平 成 1 月1 日

第27回日本中毒学会東日本地方会
平成2
5年1月19日(土)
会 場
山形テルサ
〒990
‐0
828 山形市双葉町1丁目2番3号
TEL:0
2
3
‐
6
4
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6
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7
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FAX:0
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会長 伊関 憲
事務局 山形大学医学部救急医学講座
〒990
‐95
8
5 山形市飯田西2‐2‐2
TEL:0
2
3
‐
6
2
8
‐
5
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山形大学医学部救急医学講座 伊 関 憲
第27回日本中毒学会東日本地方会を山形市で開催させていただきます。山形での中毒関連の学
会開催は初めてですので、多くの方々に中毒に興味を持っていただくきっかけとなるように企画
いたしました。
今回は教育講演の1つとして「トリカブト中毒」を取り上げました。日本では稀にしか見ない
自然毒中毒ですが、致死率の高い自然毒であり、アジアでは注目されている中毒です。最新の治
療法やアコニチンの体内動態について、岩手医科大学の照井克俊先生に御講演いただきます。
また、近年紙面を賑わせている「脱法ドラッグ」について、2つの教育講演をお願いいたしま
した。脱法ドラッグによる中毒患者が来院すると、合成カンナビ ノイドの同定が必要になりま
す。警察に通報するべきかなどの判断にも苦慮いたします。そして死亡者もいる一方で、治療方
法が確立しているわけでもありません。このような問題点を群馬県警察本部科学捜査研究所の阿
久沢尚士先生と、北里大学の井出文子先生に御講演いただきます。
今回は優秀演題賞だけではなく、様々な趣向を凝らして参加される皆様に楽しんでいただきた
いと思っております。
山形には美味しい日本酒やワインがあり、芋煮など様々な郷土料理があります。懇親会では皆
様方に存分に召し上がっていただきたいと存じます。
会場の山形テルサは山形駅より徒歩5分の場所にあり、大雪が降っても歩いて行くことが出来
ます。また、懇親会の終了時間は19時3
0分を予定していますので、充分に東京方面行きの新幹線
に間に合います。
山形は県内全市町村に温泉が湧く温泉王国です。また、最も雪質の良い時期ですので、もしお
時間が許せばゆっくり温泉を堪能して、翌日蔵王でスキーを楽しまれてはいかがでしょう。学会
だけではなく、ぜひ冬の山形を満喫していただきたいと思います。
最後に、この学会が皆様にとって実り多きものになることを祈念して、ご挨拶の言葉とさせて
いただきます。
― 1 ―
学会会場案内図
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― 2 ―
学会会場見取図
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① 学会会場(アプローズ)
② 懇親会会場(交流室A)
③ 認定委員会 セミナー・試験部門(会議室)
④ 学会本部(特別会議室)
― 3 ―
【
学会に参加 される皆様へのご案内】
●受付について
・参加受付は3階アプローズ入口で午前9時から行います。参加費5
0
0
0円を納入し、参加証
(ネームプレート)をお受け取りください。ご所属とお名前を記入後、ご入場願います。
・学部学生、基礎系の大学院生の方は無料です(学生証の提示をお願いいたします)
。
・懇親会に参加される方は、受付時に懇親会費3
0
0
0円を合わせてお支払いください。
・演者、共同演者は東日本地方会の会員に限ります。未入会の方はご入会手続きをお願いいた
します。なお、学会当日も受付にて新入会手続きを行う予定です。
・会員外の方向けに、当日受付にてプログラム・抄録集を販売いたします(1
0
0
0円)
。
・本学会は苛日本薬剤師研修センター認定講習会(4単位)です。受付にて参加証明シールを
受け取ってください。
● ランチ ョンセ ミナーについて
・12時5分より、アプローズにおいてランチョンセミナーを開催いたします。
●懇親会について
・学会終了後、3階 交流室Aにおいて懇親会を開催いたします。
●その他、学会参加時のマナーなど
・会場内では携帯電話の電源をお切りいただくか、マナーモードにしていただきます様お願い
いたします。
・許可なく録音、録画、撮影機材を持ち込まないようお願いいたします。
・会場内での呼び出し、伝言等は承りかねます。緊急時は受付にご相談ください。
・会場内は禁煙です。
・当日クロークはご用意しておりませんが、館内にコインロッカーがございますのでご利用く
ださい。なお、ロッカーには大型のスーツケース等は入りませんのでご注意ください。
・会場周辺には複数の有料駐車場がございますが、台数に限りがございますので、公共の交通
機関をご利用いただくことをお勧めいたします。
― 4 ―
【
座長の皆様へのご案内】
・ご担当のセッション開始30分前までに、参加受付をお願いいたします。
・セッション開始10分前までに『次座長席』にご着席ください。
・セッション開始・終了時に場内アナウン スを行います。進行は座長にお任せいたしますの
で、プログラム時間の遵守をお願いいたします。
【
討論者へのご案内】
・質疑時間は、座長の進行に従ってください。
・会場内には質疑用のマイクをご用意しております。ご発言の際は必ずマイクをお使いくださ
い。
・ご発言は、所属とお名前を明らかにしてからお願いいたします。
【
演題発表者の皆様へのご案内】
●発表形式について
・一般演題の発表時間は6分、討論時間は3分です。
・発表の10分前までには『次演者席』のプレート側にご着席ください。
・演題はすべて口演発表です(プロジェクター1面投射になります)。
・発表は、事務局準備のPC、またはご自身のPCで行ってください。データは、PC受付にてお
預かりいたします。持込PCは受付をすませた後、ご自身でお持ちいただき会場内オペレー
ターまでお渡しください。
・演台には、確認モニター、キーボード、マウスをご準備いたします。ご自身で操作、進行を
お願いいたします。
・発表時間が演台上のタイマーに表示されます。時間を超過しないようご注意願います。
・データは事務局が責任を持って消去いたします。持込PCは会場オペレーター席でのご返却
となります。
― 5 ―
●発表データ、持込みPCの受付について
・ご発表の30分前までに、
『PC受付』に発表データ、または持込みPCをお持ちください。受付
係が対応いたします。
・発表データは、USBメモリー、またはCDR(CDRW不可)にてお持ちください。Mi
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03以降で作成したものに限ります。
・バックアップの予備データをお持ちいただく事をお勧めいたします。
・学会で準備するPCのOSはWi
ndo
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です。Ma
cOSでのデータには対応いたしません。ご自
身のMa
cPCをお持ち込みください。
・持込PCは、Ds
ub15ピンの出力がある物をお持ちください。外部出力アダプタがあるものは
必ずお持ちください。また、ACアダプタを忘れずにお持ちください。
・動画があるデータは、ご自身のPCを持ち込まれる事をお勧めいたします。
・文字化け等のトラブル回避のため、下記フォントを推奨いたします。
日本語:MSゴシック、MSPゴシック、MS明朝、MSP明朝
英 語:Ar
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・データ名には、演題番号と発表者のお名前を登録してください。
※例:
「5蔵王太郎」
「18 山寺花子」
・患者の個人情報に抵触する可能性のある内容は、本人あるいはその代理人から インフォーム
ド・コンセントを得た上で、情報が特定されないように十分注意した内容でご発表ください。
●発表後の抄録提出について
・今回の発表内容の抄録を日本中毒学会機関誌「中毒研究」に掲載いたします。下記の要領に
従ってご提出をお願いいたします。
記述内容:発表形式ではなく発表内容とします。
文 字 数:12
00文字以内。本文以外に演題番号、演題名、全演者名、所属、文献も含み
ます。
図または表が必要な場合は、
1点に限り添付可能です。図表は4
0
0文字相当と
し、本文の記述は80
0字以内になります。
提出方法:テキスト形式、RTF形式、ワードファ イルのいずれかを下記アドレ スまで
メールに添付してお送りください。件名は「第2
7回東日本地方会抄録」でお
願いいたします。
提 出 先:第27回日本中毒学会東日本地方会事務局
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提出締切:平成2
5年2月1
9日(火)必着
※期日までにご提出いただけない場合は「中毒研究」誌への掲載はございませんのでご了承く
ださい。
― 6 ―
【
諸会議等開催のご案内】
●幹 事 会
日時:平成2
5年1月18日(金)17:0
0~
場所:仙渓園 月岡ホテル 2階「高砂」
山形県上山市新湯1-33 TEL:0
2
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7
2-1
2
1
2
●総 会
日時:平成2
5年1月19日(土)13:0
0~1
3:1
0
場所:山形テルサ 3階「アプローズ」
●懇 親 会
日時:平成2
5年1月19日(土)17:3
0~1
9:3
0
場所:山形テルサ 3階「交流室A」
※参加ご希望の方は、学会参加受付時に会費3
0
0
0円をお支払いください。
【
日本中毒学会関連委員会のご案内】
●事例調査 ・研究委員会
日時:平成2
5年1月18日(金)14:0
0~1
6:0
0
場所:月岡ホテル 2階「高砂」
●認定委員会 セ ミナー ・試験部門
日時:平成2
5年1月19日(土)12:0
0~1
3:0
0
場所:山形テルサ 3階「会議室」
― 7 ―
第27回日本中毒学会東日本地方会 日程表
山形テルサ 3階 アプローズ
9:2
5~9:30
開 会 式
9:3
0~10:30
一 般 演 題 :「
分析 ・情報」
10:3
0~11:1
0
一 般 演 題 :「
自然毒」
11:1
0~11:5
5
教育講演Ⅰ :「トリカブ ト中毒」
12:0
5~13:0
0
ランチ ョンセ ミナー :「
急性中毒に対するアフェレシス治療」
共催:川澄化学工業株式会社
13:0
0~13:1
0
総 会
13:1
5~14:0
0
教育講演Ⅱ :
「
最近の新規乱用薬物について 植物系 ドラッグを中心 として」
14:0
0~14:4
5
教育講演Ⅲ :「
脱法ハーブによる中毒~臨床の現場か ら」
14:5
0~15:3
0
一 般 演 題 :「
脱法ハーブ」
15:3
0~15:5
0
コーヒーブレイク
15:5
0~16:3
0
一 般 演 題 :「
中毒症例1」
16:3
0~17:2
0
一 般 演 題 :「
中毒症例2」
17:2
0~17:3
0
閉 会 式
17:3
0~19:3
0
会員懇親会 会場 :3階 交流室A
― 9 ―
プ ロ グ ラ ム
平成2
5年1月1
9日(土)
9:25 開会の辞
会長 伊関 憲
9:30~1
0:30 「分析・情報」
座長:昭和大学病院薬剤部 峯村 純子
1.薬毒物分析を10分以内に終わらせる(第1報)
東北大学大学院医学系研究科社会医学講座法医学分野 臼井 聖尊
2.カーバメート検知管の改良
茨城県警察本部刑事部科学捜査研究所 石綿 鉄也
3.LC/
MS(ESI
)法を用いた血清中ギ酸,グリコール酸,乳酸の一斉スクリーニング・定量分
析法.~急性メタノールおよびエチレングリコール中毒の鑑別診断
新潟市民病院薬剤部 堀 寧
4.覚知から病院到着までに90分以上を要した急性中毒症例の検討
北里大学医学部中毒・心身総合救急医学 神應 知道
5.検視・検案データよりみた東京都区部と山形県の中毒自殺事例の実態
山形大学医学部法医学講座 山崎健太郎
6.過去7年間の急性中毒死亡例についての検討
日本医科大学高度救命救急センター 宮内 雅人
1
0:30~11:1
0 「自然毒」
座長:北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター 福本真理子
7.コテングダケ中毒が疑われた2症例
岩手医科大学 救急医学講座 小野寺 誠
8.スイセンとニラの誤認により発症したアルカロイド中毒
順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科 水野 慶子
9.日本中毒情報センターで受信したトリカブトによる急性中毒症例の実態調査
公益財団法人 日本中毒情報センター 渡辺 晶子
10.アミオダロン投与で管理したトリカブト中毒の2例
青森県立中央病院 救命救急センター 山口 智也
― 1
0 ―
1
1:10~1
1:55 教育講演英
座長:福島県立医科大学医学部 救急医療学講座 田勢長一郎
「トリカブト中毒」
岩手医科大学医学部 救急医学講座 照井 克俊
1
1:55~1
2:05 休 憩
1
2:05~1
3:00 ランチョンセミナー
座長:京都大学大学院医学研究科 初期診療・救急医学分野 小池 薫
「急性中毒に対するアフェレシス治療」
秋田大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学講座 中永士師明
(共催:川澄化学工業株式会社)
1
3:00~1
3:10 総 会
1
3:15~1
4:00 教育講演衛
座長:茨城県警察本部 刑事部科学捜査研究所 石澤不二雄
「最近の新規乱用薬物について 植物系ドラッグを中心として」
群馬県警察本部 刑事部科学捜査研究所 阿久沢尚士
1
4:00~1
4:45 教育講演詠
座長:岩手医科大学高度救命救急センター 薬物毒物検査部門 藤田 友嗣
「脱法ハーブによる中毒~臨床の現場から」
北里大学医学部 救命救急医学 井出 文子
14:50~1
5:30 「脱法ハーブ」
座長:横浜市立みなと赤十字病院救命救急センター 八木 啓一
11.脱法ハーブを使用し、精神神経症状を呈した5例
済生会宇都宮病院 救急診療科 石山 正也
12.液状脱法ドラッグによる急性中毒の1例
福島県立医科大学附属病院救命救急センター 大久保怜子
13.当院における脱法ハーブ9症例の検討
さいたま赤十字病院・救命救急センター・救急医学科 野間未知多
14.救急外来受診患者が所持していた脱法ドラッグの分析
岩手医科大学高度救命救急センター 薬物毒物検査部門 藤田 友嗣
― 1
1 ―
1
5:30~1
5:50 コーヒーブレ イク
1
5:50~1
6:30 「中毒症例1」
座長:さいたま赤十字病院 救命救急センター 清田 和也
1
5.消臭・芳香剤を大量飲用後にショック・腸管浮腫を来した一例
新潟市民病院救命救急・循環器病・脳卒中センター 窪田 健児
1
6.牛乳摂取のため意識障害が遷延したと考えられたパラジクロロベンゼンの一例
岩手医科大学 救急医学講座 菊池 哲
1
7.ヘリウムガスを使用しての自殺企画の2症例
公立置賜総合病院 救命救急センター 岡本 純一
1
8.著明な乳酸アシドーシスを呈し、急性腎不全を併発した急性アルコール中毒の1例
札幌東徳州会病院 腎臓内科 横山 隆
1
6:30~1
7:20 「中毒症例2」
座長:筑波大学 医学医療系 救急・集中治療部 水谷 太郎
1
9.バルビタール大量服薬により意識障害が遷延し、経過中に心室細動を併発した一例
杏林大学高度救命救急センター 吉川 慧
2
0.大量服薬によりリチウム中毒をきたした1例
山形大学医学部附属病院薬剤部 小林 武志
2
1.血液透析により救命したバルプロ酸ナトリウム大量内服の1症例
山形大学医学部附属病院薬剤部 富永 綾
2
2.総合感冒薬の慢性乱用に糖尿病性ケトアシドーシスが合併した1例
さいたま赤十字病院 救命救急センター 救急医学科 高橋 希
2
3.都市型救命救急センターにおける有機リン中毒の一例
昭和大学病院薬剤部 井上 蓉子
1
7:20 閉会の辞
会長 伊関 憲
1
7:30~1
9:30 懇 親 会 会場:3階「交流室A」
― 1
2 ―
教
育
講
演
教育講演英
「ト リ カ ブ ト 中 毒 」
岩手医科大学医学部救急医学講座
照 井 克 俊
トリカブトはキンポウゲ科Ac
oni
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um 属植物であり、本邦においては、約30種のトリカブトが
自生している。トリカブトは若芽の頃、その形態が食用植物であるシドケやニリンソウに非常に
類似している。そのため、山菜を食する習慣がある北海道や東北地方においては、トリカブトと
形態が類似する食用植物との誤食による中毒事例が多数報告されている。トリカブトはその根、
茎、葉や花などの全ての部位にアコニチン類、ベンゾ イルアコニン類、アコニン類などのアコニ
チン系アルカロイドが含有されている。特にアコニチン類(アコニチン、メサコニチン、ヒパコ
ニチン、ジェサコニチン)は非常に毒性が強く、トリカブト中毒における原因物質として考えら
れている。
アコニチン類は、電位依存性ナト リウムチャネルに作用する。現在、電位依存性ナト リウム
チャネルは9種類が知られており、中枢神経、末梢神経、骨格筋、心筋などの組織に発現してい
る。アコニチン類はナトリウムチャネルのSi
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レセプターに結合し、ナトリウムチャネルの不
活性化を遮断する。したがって、中毒症状としては、不整脈、四肢のしびれや麻痺などの様々な
中毒症状が生じる。なかでも不整脈はトリカブト中毒において特徴的な中毒症状である。
今回、自施設で経験したトリカブト中毒患者3
0症例をもとに、トリカブト中毒の原因、中毒症
状、治療等に加え、アコニチン類の体内動態について述べる。
― 1
3 ―
教育講演衛
最近の新規乱用薬物について 植物系ドラッグを中心として
群馬県警察本部刑事部科学捜査研究所
阿久沢 尚 士
19
90年代半ばころからいわゆる「脱法(合法)ドラッグ」が問題化されるようになった。イン
ターネットによる情報流布と通信販売が加わったことで、乱用は急速に拡大した。この事態を受
け、これら「違法ドラッグ」は2007年4月から薬事法による「指定薬物」として3
1物質1植物が
規制となった。その後次々に追加され、2
0
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0物質1植物が指定薬物となってい
る。
指定薬物はフェネチルアミン系(カチノン系を含む)
、トリプタミン系、ピペラジン系、合成カ
ンナビノイド系(主にアルキルインドール類)、その他に分類される。違法ハーブ(脱法ハーブ)
は、植物に合成カンナビノイド等をまぶした植物系ドラッグである。
実務的な違法ドラッグの分析は、有機溶剤を用いた前処理の後、ガスクロマトグラフィー質量
分析法、フォトダ イオード アレ ー検出器付高速液体クロマト グラフ ィー、液体クロマト グラ
フィー質量分析法などで測定する。しかし、日々新規物質や異性体等の類縁化合物が出現するた
め、識別には複数の分析法を組み合わせ、さらに細心の注意が必要である。
数種の違法ドラッグについては使用者の生体資料に関する分析報告がされている。しかし、研
究成果が法科学的に十分活用できているかが疑問になるほど、薬物の盛衰は速い。
本稿の提出から学会当日までの間に、違法ドラッグの増加に歯止めがかかっている事を祈りつ
つ、乱用薬物について若干の知見をお示したい。
― 1
4 ―
教育講演詠
脱法ハーブによる中毒~臨床の現場か ら
北里大学医学部救命救急医学
井 出 文 子
脱法ハーブによる事件や事故はほぼ毎日のようにメディアに登場している。それはまさに社会
現象となっているが、販売者側や顧客と規制・行政側のいたちご っこは相変わらず続いている状
況である。
当初、
「合法ドラッグ、ハーブ」などと呼ばれ、ソフトドラッグの印象を顧客に植え付け、
「安
心して使用できて、警察につかまらないし、気持ちよくなれる」という謳い文句でユーザーが増
えていった。しかしその成分に合成カンナビノイドなどの成分を含有しているとわかってくると
「脱法ドラッグ、ハーブ」に名称は変わったが、その毒性をわからないままに興味本位で使用す
る若者を中心に、平成23年の後半から脱法ハーブのユーザーや店舗数が急増していった。
その間に挟まれているのが臨床の現場である。依存や乱用といった精神学的な観点からの問題
だけでなく、脱法ハーブによる身体的合併症の観点からも問題視されており、実際死亡例も報道
されている。
我々は平成2
4年7月に第3
4回日本中毒学会総会で脱法ハーブによる急性中毒1
2症例の臨床的特
徴について発表した。精神症状が持続した症例や身体合併症を呈する症例も散見された。今回は
更に増えた症例を合わせて発表する。
こういった臨床例を販売側や顧客と規制・行政側との間に挟まれた臨床の場からのメッセージ
として発信していきたいと思う。
― 1
5 ―
一
般
演
題
一般演題1
薬毒物分析を1
0分以内に終わ らせる(
第1報)
臼井 聖尊1)、多田 美保2)、小梶 哲雄2)、橋谷田真樹1)、林崎 義映1)、
舟山 眞人1)
1)東北大学大学院医学系研究科社会医学講座法医学分野、2)株式会社エービー・サイ
エックス
【はじめに】
一般的な薬毒物分析の工程は、1)試料の前処理、2)機器分析、3)データ解析に分けられ
る。この中で最も律速かつ分析者間による定量値の変動が大きい工程が「試料の前処理」であ
る。そこで我々はキャッチャーズ(QuEChERS)法を改良し、従来の前処理法と比較して処理時
間が速く(約7分)、定量値の変動が少ない全血の前処理法を完成させた茨。今回は、分析の中で
次の律速工程である「機器分析」
(LCMS/
MS分析時間 約3
0分)の迅速化に挑戦した。
【方 法】
LCMS/
MSは、カラムと呼ばれる分離管によって薬毒物を分離した後、質量分析計で化合物を
同定・定量する。すなわちカラムは分離に必須なパーツであるが、一方でこのカラムによる分離
が分析全体の律速となっている。そこで、カラムを取外し、未分離のまま質量分析へ導入(フロー
インジェクション分析:FI
A)することで、分析時間の短縮を試みた。質量分析計にはTr
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TOF5600(ABs
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x)を使用した。
【結果と考察】
1サンプルの測定時間を1.
5分に調整し、医薬品の標準混合液(濃度1~1
0
0ng/
mL)を分析し
た結果、薬物を取りこぼすことなく検出が可能であった。また法医試料に適用した結果、一部低
濃度のベンゾジアゼピン系薬物は検出できなかったが、おおむねLCMS/
MSの結果と一致してい
た。QuEChERS法と本法を組み合わせて使用することで、1
0分以内に検査結果が得られるため、
救急分野においても有効な方法であると考えられる。
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7 ―
一般演題2
カーバ メー ト検知管 の改良
石綿 鉄也1)、石澤不二雄1)、鈴木 康仁1)、本田 克也2)、村松 輝夫3)
1)茨城県警察本部刑事部科学捜査研究所、2)筑波大学人間総合科学研究科生命システ
ム医学専攻法医学、3)光明理化学工業株式会社
【はじめに】
農薬による中毒事故が発生した場合、犯罪捜査や救急医療のため、原因物質の迅速な特定が求
められる。原因物質の特定には、GCMSやLCMSなどの分析機器が用いられるが、現場で簡便な
スクリーニングができれば、犯罪捜査や救急医療に有用であり、後の機器分析の参考にもなる。
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r
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be
nz
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これまで、カーバメート剤についてアルカリで加水分解後、pメチルOアリルエステル型カーバメート剤を検知できる検知管を
で発色させることにより、N アリルエステル構造を持たないメソミルに関しては、その発色原理上、検知す
開発したが、O ることができなかった。今回、メソミルについても、検知できるよう検知管の改良を試みたので
報告する。
【方 法】
メソミルは、アルカリで加水分解されるとメチルアミンを生成することが知られており、今
回、これまでに作成したカーバメート検知管の後に、市販のメチルアミン検知管を接続し、生成
したメチルアミンを検知することによりメソミルが検知できないか検討した。
【結 果】
メソミルや他のカーバメート剤の標準溶液について本法により検知したところ、メチルアミン
検知管が反応して含有を確認することができた。さらに、メソミルを含有する製剤(商品名:ラ
ンネート)については、水で1000倍に希釈した溶液でも、十分に検知することができた。
― 1
8 ―
一般演題3
LC/MS(ESI
)法を用いた血清中ギ酸,グ リコール酸,乳酸の
一斉スクリーニング ・定量分析法.
~急性メタノールおよびエチレングリコール中毒の鑑別診断~
堀 寧1)、藤田 友嗣2)、伊関 憲3)
1)新潟市民病院薬剤部、2)岩手医科大学薬物毒物検査部門、3)山形大学医学部救急医
学講座
【緒 言】
急性メタノール中毒と急性エチレングリコール中毒は臨床的にアニオンギャップの開大した代
謝性アシドーシスによって疑うことができる。今回、原因不明の代謝性アシドーシスを認めた患
者の血清を用いて、急性メタノール中毒および急性エチレングリコール中毒を短時間で鑑別診断
する分析法を確立したので報告する。
【方法・結果】
分析対象物としてギ酸、グリコール酸、乳酸を誘導体化等の前処理無しに一斉分析するために、イ
オン排除クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた。
【LC装置】SI
LHTオートサンプラー、LC10ADVPポンプ、CTO1
0ACVPカラムオーブン、SPDM1
0AVPフォトダイオードアレイ検出器(島
津製作所)。
【カラム】ULTRON PS8
0H2
5
0×2.
0mm,1
0μm(SHI
NWA CHEMI
CAL)
。
【カラム
t
r
o
me
t
e
r
】
オーブン】55℃。
【移動相】0.
1%酢酸(pH3.
0)
。
【流速】0.
1
0mL/
mi
n。
【Ma
s
sSpe
c
LCMS2010A
(島津製作所)。
【イオン化】ESI
法(SI
M ne
ga
t
i
vei
o
nmo
de
)
。
【検出器電圧】+2.
5kv。
【インターフェースVo
l
t
a
ge
】-3.
5
0kv。
【CDL電圧】
4
0V。
【ヒートブロック及びCDL温度】
1
5
0℃。
【ネブライズガス流量】1.
50L/
mi
n。
【試料注入量】2μL。
-
のベースイオンを用いた検出でギ酸、グリコール酸、乳酸は約1
0~50
0μg/
mLの範囲
(MH)
(目的に応じた濃度域)で定量的に検出可能で、標準血清への添加回収率及び再現性も良好で
あった。実際の中毒症例へ適用した結果、速やかな診断が可能であった。
― 1
9 ―
一般演題4
覚知から病院到着までに90分以上を要した急性中毒症例の検討
神應 知道1)2)、上條 吉人1)2)、銘苅 美世2)、井出 文子2)、佐藤 千恵2)、
相馬 一亥2)
1)北里大学医学部中毒・心身総合救急医学、2)北里大学医学部救命救急医学
【目 的】
今回我々は救急隊覚知から病院到着までに9
0分以上要した急性中毒症例を検討した。
【対象と方法】
201
0年4月から2年間で当院救命救急センターに急性中毒で搬送された29
6名の内、救急隊覚
知から病院到着までに90分以上かかった2症例を対象とした。
【結 果】
症例1は63歳男性。不眠症の診断で近医クリニックから睡眠薬等を処方されていた。友人に体
が動かないと連絡し、友人が救急要請。救急隊現着時、一包化された空の薬袋が6袋落ちてい
た。J
CS
10、呼吸28/
分、血圧104/
66mmHg、心泊数1
0
8/
分、体温3
8.
0度、酸素飽和度9
4%(室内
気)であった。2次病院選定したが10件断られ、覚知から病院搬送まで1
0
6分を要した。経過観察
入院後、翌日退院となった。症例2は1
6歳の男性。アスペルガー症候群で近医にて抗うつ薬等を
処方されていた。アナフラニール(1
0)9
4錠、パキシル(1
0)2
7錠を内服し母親から救急要請。救
急隊現着時、意識清明で、心拍数127/
分以外のバイタルサインの異常は認めなかった。2次病院
選定で搬送直後、痙攣を認め、覚知から93分後に当院到着した。
【考 察】
プレホスピタルで問題となっている搬送時間の延長の背景として精神科疾患に対する偏見およ
び、プレホスピタルでの重症度の誤った評価などが考えられた。
― 2
0 ―
一般演題5
検視 ・検案データよりみた東京都区部 と
山形県の中毒自殺事例の実態
山崎健太郎1)2)、羽田 俊裕1)、梅津 和夫1)、福永 龍繁2)
1)山形大医学部法医学講座、2)東京都監察医務院
東京都区部と山形県の中毒による自殺事例の実態を、両地域の検案または検視データを基に調
査した。東京都区部のデータは2
002年から2
0
0
9年の東京都監察医務院における検案データベース
のうち中毒による自殺事例139
0体(全自殺事例の9.
1%)
、山形県は山形県警察本部刑事部から提
供をうけた検視データベースより中毒による自殺事例5
4
2体(全自殺事例の1
7.
7%)を対象とし
た。両地域の中毒自殺事例の割合は山形県における比率の方が高かった。一方、死亡原因物質を
全中毒自殺事例に対する割合でみると、東京都区部では向精神薬が3
6.
7%と山形県(7.
9%)に比
較して高く、山形県は一酸化炭素や硫化水素などのガス類が7
7.
7%、農薬類が1
2.
2%と東京都区
部の各々5
1.
5%、2.
6%と比較して高かった。さらに主な自殺動機を割合でみると、東京都区部
では精神疾患が4
7.
9%、社会的問題が2
7.
8%であったのに対し、山形県では精神疾患が1
5.
3%、
社会的問題のうち借財や事業に関わるものが3
6.
2%、厭世2
1.
2%であった。これらのことから、
東京都区部では精神疾患が自殺の最も大きな要因であり特に睡眠薬や抗うつ薬など医薬品を使用
した中毒が多くみられる傾向があり、山形県では経済・産業構造に基づく事例が多く一般の人で
も入手が容易な物質を用いて自殺する事例が多い傾向がみられた。
― 2
1 ―
一般演題6
過去7年間の急性中毒死亡例についての検討
宮内 雅人1)、平田 清貴2)、林田眞喜子3)、大野 曜吉3)、横田 裕行1)
1)日本医科大学高度救命救急センター、2)日本医科大学付属病院薬剤部、3)日本医科
大学法医学教室
【目 的】
過去7年間にわたる当院高度救命救急センターの死亡症例について検討する
【対 象】
平成17年4月から平成24年6月までの急性中毒症例1
2
7
4例(男3
8
8例、女8
8
6例)
【結 果】
死亡例は2
0例(男8例、女12例、年齢23歳~9
3歳)であった。このうちCPAOA症例は1
2例(一
酸化炭素中毒6例、硫化水素4例、医薬品中毒2例)であり、pr
e
ho
s
pi
t
a
lCPAが硫化水素で1例
みられた。残る7例は医薬品中毒4例、農薬中毒1例、硫化水素中毒1例、一酸化炭素中毒1例
であった。医薬品中毒では2例が入院後のARDS、多臓器不全が死因であったが、一方で三環系
抗うつ薬中毒1例、アセチルサリチル酸中毒1例みられた。農薬中毒は入院後の肺炎が死因であ
り、一酸化炭素は入院後の多臓器不全が原因であった。
【ま と め】
CPA症例を除き、入院後薬物が直接の死因となったのは硫化水素、三環系抗うつ薬中毒、アセ
チルサリチル酸中毒であった。
― 2
2 ―
一般演題7
コテングダケ中毒が疑われた2症例
小野寺 誠1)、菊池 哲1)、藤野 靖久1)、井上 義博1)、遠藤 重厚1)、
藤田 友嗣2)
1)岩手医科大学 救急医学講座、2)岩手医科大学高度救命救急センター 薬物毒物検
査部門
【症 例】
76歳男性と74歳女性の夫婦。現病歴:某年1
0月中旬、夫が自宅から約1.
3km離れた東北自動車
道のり面に生えていたキノコ(傘:茶褐色~灰褐色で1
0c
m大、柄:白色~茶褐色で7~8c
m)
を採取した。知人2人に確認したところ食用と説明されたため、同日午後6時30分味噌汁に入れ
て2杯摂取した。3
0分後より眩暈が出現。一緒に味噌汁1杯を摂取した妻は3
0分後に眩暈と嘔気
を自覚し自ら口に指を入れて嘔吐した。その後、次第に気分が悪くなったため午後8時2
5分に当
科受診した。臨床経過:夫は来院時意識レベルGCS
3、瞳孔径2mm、血圧2
5
4/
12
0mmHg、心拍
数87/
分、SpO29
8%(r
o
o
m)。四肢麻痺は認めなかったが、痛み刺激で顔面と両上肢に1分ほど
で消失する痙攣を認めた。眼球はゆっくりとした水平眼振を認め、眼瞼結膜の発赤と浮腫を認め
た。モニター上、数分間で消失する徐脈と同時に瞳孔径の縮小を何度も繰り返した。ChEを含む
血液検査や頭部CT検査で異常を認めなかった。胃洗浄後活性炭と下剤を投与。約8時間後より
意識が回復し始め、来院1
2時間後には会話可能となった。その後経過良好で第4病日に退院と
なった。妻は受診時意識清明。300
0ml
/
日の補液と活性炭の内服を行った。血液検査で異常値は
認めなかった。本人への聴取よりコテングダケもしくはコテングダケモドキが疑われ、現在調査
中である。
― 2
3 ―
一般演題8
スイセンとニラの誤認により発症したアルカロイド中毒
水野 慶子、井上 照大、近藤 彰彦、高橋恵利香、三島健太郎、大西 俊彦、
小松 孝之、坂本 壮、高見 浩樹、関井 肇、野村 智久、杉田 学
順天堂大学医学部附属練馬病院 救急・集中治療科
症例は5
9歳男性と5
4歳女性の夫婦。自家栽培した「ニラ」を用いて餃子を作り摂食した。その
3
0分後から悪心・嘔吐が出現し救急搬送となった。両者ともに来院時にも悪心の訴えはあった
が、腹部所見を含め特記すべき異常な身体所見を認めず、検査結果でも妻には低カリウム血症を
認める以外には治療介入が必要な異常を認めなかった。食後の発症、夫婦で同様の症状という経
過から食中毒を念頭において対応した。摂食した「ニラ」を持参しており、詳細な観察により実
際には「スイセン」であることが判明し、ニラとスイセンを誤認し摂取したことによるアルカロ
イド中毒と診断した。経過観察目的に入院としたが、補液、電解質補正の対症療法により夫婦と
もに特に重篤な合併症を来すこともなく軽快し、入院翌日に独歩退院となった。スイセンに含有
する毒成分はアルカロイドであり、主にガランタミンとリコリンである。ガランタミンは抗コリ
ンエステラーゼ作用を有し、リコリンは強い催吐作用を有する。リコリンの催吐作用により早期
に嘔吐を起こし、本症例でも重症化せずにすんだと考えられた。しかし、リコリンは熱に安定性
があり、本症例のように熱調理を行なった場合でも中毒症状を来たしうるため、注意を要する。
本症例では摂取したスイセンを持参したことで苦慮することなく診断に至ったが、持参しなかっ
た場合には病歴聴取が特に重要となってくると思われた。
― 2
4 ―
一般演題9
日本中毒情報センターで受信 した トリカブ トによる
急性中毒症例の実態調査
渡辺 晶子1)、竹内 明子1)、飯田 薫1)、黒川友里亜1)、高野 博徳1)、
黒木由美子1)、遠藤 容子1)、水谷 太郎1)2)
1)公益財団法人 日本中毒情報センター、2)筑波大学 医学医療系 救急・集中治療
部
日本中毒情報センター(J
PI
C)で受信したトリカブトによる急性中毒症例の実態調査を行った。
【方 法】
期間は1
986~201
2年、対象はJ
PI
C受信例1
4
0件のうち、医療機関へ症例追跡調査用紙を送付し
回収し得た44症例とし、詳細を検討した。
【結 果】
摂取状況は自殺企図27例(6
1.
4%)、食用植物との誤認1
1例(2
5.
0%)
、その他治療上の事故、
自家製のブス酒の摂取、漢方薬製造工場での吸入等であった。自殺企図2
7例[年齢1
7~7
8歳]の
摂取部位は根が20例(7
4.
1%)で、入手先が判明した1
7例では、自宅で栽培8例、野山で採取6
例、インターネット等で購入2例、知人から入手1例であった。誤認した1
1例[年齢3
3~76歳]
、バジ
の誤認植物はニリンンソウ(4例)
、モミジガサ(2例)
、ヨモギ(2例)
、ミツバ(1例)
ル(1例)等であり、摂取部位は葉や茎であった。4
4例中4
3例に症状が出現し、主な症状は悪
心・嘔吐3
0例、不整脈24例、口唇、舌のしびれ1
9例、四肢等のしびれ1
9例、血圧低下1
9例等で
あった。入院を要したのは39例(8
8.
6%)で、平均日数は6.
2日(入院期間判明3
6例中)であっ
た。死亡は自殺企図1例、食用植物との誤認1例であった。
【結 論】
自殺企図はもとより、様々な食用植物との誤認事故が発生していることが判明した。J
PI
Cホー
ムページなどを通じ、一般市民への啓発強化が重要であると考える。
― 2
5 ―
一般演題10
アミオダロン投与で管理 した トリカブ ト中毒の2例
山口 智也、常川 仁子、一戸 大地、葛西 孝健、石澤 義也、伊藤 勝宣、
齋藤 兄治
青森県立中央病院 救命救急センター
1例目は5
7歳男性。来院日の午前0時半頃、自宅に自生の野草を食し、2時半頃より胸苦出
現、3時3
5分当院に搬送された。来院時J
CS3、血圧1
1
6/
8
9mmHg、心拍1
4
1bpm、酸素リザー
バーマスク10l投与下でSpO287%、皮膚は湿潤であり、冷汗は著明であった。モニター上はVT
であるも野草を食したことを自ら話し、直後にVFとなり電気的除細動を繰り返すもVFから脱し
なかった。アミオダロンの初期投与、硫酸マグネシウム投与下で電気的除細動を繰り返しROSC
を得た。その後、アミオダロンの持続投与をしながら全身管理を施行した。同日2
1時、吐瀉物よ
りアコニチンを確認し、確定診断に至った。
2例目は66歳女性。某日午後0時、睡眠薬の大量服薬、不穏状態との病院前情報で当院に搬送
された。来院時J
CS
10、血圧は70-80mmHg、モニター上mul
t
i
f
o
c
a
l
な不整脈が継続していた。1
例目の経験からト リカブト中毒を疑い、アミオダロンの初期投与、硫酸マグネシウム投与を行
0分後に、ト リカブトを擦った汁を飲用した
い、PCPSをスタンバイさせ全身管理した。来院の3
ことを自ら認め、また後日血清からアコニチンを確認し、確定診断に至った。
アコニチン中毒の最も特徴的な症状は不整脈であり、摂取後1時間位から、あらゆる不整脈が
出現しうる。当院で経験した2例を紹介するとともに、若干の考察を加えて報告する。
― 2
6 ―
一般演題11
脱法ハーブを使用 し、精神神経症状を呈 した5例
石山 正也、泉 隆史、白井 利行、大木 基通、藤井 公一、冨岡 秀人、
宮武 諭、加瀬 建一、小林 健二
済生会宇都宮病院 救急診療科
【はじめに】
乾燥した植物片に、主に合成カンナビノイド誘導体を混入させた「脱法ハーブ」使用による救
急外来受診者の報告は増えている。地方都市に位置する当院においても2
0
1
2年に入り搬送患者数
の増加を認めた。
【方 法】
2
012年1月1日~2
01
2年1
2月31日までに脱法ハーブを使用し当院救急外来を受診した7例のう
ち、ハーブの使用が原因と思われる精神神経症状を認めたもの5例につき検討した。
【結 果】
男性3名、女性2名。年齢は21歳~3
2歳。精神神経症状は異常行動2例、意識障害4例、全身
性の痙攣2例であった。異常行動として、建物6階から飛び降りた例や他人の頸部を締めた例が
認められた。痙攣の重積例は認められなかった。経過観察にて帰宅が4名、入院は2名であった
(内、1名は外傷合併により長期(1
00日)の入院・加療が必要であった)。
【考察・まとめ】
精神神経症状の多くは、無処置で、かつ、比較的短時間で改善するものであった。国内の報告
でも、同様に短時間で改善する報告が散見されるが、精神神経症状が継続する症例も報告されて
いる。また、異常行動から自傷や他害(未遂)に至るケースも認められたが、新聞等の報道で
は、ハーブ使用との関連が疑われる自動車傷害事故なども散見される。ハーブ使用者への直接的
な影響も重要であるが、異常行動による自傷・他害行為による間接的な影響も大きな問題と思わ
れる。早急な規制・対策が必要である。
― 2
7 ―
一般演題12
液状脱法 ドラッグによる急性中毒の1例
大久保怜子、反町光太朗、鈴木 剛、阿部 良伸、根本 千秋、塚田 泰彦、
石井 証、長谷川有史、島田 二郎、池上 之浩、田勢長一郎
福島県立医科大学附属病院救命救急センター
【症 例】
5
2歳、男性。薬物乱用歴あり。量は不明だが液状脱法ドラッグを飲んだ1時間後より高揚感と
共に胸部苦悶感が出現し意識朦朧状態となったため近医を受診した。受診時意識レベルJ
CS3、
血圧214/
146mmHg、心拍数1
5
0回/
分と心機亢進状態であった。強い焦燥感や性的欲求の亢進、
幻覚妄想状態を認め急性薬物中毒の疑いで当院救命救急センターに搬送され同日入院となった。
トラ イエージ 禾の結果は陰性で中毒原因物質を特定しえなかったが、症状及び経過より覚醒剤類
似物質による中毒性精神病が疑われた。第2病日よりブロナンセリン4mg投与を開始したとこ
ろ精神症状は徐々に改善した。第8病日に後遺症なく独歩退院となった。
【考 察】
現在一般市民による脱法ドラッグ使用が深刻な社会問題となっている。脱法ハーブは新規合成
薬物により常に化学構造が変化しているため実態の把握が困難であり、その中毒症状も多岐にわ
たる。本症例では強い交感神経亢進症状と持続する幻覚妄想状態を認め、覚醒剤類似物質の関与
が強く疑われた。急性期に原因物質を特定することは大部分の症例で困難である。脱法ドラッグ
による急性中毒患者に対する初期診療においてはトキシドロームの概念が重要であろう。
― 2
8 ―
一般演題13
当院における脱法ハーブ9症例の検討
野間未知多、清水 敬樹、高橋 希、早瀬 直樹、佐藤 啓太、早川 桂、
勅使河原勝伸、田口 茂正、五木田昌士、清田 和也
さいたま赤十字病院・救命救急センター・救急医学科
【はじめに】
脱法ハーブは、乾燥した植物片に合成カンナビノイドを主とする化学物質を添加した製品であ
る。その化学成分は経時的に変化を加えられ、出現する症状や合併症が多彩で治療方法に苦慮す
る。
【目 的】
脱法ハーブ使用後の中毒症状で、当院に搬送された症例の特徴を検討し報告する。
【方 法】
対象は201
2年4月から10月に搬送された脱法ハーブ中毒の9症例で、後ろ向き診療録調査を
行った。
【結 果】
年齢範囲は20-37歳で、男女比は5:4であった。入院となったのは5例で、入院期間は1-
7日間であった。このうち2例は診療拒否と脱走により治療途中で退院となった。症状に関して
は、不隠6例、頻脈6例、頻呼吸5例、散瞳3例、嘔気2例、幻聴1例がみられた。合併症とし
て心電図異常3例、外傷2例、心気症2例、横紋筋融解症1例、痙攣重積1例を認めた。外傷の
うち1例は3階から飛び降りてTh
12圧迫骨折を認めた。横紋筋融解症は高カリウム血症でテン
ト状T波を呈し、急性腎不全となった。
【考 察】
症状で多くみられた頻脈、頻呼吸、散瞳は交感神経刺激によるものと考えられ、脱法ハーブの
自律神経系作用が示唆された。これらは経過観察のみで軽快した。合併症の中には外傷、腎不全
を伴う横紋筋融解症、痙攣重積、心電図異常などの重篤化を考慮すべき症例が含まれていた。ま
た、その中から2例の治療途中退院があり、不適切な退院を防ぐためには鎮静剤または精神科医
の早期介入が必要と考えられた。
― 2
9 ―
一般演題14
救急外来受診患者が所持 していた脱法 ドラッグの分析
藤田 友嗣1)、新津ひさえ2)、肥田 篤彦3)、菊池 哲4)、小野寺 誠4)、
藤野 靖久4)、井上 義博4)、酒井 明夫3)、遠藤 重厚4)
1)岩手医科大学高度救命救急センター 薬物毒物検査部門、2)岩手医科大学医学部法
医学講座、3)岩手医科大学医学部神経精神科学講座、4)岩手医科大学医学部救急医学
講座
【緒 言】
近年、合成カンナビノイド系やカチノン系(脱法ドラッグ)が添加されたハーブ等の摂取によ
る急性中毒が問題となっている。これらの製品の成分を特定することは、今後の中毒医療におい
て有用な情報の一つとなる。そこで、我々は、錯乱等の精神症状を呈し、当救急センターに受診
した患者が所持していたハーブ等の製品(1
6種類)について、その成分分析を行い、脱法ドラッ
グを検出したので報告する。
【方 法】
製品の一部をメタノールで抽出したものを試料とした。分析にはAgi
l
e
nt
社製ガスクロマトグ
ラフ質量分析装置とABSc
i
e
x社製320
0QTr
a
p液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/
MS/
MS)を
用いた。同定はCa
yma
nChe
mi
c
a
l
社のホームページ上から得た合成カンナビ ノイド 等のEI
マス
スペクトルデータベースを用いて化合物を推定し、その後LC/
MS/
MSを用いて分子量関連イオン
の確認を行なった。
【結果および考察】
患者が所持していた製品を分析した結果、1
6種類中1
4種類から合成カンナビノイド系化合物、
カチノン系化合物に加え、アリルシクロヘキシルアミン系化合物(ケタミンのデザイナードラッ
グ)が検出された。また、製品の中にはこれらの脱法ドラッグが2-3種類含まれていたものが
存在した。脱法ハーブ等の製品の摂取では様々な臨床症状を呈していることが多く、異なる系統
の化合物が混入されていることも原因の一つとして考えられる。
― 3
0 ―
一般演題15
消臭・芳香剤を大量飲用後にシ ョック・腸管浮腫を来した一例
窪田 健児1)、関口 博史1)、石川 紗織1)、中野 英之1)、佐藤 由紀1)、
若生 康一1)、宮島 衛1)、田中 敏春1)、熊谷 謙1)、広瀬 保夫1)、
堀 寧2)、藤澤真奈美2)、野沢 まゆ2)
1)新潟市民病院救命救急・循環器病・脳卒中センター、2)同 薬剤部
【緒 言】
消臭・芳香剤は多種多様なものが一般家庭で広く使用されている。われわれは界面活性剤を含
有する消臭剤の経口摂取後にショック・腸管浮腫を来した一症例を経験したため、若干の考察を
加え報告する。
【症 例】
70歳代、男性。某日、ト イレ用の消臭・芳香剤(商品名「ト イレの消臭元」)と布用消臭剤(商
品名「布のにおい消し」
)を大量に飲用した。翌日に飲酒後に外出し、自宅近辺で倒れているとこ
ろを発見され当院救命救急センターへ搬送された。当院来院時、昏睡状態、血圧6
8/
4
1mmHg、
心 拍 数68/
mi
n、SpO2:9
8%(O2:5L)の 状 態 で あ った。動 脈 血 液 ガ スに てpH7.
2
2
8、HCO3
15.
8mEq/
l
、BE11.
1の代謝性アシドーシスを認めた。メタノール、エチレングリコール、蟻酸
の血中分析を行ったが検出されなかった。界面活性剤による循環不全が主病態と考え、気管挿管
しI
CUに収容した。大量輸液後循環動態は安定化したが、第2病日より水様下痢が持続した。腹
部CTにて腸管、腸間膜の浮腫状の変化を認めた。絶食・補液にて徐々に改善し、第1
1病日より
食事開始、第1
5病日に精神科病院へ転院した。
【考察・結語】
界面活性剤中毒では循環血漿量低下によるショック、肺水腫、消化管粘膜障害が起こる。家庭
用の消臭剤飲用により重篤な循環不全を呈しうる点に十分に注意すべきである。
― 3
1 ―
一般演題16
牛乳摂取のため意識障害が遷延 したと
考えられたパラジクロロベンゼンの一例
菊池 哲、井上 義博、藤野 靖久、小野寺 誠、遠藤 重厚
岩手医科大学救急医学講座
【症 例】
8
7歳女性。平成24年4月2
9日22時30分頃、震度3の地震が発生し息子が家の中の安全を確認し
ていたところ、外出用の衣服に着替え廊下にいる患者を発見した。その際、患者口腔内に防虫剤
の存在を気づきそれを除去。お茶と牛乳を摂取させ経過を見ていたが、その後呼びかけに反応が
鈍いと家族が感じ救急車を要請。30日午前1時当科搬送となった。
【経 過】
当初家族からの情報聴取では、一袋に2錠(1錠5g)入りの防虫剤一袋分を経口摂取してい
たとのことであった。パラジクロロベンゼン(以下pDCB)の毒性からそのまま帰宅可能とも考
えられたが、J
CSで20~3
0と意識レベルの改善が不良であること、いつもと状態が異なるという
家族からの不安の訴えもあり入院経過観察を選択した。その後、自宅に戻った家族より、新たに
5袋の空袋と1錠の防虫剤を発見したと連絡が入った。5月1日のCT検査では、結腸内に残存
したpDCBと考えられる高吸収域を認めたため、EDチューブを挿入し活性炭と下剤を投与。GE
も追加施行した。その後多量の排便を認め、レントゲン上消化管内の高吸収像は消失した。意識
mLであった。3日頃
レベルは1日のJ
CSで20
0まで増悪し、その際のpDCB血中濃度は2
7.
1μg/
より少しずつ意識状態の回復が見られ、5日にはJ
CSで3まで改善。経腸栄養を継続しつつ7日
に近医へ転院となった。
【結 語】
pDCBと共に牛乳を摂取。意識障害が遷延した症例を経験したため、文献考察を加え報告す
る。
― 3
2 ―
一般演題17
ヘ リウムガスを使用 しての自殺企図の2症例
岡本 純一、木村 相樹、久下 淳史、佐藤 光弥、岩谷 昭美
公立置賜総合病院 救命救急センター
【はじめに】
ヘリウム(He
)は、無色、無臭、無味、無毒で最も軽いガス元素である。安全性が高い特性を
利用して気球や小型飛行船の浮揚用のガスとして、また深海に潜る際の呼吸ガスとしてなど多用
されている。今回、ヘリウムガスを使用しての自殺企図症例を2例経験したので報告する。
【症 例 1】
20歳女性。本年4月某日、自室でビニール袋を頭から被り、ヘリウムガスボンベからチューブ
でガスを引き込み吸入していて、心肺停止状態であった。
【症 例 2】
19歳男性。本年8月某日、同様に自室でビニール袋を頭から被り、ヘリウムガスを引き込んで
意識が無い状態で発見された。救急隊員が接触時に意識レベルはJ
CS3
0
0だったが、当センター
到着時にはJ
CS1
0まで回復していた。集中治療室に入院後、意識レベルが徐々に改善し全身状態
も安定した為、精神科に転科して第1
6病日に退院した。
【考 察】
ヘリウム中では音速が空気中よりかなり速く、吸入して発声すると甲高い音色の奇妙な声が出
る(ドナルドダック効果)ため、パーティグッズとして利用される。ヘリウムに毒性はないが、
酸素を含まないヘリウムを吸うと酸欠事故を起こすので、その製品には2
0%の酸素が添加されて
いる。しかし、今回の2例は浮遊風船用に市販される純正のヘリウムガスを使用し、酸素は全く
含まれないために酸欠状態から死に至る危険性が高い。自殺手段としてインターネット上で話題
になっているので、予防対策が必要である。
― 3
3 ―
一般演題18
著明な乳酸アシドーシスを呈 し、
急性腎不全を併発 した急性アルコール中毒の1例
横山 隆1)、北田 文華2)
1)札幌東徳洲会病院腎臓内科、2)同救急診療部
【症 例】3
6歳男性、会社員。
【既 往 歴】特記すべきことなし。
【嗜 好 歴】喫煙20本/
日、ビール5
00~1
0
0
0mL/
日を1
0年間継続。
某日テキーラ10杯、ビールジョッキー5杯などを飲んだ後帰宅した。翌朝意識消失したため、当院
に救急搬送された。J
a
pa
nCo
maSc
a
l
e1
0
0、血圧9
7/
4
8mmHg、脈拍1
0
4/
分、不整、酸素飽和度93%
(10L酸素吸入下)。CPK25001 I
U/L、Myogl
obi
n45043ng/mL、BUN20.
3mg/dL、Cr
2.
90mg/dL、
Ca8.
2mg/
dL、P7.
8mg/
dL、エタノール血中濃度3
7
4.
3mg/
dL、血液ガス分析にてPH7.
2
0
0、PO2
92.
0mmHg、PCO222.
0mmHg、BE20.
0、HCO310.
0mmoL/L、Lac
t
at
e56.
0mmoL/L
と横紋筋融
解症、著明な代謝性アシドーシスを呈し、急性腎不全を伴った急性アルコール中毒の所見が得られた。
9.
1mmo
L/
L、La
c
t
a
t
e
CHDFを36時 間 行 い、CPK1286
2I
U/
L、Myo
gl
o
bi
n19
3
1ng/
mL、HCO31
1.
4mmo
L/
とアシドーシス、横紋筋融解症は改善したが、腎機能はCr
5.
2
9mg/
dLと悪化した。尿
量も200mL/
日以下が持続し、第6病日にはBUN4
8.
1mg/
dL、Cr
9.
1
6mg/
dLと腎機能はさらに
増悪した。その後週3回の透析を第2
4病日まで継続施行したところ、尿量は2
1
0
0mL/
日と増加
dLと回復した。急性
し、第31、38病日にはそれぞれBUN11.
7、10.
8mg/
dL、Cr
1.
3
9、1.
0
1mg/
アルコール中毒において本症例のごとく著明な乳酸アシドーシスを呈し、長期間にわたる腎不全
を呈した症例は極めて稀である。当院に搬送された急性アルコール中毒患者の現況と合わせて報
告する。
― 3
4 ―
一般演題19
バルビタール大量服用により意識障害が遷延 し、
経過中に心室細動を併発 した一例
吉川 慧、八木橋 厳、樽井 武彦、山口 芳裕
杏林大学高度救命救急センター
【症 例】
5
9歳女性。既往はうつ病、1型糖尿病。
【現 病 歴】
自宅で倒れているところを家人が発見。患者の口唇に白い粉末の付着あり、近くに「バルビ
タール」とラベルのあるビンがあった。三次救急経由で当施設搬入となった。
【現症と初療】
意識GCSE
1V1M1、BT37.
0℃、BP
1
2
0/
5
4、SAT9
8%(1
0LLM)
。自発呼吸弱く気管挿管とし
た。Tr
i
a
ge
はBa
r
bi
t
ur
a
t
e
のみ陽性。バルビツール酸系薬剤の過量服用と考え、胃洗浄と活性炭の
繰り返し投与を行った。
【経 過】
入院後、意識障害が遷延した。長時間作用型のバルビタールであれば透析も有効であることか
ら、第4-1
1病日まで血液透析を施行した。薬物分析の結果、純粋なバルビタールであることが
わかり、透析にて血中濃度の低下と意識状態の改善が確認された。その後、1
1日目には意識レベ
ルがほぼ正常となり、薬物の入手経路は医師からの処方薬ではなく、以前に入手したものを自殺
目的で服用したことが分かった。その後の経過は順調であったが、第2
0病日に心室細動となり、
DCを含む心肺蘇生術を行い自己心拍の再開が得られた。原因は、たこつぼ心筋症とQT延長によ
るものと考えた。その後の経過は順調で、第5
3病日に自宅退院となった。
【考 察】
バルビタールは半減期が長いため中毒症状が遷延し、国内では入手が困難である。血液透析が
有効で、比較的長期の経過観察が必要であると考えられる。
【結 語】
大量のバルビタール服用で治療に難渋したが、救命し得た一例を経験したので報告する。
― 3
5 ―
一般演題20
大量服薬によりリチウム中毒をきたした1例
小林 武志1)、豊口 禎子1)、富永 綾1)、白石 正1)、伊関 憲2)
1)山形大学医学部附属病院薬剤部、2)山形大学医学部救急医学講座
炭酸リチウム製剤は躁病治療に汎用される薬剤であるが、その有効域(0.
6~1.
2mEq/
L)は狭
く、腎機能、水分摂取量、電解質組成によって変化しやすいことで知られている。よって定期的
な血清リチウム濃度の測定がなされるべきである。今回、我々は大量服薬によるリチウム中毒を
経験したので報告する。
【症 例】2
0歳、女性。双極性障害疑い。パーソナリティー障害疑い。
【経 過】上記疾患にて、心療内科通院中。某日午前、急性薬物中毒にて当院救急部へ搬送と
なる。搬送の6時間以上前にリチウム9
2
0
0mg、バルプロ酸5
2
0
0mgを摂取したと推定された。患
者は朦朧状態(J
CSI
I
30)であり、医療保護入院となった。内服8時間後(推定)の血清中薬物
濃度はリチウム3.
32mEq/
L、バルプロ酸1
7
0.
9
0μg/
mLと高値を示したため、輸液・利尿剤によ
る尿量の確保と2時間毎の採血にて血中濃度の確認を行った。翌日の薬物消失は緩徐であった
が、意識レベルの改善が見られ、さらに翌日にはリチウム、バルプロ酸ともに正常レベルまで血
中濃度の低下が認められた(1.
0
7mEq/
L、5
8.
5
9μg/
mL)
。意識障害や血圧低下といった中毒症
状の所見無く、病日6日目には退院となった。
今回の症例は特にリチウムの血清中濃度が臨床的に問題であったと考える。適切な輸液療法と
頻回の薬物濃度モニタリングにより速やかに症状の改善に至り、救命し得た1例である。
― 3
6 ―
一般演題21
血液透析により救命 した
バルプロ酸ナ トリウム大量内服の1症例
富永 綾1)、伊関 憲2)、林田 昌子2)、篠崎 克洋2)、小林 武志1)、
豊口 禎子1)、白石 正1)
1)山形大学医学部附属病院薬剤部、2)山形大学医学部救急医学講座
【はじめに】
バルプロ酸ナトリウム(So
di
um Va
l
pr
o
a
t
e
、以下VPA)は、抗てんかん薬として広く使われて
おり、しばしば自殺目的の大量内服に用いられている。今回、VPAを大量内服し、透析を行い救
命した症例を経験したので報告する。
【症 例】
53歳、男性。反復性うつ病性障害で通院中。過去に3回ほど多量内服の既往あり。某日家人が
朦朧としている本人を発見、当院救急部へ搬送された。鞄の中に大量の薬の空シートがあり、急
性薬物中毒の診断で入院となった。VPAの内服量は2
2,
0
0
0mgと推定された。
【来院時現症】
7.
0%(r
o
o
m
意 識 レ ベ ルJ
CSⅠ - 2、E
4V4M6、血 圧1
7
8/
1
0
0mmHg、脈 拍1
1
7/
mi
n、SpO29
a
i
r
)、体温37℃。
【経 過】
服用6時間後のVPA血清中濃度が9
05.
1
9µg/
mLと高値であり、活性炭、クエン酸マグネシウ
ム投与、さらに血液透析を施行したところ、徐々に濃度は低下し、透析開始後6時間後には
176.
61µg/
mLとなったため透析を終了した。血漿アンモニア値等の検査値に特記すべき変化は
認められなかった。その後精神科に転科後、他院転院となった。
【考 察】
VPAは蛋白結合率が高く、通常の血液浄化法では有効に除去できないが、大量内服時は蛋白結
合率が減少し、遊離型VPAを透析により除去することが可能となる。VPA濃度が8
5
0µg/
mL以上
で積極的に血液浄化療法を行うとの報告もあり、今回の症例でも遊離型VPA濃度を効果的に除去
することができ救命に至ったと考えられる。
― 3
7 ―
一般演題22
総合感冒薬の慢性乱用に糖尿病性
ケ トアシドーシスが合併 した1例
高橋 希、清水 敬樹、野間未知多、佐藤 啓太、早瀬 直樹、早川 桂、
勅使河原勝伸、田口 茂正、五木田昌士、清田 和也
さいたま赤十字病院 救命救急センター 救急医学科
【症 例】
4
0歳代の女性。20年以上、塩酸イブプロフェンや無水カフェインなどを含む総合感冒薬を乱用
していたが、入院4ヶ月程前から徐々に体力の低下が認められ、入院5日前から意識状態が悪化
した。当初は精神科的加療を目的とし他院に入院したが、意識状態がさらに悪化し、またショッ
ク状態となったため当院に転院となった。精査の結果、糖尿病性ケトアシドーシスであることが
判明し、I
CUにて集学的治療を要した。全身状態は徐々に改善し、第4病日にI
CUを退室した。
その後、2型糖尿病の診断となり内科的治療を継続し、第3
0病日に精神科的加療を目的とした転
院となった。
【考 察】
渉猟し得た範囲で塩酸イブプロフェン、ブロモバレリル尿酸、無水カフェインが糖尿病発症の
危険因子であったという報告はない。本症例ではこれらの薬物を2
0年以上にわたって多量摂取し
ており、糖尿病発症に伴って血糖管理が悪化し糖尿病性ケトアシドーシスを来したが、精神的症
状のために意識障害の病態把握が困難になっていたと推測された。従って総合感冒薬の慢性乱用
に意識障害が併発した場合は、潜在的な内科的疾患の検索も合わせて行う必要があると考えられ
た。
― 3
8 ―
一般演題23
都市型救命救急センターにおける有機 リン中毒の一例
井上 蓉子1)、峯村 純子1)、玉造 竜郎1)、塩田 一博1)、増島絵里子2)、
樫村洋次郎3)、中村 俊介3)、田中 啓司3)、三宅 康史3)、有賀 徹3)、
村山純一郎1)
1)昭和大学病院薬剤部、2)昭和大学病院看護部、3)昭和大学医学部救急医学教室
【症 例】
50代男性。頚部・左上腕部の切創と有機リン系農薬(スミチオン)の服用により当院に救急搬
送となった。来院時、意識レベルE
4V4M6
(GCS)
、瞳孔2mm/
2mm、対光反射正常、脈拍16
2/
分、血圧87/
70mmHg、体温3
4.
7℃ であった。直ちに気管挿管、2‐ピリジン‐アルドキシム‐メ
チオジド及びアトロピン硫酸塩(以下アトロピン)の静脈内投与、胃洗浄、活性炭吸着を行った
後、頚部切創に対し両外頸静脈結紮術を施行した。第5病日、ムスカリン症状及びニコチン症状
の増悪がないと判断し抜管したが、唾液の著明な増加による呼吸状態悪化のため、同日に再挿管
及びアトロピンの持続静注を開始した。更に第1
4病日に気管切開術施行となった。第1
6病日に腹
部膨満感・圧痛・嘔吐が出現し、腹部X線で腸管ガス著明となり、アトロピンの投与は中止と
なった。以降、気管支分泌物増悪はなく、第3
9病日には転院となった。
【考 察】
都心においては近年、有機リン中毒患者は減少しており、治療経験がある医療スタッフは多く
ない。そのため、本症例では多職種間での治療効果・副作用の評価、薬剤投与継続の判断と情報
共有が容易ではなかった。中毒症例では特有な解毒薬を使用するが、薬剤師による薬理作用を考
慮したモニタリング項目の提示、看護師による詳細な臨床症状の観察、医師による診断、という
ように多職種による治療が円滑に実施できるようモニタリング項目を明確にしていくことが重要
である。
― 3
9 ―
協 賛 ・協 力
小
白
川
至
誠
堂
病
院
み
ゆ
き
会
病
院
上
山
市
医
師
会
高 野 せ き ね 外 科 ・ 眼 科 ク リ ニ ッ ク
川
澄
化
学
工
業
株
式
会
社
レ ー ルダ ル メデ ィカルジ ャ パン 株 式 会 社
ネスレ日本株式会社ネスレニュートリションカンパニー
丸
木
医
科
器
械
株
式
会
社
フ
ビ
ー
機 器 展 示
株
式
会
社
テ
イ
エ
コ ン バ テ ッ ク ジ ャ パ ン 株 式 会 社
株
式
会
社
ア
プ
ロ
ン
ワ
ー
ル
ド
フ ク ダ 電 子 南 東 北 販 売 株 式 会 社
マ
シ
シ
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モ
ジ
メ
株
ン
ャ
ス
式
パ
ン
H
C
会
株
D
式
株
式
社
会
社
会
社
高
研
広 告
株
株
式
会
式
社
会
モ
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社
大
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製
薬
工
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会
社
S
L
ベ
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式
会
社
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メ
ン
ス
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C
D
株
式
会
社
三
栄
会
社
ィ
株
版
C
デ
ン
出
シ
ル
パ
す
マ
カ
ジ
る
オ
株
式
式
フ ク ダ 電 子 南 東 北 販 売 株 式 会 社
小
野
薬
品
工
業
株
式
会
社
東
北
化
学
薬
品
株
式
会
社
一 般 社 団 法 人 日 本 血 液 製 剤 機 構
川
株
日
丸
澄
式
化
会
本
木
学
社
シ
製
医
工
業
バ
タ
薬
科
株
イ
株
器
械
式
ン
テ
式
株
会
ッ
会
式
会
社
ク
社
社
コ
セ
キ
株
式
会
社
M
S
D
株
式
会
社
(順不同・敬称略)
― 4
1 ―
次回地方会のご案内
第28回日本中毒学会東日本地方会
北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター
福 本 真理子
会場:北里大学薬学部(予定)
64
1
〒1
08-8
東京都港区白金5-9-1
平成26年1月1
1日 (
土)