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IVRにおける被曝線量
第3報 心臓領域の患者皮膚線量
新潟大学医学部附属病院 放射線部
○岡
哲也
吉村秀太郎
(Tetsuya Oka)
荒井
誠
(Makoto Arai)
(Hidetarou Yoshimura)
上田
弘之
(Hiroyuki Ueda)
能登
義幸
(Yoshiyuki Noto)
関谷
昌四
(Masashi Sekiya)
【目的】
IVRはカテーテルなど器材やX線装置の発達により飛躍的な進歩を遂げた.その反面,FDAから透視に
よる放射線皮膚障害が報告されたのを皮切りとして,施術時間の長時間化に伴う被曝線量の増加が近年
問題視されている.IVRにおける患者被曝線量についての報告は数多くされているが,臨床時に患者に線
量計を装着して実測したデータは意外に少ない.我々は過去当会において頭部および腹部IVRにおける
臨床時の被曝について報告した.(第38回,第39回東北部会)
心臓領域では冠動脈インターベンション(PCI)や電気生理学的検査(EPS)の被曝線量が多いといわれ
ているが,今回はRFアブレーションなどにより透視時間が長い傾向にあるEPSに注目し患者皮膚線量を調
べ,考察したので報告する.
【使用機器】
心血管撮影装置
線量計
INTEGRIS H3000 + Lateral ARC2
スキンドーズモニター(SDM)
フィリップス
マクマホンメディカル
【方法】
EPS施行時において透視による照射時間が最も長いと想定される患者皮膚面(正面I.I照射野内で常に
確認できる位置)にスキンドーズモニター(SDM)のセンサーを貼り付けて患者皮膚線量を測定した.
【結果】
集計期間は2001年10月~2002年9月までの約11ヶ月間で総症例数は46例(男性30,女性16)であった.
診療内容別に分類するとEPSのみのものが18例.EPSに加えRFアブレーションを行い治療したものが23例.
EPSのほか心筋生検や撮影等その他の手技を行ったものが5例であった.透視条件は連続透視(付加フィ
ルター:0.4mmCu)で正面管球では68~81kV,16~21mA.透視時間は正面管球と側面管球の合計値で平
均 66.1±36.1分(1.6~153分)であった.
fig.1にEPSの診療内容別の透視時間の比較を示す.
EPSのみの症例は平均34.4分,
アブレーションを行った症例は
(単位:min)
平均88.1分と治療を行った症例
160
はEPSのみに較べ約2倍以上の
153.0
140
透視時間であった.
126.0
fig.2は我々が過去当会で報
120
告した当院における頭部と腹部
100
88.1
血管IVRの透視時間を表したも
80
81.4
のである.頭部の動脈瘤塞栓術
64.3
60
で平均40.7分,腹部肝疾患のう
43.7
40
34.4
34.1
ち最も長時間に及ぶ超選択的
20
TAEの場合で,平均67分とEPS
1.6
0
のアブレーションは他部位のIVR
EPSのみ
アブレーション
EPS+撮影等
と比較しても透視時間は長い傾
fig.1 EPS の透視時間(症例別)
向にあった.
(単位:min)
140
129.3
120
116.4
102.2
100
80.2
80
67.0
60
40.7
40
20
40.8
33.3
15.5
12.6
4.5
0
脳血管内手術
検査のみ
脳血管
38.8
近位部治療
超選択的治療
腹部血管(肝疾患)
fig.2
透視時間(他部位 IVR)
(単位:mGy)
5,000
4,599.5
4,000
3,000
2,624.9
2,061.7
2,000
1,866.4
1,732.2
957.9
1,000
713.3
365.5
81.3
0
EPSのみ
アブレーション
fig.3
EPS+撮影等
EPS 時の患者皮膚線量(症例別)
(単位:mGy)
4,000
3,693.1
3,500
3,000
2,500
2,000
2,305.0
2,037.2
1,848.1
1,500
1,000
1,425.4
953.4
601.2
500
234.5
102.3
0
脳血管内手術
検査のみ
脳血管
859.6
661.0
395.4
近位部治療
超選択的治療
腹部血管(肝疾患)
fig.4
患者皮膚線量(他部位 IVR)
EPSの患者皮膚線量は全体で
は平均1512.8±1174.6mGyであっ
table.1 複数回の EPS
た.fig.3はEPSの患者皮膚線量を
症例別にみたものである.
・同一患者における複数回 EPS
EPSのみが平均約0.7Gy,アブ
レーションが最も多く約2.1Gy,そ
計 8人 ( 2回 : 7人,3 回 :1人)
の他撮影等を行ったものは約
合計線量 : 2585.1~ 8766.2 mGy
1.9Gyであった。アブレーションは
症例の難易度によりばらつきが大
最も線量が多かった患者
計
きく最低では0.3最高では4.7Gyに
3w後
RFアブレーション
RFアブレーション
8766.2mGy
=
まで達していた.fig.4は当院の他
透視時間:105.1分
透視時間: 88.0分
部位IVRにおける患者皮膚線量を
皮膚線量:4599.5mGy
皮膚線量:4166.7mGy
表したものである.頭部の動脈瘤
塞栓術で平均約1Gy,腹部肝疾
患のIVRでは近位部からの治療で
約 0.9Gy , 超 選 択 的 な 治 療 が 約
2.3Gyとなっており,約2.1GyのEPSのアブレーションは被曝が多いと言われるIVRの中でも腹部の超選択的
治療に次いで高線量であった.
【まとめ】
今回SDMを用いて臨床時のEPSにおける患者皮膚線量を測定した.冠動脈インターベンション(PCI)は
他方向からの透視,撮影アプローチが多く線量計による皮膚線量の実測が難しいのに対して,EPSはワー
キングアングルが固定化しているため線量の実測を比較的容易に行えることができた.透視時間は平均
66.1分,RFアブレーションの症例群では平均88分,最高153分と他部位のIVRと比較しても長い傾向にあっ
た.患者皮膚線量は平均で約1.5Gy,RFアブレーションの症例群では2.1Gyであった.RFアブレーションは
症例によりばらつきが大きく4Gy以上の高線量に達している症例も数多く見受けられた.
またEPSではRFアブレーションの不成功による再度の治療や治療後の評価など同一患者において比較
的短期間で複数回の検査を行うことがあり,今回集計した期間では計7人の患者が2回以上のEPSを受けて
いた.(table.1)その中で最も線量の多かった例は,初回のアブレーションで4.6Gy被曝し,その3週間後再
度RFにてさらに4.2Gyを受けて合計8Gy以上の被曝となっていた.EPSを施行した患者で皮膚障害が発生し
たとの報告は今のところ当院ではないが, 2回とも皮膚障害が起こりうる線量である.特にEPSは他部位IVR
よりも比較的若年層の患者が多いこともあり注意が必要と考えられる.
最後に当院のEPSではI.I視野サイズは最大口径の9インチで被写体に密着した状態で施行,また透視は
付加フィルターを用いた低線量モードで行っている.すなわち比較的患者被曝の低減化に配慮して条件で
行っているのにもかかわらず,今回長時間の透視により高線量となる場合が多いという結果となった.当院
のEPSでは技師側(装置側)からのアプローチによる低線量化は難しいのが現状と見受けられた.