2015年 3月20日 訪問購入業者【(株)ランド】

News Release
平成27年3月20日
特定商取引法違反の訪問購入業者に対する
指示処分について
○ 消費者庁は、「スピード買取.jp」、「着も乃屋」、「宝飾倶楽部」などの
屋号を用いて、訪問購入を行っていた株式会社ランドに対し、本日、特定商
取引法第58条の12の規定に基づき、違反行為の是正を指示しました。
○
○
認定した違反行為は、氏名等不明示、不招請勧誘、書面記載不備、物品の
引渡しの拒絶に関する告知義務違反及び迷惑勧誘です。
処分の詳細は、別紙のとおりです。
1.株式会社ランド(以下「同社」という。)は、新聞やウェブサイトにて「ス
ピード買取.jp」、
「着も乃屋」、
「宝飾倶楽部」などの屋号を用いて広告を出し、
それを見て電話等で連絡をしてきた消費者に訪問の承諾を取り付け、当該消
費者宅において物品の訪問購入を行っていました。その際、消費者があらか
じめ用意していた着物や毛皮等の物品を見た後、唐突に貴金属の買取りにつ
いて勧誘を始め、また、執ように貴金属の買取りについて勧誘を行うなどし
ていました。
2.認定した違反行為は以下のとおりです。
(1)購入業者は、訪問購入に係る売買契約締結の勧誘に先立って、購入業者
の名称、売買契約の締結について勧誘をする目的であること及び勧誘に係
る物品の種類を明らかにしなければなりません。
しかしながら、同社は、電話等で査定依頼のあった消費者宅を訪問し、
消費者があらかじめ用意した着物や毛皮等の物品を見た後、唐突に貴金
属の買取りについて勧誘を行っており、その勧誘に先立って、勧誘に係
る物品の種類を明らかにしないで勧誘を行っていました。
(氏名等不明示)
1
(2)購入業者は、売買契約の締結について勧誘の要請をしていない者に対し
て、営業所等以外の場所において、契約締結の勧誘をしてはいけません。
しかしながら、同社は、消費者宅を訪問した後に貴金属はないかと唐
突に告げており、貴金属の訪問購入に係る売買契約の締結について勧誘
の要請をしていない者に対し、勧誘を行っていました。
(不招請勧誘)
(3)購入業者は、消費者宅において、物品の売買契約を締結した際に、代金
を支払い、かつ、物品の引渡しを受けたときは、直ちに、法令で定める事
項を記載した書面をその売買契約の相手方に交付しなければなりません。
しかしながら、同社が消費者に交付する書面において、以下の記載不備
が認められました。
ア
物品の購入価格について、複数の異なる物品を購入する場合、本件
契約においては、物品それぞれの購入価格を記載すべきところ、まと
めた購入価格しか記載しておらず、記載すべき購入価格が記載されて
いない。
イ
物品の特徴が記載されていない。
(書面記載不備)
(4)売主たる消費者は、クーリング・オフが認められる8日間は、購入業者
に対し物品の引渡しを拒むことができ、購入業者は、物品の引渡しを受け
る時点で、このことを消費者が明確に認識し、引き渡すかどうか判断する
機会を確保するため、消費者に告げなければなりません。
しかしながら、同社は、訪問購入に係る物品の売買契約を締結し、消
費者から直接物品の引渡しを受けた際、クーリング・オフ期間中は、当
該物品の引渡しを拒むことができる旨を消費者に告げていませんでした。
(物品の引渡しの拒絶に関する告知義務違反)
(5)購入業者は、消費者が迷惑を覚えるような仕方で勧誘をしてはいけませ
ん。
しかしながら、同社は、売買契約を締結しない意思を表示している消
費者に対し、
「ひとつくらいならあるでしょう。」、
「何かないですか。」、
「他
にもあるでしょう。見せてくださいよ。」、
「見せるだけでも結構ですから。
何か使っていない物があれば見せてください。」、
「何でもいいので使って
2
いない物を見せてください。」、
「なんとかお願いしますよ。ここまでのガ
ソリン代もかかっているんですよ。」、
「なんとかお願いします。上司に交
渉しますから。」、
「ガソリン代をかけて来たんですよ。このまま手ぶらで
帰ると上司に怒られてしまいます。」と言うなど、執ように、消費者に迷
惑を覚えさせるような仕方で勧誘を行っていました。
(迷惑勧誘)
【本件に関する御相談窓口】
本件に関する御相談につきましては、
消費者庁から権限委任を受けて消費
者庁とともに特定商取引法を担当している経済産業局の消費者相談室で承
ります。お近くの経済産業局まで御相談ください。
北海道経済産業局消費者相談室
電話 011-709-1785
東北経済産業局消費者相談室
022-261-3011
関東経済産業局消費者相談室
048-601-1239
中部経済産業局消費者相談室
052-951-2836
近畿経済産業局消費者相談室
06-6966-6028
中国経済産業局消費者相談室
082-224-5673
四国経済産業局消費者相談室
087-811-8527
九州経済産業局消費者相談室
092-482-5458
沖縄総合事務局経済産業部消費者相談室
098-862-4373
3
(別紙)
株式会社ランドに対する行政処分の概要
1.事業者の概要
(1)名
称:株式会社ランド
(屋号:「スピード買取.jp」・「着も乃屋」・「宝飾倶楽
部など)
(2)代 表 者:代表取締役 荻原 大輔(おぎわら だいすけ)
(3)所 在 地:東京都新宿区荒木町20番地21インテック88ビル
その他、大阪・名古屋・福岡・仙台・広島・高崎等に支店
(4)資 本 金:1000万円
(5)設
立:平成24年3月8日
(6)取引類型:訪問購入
(7)買取商品:貴金属、中古ブランド品、ブランド時計、宝石類、中古衣類、
着物、記念切手等の金券等
2.取引の概要
株式会社ランドは、
「スピード買取.jp」、
「着も乃屋」、
「宝飾倶楽部」等の名
称で、ウェブサイト、新聞広告、チラシ等で、「無料出張査定」、「満足価格」
等をうたい、それを見て電話等で連絡をしてきた消費者に訪問の承諾を取り付
け、消費者宅を訪問し、消費者があらかじめ用意した着物や毛皮等の物品を見
た後、
「貴金属はありませんか。」、
「他に貴金属を見せていただけると、買取額
を○%アップすることができますよ。何でもいいですから見せていただけます
か。」、「上司から連絡が来るまで時間がかかります。少し待っていただいても
いいですか。その間に、宝石類を見せてください。」などと唐突に告げ、貴金
属の買取りに係る勧誘の要請をしていない消費者に対し勧誘を行っていた。
さらに、売るつもりはないと断った消費者に対し、「ひとつくらいならある
でしょう。」、
「何かないですか。」、
「他にもあるでしょう。見せてくださいよ。」、
「見せるだけでも結構ですから。何か使っていない物があれば見せてくださ
い。」、「何でもいいので使っていない物を見せてください。」「なんとかお願い
しますよ。ここまでのガソリン代もかかっているんですよ。」、「なんとかお願
いします。上司に交渉しますから。」、「ガソリン代をかけて来たんですよ。こ
のまま手ぶらで帰ると上司に怒られてしまいます。」などと執ように消費者に
迷惑を覚えさせるような仕方で貴金属の買取りについて勧誘を行っていた。
4
また、物品の売買契約を締結した際交付すべき書面においては、物品の購入
価格をまとめて記載し、物品の特徴を記載していない、不備のある書面を消費
者に交付していた。
また、物品の売買契約を締結し、現金と引換えに物品の引渡しを受けた際、
クーリング・オフ期間中は物品の引渡しを拒むことができる旨を消費者に告げ
ていなかった。
3.指示の内容
(1)訪問購入をしようとするときは、その勧誘に先立って、その相手方に対
し、当該勧誘に係る物品の種類を明らかにすること。
(2)訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に
対し、営業所等以外の場所において、当該売買契約の締結について勧誘を
し、又は勧誘を受ける意思の有無を確認しないこと。
(3)物品の売買契約を締結した際に、その相手方に交付する書面に、以下の
事項について記載すること。
ア 複数の異なる物品を購入する場合、物品それぞれの購入価格
イ 物品の特徴
(4)訪問購入に係る売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受けるときは、
その売買の相手方に対し、クーリング・オフ期間中は、当該物品の引渡し
を拒むことができる旨を告げること。
(5)訪問購入に係る売買契約の締結について、迷惑を覚えさせるような仕
方で勧誘をしないこと。
4.指示の原因となる事実
同社は、以下のとおり、特定商取引に関する法律(以下「法」という。)に
違反する行為を行っており、訪問購入に係る取引の公正及び売買契約の相手方
の利益が害されるおそれがあると認められた。
(1)氏名等不明示(法第58条の5)
購入業者は、売買契約締結の勧誘に先立って、購入業者の名称、売買契
5
約の締結について勧誘をする目的であること及び勧誘に係る物品の種類
を明らかにしなければならない。
しかしながら、同社は、電話等で査定依頼のあった消費者宅を訪問し消
費者があらかじめ用意した着物や毛皮等の物品を見た後、唐突に、貴金属
の買取りについて勧誘を行っており、その勧誘に先立って、勧誘に係る物
品の種類を明らかにしないで勧誘を行っていた。
(2)不招請勧誘(法第58条の6第1項)
購入業者は売買契約の締結について勧誘の要請をしていない者に対し
て、消費者宅などにおいて、契約締結の勧誘をしてはならない。
しかしながら、同社は、消費者宅訪問後に貴金属はないかと唐突に告げ
ており、貴金属の訪問購入に係る売買契約の締結について勧誘の要請をし
ていない者に対し、勧誘を行っていた。
(3)書面記載不備(法第58条の8第2項)
購入業者は、消費者宅において、物品の売買契約を締結した際に、代
金を支払い、かつ、物品の引渡しを受けたときは、直ちに、法令で定め
る事項を記載した書面をその売買契約の相手方に交付しなければならな
い。
しかしながら、同社が消費者に交付する書面において、以下の不備が
認められた。
ア 物品の購入価格について、複数の異なる物品を購入する場合、本件
契約においては、物品それぞれの購入価格を記載すべきところ、まと
めた購入価格しか記載しておらず、記載すべき購入価格が記載されて
いない。
イ 物品の特徴が記載されていない
(4)物品の引渡しの拒絶に関する告知義務違反(法第58条の9)
売主たる消費者は、クーリング・オフが認められる8日間は、購入業者
に対し物品の引渡しを拒むことができ、購入業者は、物品の引渡しを受け
る時点で、このことを消費者が明確に認識し、引き渡すかどうか判断する
機会を確保するため、消費者に告げなければならない。
しかしながら、同社は、訪問購入に係る物品の売買契約を締結し、消費
者から直接物品の引渡しを受けた際、クーリング・オフ期間中は、当該物
品の引渡しを拒むことができる旨を消費者に告げていなかった。
6
(5)迷惑勧誘(法第58条の12第3号及び特定商取引に関する法律施行規
則第54条第1号)
購入業者は、消費者が迷惑を覚えるような仕方で勧誘をしてはならな
い。
しかしながら、同社は、売買契約を締結しない意思を表示している消費
者に対し、「ひとつくらいならあるでしょう。」、「何かないですか。」、「他
にもあるでしょう。見せてくださいよ。」、
「見せるだけでも結構ですから。
何か使っていない物があれば見せてください。」、「何でもいいので使って
いない物を見せてください。」、「なんとかお願いしますよ。ここまでのガ
ソリン代もかかっているんですよ。」、「なんとかお願いします。上司に交
渉しますから。」、「ガソリン代をかけて来たんですよ。このまま手ぶらで
帰ると上司に怒られてしまいます。」と言うなど、執ように、消費者に迷
惑を覚えさせるような仕方で勧誘を行っていた。
5.勧誘事例
【事例1】
平成25年8月、消費者Aは、所有している切手の価値が知りたいと思い、
インターネットで調べた同社へ電話をかけ、
「切手が○万円くらいありますが、
いくらになるか見積りしてほしい。」と依頼した。その後、同社から折り返し
の電話があり、
「明日の午前中に伺いますがよろしいですか。」と言われたので、
Aは了承した。
約束をした日、同社の営業員Zは、Aの自宅に来て名刺を出して挨拶をした
が、査定する物品の種類について言わなかった。Aは最初に、「今お金には困
っていないので、切手を売るつもりはないです。」と言い、切手ファイルをZ
に見せ、
「いくらぐらいになるか見積りをお願いします。」と言った。Zは、
「切
手の買取価格は額面の7割です。」と言い、その後、Zは、自分で何度も同社
に電話をし、切手の価格を確認していたが、査定に時間が掛かり、そのうちに
ZはAに「貴金属はありませんか。」と言った。Aは、家族が所有している貴
金属はあるが、家族が不在なので、貴金属は出せないことをはっきり言ったが、
そのあとも、Zは「記念硬貨はありますか。」と言うので、Aの所有する記念
硬貨を見せた。Zは、そのコインを見て「額面通りの買取りになります。」と
言ったので、Aは「最初から売るつもりもないので、それなら結構です。」と
言い、その話は終わった。
その後も、Zは査定に時間が掛かり、Aは査定の途中で、もう帰ってほしい
ことも言ったが、Zは「新宿からわざわざ来て、経費もかかっているんです。
7
どうしても今日売ってください。」と言い、午後2時半近くになって、
「買取価
格は○○円です。」と言った。Aは、査定だけで午前10時から午後2時半ま
で居座られて、とても疲れたと感じていた。また、食事もとっていないため、
空腹でイライラしていた。Aは「○○円以上と思っていましたよ。」と言うと、
Zは「それでは、○円上げて○○円にしますがどうですか。」と言った。Aが
「一週間待ってください。」と言うと、Zは、
「今日買って帰らないと上司に怒
られます。」と言って粘り、さらに、Zは「今から××市に行かなければなら
ないので、時間がないんです。今日買い取らせてください。」と言った。Aは
査定金額に納得いかなかったが、Zに早く帰ってほしいと強く思い、切手を売
ることにした。
【事例2】
平成25年6月、消費者Bは、
「スピード買取.jp」という同社が運営するホ
ームページ上の「無料出張査定 お申込みフォーム」から査定を申し込んだ。
Bは、着物の査定をお願いしただけで、値段によっては買い取ってもらうのを
やめようと思っていた。翌日に同社から電話があり、電話の男性は訪問日時と
「要らない宝石やアクセサリーがあれば、それも査定しますので、出しておい
てください。」と言った。
約束の日、同社の営業員Yは、「スピード買取のYです。依頼のあった着物
の査定に伺いました。」と言ってBを訪問した。Bは、自宅の座敷にYを上げ、
着物を見てもらった。
査定を終えたYは、何枚か良さそうな着物の写真を撮り、メールで会社の上
司に送信した。そして、「上司から連絡が来るまで時間が掛かります。少し待
っていただいてもいいですか。その間に、宝石類を見せてください。」と言っ
たので、Bは貴金属を数点持ってきてYに見せた。
Yは、持ってきた量りに指輪などを乗せて重さを量り、その後、買取金額を
示した。Bは金の相場も分からなかったが、着物等が高く買い取ってもらえれ
ばいいと思い、Yの言い値で指輪等の貴金属を売ることにした。
すると、Yは、「買取申込書」と「買取確認書」を出して、Bに署名捺印す
るよう求めた。「買取申込書」の品名等の欄は、Yが記入したが、金額は、全
部まとめて書いてあり、それぞれの単価の説明もなく、明細もなかった。Bが
書類を書き終えると、Yは同社に電話をし、この電話をBに替わると、電話口
の女性は、いくつかの項目を読み上げて、「はい。ありがとうございました。」
と言った。
その後、BはYから買取代金を現金で受け取った。この時、Yから、クーリ
ング・オフ期間中は、買い取った物品を手元に置いておけるという説明はなく、
8
Bは、Yに品物を引渡した。
その後5分ぐらいして、Yは、着物の査定について「たった今、上司から連
絡がありました。全部でまとめて○○円です。」と言った。Bは、Yの示した
金額を聞いて、それはあんまりではないかと思い、「じゃあ、もういいです。
売りません。お引き取りください。」と言うとYは、帰って行った。
【事例3】
平成25年11月、消費者Cは、使わない着物を処分しようと、新聞広告の
フリーダイヤルに電話をした。「新聞広告を見ました。着物を見にきてもらえ
ますか。」と電話の女性に言った。すると女性は、
「今日の午後1時ごろに伺い
ますがいいですか。」と言ったので了承した。
その日の午後、同社の営業員XがC宅を訪問し、「電話を頂きましたので、
着物の買取りで参りました。」と言った。Xは、玄関先に用意してあった着物
や帯の査定を始めたが、自分の携帯電話で高価な着物1点だけ写真を撮り、会
社へ送っていたようだった。査定の結果が出て、着物等数点を買い取ることに
なったが、その買取金額も言わないうちに「貴金属はないですか。」と言った。
Cは数年前に貴金属を売っていたので、売る貴金属はないとXに話したが、X
は「ひとつくらいならあるでしょう。」、
「何かないですか。」などとしつこく言
ったので、Cは母の形見の品をXに見せたが、Xは重さも量らず、よく見もせ
ずに「他に貴金属はないですか」、
「他にもあるでしょう。見せてくださいよ。」
としつこく言うので、金色の杯や、金色の朱肉ケースなどをXに見せたが、X
は「こちらは全て偽物ですね。」と言った。結局、形見の品一つだけ買い取る
ことになり、Xから買取代金を受け取った。この時、Xからクーリング・オフ
の期間中は、物品を手元に置いておくこともできるという説明はなかった。
【事例4】
消費者Dは、持っていた切手シートの価値を知りたいと思い、インターネッ
トで調べた「スピード買取.jp」というホームページの「無料出張査定 お申
込みフォーム」で申込みをした。
平成25年7月、同社から電話があり、査定に来てもらうことにした。約束
の日、同社の営業員Wは、自宅のインターフォン越しに、「スピード買取.jp
のWです。切手の査定と伺っていますが。」と言ってD宅を訪問した。玄関に
通すと、Wは、Dが用意していた切手を一目見て、どこかに電話をしてから、
査定金額を言ったが、その金額の低さにDは驚き、「その値段だと売るつもり
はありません。」と断った。すると、Wは、
「他に貴金属を見せていただけると、
買取額を○%アップすることができますよ。何でもいいですから見せていただ
9
けますか。」と突然言った。売るつもりはなかったので、「ありません。」と言
うと、Wは、「せっかく、東京からここまで来たので、何でもいいのですから
見せてもらえませんか。ちょっとアップできるかもしれませんよ。」、「ガソリ
ン代がかかっているんですよ。」と続けて言った。Dが「使っていないものは
ありませんから。」と再び言っても、Wは「見せるだけでも結構ですから。何
か使っていない物があれば見せてください。」、「何でもいいので使っていない
物を見せてください。」と、何度も繰り返して言った。DはしつこくWに言わ
れ、早く帰ってほしいという気持ちで、アクセサリー数点を見せると、Wは、
刻印等を見たり、その重さを量ったりした後に、
「全部で○○円でどうですか。」
と提示してきた。Dは、その値段を聞いて、「そんな値段なら売るつもりはあ
りません。」とはっきり断った。Wは「なんとかお願いしますよ。ここまでの
ガソリン代もかかっているんですよ。」と、また、ガソリン代の話をした。D
は「売るつもりはありません。」と断ると、Wは、
「なんとかお願いします。上
司に交渉しますから。」と言って、またどこかに電話をしていた。そして、電
話を終えると、
「全部で○○円でどうですか。これが限界です。」と言った。提
示された○○円のうち、物品ごとにいくらであるかの説明はなかった。それで
も、Dが承知しないと、Wは、「ガソリン代をかけて来たんですよ。このまま
手ぶらで帰ると上司に怒られてしまいます。」と繰り返した。Dは、買い物に
も行きたいのを邪魔され、いい加減帰ってほしいと思った。余りに執ように同
じ話を繰り返すWに、Dは、この人は、この値段で折り合わないと帰ってくれ
ないと思い、買取りを了承した。契約書面を2枚渡され、電話で同社の女性と
契約内容の話をした。
その後、Dは2つの書類の控えと買取金額を受け取り、Wは貴金属を受け取
って帰った。Wから、クーリング・オフ期間中は、売った品物を引き渡さない
でもよいという説明はなかった。Wが帰ったのは、午後4時を過ぎており、3
時間余り自宅にいたことになる。
【事例5】
平成26年5月、消費者Eは自宅に投函された同社の「スピード買取.jp」
というチラシを見て、着物をいい値段で買い取ってくれるものと思い、チラシ
に記載されたフリーダイヤルに電話をした。Eは、電話に出た女性に、「着物
と帯がいくつかあるので見てほしい。」と言い、営業員が自宅に来てくれるこ
とになった。Eは、まず、査定をしてもらって、それから売るか売らないかを
考えようと思っていた。
数日後、同社の営業員Vが、「スピード買取」と書かれている車で、E宅を
訪問してきた。Eは、Vを家に上げると、Vは、Eに何の断りもなく、部屋に
10
あった箪笥の引き出しを開けて、中の着物を取り出して、着物や帯を一つ一つ
携帯で写真に撮り、どこかに送って電話をする作業を続けた。
その後も、Vから着物と帯の査定額の説明はなかったが、Eが冷たい物を用
意したので台所に案内したところ、Vは、台所のテーブルの下の箱にあったア
クセサリーに気づき、いつの間にか、中を出して見始めた。そして、査定価格
の提示もなく、考える暇もないままに、Eは着物とアクセサリーのいくつかを
買い取られることとなった。
Vは、契約書類の控えと買取代金をEに渡すと、買い取った物を持って帰っ
ていった。買取承諾書には、品名と金額が書かれていたが、買取物品の内訳が
書かれておらず、実際には何を買い取ってもらったのか分からない状態だっ
た。
11