例から学ぶ

第2回セミナー
M&Aは、なぜ失敗するのか?
GE型か?富士フイルム型か?Google型か?ION型か?
M&A失敗と成功事例から学ぶ「社長のM&Aがう」
1.なぜ、失敗するのか?
・失敗の大半は、木を見て森を見ないからだ!
M&Aは、経営戦略の大事な要素!
委員会設置・社外取締役では解決しない-優れた経営者の存在が、正否を決め
る。
・木も見ていない失敗が多い。失敗の原因は、決まっている。
・企業は、人であることを忘れている。
・
2.戦略がなければ失敗する!なぜ、M&Aをするのか。
GE型か? 富士フィルム型か? Google型か? イオン型か?
1)売却理由は何か?
日本の企業は売却の戦略が未熟!
日本の売却例の大部分は、①または②
① 後継者がいない
・70 歳以上の経営者の 40%は、後継者が決まっていない。
・中国が、技術に注目して買い漁っている!
買ったあとは、外国に、Made in Japan として、輸出を考え得ている。
・日本企業の購買力が弱い。
<失敗例>
・技術が陳腐化している。
・技術者が高齢。技術の承継が出来ない。
→早く決断してもらう必要がある。
・技術者が、変化に適応できない。
② 経営難→救済スキームは後述
・救済型M&Aは、安く買うチャンス!
・民事再生は後回し!M&Aで、かなり救済できる!
・再生ファンドと組むことも多い!
・第二会社方式は、効果的!
<失敗例>
・企業再生のスキームを作成し、支援できるオーガナイザーが少ない。
・救済型買収は、買い手に取り、安く買えるチャンスであることを知らない!
③
戦略的売却
・集中と選択の一環として売却!
→収益性が高くても売却
・収益が見込めない業種の売却
・買って失敗した時に売る。
<日本企業に、その意識が欠落>
・経営戦略で、売却があり得ること自体、欠落している経営者が多い。
→集中か多角化か?
・M&Aで買って失敗したときに売却するという発想がない。
④ベンチャー型
・開発資金の確保
→開発には資金が必要。試験機から量産型を開発するにも資金が必要。販売
するにも販路が必要。ベンチャーの発展は、資金力のあるところに買い取
ってもらうこと。
→開発者、研究者には、ストックオプションが効果的!
ベンチャーは、開発を急がないと技術が陳腐化する。M&Aで、開発資金を確
保する。
・技術の開発競争は、加速化する!
→M&Aで加速化!
・自己技術の限界、人材の限界を乗り越える。
・創業利益の回収
資金回収は、IPOだけではない!
・早めに創業資金を回収し、大手に、開発を委ねる発想もあり得る。
→創業エンゼルだけでなく、「シリアル・アントレプレナー」 (Serial
Entrepreneur)もあり得る。
*ソフトバンクは2000年に中国アリババに20億円出資(出資持分30%)。
2014年9月上場、含み益8兆円(4000倍)!
*イーロン・マスクは、ペイパル(電子決済ベンチャー)をイーベイに15億ドルで売却し
て、これでテスラ、スペースX創業。その後、太陽光発電ベンチャーのソーラーシテ
ィ買収。パナソニック、ダイムラーがテスラに出資。
<日本企業は、なかなか買い手になれない>
・東大発のロボットベンチャー「シャフト」は、Google に行ってしまった。
⑤ 株主主導型→これから増加するはず!
・アメリカでは、株主が経営者を選ぶ形も多い。
株主による買い手の導入も稀ではない
・敵対的買収と裏腹
* 外国に売却の時代
・売却により、次の発展を目指せ!
しかし、外国への売却例は、極端に少ない。戦略的売却ができない!
・中国のメーカーが、日本の中堅・中小のメーカーを狙っている!買収後、メイド・
イン・ジャパンで海外に販売!
中国家電大手のハイアール(世界で No.1 の生産シェア)が、三洋電機の白
物家電事業を買収
JALは、デルタに売れなかった!
中国家電大手のTCLは、ソニーに対し、どう出てくるか?
<問題点>
外国に売るということに極めて消極的―日本特有の現象
2)買い手の戦略
M&A戦略は、日本はまだ未熟―30 年の遅れ
ホールディングカンパニーは、98 年解禁された!
① GE型―シナジーと無関係に多角化
・ジャックウエルチ:
「集中と選択」
シナジーと無関係に多角化
技術移転を超えている
「売って買う」ということに徹している。
・絶好時にするもの
・経営者を見抜き、使う
・後進国日本のテレビと競争することを回避して、テレビから撤退して多角化!
→ソニーやシャープは、韓国や中国に追われ、逆の立場になったが、GEにはなれな
かった!
② Googl型―新たな産業社会を目指す!Industrial Internet
・なぜグーグルは、世界中のロボットのベンチャーを買い込むのか。
インターネットでつなぐ新たな産業構造を構築!
ロボットは、巨大な発展産業であり、かつ、今の情報、IT産業と結合して、発展する
産業。絶好調の時に多角化し、次のマーケットを見据えているのだ。
*米スカイボックス・イメージング(20基以上の超小型衛星の運用)を買収し、スペ
ースX(テスラのロケット部門会社)に出資。
・なぜ、Appleは、EVメーカーを目指すのか。
今、電気自動車メーカーを目指して、技術者を確保している! テスラと競争か!
→自動運転システム、ネットや、太陽光発電とシナジー、スマートシティへ発展
する可能性!
*テスラの車には、自動運転のセンサーが付いているのはなぜか?
既存の車に、システムをダウンロードして、いつでも、じっどう運転が可能とな
る!
<日本は、このような米国の動きや、ドイツのIOT、第 4 次産業革命に、対応できている
か?>
・インターネットによる、新たな革命
・IOT(Internet of things)、ドイツの Industrie4.0の変化を見逃すな!
米・独で第4次産業革命が始まっている!
センサー・データ解析-ネット-ビッグデータ-人工知能
少品種少量生産・在庫物流の最適化
・産業革命だけでなく、物流革命、次世代農業、スマートシティ..
.
..
・スマートシティ
インフラ構築!海外展開へ!
建設会社がITをM&Aできるか?
・日本の国家戦略特区は十分か?
メルケル首相は、国家戦略で第4次産業革命を推進!
③
富士フィルム型-シナジー・技術移転を目指す古典型!
・マーケットが縮小どころか、消滅するという危機も起こる!
→その時は、
「業態転換」が必要となる。
*富士フィルムの成功、コダックの失敗
デジカメの登場で、フィルムの需要は急減した。富士フィルムは、富士ゼロックスを
子会社化し、主に技術移転(医療機器、医薬品、液晶パネル、事務機、化粧品、健康
食品)を目指してM&A(米診断器ソノサイトの買収など)を駆使し、危機を脱した。
ところが、アメリカのコダックは、時期を逸し、倒産して、チャプターレブンの申請
をせざるを得ないこととなった。
*ところが、このデジカメも縮小!
スマフォに押され、急速にマーケットが縮小している。経済の変化は、加速している。
デジカメ業界は、どこに進むか!
*IBMの転向
*汎用大型コンピュータで世界をリードしたIBMは、さっさとソリューションに企
業に展開した。これを可能にしたのは、業態転換と共に、M&Aを駆使したからであ
る。
*最近は、クラウド・コンピューティングの普及で再度の試練!
④ ION型-強いものに集約して生き残る古典型!
・マーケットが縮小する時の決断―マーケットが満杯なので、拡大は過当競争となり、自滅
する-安売り競争は、自滅するだけ!
・他企業を合併して、業界一を目指して生き残るか、他業種に多角化するかの決断をすべき
である。
・コンビニ等で追い込まれたスーパーマーケット分野で、なぜ、イオンがトップ企業になっ
たのか?
→ジャスコが、ヤオハン、マイカル、ダイエーなどを吸収-いまや海外展開。
・先延ばしは、致命傷となる。早めの決断が必要である。
・規模の経済が働く分野では、他企業を合併する方向は、ベストな選択。
*タクシー業界は日本的悪弊
会社再編の努力をせずに、行政上の規制を求める。
*電炉メーカーは40社がひしめいている。
・今は内需に安住しているが、中国産の安値攻勢で今後どうなるか?
・アルミメーカーは、13年10月、
(株)UACJ 誕生(住友軽金属工業と古河ス
カイが合併。業界1位と2位と合併)した!
*第2地銀(100行)、信用金庫(400庫)はどうする?
3.シャープは、なぜ苦境に陥ったか?―絶好調の時こそM&A!
・M&Aをすべき時にしないと、こうなる!
テレビ、液晶パネル、太陽光パネルだけに頼っている。どれも、中国の安い製品と競
合する。
GEは、後進国日本にテレビを譲り、多角化していった。
・シャープはどうなるか? 自力で,M&Aが出来る時期は、遙か昔に過ぎている。
→M&Aのターゲットになる
・オランダの「ロイヤル・フィリップス・エレクトロニクス」は社名から「エレクトロニク
ス」を消した!(医療機器が売上げの40%、照明35%)
*なぜ、SONYは、苦境に陥ったか?
・理由は、テレビとパソコンに頼りすぎたからである。なぜ、GEのようなアメリカ企
業がテレビを日本に任せ、撤退したかを理解せず、自分が、韓国、さらに中国に追い
上げられた時、撤退できず、競争したからである。
対策は、GEのように、力のあるうちにさっさと撤退し、多角化すべきだったのであ
る。
Googleは、世界中からロボットのベンチャーを買い込んでいるが、Sony は、
アイボーというロボット技術を売却してしまった。これでは、会社は行き詰まる。
・87年 CBSレコード買収し成功例-89年コロンビア映画の買収、しかし、映画
ビジネスが分からず、現地に丸投げ。5年後に、買収額の半分の減損処理-これで、
M&Aが出来なくなったのか?
<他業種の買収は人材が必要>
挑戦すべきだが、GEの要に、人材の確保に注力すべき!
・最近、ソニーが、自動運転技術の開発のため、ロボットベンチャーへZMP出資!
2015年4月、外科用内視鏡開発のソニーオリンパスメディカルソリューション
発足。
*シャープはどうなるか?
*テレビ、液晶パネル、太陽光パネルだけに頼っている。どれも、中国の安い製品と競
合するのだが。
*Appleのような欧米ファブレス企業にも勝てない!
*Samsungはどこへ行くか?
日本のガラケーを駆逐したスマフォも既に成熟している。安い端末を生産する中国
企業に追い上げられ、苦境に陥っている。
経済の変化は、極めて速い。今後、同社はどこに進むか?
*大塚家具は、何が失敗だったか?
M&A戦略がれば、別の道があったのではないか?
4. M&Aの対価設定は、いかに算出するのか。
1)株式の場合、上場会社は、マーケット価格があるので、それを基本にする。
企業価値の分析、財務分析は、ターゲットの将来性の見極めに重要!
2)非上場の売り手
①静的に自己評価―売値の算定
・自己評価の基本は、
会社の純資産+のれん
・純資産は、継続企業を前提に評価 Going Concern
・暖簾は、年間営業利益×2~5 年
招来の潜在的な可能性を売り込んで、2年でなく、5年で評価して
もらうことをねらう!
・自社を売る場合は、営業利益の向上に勤め、高く売ること!
3)買い手は、動的に評価すること!
・財務分析は、参考にしかならない。
・M&Aの結果、利益を増加できるか?
シナジーによる効果。
自己の経営努力による効果。
・「売り上」と「売り上げ総利益(粗利)」の予想推値を想定する
最低5年予想値を上げ、予想の損益計算書を作成
・借り入れの返済が、税引き後利益で可能か確認―実質的な、投下資本の利回り
を確認(元本が返済され得れば、純資産が増加するので、利回りは、税引き
後利益をベースにする)
4)上場、非上場に限らず、概算チェックは、EBITDAを使うことが多い
EBITDA:Earnings before Interest, Tax, Depreciation and Amortization
・ EBITDAの4~6倍を、対価の適正額とする実務が多い。
*
2011年8月、キリンホールディングスが、ブラジル2位のスキンカリオール社の
持株会社(約50%保有)のアレアドリ社を約3000億円で買収
スキンカリオール社の連結売り上げ1437億、総資産2247億、連結EBITDA
は256億円
3000÷256=11.7
かなり高い買い物だが?
*有価証券報告書の「のれん代」が、金融庁の審査対象であることに注意!
→オリンパスの粉飾事件で、簿外損失の解消に企業買収が使われたことが大きい。
5)有利子負債をどう扱うか?
*買い手は、これに対し、有利子負債が適正額ならよいが、元利合計金返済額が税
引き後利益を超えるときは、例えば、超過分を、暖簾の計算の営業利益から差し
引く-一般的な企業評価は、借り入れの返済が評価されない。
*有利子負債が大きすぎれば、ファンドと組んで、増資し、debtをequit
yにするか?
*事業譲渡に切り替えて、債務は残す-第2会社方式か?
*不良債権化していれば、債権買い取りか?
*民事再生か?
<暖簾の償却に注意>
暖簾は、20年以内で、償却要す。
IFRSでは、暖簾を消却しない。しかし、IFRSに切り替えるだけでは解決しない-
評価損が厳格という落とし穴がある。
<売り主提示額が高すぎるときの対策>
・出資からスタートし、買い増していく。
・部分的に、事業譲渡、会社分割をする。
・不動産を他社やファンドに買ってもらい、テナントとして、スタートする。
・ファンドとくむ(ファンドが、株式の相当部分を持つ)
<なぜ、対価設定に失敗するのか?>
・企業評価の、数学的アプローチに過信
・基本的な、交渉能力の不足
・戦略的アドバイザ―の不足!
ことに海外は、文化的ギャップまで対処できる力量が必要。
5. 救済型のM&Aの場合
1)第二会社方式が基本形
・第2会社に事業譲渡(会社分割)し、残された会社は、破産でなく、特定調停で、債
権者(銀行)の債務免除を得る処理が可能
・ターゲット企業が、非上場の場合、銀行借り入れに、社長の個人保証が付いている-
この処理が重要。
→「経営者保証のガイドライン」(25年12月)
華美な自宅は残す
破産でなく、特定調停により、債務免除得ることが可能
債権者の全員の同意が必要
全員の同意が取れなければ、破産で免責を得る
2)債権買い取り
・不良債権化しているとき、銀行から、債権を買い取る。
・個人保証も付随するので、社長の個人補償も解決
3)民事再生、会社更正
・スポンサーを用意し、申し立てるプレパッケージが効果的
・申し立てると、弁済禁止の仮処分が付くので、取引先も巻き込む
・債権者の額と人数の過半数の同意で、再生計画、更正計画成立
・経営者の保証は、1と同じ
<失敗で最も多いのは?>
企業再生は、民事再生だけと思いこんでいる弁護士が多いこと!
6.手続き進行中の失敗
ノンネームシートによる相手探し→資料によるターゲットの検討・分析→基本契約→デユ
デリ→本契約→クロージング
1) 誰に頼むか?-仲介、アドバイザーの選任の失敗
・本来、仲介とアドバイザーは異なる。
仲介は、マッチング
財務、税務、法務、戦略のアドバイザー、デュ-デリ担当
・売り側と買い側を一社が担当すると、利益相反になる危険がある。
・ライセンス不要、業法がない。「無法状態」であることに注意―仲介者は、ピンキ
リ-悪質ブローカーの跋扈に注意
・大型物件は、銀行や大手証券会社主導が多いが、自分たちの都合で動かす-M&A
戦略は、自分で考えることが必要-手数料は高い。
・M&Aの仲介業者は、うまみのあるものしか扱わない
・コンサルタントは、会計偏重が多いのが問題
戦略的な、M&Aのコンサルタント不足
・CA,NDA-依頼者と仲介・アドバイザリー、
検討者と売り主
・仲介報酬―規制はない
目安 2億円以下の部分 8%
2~5
6%
5~10
4%
10億超えの部分 2%
2) 価格設定の失敗-売り出し設定価格が高すぎることが多い。
・売り手本人は、高く設定したがる。
・高い値段で、マーケットに出ると、優良な買い手が逃げる
・悪質ブローカーが囲い込む-専任を得たい-高く売り出す
・市場が荒れたときは、一旦撤退する
・買い手は、そのような時は一旦引くが、魅力あるターゲットであれば、買えるチャン
スが出てくるのを、待つべし
3)準備不足によるトラブル
<売り手の対策>
・事前準備が重要
会計、財務諸表の整理
粉飾決済の修正
隠れ債務の発見
魅力的な商品にする:情緒的な国民性から、アピール料が不足することが多い-自社の
営業を商品とみれないことが限界
アピールポイントを明確化:websiteの充実-相手は、まずサイトを見る。
・M&A用の資料の整理-必ず要求される資料、情報は決まっている。
別紙1添付
事前に準備すること-時間がかかると、情報が漏れたりする-相手の意欲が低下するこ
とも、少なくない。
・特許戦略の構築―知財は重要な資産
中堅、中小では、構築できていないことが多い
職務発明者規定の設定―これがないと会社を承継できない。
「相当の対価」のトラブル
(特許法35条1項)
M&Aの成立後、特許侵害のクレームがでて、深刻なトラブルになることが少なくない。
納入先に、特許申請される例あり
・売り上げ、利益が上昇基調になるよう努力する-対価に直接影響する。
低下傾向では、買い手つかないし、叩かれる。
しかし、M&A進行中に、売上減少すること多い
<買い手の準備>
・戦略の明確化
・ターゲット企業の明確化
・スケジュールの設定
・誰に頼むか?
・自分のPR:紙の資料とWEBSITE
売り手も、相手がどんなところか、気にしている。
・借り入れの事前準備-M&Aとタイミングが合っていること。
4)情報が漏れる危険
・M&Aが中断、失敗することがある
・ノンネームシートによる相手探し-どうしても漏れる-売り手にとっては短期決
戦
・ブローカーかがかぎつけて、かき回す
秘密密漏に注意
5)時間がかかる
・日本企業は、決定に時間がかかることで有名!
時間がかかる-M&Aで稟議は致命傷
親会社の了解が必要では、M&Aはやる資格がない!
・専門チームを結成し、取締役会にかけるまでは、担当責任者に決定権与える-稟議廃
止。
情報流失の防止、
・迅速性:優れた Mediator の指導力が必要
必要な資料の整理、提出
早めの、検討
・必要な資料は決まっている。優れた Mediator は、リストを事前に渡し、準備させる。
6)買い取り先の探索中/交渉中に、売上が下がることが多い!
なぜ、売り上げが下がるか!
自分の会社は売れると安心する!
売り上げが下がると、売買価格が落ちることを認識すること!
7)銀行、ファンドとの連携の問題点
・銀行、証券会社にとって、M&Aは美味しい仕事- 取り込まれることに注意
仲介手数料は高い。
・小型案件は、扱わない。
・銀行の評価と、M&Aの評価は異なることに注意。
・ファンドは各種ある。力量はピンキリ。
効果的な提携が出来れば、大きな取引ができる。
・再生案件は、スキームが重要
第二会社か?
再生ファンド?
8)事業譲渡型の問題点
・M&Aは、株式買い取りが原則
・簿外債務の可能性とか、一部の株式買い取りが困難な場合は、事業譲渡を考える-
手続きが面倒。
・財産、権利ごとに、個別の譲渡手続きが必要-基本的には三者契約―対抗要件必要
・譲渡禁止条項に注意(Change of Control 条項)-個別の同意を得る必要がある。
・事業の全部の譲渡の場合、買い手の株主総会特別決議必要(20%ルールあり)。
売り手は、重要な譲渡の場合、株主総会特別決議必要(20%ルールあり)
子会社の譲渡も特別決議(20%ルールあり)
いずれも、 反対株主に、株式買い取り請求権あり
・譲渡対価が買い手会社の株式だと、現物出資となり裁判所に検査役の選任を求める
要あり
・売り主は会社がで、対価は会社が取得-株主は、配当所得で最大税率50%-
株式譲渡なら、分離課税・税率20%ですむ。
9)グループ再編では、税法適格に注意
税法適格でないと、合併、株式交換、株式移転 などの再編の場合、評価替えによる
課税が発生
10)社長同士の顔合わせで失敗例多い!
・双方、または、一方が、オーナー企業であると、交渉が軌道に乗ったところで、社長
同士の顔合わせをする事が多い。
・この時の印象が重要である。いっぺんで破談になることもあり、難しい案件が、軌道
に乗ることもある。
・両者の人柄も含めた、事前準備が重要!
・雰囲気を取り持つ、プレイヤーが必要。
11)基本契約と本契約の狭間の盲点
・基本契約を締結するには、取締役会の決議が必要―上場会社は、適時開示の必要性あり。
・基本契約は、デユデリで特別の問題点がなければ、本契約を結ぶ予約契約-必然的に、独
占交渉権を取得―本契約を拒絶する正当事由がない限り、損害賠償義務を負う-対価を決
め、手付け(対価の10%くらいが多い)を付す。手付け流し、手付け倍返しの特約が多い。
<独占交渉権の限界>
住友信託銀行vUFJ事件:
住友信託銀行とUFJ3社は、合併基本契約をし、M&Aの独占的交渉権取得したが、
UFJ3社は、東京三菱銀行MTFGと合併交渉にはいる。
交渉禁止の仮処分は却下。UFJとMTFGは合併へ。
住友信託銀行はUFJに対し本訴提起、2331億円の損害賠償請求。
平成18年2月13日東京地裁判決は、「独占的交渉権は、合意が成立する可能性がなく
なれば、消滅」として、請求棄却。控訴審で、5億円の和解金で解決。
12)デユデリの基本的ポイントは決まっている。
別紙2参照。
13)買い手は売り手の粉飾決算に注意―M&Aでは利益を多く見せるタイプとなる-発
見のポイントは?
① 減価償却不足、引当金の計上不足
② 棚卸資産では、以下の注意!
売上利益率が前期比で上昇
売上原価率が減少
滞留在庫が減少― 在庫回転期間が短縮
棚卸資産回転率、売り上げ債権回転率の他期との比較
③
売上債権の過大計上
売掛金の増加は、最も容易な粉飾方法
架空売り上げ
翌月売り上げの先取り
在庫回転期間が減少、売上債権期間が延長-売上債権期間の増加招来
期末月の売り上げが異常に多い―翌月期首の売り上げが異常に少ない
期末の売り上げの回収が遅い
④
売上高の過大計上
a.完全架空
在庫品を伝票で売り上げ偽装、借入金を売り上げとして計上
b.未実現売り上げ
販社や代理店の流通在庫へ付け替え、
買い戻し条件付き売り上げ
スル―取引(帳簿を通過するだけ)
クロス取引(二社が互いに売り上げ計上)
本支店間取引として売り上げ計上
役員向けの架空売り上げ
c.翌月売り上げの繰り上げ計上
d.営業外収益や特別利益を売り上げ計上
⑤
その他の流動資産の過大計上
過去と比較し、不自然な増加
* 金融機関の与信判断では、その他の流動資産は、資産性なしとしてBSから
除く
⑥
固定資産の過大計上
a.固定資産の納入業者に過大請求させて、あとから裏金としてバック
b.支払利息を原価算入(不動産開発と自家建設では許される)
c.修繕費を原価算入
d.10万円未満の少額資産を経費でなく、資産へ計上
e.除去済み資産を残す
f.関連会社に対する投資有価証券、長期貸付金、債務保証は、関連会社と一体で検
討
⑦
負債の過少計上
支払利息割引率:支払利息/(期首・期末平均の)借入金 +割引手形
これが、異常に高い時は、借り入れが簿外か、高利の借り入れあり
異常かどうかは、他期の数値と比較
⑧
関係会社を利用
a.関係会社向けの売り上げに注意、
b.有価証券・固定資産の売却益を売り上げ計上
c.経費のつけ回しをして、関係会社向けの貸付とする
⑨
表示上の操作
・流動資産に1年以上の滞留がないかをチェック
・滞留売掛金、滞留買掛金の相殺
・会計方針の変更に注意
a.利益を多くする会計方針への変更
b.減価償却の算出方法を、定率法から定額法に変更―取得当初は、償却費が増
加し、利益を増やせる
c.財務諸表の注記から不自然さを読み取る
d.棚卸資産変化倍率/売上高変化倍率
売り上げ債権変化倍率/売上高変化倍率
仕入債務変化倍率/売上高変化倍率
を他期と比較
14)隠れた債務の発覚
①
雇用関係から
時間外労働、休日出勤などの割増賃料、
未払い賃料
労災の損害賠償
解雇のトラブル
セクハラ、パワハラのトラブル
*顕在化しているものだけでなく、潜在的に存在しているものも注意
②
保証債務等
保証債務、手形の裏書き
売掛が担保になっている
特許等が担保化
②
④
リースバック物件の担保化、証券化
係争中、潜在的な紛争
消費者、 環境、 汚染、 土壌汚染、 アスベスト
⑤ デリバティブの損失
⑥
不良な貸付先
*循環取引で簿外だった等の例あり
⑦
回収不能な売掛
売掛/年間売上が大きすぎる
⑧
談合
贈収賄、
下請け保護法違反、
不正競争防止法違反
に注意。
⑨
税金の未払い
消費税や固定資産税の未納のケースは多い
延滞税は記帳されないことに注意
海外取引の多いところは、移転価格課税に注意
15)表明保証義務の限界
・悪意重過失だけしか責任無し
・MAC条項 Material Adverse Change Clause も万全でない
16)株主主導のM&Aとは?
・株主が、M&A反対を主張する例多い。
・米国では、株主が、経営者の交代を求めて、現経営者にM&Aを求めたり、買い主を募
ったりする例あり-敵対的買収の、裏腹の問題である。
17)独禁法、金商法上の制限を忘れないこと!
・国内売り上げ200億を下回らなく、他方が50億を下回らない場合、独占禁止法上の
問題が生じる-届け出後1ヶ月は、契約できない。
・金商法上の届け出:50名以上へ募集、但し、株式の発行または売り出し価格が1億未
満であれば不要。
7.
クロージング後の問題
本契約の後は、その実行をして(クロージング)、M&Aは、手続きとしては、完遂
する。しかし、その後の問題点も多い。
1) 人のマネイジメントが機能しない
・企業は人だということを忘れるな!
・人が動かない。優秀な人材が流失。
・失敗例
ⅰ.社風の不一致
ⅱ.どちらかの組織が老朽化している
ⅲ.新経営人の印象が悪い(占領軍のように乗り込む)
突然、外国人の役員、従業員が出現する例も増えた。
ⅳ.労働環境が悪くなる印象を与える
ⅴ.能力、実績が評価されない印象
ⅵ.買収会社自身が昔ながらの年功序列
・負の情報が、上に上がらない
・M&A直後は、現場に任すよりトップが目を配る-丸投げで、失敗すること多い
・多角化では、 優秀な経営者を確保し、送り込むことが、決め手のことも多い。
ルノーが、カルロス・ゴーンを送り込む
・残したい人材はストックオプションを活用することもある(優秀な者を好待遇)。
2)取引先の消失
・経営陣の退陣の是非の検討
・営業担当が取引先と結びついていること多い。
・通知、あいさつの手順が重要
8.海外をターゲットとする場合の盲点
・子会社設立、SPCによる三角合併が原則―なれない国の場合、資本提携して、徐々に買
い増すという、方法もある。
・大型は、銀行経由が多い。ただし、中小案件は、扱わない。
・中小は、自力で探すが、支援する専門家が、僅少-相手国の銀行、ファンド、仲介会社に
探してもらう-相手国の税理士事務所、法律事務所が必要
・移転価格課税の問題など、海外案件が後から発生することがある-海外展開しているタ
ーゲットに注意
・支配権が株式の3分の2でなく、4分の3の国が多い
・タックスヘブン課税はないか?
・独禁法、PL法、消費者保護法を忘れないこと!
業社団体の集まりがカルテルの談合と見なされやすい。
中国が、独禁法違反で米半導体大手クアルコムに1150億円の罰金(端末メーカー
に不当に高い使用料)
。
米独禁法違反の罰金は、日本の自動車の部品メーカー(主にカルテ違反)が90%を
占める。
・米国FCPA(海外腐敗行為防止法)や英UKBA(贈収賄防止法)の域外適用に注意!
丸紅事件、パナソニック事件
日本国内では、不正競争防止法違反、株主代表訴訟(住友電工事件)のターゲットに
なるリスクもある