『最新第2版 戸籍の知識123問』正誤表

最新〔第2版〕
戸籍の知識123問
お詫びと訂正
本文中,以下の箇所につき誤りがございましたので,ここにお詫びして
訂正いたします。
●356 ─ 357頁 Q67 「養父と実母が離婚した後に,養父と養子が離縁す
る場合の協議離縁届者について」
当問につき,参考先例含め全体的な修正となりますので,次葉以降の内
容として差替えいたします。
●530頁 14行目括弧書き部分の削除。
「
(コンピュータ処理による戸籍事項証明書には,更正事項は出力されま
せん。
)
」を削除。更正事項が出力されないのは,職権訂正の場合のみであ
り,出力されないのであれば,再製の手続も必要ありません。
356
第2部 各 論 ╱ 第4 養子離縁
▶ 養父と実母が離婚した後に,養父と養子が離縁する場合の離
縁協議者について
Q67
A女は,甲男との間に長男C(嫡出子)をもうけた後離
婚し,B男と再婚しました。次に,B男とCが養子縁組
(代諾者親権者A女)をしています。
その後,A女とB男は,Cの親権者をB男と定めて離婚
をしましたが,今般,B男とC(15歳未満)が養子離縁を
するに当たり,だれが離縁協議者になるのでしょうか。
A
養子が15歳未満であるときは,その離縁は,養親と養子の離
縁後に法定代理人となるべき者との協議ですることになります
(民811条2項)。
本件の離縁協議者は,離縁により親権者が不在となるので,
Cの未成年後見人となるべき者を選任し,その者が離縁協議者
となるか,A女が離縁の前に親権者変更の調停又は裁判を経て
親権者となり離縁協議者となります(平成22年8月19日民一2035
号回答)
。
【本件養子縁組関係図と離縁協議者】
①婚姻
甲男
④再婚
A女
③離婚
B男
⑥離婚 (Cの親権者はB男)
②出生
長男C
(15歳未満)
⑤養子縁組
⑦養子離縁
→離縁協議者はだれ?
養父と実母が離婚した後に,養父と養子が
Q67
離縁する場合の離縁協議者について
本件離縁協議者
①家庭裁判所が選任した未成年後見人
②A 女が離縁の前に親権者変更の調停・裁判を
経て親権者となっていればA女
解 説
1 長男Cの法定代理人
まず,長男Cは,甲男とA女の嫡出子ですから,甲男とA女の婚姻中はそ
の共同親権に服していたことになります(民818条1項・3項)。その後,甲
男とA女が離婚する際に,Cの親権者をA女と定めたものと考えられます。
なぜならば,上記相談内容から,長男CがB男と養子縁組をする際に代諾者
が実母であるA女とされているからです。
次に,B男と養子縁組をしたときの親権者を見てみますと,この時点にお
いては,既にB男とA女は婚姻していますので,Cは,養父B男と実母A女
の共同親権に服します(民818条2項)。そして,相談内容のとおり,B男と
A女が離婚をする際には,Cの親権者をB男と定めていますので,長男Cの
法定代理人はB男ということになります。
2 本件離縁協議者
本件では,A女とB男が離婚の際にB男を親権者としていることから,そ
の後の離縁によって,A女の親権が当然に復活し,A女が離縁後に法定代理
人になるべき者となるかが問題となります。
これについては,従来,養子縁組によって生じた効果は離縁によって消滅
することを理由として,離婚の際に養親が親権者と定められていたときは,
その養親との離縁によって縁組前(縁組の際)の実親の親権が復活するとし
て取り扱われてきたところ,平成22年に先例が変更され,離婚の際に親権者
とならなかった実親の親権は復活しないとされたため,親権者がいなくなっ
てしまうことから,未成年後見人を選任し,未成年後見人が離縁協議者とな
ることとされました(平成22年8月19日民一2035号回答)。
なお,A女が離縁の前に親権者変更の調停又は裁判を経て親権者となるこ
357
第2部 各 論 ╱ 第4 養子離縁
とにより,A女が離縁協議者となることもできます。
3 先例(平成22年8月19日民一2035号回答)の考え方
実親夫婦の離婚後において,親権者となった者が親権を行使することがで
きなくなった場合には,他の実親が当然に親権者になるものではなく,親権
者変更の調停・審判を経て親権者を変更するか,そうでなければ,未成年後
見が開始すると解されています。
また,実親と養親が婚姻した場合には,養子は両人の共同親権に服すると
解されています(昭和24年2月12日民事甲194号回答)。
そして,実親と養親が協議離婚する際には,実親夫婦が協議離婚する場合
と同様に,婚姻解消の規律により親権者を定めることから(民819条1項),
実親と養親との離婚の際に定めた親権者が親権を行使できなくなった場合に
ついても,実親夫婦が離婚する場合と同様に考えることが相当であるとされ
ました。