「カメリアの花言葉を君に」サンプル台本

「カメリアの花言葉を君に」サンプル台本
一樹:アプリコットカフェ、オリジナルボイスドラマ
雪菜:カメリアの花言葉を君に
〇図書館
一樹はクリスマスツリーを飾っている
一樹:
(歌)Jingle, bells! Jingle, bells! Jingle all the way! Oh, what fun it is to ride, In a One
horse open sleigh!
牧本:一樹くん、飾りつけが終わったら少し休憩しない?
一樹:そうですね。じゃあここらへんで
牧本:本当、一樹くんがバイトに来てくれて助かったわ。クリスマス前なのに職員の人がギックリ腰になるなん
て、災難よねぇ
一樹:
(笑う)僕も、まさか図書館でバイトできるなんて夢にも思ってませんでしたよ
二人窓辺の椅子に座る
牧本:はー、どっこいしょ。あ、おばさん臭いね、この掛け声
一樹:ノーコメントです
牧本:一樹くんはさぁ、クリスマス前なのに予定ないの?
一樹:
(情けなく笑う)えーっとですね、振られちゃいました
牧本:ええ!? もう!? この前も振られてなかった?
一樹:女の子の心は秋の空なんです
牧本:
(苦笑い)一樹くん、一人の子と長続きしないね。本命とかいないの?
一樹:本命ですか? うーん、女の子はみんな可愛いから
牧野:またまたぁ
一樹:牧本さんも可愛いですよ
牧本:あらあら嬉しいわね、こんなおばさんにまで可愛いって言ってくれるなんて
一樹:可愛いですよ。絵本コーナーにある手編みのぬいぐるみを実はひそかに作ってるとことか、館長がお昼の
歯磨き忘れないようにこっそり歯ブラシを机に出してあげてるとことか
牧本:よく見てるわねぇ
一樹:人間ウォッチング好きなんですよ。あ
一樹は重い本を持ちながら歩いている雪菜を見つける
牧本:あー、雪菜ちゃん、また重たい本を一人で持って。え、あ、一樹くん!?
一樹は雪菜に近づいていく
一樹:雪菜さん
雪菜:沖野さん? なにか用ですか?
一樹:本、持ちますよ
雪菜:いいえ、これくらい一人で大丈夫です
一樹:でも、その本は D3の棚のモノですよね。手、届きますか?
雪菜:脚立を持ってくれば届きます
一樹:二度手間ですよ。貸してください
雪菜:
(ムッとして)これは私の仕事です
一樹:僕もバイトなんですから、効率よくやりましょう
雪菜:貴方が話しかけてこなければ効率よく仕事できます
一樹:はい、ごめんなさい。本をここに、と
一樹は雪菜から本をとって棚にしまう
雪菜:あ
一樹:はい、終わりました
雪菜:別に頼んでません!
一樹:そうですね。僕が勝手にやったことですから
雪菜:
(悔しい気持ち)っ! たのんで――
牧本:こぉら、雪菜ちゃん。手伝ってもらったらありがとうでしょう?
雪菜:私、手伝ってほしいなんて言ってません
牧本:もぉ、意地っ張りなんだから。あ、そうだ。ねぇ一樹くん、今日 4 時からお話会があるんだけど、参加し
てみない?
一樹:お話会ですか?
牧本:小さい子向けにね、雪菜ちゃんが本の読み聞かせをしてくれてるんだけど。お手伝いしてあげてほしいの
雪菜:必要ありません!
牧本:雪菜ちゃん、一樹くんにも新しいことを覚えてもらわなきゃいけないでしょ?
雪菜:……はい。でも小さい子への読み聞かせですよ、できるんですか?
一樹:僕にできることならしますよ
雪菜:……分かりました。では本選びをお願いします
雪菜は去る
牧本:あーあ、行っちゃった。怒らせたかしら
一樹:雪菜さん、僕のこと苦手みたいですね
牧本:そういう台詞を笑顔で言えちゃう一樹くんは大物よ
一樹:ありがとうございます
○沖野家
基子は夕実を目の前に王立ちして鼻を鳴らした
基子:これは絶対に浮気よ!
夕実:う? うきわ?
基子:う・わ・き! 一樹お兄さま、基子というものがありながら他の女に目移りするなんて!
夕実:モトちゃん、カズにぃの恋人だったっけ?
基子:恋人なの! もう、夕実ってば、あたしは将来、一樹お兄さまと結婚して夕実のお姉ちゃんになるんだか
らね!
夕実:
(不満そうに)え~
基子:なによぉ! 嫌なの?
夕実:うーん、モトちゃんとは、お友達がいいなぁ
基子:な、なに言ってんのよバカ! そんな恥ずかしいことよく言えるわね!
夕実:う? 恥ずかしくないよ?
基子:あ、あたしが恥ずかしいの! っ~もう、とにかく、一樹お兄さまが悪い女にたぶらかされているの。こ
のごろお兄さま、図書館でバイトを始めたでしょ?
夕実:うん
基子:なんのためか知ってる?
夕実:本が好きだから?
基子:あーもう、これだから夕実はお子ちゃまなのよ。お兄さまが図書館でバイトを始めた理由は一つ、女よ
夕実:おんな? うーん、あ、雪菜お姉ちゃんのこと?
基子:雪菜? それがドロボウネコの名前ね!?
夕実:雪菜お姉ちゃん、ネコじゃないよ?
基子:しゃーらっぷ! あたしの、一樹お兄さまをたぶらかすなんて! こうしちゃいられないわ、夕実、これ
は事件なの!
夕実:事件!? うわー、わー、なんだか、かっこいいね!
基子:ということで、図書館に浮気調査しにいくわよ!
夕実:はーい!
○図書館 本棚の前
一樹:お話会を手伝うとは言ったものの、さて、どの本にしようかな
夕実は本を選んでいる一樹の服を引っ張る
夕実:カズにぃ
一樹:
「かいじゅうたちのいるところ」
「こんとあき」
「きいろいのはちょうちょ」
「スノーマン」
「おふろだいすき」
、
うーん
夕実が一樹の服を引っ張る
夕実:
(ちょっと強く)カズにぃ
一樹:ここはやっぱり「14 ひきのさむいふゆ」かなぁ
夕実:
(心細くなる)……にぃ
一樹:あー、でも
夕実:
(気づいてもらえず悲しくなる)う、ふえ、ふっ……
一樹:あれ、夕実? どうしたの、泣きそうな顔してるよ?
夕実:カズにぃの意地悪! 夕実、ずっと、呼んでたの!
一樹:知ってたよ、ごめんね夕実。夕実が可愛いからちょっと意地悪しちゃった。一人で来たの?
夕実:ううん。モトちゃんと一緒
一樹:基子ちゃんと?
夕実:モトちゃんは今、トイレな――むぐ?
基子は急いで走ってきて夕実の口を塞ぐ
基子:ばかばか、ばか夕実! 一樹お兄さまになんてこと言うの! 基子はお手洗いなんて行かないの!
夕実:え? でもおしっこ――
基子:素敵なレディはトイレになんて行かないの!
夕実:えぇえ!? ど、どうしよう! カズにぃ、夕実、おトイレ行っちゃった。素敵なレディになれない?
一樹:大丈夫、夕実はずっと素敵なレディだよ
夕実:ホントに?
一樹:うん。もちろん、基子ちゃんもね
基子:
(照れる)う、うん
一樹:あ、そうだ、ねぇ二人とも、本を読んでもらうならどんな本がいい?
夕実:ご本? 夕実、楽しいご本がいい!
一樹:楽しい本かぁ。基子ちゃんは?
基子:あたしは、お姫さまが出てくるお話が好き!
一樹:お姫さま、
「シンデレラ」とか「白雪姫」とか?
基子:うん!
一樹:んー。日本の童話も外国の童話も捨てがたいなぁ
4 時のベルが鳴る
一樹:あ、まずい。4 時になっちゃった。夕実、基子ちゃん、急ぐよ、駆け足!
夕実:図書館は走っちゃダメなんだよー?
一樹:緊急事態だからいーの!
基子:お兄さまが急ぐなら基子も急ぎますー!
(中略)
○道路
一樹:確かこっちのほうだったはず……ん? おばさん?
おばさん:あ、アンタはさっきの。いいとこにきたよ、あのね、さっき雪菜ちゃんのアパートに不審者が入って
いったんだよ。アンタ、見てきてくれないかい?
一樹:わかりました
一樹は急いで老朽化した金属階段を上がる
と、雪菜の家のチャイムをずっと鳴らしている男を発見する
不審者:おーい、出ておいで~。おーい、おーい
一樹:ねぇ、お兄さん、なにしてるの? そこに住んでるの、僕の知り合いなんだけど、お兄さん、だれ?
不審者:? っち
不審者は一樹を見て逃げる
一樹:あ、逃げた。待て!
一樹は追いかけるが、既に不審者の姿はなかった
一樹:あーあ……逃げられちゃったか
迷いながらも雪菜の安否を確認しようと再び金属階段を上り、ノックをする一樹
一樹:雪菜さん。……雪菜さん? 沖野です。……雪菜さん
急に扉が開き、雪菜が飛び出て一樹にしがみつく
一樹:わ?! 雪菜、さん?
雪菜:沖野さん……沖野さん、沖野さ、っ
雪菜をギュッと抱きしめる一樹
一樹:大丈夫ですよ。もう大丈夫だよ、雪菜さん
雪菜:うぅ……
一樹:ね、雪菜さん、僕の家に来ませんか? 僕の父、警官なんです
おばさん:そうしなよ、雪菜ちゃん
雪菜:でも、迷惑
一樹:迷惑なんかじゃありません
雪菜:沖野さん?
一樹:迷惑じゃありませんから、僕の家においで?
○沖野家
一樹:ということで、雪菜さんを家においてほしいんだけど
父:話は分かった。広瀬さん、こんな家でよければずっといてくれ
夕実:雪菜お姉ちゃんと一緒? 一緒、一緒、うれしいね、ララ
猫:にゃー
母:あらあら、雪菜ちゃん、こんなに体、冷えちゃって。お風呂用意してあるから、入ってらっしゃい
雪菜:え、でも
母:一人暮らしだなんて、怖かったでしょう? もう大丈夫よ。変な人なんてウチの人が撃退してくれるから、
ね? アナタ
父:ああ、もちろんだ
雪菜:あの、私もう大学生ですから
父:大学生でも子供は子供だ。君らを守るのが大人で、俺の仕事だ
雪菜:……沖野さん
父:ん?
一樹:はい?
父:……一樹、今、広瀬さんはパパに言ったんだよ?
一樹:父さん、自意識過剰じゃない? 雪菜さんは僕に声かけたんだよ?
母:あらあら、沖野さんじゃ分かりにくいわね。一樹のことは名前で呼んであげて
雪菜:一樹くん、ですか?
一樹:あ、うーん、はは
雪菜:なんです?
一樹:照れくさいけど嬉しいですね。名前で呼んでもらうの
雪菜:っ!
母:あらあら、二人とも、林檎みたいなほっぺ。ね、ララ?
猫:にゃー