平 成 26 年 3 月 IP 電 話 普 及 推 進 センタ OKI 代 表 千 村 保 文 Web コラム 『業 種 ・業 務 に適 したコミュニケーション』 ビジネスに用いるコミュニケーションツールは、その業種・業務によって向 き不向きがあります。移動の有無、コミュニケーションに用いるメディアの種 類、配慮すべきセキュリティなどを明確にし、多種多様なコミュニケーション ツールの適性を踏まえた選択が必要です。 ここでは業種・業務として、営業職、製造業、物流業、金融業、学校を例に ワークスタイルによるコミュニケーションの課題と適したツールを示します。 1. 営 業 職 型 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 課 題 ●営業職のワークスタイル 営業職は、一般的に社外への外出、移動が多い職種です。そのため、外出先 にて製品の在庫状況などをリアルタイムに把握したり、提案資料を修正するな どの作業が必要になることも想定されます。その一方で、社内では自ら提案資 料を作成し、他部門と調整する会議なども多い人もいるでしょう。トラブルが 発生時には休日出勤もありますが、取り扱う情報は秘匿性が高いため、企業に よ っ て は 宴 会 や 懇 親 会 へ 行 く 際 に は 、 PC な ど の 持 ち 出 し を 禁 止 と し て い る 会 社もあります。 社 外 への外 出 、 移 動 が多 い 社 内 では資 料 作 成 も 自 らこなす リアルタイムな 情 報 把 握 が必 要 多 くの部 門 との 調 整 、会 議 が多 い 提 案 資 料 などを 持 ち歩 く事 が多 い トラブル発 生 時 には 休 日 も対 応 が必 要 ●営業職に適したコミュニケーションツール 移動の多い営業職には、携帯電話あるいはスマートフォンなどのモバイル端 末が向いています。しかし、取り扱う情報に秘匿性が高い場合、端末内に個人 情報や企業情報は残せないでしょう。そのようなケースでは、企業向けのクラ ウドサービスを用いる方法があります。クラウドサービスの場合、端末には情 報は残らず、データセンタのストレージに格納されます。また、紛失の心配が Copyright IPTPC 2014 あ る 場 合 は 、GPS 付 き の 端 末 が 望 ま し い で す 。通 信 事 業 者 に よ る 位 置 検 知 、使 用制限サービスが利用できます。 ま た 、海 外 等 遠 隔 地 と の 定 期 的 な 会 議 が 必 要 な 場 合 は 、IP ネ ッ ト ワ ー ク を 用 いたビデオ会議などを使用することも有効です。ビデオ会議は、専用システム を購入するか、クラウド型のサービスを利用するなどいくつかの形態がありま す。 2. 製 造 業 型 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 課 題 ●製造業のワークスタイル 製 造 業 で 工 場 に 勤 務 す る 従 業 員 は 、一 般 的 に 工 場 内 で の 勤 務 が 多 い 職 種 で す 。 ただし、生産計画によりシフト勤務などがあるため、勤務時間は変則なケース もあります。また、生産ラインに異常が発生したような場合には、電話での緊 急 連 絡 な ど 音 声 あ る い は メ ー ル や SMS で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 中 心 と な る でしょう。 通常時には、生産状況や品質情報などの共有が必要であり、調整や情報共有 の会議も定期的に行われます。社外に情報を持ち出すことは少ないですが、ト ラブルが発生時には休日出勤もあります。 工 場 内 での勤 務 が 中心 生 産 状 況 、品 質 情 報 は逐 次 情 報 共 有 シフトにより勤 務 時 間 帯 は変 動 定期的に 調 整 、会 議 がある 緊 急 時 にはリアル タイムに連 絡 が必 要 トラブル発 生 時 には 休 日 も対 応 が必 要 ●製造業に適したコミュニケーションツール 内勤の多い製造業においては、工場内では音声コミュニケーションが中心の た め 、 PBX の 内 線 と し て の ビ ジ ネ ス フ ォ ン や PHS が 向 い て い ま す 。 し か し 、 生 産 会 議 な ど は 遠 隔 地 の 開 発 部 門 や 海 外 と の や り と り も 多 く 、IP ネ ッ ト ワ ー ク を用いたビデオ会議などを使用することが有効です。また、図面などの資料は Copyright IPTPC 2014 メールなどが有効ですが、手書き図面のやりとりにはファクシミリあるいは複 合 機 ( MFP) の 利 用 も 有 効 で す 。 最 近 で は 、 ス マ ー ト フ ォ ン や タ ブ レ ッ ト も 専 用アプリケーションの利用やビデオ会議端末として使われています。 3. 物 流 業 型 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 課 題 ●物流業のワークスタイル 運送業や宅配などの物流業では、運搬などの現場を担当する外勤者と、倉庫 などの在庫管理、あるいは運搬管理などの本部での内勤者がいます。現場担当 者は運搬計画によりシフト勤務などがあり、勤務時間は変則なケースもありま す。また、交通事故など、異常が発生したような場合には、電話での緊急連絡 な ど 音 声 あ る い は メ ー ル 、SMS で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 中 心 と な る で し ょ う 。 本部での内勤者は、現場の運搬者の位置や状態を把握するため、日々の電話 や メ ー ル の 応 対 を 行 い 、運 搬 状 況 な ど の 共 有 、搬 送 経 路 の 指 示 な ど を 行 い ま す 。 また、運搬計画の調整や情報共有の会議も定期的に行われます。社外に情報を 持ち出すことは少ないですが、トラブルが発生時には休日出勤もあります。 社 外 での運 搬 など 移 動 が多 い 在 庫 、運 搬 状 況 の情 報 は逐 次 情 報 共 有 シフトなどにより 勤 務 時 間 に変 動 あり 定期的に 調 整 、会 議 がある 緊 急 時 にはリアル タイムに連 絡 が必 要 トラブル発 生 時 には 休 日 も対 応 が必 要 ●物流業に適したコミュニケーションツール 外勤が中心の運搬担当者は、移動が多いため、携帯電話あるいはスマートフ ォ ン な ど の 利 用 が 向 い て い ま す 。最 近 は 、自 動 的 に 位 置 を 通 知 で き る GPS 付 き の端末も多く、スマートフォンの場合、ナビ機能を実装したアプリも登場して きています。トラブル発生時に現場状況を的確に伝えるためにはカメラ付きの 端末も有効です。 Copyright IPTPC 2014 本部での内勤者は、外勤者や遠隔地との音声、映像による現場把握のため、 ビデオ会議システムを利用する企業も増えています。また、現場指示を行う場 合は、コールセンタシステムとの連携が有効です。 倉庫や搬送経路などの細かい図面などの資料の送付はメールなどが有効です が 、手 書 き 図 面 の や り と り に は フ ァ ク シ ミ リ あ る い は 複 合 機( MFP)の 利 用 も 有 効 で す 。 最 近 の フ ァ ク シ ミ リ は IP ネ ッ ト ワ ー ク を 介 し て 高 速 伝 送 で き る タ イプもあります。 4. 金 融 業 界 型 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 課 題 ●金融業界のワークスタイル 銀行、保険、証券などの金融業界におけるワークスタイルは、営業店、事務 センタなどの内勤者と、渉外などの外勤者に分けられます。内勤者は、顧客あ るいは他部署からの電話取次ぎ、メール、ファクシミリなどのやりとりが中心 です。 一方、渉外などの外勤者は、顧客先での商品紹介など営業活動が中心となり ま す 。そ の た め 、商 品 紹 介 や 最 新 の 金 融 市 況 の 情 報 提 供 な ど が 必 要 と な り ま す 。 金融業界は個人情報の取り扱いが必須のため、セキュリティ対策が重要であ り、端末の紛失、情報漏えいなどには慎重です。 また、資金計画の調整や情報共有の会議も定期的に行われます。社外に情報 を持ち出すことは少ないですが、トラブルが発生時には休日出勤もあります。 基 本 は、営 業 店 舗 、 事 務 所 内 の勤 務 市況情報は 逐次情報共有 渉 外 担 当 者 は、 社外勤務中心 定期的に 調 整 、会 議 がある 緊 急 時 にはリアル タイムに連 絡 が必 要 トラブル発 生 時 には 休 日 も対 応 が必 要 Copyright IPTPC 2014 ●金融業界に適したコミュニケーションツール 内 勤 が 中 心 の 事 務 担 当 者 は 、ビ ジ ネ ス フ ォ ン や フ ァ ク シ ミ リ 、複 合 機( MFP) の利用が向いています。外勤の多い渉外担当者は、携帯電話やスマートフォン な ど の 利 用 が 向 い て い ま す 。最 近 は 、自 動 的 に 位 置 を 通 知 で き る GPS 付 き の 端 末も多く、紛失時には遠隔で使用制限を制御し、端末の場所を検知することが 可能です。 最近は、タブレット端末などで顧客にリアルな映像を見せながら商品紹介を 行 う こ と も 可 能 で す が 、 金 融 業 界 で は 無 線 LAN の 利 用 に 慎 重 な 企 業 が 多 い で す。しかし、これらのモバイル端末のセキュリティ機能も日々進化しており、 無線区間での通信情報の暗号化はもとより、指紋や顔画像での認証などを用い ることで用途に適した利用も可能です。 5. 学 校 型 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 課 題 ●学校のワークスタイル 学 校 に お け る ワ ー ク ス タ イ ル は 、教 師 は 基 本 的 に 学 校 内 で の 内 勤 が 多 い で す 。 教師のコミュニケーションツールは基本的に学校からの支給ですが、生徒の使 用する端末は基本的に生徒の保護者の自己負担の私物です。 緊急時の学校から親、親同士の連絡には、電話での連絡網の他、メールなど も 使 わ れ て い ま す 。学 校 内 外 へ の 情 報 発 信 に Web で の 掲 示 版 を 用 い る ケ ー ス も あります。学校も個人情報の取り扱いが必要で、セキュリティ対策が重要なた め、端末の紛失、情報漏えいなどには慎重です。 また、学校も公的機関として紙の資料の保管が義務付けられているケースが 多く、紙の資料の保管、伝達が多いです。 教 師 は、基 本 学 校 内 の勤 務 定期的に 調 整 、会 議 がある 緊 急 時 はリアル タイムに連 絡 が必 要 トラブル発 生 時 には 休 日 も対 応 が必 要 Copyright IPTPC 2014 ●学校に適したコミュニケーションツール 学校では紙の情報の伝達が多く、かつ教師は内勤が中心のため、ビジネスフ ォ ン や フ ァ ク シ ミ リ 、 複 合 機 ( MFP) の 利 用 が 向 い て い ま す 。 生 徒 の 保 護 者 か らの電話対応には、電話またはメールでの応対が中心です。部活動の顧問を行 っている教師などは、練習や試合で外勤が多いため、携帯電話や最近ではスマ ートフォンなどの利用が向いています。しかし、これらの端末はコストの問題 から学校からの支給よりも個人所有の端末を使っているケースが多いようです。 ま た 、低 学 年 の 生 徒 に 自 動 的 に 位 置 を 通 知 で き る GPS 付 き の 端 末 を 持 た せ るケースも多く、保護者や教師が生徒の位置を把握するサービスを使う事例も 増 え て い ま す ( 勿 論 、 保 護 者 の 承 諾 が 必 要 )。 Copyright IPTPC 2014
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