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山梨医科学誌 18(4),87 〜 94,2003
原
著
新しい光感受性物質(Na-Pheophorbide a)を用いた
培養肺癌細胞に対する光線力学療法の基礎的検討
井
上
秀
範 1),高
吉
井
新
山梨大学医学部
1)
要
橋
渉 1),小
平 1),多
田
第 2 外科, 筑波大学
2)
祐
林
正
輔 1),松
美 2),佐々木
本
雅
政
子 3),
彦 1)
物質工学, 東海大学総合科学技術研究所
3)
旨:【目的】新しい光感受性物質 Na-Pheophorbide a(Na-Phde a)を使用した腫瘍内直接注射
による Photodynamic therapy(PDT)を開発するため,Na-Phde a の特性を in vitro にて検討し,
臨床応用が可能であるかを明らかにすることを目的とする。
【対象・方法】肺扁平上皮癌細胞株(RERF-LC-AI,以下腫瘍細胞)を使用し,Phde a の吸光度曲線
を作成した。次に腫瘍細胞に Na-Phde a を種々の濃度および時間で作用させて細胞内 Phde a 濃度
を求め,その結果をもとに Na-Phde a を取り込ませた腫瘍細胞に対しハロゲン光による PDT の殺
細胞効果を測定した。さらに腫瘍細胞に Phde a を取り込ませた状態での蛍光顕微鏡観察を行った。
【結果】腫瘍細胞内の Phde a 濃度曲線はおよそ 4 時間で飽和状態に達し,0.04 mg/ml 以上の濃度
ならば腫瘍細胞内濃度は約 1.4 pg/cell と最高濃度に達した。そこで 0.04 mg/ml の Na-Phde a を
種々な時間で腫瘍細胞に作用させ PDT を施行したところ,Na-Phde a を 1 時間以上作用させること
で,コントロールとの相対生存率は 3 %以下となり有意に腫瘍細胞は死滅した(p < 0.01)。さら
に蛍光顕微鏡観察では Phde a は 1 時間から 4 時間程度で腫瘍細胞内に強い集積を認めた。
【結語】Na-Phde a は 1.4 pg/cell の濃度があれば,腫瘍細胞に対し in vitro のレベルで十分な殺細胞
効果が得られた。以上より Na-Phde a を使用し PDT を行う方法は臨床応用可能であると思われた。
キーワード 光線力学療法,Na −フェオフォーバイド a,光感受性物質,レーザー,肺扁平上皮
癌細胞
はじめに
の全身投与 1) と,エキシマダイレーザー癌治
療装置(PDT-EDL1 :浜松ホトニクス㈱)の組
近年,悪性腫瘍の治療に光感受性物質を用い
み合わせ 2)が保険適応となった。新しい治療
た光線力学療法(Photodynamic Therapy :以
法として PDT が注目されてから 15 年経過した
下 PDT)の研究や開発が行われ有効性が認め
が,フォトフリン 静注に伴う長期の暗室内生
を受けて,1996 年 4 月よりヘマ
活が強いられるため,期待されたほど症例数は
られたこと
1)
トポルフィリン系光感受性腫瘍親和性物質フォ
トフリン(Photofrin :日本ワイスレダリー㈱)
〒 409-3898 山梨県中巨摩郡玉穂町下河東 1110
受付: 2003 年 11 月 25 日
受理: 2004 年 1 月 9 日
増えていないのが現状である。
一方,副作用の少ない新しい光感受性物質が
種々開発され報告されているが 3–7),その中の
ひとつにフェオフォーバイド a(Pheophorbide
a :以下 Phde a)がある。Phde a は癌細胞に
井
88
上
秀
範,他
集積しやすく,光照射によってヘマトポルフィ
め 使 用 す る 10 倍 濃 度 に て 調 整 し た も の を ,
リ ン 誘 導 体 物 質 ( Hematoporphyrein Deriva-
0.22 µ m の無菌フィルターを通過させ使用し
tive :以下 HpD)よりも高い殺細胞効果が認
た。培養癌細胞に作用させるときは,調整され
められ ,さらに局所注入においても高い殺細
た光感受性物質を細胞培養している培地に加
胞効果を認めることが報告されている 9)。この
え,目的の濃度になるようにして行った。
8)
ように高い殺細胞効果が期待できる物質であれ
対照として,現在臨床で使用されているフォ
ば,光感受性物質の腫瘍内直接注射による
トフリン のモノマータイプである HpD を使
PDT が可能となり,光感受性物質の投与量を
用した。
少なくでき,副作用である日光過敏症を抑える
b :細胞株
ことができると考えられる。さらに今回我々は
ヒト肺扁平上皮癌細胞株である RERF-LC-AI
新しく Phde a の Na 塩(以下 Na-Phde a)の調
(以下腫瘍細胞)を 10 % FBS 添加 MEM 培地で
整に成功したため 10),Na-Phde a の基本的な特
性を in vitro にて検討し,腫瘍内局所注射によ
る方法で PDT を行うのに必要な条件を検討す
ることとした。
培養し,すべて 10 継代以内の細胞を使用した。
c :光照射装置
光源は,現在実際に臨床で用いられている気
管支鏡の光源を想定し,300W ハロゲン電球を
用い,腫瘍細胞に対する有害光線および熱の影
対象と方法
響を排除する目的で水およびガラスを通過させ
た。
(A)実験材料
a :光感受性物質(図 1)
培養癌細胞に作用させる Na-Phde a の調製法
は,リン酸バッファー(以下 PBS)であらかじ
(B)実験方法
実験 1 :Phde a および HpD の吸収スペクトル
の測定
腫瘍細胞 RERF-LC-AI を 25 cm2 の組織培養用
フラスコに 5 × 105 個播種し,細胞がフラスコ
内 で 80 % コ ン フ ル エ ン ト に な っ た 状 態 で ,
0.05 mg/ml の Na-Phde a,および対照として
0.05 mg/ml の HpD を腫瘍細胞に対し 6 時間そ
れぞれ作用させた。作用終了後はそれぞれの光
感受性物質を 99 %メタノールで抽出後に分光
光度計(V-560 :日本分光㈱)を用いて吸収ス
ペクトルを測定し,それぞれの細胞数を 1 ×
106 個あたりに換算した吸光度曲線を作成した。
実験 2 :腫瘍細胞に各種 Na-Phde a 濃度を作用
させ,経時的細胞内 Phde a 濃度曲線
を作成
腫瘍細胞 RERF-LC-AI を 25 cm2 の組織培養用
フラスコに 5 × 105 個播種し,インキュベート
を行った。細胞がフラスコ内で 80 %コンフル
図 1. 新しい光感受性物質(Na-Phde a)の構造式
原材料は植物の葉緑素より抽出される。Phde
a と比べて置換基が Na 塩となったため水溶性
である。
エントの状態になったときに,各フラスコに対
し Na-Phde a 濃 度 が 0.01, 0.02, 0.04, 0.06,
0.08,0.1 mg/ml になるように調製し,それぞ
れ 5 分,30 分,1 時間,2 時間,4 時間,6 時間
Na-Pheophorbide a を用いた PDT
作用させた。作用終了後は直ちに PBS で細胞
89
結
果
表面を洗浄し,99 %メタノールにて Phde a を
抽出後,分光光度計(V-560 :日本分光㈱)に
実験 1 : Phde a および HpD の吸収スペクトル
てそれぞれの色素量を測定し,腫瘍細胞 1 個あ
Na-Phde a および HpD を腫瘍細胞内に作用
たりの細胞内 Phde a 濃度を算出した。なお,
させたそれぞれの吸光度曲線を示す(図 2)。
各作用濃度および作用時間における検体数は
Phde a および HpD は共に 400 nm 付近に Soret
15 検体以上で,全体で 652 検体に対して行っ
band と可視光領域の Q 吸収帯が認められた。
た。
光感受性物質をレーザー光で励起させる Q 吸
実験 3 :Na-Phde a を用いた PDT における殺
収帯の比較では,前述の通り HpD は 630 nm
細胞効果の測定
96 well マルチプレートの各 well に腫瘍細胞
付近に認められたが,Na-Phde a は HpD より
もさらに長波長側の 667 nm に Q 吸収帯を認め
RERF-LC-AI を 4 × 103 細胞個播種し,24 時間
られた。なお,Phde a および HpD のそれぞれ
後 に 0.04 mg/ml の Na-Phde a を 5 分 , 15 分 ,
の Q 吸収帯における吸光度係数の比較では
30 分,1 時間,4 時間作用させ,作用後直ちに
Phde a は HpD よりも 338 倍高値を示した。
PDT を施行した。コントロールとして PBS の
実験 2 :各種 Na-Phde a 濃度における系時的細
みを培地内に加えて同様の操作を行い,PDT
の照射条件は約 1 万ルクス程度の照度で 15 分
胞内 Phde a 濃度曲線
各種 Na-Phde a 濃度および時間に対する細胞
間 の 照 射 を 施 行 し た 。PDT 施 行 後 は 直 ち に
内 Phde a 濃度曲線を示す(図 3)。Phde a の腫
well 内の培地を交換し,72 時間後にマイクロ
瘍細胞内濃度は 0.04 mg/ml 以上の濃度であれ
プレートリーダー(SPECTRA MAX 340 :日本
ば 4 時間以上作用させることでほぼプラトーと
モレキュラーデバイス㈱)を用いた MTT 試験
なり,細胞内最高濃度が約 1.4 pg/cell に達し
で細胞生存率を測定した。各群の検体数は 92
た。
検体以上で行い,全体では 741 検体にて測定し
実験 3 : PDT における殺細胞効果
た。
実験 4 : Na-Phde a の腫瘍細胞内への取り込み
Na-Phde a を作用させた上での PDT 施行後
のコントロールに対する細胞生存率を平均±標
カバーグラス上に播種した腫瘍細胞 RERF-
準偏差(%)で示す(図 4)。作用時間が 5 分
LC-AI を,0.04 mg/ml Na-Phde a を 5 分,30 分,
間では 77.9 ± 14.6 %,15 分では 27.6 ± 21.2 %,
1 時間,2 時間,4 時間作用させた。作用終了
30 分では 12.0 ± 5.3 %,1 時間では 2.7 ±
後は直ちに PBS で細胞表面を洗浄し,細胞が
1.3 %,4 時間では 2.7 ± 1.1 %の生存率を示し
生着したカバーグラスを蛍光および位相差顕微
た。Na-Phde a は 1 時間以上作用させ PDT を施
鏡(落差蛍光顕微鏡 BHS-RFK :オリンパス㈱)
行することで,コントロールに対し生存率は
観察を行った。蛍光顕微鏡観察上の光感受性物
質に対する励起条件は 405 nm 付近で励起させ
3 %以下となり腫瘍細胞は有意に死滅した
(p < 0.01)。
る V 励起(励起用フィルター[BP405]と吸収
実験 4 :腫瘍細胞内への Na-Phde a の取り込み
用フィルター[O590]の組み合わせ)で行っ
腫瘍細胞(RERF-LC-AI)に Na-Phde a を作
た。
用させたときの蛍光顕微鏡写真を図 5 に示す。
統計処理法
Na-Phde a は培養癌細胞内に 1 時間程度からよ
コントロールと各群の検定は t-test を用いて
く取り込まれ,強い蛍光が観察された。
行った。
井
90
上
秀
範,他
図 2. Phde a および HpD の吸光度
それぞれ 0.05 mg/ml の光感受性物質を 6 時間作用させ抽出し,1 × 106 個あ
たりの細胞に換算した吸光度曲線を示す。Phde a と HpD の Q 吸収帯での
吸光度の違いは 338 倍の差を認めた。
考
察
HpD のオリゴマータイプのヘマトポルフィリ
ン系光感受性腫瘍親和性物質(フォトフリ
PDT は 1979 年に Dougherty ら 11)が HpD と
ン :日本ワイスレダリー㈱)1)の使用が保険
レーザー光を組み合わせた治療法の有用性を証
適応となったが,その副作用防止のために長期
明したことで,新しい治療として臨床応用され
の暗室内での生活を余儀なくされるため,期待
るに至った
。
1,2,12)
されたほど PDT の症例数は増加していない。
現在までに開発された光感受性物質は種々あ
このような背景のなか,フォトフリン に変
るが,Lipson らが開発した HpD がもっとも繁
わる腫瘍集積性に優れ日光過敏症等の副作用も
用されている 13)。日本でも 1996 年 4 月より
無く,また組織透過性のより良い長波長側での
Na-Pheophorbide a を用いた PDT
図 3. 癌細胞(RERF-LC-AI)内 Phde a 濃度
癌細胞(RERF-LC-AI)に濃度 0.01 〜 0.1 mg/ml の Na-Phde a を 5 分,30 分,1 時間,2 時間,4
時間,6 時間作用させたときの,1 癌細胞あたりの細胞内 Phde a 濃度曲線。Na-Phde a は濃度
0.04 mg/ml 以上で 4 時間作用させれば,ほぼ細胞内濃度はプラトーに達した。
図 4. ハロゲン光照射による殺細胞効果
0.04 mg/ml Na-Phde a を培養癌細胞(RERF-LC-AI)に対し,5 分,15 分,
30 分,1 時間,4 時間作用させ,300 W ハロゲン光にて PDT を 15 分行い,
72 時間インキュベート後に MTT 試験にて測定した。なお,コントロー
ルは,Na-Phde a 溶液の代わりに PBS を使用した。Na-Phde a は 1 時間以
上作用させ PDT を施行することで,コントロールに対し生存率は 3 %以
下となり腫瘍細胞は有意に死滅した(p < 0.01)。
*:p < 0.01 versus control,NS : not significant
91
井
92
上
秀
範,他
図 5. Na-Phde a の RERF-LC-AI における集積部位
0.04 mg/ml Na-Phde a を腫瘍細胞に 4 時間作用させた位相差および蛍光顕微鏡写真(400 ×)。
レーザー励起可能な新しい光感受性物質の開発
に Na-Phde a を用いて腫瘍細胞への取り込み濃
が近年進められてきた。主なものに,クロリン
度 に 関 す る 検 討 を 行 っ た が , Na-Phde a が
系の ME2906(Npe6 : 明治製菓)3)および ATX-
0.04 mg/ml 以上の濃度で 4 時間以上作用させ
S10(東洋簿荷)4),フタロサイアニン系のアル
れば,腫瘍細胞内濃度は 1.4 pg/cell でプラト
ミニウムフタロサイアニン 5),パーピュリン系
ーに達することが判明した。さらに実際に Na-
6)
などがある。
の SnET2(Purlytin : Miravant)
Phde a を用いて PDT を施行した結果は,Na-
特に今回,我々が注目した Phde a は,体内の
Phde a 濃度が 0.04 mg/ml という非常に低い濃
正常組織からの代謝が非常に早いため副作用が
度で 1 時間作用させ PDT を施行すれば,有意
少ないこと 14),殺細胞効果は静注および局注
に腫瘍細胞が死滅することが判明した。すなわ
にても非常に高いこと 9),可視光照射レベルで
ち今回の実験で作成した腫瘍細胞に対する細胞
高い DNA の切断能力があること 15)などが報告
内 Phde a 濃 度 曲 線 よ り , 腫 瘍 細 胞 は
されてきた。
さらに今回我々のグループは Na-Phde a を調
0.8 pg/cell 以上の細胞内 Phde a 濃度が得られ
れば,PDT を施行することで十分な殺細胞効
整して水溶化としたため容易に扱えるようにす
果を得られることが判明した。この結果から,
ることに成功したため 10),近い将来において
Na-Phde a は腫瘍内直接注射による方法でも
臨床で応用される可能性がある薬物のひとつで
PDT を施行することで十分な殺細胞効果が得
あると考え,Na-Phde a の基本的な特性を検討
られることが予想され,癌の光線力学療法に新
することとした。今回の実験では Na-Phde a を
しい可能性を拓くものと推察された。
1 × 106 個細胞当たりに取り込ませた吸光度の
PDT を行うレーザー光について考察してみ
測定を行ったが,Na-Phde a は腫瘍細胞内によ
ると,Na-Phde a および HpD で PDT を行うこ
く取り込まれることが判明し,局所投与でも十
ととなる波長,すなわち Q 帯の比較では Na-
分に腫瘍細胞内に取り込まれた状態で PDT を
Phde a は HpD よりも長波長側の 667 nm に吸
施行することが可能であることが判明した。次
収帯が認められ,HpD と Q 吸収帯における吸
Na-Pheophorbide a を用いた PDT
光度係数を比較すると約 338 倍の差が認められ
93
結
語
た。このことは,現在保険適用となっているフ
ォトフリン と 630 nm のエキシマダイレーザ
肺癌細胞株(RERF-LC-AI)を用いて,光感
ーの組み合わせよりも,さらに組織透過性の高
受性物質 Na-Phde a に関する in vitro のレベル
いより長波長のレーザーが利用でき,しかも吸
に置いて基礎的検討を行った。Na-Phde a は
光度係数が非常に大きいため,現在使用されて
1.4 pg/cell の濃度があれば十分な殺細胞効果が
いるものよりもより低出力のレーザ−で PDT
得られたため,PDT に使用する光感受性物質
ができると予想できる。このことは現在レーザ
として有用であると推察できた。
ー照射をした際に問題となっている,癌細胞周
囲の正常組織に対する温熱効果の影響も軽減で
謝
辞
き,安全に PDT を行うことが可能であると思
われる。事実,今回の実験ではレーザーではな
今回の実験を施行するにあたって協力してい
く,現在気管支鏡の光源で用いられている
ただいた,筑波大学・物質工学の西川祐氏およ
300 W のハロゲン光を用いて PDT を施行した
び秋山満知子氏,東海大学総合科学技術研究所
が,15 分間の照射でほぼ完全な殺細胞効果が
の宮本由香氏,クロロフィル研究所㈲の仲里正
得られた。このことは,表層性の早期癌なら普
孝氏に感謝します。
通の気管支鏡の光源で十分に PDT が施行でき
ると予想でき,多くの施設で PDT が行うこと
参考文献
が可能である。
実際に局所注射により臨床へ応用する場合,
光感受性物質の使用量は腫瘍量を測定すること
で決定できると考えている。すなわち体表では
直接的に,腔内では CT 画像等から腫瘍量を計
測でき,これに基づいた Na-Phde a の投与量が
決定でき,PDT が施行可能と考えられる。
最近,人口の高齢化や診断技術の進歩により,
手術リスクを伴う症例や手術の適応外の症例が
多く認められてきており,外科治療のみでは対
処しきれない症例も多く認められる。このよう
な状況下で,PDT は化学療法や放射線療法と
ともに今後重要な役割を果たすことが予想され
ている。現在 PDT の適応は表層性の早期癌に
限られているが,今回の実験結果から,たとえ
ば気管閉塞したような進行した癌でも,より組
織透過性の高いレーザー照射を行うことで,十
分に気管の開通が得られることが可能と思われ
る。将来このような進行癌に対しても PDT の
適用が広がり応用されることで末期癌患者の
Quality of life が改善することが予想される。
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Basic Study of Photodynamic Therapy Using New Photosensitizer (Na-pheophorbide a)
for the Human Lung Squamous Carcinoma Cell Line
Hidenori INOUE1), Wataru TAKAHASHI1), Masami KOBAYASHI2), Masako SASAKI3)
Shinpei YOSHII1), Yusuke TADA1) and Masahiko MATSUMOTO1)
1)
Departments of Second Surgery, Faculty of Medicine, University of Yamanashi,
2)
Institute of Materials Science, University of Tsukuba,
3)
Institute of Research and Development, Tokai University
Abstract: Purpose: Na-Pheophorbide a (Na-Phde a) is a newly developed photosensitizer that can be used in the
Photodynamic therapy (PDT) to treat lung cancer, employing local injection method. In this study, we evaluated the
basic characteristics of Na-Phde a and it’s effects on the lung cancer cell in PDT.
Material and Methods: The human lung squamous carcinoma cell line (RERF-LC-AI) was used in all experiments.
After the determination of the absorption curve of Na-Phde a, we measured the intracellular Phde a level in the cultured cell which had been cultured with Na-Phde a content culture solution at various densities and times. Then, we
evaluated the cytotoxic effect of PDT for Na-Phde a loaded lung cancer cells, and also observed the distribution of
Na-Phde a in the tumor cells with the fluorescence microscope.
Result: The intracellular Phde a density reached to the plateau (about 1.4 pg/cell) after 4 hrs. In this situation, the
extra cellular Na-Phde a density was 0.04 mg/ml or more. The survival rate of the cancer cell became 3 % or less by
Na-Phde a-mediated-PDT (p < 0.01). Na-Phde a stains could be observed in the tumor cell within 1 hr.
Conclusion: In our in vitro study, it has been proved that Na Phde a has adequate cytotoxic effects on the human
lung squamous carcinoma cell line.
Key words: Photodynamic therapy, Na-Pheophorbide a, Photosensitizer, laser, human lung squamous cell