アメリカにみる民活(PFI) - 株式会社経営システムアカデミー

第2部 ヨーロッパ、
ヨーロッパ、アメリカにみる
アメリカにみる民活
にみる民活(PFI)
民活(PFI)
建設コンサルタントの大手企業であるパシフィックコンサルタンツ株式会社は、1997年、19
98年の2年間に3度に渡りイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ合衆
国の五カ国を対象に調査団を派遣しその報告書まとめた。
Ⅰ ドイツの
ドイツの動向
旧東ドイツを吸収した関係で、特に道路整備、水道事業のインフラの充実が急務となっている。し
かし、国家および地方財政は、これに反して逼迫しているのが現状といわれている。ドイツの行政の
仕組は、連邦政府が基本法を定め、これに基づいて州法が定まる。地方公共団体は、この州法の定め
によって公共事業を推進する。財政の問題は、当然に地方自治体自身の問題となる。そんな中での民
間活力の導入は、自然の摂理として芽生え、90年台初頭より火急な社会資本整備の充実を目指すた
めに、PPP(パブリック プライベート パートナーシップ)の導入が熱心に議論され道路、水道事
業に具体的なプロジェクトが動き出している。
1 道路整備にみる
道路整備にみる民活
にみる民活の
民活の推移
(1)コンセッションモデルの導入
世界的に有名な高速道路アウトバーンは、1935年に開通され現在総延長11,000km
まで整備されている。東西ドイツ統合、欧州統合、東欧諸国への開放などで、2010年には、
交通量が現行のほぼ2倍になるとの予想もあり、ますます整備充実の要求は高くなっており、連
邦政府、地方自治体に課された財政確保の問題は大きくなっている。しかし、現実には道路予算
の配分が年を追って増加する傾向でない。
こういった状況の中で、1991年に「コンセッションモデル」が導入された。これは、建設
会社等民間事業者が、政府、自治体の依頼を受けて立替え工事を実施するもので、その工事代金
は、金融機関が行政機関の保証を得て融資を行う。返済は、工事等完了後に政府、自治体が分割
払いで工事代金を支払い、民間事業者は、その代金の中から借入金の返済を行うものである。当
初、総工費40億マルクで12の道路プロジェクトが発表されたが、この方式が、単に財政負担
の先送りをしただけとの批判もあり、現在は、一部の道路と橋梁プロジェクトが進行中である。
また、この間にアウトバーンの有料化問題も種々検討されて、1995年より大型貨物自動車
を対象に導入され、長年、無料のイメージの一角が崩れ受益者負担の概念が国民に浸透をはじめ
ている。料金徴収は、料金所を設けている日本と違い、車種や利用期間に応じてあらかじめ利用
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料を納め、その支払証明書を車両のウィンドウに掲示する方式が採用されている。
(2)道路民活法の導入
1994年に、長距離道路建設民間資金調達法「以下、道路民活法」が、制定された。これは、
通行料金を徴収しその財源を直接民間に移行することを可能にすることを前提に、民間事業者が
連邦政府より長距離道路の設計、建設、出資、経営(料金徴収を含む)を入札等により受任でき
る法律で、マネジメントモデルと呼ばれている。
仕組は、「官主導型モデル」
「民主導型モデル」の二種類がある。
「官主導型モデル」は、行政等が道路の計画の詳細をあらかじめ定めており、計画決定の法的手
続きが完了した後に、建設および運営について公募されるものである。建設の技術仕様や道路の
通行料金算定に必要な関連資料も入札に対して事前に開示されおり、民間のアイデア等の入る余
地はほとんどない。このモデルは、すでに連邦政府や地方自治体で計画済のプロジェクトについ
て、着工の迅速性が求められている事業が主に対象となっている。
民主導型モデルは、民間からのアイデアを重要視するもので、プロジェクトの計画そのものか
ら民間事業者に委託される。この方式に適している
この場合、応札者は、官主導型モデルと違って、事業リスクを引き受けなければならない。
① 入札等について
前掲の両モデルともに、入札の条件等は、EC官報への告示およびショートリスト段階での告
示と2段階に分けて行われる。しかし、入札はどこの国でも同じように事務手続きが煩雑でまた、
入札に提供する資料は、膨大な量になりこの作成費用も相当な金額になる。
そこで、落札できなかった応募者には、入札に要した事務費用について費用の適切な弁償が考
えられている。
② リスクについて
「官主導型モデル」「民主導型モデル」について、リスクの問題を整理しておきたい。
各プロジェクトの契約書の中に、リスク分担について細かく明記されているのが普通である。
特に、官主導型モデルの場合、リスク救済方法として、公共機関による財政補助金の支給条項、
通行料金の値上げに関する同意、許認可の有功期限延長に関する同意、契約の解消と公共機関に
よるプロジェクトの引受承諾、また、加えて政治リスクに関する救済方法を明記している場合も
ある。
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具体的な民活事業としては、1994年に連邦政府は、31の対象プロジェクトを発表した。その事
業の内容は、有料トンネルや有料橋梁とこれらに繋がる道路がメインとなっている。これは、EC法
上、アウトバーンや連邦道路そのものは、連邦政府が所管することが義務づけられており、これに付
帯する取り付け周辺道路、トンネル、橋等に限定されているからで、入札希望が殺到しているかとい
えばノーと言わざるをえない。トンネルや橋は、建設費も巨額にのぼるため道路民活法は、その早期
着工実現に有望策として期待されたが、肝心の連邦政府の予算配分方法やプロジェクトの収益採算性
に問題があり、1997年現在17のプロジェクトに減少している。
将来、日本のように観光有料道路的アイデアの民間主導型のモデルが企画されたら、さらに民間活
力の導入は推進されるだろうという識者もいる。
2 下水道整備・
下水道整備・廃棄物処理に
廃棄物処理に見る民間活力の
民間活力の導入
(1)水資源管理法の改正が後押し
1996年、EUの合意に基づき水資源管理法が改正された。遡ること10年前から民間委託
が進んでいたが、英米やフランスに比べて遅れていた。これが、改正により下水道を含め汚水処
理場、廃棄物処理場、広域リサイクル施設の民営化に拍車がかかると期待されている。
ドイツ連邦内には、約10,500ケ所の下水処理場があり、地方自治体の処理場の建設・維
持運営は、直営または官民の共同事業体(第3セクター)によって運営されてきた。
運営方法は、民間企業と同じように行われてきたが、料金設定、運営費等に民間企業の概念が
無く、企業会計の採用もなかったため、第3セクターと言えどもまったく公共セクターと同じ予
算配分主義であった。
そこで、改正法の実施にあたっては、「経営モデル」と「3セクモデル」の二案が構築され、プ
ロジェクトの内容によって分けられている。
(2)経営モデルの内容
廃棄物最終処分場やリサイクル施設などで、従来公共機関が行っていた業務について、民間に
委託するものである。契約の内容は、その施設等の償却が完了するまでの期間の明記、料金設定
方式(ほとんどの場合は、公共機関から徴収する)経営破綻の場合の解消法が中心となっている。
仕組みは図のとおり、公共機関は、事業会社に対して①長期の使用契約、②サービスの条件契約、
③破綻時の解決方法など企業としての独立性を維持する。
また、事業会社は、その施設の所有、運営、投資が保証されるが、地方の法律判例に従うこと
と、行政の監督下にあることを承知している。
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(図 1)経営モデルの仕組
長期間契約・サービス保証
破綻救済・根拠法・監督
独立民間事業会社
地方自治体
料金支払・寄与
所有・運営・投資
(3)3セクモデルの内容
一般的に公共機関が51%以上出資し、残りを民間企業が出資する官民共同事業体(第3セク
ター)を設立し、この会社が業務を行う。また、主にこの民間側からの出資者は、建設会社、プ
ラントメーカー、建設コンサルタントなど下水道事業に関係があり、技術等を有する会社が参加
している。
仕組は、図2のとおりで地方自治体が51%以上の出資、下水道関連民間会社が49%以下の
出資で設立、民間銀行から融資またはリースで設備投資を行う。
運営面では、公共機関が主導権を握っている。このモデルは、対外的には常に公共機関がリー
ドしているので、意志の決定が早く運営に柔軟な対応が可能としている。
図2 第3セクターの仕組
地 方 自 治 体
銀
行
民 間 事 業 者
第3セクター(所有・投資・運営)
51%出資
49%出資
(行政機関の主導で、事業が運営される)
しかし、現実には、民間の参入促進や委託が進んでいないとの批判もある。その要因とし
て次のものがあげられている。
① 長年の官主導は行政の中で一つの利権となり、民間に委託するとサービスの低下になる
という論議で中々進行しない。
② 公共事業は、非課税。民間委託、第3セクターは、課税という不平等が発生する。
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③ 民間委託により政府の補助金が、カットされるため投資コストが大きくなり不利となる。
④ 民間委託の事業は、行政機関の許認可が必要となるが、この審査が悪質と思えるほど執拗にされ、
民間にとって膨大な準備の時間と事前調査の費用がかかる。
⑤ 施設に補助金等がつかないため、減価償却コストは市民が負担する利用料に跳ね返り、価格上昇
の原因となる。
⑥ 入札方法に、不明確な部分が多い。
⑦ 民間に対して、必要以上に高いレベルの技術水準が要求され、コストが吸収できない。
以上のように、ドイツにおける民間活力導入は、まだ、その端に着いたばかりといえる。しかし、イ
ギリス・フランスを先頭にEU諸国がPFIの導入に積極的であるので今後10年で、大きくすべて
が前進するといわれている。
Ⅱ フランスに
フランスに見る民営化の
民営化の流れ
1 約36,
36,500もある
500もある自治体組織
もある自治体組織
かってフランスは、中央集権的で有名であったが、1982年地方分権化法の施行を受けて、上か
ら政府・支局・22州・95県・36,500の地方公共団体となっている。
日本にくらべて約10倍の数である。いかに小さい組織に分割されているかが想像できる。
公共事業・公共サービスにつては、地方自治体の複数が組合組織を作って共同して行われるのが普
通となっており、それは、日本のゴミ処理にみる広域清掃処理組合と同じ理屈であろう。また、各行
政機関の役割も明確で、中央政府は防衛、国土整備など国土全体に関するものに取組み、管理と規制
と立法が中心となっている。
教育についても明解で、小学校は地方自治体、中学校は県、高校は州、大学は国が管理することと
なっている。
(1)公共事業の大半が共同運営方式
地方自治体の単位が小さすぎるため、ほとんどの公共サービスが組合組織で運営されている。
廃棄物処理、公共交通機関、スークルバス、スポーツ施設、公園文化施設など運営の対象は、社
会活動全般に及んでいる。そういう意味では、民営化が進む余地が大きいといえるであろう。
(2)委託方式と委譲方式
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地方自治体は、ヨーロッパで最も早い時期から民間活力の取組みをしたきたといえる。電気と
下水道の分野では、1850年台からすでに民営化が始められた。
民営化については、委託方式(アフェルマージュ)と委譲方式(コンセッション)がある。
(3)委託方式(アフェルマージュ)
公共施設の建設および所有は、公共機関が行い、その運営を民間に委託するものである。例
えば、廃棄物処理の場合、ゴミの収集運搬は第3セクターに委託、焼却施設の内部メンテナン
スや受入処理等の実務部門は、社会復帰アソシエーションに委託、ゴミの肥料化施設(コンポ
スト)への収集・処理は、農家等に委託、産業廃棄物は、民間事業者に委託している。委託料
は、公共機関の財源より支出される。
(4)委譲方式(コンセッション)
PFIのスキームで、公共施設の建設およびサービス提供について、民間事業者が独自に資
金調達を行って企画・建設・設備投資・運営を行う。公共機関は、その事業に必要な許認可を
与えると同時に管理監督を行う。
収入財源は、市民等受益者から直接に料金等で徴収するものである。代表的なものが、有料
高速道路がある。
2 高速道路に
高速道路に見る委譲方式(
委譲方式(コンセッション)
コンセッション)
1955年の高速道路法は、当時、ドイツが既に5,500kmのアウトバーンが整備されており、
フランスは100kmに満たなかったので、民間活力を投入するために制定された。以降、地方公共
団体と民間の出資で5社の高速道路公社が設立され、1970年代には4社の民間企業、1社の特殊
会社(モンブラントンネル会社)が参加して、道路整備は大躍進を遂げ、現在では約6,500km
の有料道路網となっている。
(1)高速道路公社(SEMCA)に委譲
高速道路公社は、原文で Societe d’economie mixte concenssinaries d’autoroutes (SEMCA ま
たは SEM)といい、半官半民の組織である。1980年代の石油危機の時、4社の民間会社の内、
3社の資本が政府によって買収されSEMCAに変更されている。
したがって、現在は、SEMCAが7社、民間会社1社、特殊会社1社の計8社が事業を行っ
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ている。政府は、これらの会社と委譲(コンセッション)に関する協定が締結されている。
資金調達に関しては、当初は政府が債務保証をして公社が資金調達を行っていた。1963年
にフランス高速道路機構融(ADF)が設置され、政府が国際的に資金調達を行うようになった。
そして、その後次々と高速道が完成し、一部には償還が済んで利益の路線が出てきたのと、政府
保証の不要の資金も登場してきたので、1974年より政府保証なしで公社自ら資金調達してい
る。
(2)委譲契約と補助金の関係
フランスにおける民間活力導入による道路整備は、時代の変化とともに半官半民の公社方式が
主導となってきた。これは、道路建設計画は、相当な先行予測に基づくため開業時は赤字経営に
ならざるを得ず、100%民間では採算が取れなくなって政府が出資を引き受けざるを得なかっ
たものである。また、民間事業に対して一定の期間に限るとしても補助金を支給すことは議会等
の承認が困難であったことに起因している。
したがって、道路整備関する民間活力の導入は、国および公共機関の道路整備計画を資金面、
技術面、早期竣功面で50%に満たない出資と資金提供となっている。
3 水道事業に
水道事業に見る地方分権と
地方分権と民営化
地方分権された代表的なものが、水関係である。フランスでは、飲料水の大部分を河川または地下
水からとる関係で組合は流域毎に組織化され、現在約2,000組合になっている。組合は、地方自
治体から委託を受けて上下水道の管理運営を行っている。委託費用は、自治体の一般会計からの予算
および住民等利用者からの料金収入から成り立っている。
近年、この委託事業の内、下水処理と廃棄物処理に民間事業者に対する委譲(コンセッション)の
導入が増えている。
これは、①下水処理や廃棄物処理は、年々高度な技術レベルが要求される。②財政の関係で十分な予
算措置ができない。③各技術について専門スタッフの育成が必要など、従前のように公共機関が建設
し運営を組合委託するだけでは、人材面、コスト面、予算面での対応に困難さが生じ、この解決策と
して導入の気運が高まっているといわれている。
その方式は、我々が一般的にBOTと呼んでいる方式で、企画・建設・資金調達を民間事業者が行
い、かつ資金回収のため一定期間民間事業者が運営して、その後公共機関に譲渡するものである。
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4 大手民間事業者が
大手民間事業者がPFI先行
PFI先行
Suez Lyonnaise Des Eaux (スエズリオネスデゾー社)と General Des Eaux(ゼネラルデゾー
社)、それに大手建設会社のブイグの3社が、上下水道・廃棄物処理関係の民営化をほぼ独占してい
るのが現状である。
スエズリオネスデゾー社とゼネラルデゾー社は、1860年代に設立された会社で、水処理で豊富
な経験と実績を誇り、特に スエズリオネスデゾー社は、東欧・アジア・オセアニア・ラテンアメリ
カ諸国においても、強い競争力を発揮している。また、廃棄物処理でも世界第2位で、発電、電気供
給のIPP事業においても多くの実績を持っている。現在年商400億ドル、社員数20万人という
フランス第1位の会社である。
水処理をはじめ公共サービスは、長期に渡るサービスの安定提供と事業継続の維持が要求される。
また高い品質保証が、その裏付けに無くてはならない。そういう意味で、委譲先として参加できる企
業の数は、自然と限定されてきている。
逆を言えば、公共機関的民間事業者の出現である。今後さらにフランスが、民営化を推進するにつ
いては、この辺の状況を再検討する必要があるともいわれている。公的資金の有功利用をはかってニ
ュービジネスの育成・地元企業・中小企業の育成すれば、それが国力に繋がるとの意見もある。
Ⅲ オーストラリアに
オーストラリアに見るBOTの
BOTの動向
1 民営化に
民営化に積極的な
積極的な政府
オーストラリアでは、空港、通信、道路、汚水処理、水道、発電、トンネルなどにBOTの実例を
見ることができる。特に空港は、シドニー国際空港以外は全て民営化されている。道路の例としては、
M2という民営有料道路がある。シドニーからブラックタウンまで従来では1時間かかるところを2
0分でむすび成功している。水関係では、国内の大手デベロッパーの Lend lease 社とフランスの水
処理技術大手会社が合弁で会社を設立し、この会社が事業主体となってシドニー市内の25%を供給
する上水処理場を運営している。
この他、サウスオーストラリア州では、フランスの企業にダムから浄水場、給配水施設までを民営
化のため譲渡している。最近リニュアールしたブリスベン国際空港では、航空管制業務だけ行政機関
が所管し、交通機関、店舗、貨物扱いその他一切を民営化した。また、空港ビルおよび施設は、18
億オーストラリアドル(約170億円)で、設計コンペ方式で発注した。
2 ハーバートンネルの
ハーバートンネルの例
シドニー湾のハーバートンネルは、日本の熊谷組と大手デベロッパーの Transfield 社が組んで、
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政府にプロジェクト提案して認められたBOTの第1号といわれている。
(図3)シドニーとキャン
ベラ間を走る新幹線案は、Equity という投資会社が提案したものである。このように、BOTプロ
ジェクト多くは政府の提示に対して、民間企業が入札を行うものが通常であるが、企画提案型のBO
TすなわちPFIも登場してきている。
シドニハーバートンネルの BOT スキーム図解
ゼネコンPグループ(B)
ウェストパック銀行(C)
22 億ドル融資
土地リース
建設受注・一部融資
10 年返済
パフォーマンスボンドの差入
州政府
収入保証
シドニーハーバートンネル会社(PJCo)
(A)
(D)
30 年後無償返還
通行料支払
4.9 億ドル 30 年債
機関投資家
毎年クーポン支払い
利用者(F)
債券保有家(E)
(A) 民間事業者であるゼネコン等で、PJCo(プロジェクト会社)が、設立されます。
(B) ゼネンコン等民間事業者あは、PJ にスポンサー融資とパーホーマンスボンド(工
事性能保証)を行う。
(C) 銀行は、PJCo に、22 億ドルの融資を期間 10 年で実行。
(D) 州政府は、用地を30年間の期限で無償提供する。一定の条件で収入保証も行う
(E) 機関投資家向けに4.9億ドルの 30 年債を発行する。
(F) 利用者は、通行料金を支払う。
Ⅳ ニュージーランドの
ニュージーランドの民営化の
民営化の動向
1 強引な
強引な民営化が
民営化が牽引役
ニュージーランドは、前掲のオーストラリアと同様に、10年以上前から膨大な財政赤字を抱え
ており、その解決策として積極的な民営化を半ば強引といえるほど多く展開している。
1997年4月、マレーシアのコングロマリットであるレノンググループが、公共事業省の1,00
0人のエンジニアとスタッフを買収したニュースは、関係者に大きく響き渡った。政府は、行政機関
そのものの民営化も積極的に進めており、特に公共工事に関係する部門は、プロジェクトの一つ一つ
について事業部門として独立させ、民営しても採算性が合えばどんどん株式会社として自立するか、
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民間企業に人材を含めて買収させている。最後に残るのは、国防だけかといわれるぐらい政府、地方
自治体共この10年で人員は半減している。小さな政府、小さな自治体構想は、着実に進行している、
日本の政府、官僚、議員の多くが訪問しており、日本の民活にも大きな影響を与えるものと期待した
い。
2,3事例を見ると、通信分野では、アメリカのベルアトランテック社が、電々公社を買収。アメ
リカのウイスコンシン社が、民営化された鉄道ネットワークを買収など外国資本の参入に否定感はな
い。水道、下水処理では、まず公共機関が100%所有で企業化を進め、その後で民営化を検討する
動きが多い。パパクラ地域では、タムス社とビオネール社の2社が合弁で、水道事業を民間で運営し
ている。また、アメリカのエンジニアリングウォーター社とビオネール社は、3億ニュージランドドル(約
250億円)の投資で25年間の下水道事業をBOT方式で運営している。
2 加速し
加速し過ぎた民営化
ぎた民営化に
民営化に、見直し
見直し
1984年に労働党政権が誕生し、ニュージランドの公共機関の民営化は、始まった。しかし、一
部で、あまりにも加速する民営化に対して、警鐘を鳴らす声も大きいかった。特に大蔵省は、発足当
時を含め何度か政府に対し民営化について次の事を求めた。
①民営化の企業は、少なくとも他の公共事業で得られる利益と同等以上の利益率を上げること。
②業績判定の一つに、財政目標の達成を加えること。
③経営管理者に対し、運営上の決定と結果に責任を負わせる大きな裁量権を与えること。
④民間企業と不必要な競争をせず、管理者の評価は、有利、不利に関わらず公正に行う。
⑤商業ベースで公共事業を行う関係上、非営利的役割に対する責任を分離する。
⑥民営化された国営企業に、民間企業から任命された人々によって経営委員会を構成し、その商業上
の目的に沿った組織体を構成するように働きかける。
⑦国営企業の最終結果責任は、大臣もしくは議会にある。これに鑑みて、管理者に対して大臣と合意
した業績目標の範囲内で資源の投入使用に関する決定権と生産物の価格決定および販売に関する
責任を負わせること。
急速な民営化、しかも、従事する公務員の民営に関する意識改革なしで、単に国営企業を商業化し
ただけでのスタートは、反って公共サービスの低下に繋がったり、商業ベースを重んじるために提供
する生産物の品質の低下を招く結果となって、一部で民営化の批判が大きくなっている自治体が出て
きた。
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3 コーポレートガバナンスの
コーポレートガバナンスの導入
政府は1986年に国営企業法を改正し、次のような改善処置をとった。
国営企業法は、国営を民営にさらに前進させるために、民間企業をモデルにいわゆるコーポレートガ
バナンスの導入を強く意識しているもので、主な内容は次のとおりであった。
(1) 資本と経営の分離をより強固にする。
政府・行政を株主と擬装し、資本と経営の分離をはかる。具体的には、大蔵大臣と国営企業担
当大臣の二名を株主として、役員会は、毎年株主に対して先行 3 年間の経営計画[Statement of
Corporate Intent(SCI)]を提出し、その承認の上、経営執行を行うようになっている。
(2) 民間企業に準じた業績評価
SIC の内容は、1)事業の目的
2)事業の性質および範囲
3)総資産に占める連結株主資本の比率(少数株主持株比率)
4)会計方針
5)評価される業績目標、目的の達成度計る評価尺度の定義
6)配当性向、納税等国家に帰納すべき所得の決定基準の定義
7)株主である大臣に報告する半期報告その他開示する報告内容の定義
8)グループの構成員が、他の企業または他の組織の株式について、購
入等株式取得についての定義
9)役員報酬に関する定義
10)その他、株式を保有大臣および役員会が同意すべき事項
このような経緯を経て、政府は、1991年から 2 年にかけて、行政機関を企業化した。その方
法は、行政機関を民間企業に売却する形で民営化を進める。まず、ある特定の特定の業務分野をひと
つのビジネスユニット(事業部門)という形に分化して運営を行い、それを民間企業が買い上げる図
式になっている。
その結果、ニュージランドでは、国営企業では、運営が上手くいかないこと、利益が上がらない即ち
政府にビジネスはできないことが逆に立証されたこととなり、元公務員が民営企業に移った途端に、
サービスは向上し、従業員数もそれまでの半分で同じ業務がこなされるケースも出てきて、当然利益
も生まれた。こうして、あたらしい労働党政権は、民営化に積極的に挑戦し、制度の見直し調整を諮
って今日に至っている。また、この間に特筆すべきことがある。それは、民営化に際して常に大きく
問題となったことである。
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(3)コンサルタントの活躍
民営化に際しては、譲渡するビジネスユニットの形成、売却価格の評価、譲渡先の選定という
難題が立ちはだかっている。これに、発展途上国によく見られる官僚・政治家の不法な介入をさ
せてはならない。技術的な問題、資産評価等会計上の問題、利権の調整の問題、法律の問題等を
客観的に専門的に公正に評価しなければならない。
政府は、この問題解決に民間の多くの専門コンサルタントを採用した。コンサルタント集団の
背景は、世界的にネットワークするビックコンサルタントファームをはじめ、国内、地元の建設
コンサル、経営コンサルを活用している。
Ⅴ カナダの
カナダの民間活力推進の
民間活力推進の例
1 オーソリティへの
オーソリティへの移管
への移管
1989年大幅な財政赤字に陥った政府は、行政改革の実施を宣言した。公務員の大幅な削減政策
を筆頭に、プロジェクトの見直しと同時にその再生策として民間活力の導入、デザインビルド方式や
BOT 方式の導入が図られ、2,000年前には財政赤字ゼロが実現しょうとしている。
カナダ方式といえる民間活力の手法は、その主流が Authorities(オーソリティ)と呼ばれる組織
への移行である。日本流にいえば公社、公団になるが、基本的に違うのはこの組織体が、商業化と民
営化の2形態を抱合して機能していることである。
また、商業化といってもオーソリティは、非営利団体であってそこで得られた利益は、施設の改良、
追加投資に充てられる。また、その職員の多くは、公務員からの転職組である。制度上、新しいオー
ソリティは、50%以上の公務員からの再雇用と給与水準85%以上支給することと義務付けられて
いる。
施設の建設コストの負担について、既存の施設を委譲する場合は、政府がその施設を保有しオーソリ
ティに長期リース契約を行うが、新設の施設についてオーソリティ独自がプロジェクトを決定し、そ
の計画から資金調達までを行う州も登場してきた。この場合、連邦政府は一切関与しない。資金調達
に関するスクリーニングは、金融機関が判断することになっており、その結果ゴーサインの出たプロ
ジェクトは、債券の発行が可能となって機関投資家をはじめ個人投資家も参加している。
このように、カナダでは、公共事業の完全民営化は、現在のところ考えられていないが、それに換わ
るオーソリティが、多くの州、政府施設で機能しており小さな政府の実現と行政改革は成功の道をた
どっている。
以下に、2,3ケースを紹介する。
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2 空港関係の
空港関係のオーソリティ
26の基幹空港の内、5空港は、1994年に地方空港オーソリティに移管。残り21空港をカナダ
空港オーソリティに、60年間リースで移管する予定であり、連邦は空港の所有と安全基準の作成と
統制を行う方針である。1996年、航空管制について新しい法律が成立し、航空管制については、
NAV Canada という特殊会社を設立し、これに移管をすすめている。
トロントの第3ターミナルでは、BOT 方式を導入。完成後は、トロント空港オーソリティが連邦政
府と60年のリース契約を行っている。
バンクーバー空港の拡張プロジェクトは、オーソリティが計画から資金を金融機関を通じて市場から
調達するまで実現した。
3 港湾関係の
港湾関係のオーソリティ
カナダ海洋法の改正によりオーソリテイ移管の促進が行われている。連邦が管理している基幹の2
0港湾を Canada Port Authority(カナダ ポート オーソリティ)に移管、地方の中小港湾は州、
地方自治体に委譲の予定。ポート オーソリティは、各港湾毎に設けられ、ビジネスマインドの導入
で港湾の将来ビジョンを睨んで高度化を図るのがネライ。
また、インフラの整備には民間資金を活用し、政府は補助金の支出をしないことになっている。例え
ば、バンクバー港の改良プロジェクトは、約220億円の資金を必要としているが、政府の補助金に
頼ること無く連邦公社や関連の鉄道会社からの出資と銀行からの借入金で進められている。
4 道路事業の
道路事業の民営化
トロント都市圏の高速407号線は、1993年官民パートナーシップによる方式で事業が実施され
ることとなった。1994年政府系民間セクターとして CHIC 社(Canada Highway International
Corporation )が設立されて事業がスタートした。
州政府は、このことにより計画が予定より20年早い実現と3億ドルにのぼる経費の削減が可能と発
表した。事業は、BOT 方式を採用しており、国内初の自動料金収集システムである ITS 技術が導入
されていることでも有名になっている。
資金調達については、州政府が保証する形で個人投資家からも調達している点も特筆である。また、
37
今日においては、CHIC 社グループが、407号線以外にもファイナンスを自ら行って、他州の道路
事業のほかイスラエル・チリなど外国にも進出している。(図4参照)
CHIC の 組 織
( カナダにおける BOT 成功事例 )
AGRA Monenco Inc
A C Limited
エンジニアリング会社
建設会社
(図 4)
B F C Corp
D C C
建設会社
セメント系列会社
イコール
パートナ
Canada Highway International Corporation
CHMC
A H C
CIDC
M H
C
DEH Ltd
運営管理
建設担当
設計技術
新規事業
イスラエル等
担当会社
会社
担当会社
検討会社
合弁会社
5 官民パートナーシップ
官民パートナーシップの
パートナーシップの特別委員会
カナダの連邦政府をはじめ各州政府は、赤字の削減とインフラ整備の需要という両面の要求の
中で、民間部門のイニシアティブをいかに最大限発揮するかの知恵を絞ってきた。それは、公
共部門と民間部門がどうパートナーシップを発揮できるかということでもあった。公共の福祉
優先と適正利益の関係は、商業化を進めるための法改正はいつするのか、人員の移動はどうな
るか、これらの問題を解決するための指針が必要でないか。それは、議会等でいつも議論され
る課題でもあった。そんな背景の中、1996年10月、ブリティッシュコロンビア州におい
て、政府の中に設置された「官民パートナーシップに関する特別委員会」が報告書を提出した。
その中で、9項目の提言があり公共事業の民間活力推進、商業化の思考に不可欠な要素が含ま
れており、他の州政府、連邦政府も大きな関心を寄せている。また、この内容を見るとき、日
本版PFI制定に際して行政のあり方として示唆するものが多いと思われるのは、筆者だけで
38
ない。
特別委員会報告の
特別委員会報告の概要
1. 政府は、責任を果たしうる省および大臣を指定するとともに、公共部門と民間部門の協力関
係(3P:Public-Private Partnerships)イニシアチブの実行可能性と実施を追求する権限を付与
することによって、3P イニシアチブをを企面的に支援する旨を表明する。当該の省には、3
P の実施を中心的な業務として担当する部門をおく。
2.
責任を果たしうる大臣直属の委員会として、公共部門と民間部門の協力関係諮間委員会を設
置する。
3. 政府は、BC 州の公共部門と民間部門が調査を行うこと、および立証結果から教訓を得ること
が出来るように、指定した部門においてパイロット事業を実施することによって、3P 経験を具
体化するための方策をただちに講じる。住民との協議と教育の過程は、パイロット事業の着手を
成功に導く上できわめて重要である。
4.3P の実施の指針とするために、総合的な政策枠組みを策定する。
5.資本事業を立案し、予算化するために用いる3P 指針を策定する。
6.3P 事業のための詳細な事業行動計画と調達指針を策定する。
7.各省は、3P を実施する上での実際の障害と潜作的な障害とを識別するために関するる法律(た
とえば地方白治法)や規制の見直しと評価を行う。
8.省および国営企業は、P3 の実施に適した優先事業を決定するために、資本日録とインフラスト
ラクチャーの必要性を評価する。
9.政府は、インフラストラクチャーを従来どおり調達・整備するための過程に、3P の実施から得
た教訓を取り入れるよう努め、またそれとは反対に、すべての設備投資において費用便益が確保
されるよう努める。
出典:Bui1ding Partnerships,TaskForce on Pub1ic-Private Partnerships.October 1996
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Ⅵ アメリカに
アメリカに見る民間活力の
民間活力の推進
1 バリューエンジニアリングと
バリューエンジニアリングとコストパーフォーマンス
アメリカの民営化といえば、最近の話題で刑務所があげられる。社会保険制度や州税の徴収
業務までともはやこれ以上出来ないのではと思うくらいその数は多く歴史も古い。しかし、現
前として、行政による公共事業も健在である。道路・空港・港湾等の施設は、投資と経済効果
それに収益回収にタイムラグがあり、また、民営化による私的独占の可能性もあるので、公共
事業として運営するのが望ましいとしている。
しかし、公共事業といえどもその運営は、コスト管理に重点をおいた方法で行われている。具
体的には、オーソリティ(Authority)(公社公団)方式である。また、積極的に民間の経営手
法を取りいれており、ウォール・ストリートを通じて民間資金を調達するなど日本の公社公団
に比較してその柔軟性には格段の差がある。
アメリカでは、早くからバリューエンジニアリング(Value Engineering V,E)の概念が導
入され、連邦政府の全てのプロジェクトにVECPが義務づけられている。伝統的に、政府の
予算執行について、厳しくチェックするスキームも確立されており、それも単にコストだけが
安いのでなく、費用対効果の分析が重要となっている。
マサチュセッツ州のポートオーソリティは、全米の中で大型の港湾設備であるが、職員数はわ
ずか200名足らずであり、設計等民間委託できるものは全て外注し、運営の中枢を担うこと
と民間から資金を調達することに専念している。公社運営といえども民間から資金を調達する
限り、投資家に対して配当を還元する義務があるため利益を上げなければならない。しかも公
共のサービスの低下はできない。そこで、残るのが、効率とコスト管理の徹底となる。ここが、
日本で失敗の多くを経験している第3セクターとの大きな違いである。
2 関西空港対デンバー
関西空港対デンバー空港
デンバー空港
関西空港とデンバー空港が、アメリカにおいて比較されている。関西空港は、株式会社方式と
いえども官の出資が多く第3セクターに近い。デンバー空港は、オーソリティ(公社)である。
建設の条件が違うが、デンバーは、コスト管理が上手くいき開業が関西空港より1年以上も早
く開業している。開業が早いということは、収益の回収も早くスタートするということだ。ま
た、関西空港は、エアーラインの入居スペースやテナントの入居申し込みが思うように決まら
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なかった。また、開業後もいまだに空きスペースを抱えている。デンバー空港は、ユーザーで
ある航空会社と連絡を密にして、ターミナルビルの設計に着手した。方や赤字(当局はこの赤
字を当然と言っている)方や採算性と収益回収のスケジュールが見えている。不当に高額の漁
業補償費や地域対策費などの出費など住民のコンセンサスを得る方法も日米で大差あるのも
事実だが、日本の地方行政の対応と米国の州政府の対応を見ても方や消極的、方や積極的と本
当の公共の利益を同理解しているのか疑いたくなることも事実だ。
3 ゴミ処理
ゴミ処理が
処理が民営化の
民営化の先発
特にこれらは、廃棄物(ゴミ)処理について顕著である。日本は、家庭ゴミ(一般廃棄物とい
う)は、法律で市町村が処理することになっており、これが、今、ダイオキシン等で大きな社
会問題となっている。米国では、この分野の民営化が最初に進んだものである。ある種の説に
よると、道路、空港、港湾等は、将来の需要予測を大きく取り入れて計画実行するのでどうし
ても投資過多となり、利益回収に時間が掛るためオーソリティ方式が適切である。一方水道、
下水道、ゴミは、設備設置後すぐに受益者の利益に繋がり事業の採算性が見えるものであるの
で民営化に適している。
この説のとおり、10社程度の上場会社が、全米の80%以上のゴミ処理市場を占有している。
上場会社は、パブリックカンパニーと呼ばれ株式を公開している会社で、ゴミ処理といえども
公共サービスの一環を担っているので、個人会社がこれらの入札に応募しても落札する可能性
はほとんどない。また、米国における民営化は、ほとんど上場会社もしくはその関係会社に委
ねられている。その理由は、洗練された合理化は、決して単にコストだけが安いのでなく長期
的に信頼されることも重要ということである。また、米国では、民営化したい分野で、適切な
民間会社がないときは、その分野での公開会社を育成しようという考えもある。最近、顕著に
見えているのは、バイオ関連、リサイクル関連、健康と老人福祉関連で、ナスダック(店頭登
録市場)に上場を支援している。
日本におけるゴミ処理にPFI的発想での提言を次章で予定しているが、そのためにも厚生
省、地方自治体、議員諸氏が、この事に気付き廃棄物処理法、自治法の改正が急務である。
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