経営革新に取り組むトップの方へ

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~今こそ経営品質向上プログラムに取り組む意義~
1.なぜ私たちが経営品質を広めようとしているのか
経営品質を理解していただくにあたって、まず私たちがなぜ経営品質という考えを広めようとしたの
かということからご説明します。
1〕顧客価値を中心とした新たな経営の考え方
現在の事業環境は、業界他社との差別化ができないと市場で生き残れないばかりか、自社の得意とす
る技術やノウハウがあっても、瞬時に価値を失う可能性を否定できない時代となっています。また、競
争環境はいっそうグローバルになり、国内の企業間競争の視点からは予想できない新たなものになって
きています。さらに、社会からの要請も一層強くなっており、社会性を考慮しない経営は、一瞬にして
市場から排除されてしまいかねません。
このような大きな変化のなかで勝ち残っていくには、顧客価値に根ざした経営への変革が不可欠にな
ります。つまり競争優位という業界内で一番の座を確保することよりも、顧客に価値あるものの創造を
目指して、顧客本位、社員重視、独自能力、社会との調和という 4 つの要素を追求する経営の枠組みの
提示とその実践を私たちは推進しています。
2〕新たな価値観への変革による経営革新
顧客価値を目指す経営には、まず従来の「ものの見方、考え方、行動」と、顧客価値からの「ものの
見方、考え方、行動」の違いに自ら気づくことが必要です。自らの「ものの見方、考え方、行動」を顧
客価値に根ざしたものへと価値観を変革することによって、新たな戦略、プロセス、製品・サービスを
生み出すことを経営革新と考えています。
この考え方を実現するための枠組みを「経営品質向上プログラム」として具体化しています。
2.良い経営とは何か
経営品質向上プログラムでは、顧客価値を生み出し続ける組織の経営を「エクセレンス」と呼んでいま
す。端的に言うと「良い経営」ということです。
1〕良い経営に正解はない
そもそも良い経営とは、他人が教えてくれるものではありません。競争力を失う企業は、成功事例を
単に導入することで自分も成功すると考えます。またうまく行く方法を教えてもらおうとも考えます。
しかし自分自身で良い経営とはどのようなことなのかを考えなければ、良い経営を実現することはでき
ません。その意味で理想的な姿を描き、「良い経営とは何か」を考えることこそが経営幹部にとって重要
な仕事です。そのために深い洞察力が求められるのです。
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2〕将来がわからないからこそ規範的に考える
経営には正解がないから何を行っても良いということではありません。将来がわからないからこそ、
どれだけ規範的に考えたのかが重要です。規範的に考えるとは、「何のために」「何を大事にして」「どう
あるべきか」を大事にして考え尽くすことです。経営品質向上プログラムが求める規範とは、経営品質
の理念に示される「顧客本位」
、
「社員重視」、
「独自能力」、
「社会との調和」という視点で、考え尽くす
ことです。考える期間や範囲、その深さも重要です。
3〕対話による創造
「一般に言われている」「過去からそうしてきた」「指示されている」ということでは、新しい価値を創り
出すことはできません。良い経営について洞察をめぐらし、深く掘り下げて考えるとは、自分はこうし
たいという意思があって初めてできることです。しかし、自分ひとりのものの見方、考え方だけでは固
定概念になり、成長の限界や失敗の要因が潜みがちになります。こうした固定観念を打破するには、経
営幹部や社員の意見が自由に交わされる「対話の場」づくりが重要であり、そこから新たな価値が生み
出されます。対話のないところに創造は生まれません。
4〕考えていることと行っていることの一致
良い経営には、顧客価値の実現に向けて、理想的な姿と現実のギャップを振り返り、理想的な姿に近
づくための計画と実践が重要です。考えていることと行っていることの一致をはかろうという努力も経
営革新のプロセスです。
3.経営革新が進まない理由
いま多くの組織で経営幹部自らが内外に向かって経営革新の必要性を訴えています。一向に革新が進
まない組織が多くある一方で、次々と革新が起こり顧客価値を生み続けている組織もあります。なぜ革
新がうまく進まないのか、その原因を考えてみたいと思います。
1〕目的や戦略意図が不明な掛け声では革新は進まない
革新に向けた目標は示されているものの、戦略的な意図がなく精神的な掛け声だけでは、意図した革
新の実現は困難です。革新の目的が不明確で社員への期待が多すぎては焦点がぼけてしまい、自分ので
きることだけを行うようになります。また、精神的な掛け声だけでは経営者が考えていることの意味や
意図を社員全員が共有することは難しいでしょう。
例えば「社員の意識改革」はよく使われる言葉です。しかし社員の意識は今どこに向いているのか、な
ぜそうなっているのかを理解しないまま、「意識を変えよう」「挑戦意欲が大事だ」と言っても何をどうす
べきかがわからないままです。「自由闊達な組織風土」もよく聞く言葉ですが、自由闊達な対話の目的や
目指すべき組織風土を阻害している原因を追究しないままでは、抽象的な概念を伝えるだけで意味を持
ちません。
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2〕改善の繰り返しと革新は異なる
日常的に目に付く問題の改善をとにかく繰り返すことで革新が進むと考えていないでしょうか。業務
や作業の問題を改善することは重要です。しかしそれだけでは従来のやり方をより効率的に行うことに
着目しがちです。問題の構造的要因を追究せずに、表面に現われていることだけを課題とすることは、
かえって部分的な効率追求を優先させて、全体的な効果を見落とすことにもなります。
問題の本質を追究すると必ず業務レベルの上位にあるマネジメントの問題や戦略の問題に行き当た
るはずなのに、そうしたことは初めから変えられないものとして何も手をつけずにいることはないでし
ょうか。革新が停滞状態に陥っている組織には、共通して見られる「問題の放置」という状態があります。
現場のいたるところで業務に支障が出る状態に陥っていながら、その構造的な欠陥、つまり真因を追究
せずに見逃してしまっているのです。こうした状態に陥る原因と解決策はみんなうすうす気づいている
のに、それが実行できずにいつも短期的な対応が優先されてしまい、社員の士気が低下します。現状に
妥協する風潮や「しかたない」「やってもどうにもならない」という意識が蔓延しているのですが、そのこ
とに気づかず日常の多忙に追われてしまいます。
こうした風土の組織が問題に取り組もうとしても、「以前からそういうことになっている」「そういう
ものだから仕方がない」「説明する必要はない」「そんなことは考えなくて良い」という、あまり根拠のな
い主張に阻まれてしまいます。深い議論が必要であるにも関わらず、対話を深めるための論理を暖昧に
し、話し合っても論点がかみ合わなかったり、詭弁の応酬で一向に解決の糸口が見えてこないのではな
いでしょうか。
こうした根源的な問題に手をつけられない状態をつくり出しているのが、組織の思考様式(メンタルモ
デル)や組織の支配理論(ドミナント・ロジック)と呼ばれるものです。組織が顧客価値を高めようとした
時に、必ずこの思考様式や支配理論と立ち向かい、それを打破していかなければなりません。経営品質
向上プログラムが目指している「卓越した経営」とは、一時的な業績の向上という成果を得ることではあ
りません。過去の成功体験や保守的な思考によって知らず知らずのうちに陥っている組織の思考様式や
支配理論に気づき、それを新たな「ものの見方、考え方、行動」に変えていくことで、継続的な革新が
内発的に起こる状態を創り出そうということです。そうすることでより高い顧客価値を創造し続けるこ
とが可能になります。このような一連のプロセスが経営革新です。
4.経営品質向上プログラムとは
経営品質向上プログラムとは、顧客、競争(独自性)、社員、社会のすべてにおいて高い価値をつくり
出すために革新し続ける経営づくりのプログラムをいいます。
1990 年代に日本に紹介された「顧客満足」の考え方を研究、実践する過程で、私たちは米国の競争力
復活の原動力の一つとなった「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB 賞)」に出会いました。そしてこ
の考えの中心にあったセルフアセスメント(自己評価)の考え方を範として取り入れ、1995 年に有志企業
と(財)社会経済生産性本部(現 日本生産性本部)が中心になって日本経営品質賞を創設しました。賞制度
とともに、自らの経営を自己評価するアセスメントの枠組みとアセスメントを行う人材であるセルフア
セッサー育成のプログラムを導入し、日本の経営革新の実践を推進してきました。この実践と学習によ
りつくり上げたものが経営品質向上プログラムです。
特に日本独自で開発された人材育成のプログラムは、経営革新のモデルとしてふさわしい日本経営品
質賞受賞企業をはじめ、セルフアセスメントを通じて経営革新を実践してきた多くの組織の努力によっ
て、世界からも注目されています。
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5.経営品質向上プログラムが目指すもの
経営品質向上プログラムは、「卓越した経営」を目指しています。
「卓越した経営」とは、組織の理想とする姿を目指した経営革新の実践と学習を重ねることで、世界に
通用する独自の経営手法を創造し続け、それによって世界でトップレベルの成果を生み続ける経営をい
います。しかしこれは世界市場を対象としなければならないという意味ではありません。
独自の事業領域(顧客、提供価値、独自能力)を定め、その中で顧客、競争、社員、社会に対する最高
の価値を生み続けることを意味しています。世界に通用する「卓越した経営」とは、優れた考え方、優れ
た行動、そこから導かれる優れた成果、それら全体をあらわす考え方なのです。
6.経営品質向上プログラムの導入
1〕アセスメントの実施による変革への気づき
「卓越した経営」を目指して経営革新を進めるにあたっては、経営の目的を実現するために行っている
さまざまな経営活動のどこに課題があるのかを、自ら気づくことが必要です。経営品質向上プログラム
では、アセスメント基準に示された経営革新の視点にもとづき、自己革新能力を評価することに焦点が
あてられています。経営目的と目標を構築し、そこから現状を振り返り、目的を実現するための組織的
な課題に気づくことを重視しています。
自己革新能力とは、自分自身で考え、独自のものを創造する組織能力です。世間一般や業界で流行と
なっていることを「仕組み」として導入すれば良いというものではありません。目的から考えて、自分の
ものとして創造することが高い価値を生みます。しかし、はじめから自分で創造することは困難です。
そのため、
学んだものを自分なりに使う。
⇒使った結果から学び、自分なりに工夫を凝らす。
⇒さらに結果から気づき、そして独自のものをつくり出す。
ようになるのです。こうした価値を生み出すプロセスのあり方を評価することが重要です。
アセスメント基準は、あらゆる組織に共通する 16 の経営要素とそれに結びついた 4 つの結果から自
己革新能力の状態を明らかにすることができます。経営目的と目的実現の「方法」を結びつけるためには
経営環境を正しく認識することから始めなくてはなりません。アセスメント基準では「組織プロフィー
ル」によって組織目的と組織が置かれている経営環境を明らかにします。
2〕経営品質向上プログラム導入で期待すること
①目的から現状を認識する
経営は何を行うのかを考える前に、何を目的とするのかを追求しなければなりません。「何のために」
という基本的な問いかけは、経営を方向づける重要な問いかけです。目的が明らかになれば、組織は何
を目指すのかという理想的な状態を考えることができるようになり、そこから最適な方法を導き出すこ
とができます。目的と達成すべき理想的状態から現状を振り返ると、目的実現にむけて今まで見えなか
った経営課題が浮き彫りにされます。経営品質向上プログラムでは、アセスメント基準の「組織プロフ
ィール」をまとめるプロセスを通じて目的から現状を認識するようにしています。
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②経営目的に対する有効性と改善領域を明確にする
アセスメント基準は、あらゆる組織に共通する経営要素と、その要素間の相互関連性を示しています。
戦略策定、製品・サービスの企画・生産・提供、人材育成をはじめ、顧客との接点に至るすべての活動
が、経営目的実現のために一貫性が確保され効果的に実施できているかを検証できるようになっていま
す。
③セルフアセスメントにより自己革新能力を高める
アセスメント基準にもとづくセルフアセスメントの実施とそれによる学習の積み重ねにより、組織全
体がいち早く事業環境の変化を先取りし、それに対応するための革新を起こしていく能力を高めること
ができます。
④改善・革新活動に用いている多様な方法の実効性を検証する
経営革新を進めるには、具体的な方法論や手法が必要になります。現在実施しているさまざまな改
善・革新の手法について、経営品質向上プログラムの基本理念やフレームワークを重ねあわせることに
よって、それらの手法の目的実現に対する一貫性や整合性が確認でき、不必要な活動を明らかにし、導
入する方法論の実効性を検証することができます。
7.経営品質向上プログラムによる経営革新
経営品質向上プログラムは、組織が陥りがちな思考様式や支配理論に気づき、それを自ら打破して新
たな価値を生み出すために、何を提供しているのかを示します。
1)革新に必要な思考の枠組みを提供する
第一に顧客価値を創造する経営革新に必要な思考の枠組みの提供です。
まず顧客価値を創造するための構造を整理して考えます。組織の上位概念としての「ビジョン」「規範」
「戦略」、その上位概念を行動に結びつける「管理」「業務」として位置づけています。「業務」は独立した存
在ではなく、組織の上位概念を実現するための連携が大切です。次に、組織の縦(上位方針から業務へ)
と横(業務閻の連携)の関係を明確にとらえます。そのために、顧客価値を創造する 8 つの多面的な視点(カ
テゴリー)からこれまでの活動を振り返り、何を革新すべきかを明らかにする基準を提供しています。そ
して、この基準を使って組織が目指している「理想的な姿」の実現に向けた経営活動の目的適合性と一貫
性、体系化の程度、組織内外との連携の状態(展開度)を明らかにする構造です。
さらにこの基準は経営者の共通の願いである、生き生きとした人材が独自の顧客価値を創造し続ける
ための組織風土や文化の形成を目的としています。そのために組織の思考様式や対話プロセス、知識創
造と組織学習のあり方を見直し、根本的な課題を発見することを重視した構造となっています。
2)「組織の成熟度」を高める方向性を提供する
第二に、この枠組みを用いたセルフアセスメント(自己評価)によって自己革新能力上の課題を明らか
にし、
「組織の成熟度」を高める方向性を提供します。セルフアセスメントを行うことで、組織の自己革
新を行う能力が今どのようなレベルなのか、またそれを高めるための課題は何かを明らかにすることが
できます。この課題を解決することで、自己革新能力は段階的に高まるという考え方です。この自己革
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新能力の段階的状態を「組織の成熟度」と呼んでいます。
組織の成熟度が低い状態の組織は、経営のビジョンや目的が社員に徹底していないのはなぜか、さま
ざまな経営活動が価値実現に結びついていないのはなぜかを深く考えることなどが戦略課題になりま
す。
組織の成熟度が一段高まれば、目的実現のために真に重要な活動を選択し、具体的な活動目標を組織
全体で共有していくこと、問題の根本原因を究明し、再発防止のプロセスを確立することなどが戦略課
題になります。
さらに組織の成熟度が高まると、独自の価値実現によって高い競争力を獲得し、新たな価値創造や未
知の問題に対して組織の総合力で対応していくプロセスの実現などが戦略課題になります。
8.経営革新と経営幹部の役割
経営幹部をはじめ組織の人々すべては顧客や社会から尊敬される「理想的な姿」を描き、それに向かっ
ていくことが求められています。経営環境が日々変化する中で経営幹部は、「理想的な姿」を実現する道
筋を戦略として明らかにします。そして、その道筋に沿ったプロセスを創造し、日常現場で執行される
状態をつくる責任を負っています。そのための経営幹部の役割を考えてみます。
1)組織目的や原理・原則を明らかにして社員全員で共有すること
組織を「理想的な姿」に近づけるには、社員全員が「理想的な姿」やその背景にある理念や価値観を理解
し、それを現場の業務で実行することが必要です。組織への貢献意欲を高めて組織目的に積極的に関与
できるように「理想的な姿」を提示し、方向性を一致させることが経営幹部の役割です。美辞麗句を並べ
るよりも、組織が成り立ってきた歴史・文化を踏まえて現状をどうとらえ、どのような組織にしたいか
を社員一人ひとりにわかる言葉で語りかけることが重要です。
未曾有の経済不況のもとでは、悪い面だけが浮き彫りになりがちです。だからこそ事象を的確にとら
えた対応が求められており、組織の原理・原則が重要になります。「理想的な姿」を描き、組織行動の原
理・原則を明示することで、現場ではさまざまな形で起こる未経験の事象にどう対応すれば良いかを考
えることができます。そして現場での考え方や行動の結果を組織で共有することで、組織全体で学習す
ることができます。
組織の原理・原則をあるべき理想的状態として示し、それにもとづき実際に行動し、その経験を共有
する場をつくることが経営幹部の大きな役割になります。「理想的な姿」「原理・原則」なしでは、未経験
の事象に迅速で納得いく判断を行うことは不可能です。
2〕深い洞察カと論理思考
経営幹部自身は、組織の目的や存在価値を深く考えることが求められています。当たり前と思うかも
しれませんが、今こそ「社会の中でどういう存在でありたいのか」「何を目的とするのか」を掘り下げ
て考える時です。
目的を考えることは組織の全ての拠りどころをつくることです。そのため経営幹部には、顧客・市場、
業界・競合、社会のあらゆる変化に対する高い関心と深い洞察力が強く求められているのです。また、
組織の経営は単純ではありませんし多くの矛盾を含んでいます。短期的成功を求めれば長期的な生存能
力を失い、長期的成功を確保するには今の利益が不可欠です。こうした矛盾を抱えている現実をきちん
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と整理せずに、単純化したり目を背けていては経営判断を誤りかねません。その意味で経営幹部には深
い洞察力とともに、現状を整理してとらえる高い論理思考が求められます。
3〕組織学習ができる場づくり
組織が顧客や市場に独自の価値を創造していくことは、経営幹部だけでは成し得ません。「理想的な
姿」の実現に向けて、組織の価値観を理解し、深くコミットした社員が日常の仕事を通じて経験し理解
した情報とその意味を相互交換することで、価値を創造するための組織学習が進みます。こうした学習
によって組織全体のものの見方、考え方は時間とともに範囲が広がり、深みを増してきます。
しかし、「知識を身につけろ」と命じて勉強させただけで、実践の拠りどころとしての知恵が根づくで
しょうか。また、制度、仕組みだけで完成できるでしょうか。むしろ社員一人ひとりが自発的に興味や
関心を持ち、自ら実践の知恵として知識が身につく環境をつくることが大事ではないでしょうか。それ
以上に、新たな知識を身につけて実践することが確かなものであるという経験を自らの振る舞いで示す
ことができるすぐれた模範者であることが、経営幹部に求められます。
4〕経営革新の意図を教える良き指導者
経営革新は、具体的な計画を立てても現場で実行されなければ、机上の空論に終わります。また、推
進部門などに任せても、経営幹部自らが何もしなければ「経営幹部は口だけで自ら関与しない」と社員に
映ってしまうでしょう。手続きや手法は推進部門でも教えることはできます。しかし、なぜ経営革新が
必要なのか、その意図を伝え導くことができるのは、経営幹部以外にはいないのです。その意味で経営
幹部は、「良き指導者」であることが求められます。
9.内部統制と経営品質向上プログラム
2008 年 4 月の「金融商品取引法」改正に伴い、上場企業に対して「内部統制報告書」の提出が義務付け
られました。従来の内部監査が財務報告の適切性を求めるのに対して、今回の改正は経営全体を広い視
点でとらえて正しい財務結果が生み出され、それを正しく報告できるように検討されています。新たな
内部統制では、コンプライアンス、経営方針、業務プロセスとルールの遵守、経営および業務の有効性
と効率性の向上、リスクマネジメントといった経営の幅広い範囲を対象としています。これらを実現す
るために、
①内部統制が行える組織風土づくり
②経営にとって重要なリスクの明確化
③リスクに対するマネジメントの実施
④マネジメントの目的と目標の社員への伝達と実行
⑤実行結果の監視とフィードバック
を求めています。
この考え方からもわかるように経営品質向上プログラムとの親和性があります。内部統制を社内で実
施する際に、経営品質向上プログラムの枠組みを用いたアセスメントはまったくの別物ととらえるので
なく、経営の革新とその実行のマネジメントという形で相互補完的に活用できると考えられます。
(2014 年度「日本経営品質賞 アセスメント基準書」より一部抜粋)
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