中古品ゲームソフトの流通が ビデオゲーム市場に与える影響について 【要旨】 2002 年(平成 14 年)最高裁判決によって、ゲームソフトの中古品販売が著作権侵害に 該当しないと判断されたが、これは統計的分析によってなされたものではない。そこで本 稿は、中古品ゲームソフトがビデオゲーム市場に与える影響について、新作ソフトのタイ トル数及びハード(ゲーム機)の販売台数に注目し,計量経済学に基づく統計的分析手法 を用いて検証を行う。そして、その検証結果によって、中古品ゲームソフトの流通が及ぼ す影響について考察し、デジタルコンテンツたるゲームソフトの著作権保護のありかたに 関する今後の方策について提言を行う。 2011 年(平成 23 年)3 月 政策研究大学院大学政策研究科 知財プログラム MJI10040 岡 正悟 目次 1. 2. はじめに ................................................................................................................ 1 1.1. 研究の目的 ...................................................................................................... 1 1.2. 先行研究と本研究の位置付け .......................................................................... 1 1.3. 論文の構成 ...................................................................................................... 2 ゲームソフトの中古品問題 .................................................................................... 3 2.1. 問題の背景 ...................................................................................................... 3 2.2. 頒布権(著作権法 26 条)について ................................................................. 4 2.2.1. 頒布権の定義 ............................................................................................ 4 2.2.2. 頒布権の趣旨 ............................................................................................ 4 2.2.3. 中古品ゲームソフトと頒布権 ................................................................... 5 2.3. 3. 一連の訴訟の経過と最高裁判所判決 ............................................................... 5 2.3.1. 概略 .......................................................................................................... 5 2.3.2. 各判決について ........................................................................................ 6 2.3.3. 映画の著作物性について .......................................................................... 6 2.3.4. 頒布権の有無について .............................................................................. 7 2.3.5. 消尽理論について ..................................................................................... 7 2.3.6. 最高裁判決の法律学的観点からの評価 ..................................................... 7 中古品ゲームソフト流通の影響の検証................................................................... 8 3.1. 最高裁判所の判断の問題点.............................................................................. 8 3.2. 中古品ゲームソフトの流通が与える影響の考察 .............................................. 8 3.2.1. two-sided market(両面市場)におけるネットワーク効果 ..................... 8 3.2.2. 中古品ゲームソフトの流通による影響のトレードオフ ............................ 8 3.3. 分析方法 .......................................................................................................... 9 3.4. 新作ソフトのタイトル数への影響についての実証分析 ................................. 11 3.4.1. 推定モデル ............................................................................................. 11 3.4.2. 3.5. 4. 推定1(新作タイトル数への影響)の結果 ............................................ 13 ハード販売台数への影響についての実証分析 ............................................... 14 3.5.1. 推定モデル ............................................................................................. 14 3.5.2. 推定2(ハード販売台数への影響)の結果 ............................................ 15 3.6. 分析結果の考察 ............................................................................................. 16 3.7. 分析の課題 .................................................................................................... 17 政策的含意と今後の課題 ...................................................................................... 19 4.1. 政策的含意 .................................................................................................... 19 4.2. 今後の課題 .................................................................................................... 19 1. はじめに 1.1. 研究の目的 ゲーム産業の歴史は、1970年代のアーケードゲームから立ち上がったといわれ、1980年 代に日本で普及した家庭用ビデオゲームによってその地位を確立した。いまやビデオゲー ムはハード、ソフトとも年間出荷金額は海外向けが国内向けを大きく上回り1、わが国のゲ ーム産業は、コンテンツ産業最大の輸出産業として日本経済の発展に寄与している。 しかし、国内のビデオゲーム産業の市場規模は、1990年代後半をピークにその後減尐傾 向が続いた。メーカー側は、その原因の1つとして中古品ゲームソフトの流通があると考 え、中古品ゲームソフトの流通を抑制しようという行動を起こすこととなる。これが、著 作権法上の問題とされ、訴訟で争われることとなった。いわゆるゲームソフトの中古品問 題である。 この問題は、2002 年(平成 14 年)最高裁判決2によって、ゲームソフトの中古品販売が 著作権侵害に該当しないと判断され、一応の決着を迎えた。 しかし、この一連の訴訟における最高裁判所を含む各裁判所の判断は、統計的分析に基 づいてなされているとはいえない。中古品ゲームソフトが流通することによってビデオゲ ーム市場にどのような影響を与えているのかについて、正確な現状認識を行い、そのうえ で、制度設計をする必要があると考える。 そこで本稿は、中古品ゲームソフトがビデオゲーム市場に与える影響について、新作ソ フトのタイトル数及びハード(ゲーム機)の販売台数に注目し,計量経済学に基づく統計 的分析手法を用いて検証を行う。そして、その検証結果によって、中古品ゲームソフトの 流通についての影響を考察し、デジタルコンテンツたるゲームソフトの著作権保護のあり かたに関する今後の方策について提言を行う。 本稿の分析の結果、中古品ゲームソフトの流通は、新作ソフトのタイトル数とハード(ゲ ーム機)の販売台数の両面にそれぞれ影響があり、中古品ゲームソフト販売本数が 1%減尐 すると、新作ソフトのタイトル数は 0.370%増加し、ハード(ゲーム機)の販売台数は 0.154% 減尐するという効果があることがわかった。このことから中古品ゲームソフトの流通が増 加(減尐)すると、新作ソフトのタイトル数は減尐(増加)し、ハードの販売台数は増加 (減尐)するという、トレードオフの関係になっているということが明らかになった。 1.2. 先行研究と本研究の位置付け 著作権を含む知的財産権においては、事前のインセンティブ確保と事後のアクセス確保 のバランスが重要となる3。 なかでも権利保護期間については、保護期間と消尽理論とに関係して、特にゲームソフ トのようなデジタル著作物においては、法的な保護と技術的保護手段についてどのように バランスをとるかという重要な論点があり、これについては「技術的保護手段が真に効果 1 ㈳コンピュータエンターテインメント協会「2010 CESA ゲーム白書」 。 最高裁平成 14 年 4 月 25 日判決。東京、大阪訴訟とも同日。大阪訴訟について民集 56 巻 4 号 808 頁・ 判時 1785 号 3 頁。以下本稿において「最高裁判決」とは、特に断りがない限り当該最高裁判決をいう。 3 Arrow K J. (1962) “Economic Welfare and the Allocation of Resources for Invention,” in R. R. Nelson ed., The Rate and Direction of inventive activity, Princeton University Press. 2 1 的になると、その保護期間が知的財産法の条文にある保護期間と一致しなくなってしまう だろう。 」4との指摘がある。 また、田村(2003) 5は、技術革新により契約による価格差別が可能であるならば経済的厚 生の増大につながるとする考え方があるが、これと伝統的な著作権法の枠組みの比較につ いてどちらが効率的であるかは、いまだ確定的な研究はされていないとしている。 海外では中古品ゲームソフトの流通自体が法律上の問題となることは尐ないため、中古 品ゲームソフトの流通がどのような影響を与えるかという観点からの研究は尐ないが、ゲ ームソフトに関しては、ネットワーク効果についての研究がなされており、Shapiro and Varian (1998) 6は、ゲームソフトなどの補完品の間接ネットワーク効果について、 Matthew. T Clements and Hiroshi Ohashi (2005) 7は、アメリカ国内におけるゲームソフトのネット ワーク効果について論じている。他に、Claussen, Jörg, Kretschmer , Tobias and Spengler, Thomas (2010) 8は、ゲームソフトの世代間互換性の効果について論じている。 他方、国内では、神(2002) 9、(2005) 10が著作物の中古市場について、Takahashi (2004) 11 では、中古品ゲームソフトに関する最適な著作権保護について、田中 (2003) 12では、ハー ドと新品ゲームソフト間のネットワーク外部性の実証について、石岡 (2004) 13が消尽理論 について法と経済学の見地から論じている。 以上のように、様々な観点からゲームソフトに関する経済学的分析がなされているもの の、中古品ゲームソフトの流通がビデオゲーム市場に与える影響について実証的な評価は なされていない。そこで本稿では、中古品ゲームソフトの流通が、新作ソフトのタイトル 数及びネットワーク効果を通じたハード(ゲーム機)販売台数への影響について実証的に 分析を行う。 1.3. 論文の構成 本稿では、第 2 章で、ゲームソフトの中古品問題の背景、この問題が法律的側面から争 われることになった著作権法上の問題及び裁判の経過と裁判所における判断について概観 する。第 3 章では、中古品ゲームソフトの流通が、ビデオゲーム市場においてどのような 影響を与えているかについて実証分析を行い、実証分析の結果とその考察を行う。第 4 章 では、第 3 章の結果を踏まえて、今後の制度設計のあり方と今後の課題について述べる。 スザンヌ・スコッチマー (2008) 「知財創出 イノベーションとインセンティブ」日本評論社。 田村善之 (2003)「市場・自由・知的財産」有斐閣。 6 Shapiro,C. and H.R. Varian.(1998) “Information Rules”, Harvard Business School Press. 7 Matthew T. Clements & Hiroshi Ohashi, (2004) “Indirect Network Effects and the Product Cycle: Video Games in the U.S. 8 Claussen, Jörg & Kretschmer, Tobias & Spengler, Thomas, (2010). "Backward Compatibility to Sustain Market Dominance – Evidence from the US Handheld Video Game Industry," Discussion Papers in Business Administration 11499, University of Munich, Munich School of Management. 9 神隆行 (2002)「中古市場をともなう著作物の市場均衡」 大阪学院大学経済論集 16(1-3), 33-55. 10 神隆行 (2005) 「著作物の新たな中古市場について」龍谷大学経済学論集 45(2), 61-75. 11 Takahashi,S. (2004) “Optimal Copyright Protection on Second-hand Game Software”「法と経済学研 究」第1巻第1号、pp575-585. 12 田中辰雄 (2003) 「ハード・ソフト間のネットワーク外部性の実証」 新宅・田中・柳川「ゲーム産業 の経済分析 コンテンツ産業発展の構造と戦略」第2章 東洋経済新報社。 13 石岡克俊 (2004) 「消尽理論の法と経済学」林ほか「著作権の法と経済学」第 6 章 勁草書房。 4 5 2 2. ゲームソフトの中古品問題 2.1. 問題の背景 一般的に中古品市場が形成されるのは、「その物を手元においておきたいというインセン ティブがなくなるから」である14。これは、リサイクルショップで売られている物や中古自 動車など、そしてゲームソフトであっても同じことである。ゲームソフトの内容であるゲ ームの情報は、そのゲームをクリアしてしまえば手元に置いておく必要性は低くなる。 ところでゲームソフトは、一般的な耐久財とは異なる情報財という特質をもっていると いえる。デジタル化された著作物では、目的とする著作物の劣化が非常に尐なく、媒体た る有体物の中古性が直接には情報の内容である著作物に対して意味をもたない。このこと は消費者にとって新品と中古品の区別が非常に小さくなることを意味する15。 土地やダイヤモンドなど品質が劣化しないと考えられる物は、新品と中古品の差がない のであるから、取引において中古品というものは考えられず、中古品市場というものは想 定されないはずである。しかし、ソフトの内容自体は劣化することはないとしても、パッ ケージその他で中古品と新品は差異が生じるのであり、その事情は一般的な財と異なるこ とはない16。 著作物の使用に劣化が影響するならば、著作物の供給側は、新品と中古品で差別化を図 ることができるから中古品の流通による経済的な損害感は小さいだろうが、デジタル著作 物はそうした中古性が非常に小さいことから、供給側は同一の製品について新品と中古品 の差別化を図ることが難しく、経済的な損害感を生じることから中古取引を抑制しようと いう行動にでると考えられる17 18。製作者側は、この中古品市場の存在を前提に価格設定を 行うことは可能ではあるが、消費者にとって新品と中古品の区別が小さいと製作者側の利 潤は下がると考えられるからである19。 この中古取引を抑制しようという行動について法律的側面からは、著作権法上の頒布権 (著作権法 26 条)の侵害として争われた。中古品販売業者に対してその販売差止訴訟がゲ ームソフト製作者側からなされることとなった20。 これがいわゆるゲームソフトの中古品問題の背景である。 14 岡本薫(2010) 「誰でも分かる著作権法 2010 年版」240-241 頁。例えば、 「推理小説」は結末がわかっ てしまうと 2 度読む人は尐ないが、 「聖書」 「学術書」を中古市場に売る人は尐ないだろう。 15 他にも、ゲームソフトは、経験財であることや(実際にゲームで遊ぶまでそのゲームソフトの評価がわ からない。 ) 、製作の固定費用が大きく、複製の限界費用が小さい(初期投資後は、かなりの安価で財を生 産できる。 )などの特徴がある。また、例えば小説の結末のように、一度知ってしまった情報を知らなかっ たことに、情報を元に戻すことはできないから、ゲームソフトのような情報財には取引の不可逆性がある ということもできる。 16 田村善之 (2006)「知的財産法第四版」有斐閣 430 頁。 17 前掲 神 (2002)。 18 このことは、価格差別論において裁定取引がないことが前提条件となっていることとも関連付けられる。 この場合、中古市場による取引が裁定取引にあたる。 (小島立 (2005) 「情報取引の形態に関する基礎的考 察--サイバースペースにおける情報財の保護と自由利用、その法的規整」知財研紀要 14, 106-110.) 19 Michael Waldman (2003) “Durable Goods Theory for Real World Markets,” Journal of Economic Perspectives,17,No1,pp131-154. 20 訴訟に関わったメーカーは、カプコン、コナミ、スクウェア(現スクウェア・エニックス) 、ナムコ(現 バンダイナムコゲームス) 、ソニー・コンピュータエンタテインメント、セガ、エニックス(現スクウェア・ エニックス)の 7 社(当時) 。 3 2.2. 頒布権(著作権法 26 条)について ここで、中古品ゲームソフトに関する一連の訴訟においてその適用が争われた著作権法 の頒布権について簡単に俯瞰することにする。 (頒布権) 第 26 条 2 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複 製物により頒布する権利を専有する。 2.2.1. 頒布権の定義 頒布権は、 「映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する」と規定されてお り「映画の著作物」21にのみ認められる。 ここでいう「頒布」は、有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡 し、又は貸与することをいう(2 条 1 項 19 号)。また、公衆に譲渡又は貸与しない場合であ っても、公衆に提示することを目的として、特定尐数の者に対し映画の著作物を譲渡また は貸与することも、 「頒布」に含まれる(2 条 1 項 19 号後段)。 つまり、一般の著作物の頒布とは複製物を「公衆に」譲渡・貸与することであるのに対 し、映画について一本のフィルムを「特定人」に譲渡・貸与する場合であっても、「公衆に 提示することを目的」としていれば頒布に該当する。 頒布権者22は著作物の複製物の譲渡・貸与先を指定・限定することができるため、例えば、 譲受人を指定したり、頒布出来る範囲をある地域(東京都内など)に限定したり、数ヶ月 といった限定した期間だけ頒布を認める等、事実上、中古品市場を含めて、流通をコント ロールできる権利であるとされる。 2.2.2. 頒布権の趣旨 劇場用映画業界の慣行であった配給制度(大量の複製物を投入するのではなく、尐数の プリントフィルムを作成し、それを特定の映画館に配給するというフィルムの流通をコン トロールにより高額の投資を回収するシステム)が法的に制度化されたのが頒布権である とされる23。 なお、頒布権の規定は劇場用映画の配給制度を前提に置いた規定であるが、映画著作物 には映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されるものも 含まれるため(2 条 3 項) 、形式的には映画に類似するものにまで頒布権が認められること になる。 21 映画の著作物の定義は 2 条 3 項に定められている。次節頒布権の趣旨参照。 頒布権を行使できるのは、映画著作物の原著作物の著作権者(28 条、26 条 1 項) 、映画著作物の著作者 (16 条、26 条 1 項) 、および映画著作物の著作権者(29 条、26 条 1 項)のほか、映画著作物において複 製されている著作物の著作者(26 条 2 項)である。 23 1970 年(昭和 45 年)に現行著作権法の制定の際に規定された。後述東京地裁判決(H11.5.27 判時 1679 号 3 頁)理由中参照。 22 4 2.2.3. 中古品ゲームソフトと頒布権 頒布権は、①劇場用映画を前提に規定され、②劇場用映画業界の慣行であった配給制度 を保護するため、流通のコントロールを認めた、というのが制定当初の趣旨であったとい える。 この頒布権が、なぜゲームソフトの中古品問題でその解釈が問題になるのかであるが、 ゲームソフトの中古品問題が生じるよりも前に、ビデオゲームの映画の著作物性について 争われたリーディングケースとして、いわゆるパックマン事件判決(東京地裁昭和 59 年 9 月 28 日判決・判時 1129 号 120 頁。)がある24。この判決では、ゲームソフトは映画の著作 物であると判断し25、以後、ゲームソフトは原則として映画の著作物として解釈されている。 このようにゲームソフトは映画の著作物にあたるとされると、映画の著作物に認められ る頒布権が中古品ゲームソフトとの関係で、どのように適用されるかが問題となる。 2.3. 一連の訴訟の経過と最高裁判所判決 2.3.1. 概略 前節で述べたように、ゲームソフトが映画の著作物に当たるという解釈がなされている ことを前提に、一連の訴訟では、低価格の中古品ゲームソフトが大量に流通すると新品の 売上に影響が出るとして、ゲームソフト製作者が中古販売業者に対して、「映画の著作物」 に認められる頒布権を行使することができるのか(ゲームソフトの流通をコントロールで きるのか)が争われることとなった。訴訟は東京地裁と大阪地裁で提起された。東京の訴 訟では、ソフトメーカーであるエニックスに対し、中古販売業者の上昇が著作権の中古品 販売差止請求権の不存在確認を求めて、大阪の訴訟では、ソフトメーカー6 社(カプコン、 コナミ、スクウェア(現スクウェア・エニックス) 、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)、 ソニー・コンピュータエンタテインメント、セガ)が中古販売業者のアクト及びライズに 対し、中古品の販売の差止め及び廃棄を求めてなされた。 一連の訴訟では、①頒布権は映画の著作物にのみ認められているため、ゲームソフトが 「映画の著作物」にあたるのか。②ゲームソフトが映画の著作物にあたるとしても、配給 制度を背景に規定された頒布権について、当該制度がないゲームソフトについて頒布権が 認められるのか。③頒布権が認められるとして、頒布権が第一譲渡後に権利が消尽しない か。以上の 3 つが主な争点となった。 地裁レベルでは、東京高裁と大阪地裁で判断が分かれたが、高裁レベルでは東京、大阪 高裁とも中古品販売業者の主張を認めた。結局、最高裁でも、ゲームソフトは「映画の著 作物」にはあたるが頒布権は消尽し、流通のコントロールは認められず、中古品ゲームソ フト販売は著作権侵害に該当しないとされた。 24 なお、この事件では上映権侵害について争われたが、現在であれば「映画の著作物」ではない著作物に ついても上映権がみとめられており、 (著作権法 22 条の 2) 、上映権については、ゲームソフトが映画の著 作物に該当するか否かは争点にならない。 25 判決の理由で、映画の著作物に該当するための要件を①影像が動きをもって見えるという効果を生じさ せることが必須であり、②音声を有することは必要的要件ではなく、③遊技の用に供され、物語性のない ものでも映画としての表現方法を欠くことにはならず、④影像を視聴者が操作により変化させうることも、 表現方法として考慮する必要はない、として、ゲームソフトはこれに該当するとして、映画の著作物性を 認めた。 5 2.3.2. 各判決について ・東京地裁判決(平成 11 年 5 月 27 日・ 判時 1679 号 3 頁。 ) 一連の訴訟で最初にだされた判決である。 ①ゲームソフトは映画ではないとして、頒布権を否定した。 ・大阪地裁判決(平成 11 年 10 月 7 日・ 判時 1699 号 48 頁。) ①ゲームソフトは映画であり、②頒布権が認められ、③消尽もしないとされた。 中古品ゲームソフトの流通のコントロールを認めた唯一の判決となった。 ・東京高裁判決(平成 11 年 3 月 27 日・ 判時 1747 号 60 頁。) ①ゲームソフトは映画にあたるが、②ゲームソフトの複製物は 26 条 1 項の複製物にあ たらず、頒布権の対象とならないと判断した。 ・大阪高裁判決(平成 11 年 3 月 29 日・ 判時 1749 号 3 頁。 ) ①ゲームソフトは映画であり、②頒布権もあるが、③頒布権は消尽するとした。 ・最高裁判決(平成 14 年 4 月 25 日。東京、大阪訴訟とも同日。大阪訴訟について民集 56 巻 4 号 808 頁・判時 1785 号 3 頁。) 大阪高裁の判断を採用し、①ゲームソフトは映画であり、②頒布権もあるが、③頒布 権は消尽するとした。その実質的理由として、社会公共の利益と調和の実現、市場にお ける商品の自由かつ円滑な流通、著作権者の利得機会は確保されていることを挙げてい る。 表 1 裁判における争点と各判決の判断 東京 大阪 東京 大阪 争点 地裁 地裁 高裁 高裁 映画の × ○ ○ ○ ○ - ○ × ○ ○ - ○ - × × × ○ × × × 判決 著作物性 頒布権の有無 頒布権は 消尽しないか 流通の コントロール 最高裁 2.3.3. 映画の著作物性について 東京地裁判決において、映画の著作物に該当する要件26をあげ、ゲームソフトはこの要件 にあたらないとして、映画著作物性を否定したが、大阪高裁、東京高裁及び最高裁では、 26 「著作権法は、多数の映画館での上映を通じて多数の観客に対して思想・感情の表現としての同一の視 聴覚的効果を与えることが可能であるという、劇場用映画の特徴を備えた著作物を「映画の著作物」とし て想定しているものと解するのが相当である。 」として「映画の著作物」と言いうるためには①一定の内容 の影像を選択し、これを一定の順序で組み合わせることにより思想・感情を表現するものであって、②当 該著作物ないしその複製物を用いることにより、同一の連続影像が常に再現される(常に同一内容の影像 が同一の順序によりもたらされる)ものであることが必要であるとし、ゲームソフトはこれに該当せず、 映画の著作物性を否定した。 6 このような限定解釈をする理由がないとして映画の著作物性を肯定した。 2.3.4. 頒布権の有無について 東京高裁判決では、著作権法 26 条の「複製物」を限定解釈することにより、ゲームソフ トの複製物は当該「複製物」には当たらず、頒布権の対象にならないと判断した。しかし、 最高裁では、東京高裁で示された判断の基準は 26 条の規定と合致しないとして否定し、ゲ ームソフトは頒布権の対象となると判断した。 2.3.5. 消尽理論について 知的財産権において、権利者(またはこれと同視できる者)が権利の対象となる物を適 法に市場に流通させた場合、この物に関する権利は権利者の目的を達成したものとして消 尽し、その物を購入して使用、販売、貸与等する他人の行為は権利侵害をとならないとす る考え方である27。劇場用映画を前提に規定された頒布権は消尽しないと考えられてきたこ とが、配給制度を前提としないゲームソフトについても適用されるかが問題となった。 最高裁は、BBS 事件判決(平成 9 年 7 月 1 日最高裁判決・民集 51 巻 6 号 2299 頁。BBS 事件上告審。 )を引用し、その著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は、いったん適法に譲 渡されることによりその目的を達成したものとして消尽し、その著作権の効力は、当該複 製物を公衆に再譲渡する行為には及ばないと判断した。 その実質的根拠として、①社会公共の利益との調和の必要性②譲渡を行う都度、著作権 者の許諾が必要となれば、円滑な流通が阻害され、それは著作権者自身の利益を害するこ とになる、③投下資本の回収については最初の譲渡で対価を取得できることで確保されて いる、としている28。 2.3.6. 最高裁判決の法律学的観点からの評価 この最高裁判決を含む一連の各判決については、法律学的観点からの評釈が多数なされ ている。中古品ゲームソフト販売は著作権侵害に該当しないとした最高裁の結論について は妥当なものであるが、解釈論については、立法当初想定されていなかったゲームソフト に関する問題について、 「映画の著作物」の頒布権によって判断すべきではない、などの批 判がある。 例えば、中山(2007)29では、 「この問題は、立法時には想定すらできなかった事態を扱 っており、実質的には法が欠缺している分野と見ることもでき、その意味で判決の理論構 成が区々に別れているのはやむを得ぬことである。究極的には立法の解決によるべきかも しれないが、それまでの間は、最高裁判決のような立法論的解釈にならざるを得ず、最高 裁の結論は、著作権が経済的要素を強めている現在では妥当なものといえよう。 」としてい 27 紋谷暢男 (2009)「知的財産権法概論第 2 版」有斐閣 235 頁。 条文上の解釈としては、配給制度という取引実態のある劇場用映画(またはその複製物)を公衆に提示 することを目的とする頒布(2 条 1 項 19 号後段)とゲームソフトのような「公衆に提示することを目的と しない」 「映画の著作物」の公衆への譲渡(2 条 1 項 19 号前段)をわけて考え、後者については、適法に 頒布がなされれば、頒布権は消尽すると判断した。 29 中山信弘 (2003)「著作権法」有斐閣 229 頁。 28 7 る。 また、田村(2006)30では、 「いずれにせよ、この種の問題とは無関係に制定された映画 の著作物の頒布権を持ち出して一刀両断に処するべきではなく、立法論として議論すべき であろう。 」としている。 3. 中古品ゲームソフト流通の影響の検証 3.1. 最高裁判所の判断の問題点 前述のとおり、最高裁判所は、①譲渡を行う都度、著作権者の許諾が必要となれば、円 滑な流通が阻害され、それは著作権者自身の利益を害することになる、②投下資本の回収 については最初の譲渡で対価を取得できることで確保されている、としているが、これは、 統計的な分析によって判断されたものではなく、あくまで市場取引一般おいて考慮される べき原則であって、著作権者の利益や投下資本の回収といったものが具体的に示されたも のではない。 そこで実際に、中古品ゲームソフトの流通が、ビデオゲーム市場においてどのような影 響を及ぼしているのかについて、①中古品ゲームソフトの円滑な流通によって、消費者及 びソフトメーカーに利益をもたらすのか、②最初の譲渡で対価を回収できるとすれば、ソ フトメーカーの経済的インセンティブは低下していないのか、という観点から検証する。 3.2. 中古品ゲームソフトの流通が与える影響の考察 3.2.1. two-sided market(両面市場)におけるネットワーク効果 ビデオゲーム市場は、ゲームソフト市場及びハード(ゲーム機)市場が相互に関連しあ う two-sided market(両面市場)である。 two-sided market(両面市場)においては、ゲームソフト市場の拡大がゲーム機の需要 を増大させ、また、ゲーム機市場の拡大がソフトの需要を増大させるという、一方の市場 が他の市場に影響を及ぼすといった間接ネットワーク効果31をもつ市場である。two-sided market はビデオゲーム市場のほかクレジットカード市場などにみられる32。 この観点からは、ゲーム機とゲームソフト間のネットワーク効果により、買い手がたく さん集まる場には多くの売り手が集まり、多くの売り手が集まる場には多くの買い手が集 まるとすれば、中古品ゲームソフトの流通により、多くのユーザーが取引に参加すること ができ、したがって取引回数が増加し、市場が活性化し、ハード、ソフトとも需要が高ま ると考えられる。 3.2.2. 中古品ゲームソフトの流通による影響のトレードオフ 中古品ゲームソフトの流通によるネットワーク効果があると考えられる一方、製作者側 にとって、競合関係にある中古品ゲームソフトが流通することで新品ゲームソフトの売上 が圧迫されるため、新作ソフトの製作が減尐する可能性がある。 30 前掲田村 (2006) 429 頁。 前掲 Shapiro and Varian (1998). 32 Rochet and Tirole (2003) “Platform Competition in Two-sided Markets ,” Journal of Europian Economic Association,1,No4,pp990-1029. 31 8 このように中古品ゲームソフトの流通に関しては、新作タイトル数への影響とハード(ゲ ーム機)の販売台数への影響とがトレードオフの関係があると考えられる。 そこで本稿ではこのトレードオフの関係について、次の2つの仮説をたて計量経済学に 基づく統計的分析を行う。 【仮説1】 中古品ゲームソフト流通の拡大は、新作ゲームソフトのタイトル数にマイナスの影響を 及ぼす。 【仮説2】 中古品ゲームソフト流通の拡大により、多くのユーザーが中古品ゲームソフトの取引か らゲームソフトを入手しやすくなるため、ネットワーク効果を通じて、ハード(ゲーム機) の需要が高まる。 ハード(ゲーム機)の需要が高まるということは、中古品ゲームソフトの流通によって、 消費者にとっての便益が高まると考えられるから、消費者余剰の観点からは望ましい状態 であると推察することができる。 一方で、中古品ゲームソフトの流通によって新作タイトル数が減尐するということは、 著作権法の便益である創造的な活動に対するインセンティブ33を阻害する要因となってい るといえる。 3.3. 分析方法 仮説の検証には、中古品ゲームソフトの売上データが得られる 2004 年から 2009 年の 6 年間(72 か月)における、中古品ゲームソフト売上金額・本数の年次データ34、新品ゲー ムソフト売上金額・売上本数の月次データ、ハード販売台数の月次データ、新作ソフトの タイトル数の月次データ、実質 GDP(国内総生産)の実額(暦年)値及びハード発売後経過 月数のデータを使用し、最小二乗推定法(Ordinary Least Squares : OLS)により行った。 データは、新品、中古品ゲームソフトの売上及びハード発売年月に関しては、㈱メディ アクリエイト「テレビゲーム産業白書」 (2005~2010 年度版)より、ハード販売台数に関し ては、㈱エンターブレイン「ファミ通ゲーム白書」(2005~2010)より、新作ソフトのタイト ル数については、電撃オンラインソフトのホームページ(http://news.dengeki.com/)等を 参考に筆者が独自に集計したものを、GDP 値については、内閣府推計、発表の速報値をそ れぞれ利用した。 33 N・グレゴリー・マンキュー(足立英之ほか訳) (2005) 「マンキュー経済学 ミクロ編」 東洋経済新 報社 422 頁。 34 中古品ゲームソフトの売上集計データは、テレビゲーム産業白書 2004 年度版以降を利用した。 9 900 120 800 100 700 600 80 500 60 400 300 40 200 20 100 0 0 2004 ソフト・ハード 2005 2006 2007 2008 2009 単位:10 万本・台 タイトル数 単位:本 新品ソフト 中古ソフト ハード台数 タイトル数 図 1 新品・中古ソフト販売本数、ハード販売台数、新作タイトル数の推移 表 2 分析対象機種(ハード) 2004 年~2009 年(72 ヶ月)に販売されたハードウェア 9 機種について タイプ no. 略称 名称 販売開始 (終了) 据置型 1 ps2 据置型 2 据置型 プレイステーション2 00.03 ++ SCE gc ゲームキューブ 01.09 07.03 任天堂 3 xbox エックスボックス 02.02 05.12 microsoft 据置型 4 xbox360 エックスボックス 360 05.12 ++ microsoft 据置型 5 ps3 プレイステーション3 06.11 ++ SCE 据置型 6 wii Wii 06.12 ++ 任天堂 携帯型 7 gba ゲームボーイアドバンス 01.03 07.12 任天堂 ゲームボーイアドバンスSP 03.02 07.12 任天堂 ゲームボーイミクロ 05.09 07.12 任天堂 ニンテンドーDS 04.12 ++ 任天堂 ニンテンドーDSLite 06.03 ++ 任天堂 ニンテンドーDSi 08.11 ++ 任天堂 ニンテンドーDSiLL 09.11 ++ 任天堂 プレイステーション・ポータブル 04.12 ++ SCE 携帯型 携帯型 8 9 ds psp メーカー *ゲームボーイアドバンスシリーズ及びニンテンドーDS シリーズは、ゲームソフトが共通のため、同一機 種として扱う。 *「 (終了) 」は集計上、売上がゼロになった時期。 10 3.4. 新作ソフトのタイトル数への影響についての実証分析 3.4.1. 推定モデル 【仮説1】 中古品ゲームソフト流通の拡大は、新作ゲームソフトのタイトル数にマイナスの影響 を及ぼす。 仮説1について次のモデルの推定を行う(推定1) 。 n lnNt = α0 + α1 lnUPt−6 + α2 lnHt−6 + α3 lnR t−6 + βi Cit + εit (1) i=1 ここで N は、機種別の新作ソフトの月次タイトル数である。毎月発売された新作ソフト のタイトル数について機種別に集計している。 なお、本分析では、製作者の創作に対するインセンティブを推察するため、一度販売し たタイトルを再度ベスト版、廉価版として販売したものは、新作タイトルに含めていない。 UP は、機種別の新品ゲームソフト売上金額に対する中古品ゲームソフト売上金額の比率 である。中古品ゲームソフトの流通の指標として用いている。最高裁判決によって中古品 ゲームソフトの販売が著作権侵害に該当しないと確定した後、大手の家電販売業者などが 中古品ゲームソフトの販売に参入し35、中古品市場は拡大する傾向を強めている。ゲームソ フト市場において中古品の割合が高まると競合関係にある新品の需要が減尐し、製作者側 の利潤が小さくなるとすれば、製品開発のインセンティブが減尐し、新作ソフトのタイト ル数が減尐すると考えられるため、予想される符号は負である。 ゲームソフト開発期間のタイムラグとして6か月の期間をとっている。データの制約上、 中古品売上金額のデータは 1 年毎のデータであるため、1 年を 1~6 月の上半期、7~12 月を 下半期に分け、上半期には前年の比率を、下半期には当該年の比率を用いた。 ゲームソフトの開発期間は一般的に1年以上かかるといわれている。確かに、いわゆる 大作ゲームの開発期間は 1 年以上とされるが、単純なゲームの開発期間は 1 年以内のもの も多く、特に短いものでは数カ月で製作されるものもあるという。最近は、開発コスト削 減等のために開発期間が短縮される傾向にあるといわれる。また、開発段階で中止になる など、実際に発売が決定されるのは総開発期間の後半であるといわれることを考慮し、6 か月というタイムラグを用いることとした36。 H は、6 か月前までのハード販売台数についての機種別の累計である。ハードの普及によ って、ソフトの需要が高まると考えると、ハードの普及台数が大きい機種の新作ソフトの タイトル数が大きくなると考えられるから、予想される符号は正である。 R は、6 か月前までの当該機種と競合関係にあるライバル機種のハードの販売台数につい ての累計である。ライバル関係とは、据置型ゲーム機と携帯型ゲーム機で区別し、当該機 35 TSUTAYA は東京、大阪両高裁で著作権法に違反しないとの判断がなされた後の 2001 年 10 月より中古 品ゲームソフトの販売を開始している。大手家電量販店ヤマダ電機なども最高裁判決後、中古ゲームソフ ト販売に本格的に参入している。 36 なお、田中 (2003)の分析でも、ハードからソフトへのフィードバックのタイムラグは 8~11 ヶ月となっ ている。 11 種以外の機種をライバル機種とした。新作ソフトをどの機種から発売するかは、同じメー カーの前・後継機種であっても競合関係にたつと考えられるから、同じメーカーでもライ バル機種としている。 前述のように、ハードの普及台数が多い機種に新作ソフトのタイトルが集まると考える と、ライバル機種の販売台数が大きければ、当該機種の新作ソフトのタイトル数は尐なく なると考えられるから、予想される符号は負である。 C は、その他のコントロール変数であり、ハード販売後経過月数とその二乗項、GDP、 月次ダミー及び機種ダミーを含めている。 α及びβはパラメータ、εは誤差項、iはコントロール変数(i=1~5)、tは月を示す。 表 3 推定 1(新作タイトル数への影響)の基本統計量 Variable ln(新作タイトル数) ln(中古/新品比率) ln(ハード販売台数累計) ln(ライバル機種販売台数累計) ハード販売後経過月数 ハード販売後経過月数^2 GDP 2 月ダミー 3 月ダミー 4 月ダミー 5 月ダミー 6 月ダミー 7 月ダミー 8 月ダミー 9 月ダミー 10 月ダミー 11 月ダミー 12 月ダミー 機種(gc)ダミー 機種(xbox)ダミー 機種(xbox360)ダミー 機種(wii)ダミー 機種(ps3)ダミー 機種(gba)ダミー 機種(ds)ダミー 機種(psp)ダミー Obs Mean Std. Dev. Min Max 374 2.202 0.975 0 4.043 374 3.445 0.695 -0.880 5.397 374 15.155 2.120 0 17.096 374 16.078 3.011 0 17.556 374 45.874 25.95 7 118 374 2776.056 2970.556 49 13924 374 542.249 12.793 525170 561356.2 374 0.072 0.259 0 1 374 0.072 0.259 0 1 374 0.070 0.255 0 1 374 0.072 0.259 0 1 374 0.080 0.271 0 1 374 0.094 0.292 0 1 374 0.094 0.292 0 1 374 0.094 0.292 0 1 374 0.094 0.292 0 1 374 0.094 0.292 0 1 374 0.094 0.292 0 1 374 0.088 0.282 0 1 374 0.048 0.212 0 1 374 0.115 0.319 0 1 374 0.083 0.276 0 1 374 0.086 0.280 0 1 374 0.112 0.316 0 1 374 0.147 0.355 0 1 374 0.144 0.352 0 1 12 3.4.2. 推定1(新作タイトル数への影響)の結果 新品の売上金額に対する中古品の売上金額の比率について、新作タイトル数に対して 1% 水準で統計的に有意に負の係数(-0.397)となっており予想どおりの結果が得られた。これに より、ゲームソフト市場における中古品の比率が高まると新作タイトル数が減尐するとい える。 6 か月前のハード販売台数累計及びライバル機種の販売台数累計について、新作タイトル 数に対して 1%水準で統計的に有意にそれぞれ正の係数(0.084)及び負の係数(-0.057)となっ ており、予想通りの結果が得られた。これにより、ハードが普及している機種であれば、 新作タイトル数が多いといえる。 表 4 推定 1(新作タイトルへの影響)の結果 被説明変数:ln(新作タイトル数) 係数 定数項 ln(中古品/新品比率 6 月前) ln(当該機種販売台数累計 6 月前) ln(ライバル機種販売台数累計 6 月前) ハード販売後経過月数 ハード販売後経過月数^2 GDP 2 月ダミー 3 月ダミー 4 月ダミー 5 月ダミー 6 月ダミー 7 月ダミー 8 月ダミー 9 月ダミー 10 月ダミー 11 月ダミー 12 月ダミー 機種(gc)ダミー 機種(xbox)ダミー 機種(xbox360)ダミー 機種(wii)ダミー 機種(ps3)ダミー 機種(gba)ダミー 機種(ds)ダミー 機種(psp)ダミー 補正 R2 有意 F 値 サンプル数 5.657 -0.397 0.084 -0.057 0.033 -0.000 -3.58 0.127 0.288 0.017 -0.180 0.014 0.452 0.096 0.148 0.274 0.392 0.642 -2.541 -2.008 -1.380 -1.363 -1.532 -2.540 -0.626 -1.005 0.792 0.000 374 ***、**、* はそれぞれ、1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す。 13 標準誤差 *** *** *** *** *** *** ** *** ** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 1.316 0.108 0.023 0.011 0.006 0.000 2.25 0.121 0.121 0.123 0.122 0.123 0.116 0.115 0.115 0.115 0.114 0.114 0.147 0.187 0.221 0.180 0.208 0.122 0.135 0.172 3.5. ハード販売台数への影響についての実証分析 3.5.1. 推定モデル 【仮説2】 中古ゲームソフトの流通により、多くのユーザーが取引に参加することができ、取引 回数が増加し、市場が活性化することにより、ハードの需要が高まる。 仮説2について次のモデルによって推定を行う(推定2)。 n lnHt = α0 + α1 lnUNt + α2 lnNt + α3 lnNPt + α4 lnR t + α5 lnHPt + βi Cit + εit (2) i=1 ここで H は、毎月のハード販売台数を機種別に集計したものである。 UN は、1 年毎の中古品ゲームソフト販売本数を機種別に集計したものを、当該機種につ いて当該年までに発売されたタイトル数の累計で除したものである。 1 タイトルあたりの中古品ゲームソフトの販売本数が多いということは、それだけ中古品 ゲームソフトの流通が活発に行われると考えられる。それによってハードの販売台数が増 加すると考えられるので、予想される符号は正である。 N は、毎月発売された新作ソフトのタイトル数について機種別に集計したものである。 推定1の新作ソフトのタイトル数の説明で述べたように、この新作タイトル数には、1 度販 売したタイトルを再度ベスト版、廉価版として販売したものは新作ソフトのタイトル数に 含めてない。タイトル数の豊富さは、ハードの需要を高めることになると考えられるから、 予想される符号は正である。 NP は、過去 1 年間に販売されたタイトル数の機種別の累計である。当該機種のタイトル 数が豊富であると当該機種の需要を高める影響があると考えられるので、予想される符号 は正である。 R は、当該機種と競合関係にあるライバル機種のハードの販売台数についての累計である。 なお、ライバル関係とは、据置型ゲーム機と携帯型ゲーム機で区別し、当該機種以外の機 種をライバル機種とした。消費者がどの機種を購入するかは、同じメーカーの前・後継機 種であっても競合関係にたつと考えられるから、同じメーカーでもライバル機種としてい る。ライバル機種の販売台数が大きいと、競合関係にある当該機種の販売台数は尐なくな ると考えられるから、予想される符号は負である。 HP は、ハードの実売平均価格である。ハードの価格が高いと、売上台数が尐なくなると 考えられるから、予想される符号は負である。 C は、その他のコントロール変数であり、ハード販売後経過月数とその二乗項、GDP、 月次ダミー及び機種ダミーを含めている。 α及びβはパラメータ、εは誤差項、iはコントロール変数(i=1~5)、tは月を示す。 14 表 5 推定 2(ハード販売台数への影響)基本統計量 Variable ln(ハード販売台数) ln(1 タイトルあたり中古品本数) ln(新作タイトル数) ln(過去 1 年間新作タイトル数) ln(ライバル機種ハード販売台数) ln(ハード平均価格) ハード販売後経過月数 ハード販売後経過月数^2 GDP 2 月ダミー 3 月ダミー 4 月ダミー 5 月ダミー 6 月ダミー 7 月ダミー 8 月ダミー 9 月ダミー 10 月ダミー 11 月ダミー 12 月ダミー 機種(gc)ダミー 機種(xbox)ダミー 機種(xbox360)ダミー 機種(wii)ダミー 機種(ps3)ダミー 機種(gba)ダミー 機種(ds)ダミー 機種(psp)ダミー Obs Mean Std. Dev. Min Max 428 11.086 1.660 6.279 14.206 428 9.010 0.759 4.935 10.129 428 2.171 0.959 0 4.043 428 4.542 1.101 0 6.326 428 12.037 2.186 0 14.442 428 9.800 0.423 9.082 10.897 428 42.547 26.596 1 118 428 2515.897 2876.124 1 13924 428 541.722 12.910 525170 561.356 428 0.084 0.278 0 1 428 0.084 0.278 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.082 0.274 0 1 428 0.084 0.278 0 1 428 0.091 0.288 0 1 428 0.091 0.288 0 1 428 0.056 0.230 0 1 428 0.114 0.319 0 1 428 0.086 0.281 0 1 428 0.089 0.285 0 1 428 0.112 0.316 0 1 428 0.143 0.350 0 1 428 0.140 0.348 0 1 3.5.2. 推定2(ハード販売台数への影響)の結果 1 タイトルあたりの中古品本数ついては、ハード販売台数に対して 1%水準で統計的に有 意に正の係数(0.327)となっており、予想通りの結果が得られた。ゲームソフト市場にお ける中古品の流通が大きくなるとハード販売台数が増加するといえる。 新作タイトル数については、ハード販売台数に対して 1%水準で統計的に有意に正の係数 (0.435)となっており、予想通りの結果が得られた。過去 1 年間の新作タイトル数累計につ いても 10%水準で統計的に有意に正の係数(0.102)であり、同様のことがいえる。 ライバル機種の販売台数については、ハード販売台数に対して 5%水準で統計的に有意に 負の係数(-0.036)となっており、予想通りの結果が得られた。 ハード平均価格については、ハード販売台数に対して、10%水準でも統計的に有意ではな いが負の係数(-0.300)となっており、価格が下がるとハードの需要が高まる傾向にあるとい える。 15 表 6 推定2(ハード販売台数への影響)の結果 係数 15.815 0.327 0.435 0.102 -0.036 -0.300 -0.017 -0.000 -6.77 -0.836 -0.889 -0.815 -0.797 -1.075 -0.978 -0.762 -0.901 -1.002 -0.697 0.085 -1.586 -3.286 -1.633 -0.036 -0.419 -0.300 0.424 0.196 0.899 0.000 428 定数項 ln(1 タイトル毎中古品本数) ln(新作タイトル数) ln(過去 1 年間新作タイトル数) ln(ライバル機種販売台数) ln(当該機種平均価格) ハード販売後経過月数 ハード販売後経過月数^2 GDP 2 月ダミー 3 月ダミー 4 月ダミー 5 月ダミー 6 月ダミー 7 月ダミー 8 月ダミー 9 月ダミー 10 月ダミー 11 月ダミー 12 月ダミー 機種(gc)ダミー 機種(xbox)ダミー 機種(xbox360)ダミー 機種(wii)ダミー 機種(ps3)ダミー 機種(gba)ダミー 機種(ds)ダミー 機種(psp)ダミー 補正 R2 有意 F 値 サンプル数 *** *** *** * ** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 標準誤差 2.733 0.106 0.061 0.058 0.015 0.225 0.005 0.000 2.26 0.125 0.126 0.126 0.127 0.127 0.128 0.127 0.127 0.128 0.128 0.132 0.233 0.289 0.206 0.204 0.280 0.227 0.160 0.169 ***、**、* はそれぞれ、1%、5%、10%水準で統計的に有意であることを示す。 3.6. 分析結果の考察 本分析では、中古品ゲームソフト流通が、新作ソフトのタイトル数及びハード販売台数 へどのような影響を及ぼすかについて注目するものであるから、推定1においては、新作 ソフトのタイトル数に対して、新品ゲームソフトの販売金額に対する中古品ゲームソフト 販売金額の比率と当該機種の販売台数累計の2つの説明変数の係数について注目して、推 定2では、ハード販売台数に対して、当該機種 1 タイトルあたりの中古品販売本数と、当 該機種の新作ソフトのタイトル数の2つの説明変数の係数について注目して考察をする。 まず中古品ゲームソフトの流通が与える新作ソフトのタイトル数とハード売上台数への 16 直接の影響がある。 推定1から、新作ソフトのタイトル数への影響については、中古品ゲームソフト販売本 数が 1%減尐すると、新作ソフトのタイトル数が 0.397%増加する効果があり、6 か月前の ハードの販売台数の累計が 1%減尐すると、新作ソフトのタイトル数が 0.084%減尐すると いう効果があるといえる。 推定2から、ハード売上台数への影響については、中古品ゲームソフト販売本数が 1%減 尐すると、ハードの販売台数が 0.327%減尐する効果があり、新作ソフトのタイトル数が 1% 減尐すると、ハードの販売台数が 0.435%減尐する効果があるといえる。 これにハード販売台数が新作ソフトのタイトル数に影響を与えること及び新作ソフトの タイトル数がハード販売台数に影響を与えることによる間接の効果があることから、この 効果をあわせて考察をする。 新作ソフトのタイトル数には、①推定1の中古品ゲームソフト販売本数が減尐した場合 における直接の影響による増加の効果(0.397%増加)と、②推定2の中古品ゲームソフト 販売本数が減尐した場合におけるハード販売台数に与える影響を経由した間接の影響によ る減尐の効果(0.084*-0.327=0.027%減尐)があり、この両方の効果をあわせると中古品 販売本数が 1%減尐した場合、新作タイトル数は 0.370%増加する効果があるといえる。 (図 2 新作タイトルへの影響を参照) 。 ハードの売上台数には、①推定2の中古品ゲームソフト販売本数が減尐した場合におけ る直接の影響による減尐の効果(0.327%減尐)と、②推定1の中古品ゲームソフト販売本 数が新作ソフトのタイトル数に与える影響を経由した間接の影響による増加の効果(0.435 *0.397=0.173%増加)があり、これをあわせると中古品販売本数が 1%減尐した場合ハー ドの販売台数は 0.154%減尐する効果があるといえる(図 3 ゲーム機(ハード)への影響を 参照) 。 以上から、推定結果1については、仮説 1 のとおり、中古品ゲームソフトの流通が拡大 することにより、新作ソフトのタイトル数にマイナスの影響を及ぼすといえる。 推定結果2についても、仮説 2 のとおり、中古品ゲームソフトの流通が拡大することに より、多くのユーザーが取引に参加することができ、取引回数が増加し、市場が活性化す ることにより、ハード(ゲーム機)の需要が高まる、といえることがわかった。 すなわち、中古品ゲームソフトの流通が増加(減尐)すると、新作ソフトのタイトル数 は減尐(増加)し、ハードの販売台数は増加(減尐)するといえる。 ゲームソフトの中古品流通においては、新作ソフトのタイトル数とハード(ゲーム機) の売上台数の両面にそれぞれ影響があり、その影響はトレードオフの関係になっていると 考えられる。 3.7. 分析の課題 本分析では、価格が一定であるとしているが、ハード(ゲーム機)製作業界が寡占であ ることからすると、中古品ゲームソフトの売上が減尐することによるハード(ゲーム機) の販売台数の減尐の効果によって価格の下落が引き起こされる可能性がある。 一方で、新作タイトルの新品ゲームソフトについては、価格上昇の可能性は尐ないと考 えられる。なぜなら、新作タイトルの市場は、多くのゲーム製作会社による競争的な市場 17 となっているからである。 本分析では、このような価格設定行動を考慮していないため、この点を考慮した分析が 今後必要になる。 新作タイトル ゲーム機 (ハード) 図 2 中古品ソフト 新作タイトルへの影響 ゲーム機(ハード) 新作タイトル 図 3 中古品ソフト ゲーム機(ハード)への影響 18 4. 政策的含意と今後の課題 4.1. 政策的含意 分析の結果から、ゲームソフトの中古品流通は、多くのユーザーが中古品ゲームソフト の取引からゲームソフトを入手しやすくなるため、ハード(ゲーム機)の需要が大きくな ることに一定の効果がある、といえる。 ハード(ゲーム機)の需要が高まるということは、中古品ゲームソフトの流通によって、 消費者の便益が高まっていると考えられるから、消費者余剰の観点からは望ましい状態で あると推察することができる。 しかし、一方で、製作者側のゲームソフト製作に関するインセンティブを低下させてい ることも明らかになった。このことは著作物の豊富化・多様化の観点からは望ましい状態 ではなく、著作権法の便益である創造的な活動に対するインセンティブを阻害する要因と なっているといえる。 前述のとおり一連の訴訟で中古品ゲームソフトの販売が著作権侵害に該当しないとされ たことにより、中古品市場は拡大する傾向を強めている。 最高裁判所はその判決理由中において、譲渡を行う都度、著作権者の許諾が必要となれ ば、円滑な流通が阻害され、それは著作権者自身の利益を害することになる、投下資本の 回収については最初の譲渡で対価を取得できることで確保されている、などと述べて、中 古品ゲームソフトの自由流通を認めたが、実際には、中古品ゲームソフトの流通は、ゲー ムソフト製作者側の経済的なインセンティブに影響を及ぼし、中古品ゲームソフトの流通 が増加すると、新作タイトル数は減尐する効果があり、製作者側の投下資本の回収が確保 されているとは言い難い状況にあるといえる。 この点について、最高裁判所の判断は、正確な現状認識のもとに判断がなされたという ことはできない。 このことから中古品ゲームソフトの流通は、消費者にとって正の便益を与えているもの の、一方で、製作者側のゲームソフト製作に関するインセンティブを低下させていること から、製作者側のインセンティブを確保できる制度・規定について考察することは、十分 検討の余地があるといえる。 4.2. 今後の課題 製作者側のインセンティブを確保するための制度としては様々なものが考えられること になるが、法と経済学の見地からは次のような制度設計が参考になろう。 福井(2008)37によれば、技術的な手段によって、頒布権(あるいは譲渡権)を消尽させ ないのと同じ結果が可能であることを、現行の法的ルールの下では実現できないとする解 釈を強行法規的に運用するに疑問を呈する。そして、物の流通において、当初の譲渡先と の間で詳細な特約を結んだとしても「それを転々流通先も含めて担保することは、取引費 用が高額に上るため難しい可能性が大きいといえる。しかし、何らかの技術的対応又は法 による取引費用の低減措置を取ることができるならば、当初に当事者間で消尽の有無等に 関して自由に権利を設定し、それを裁判所が保護することは、コースの定理に照らして効 37 福井秀夫 (2008) 「ケースからはじめよう 法と経済学 法の隠れた機能を知る」日本評論社。 19 率性を改善するという意義がある。 」とされる(なお、消尽理論の任意的理解について打越 (2006)38が考察を加えている。 )。 この考え方は、デジタル著作物であるゲームソフトにおいても妥当し、技術的な手段(例 えば、ゲームソフトのダウンロード販売39)によって、事実上、頒布権(あるいは譲渡権) を消尽させないことが可能になっている現状においては、パッケージ型のゲームソフトの み頒布権(あるいは譲渡権)が消尽し、権利者がその流通をコントロールできないとする のは、妥当な結果ではないと考えられる。 したがって、技術的な手段を法で肩代わりさせることによって、すなわち初期の権利配 分を著作権者に認め、そのうえで、権利者と中古品販売業者とによる自由な契約(業界団 体間の交渉など40)によって、例えば、製作者への利益還元制度や中古品流通禁止期間の設 定などの制度を構築する方法が考えられるのではないだろうか。 社会厚生の定量的な分析による、どのような制度設計が最も適切なものであるかについ ては今後の課題となるが、本稿は、中古品ゲームソフトの流通にかかる問題について今後 の検討にあたっての一つの材料となると考える。 謝辞 本稿の作成にあたって、北野泰樹助教授(主査)、岡本薫教授(副査)、諸岡健一教授(副 査)及び玉井克哉客員教授(副査)からは大変丁寧なご指導を賜り、厚く御礼申し上げま す。 また、知財プログラムディレクター福井秀夫教授、安藤至大客員准教授、塩澤一洋客員 教授、丸山亜希子助教授ほか関係教員の方々からは有益な御助言を頂きました。 最後に、本知財プログラム及びまちづくりプログラム院生の皆様には大変貴重なご意見 と励ましを頂きました。心より感謝を申し上げます。 なお、本稿は個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものではあ りません。また、本稿における見解及び内容に関する誤りは、すべて筆者の責任であるこ とを申し添えます。 38 打越隆敏 (2006) 「特許制度における消尽理論について」平成 17 年度政策研究大学院大学知財プログ ラム論文集。 39 ダウンロード販売においては、ゲームのデータのみが消費者にわたるため、中古品の販売ということが 難しくなる。 40 ただし、ビデオゲーム産業は不完全競争市場に近く、プラットフォームを持つ企業が市場に強い影響力 を持つため、交渉にあたってはこうした点に注意が必要である。 20 (参考文献) 打越隆敏 (2006) 「特許制度における消尽理論について」平成 17 年度政策研究大学院大学知財プログラム 論文集 岡本薫 (2010)「誰でも分かる著作権法 2010 年版」 全日本社会教育連合会 石岡克俊 (2004) 「消尽理論の法と経済学」林紘一郎編著「著作権の法と経済学」第 6 章 勁草書房 神隆行 (2002)「中古市場をともなう著作物の市場均衡」 大阪学院大学経済論集 16(1-3), pp33-55. 神隆行 (2005) 「著作物の新たな中古市場について」龍谷大学経済学論集 45(2), pp61-75. 小島立 (2005) 「情報取引の形態に関する基礎的考察--サイバースペースにおける情報財の保護と自由利 用、その法的規整」知財研紀要 14, 106-110. スザンヌ・スコッチマー (青木玲子監訳、安藤至大訳) (2008) 「知財創出 イノベーションとインセ ンティブ」日本評論社 鈴木將文 (2009) 「中古ゲームソフトの販売と頒布権」別冊ジュリスト「著作権判例百選第 4 版」有斐閣 田中辰雄 (2003) 「ハード・ソフト間のネットワーク外部性の実証」 新宅純二郎・田中辰雄・柳川範之 「ゲ ーム産業の経済分析 コンテンツ産業発展の構造と戦略」 第 2 章 東洋経済新報社 田村善之 (2003) 「市場・自由・知的財産」有斐閣 田村善之 (2006) 「知的財産法第四版」有斐閣 中山信弘 (2003) 「著作権法」有斐閣 福井秀夫 (2008) 「ケースからはじめよう 法と経済学 法の隠れた機能を知る」日本評論社 紋谷暢雄 (2009) 「知的財産権法概論第 2 版」有斐閣 N・グレゴリー・マンキュー(足立英之ほか訳) (2005)「マンキュー経済学 ミクロ編」 東洋経済新報社 Claussen, Jörg & Kretschmer, Tobias & 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