不動産業界の現状と中小不動産業者 の生き残りの方向

不動産業界の現状と中小不動産業者
の生き残りの方向
住居購入と宅建試験受験の経験で
わかったこと
SCMビジネスモデル研究会
中小企業診断士 高野伸生
1
自己紹介
プライベートと資格
職務経歴
・1992年4月
某電機メーカー入社
電力会社向業務用アプリケーションの
開発を担当
・1994年12月
電気工事会社資材部配属
購買業務全般を担当、
工事用資材の見積、査定、折衝、発注、
検収業務、輸出業務、集中購買、共同購買
・2003年4月
総務部システム課に異動
社内向けワークフローシステムの開発
・1998年4月
中小企業診断士商業部門登録
・2001年3月
SCMビジネスモデル研究会入会
・2002年7月
「建設業における調達業務改革の事例」
をテーマに発表
・2004年1月
不動産探しを始める
・2004年5月
住居は一回で使うお金としては人生最大の
出費と自覚し、業者にだまされたくない思い
から、宅建の勉強開始
・2004年10月
宅建試験受験
売買契約をしたが、物件に瑕疵の疑いあり
売買契約の白紙撤回に成功
・2004年12月
宅地建物取引主任者試験合格
2
戸建住宅購入
不動産業界の現状と中小不動産業
者の生き残りの方向
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業手順と必要資金
(2)不動産取引の手順と規制
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告のルールと事例
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
3
不動産取引業の意味と対象
不動産とは
物のうち容易にその所在を変えがたいもの。 (広辞苑による)
民法上、土地及び建物・立木のような土地の定着物。
宅建業法上は宅地と建物。宅地とは建物の敷地、道路・公園は除く。
取引とは
売買・交換を自ら行う。
売買・交換・貸借の代理を行う。
売買・交換・貸借の媒介を行う。
売 買
自己物件
○
他人物件の代理
○
他人物件の媒介
○
交 換
○
○
○
貸 借
×
○
○
業とは
不特定多数の者に「反復または継続」して行う行為。
不動産取引業行うためには原則として国土交通大臣か都道府県知事の免許
が必要、したがって
不動産業者とは、免許を受けて不動産取引を行う者
不動産業界(不動産屋さん)のイメージ
1.ベンツが店の前に置いてあり、店の中ではおじさん
がいつもタバコを吸っている。
2.怪しい上にだまされそう。
3.売り手(貸し手)が強く、買い手(借り手)は弱い。
(特に礼金は貸してやるという姿勢を感じる。借りて
いただくという姿勢は感じない。)
4.悪徳業者が多く、やばくなるとすぐ逃げそう。
(テレビで放送している欠陥住宅は業者に苦情を言っ
ても「うちは仲介しただけだ」とかわされる。)
5.年配のおじいさんが多く、店も古くて暗くて入りにくい。
6.いつも暇で仕事をしてなさそう。
5
土地取引の状況
。
資料:国土交通省調べ
注1:土地取引件数は、売買による土地に関する所
有権移転登記の件数としている。
注2:地域区分は次による
東京圏:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県。
都心5区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区
。
大阪圏:京都府、大阪府、兵庫県。
名古屋圏:愛知県、三重県。
地方圏:上記以外の地域。
(平成16年土地白書より抜粋)
東京都は平成4年に底をうち増加傾向で平成15年
には160を超えた。
全国では減少傾向で平成15年は70程度。
地方はさらに厳しく平成15年は60程度。
東京都内であれば商売として成り立ちやすい。
6
公示地価の推移
昭和48年の地価
を100とした場合
三大都市圏とは
東京圏、大阪圏、
名古屋圏
平成3年以降
12年連続下落
平成16年地価公示によると
地価下落が不動産業者に与える影響
1.昨年1年間の全国の地価は、住宅地、商業
地ともに下落幅が縮小
1.一件あたりの取引金額が小さくなり、利益が少なく
なる。
2.地方圏においては、住宅地は下落幅が拡
大し、商業地は昨年と同じ下落幅だった。
2.バブル期の住宅取得者は5000万円で購入、ローン
残高3500万円だが売却すると3000万円にしかなら
ないケースが多い。したがって売却の仲介の際に
売主から最低売却価格を3500万円と主張されると
7
価格面で折り合いがつかず、取引成立が難しい。
3.三大都市圏においては、住宅地、商業地と
もに下落幅が縮小した。
(平成16年土地白書より抜粋)
宅地建物取引業者数の推移
(平成16年土地白書より抜粋)
平成3年までは増加、平成3年をピークに減少傾向
ただし法人は平成3年以降も13年まで減少していない。
構成の比率は法人が増加傾向
法人の方が信用
面で有利。
取引主任者登録数は:695215人(平成14年3月末時点)
近年は毎年約2万人増えている。
8
目 次
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業手順と必要資金
(2)不動産取引の手順と規制
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告のルールと事例
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
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開業の手順
事務所の設置
取引主任者の確保
免許の取得
宅建試験に合格し、都道府県知事
の主任者登録を受け、取引主任者
証の交付を受けたもの
都道府県知事の免許
国土交通大臣の免許
保証金の供託
営業保証金
弁済業務保証金
営業開始
10
事務所、取引主任者、免許について
・事務所は法律に沿って整備しなければならない。
・事務所に必要なもの
①専任の宅地建物取引主任者(従業員5名につき1名以上)
②報酬額の掲示(国土交通大臣の定め)
③標識(免許番号、更新回数等を記載)
④業務取引の内容を記載した帳簿
⑤従業員名簿
免許の種類
内 容
都道府県知事の免許
1つの都道府県内にのみ事務所をもつ
98%が都道府県知事の免許
国土交通大臣の免許
2以上の都道府県内に事務所をもつ
国土交通大臣の免許は2000程度
11
保証金の供託
目的: 手付金を預かった不動産会社が、契約が終了する前につぶれてし
まったときなどに、お客さんが損をしないように、保証金を積み
たてておいて補填する。
営業保証金
金額
主たる事務所に付き1000万円
その他事務所一ヶ所につき500万円
供託は、金銭・国債、地方債・政府保
証債、有価証券のいずれも可
弁済業務保証金
主たる事務所に付き60万円
その他事務所一ヶ所につき30万円
供託する際は金銭のみ
納付と
供託場
所
主たる事務所のもよりの供託所
宅建業者が宅地建物取引業保証
協会へ納付し、宅地建物取引業保
証協会が法務大臣・国土交通大臣
の定める供託所へ供託
条件
供託の際、評価額は金銭・国債100%、 宅地建物取引業保証協会(国
地方債・政府保証債90%、有価証券
土交通大臣指定の公益社団法
80%
人)に加入
12
不動産屋の開業資金
万円
資本金(有限会社)
300
有限会社登記費用
25
貸事務所 仲介料、敷金、前家賃
56
内装工事、看板工事
50
事務所備品、印、椅子、机、パソコン、FAX、コピー機等
電話加入費(2回線)
31.5
15
宅建協会入会金
100
保証協会入会金
20
弁済業務保証金分担金
60
宅建業免許申請書印紙代
自動車(中古)
合計
3.3
30
690.8
個人で始める場合は資本金と有限会社登記費用は不要
車を持っていて、個人で自宅で始める場合は約230万円で開業可。
はじめよう!小さな不動産屋(著者:今井学、同文館出版)より引用
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目 次
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業手順と必要資金
(2)不動産取引の手順と規制
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告のルールと事例
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
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取引の流れ(売却と購入の場合)
A 不動産を売却する場合
1 物件調査
2 価格査定
3 媒介契約の締結
B 不動産を購入する場合
1 物件紹介
(実際は自分で探した)
2 売主(売買の相手方)との
4 買主(売買の相手方)の探索 交渉
5 買主(売買の相手方)と交渉
3 重要事項等の説明
6 売買契約の締結と書面の
4 売買契約の締結と書面の
交付
7 決済、引渡しなど
交付
5 決済、引渡しなど
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媒介契約の内容と規制
媒介契約とは、売主と結ぶ媒介・代理の契約のこと。
広告・チラシを見ると取引態様の箇所に「一般」「専任」などと書かれている。
明示型
一般媒介契約
媒介契約
売主が複数の宅建業者
に仲介を依頼できる。
専任媒介契約
売主は一つの宅建業者
にしか仲介を依頼でき
ない。
非明示型
どの宅建業者に仲介依頼して
いるかを明らかにしなければ
ならない
どの宅建業者に仲介依頼
しているか明らかにしなく
てもよい
(非専属型)
専任媒介契約
売主が自分で見つけた
相手なら直接取引できる
専属専任媒介
契約
売主が自分で相手を見
つけても直接は契約で
きない
1.不動産業者としては、競争の少ない専任媒介契約を結びたい。
2.売主は専任媒介契約をした業者が、いつまでもお客をつけられないと困る。
3.そこで専任媒介の場合、業者側に規制が課せられている。規制の内容は、
①契約の有効期間は3ヶ月まで(3ヶ月売れない物件は問題がある。)
②業務の処理状況の報告義務
③レインズへの登録義務
16
重要事項等の説明義務と契約の規制
・記載しなければならない項目はどちらも宅建業法で決められている。
重要事項の説明
契約書面
時期
契約成立まで
契約後
担当者
取引主任者が説明
取引主任者でなくても良い
対象者
買おうとする人
借りようとする人
契約の当事者双方
記名押印
取引主任者
取引主任者
説明要否
必要
不要
中小不動産業者は重要事項の説明も契約書面も担当者は同じ
物件購入時に感じたこと(業者の思いと買主の思いがかみ合わない点)
1.重要事項には購入判断に必要ことが含まれている。(電気・ガス・排水施設の整備状
況、建築できる建物の種類、高さの制限、建ぺい率、容積率など)
したがって、買主は重要事項の説明を受けてから購入判断したい。
2.ところが、業者は契約の意思表示をしないと重要事項の書面を作りたがらない。
3.さらに、重要事項は契約と同じ日に説明するケースが多いが、契約直前に説明され
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ても理解できない。
目 次
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業手順と必要資金
(2)不動産取引の手順と規制
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告のルールと事例
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
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報酬に関する制限
宅建業法によって上限が決められている。
売買額
売買・交換の
媒介
報酬限度額
200万円以下 当事者双方から代金の5.25%
売買額100万円⇒5万2500円ずつ
200万円超
当事者双方から代金の4.2%+2万1千円
400万円以下 売買額300万円⇒14万7千円ずつ
400万円超
当事者双方から代金の3.15%+6万3千円
ほとんどがこのケース
売買額5000万円⇒163万8千円ずつ
売買・交換の
代理
代理の依頼者から媒介の場合の2倍
貸借の媒介
当事者双方から1.05月分以内
お客にもらうのが一般的だが、貸主にもらっても良い。
代理依頼者から1.05月分以内
貸借の代理
経験上、割り引くケースはほとんどない。ただし、雑談のときに「当社に仲介
19
させてくれれば手数料は割り引く」といわれた事はある。
取引のケース別仲介手数料について
ケース1
不動産会社1社を
経由するケース
(両手)
ケース2
売主
手数料
ケース3
不動産会社3社以
上を経由するケー
ス
買主
手数料
売主・買主双方から手数料がもらえる。不動産会社としてはこのケースが理想。
売主
手
数
料
不動産会社2社を
経由するケース
(片手)
不動産
会社
不動産
会社A
不動産
会社B
元付け業者
客付け業者
手
数
料
買主
元付け業者、売主に依頼されて仲介する業者。手数料は売主からもらう。
客付け業者、買主を見つける業者。手数料は買主からもらう。
不動産会社は元付けを重視する。客付けだけでは両手の可能性はない。
売主
不動産
会社A
手
数
料 元付け業者
不動
産会
社C
不動
産会
社D
あんこ業者
不動
産会
社E
不動産
会社B
客付け業者
元付け、客付けのほかにあんこ業者が入る。1つの業者が受け
る報酬は少なくなるので嫌われる。
損をしない住宅取得講座より引用http://www.home-knowledge.com/tieup/homes2/series01/02.html
手
数
料
買主
20
不動産会社の収益源について(全体像)
1.仲介業務
(1)賃貸の仲介・・・家賃が80,000円/月 ⇒ 手数料84,000円
(2)売買の仲介・・・売買価格3,000万円 ⇒ 手数料1,008,000円
2.管理業務・・・家賃の徴収とクレームの対処。相場は家賃の5%。
家賃が80,000円/月 ⇒ 4200円/月
3.分譲
(1)土地分譲・・・・・・土地を買い取って区分して販売。収益は価格設定次第。
(2)建売分譲・・・・・・分譲地を取得し、建物を建てて販売。収益は価格設定次第。
(3)マンション分譲
・・・・・・マンション用地を取得し、マンションを建てて販売。収益は価格設定次第。
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はじめよう!小さな不動産屋(著者:今井学、同文館出版)5不動産屋の業務を知ろうを修正
戸建を探しているお客に対する販売方法
①古い家が建っている土地
古家付土地として販売の仲介、もしくは買い取って販売。
②建築条件付土地
イメージとしては建築前の建売。家を建てる業者(工務店)は決められている。
土地売買契約3ヵ月以内に住宅の建築請負契約を結ぶことを条件に販売。
買手は工務店の信用などの調査に神経を使う。
中小の業者に多く、メリットは建売に比べて売れ残りのリスクが少ない。
①で売れない場合、古家を取り壊し、この方法で売る。
③土地プラス新築建物(建売)
土地を仕入れて工務店に建物を建築させて販売。
④土地のみ
住宅はお客の好きな会社に建ててもらう。
ただし非常に少なく、あまり流通しない。
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目 次
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業手順と必要資金
(2)不動産取引の手順と規制
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告のルールと事例
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
23
不動産の広告に必要なルール
• 誇大広告の禁止(罰則あり)
1.徒歩20分なのに徒歩15分と表示
分表示には基準がある。公正競争規約では80mを1分。
2.買得、格安、掘出、投売り、安値と表示
価格が著しく安いという印象を与える用語は使用不可。
3.おとり広告も禁止
• 広告開始時期の制限
おとり広告と思わせる
ようなケースは多い。
広告はいつ出してもいいわけではない
建築確認や開発の許可が下りた後でないとダメ
• 取引態様の明示
広告には必ず取引態様を明示しなければならない
取引態様とは売主、販売代理、仲介(一般・専任)など
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目 次
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業手順と必要資金
(2)不動産取引の手順と規制
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告のルールと事例
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
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不動産取引価格
1.不動産の価格・・・3つの要因の相互作用の結果として形成
①不動産の効用(どれだけ役に立つか)、②相対的希少性、
③有効需要(購入できる需要者がいること)
• 取引価格はどう決まるか?
(新築は積上方式中古は売主の希望)
3600万円
査定価格(助言価格)
3200万円
根拠の明示が必要(価格査定マニュアル)
3400万円
成約価格
3300万円
買 主
売出価格(媒介価格)
取 引 業 者
依 頼 者︵売 主︶
売希望価格
交渉
成約
価格
売出価格は売れないと下がる。
売れない物件は客の反応がなくなってくる。そのタイミングで下げる。
実例1:4200万円 ⇒ 3950万円 ⇒ 3650万円
実例2:3780万円 ⇒ 3480万円 ⇒ 3280万円
26
土地の価値の違いの考え方(その1)
事例1
A土地
20坪
2m以上
B土地
20坪
A土地とB土地はB土地のほうが価値が高い。
価値の違いのポイント
1 日当たり(B土地の影になる)
2 使用効率(A土地は駐車した場合、出入り難)
3 転用(B土地は店舗、住宅、駐車場可)
事例2
A土地とB土地はB土地のほうが価値が高い。
A土地
20坪
B土地
20坪
価値の違いのポイント
1 日当たり(B土地は日を遮る建物が少ない)
2 使用効率(B土地のほうが建築面積を広く使える)
建ぺい率=建築面積/敷地面積
角地は通常の建ぺい率に10%上乗せできる
A土地=60% ⇒ B土地=70%
27
土地の価値の違いの考え方(その2)
事例3
A土地とB土地はA土地のほうが価値が高い。
A土地
整形20坪
B土地
不整形20坪
価値の違いのポイント
・ デットスペース
事例4
A土地
(50坪)
B土地
(50坪)
A土地とB土地はA土地のほうが価値が高い。
価値の違いのポイント
・A土地は真ん中から2つに区切った場合、宅
地にするのにちょうど良い整形地ができる。
・B土地は真ん中から2つに区切っても奥の土
地は使いづらい。
その他、前面道路が私道か公道かによっても価値が違う。
公道のほうが価値が高い
28
土地の価値の違いの考え方(その3)
大手が行う分譲
事例5
広い土地はそれだけで価値(坪単価)が下がる。
理由:
200坪
都内では高額物件になるため販路が少ない。
大手に買い叩かれる。
接道義務を満たすため位置指定道路を作らなけ
ればならないが道路の評価価格はゼロ。
既
存
道
路
①
②
位置指定道路
③
土地の価値は①、②、③の順
価値の違いのポイント
・日当たり
・道路付け
29
価格査定の方法(ソフト)
土地
建物
選択方式で条件を選ぶので、素人で
も分かるようになっている。
例えば、ガス施設で引込不能は90%
排水施設で汲取は95%
土地建物簡易査定(査定くん):http://haruna.co.jp/ajents/satei.htmより引用
30
私が行った価格査定(戸建)
条件
土地
物件
所在地
間取
駐車場
駅歩
価格
敷地面積(m2)
一坪あたりm2
敷地面積(坪)
坪単価
土地価格
1
東新小岩5
3LDK
有
9
36,800,000
84.44
3.31
25.54
937,000
23,933,922
2
東新小岩5
3LDK
有
9
37,800,000
85.02
3.31
25.72
937,000
24,098,319
3
東新小岩5
3LDK
有
6
30,000,000
54
3.31
16.34
950,000
15,518,274
4
5
6
7
データ収集
東新小岩5
西新小岩3 西新小岩4 東新小岩7
1.事例のデータを集める。
4LDK
4LDK
5SDK
3LDK
有 2.取引価格を入力。
有
無
無
8 3.土地・建物の面積を入力。
15
10
13
39,800,000
34,800,000 30,500,000 29,800,000
4.取引価格になるように土地・建物の
77.65
55.65
51.57
55
坪単価を調整。
5.
3.31
3.31
3.31
3.31
10件位データをとると、その地域の
23.49
16.83
15.60
16.64
相場が分かる。
960,000
950,000
936,000
930,000
新小岩の場合、土地90〜100万、建物
22,549,595 15,992,444 14,601,552 15,472,899
は55〜60万
建物
延べ面積(m2)
延べ面積(坪)
坪単価
耐用年数
使用年数
耐用年数-使用年数/耐用年数
建物価格
査定価格(実例基準)
現在価格
査定価格(査定ソスト)
他
77.48
23.44
550,000
20
0
1.00
12,890,755
36,824,677
36,800,000
38,280,000
79.21
23.96
570,000
20
0
1.00
13,657,805
37,756,124
37,800,000
38,700,000
84.00
25.41
570,000
20
0
1.00
14,483,722
30,001,997
30,000,000
29,800,000
私道負担
13.85m2
89.11
99.35
106.87
65.60
26.96査定 30.05
32.33
19.84
600,000
570,000
570,000
550,000
1.土地の面積入力。
20 2.建物の面積入力。
20
20
20
0 3.土地・建物の坪単価微調整し、入力。
0
6
0
1.00
1.00
0.70
1.00
(微調整はほぼ5%以内。)
16,173,490 17,130,450 12,898,962 10,914,217
土地の微調整は公道面、日照等を考慮。
38,723,085
33,122,894 27,500,514 26,387,116
建物の微調整は設備など考慮。
39,800,000 32,800,000 30,500,000 29,800,000
中古建物は使用年数入力。
39,390,000 33,630,000 26,500,000 28,340,000
私道負担
私道負担
査定ソフトとほぼ同じ結果。
11.49m2
6.04m2
価格査定の基本は土地坪数×坪単価+建物坪数×坪単価
31
目 次
1.不動産業界の現状と動向
2.不動産取引のルールと実務知識
(1)不動産取引業の開業のルール
(2)不動産取引のルール
(3)不動産会社の報酬、収益源、戸建販売方法
(4)不動産の広告に必要なルール
(5)不動産価格について(考え方、査定)
3.中小不動産業者の生き残りの方向
32
中小不動産業者の生き残りの方向
各種業務のメリットとデメリット
業務
メリット
デメリット
賃貸仲介
堅実に稼げる。リスク 引越しシーズン以外は収入が少なくなる。
少ない。
エイブル、ミニミニなど賃貸専門の大手
がいて競争も厳しい。
売買仲介
一度の取引で多くの
報酬が得られる。
賃貸より成約件数が少ない。大手では三
井のリハウス等と競争になる。
管理業務
コンスタントに収入が
得られる。
1件当たりの収入が少額。業務も手間が
かかる。
分譲
完売すればかなり大 多額の資金が必要でリスクが大きい。規
きな利益が得られる。 模の大きい分譲は大手にしかできない。
どの業務も一長一短があるが、業務効率を考えると基本的には業務の絞込みが必要
業務分野を絞りこむ場合は、競争環境、好きな分野、得意分野をヒントにする。
新小岩で生き残っている会社・・・①仲介と管理、②売買仲介と分譲
分譲は中小業者の場合、小規模なもの(一区画か二区画程度)が有効
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私の不動産購入経験
売買物件概要:
経緯:
場所
葛飾区西新小岩(新小岩駅徒歩10分)
物件
戸建中古物件(1999年1月建築)
売却理由 相続分割(調書有)
B点
重複部分
A点
2004/9月
全てビデオ
に録画
買い付け申込み
重要事項説明、売買契約
手付金100万円を売主に支払済
仲介手数料半金50万円をA社に支払済
付帯設備確認
住人のSさんより、以下を聞いた。
①隣家から当該物件が越境していると言われている。
②売主の父が風呂場で死亡した、
即日①について、至急調べるようA社へ指示した。
A社の回
答
・売主は
境界をA点、隣家はB点と主張。
・双方とも建築確認の申請図面、登記簿
はある。
建物
・ただし隣家の主張を証明する法的な証
拠はない。
売主の
主張
隣家の
主張
・隣家の主張をそのまま通すと、建物が
越境している。
白紙で解約したい。
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私の不動産購入経験
2004/10月
(不動産部の見解)
白紙解約は難しい。契約解除は一般的に以下の2つ。
① 手付解除: 手付金100万円を放棄し、A社に説明義務違反として100万円の損害賠償
を起すことは手付解除期日問題で無理と判明。
② 違約解除: 違約した場合、契約解除し、20%の損害賠償を請求できる。
ただし、越境問題が違約にあたるか不明。売主側から違約金を請求されるかも
弁護士事務所にて資料を全て持参し相談
契約書上は違約解除しかない。その上で法的に解決するパターンは2つ
①催告 ⇒ 裁判 ⇒ 解決
②催告 ⇒ 妥協案 ⇒ 解決
問題は催告の材料をどこにおくか?
越境の可能性があるというだけで瑕疵といえるか?(瑕疵の修復)
催告は「 越境して いな いことを引き渡し前に証明しな さい」 という内容しかな い?
第7条の境界の確認を削除してることが弱み
A社ともう一度話し、解決しなければ、催告する方向で検討
A社にて打ち合わせ
引渡しは10月末が大前提だと主張してきた。
重複部分を85万円/坪値引くという妥協案を提示してきた。
A社に対して事前に今回の一件がわかっていれば、契約は結んでいなかったと話した。
A社から白紙解約を提案してきたので了承した。
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不動産購入経験でわかったこと
1.物件調査は基本の基本、これをいい加減にすると重要事項
の説明もいい加減になり、お客の信頼を失う。
2.中小不動産会社は売買契約書の重みを感じていないところ
が多い。誤字脱字が多い。
3.お客との取引は一回限りで、リピートを考えていない会社が
多い。
(住宅を購入したお客が売主や大家さんになることを考えて
いない)
・取引の成立ばかりを考えて、買主の主張を考えていない。
・物件の説明や対応がいい加減でビデオを聞いて検証すると矛盾が出て
くる。
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中小不動産業者の生き残りの方向
私の考える生き残りのキーワード
1.地域密着
地域の人脈を活かした仕入れ
2.インターネット
新規顧客の開拓
3.従業員のレベルアップ
誠実な対応で信用とリピーターの獲得
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1.地域密着
なぜ地域密着なのか?
1.土地の相場がわかっているので、査定しやすい。
2.中小の不動産会社の社長は商店街の行事への参加などを
通じて深い人脈がある場合が多い。この人脈を生かせば有
利に物件情報を収集できる。
3.情報収集や物件調査は地域を絞ったほうが効率が良い。
4.地域を絞り込めば売物件が頭に入りやすい。したがって、お
客が店に来たときに他の類似物件をすぐに紹介できる。お客
は雑談の中で社長が住んでいる場所を聞くと安心する。
5.家を買うということは、周辺環境を買うということ(賃貸も同
様)。地域密着なら周辺環境が良く把握できる。したがって、
周辺環境の正確な説明ができる。
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地域密着の活動ポイント
1.物件仕入れのポイント
・街に出向いて、空き地や廃屋を見つけたら、地主にアプローチする。
・以前に売却したお客(リピーター)がその物件を売却(貸)したい場合、仲
介を依頼してもらえるように、信用を得ておく。
・チラシは物件紹介だけでなく、仕入れ物件も求めていることを記載する。
たとえば、HPのアドレスや「物件求む」などと記載。
2.仲介の場合のポイント
・賃貸・売買とも家主・売主と専任媒介契約を結べるよう働きかける。
・仲介の際は管理業務も出来るだけ取り込む。
・賃貸は物件に連絡先「○○不動産」と電話番号を表示させてもらう。
3.分譲の場合のポイント
・大手が手を出しにくい初めから一区画になっている土地を仕入れる。
・建築条件付土地か建売などの付加価値をつけることも検討する。
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2.インターネット
なぜインターネットが大切なのか?
1.お客は不動産屋に入るのに勇気がいる。
2.インターネットは大手も中小も関係ない。中小でも全国に情報発信できる。
3.不動産屋の店頭では物件の仕分はほとんどが地域別(最寄駅別)で希望
物件を探しにくいし、営業時間の制約を受ける。
インターネットなら、地域別・価格別・駅からの距離別など自由にいつでも検
索できる。
4.インターネットは遠くに住んでいるお客もアクセスできる。遠くに住んでいる
人が、直接店に足を運ばなくても事前に物件の情報が収集できる。
5.インターネットのお客はメールでのやり取りで事前に物件検討しているため
成約率が高い。
6.インターネットはチラシにくらべリアルタイムに更新でき、情報が新鮮。
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インターネットでの検索事例
1.種別を選ぶ(マンション、戸建)
2.地域を選ぶ(東京、神奈川)
3.路線を選ぶ
4.駅を選ぶ
物件一覧表示
5.検索順位を選ぶ
(店頭ではできない)
・同じ物件を3社が登録している。
・どこで仲介しても手数料は同じ。
・自社に問い合わせてもらう工夫
が必要。
6.詳細情報を表示
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インターネットの集客で注意すること
1.検索サイトの物件情報は常に新しいものに更新し
ておく。
・契約済物件を載せていると信用を失う。
2.問い合わせメールは1日以内に返信する。
・2日以上返信がないとお客は別の業者に問い合わせする。
3.HPを作る際は、物件の写真、間取り、会社概要、
担当者名、顔写真、問合せ先、会社の地図を入れ
る。
・写真や間取りがないとお客は問い合わせするかどうか判
断できない。
・会社概要、担当者名、顔写真はお客に安心感を与える。
・最寄り駅から会社までの地図がないとお客が事務所を訪
ねていけない。
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3.従業員のレベルアップ
1.物件調査ノウハウの蓄積や情報収集力の向上
物件調査は、顧客から質問が多い事項や重要事項で説
明が必要な項目は最低限すぐに答えられるようにしておく
町内会や商店街の行事に顔を出し、売りに出そうな物件が
あれば、すぐに情報が入ってくるように人脈を作っておく。
2.接客技術の向上
誠実に情報の公開と説明ができるようにする。接客の際
は、できるだけ相談を受けるスタンスで行う。契約の無理強
いはしない。電話連絡は極力控える。
3.書類作成能力の向上
重要事項説明書や契約書を漏れなく正確に記入できるよ
うにする。記入漏れや誤字脱字をお客に指摘されているよ
うではダメ。
以上のことが出来てはじめてリピーターになる可能性があ
る。リピーターは新しいお客を連れてきてくれる。
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参考資料
平成16年版 国土交通白書(国土交通省)
危ない戸建広告:http://www.ads-network.co.jp/tokusyuu/t-17/
宅建業法 (U−CAN)
土地家屋の法律知識(自由国民社)
土地建物簡易査定(査定くん):http://haruna.co.jp/ajents/satei.htm
宅地建物取引の知識(住宅新報社)
不動産取引の実務(週間住宅新聞社)
街の不動産屋さん 待ちの 経営から抜け出す
(著者:金丸信一、発行所:さくらパブリッシング)
損をしない住宅取得講座http://www.homeknowledge.com/tieup/homes2/series01/02.html
ほじめよう!小さな不動産屋(著者:今井学、同文館出版)
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