インドシナ半島の陸路物流 三木会 2006年4月20日 日本貿易振興機構 海外調査部アジア大洋州課 井田浩司 1 インドシナ諸国の比較 タイ 人口(100万人) カンボジア 64.2 13.5 ラオス ミャンマー 5.8 ベトナム 54.3 82.0 39.6 名目GDP(10億ドル) 143.0 3.9 2.1 n.a. 1人当たりGDP(ドル) 2,246 294 371 158 489 外国投資(10億ドル) 134.8 6.4 12.8 7.6 50.6 (注)人口は2004年、その他は2003年のデータ。(出所)アジア開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)、各国統計 ミャンマー ラオス タイ ベトナム 2 1 インドシナ諸国の投資受入経緯 タイ 1960 カンボジア ラオス シアヌーク殿下 1963 トヨタ進出 米軍・南越軍空爆 1970 ミャンマー 1959 ベトナム 1962 1960 内戦 ベトナム戦争 1970 ロンノル政権 1975 ポルポト政権 1978 ベトナム軍侵攻 1975 人民革命党政権 鎖国 1975 (ビルマ式社会主義) 1978 カンボジア侵攻 (急激な社会主義化) 1980 1990 1997 通貨危機 2000 1989 ベトナム軍撤退 1986 新思考政策 1991 カンボジア和平 1988 外国投資法 1993 総選挙(UNTAC) 1994 新外国投資法 1998 総選挙 1997 ASEAN加盟 1979 中越戦争 1988 外国投資解禁 1986 ドイモイ 1991 カンボジア和平 1995 スーチー氏解放 1992 日本円借款再開 貿易投資規制強化 第1次投資ブーム 1999 ASEAN加盟 第2次投資ブーム 2003 総選挙 3 インドシナ諸国の日系企業数 1994 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 バンコク日本人 商工会議所 1,178 1,162 1,165 1,164 1,156 1,170 1,207 1,234 ホーチミン日本商工会 91 209 213 225 241 256 264 271 ベトナム日本商工会 (ハノイ) − 110 115 109 124 133 145 166 ヤンゴン日本人 商工会議所 − 79 70 67 66 61 59 65 カンボジア日本人 商工会 − − 30 34 37 38 33 35 (注)ラオスには日本人商工会はない。 (出所)日本アセアンセンター 4 2 日系企業の インドシナ諸国間物流ルート ミャンマー ● ハノイ(166社) ラオス ビエンチャン ● ヤンゴン(65社) ● バンコク(1,234社) タイ ● ベトナム カンボジア ● ホーチミン(271社) <1980年代まで> <1990年代以降> 半島内の日系企業集積地はバンコクのみ ベトナム、ミャンマーに日系企業進出 →半島内都市間の物流ニーズなし →半島内都市間の物流ニーズ徐々に発生 (注)都市名のカッコ内は日系企業数(2004年)。 5 陸路物流シフトの必要性 ハノイ・ホーチミン・ヤンゴン:裾野産業が未発達 産業集積地であるバンコクから調達要 リードタイム短縮、在庫圧縮(SCM) 「Door to Door」「出したい時に出せる」利便性 ①バンコク∼ハノイ・ルート ②バンコク∼ホーチミン・ルート ③バンコク∼ヤンゴン・ルート 6 3 ①バンコク∼ハノイ・ルート ハノイ ラオス国道9号線 ● ノンカイ(タイ) ビン ビエンチャン(ラオス) 第二国際メコン橋(建設中) ● コンケン ● ● ● ドンハ デンサワン(ラオス) ラオバオ(ベトナム) ムクダハン(タイ) サバナケット(ラオス) (第二メコン国際橋建設中) バンコク (地図出所)http://www.eastedge.com/laos/map.html 7 ①バンコク∼ハノイ・ルート 陸上輸送ルート 区間 ①バンコク∼コンケン ②コンケン∼ノンカイ ③ビエンチャン∼サバナケット ④サバナケット∼デンサワン タイ ラオス ⑤ラオバオ∼ドンハ ⑥ドンハ∼ビン ベトナム ⑦ビン∼ハノイ 計 距離 時間 419km 5時間① 180km 3時間① 450km 6時間② 214km 3時間② 82km 2時間③ 290km 4時間③ 290km 5.5時間④ 1,925km 4日 輸送費用 2,500ドル <第二メコン国際橋開通後(2006年末予定)> ②コンケン∼ムクダハン 計 タイ 260km 4時間 1,555km 3日 (出所)経済産業省「メコン地域における陸路物流網構築に関わる実証事業報告書」 8 4 ①バンコク∼ハノイ・ルート 陸・海・空の輸送ルート比較 ルート 区間 輸送日数 輸送費用 海路 バンコク港 ∼ハイフォン港 バンコク∼ハノイ 10∼15日 1,000ドル 4日(3日) 2,500ドル ドンムアン空港 ∼ノイバイ空港 2日 4,000ドル 陸路 空路 (注)輸送費用はいずれも20フィートコンテナ1本分相当。 (出所)経済産業省「メコン地域における陸路物流網構築に関わる実証事業報告書」 ⇒海上輸送の補完ルートとして実用化の可能性に期待 9 ②バンコク∼ホーチミン・ルート (第二東西回廊) アランヤプラテート(タイ) きずな橋 ポイペト(カンボジア) きずな端 プノンペン ホーチミン ネアックルンのフェリー ネアックルン (橋なし) バベット(カンボジア) モクバイ(ベトナム) (地図出所)http://www.eastedge.com/cambodia/map.html 10 5 ②バンコク∼ホーチミン・ルート 陸上輸送と海上輸送の比較 陸 路 区間 国 距離 ①バンコク ∼アランヤプラテート タイ 250km ②ポイペト∼プノンペン カンボジア ∼バベット ③モクバイ∼ホーチミン ベトナム 計 海 路 バンコク港 ∼サイゴン港 輸送費用 輸送費用 (1kmあたり) 5時間 290ドル 1.16ドル 588km 15時間 950ドル 1.62ドル 75km 2時間 150ドル 2.00ドル 913km 最短2日 1,390ドル − − 時間 2∼3日 580ドル − (注)陸路輸送費用は10トントラック1台分、海路輸送費用は20フィートコンテナ1本分。 (出所)山九株式会社の実地調査(2004年12月時点) 11 ②バンコク∼ホーチミン・ルート 陸路シフトへの課題 輸送コストが高い(海上輸送の2倍超) (理由①)ポイペト∼バベット間の輸送需要がない→プノンペン経由 (理由②)カンボジア国内の物流量が少ない→片荷 外国貨物のカンボジア通過(イントランジット輸送)が困難 →カンボジアで輸入・輸出通関要 →輸入関税を2回納付 メコン河を渡る橋がない →ネアックルンでフェリー使用(運航時間:夜明け∼日没) カンボジア国内の道路状況が悪い →プノンペン∼ホーチミン間はコンポンチャム経由が主流 ⇒実用化には多くの課題 12 6 ③バンコク∼ヤンゴン・ルート メソート(タイ) コーカレイ ヤンゴン ミャワディ(ミャンマー) ●● 東西回廊 バンコク 13 (地図出所)http://www.eastedge.com/thai/map.html ③バンコク∼ヤンゴン・ルート 陸上輸送と海上輸送の比較 区間 ①バンコク∼メソート 陸 路 ②メソート∼コーカレイ ③コーカレイ∼ヤンゴン 計 海 路 距離 時間 輸送費用 490km 12時間(1日目) 75km 4時間(2日目) 道路状況 290ドル 極めて良好 440ドル 極めて劣悪 良好 380km 15時間(3日目) 945km 3日 730ドル ①バンコク市内 ∼バンコク港(陸路) 20∼30km 1∼2時間 80ドル ②バンコク港 ∼ヤンゴン港 約4,000km 20日 1,000ドル ③ヤンゴン港 ∼ヤンゴン市内(陸路) 20∼30km 1∼2時間 50ドル 計 約4,000km 約1ヵ月 1,130ドル 極めて良好 − 良好 (注)陸路輸送費用は10トントラック1台分、海路輸送費用は20フィートコンテナ1本分。 (出所)山九株式会社の実地調査(2004年12月時点) 14 7 ③バンコク∼ヤンゴン・ルート 陸路シフトの利点と問題点 <利点> 輸送日数の大幅短縮(約1ヵ月→最短3日) 輸送コストの削減(1,130ドル→730ドル) <問題点> ミャンマー側国境付近の道路状況が劣悪 ミャンマー側の国境通関手続きが煩雑 ミャンマー側国境地帯の治安状態が不安定 ミャンマー政府による突然の国境封鎖 ⇒陸路シフト効果大きいが、ミャンマー側に課題山積 15 ③バンコク∼ヤンゴン・ルート 国境付近の道路状況 ↓ミャンマー側ミャワディ付近の山岳道路 ↑タイ側メソート付近の山岳道路 16 8 各ルートの陸路シフト効果検証 物流 ニーズ ①バンコク ∼ハノイ ○ ②バンコク ∼ホーチミン ◎ ③バンコク ∼ヤンゴン △ 輸送コスト 削減効果 輸送時間 短縮効果 × ◎ ($1,000→$2,500) (10~15日→4日) × △ ($580→$1,390) (2~3日→2日) ○ ◎ ($1,130→$730) (1ヵ月→3日) 制度面での 障害 総合評価 ◎ ○ × × △ △ TEL:03-3582-5179 FAX:03-3582-5309 E-mail:[email protected] 完 17 9
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