平成 27 年 8 月 18 日 放送 大腸がん はやくみつけて 安心ね♪ ∼大腸がん検診を受けましょう∼ なめがた地域総合病院 内科 永田博之 司会者:はじめに、大腸がんとはどのような病気ですか? 永 田:大腸は長さ 1m50cm ほどの管状の臓器で、食べ物の残りかすから水分を吸収 して、便を作ります。また、便を溜めておくことも大事な働きです。その大腸 の内側の粘膜から発生した、異常に増殖する細胞の塊が大腸がんです。 司会者:大腸がんは稀な病気ですか? 永 田:残念ながら、稀ではありません。「自分にはがんはおこらないだろう」と誰し も考えます。しかし、現在、日本人の約 2 人に 1 人は何らかのがんにかかり、 3 人に1人はがんで死亡します。日本の 2013 年度の最新がん統計で、大腸が んの死亡数は、男女計で肺がん、胃がんに次ぐ 3 位です。年間約 47,000 人が 亡くなりました。決して珍しい病気ではないのです。 司会者:近年増えているがんと聞きましたが、原因はあるのですか? 永 田:遺伝的要因もありますが、食生活の欧米化による脂肪食の増加、喫煙・アルコ ールなどの生活習慣の要因も影響していると考えられています。肥満や運動不 足、糖尿病などもリスクですから、生活習慣病とも言えます。いわゆるメタボ 対策は大腸がんにも重要です。喫煙に関しては自分の努力で禁煙できれば、リ スクを減らせます。喫煙は肺がん、咽頭喉頭がん、食道がんなどの「がん」の みならず、心疾患・脳疾患など様々な疾患のリスクとなっています。副流煙か ら周りの家族の健康を守る意味でも禁煙をお勧めします。 司会者:大腸がんがあるとどのような症状になりますか? 永 田:早期がんでは、ほとんど症状はありません。また、進行がんでも、かなり病状 が進むまで気づきません。一般的な症状としては、がんからの出血で血便がで ます。排便時に、通過障害を来たし、便秘や下痢を繰り返しおこす方もいます。 また、腹の張り感や腹痛がでる方もいます。明らかな血便としては自覚できな くても、少量の出血が持続するため、次第に貧血や体重減少を来たす方もいま す。痔だと思って長年血便を放置している方も多いようです。本当に痔でよい のか調べた方が良いかもしれません。 1 司会者:大腸がんに対する治療はありますか? 永 田:最初でも説明したように、大腸がんは腸の内側の粘膜から発生します。ごく早 期のがんであれば、腸の粘膜内にとどまっています。大腸内視鏡で観察しなが ら、内視鏡的に切除できる場合があります。顕微鏡検査で安全に切除できたこ とが確認できれば、そこで治療は終了します。一方で、内視鏡切除では完全に 治すことが難しいと判断すれば、CT などの画像検査結果を踏まえ、がんの進 行度を評価する必要があります。その進行度を、「病期」または「ステージ」 と言います。医療ドラマなどで「ステージ 4 の進行がん」などと、聞いたこと があると思います。がんが進行すれば、リンパ節や他臓器へ転移または浸潤し て拡がっていきます。ステージや症状などに基づき治療を検討します。一般に は、手術や化学療法などを組み合わせて、がんの根治をめざします。また、が んの発生部位や病状によっては、手術の時に人工肛門を作らざるを得ないこと もあります。 司会者:予防法はありますか? 永 田: 「原因」でも説明しましたが、癌の発生にはいろいろな要因が関与しています。 健全な生活習慣に注意することはとても良いことですが、この生活をしていれ ば、大腸癌を確実に予防できるという方法はありません。症状のほとんどない 早期がんで見つけることが、まずは重要です。早期がんで見つかれば、身体へ の負担は小さい治療で、確実に治る可能性が高くなります。早期発見につなげ るため、大腸がん検診検査が推奨されています。 司会者:大腸がん検診はどのようなものですか? 永 田:安く・簡単・安全に、誰でも受けられる検査があります。それが便潜血検査で す。大腸がんなどの出血源があると、明らかな血便がなくても便に少量血が混 ざります。便潜血検査は、その血液を拾い上げる検査です。病院でも希望すれ ばできますが、市町村や職場の検診で受けられます。一般に、大腸がん検診を 1,000 人受診すると、約 70 人が陽性になり、うち 1 人から 2 人に大腸がんが 見つかります。40 歳以上は、1 年に 1 回の検診を受けることが推奨されます。 陽性であれば、大腸内視鏡検査でさらに精査を行います。「有効性評価に基づ く大腸がん検診ガイドライン」に述べられていますが、便潜血検査で早期診断 につながると、死亡率は 60%から 80%ほど下がり、進行がんが約 50%減りま す。早期がんで発見できれば、進行癌で必要な治療は不要になり、医療費の抑 制にもつながります。がん検診の受診率は、以前と比べると上がってきていま す。2013 年の国民生活基礎調査結果で、全国 40 歳から 69 歳の男女計大腸が ん検診受診率は 37.9%です。我が茨城は 36.8%という結果です。さらなる受 診率向上が期待されます。 2 司会者:大腸内視鏡検査について教えてください。 永 田:下剤できれいにした大腸に、肛門から直径 10mm ほどの管状の内視鏡をいれ て検査します。大腸がんやポリープ、腸炎などの観察に加え、細胞をつまみだ す生検検査やポリープ切除なども可能です。近年粘膜内にとどまる腫瘍であれ ば、多少大きい腫瘍でも内視鏡的に切除が可能になってきています。まだ、可 能な施設は限られますが、大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術法(ESD 法)など の技術は日々進歩しております。一方で、大腸内視鏡検査は、お尻から管が入 り恥ずかしいという心理面や、痛いのではないかという先入観から、受けたく ない検査と思う方が多いと思います。我々も、できるだけ痛みが出ないように 工夫しています。おなかに傷などがない方では、それほど痛みなく検査できる 場合もあります。また、施設によっては、痛み止めや鎮静剤を用いて検査する 病院もあります。検診で陽性と出ているにもかかわらず、内視鏡検査を受けな いでいる方がいます。それでは、検診を受けた意味がなくなるので、精密検査 を受けましょう。 司会者:他の精密検査は可能ですか? 永 田:一般的な精密検査としては大腸内視鏡検査が推奨されています。どうしても挿 入がしにくい方では、小腸内視鏡技術を応用して、奥まで観察する施設もあり ます。しかし、まだ可能な施設は限られます。バリウム注腸検査は、一般的に 普及している検査で推奨されていますが、病変が見つかった場合には、内視鏡 検査が必要となります。CT や MRI を用いた大腸検査も、技術的には進歩し つつありますが、まだ一般的ではありません。大腸内視鏡検査が必要であるが、 大腸内視鏡挿入が技術的に困難な患者に、2014 年 1 月から大腸カプセル内視 鏡での観察が保険適応になりました。将来的には、できるだけ安全で、負担の 小さい検査法が一般に普及されることが望まれます。 司会者:最後にまとめをお願いします。 永 田:繰り返しになりますが、大腸がんは他人事ではありません。皆様自身や皆様の 周りの大切な方、誰にでも起こりうる疾患です。日々健康的な生活を意識しま しょう。そして、大腸がんの早期発見が重要です。周りの方も誘って、大腸が ん検診を受診しましょう。 3
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