新製品/新技術紹介 Degassing Module for Ink Jet Printer “SEPAREL® EF-MICRO” Series インクジェットプリンター向け脱気モジュール「SEPAREL® EF-MICRO」シリーズ メンブレン本部 菅沼 洋平,菅沼 俊和 <開発の背景> <製品の特徴> 脱気モジュールとは,中空糸膜を介して,液中に 本製品は,各種インクジェットプリンター搭載用 存在する溶存気体,気泡等の気体を除去するための に,性能,大きさなどを最適化した膜面積の異なる 製品です。使用例としては,ボイラー給水からの脱 3種類の製品“EF-MICRO”,“EF-G2”,“EF-G3”が 酸素,超純水製造工程での脱酸素・脱炭酸・脱窒素 あります。以下に主な特徴を示します。 などの超脱気,ジェットインクカートリッジへのイ ンク充填時のインクの脱気・脱泡などがあります。 それらの中で,近年需要が拡大している用途がジ ェットインクからの脱気です。 ● 小型化 Table 1に本製品と従来モジュールの比較を示しま す。従来品と比較して“EF-MICRO”は1/10, “EF-G2” インクジェットプリンターではインク中の溶存気 は1/5,“EF-G3”は1/2の大きさ(体積比)に小型化さ 体がヘッドの吐出運動の際に気泡化し,その気泡が れています。これにより,限られた小さなスペース 原因で生じる印字抜けなどの印刷不良が発生する問 に搭載するというニーズに対応できます。 題があります。その解決方法として,インクを脱気 Table 1 モジュール寸法 することが有効で,カートリッジへのインク充填時 に脱気を行う方法が一般的に用いられています。 膜面積 [m2] モジュール体積 [mL] 使用流量域 [mL/min] EF-MICRO 0.018 35 0.5∼10 EF-G2 0.06 70 1.0∼60 しかし,従来の印刷方法からインクジェット方式 へ印刷技術の転換が進む中,産業用ワイドフォーマ ットプリンターではより高画質・高速化が求められ, 脱気インクを充填したカートリッジを使用しただけ では気泡除去が十分ではなく,これらの品質要求に EF-G3 0.2 200 5∼300 従来品(PF-001D) 0.4 410 5∼1000 答えることができなくなりました。そこで,連続的 に脱気・脱泡されたインクを供給できるシステムを プリンター自体に搭載することが必要になりました。 ● 最適な脱気性能 プリンター搭載に適したモジュールは圧力損失が低 Fig. 2に本製品と従来モジュールのUVインクからの くかつ小型であることが必須条件であり,従来品の 脱気性能を示します。なお脱気性能は下式で表すこ ままでは使用できないことから,プリンター搭載用 とができ,脱気率が高いほど性能が良いことを表し 小型低圧損モジュールの開発を行いました。 ます。 以下に,プリンター搭載に適した,小型・低圧損 タイプの脱気モジュール“SEPAREL EF-MICRO”シ リーズを紹介いたします(Fig. 1)。 脱気率 =(1-(処理水DO値/原水DO値))×100 ※ DO = 溶存酸素 インクの種類(水系インク,UVインク,溶剤系イ ンク)及びプリンターの仕様により,求められる脱 気性能は異なります。脱気率は流量と真空度により 変化しますので,製品選択と運転条件の組み合わせ で,幅広い使用条件での適用を可能にしています。 ● 低圧力損失 Fig. 3に本製品と従来モジュールの圧力損失を示し ます。従来品と比較すると“EF-MICRO”では1/3に, Fig. 1 脱気モジュール写真 54 “EF-G2”,“EF-G3”においては1/10以下の圧力損失に DIC Technical Review No.14 / 2008 新製品/新技術紹介 Fig. 4 当社中空糸の構造 Fig. 2 脱気性能グラフ Fig. 5 脱気性能の経時変化 Fig. 3 圧力損失グラフ 初期の性能低下は見られますが,1か月以降は安 定した脱気性能を示しています。また,試験後のモ なっていることが分かります。 ジュールに破損などは見られませんでした。 これはモジュール構造を圧力損失の低い外部灌流 方式に変更し,更に圧力損失が生じる原因となる給 水管を排除することにより実現しました。 <将来の展望> 今回紹介した超小型低圧損タイプの脱気モジュー ルは,これまでにないユニークな特徴を持った製品 ● 長寿命 です。産業用インクジェットプリンターの高品質化 モジュールに使用している中空糸は当社独自の中 が進むにつれ必須アイテムになりつつあり,需要拡 空糸であり,Fig. 4に示す構造をしています。表面に 大が期待されます。当社は,今後の需要増に対応し スキン層を有しており,インクなどの表面張力の低 た生産体制の確立を進めて行きます。 い液体の脱気にも長期間耐えられます。 また,外部灌流方式を採用したことにより,膜と 液体の境界部分が乱流域になります。それが膜表面 でのインクのゲル化を防ぎ,脱気性能を安定させる お問い合わせ先 と考えられます。UVインクでは6か月,水性インク 千葉工場 では12か月まで連続使用可能です。例としてFig. 5に メンブレン生産・技術部 UVインク連続脱気運転時の脱気率の変化を示します。 TEL : 0436-41-4549 DIC Technical Review No.14 / 2008 55
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