横河ディジタルコンピュータ株式会社

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富士通テン株式会社 横河ディジタルコンピュータ株式会社
カー・ナビも、いよいよARMへ。
グローバル化の流れを支援するYDC。
機 能 や テ レ ビ 受 信 機 能、 通 信 機 能 な ど 多
いったアイデアを ECLIPSE ブランドにどん
くの機能を搭載するまでになっています。
どん突っ込んでいき、そこで獲得したもの
し か も 車 両 の デ ー タ ま で 受 け 取 り、 車 速
を自動車メーカに採用してもらおうという
を 表 示 す る な ど 多 機 能 化 し て い ま す。 ス
動きはすでに始まっています。
マート・フォンでは、車両の情報まで受け
取っていません。これからは、スマート・
組込みソフトウエア開発に
フォンではできない付加価値の高いサービ
見える化のツールの必要性が増す
ECLIPSE(イクリプス)ブランドのカー・ナビゲーション・システムを展開している富士通テン。今後の製品展開に ARM マイ
スを提供していくようになると思います。
コンを加え、グローバル化に向けた動きを加速させるなか、その開発パートナーに選ばれたのが横河ディジタルコンピュータ(以
日下部:現在、カー・ナビは、パソコン
下、YDC)である。ここでは、富士通テンでカー・ナビゲーション・システムのソフトウエア開発を担っている籠谷氏と日下部
のように何でもできるようになっていま
氏をお迎えしてお話を聞いた。
す。 今 後 は、AV 家 電 な ど を 手 軽 に 接 続 で
仮 屋: モ ジ ュ ー ル 開 発 は す で に 自 動 車
きるように DLNA(Digital Living Network
で は 先 行 し て い ま す が、 ま だ ま だ 一 般 化
Alliance)と連携していくのが新しい領域
し て い な い の が 現 状 で す。 現 在、 組 込 み
だと思います。
ソフトウエアで C や C++ を用いるのが当た
桑原:富士通テン様は、自動車メーカ純
組込みソフトウエアでもモジュール開発
が進んでいるようですが。
富士通テン株式会社
ソフトウェア技術本部
C I ソフト統括部
ソフト開発部
チームリーダ
籠谷 成彦 氏
り 前 で あ り、 若 い エ ン ジ ニ ア に は そ れ 以
正向けと、独自の ECLIPSE ブランドの製品
外に何があるのかと言われてしまいます。
り有効に活用することができます。また、
を開発/提供されていますが、それぞれで
10 年 後 は モ ジ ュ ー ル 開 発 が 当 た り 前 に
ARM 社でこのアセンブラの動きは正しい
サービス内容を変えているのでしょうか?
な っ て い る で し ょ う。 モ ジ ュ ー ル 開 発 で
かなどデータを取ってもらい、YDC として
ECLIPSE ブランドでのサービス内容を強化
はその部分がブラックボックス化されて
はそれをベースにローカライズしていくこ
することで、自動車メーカもそれを使いた
し ま い、 シ ス テ ム 全 体 が 見 え な く な っ て
とも課題です。
いという要望が出てくるのではないかと思
しまいます。そのため、V 字開発などのモ
籠 谷: そ の ロ ー カ ラ イ ズ を マ イ コ ン・
いまして。
ジュール開発ではデバッグのためのツー
ベンダが行い、その情報をセット・ベンダ
籠谷:それはありますね。最近では目玉
ル が 不 要 に な っ て し ま い ま す が、 逆 に 必
側に伝えて欲しいですね。
となる機能はほとんど出尽くしてしまった
須となるがパフォーマンスを出すための
感 も あ り ま す。 そ こ で、 携 帯 電 話 で イ ン
ツールです。
ターネットと繋ぐことで、車の外から情報
籠谷:いわゆる見える化のためのツール
を 持 っ て く る 方 向 に な っ て い ま す。 そ う
で す ね。 開 発 し た も の を い か に 見 え る 化
お客様の声を
ARM へフィードバックすることで
ツールを進化させる
し て い く か、 と い う こ と は 非 常 に 大 切 で
スマート・フォンではできない
サービスに付加価値を付けて提供
現 在、 ス マ ー ト・ フ ォ ン で も ナ ビ ゲ ー
ションができるようになっています。携帯
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籠谷:自動車に搭載されるカー・ナビは、
組込みソフトウエアの大規模化、複雑化
いに関数をブレークしてなんて評価はで
が叫ばれて久しいですが、その現状につい
きません。YDC のツールを用いることで見
てどのようにお考えになっていますか。
え る 化 し て、 い ま ソ フ ト ウ エ ア で ど の よ
飯 塚:Android ス マ ー ト・ フ ォ ン は、 さ
うな挙動が起きているかを把握できるこ
ま ざ ま な メ ー カ か ら 提 供 さ れ て い ま す。
とを期待しています。
Android アプリケーションならメーカが異
長年蓄積されたノウハウが集約されていま
るナビ・システムを超えて車のアシスタン
仮屋:われわれとしては、そのレポート
なっても動作するため、端末のチューニン
す。たとえば、位置情報や案内の精度、車
ト・システムへと進化していくのではない
を出すまでのお手伝いはできます。しかし、
グの違いが明確になってしまいます。そこ
載機としての操作性などは、確実にカー・
でしょうか。例えば勾配情報でエンジンを
出た結果の真義までは判断できません。そ
で問題なのが、割り込みのレベルを意識し
ナビが上回っています。
制御する ECU(Electronic Control Unit)など
の判断のための条件を定義されるのは富士
ていないなどアプリケーション・エンジニ
通テン様ですが、挙動を見える化し、どの
アが端末のプラットフォームそのものを理
部分をチューニングしていくかを的確に判
解していないことです。組込みシステムを
断 す る こ と で、 限 ら れ た 時 間 や 資 源 を よ
知らないエンジニアに、いかに組込みシス
電話でのナビとカー・ナビゲーション・シ
仮屋:スマート・フォンのナビ機能は歩
ステム(以下、カー・ナビ)の違いについ
く速度に合わせたもので、自動車では地図
てお聞かせください。
情報をダウンロードしている間に通り過ぎ
ARM PARTNERS SUCCESS
てしまいます。今後、カー・ナビは、単な
す。 大 規 模 開 発 で は 特 に そ う で、 昔 み た
もそうですが、機能安全までも考慮するこ
とが必要となってくるでしょう。
籠谷:カー・ナビは、AV(Audio/Visual)
横河ディジタルコンピュータ株式会社
エンベデッドプロダクト事業部
営業本部
副本部長
仮屋 義明 氏
ARM PARTNERS SUCCESS
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度 と 再 現 で き な い こ と も あ り ま す。 そ う
で直ぐにリセット&ゴーしていまいます。
ちです。マイコンとしての付加価値をどう
いった OS の挙動は、自動車業界が最も忌
日下部:車のノイズによる 20 万回の電
出 し て い る か を 比 較 す る た め、 メ モ リ や
み嫌うものでしょう。
源変動試験を何週間もかけて行っていま
す。 何 か 事 象 が 発 生 し た と き に そ の ダ ン
われわれが
プを取れるとありがたいですね。
気付かなかったところまで
仮屋:まさにそれを狙って作っています。
見てくれる
籠谷:YDC さんとは、ARM マイコン・ベン
横河ディジタルコンピュータ株式会社
エンベデッドプロダクト事業部
ARM テクニカルセンタ FAE グループ
課長代理
ダ様からご紹介いただいたのがはじまりで、
飯塚 晶子 氏
についてご説明をいただきました。
富士通テン株式会社
ソフトウェア技術本部
C I ソフト統括部
ソフト開発部
その時に提供されているさまざまなツール
日下部 雄一 氏
テムを分かってもらうかが課題ですね。
なることに加え、デバッグもより膨大にな
ら繋げるメリットが分からない人が多く
に考えていますか。
飯塚:不具合は必ず再現できると思って
いるのでしょうね。
日 下 部: 国 産 マ イ コ ン と ARM マ イ コ ン
とで JTAG ピンの配置が異なっていたのを
仮 屋: デ バ ッ グ に つ い て は、 下 回 り を
含めたシステムとより上位のアプリケー
横河ディジタルコンピュータ株式会社
エンベデッドプロダクト事業部
ARM テクニカルセンタ
センタ長
ションとでは、使われるツールが異なって
くると思います。すべてを 1 種類のエミュ
桑原 健 氏
レータで行う時代ではありません。
飯塚:ARM 純正開発ツールである DS-5 は、
せにも入っていただき、JTAG(Joint Test
まで見てくれる点が良いですね。YDC さん
桑 原: エ ミ ュ レ ー タ か ら キ ャ ッ シ ュ の
Action Group)と 繋 ぐ 回 路 設 計 も 見 て い
はツールのバリエーションが豊富で、1 社
仮屋:こちらのエンジニアがそれに気付
す。DS-5 には 3 つのエディションが用意さ
最後に ARM マイコンを採用しようと考
ヒット率を見られないかというニーズが
ただきました。YDC さんがいなかったら治
でそこまで揃っているところは希だと思い
き、ジャンパーを飛ばして対処できたこと
れており、お客様の開発内容・規模・利用
えているエンジニアにメッセージをお願い
あ っ た の で す が、 ヒ ッ ト 率 が 見 ら れ た と
具基板さえ完成することはできなかった
ます。そのなかでも特に重視しているのが、
ですね。
シーンに合わせて、選択していただけます。
します。
してもそれだけで終わってしまうことが
ですね。
発生頻度の極めて低い事象を確実に捉える
多 い の も 事 実 で す。ARM プ ロ フ ァ イ ラ
桑原:ツールベンダとしてデバイスベン
は、 開 発 サ イ ク ル を 回 す こ と で 最 適 化 を
ダとは定期的な打ち合わせを行っています
飯塚:極めて希な事象でも捉えることが
図 っ て い く も の で す。 そ れ で も、 お 客 様
ので、お客様のニーズを伝えやすい環境に
できるように、対象を大きく広く取れるよ
からのフィードバックがないとプロファ
あります。
うにしているのも最近の傾向といえます。
イルの精度は向上しません。YDC としては、
ことです。
さんに助けていただきました。
まさにそのコンセプトで作られたもので
籠谷:こんなことでも 3 ~ 4 日も無駄に
DS-5 Application Edition は、エミュレー
日下部:いままでの国産マイコンと ARM
す る こ と が あ る ん で す よ。 そ こ を 一 発 で
タ を 使 用 す る こ と な く、Linux ア プ リ ケ ー
マイコンでは、アセンブラが全く異なりま
動かしてもらったことには大変感謝して
ションの複数の同時デバッグ・セッション、
す。私は、YDC さんの ARM トレーニングを
います。
SMP(Symmetric Multiprocessing)シ ス テ
受けたことで、かなり早い段階で理解が深
ム、マルチスレッドをサポートします。も
まりました。ARM マイコンは、ブートや割
仮屋:ツールベンダとしてお客様が何を
これまでは、いかに高度なことができるか
ロードマップが
う 一 方 の DS-5 Linux Edition は、 エ ミ ュ
り込みなどさまざまな命令が用意されてお
ARM と共同開発していく中で、お客様の
どのようにデバッグしたいのかを考えてい
が前提となり、専門知識もかなり必要とさ
しっかり示されていた
レータを使用して JTAG または SWD(Serial
り、それらをゼロから開発するのではなく、
声を ARM へフィードバックしたり、ARM
ます。たとえば、デバッグ回路をマイコン
れるツールを提供していましたが、最近で
ARM マイコンを採用
Wire Debug)接続することで、カーネル空
うまく組み合わせるコーディネイト力が求
と協業してお客様のニーズに合わせた機
にインプリメンテーションする際、ピン数
は簡単に使えるツールへシフト・チェンジ
間やブートローダのデバッグもサポートす
められます。
能 を 開 発 し て い き ま す。 ツ ー ル で 自 動 化
と納期の関係から最適解を探るのも仕事の
をしています。
するというソリューションは ARM も興味
ひとつです。
を 持 っ て い ま す が、 非 常 に ハ ー ド ル が 高
いのも事実です。
日下部:いまはコンパイラー頼りですが、
そういったツールがあると便利ですね。
仮屋:ツールの進化もありますが、いま
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アになると、ソフトウエアの開発も大変に
ります。それについて YDC さんはどのよう
こちらが気付かず苦労していたときに YDC
日下部:マイコン・ベンダとの打ち合わ
日下部:ARM マイコンに限らずマルチコ
最近のエンジニアは、エミュレータを後か
なっています。
YDC を選択した理由を教えてください。
キャッシュ、周辺機能などを見ました。
日下部:われわれが気付かなかったとろ
籠谷:最近のエンジニアは、そういった
事象を捕まえているのにちょっと見ただけ
ARM マ イ コ ン 採 用 の 経 緯 を 教 え て く だ
さい。
ることができます。
桑 原: 今 後 の 製 品 は、 シ ス テ ム 部 分 ま
籠谷:いままで国産マイコンの世界にい
たのですが、市場がグローバル化するなか、
籠 谷: 従 来 か ら 採 用 し て い た 国 産 マ イ
で 自 社 で 開 発 す る か、 そ の 部 分 は 購 入 し
マイコンもグローバル化していくのは必然
コンでは、今後のロードマップに限界が見
チューニングするかという二極化に進むと
的な流れでしょう。付加価値の高いシステ
えてきました。そこでロードマップがしっ
思います。
ムは進化の速度も著しく、それに乗ってい
かり示されている ARM マイコンを選択し
ました。
日下部:車向けの評価ツールは、速い起
くには変化を恐れないことだと思います。
動が求められたり、エンジン停止の状態で
特に日本の組込みエンジニアは変化を嫌う
消費する暗電流があったりなど特殊な環境
人が多いのですが、いったん飛び越えない
への対応が求められています。
と将来はありません。
は対象そのものが進化しており、それに付
仮 屋:ARM ア ー キ テ ク チ ャ を 採 用 し た
いていっているというのが正直なところで
マイコンは、さまざまなマイコン・ベンダ
す。 た と え ば、Linux で は ど の タ ス ク が ど
から提供されており、ユーザとしては幅広
う動いているのかまで把握していないとア
い選択肢がありますね。切り替えに際して、
で 提 供 さ れ る こ と が 多 い の で す が、 車 向
籠谷様、日下部様、本日はお忙しい中誠
プリケーションのデバッグはできません。
それぞれの比較を行ったのでしょうか。
けにチューニングされたものはある程度
にありがとうございました。ARM が搭載さ
の金額にならざるを得ないというのが現
れた新しいカー・ナビ、心待ちにしており
状でしょう。
ます。
Linux では、MMU(Memory Management
籠谷:コアは同じなのですが、各社でそ
Unit)やキャッシュがあり、同じ事象が二
のインプリメンテーションの仕方はまちま
ARM PARTNERS SUCCESS
仮屋:一般機器に向けたツールは低価格
ARM PARTNERS SUCCESS
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