腎臓がんに対する炭素イオン線3週12回照射法の第I/II相試験計画書

臨床研究計画書
「腎臓癌に対する炭素イオン線 3 週 12 回照射法の第 I/II 相臨床試験」
A phase I/II clinical trial of Carbon-ion therapy in 12 fractions over 3 weeks
for patients with carcinoma of kidney
研究組織名
放射線医学総合研究所
重粒子医科学センター
研究責任者
氏名 辻 比呂志
住所 千葉市稲毛区穴川4-9-1
電話番号 043-206-3360
FAX 番号 043-206-6506
E-mail Address [email protected]
作成日 2011 年 10 月 24 日 第 1 版
2011 年 11 月 5 日 第 2 版
2011 年 11 月 14 日
2011 年 11 月 21 日
2011 年 12 月 20 日
2012 年 1 月 30 日
2012 年 2 月 15 日
2012 年 5 月 18 日
承認日 2012 年 6 月 6
1
第3版
第4版
第5版
第6版
第7版
第8版
日 第9版
1 研究の概要 ........................................................................... 5
2 背景 ............................................................................... 6
3 スタディデザイン .................................................................... 8
3-1 デザイン ............................................................................ 8
3-2 臨床試験の構成の説明 ................................................................ 8
4 目的と評価指標(エンドポイント) ..................................................... 8
4-1 研究の目的 .......................................................................... 8
4-2 評価指標(エンドポイント) .......................................................... 8
5 研究対象の選択 ...................................................................... 9
5-1 適格条件 ............................................................................ 9
5-2 不適格条件 ......................................................................... 10
6 インフォームド・コンセント...........................................................10
6-1 患者への説明 ....................................................................... 10
6-2 同意の取得 ......................................................................... 11
6-3 妥当性の審査および承認 ............................................................. 11
7 登録と追跡 ..........................................................................11
7-1 登録 ............................................................................... 11
7-2 追跡調査および調査期間 ............................................................. 11
8 予定症例数と試験期間 ................................................................11
8-1 目標症例数 ......................................................................... 11
8-2 試験期間 ........................................................................... 12
9 試験治療の内容 ......................................................................12
9-1 治療計画 ........................................................................... 12
9-2 位置決め法 ......................................................................... 12
9-3 線量指示および線量分割 ............................................................. 12
10 必要な評価項目および検査 ...........................................................12
10-1 治療開始前検査 .................................................................... 12
10-2 治療期間中および観察期間、追跡期間中の評価・検査 .................................. 13
11 予期される臨床上の利益、危険性または不便、試験治療の中止基準等 .......................13
11-1 予期される臨床上の利益 ............................................................ 13
11-2 予期される危険性又は不便 .......................................................... 13
11-3 用量制限毒性(DLT) ............................................................... 14
2
11-4 試験治療の中止基準 ...............................................................14
11-5 有害反応/有害事象に対するその他の対処方法 ........................................14
11-6 予期できない有害反応/有害事象に対する対処方法 .................................... 15
12 重粒子線治療終了後の治療 ...........................................................15
13 定期的な臨床試験の評価と報告 ........................................................15
13-1 プロトコール運用委員会 ............................................................ 15
13-2 目的、時期、結果の報告 ............................................................ 15
13-3 研究実施状況の報告 ................................................................ 15
14 登録の終了と中止および本研究計画改訂 ................................................15
14-1 症例登録の終了 .................................................................... 15
14-2 試験の中止 ........................................................................ 15
14-3
研究計画書からの逸脱 .............................................................. 16
14-4
研究計画書等の変更 ................................................................ 16
15 報告義務のある有害反応/有害事象 ....................................................16
15-1 有害反応/有害事象の報告義務 ...................................................... 16
15-2 担当医師の報告義務 ................................................................ 17
15-3 研究事務局/プロトコール運用委員会の義務 .......................................... 18
16 解析関連事項 .......................................................................18
16-1 評価指標(エンドポイント)の定義と解析時の症例の取り扱い .......................... 18
16-2 解析時の症例の取り扱い ............................................................ 18
17 研究結果の発表 .....................................................................20
17-1 登録例の解析とデータ公表 .......................................................... 20
17-2 最終解析のデータ公表 .............................................................. 20
18 倫理的事項 .........................................................................20
19 被験者の個人情報等の保護に関する措置 ................................................20
20 被験者に生じた健康被害の補償・賠償および保険への加入 .................................21
20-1 健康被害に対する補償 .............................................................. 21
20-2 保険への加入 ...................................................................... 21
21 記録の保存 .........................................................................21
22 試料等の保存 .......................................................................21
23 研究計画の登録および研究結果の公表 ..................................................21
3
24 研究組織体制 .......................................................................22
25 研究に係る資金源、および起こりうる利益の衝突 ........................................23
26 文献リスト .........................................................................23
27 資料...............................................................................23
4
1 研究の概要
研究課題名
腎臓癌に対する炭素イオン線 3 週 12 回照射の第 I/II 相臨床試験
目的
本研究の目的は、腎臓癌に対する短期小分割(3 週 12 回照射)炭素イ
オン線治療の安全性と有効性を臨床的に検証することである。
デザイン
本研究は、腎臓癌患者を対象とした介入のある臨床研究であり、非ラ
ンダム化・オープン試験である。
研究対象
腎臓癌の重粒子線治療適応症例を対象とする。
目標症例数
10 症例
研究方法
1)炭素イオン線治療の安全性評価
対象患者の照射後 3 ヶ月以内の早期有害反応、3 ヶ月以降の晩期
有害反応の有無を観察し、問題がなければ約 10%程度の線量増加
を行う。
2) 炭素イオン線治療の有効性評価
局所制御率、生存率等の評価を行う。
3)追跡調査
抗腫瘍効果が判定可能な症例については、照射後 6 ヶ月以内の治
療効果(局所一次効果)の評価を行う。
評価指標
【主要評価指標(プライマリーエンドポイント)
】
・正常組織早期有害反応
【副次的評価指標(セカンダリーエンドポイント)】
・遅発性有害反応
・局所制御率
・生存率
研究期間
登録期間:承認日 ~ 2014年 3月 31日
追跡期間:登録終了後 5 年間
研究実施施設
独立行政法人放射線医学総合研究所
重粒子医科学センター
5
2 背景
2-1 腎癌とその治療法について
我が国において 2002 年に新たに診断された腎細胞癌は 7405 人(男性 5063 人、女性 2342
人)である。罹患率は、1975 年に人口 10 万人あたり男性、女性それぞれ 2.5 人、0.8 人 で
あったものが、2002 年には 8.2 人、3.6 人と年々増加の一途をたどっている。画像診断の進
歩によりこれまで発見されなかった無症状の早期癌が多数発見されるようになったと同時
に進行癌も増加しており、喫煙と肥満,高血圧といった因子が複合的に作用して発癌のリス
クを高めていると考えられている。
腎癌の治療法としては、外科的切除が根治的治療の第一選択とされている。腎癌は症例
ごとに進行のスピードが異なり、緩徐進行性の転移症例は転移巣も含めて切除可能な場合は
根治を目指して切除することが推奨されている。
一方、従来の抗癌剤の奏功率は 10%程度であり良好とは言い難い。また腎癌は、他の腫
瘍に比べ宿主の免疫応答が腫瘍増殖に大きく影響を及ぼしていると考えられており、インタ
ーフェロンやインターロイキン 2 などのサイトカイン療法が行われているが、いずれの治療
の奏効率も 20%前後であり、有力な根治的治療法とは言いがたい。また最近では、血管新生
を抑制するチロシンキナーゼ阻害薬や mTOR 阻害薬などの分子標的薬の腎細胞癌に対する有
効性が明らかとなり、我が国においても、切除不能または転移性腎細胞癌に対していくつかの分
子標的薬剤が認可され、広く使用されるようになったが、その効果は限定的であり、腫瘍の完全
消失が得られることはほとんどない。
比較的サイズの小さな腫瘍に対しては、部分切除やラジオ波焼灼術などの機能を温存し
うる局所療法が用いられることが多くなっている(1,2)が、ラジオ波焼灼術では適応サイズ
に限界があり、低侵襲で大きな腫瘍にも適応できる新たな局所療法の開発が期待されている。
放射線治療は、従来、根治的治療に用いられることは殆どなく、術前・術後の併用療法
や転移症例に対する緩和的治療として用いられるのみであった。根治的放射線治療が困難で
あった理由として、腎癌が放射線抵抗性腫瘍であることに加えて、腎臓周囲に耐容線量が低
い臓器が多く、conventional な放射線治療では治癒を期待できる線量を投与するのが困難
とされてきた。しかし、最近では、手術不能症例、手術拒否症例に対して定位放射線治療が
行われるようになり、比較的良好な成績が報告されている。Beitler らの報告(3)では、
40Gy/5fr.による定位放射線治療が行われた手術拒否腎癌症例 9 例のうち、追跡期間中央値
26.7 ヶ月で 4 例が生存、8 例の局所制御中であった。Wersall らの報告(4)では、医学的に
切除不能であった腎癌 8 例を対象に 40Gy/8fr.で治療を行い、8 例中 7 例で局所制御良好で
あった。Walsh ら(5)による基礎研究は 48Gy/3fr.の hypofractionation を定位照射を行った
結果、肉眼的な腫瘍の縮小、また病理学的な腫瘍の消失を認め、hypofractionation による
根治的照射の有効性における裏付けとなっている。
2-2 腎癌に対する炭素イオン線治療の合理的根拠
当院においては、これまで 11 症例の腎臓癌に対する炭素イオン線治療を行っている(6)。
外科的切除を選択しなかった理由としては、高齢、合併症による手術非適応症例や、手術拒
否症例等である。病期は I 期が多く、投与線量は、16 回分割で総線量 72.0GyE から 80.0GyE
6
に線量増加を行った後、消化管が近接していた症例では 64.0GyE に線量を低下させ、その後
は周辺臓器の位置関係や腫瘍径等により総線量 64.0〜80.0 GyE の範囲で選択している。11
例中 1 例でのみ局所再発を認め、遠隔転移は 3 例、原病死は 1 例である。安全性に関しては、
初期の 80.0GyE 症例 1 例で grade 4 の皮膚障害が発生したが、線量分布の改善により、その
後 grade 2 以上の有害事象は認めていない。これらの結果を踏まえると、腎癌に対する重粒
子線治療は、新たな治療法として大きな期待が持てるものである。さらに、定位放射線治療
での成果や他疾患に対する重粒子線治療の短期化の成果から腎癌に対してもより短期間で
安全かつ有効性の高い治療法が確立できる可能性が高い。
今回、過去の 16 回照射での経験をもとに 12 回照射の短期小分割照射の臨床試験を計画
しているが、この分割法における期待される治療比(Therapeutic ratio)の向上の理論的根
拠としては、
1)腎癌のα/β値が、2.6〜6.9 であり、一般的な腫瘍よりα/β値が小さく、また小腸、
大腸などといった周囲の正常組織と同等〜やや小さいと推定されること
2)高 LET(線エネルギー付与;Linear Energy Transfer)放射線である重粒子線では、X 線
などの低 LET 放射線と比較して正常組織反応における分割の効果が低いため、短期小分
割によるリスクが少ないこと
の 2 点があげられる。低 LET 放射線におけるα/β値は、高 LET の重粒子線のそれとは異な
る可能性があるが、異なる分割での炭素イオン線治療同士の効果を相対的に推計するための
X 線におけるα/β値を用いて生物学有効線量(BED: biologically effective dose)を求め
ると下記の通りになる。
分割回数
1 回線量
総線量
BED3
BED5
BED10
16
4.0
64.0
149.3
115.2
89.6
16
4.5
72.0
180.0
136.8
104.4
16
5.0
80.0
213.3
160.0
120.0
12
5.0
60.0
160.0
120.0
90.0
12
5.5
66.0
187.0
138.6
102.3
12
6.0
72.0
216.0
158.4
115.2
これまでの重粒子線治療にて良好な局所制御が得られた線量は総線量 64.0〜80.0GyE の 16 分
割である。腎臓癌組織のα/β値が、2.6〜6.9 程度とされており、3 または 5 と仮定した場合、
これまでにもっとも多くの症例で用いた 72.0GyE/16 分割の BED3、BED5 はそれぞれ 180.0Gy、
136.8Gy となる。12 回分割とした場合、この BED3、BED5 に相当する線量は 66.0GyE/12 分割(BED3
187.0、BED5 138.6)になる。本プロトコールではこの線量(66.0GyE/12 回分割)を開始線量
とし、16 回分割での 80GyE に相当する 72.0GyE への線量増加を予定する。
7
3 スタディデザイン
3-1 デザイン
本研究は、癌患者を対象とした介入研究であり、非ランダム化・オープン試験である。
3-2 臨床試験の構成の説明
1) 担当医師は、患者の適格性を確認した上で、患者へのインフォームド・コンセント(研究
内容の説明に対する文書による同意)を本人から得た上で、患者の研究参加の登録を行う。
登録は定められた様式の適格性確認票(資料 1)を記載し、研究事務局に提出する形で行う。
2)担当医師は、規定された照射方法で重粒子線治療を実施する。
3)担当医師は照射に伴う急性期の有害反応について判定し、記録する。
4)担当医師は計測可能病変を有する患者については、6 ヶ月以内に治療前に病巣の大きさを評
価したのと同種の画像を用いて局所一次効果の評価を行う。
5)再発を認めた場合の救済治療については制限を設けない。
6)担当医師は、有害反応が認められた場合、本研究計画書 11-4「試験治療の中止基準」、11-5
「有害反応/有害事象に対するその他の対処方法」、11-6「予期できない有害反応/有害事象
に対する対処方法」
、15「報告義務のある有害反応/有害事象」に従い、適切な対処を行う。
4 目的と評価指標(エンドポイント)
4-1 研究の目的
本研究の目的は、腎臓癌に対する炭素イオン線 3 週間 12 回照射法の安全性と有効性を検討するこ
とである。
4-2 評価指標(エンドポイント)
4-2-1 主要評価指標(プライマリーエンドポイント)
正常組織早期有害反応
有害反応の評価には、「National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for
Adverse Events (NCI-CTCAE Version 4.0)」(7)を用いることを原則とする。「RTOG Acute
Radiation Morbidity Scoring Criteria」(8)による評価も補助的に用いる。観察時点で項目ごとに
スコアリングし、日付とともに登録する。
4-2-2 副次的評価指標(セカンダリーエンドポイント)
1)
遅発性有害反応
有害反応の評価には、「National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for Adverse
Events (NCI-CTCAE Version 4.0) 」を用いることを原則とする。「RTOG/EORTC Late Radiation
Morbidity Scoring Criteria」および「RTOG/EORTC Late Effects Normal Tissues(LENT) Scoring
System, Subjective, Objective, Management, and Analytic (SOMA) Scale」(9)による評価も
補助的に用いる。観察時点で項目ごとにスコアリングし、日付とともに登録する。評価項目として、皮
膚(視診、症状等)、皮下組織(視診、触診、症状等)、消化管(症状、内視鏡所見等)、腎機能(血液
検査、尿検査、クレアチニンクリアランス、レノグラム等)を対象とする。
2)
局所制御率
局所制御の評価には、CT あるいは MRI による腫瘍サイズの変化の有無を主体に評価する。造影剤
8
の使用が可能な場合には造影 CT、造影 MRI による血流の評価も行う。また拡散強調画像を含む各
種 MRI 画像による信号変化や超音波診断画像も参考とする。これらの画像検査は放医研にて実施
する。画像によって再発が疑われるが確診に至らない場合は、生検等による効果判定も考慮す
る。
照射開始後 6 ヶ月までに照射領域内において観察された最大の効果を一次効果とし、RECIST
ガイドライン(New response evaluation criteria in solid tumours: Revised RECIST guideline
(version 1.1)) (10)を用いて評価する。
3)
生存率
粗生存率、疾患特異生存率(原病生存率)および無再発生存率の算定は重粒子線治療開始日を
起算日として Kaplan-Meier 法にて求める。
5 研究対象の選択
放射線医学総合研究所の担当研究者が、研究の対象となり得る患者を以下の条件に従って選択
する。
5-1 適格条件
1) 組織診断の確定した腎細胞癌。ただし、画像診断によって、明らかな腎細胞癌(淡明細胞癌)
と診断された症例は、組織診断を必要としない。画像診断のみの場合は、放射線医学総合研
究所(以下、放医研)にて MRI、CT(造影可能な場合は Dynamic study を含む)を撮影し診断す
る。
2) 組織型として、淡明細胞癌、嫌色素細胞癌または乳頭状腎癌である。
3) TNM 分類(第 7 版(2009)) (11)により、T1/T2N0M0 かつ未治療症例、または T3 以上の局所進
行癌(ただし、腫瘍血栓陽性例は除外する)である。進行癌症例については、リンパ節転移、遠
隔転移があっても長期の予後が期待される場合には適格とする。
4) ECOG Performance status が 0 または 1 である。
ECOG Performance status
0: 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1: 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。
2: 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3: 限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4: 全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす。
5) 患者の本研究の諸規定に対する理解があり、本研究に参加することへの説明を受けた上で、
自由意志に基づく文書による同意が得られている。
6) 登録時年齢が 20 歳以上である。
9
5-2 不適格条件
1) 当該照射部位に放射線治療の既往がある。
2) 分子標的薬が先行して使用されている。
3) 消化器に対して処方線量の 60%以上の線量が照射される。
4) 腫瘍サイズが最大径 15cm を超える。
5) Bellini 管癌等の特殊な組織型腫瘍である。
6) 透析腎癌である。
7) ECOG Performance status が 2 以上である。
8) 予後が 6 ヶ月に満たないと考えられる。
9) 活動性の重複癌がある。
10)
照射領域に活動性で難治性の感染を有する。
11) 医学的、心理学的、または他の要因により医師が本研究の対象として不適格と考えられる。
6 インフォームド・コンセント
6-1 患者への説明
担当医師は試験実施にあたって、下記内容について説明文書を用いて対象患者(被験者)に十
分に説明し、患者が質問する機会と本試験に参加するか否かの判断をするのに十分な時間を与
えなければならない。また、質問に対して患者が満足するように答えなければならない。

本試験が研究を目的とすること。

研究の意義、目的、方法および期間。

被験者として選定された理由。

被験者の研究への参加予定期間。

研究に参加する予定の被験者数。

予期される臨床上の利益及び危険性ならびに必然的に伴う心身に対する不快な状態(被験者
にとって予期される利益がない場合には、被験者にその旨を知らせなければならない)。

研究に関連する健康被害が発生した場合に被験者が受けとることのできる補償及び治療。

研究への参加は被験者の自由意思によるものであり、被験者は、被験者の研究への参加を随
時拒否又は撤回することができること。又、拒否・撤回によって被験者が不利な扱いを受けること、研
究に参加しない場合に受けるべき利益を失うことはないこと。

研究への参加の継続について被験者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合
には速やかに被験者に伝えられること。

研究への参加を中止させる場合の条件又は理由。

研究倫理審査委員会が研究記録を閲覧できること。その際、被験者の秘密は保全されること。
又、同意文書に被験者が署名または記名捺印することによって閲覧を認めたことになること。

被験者の希望により、他の被験者の個人情報保護や研究の独創性に支障のない範囲内で、研
究計画書及び研究の方法に関する資料を入手又は閲覧できること。

研究の成果により特許権等が生み出される可能性があること及び、特許権等が生み出された場
合のその権利の帰属先。
10

研究の結果が公表される場合であっても、被験者のプライバシー等は保全されること。

研究に係る資金源、起こりうる利益の衝突及び研究者等の関連組織との関わり。

試料等の保存及び使用方法並びに保存期間。

被験者に金銭等が支払われる場合にはその内容。

研究担当者の氏名、職名。

研究に関する問い合わせ、苦情等の窓口の連絡先。
6-2 同意の取得
患者が試験の内容をよく理解したことを確認した上で、本試験への参加について本人の意志を確
認する。患者本人が試験への参加に同意した場合は、説明同意文書末尾の同意書に署名または
記名捺印を得る。同意書原本は放医研内研究事務局に保管し、その複写を患者本人に手渡すとと
もに患者病歴にも保存しておく。
6-3 妥当性の審査および承認
重粒子線治療開始前に適格性確認表、患者病歴、説明文書同意書を放射線治療部会に提出し、
審査承認を受ける。
7 登録と追跡
7-1 登録
適格条件を満たし、かつ不適格条件に該当しない患者は、本研究計画の対象患者として登録さ
れる。この際、以下の記録文書が、研究事務局に保管される。
1) 患者の同意書
2) 患者の適格性を示す文書(適格性確認表;資料 1)
3) 患者の主訴、既往歴、現病歴などを示す文書(患者病歴;資料 2)
4) 研究登録書(資料 3)
5) 放射線治療部会審査判定書
6) 放射線治療部会審査判定通知書
7-2 追跡調査および調査期間
登録された症例は全例が追跡対象となる。そのため、試験期間中は、患者が追跡調査を拒否した場
合を除き、全例に対して追跡調査を可能な限り行う。主要評価指標である早期有害反応については、
最終症例登録後 3 ヶ月以内に評価し、この治療法の安全性を評価する。計測可能な対象病変を照射
開始後 6 ヶ月までに照射領域内において観察された最大の効果を評価する。副次評価指標である遅
発性有害反応発生率、局所制御率、生存率については、最終症例登録から 2 年後に集計を行い、こ
の線量分割の安全性および治療効果を評価する。生死の確認、再発の有無、その後の遅発性有害
反応に関しての追跡調査期間は最終症例登録より 5 年間とする。
8 予定症例数と試験期間
8-1 目標症例数
10 症例 (1 線量レベルにおいて 5 症例を登録し、少なくとも 2 レベルを予定する)
11
8-2 試験期間
登録期間は承認日~2014 年 3 月 31 日とする。ただし、予定症例数に達した時点で登録は終了する。
登録終了 2 年後に遅発性有害反応に関する集計、評価を行うが、最終的な追跡調査期間は登録
終了後 5 年間とする。
9 試験治療の内容
9-1 治療計画
9-1-1 患者固定法および治療計画 CT 撮影法
患者ごとに固定具を用いて固定を行う。また、位置決め用の金属マーカーを腫瘍近傍の腎臓
内に刺入しする。CT 画像は患者が固定された状態で、呼吸同期装置(12) を用いて呼気時の
みスライス厚 5mm 以下で撮影する。
9-1-2 線量分布作成
治療計画用コンピューターにて線量分布計算、照射に必要なパラメータ(媒介変数)の出力を
行う。
9-2 位置決め法
照射位置の確認は、治療計画に使用された CT 画像から作成された再構成画像(DRR : digitally
reconstructed radiograph)と照射室内における透視画像との照合により行う。透視画像の撮像は
自然呼気時に行い、骨構造ならびに位置決め用金属マーカーの位置を DRR と照合する。炭素イ
オン線照射も呼吸同期装置を用いて、呼気時にのみ照射する。
9-3 線量指示および線量分割
生物学的効果比(RBE)の規定や線量の表記はこれまでの臨床試験と同一とする。すなわち、拡
大ブラーグピーク(SOBP: spread out of Bragg peak)内の線量平均 LET が 80 keV/μm になる点で
RBE=3.0 となるように基準化する。物理線量に RBE をかけた線量を光子等価線量(photon
equivalent dose)と定義し、GyE の単位を用いる。SOBP 内の光子等価線量が一定になるように物
理線量分布を作成し、その線量を 100%線量とする。線量分割は、1日1回、1 週間で 3—4 回を原
則とし、計 12 回 60.0 GyE を開始線量とする。運用委員会で必要性を認めた場合は 10%程度の線
量増減を行うものとする。
10 必要な評価項目および検査
10-1 治療開始前検査
治療前評価は紹介医の所属する施設または放医研において行なわれる。担当医師は、紹介
医により紹介された患者について、報告所見を確認し必要な検査を要請するか、または、放医
研においてこれを追加する。紹介施設の画像所見のみで腎癌と診断された症例については、放
医研にて Dynamic study を含む MRI、CT を撮影により診断する。ただし、造影剤等の薬剤にアレ
ルギーを有する患者に関しては、必ずしも行う必要はない。治療前の評価項目は以下のとおり
である。
1) 病歴
2) 自覚症状
12
3) 理学的所見
4) 臨床検査
a. 血算(RBC、Hb、Ht、網状赤血球(%)、WBC、分画、血小板数)
b. 血清学的検査(CRP、HBs-Ag、HCV-Ab)
c. 生化学(TP、Albumin、Ch-E、ALT、AST、γ-GTP、ALP、LAP、T-Bil、D-Bil、I-Bil、
LDH、Cr、eGFR、BUN、Na、K、Cl、HbA1c)
d. 検尿
5) 画像診断(CT、MRI、PET/CT、超音波、骨シンチ)
6) 患者の PS (Performance Status)
10-2 治療期間中および観察期間、追跡期間中の評価・検査
重粒子線治療開始日から 3 ヶ月間を観察期間とし、最終症例の観察期間が終了した時点で主
要観察項目(早期有害反応)の集計を行う。観察期間終了から全例の副次的観察項目の評価
が終了するまでを追跡期間とし、6 ヶ月間とする。その後も患者の予後、再発の有無、遅発性有
害反応出現の有無について経過観察を継続する。
10-2-1 有害反応評価のための検査
治療期間中は原則として 2 週に 1 回以上、観察期間中は 3 ヶ月に 1 回以上、追跡期間中は
6 ヶ月に 1 回以上、有害反応発生の有無、程度等の臨床所見の観察を行う。
有害事象の評価には、「National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for Adverse
Events (NCI-CTCAE Version 4.0) 」を用いることを原則とする。「RTOG (Radiation Therapy
Oncology Group) Acute Radiation Morbidity Scoring Criteria」による評価も補助的に用いる。
観察時点で項目ごとにスコアリングし、日付とともに登録する。
10-2-2 治療効果(局所一次効果)判定のための検査
計測可能病変を有する患者については、追跡期間中(6 ヶ月)に 1 回以上、対象病変の局所
一次効果を評価する。評価には、原則として治療前に病巣の範囲、大きさを確認した画像と同
じ画像を用いる。
11
予期される臨床上の利益、危険性または不便、試験治療の中止基準等
11-1 予期される臨床上の利益
重粒子線治療を行うことによって外科的切除と比較して身体的な侵襲を低減でき、治療前の
日常生活、社会生活に速やかに復帰することが可能であり、患者 QOL を維持できる。
11-2 予期される危険性又は不便
11-2-1 炭素イオン線治療により予期される主な早期有害反応
1) 皮膚:放射線皮膚炎
2) 消化管:小腸・大腸・直腸の粘膜炎、消化管イレウスなど
3) 下部尿路:血尿、腎出血など
11-2-2 炭素イオン線治療により予期される主な遅発性有害反応
1) 皮膚:放射線皮膚炎
2) 骨:骨炎、骨折、腐骨
13
3) 消化管:小腸・大腸・直腸の粘膜炎、粘膜潰瘍、穿孔、消化管イレウスなど
4) 下部尿路:血尿、腎萎縮、尿管狭窄、腎出血、血清クレアチニン値異常など
5) その他:高血圧、下肢リンパ浮腫など
早期有害反応とは、照射開始後 90 日以内に発生した有害反応で、最大反応(最も強い反応)をもっ
て評価する。遅発性有害反応とは、照射開始後 90 日以降に発生した有害反応で、同じく最大反応
(最も強い反応)をもって評価する。
11-3 用量制限毒性(DLT)
DLT は、以下のように設定する。
Grade 3 以上の放射線皮膚炎
Grade 3 以上の消化管症状(下痢、結腸炎、消化管イレウスなど)
Grade 3 以上の尿路症状(血尿など)
(上記以外の予期されない重篤な有害反応が発生した場合には、プロトコール運用委員会にて
DLT と判断することがある。)
11-4 試験治療の中止基準
1) 試験期間中に 11-3 に示す DLT が観察された場合には、治療を休止し、有害反応に対する適
切な支持療法を行う。
2) 支持療法により DLT が十分に回復(Grade 2 以下)した場合、重粒子線治療を再開する。
3) 重粒子線治療の延期(被験者である患者の体調不良や治療装置のメンテナンスが必要な場
合等)は 1 週間単位とし、最大 2 週間まで延期可能とする。
4) 以下のいずれかの場合、プロトコール治療を中止する。
(1) 治療開始後に明らかに原病の増悪が認められた場合
(2) Grade 4 の毒性が認められた場合
(3) DLT のため炭素イオン線治療の延期が 2 週間を超える場合
(4) 治療変更基準以外で、有害反応等により、担当医がプロトコール治療の中止が必要と判断
した場合
(5) 患者がプロトコール治療の中止を申し出た場合
(6) プロトコール治療中の死亡
(7) その他(登録後、治療開始前に腫瘍が急速に増悪し、プロトコール治療が不適格と判明し
た場合など)
このような場合には、重粒子線治療を休止するか、または他の放射線を用いた治療や放射線以
外の治療に振り替える。患者の申し出による中止変更を除いて担当医師は、患者にその理由を
説明する。またプロトコール運用委員会に変更内容あるいは中止の経緯について詳細に報告す
る。
11-5 有害反応/有害事象に対するその他の対処方法
「National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for Adverse Events (NCI-CTCAE
Version 4.0) 」に示される早期あるいは遅発性の反応が発生した可能性がある場合には慎重に
症状の推移を観察記録すると同時に適切な検査処置治療を行う。
14
11-6 予期できない有害反応/有害事象に対する対処方法
これまでの重粒子線治療において報告されていない重篤な有害反応/有害事象が発生し、治
療との因果関係が否定できない場合には、あるいは予期される有害反応よりも高度の「重篤な有
害反応」の発生を知った場合には、「ヒトを対象とする標準業務手順書」に従って、直ちに文書によ
り理事長に報告する。また、すみやかにプロトコール運用委員会で検討し、詳細な内容の検討を
行う。必要に応じて説明文書の改定を検討する。研究計画書や説明文書の改訂が必要な場合は、
「ヒトを対象とする標準業務手順書」に従って、放射線医学総合研究所研究倫理審査委員会にお
いてその可否についての審査を受け、理事長の許可を必要とする。
12 重粒子線治療終了後の治療
T1/2N0M0 症例については、規定の治療終了後は、対象腫瘍の再燃、再発が証明されるまでは
追加治療は行なわない。ただし、遠隔転移に対する治療や他臓器の腫瘍に対する治療は、本研究
計画の対象腫瘍に対する影響の如何を問わず行なうことができる。進行癌症例については、本試
験の評価に重大な影響を及ぼすことが懸念されるもの(分子標的薬)以外は再燃、再発がなくとも
追加治療が実施しても良い。分子標的薬についても重粒子線治療後 3 ヶ月以降は使用を制限しな
い。
病勢の進行を認めた場合には、治療については担当医師の判断において制限無く追加治療を行
なうことができる。ただし、これらの場合の治療内容等は詳細に記録する。
13 定期的な臨床試験の評価と報告
13-1 プロトコール運用委員会
本研究計画の適用と治療の安全性の評価および患者の追跡調査資料の収集、保管状況の点
検、確認などを主な目的としてプロトコール運用委員会を設けることとする。
13-2 目的、時期、結果の報告
試験が安全に行われているか、データが正確に収集されているか、試験が本研究計画の規定
通りに実施されているか、効果が期待通りかどうかを確認する目的で、定期的にプロトコール運用
委員会で検討を行う。
13-3 研究実施状況の報告
研究責任者は、研究期間を延長する場合には、研究倫理審査委員会の審査を受けなければな
らない。1 年を超える場合には、1 年ごとに「臨床研究実施状況報告書」で理事長に実施状況の報
告をし、研究倫理審査委員会で研究継続の可否についての審査を受けなければならない。
14 登録の終了と中止および本研究計画改訂
14-1 症例登録の終了
登録症例が予定症例数に達した時点で登録を終了する。
14-2 試験の中止
・以下の事項に該当する場合、研究責任者は、研究の継続の可否を検討する。
① National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for Adverse Events
15
(NCI-CTCAE Version 4.0) 」のスコアにおいて Grade4 以上の正常組織反応が 3 例で観察され
た場合、あるいはそれ以外のなんらかの理由により、本プロトコール治療の続行に疑念が生じ
た場合
② 患者の集積が困難で、予定症例を達成することが非常に困難な場合
③ 予定症例数または予定期間に達する前に研究の目的が達成された場合
④ 研究により期待される利益よりも起こりうる危険が高いと判断される場合
⑤ 研究倫理審査委員会からの計画等の変更指示を受け入れることができない場合
⑥ その他の理由により、研究の継続が困難と判断された場合
・以下の場合には、個々の研究試験を中止する。
① 被験者から研究参加の辞退の申し出や同意撤回があった場合
② 有害事象により試験の継続が困難な場合
③ その他の理由により、研究責任者が試験を中止することが適当と判断した場合
④ 研究倫理審査委員会から研究の中止の指示があった場合
また、研究責任者は、「ヒトを対象とする標準業務手順書」に従って、研究終了または中止・中断
後「研究終了(中止・中断)報告書」を理事長に報告する。
14-3 研究計画書からの逸脱
・研究責任者または研究者は、研究倫理審査委員会の審査に基づく理事長の承認を得る前に
研究計画書からの逸脱あるいは変更を行わない。
・ただし、研究責任者または研究者は、緊急回避等のやむを得ない理由により、研究倫理審査
委員会の審査に基づく理事長の承認を得る前に研究計画書からの逸脱あるいは変更を行うこ
とができる。
14-4 研究計画書等の変更
試験開始後、本研究計画書の改定が必要となった場合には、内容につきプロトコール運用委
員会で検討したのち、放射線医学総合研究所研究倫理審査委員会においてその可否について
の審査を受け、理事長の許可を必要とする。
15 報告義務のある有害反応/有害事象
15-1 有害反応/有害事象の報告義務
研究責任者は、「重篤な有害事象等被験者に対する重大な不利益の発生」の発生を知った場合
には、「ヒトを対象とする標準業務手順書」に従って、直ちに文書により理事長に報告するとともに、
本研究計画手続きに従い、報告用紙(別紙参照)に記載の上、本試験研究事務局/プロトコール
運用委員会に報告する。本研究計画における報告義務のある有害反応/有害事象の報告手続
きは以下に示す通りである。
・重篤な有害反応/有害事象:急送報告
・予期されない有害反応/有害事象:通常報告
ま た 、 「 National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for Adverse Events
(NCI-CTCAE Version 4.0) 」のスコアにおいて Grade4 以上の正常組織反応が 3 例で観察された
場合、あるいはそれ以外のなんらかの理由により、本研究計画治療の続行に疑念が生じた場合
16
には、プロトコール運用委員会で本研究計画治療適用の中断について討議し、中断の判断となっ
た場合はその根拠、理由を重粒子線治療ネットワーク会議評価部会に報告する。
15-2 担当医師の報告義務
15-2-1 急送報告
・一次報告:担当医は急送報告の対象となる有害事象がおきた場合、有害事象を知りえてより 72 時間
以内に「炭素イオン線 AE/AR 急送一次報告書」に所定事項を記入し、研究事務局/プロトコール運用
委員会に提出する。
・二次報告:さらに「炭素イオン線 AE/AR 報告書」に所定事項を記入し、より詳しい情報を記入した「症
例報告の詳細(A4 自由形式)」を別紙として作成し、両者を 7 日以内に提出する。その際、提出期限が
優先するのでまだ記入できない段階の情報は空白でよい。
・三次報告:原則として「炭素イオン線 AE/AR 報告書」の所定の事項をすべて記入し、有害事象を知り
えてより 15 日以内に、研究事務局/プロトコール運用委員会にコピーを提出する。「症例報告の詳細」
に追加する項目があれば追加して併せて送付する。
・追加報告:死亡の場合の剖検報告書など、三次報告以降に得られた情報や三次報告でまだ未記入
があった場合の追加などの追加報告がある場合、それぞれ適切と思われる書式を用いて、研究事務
局/プロトコール運用委員会に報告する。
15-2-2 通常報告
予期されない Grade 3 の有害事象:「12-1 予想される有害反応」に記載されないすべての
Grade 3 の有害事象が、急送報告に準じた「通常報告」の対象となる。

急送報告と通常報告
急送報告
通常報告
対象となる有 死亡
害事象
急送報告の対象以外の有害反応の
炭素イオン線治療期間中および観察期間中の うち
すべての死亡(炭素イオン線治療中止例では最 予期されない**grade3 の毒性
終治療日から 30 日以内のすべての死亡*)
炭素イオン線治療最終日から 30 日以降であり
治療と関連が否定できない死亡
生命を脅かす有害反応
予期されない重篤な有害反応
=grade4 の非血液毒性
初回報告
発生を知りえてから 72 時間以内 (Fax ・電話) 発生を知りえてから 15 日以内
報 告 の 分 類 一次報告(72 時間以内)
通常報告(15 日以内)
と期限
追加報告(必要に応じて)
二次報告(7 日以内)
三次報告(15 日以内)
追加報告(必要に応じて)
使 用 す る 報 炭素イオン線 AE/AR 急送一次報告書
炭素イオン線 AE/AR 報告書
告書書式
症例報告の詳細(A4 自由書式)
炭素イオン線 AE/AR 報告書
症例報告の詳細(A4 自由書式)
17
15-2-3 重篤な有害事象等被験者に対する重大な不利益の発生
担当医は、「重篤な有害事象等被験者に対する重大な不利益の発生」の発生を知った場合には、
直ちに研究責任者へ報告する。
15-3 研究事務局/プロトコール運用委員会の義務
研究事務局/プロトコール運用委員会は受け取った「炭素イオン線 AE/AR 急送一次報告書」および
「炭素イオン線 AE/AR 報告書」の内容を検討した上で、判断と方針を示し、担当医および重粒子線治
療ネットワーク会議評価部会に報告する。
*
治療との因果関係は問わないので、従来の「治療関連死」とは異なり、担当医師が「治療と
は関係がない」と判断した場合も急送報告の対象となる
**
「11-2 予期される危険性又は不便」に規定されていないものを指す。
16 解析関連事項
16-1 評価指標(エンドポイント)の定義と解析時の症例の取り扱い
16-1-1 有害反応
「National Cancer Institute - Common Terminology Criteria for Adverse Events (NCI-CTCAE
Version 4.0) 」を用いて判定した早期および晩期有害反応発生症例の解析対象全例に対する割
合を Grade 別に求める。この際、各症例における最大反応での集計に加えて、最終観察時の
Grade での集計も行う。
16-1-2 局所効果
対象症例が画像も しくは視診に て計測可能 な 対象病変を有して いる場合には 、Revised
RECIST(version 1.1)を用いて評価する。照射開始後 6 ヶ月までに照射領域内において観察さ
れた最大の効果を一次効果とする。治療後の画像にて、腫瘍の増大などの局所再発を示す所見を
認めない場合は局所制御中と判定する。
16-1-3 生存率
治療開始から起算して、1 年後、2 年後、3 年後のあらゆる原因による死亡を対象とする
粗生存率(overall survival)、腎癌による死亡のみをイベント発生とする原病生存率
(cause-specific survival) お よ び あ らゆ る 腫瘍 再 発 を 死 亡 に 加 え た 無 再 発 生 存 率
(disease free survival)を Kaplan-Meier 法を用いて表示する。
16-2 解析時の症例の取り扱い
「日本癌治療学会・癌規約総論(第 1 版)」に基づいて、以下のように定める。
注 1.
不適格例(除外例):適格症例として登録後に、不適格であることが判明した場合には、臨
床研究班で検討した上、重粒子線治療ネットワーク会議評価部会において決定し、その症例を除外
例とし解析の対象からはずす。
注 2. 不完全治療例:中止例、脱落例、観測不備例がある。
中止例:
安全性に関連して医師または患者の判断によって治療を中止した症例
医師側の判断による治療の打ち切り
18
患者側の判断による治療の打ち切り
脱落例:
特に安全性とは無関係に、計画された治療が行われなかった症例
医師側の治療逸脱
患者側の都合による打ち切り
患者側の治療不遵守
観測不備例: 何らかの理由により治療開始後、効果を確認するために必要な病変の
測定が行われなかった症例、観察測定不可能、観察測定欠落
注 3. 解析除外例:個々の不完全治療例において、解析対象とするかどうかについては、臨床
研究班において検討し、重粒子線治療ネットワーク会議評価部会において決定する。但し、
以下の場合は、原則として抗腫瘍効果の解析対象からは除外する。
(1) 照射の休止が連続して 2 週間(14 日)を越えた場合。
(2) 総治療線量が当初計画の 90%に満たない場合。
(3) 他の放射線による治療に振り替え、それによる治療線量が総治療線量の 10%
を越えた場合。
(4) 放射線以外の治療法に切り替えた場合。
注 4. 中途打ち切り例(Censoring case):解析対象例の内、解析施行時点で死亡が確認されてい
ない症例をいう。この中には、研究の時間切れによる中止例(Withdrawal)と消息不明例
(Lost to follow-up)があり、それぞれの数および理由を明記しておく。
注 5. 不適格例、不完全治療例、解析除外例等については、その数、内容等についても明記す
る。
注 6. 評価項目毎に解析対象例の登録症例数に対する割合についても明記する(85%以上で
あることが好ましい)。
登録例
適格例
不適格例
完全治療例
不完全治療例
研究班
研究班
除外例
解析除外例
解析対象例
死亡例
中途打ち切り例
時間切れ生存例
消息不明例
19
その他の理由
17 研究結果の発表
試験終了後、プロトコール運用委員会はすみやかにその成果をまとめてしかるべき方法で発
表する。発表の際には、重粒子線治療研究「腎臓癌に対する炭素イオン線 3 週 12 回照射の第
I/II 相臨床試験」であることを明記する。
本研究で得られた医学上の重要な知見は、学会報告や学術雑誌等を通じ、公に発表し広く社
会に還元する責務があるが、研究結果の公表においては結果の正確性を保持する。尚、本研
究結果の公表においては、連結不可能匿名化された解析結果のみを公表することとし、研究対
象者個人が特定できないように配慮する。
17-1 登録例の解析とデータ公表
登録症例は炭素イオン線治療が終了後、その時点までに得られている副作用(有害反応)、
局所効果等の所見につき評価部会に報告し、ネットワーク会議の承認を得たあとデータ公表を
行う。
17-2 最終解析のデータ公表
最終解析は追跡調査期間の終了後にプロトコール運用委員会で行い、その結果は評価部
会に報告され、ネットワーク会議の承認を得たのちしかるべき方法により発表される。
18 倫理的事項
(1) 研究に関する倫理指針の遵守
本研究は、「臨床研究に関する倫理指針」(厚生労働省、2008 年改正)に基づく(放射線医学
総合研究所「人を対象とする研究に関する倫理規程・標準業務手順書」、「ヘルシンキ宣言」(世
界医師会、2008 年改訂)および本研究計画書を遵守して実施する。
(2) 研究倫理審査委員会
本研究の実施に際しては、放医研に設置された研究倫理審査委員会における承認を必要と
する。
研究責任者は、1 年ごとに「臨床研究実施状況報告書」を研究倫理審査委員会に提出し、以
降の継続の可否について研究倫理審査委員会の意見に従う。また、研究責任者は、研究終了
または中止・中断後「研究終了(中止・中断)報告書」を、研究倫理審査委員会に提出する。研究
責任者は、以下の場合、研究倫理審査委員会に報告し、以降の継続の可否について研究倫理
審査委員会の意見に従う。
①
研究計画書や同意説明文書等について変更が行われる場合
②
審査の対象となる資料が改訂された場合
③
重篤な有害事象が発生した場合
④
その他、放医研理事長が審査の必要を認めた場合
19 被験者の個人情報等の保護に関する措置
(1) 研究責任者は、措置独立行政法人放射線医学総合研究所個人情報保護規程:23 規程第 100
号及び個人情報保護取扱規則:23 細則第 57 号に従い、資料の保管管理及び利用等に関する
措置を行う。また、医療情報に関しては、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学
センター病院個人情報の収集提供基準取得規程、利用提供規程に従い、資料の保管管理及び
20
利用等に関する措置を行う。
(2)本研究結果の公表においては、連結不可能匿名化された解析結果のみを公表する。
20 被験者に生じた健康被害の補償・賠償および保険への加入
20-1 健康被害に対する補償
金銭給付を伴わない医療サービスの提供を行う。被験者である患者には通常の医療で実施さ
れる放射線治療と同様の予測をされる、照射後すぐに出現する副作用(早期障害)等に関しては、
通常の診療と同様、保険診療として対応する。
20-2 保険への加入
民間の医師主導型臨床研究補償保険商品には加入しない。
21 記録の保存
研究責任者は、独立行政法人放射線医学総合研究所個人情報保護規程:23 規程第 100 号及び
放射線医学総合研究所情報セキュリティ委員会が定める情報セキュリティポリシー(第 6 版:平成
22 年 4 月 1 日) に従い、また、医療情報に関しては、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒
子医科学センター病院個人情報保護方針、医療情報セキュリティ実施手順書に従い、資料の保管
管理及び利用等に関する措置を行う。研究に関するすべての記録・資料は、研究結果を再現でき
るよう、確実に保管する。
22 試料等の保存
本研究で得た試料(画像情報等)は、研究計画に従って測定した後も、独立行政法人放射線医学
総合研究所重粒子医科学センター病院個人情報保護方針、医療情報セキュリティ実施手順書に従
い、資料の保管管理及び利用等に関する措置を行う。
血液と尿に関しては、研究計画に従って測定した後、重粒子医科学センター病院の手順に従い
医療廃棄物として破棄する。
被験者が研究参加への同意撤回と同時に試料の廃棄を希望される場合には、以下の方法で廃
棄する。ただし、グラフ等の統計処理されたデータは、すでに個人情報が除去されており、「個人情
報」に該当しない。このため、グラフ等の統計処理後のデータは廃棄の対象ではない。
 画像などのデータに関しては、記録メディア上から消去する。
 匿名化したコード番号などについてもすべて削除し破棄する。
本研究で得られた試料については、本研究に関連して今後計画される他の研究に利用する可能
性があるが、その場合には研究倫理委員会の審査に基づく理事長の承認を得ることとする。これら
試料の二次利用を伴う研究については、「臨床研究に関する倫理指針」または「疫学研究に関する
倫理指針」等に従う。その際に被験者のデータを共同研究施設に提供する場合には、匿名化した
データを提供する。
23 研究計画の登録および研究結果の公表
研究責任者は、研究倫理審査委員会の承認後、被験者登録を開始する前に、本研究計画を大学
21
病院医療情報ネットワーク(University hospital Medical Information Network: UMIN)に登録する。研
究終了後、研究責任者または研究責任者の指名する研究者はすみやかにその成果をまとめて学
会発表および論文発表の形で公表するよう努める。
24 研究組織体制
《研究責任者》
重粒子医科学センター 融合治療診断研究プログラムリーダー
辻 比呂志
《研究分担者および研究協力者》
氏名、所属および分担業務の内容は、人を対象とする研究に関する標準業務手順書(様式集)
(研)書式 2-1 「研究者・研究協力者リスト」に記載する。
《研究実施機関》 独立行政法人放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター
《プロトコール運用委員会》(委員)
重粒子医科学センター 融合治療診断研究プログラムリーダー
辻 比呂志
重粒子医科学センター長 鎌田 正
重粒子医科学センター 戸山 真吾、神立 進、岸本 理和、尾松 徳彦
千葉大学医学部名誉教授 島崎 淳
東京厚生年金病院泌尿器科主任部長 赤倉 功一郎
千葉大学大学院工学研究科人工システム科学専攻メディカルシステムコース教授 五十嵐 辰男
東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器腹腔鏡センター教授 鈴木 啓悦
慶応義塾大学大学院医学研究科外科系専攻泌尿器科学教授 大家 基嗣
《ネットワーク会議》(委員)
国立がん研究センター東病院名誉院長 海老原 敏
大阪大学名誉教授 井上 俊彦
兵庫県立粒子線医療センター名誉院長 阿部 光幸
市立堺病院放射線治療科部長 池田 恢
独立行政法人国立がん研究センター東病院病院長 木下 平
財団法人日本対がん協会会長 垣添 忠生
佐賀国際重粒子線がん治療財団九州国際重粒子線がん治療センター長 工藤 祥
千葉大学学長 齋藤 康
東北放射線科学センター理事長 坂本 澄彦
北海道大学大学院医学研究科高次診断治療学専攻病態情報学講座放射線医学分野教授 白土 博樹
大阪府立成人病センター放射線治療科主任部長大阪大学名誉教授 手島 昭樹
聖路加国際病院がん診療特別顧問 鳶巣 賢一
社団法人日本医師会副会長 中川 俊男
前社団法人日本アイソトープ協会常務理事 長瀧 重信
千葉県がんセンターセンター長 中川原 章
公益財団法人癌研究会有明病院顧問 山下 孝
22
25 研究に係る資金源、および起こりうる利益の衝突
本研究に要する費用は、文部科学省から独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学研
究センターへの運営費交付金をもって充てる。
本研究の計画・実施・報告において、研究の結果および結果の解釈に影響をおよぼすような「起こ
りえる利益相反」は存在しないこと、および研究の実施が被験者の権利・利益をそこねることがない
ことを確認する。
26 文献リスト
1)
Zogaria RJ, et al. Long-term outcomes after percutaneous radiofrequency ablation for renal
cell carcinoma. Urology 77(6), 1393-1397, 2011
2)
Castle SM, et al. Initial experience using microwave ablation therapy for renal tumor treatment:
18-month follow-up. Urology 77(4), 792-797, 2011
3)
Beitler JJ, et al. Definitive, high-dose-per-fraction, conformal, stereotactic external radiation
for renal cell carcinoma. Am J Clin Oncol, 27, 646-648, 2004
4)
Wersall PJ, et al. Extracranial stereotactic radiotherapy for primary and metastatic renal cell
carcinoma. Radiother Oncol, 77, 88–95, 2005
5)
Walsh L, et al. Efficacy of ablative high-dose-per-fraction radiation for implanted human renal
cell cancer in a nude mouse model. Eur Urol, 50, 795-800, 2006
6)
Nomiya T, et al. Carbon ion radiotherapy for primary renal cell carcinoma: Initial clinical
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8)
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European organization for research and treatment of cancer (EORTC). Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys.
31, 1341-1346, 1995
9)
LENT-SOMA tables. Table of contents. Radiothera. Oncol 35, 17-60, 1995
10)
Eisenhauer EA, et al. New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST
guideline (version 1.1). European J. of Cancer 45, 228-247, 2009
11)
TNM classification of malignant tumors (7th edition) edited by Sobin LH, et al. 2009
12)
Minohara S, et al. Respiratory gated irradiation system for heavy-ion radiotherapy. Int. J. Radiat.
Oncol. Biol. Phys. 47, 1097-1103, 2000
27 資料
資料 1.患者の適格性を示す文書(適格性確認表)
資料 2.患者の主訴、既往歴、現病歴などを示す文書(患者病歴)
資料 3.研究登録書
資料 4.炭素イオン線 AE/AR 急
送一次報告書
資料 5.炭素イオン線 AE/AR 報告書
23