実践報告⑧ 「中高校生のコミュニケーション能力 を高めるプログラム」 深川 中高校生のコミュニケーション能力を高めるプログラム ネイパル深川思いの伝わるコミュニケーションキャンプ ■ 事業のねらい 中高生がグループワークなどをとおして、望ましいコミュニケーション能力、特に、自らの考えや意見を適切に伝え る力を育成する。 ■ 実 施 日 平成27年1月31日(土)~2月1日(日) 1泊2日 ■ 参加対象 中学生・高校生 30名 ■ 参加実績 参 加 者:8名 中1=8名 男子=6名、女子=2名 ■ 備 考 活 動 場 所:ネイパル深川 1 事業実施の背景 少子高齢化、核家族化の進行や情報化の進展などによる社会の急激な変化に伴い、子どもたちの生活体験の機会が減少し、 コミュニケーション不足による人間関係の希薄化等の課題が見られる。 また、平成 20 年1月の中教審答申においては、コミュニケーションや感性・情緒、知的活動の基盤である言語能力の重視や 体験活動の充実を図ることにより、子どもたちに、他者、社会、自然・環境とのかかわりの中で、これらと共に生きる自分へ の自信を持たせることが求められている。 このような状況から、多様な集団の中で、互いの考えや気持ちを認め合い、尊重・協力し合うなど主体的によりよい人間関 係を形成しながら、自己を成長させていくコミュニケーション能力の育成が必要となっている。 このような現状を踏まえ、本事業では、グループワーク等を通して、参加者相互の協力の中で達成感や自信、共有した喜び や苦しみを実感するとともに、自らの考えや意見を適切に伝える力をはじめ、社会性や協調性といったコミュニケーション能 力を高めることをねらいとして実施した。 2 プログラムデザイン 7 日時 1/31 (土) 8 9 10 11 12 起 朝 食 清 掃 挑戦か ら得た モノ ■ アクティビティについて 14 15 16 受 開 ドミノ 会 チーム 付 式 ビルディング ★受付時間 13:00~13:30 ★開 会 式 13:30~14:00 2/1 (日) 床 13 17 巨大ドミノ チャレンジ ① 18 夕 食 19 20 21 巨大ドミノ 自由 チャレンジ ② 入浴 22 消 灯 閉 将来に 会 ★解散 12:00(予定) 向けて 式 ■ 意図 ○ 初めて会った参加者でチームを結成し、一つの巨大なドミノをつくるという挑戦を はじめ、1泊2日に渡ってコミュニケーショントレーニングやグループワーク、小 3 活動の様子 講義などの活動を行い、コミュニケーション能力の向上を目指した。 ■ 留意事項 ○ 様々な学校から集まった参加者が、スムーズに協力して活動に取り組めるよう、 徐々に絆が深まるプログラムを組み、支援を行った。 ○ 担当者でリスクマネジメントを共有し、心身の安全管理に努めた。 - 75 - ■ 活動の様子 ■ 当日の様子 1日目午後、仲間を知るとともに、コミュニケーションについて、ドミノ立て、更に は中学校生活で取り入れられる気付きを与えることをねらいとして、「ドミノチームビ ルディング」が行われた。聞き方、話し方のトレーニングや、コミュニケーションにつ いての小講義を受けた後、チームで協力しながら課題解決ゲームを進め、結束を高めた。 その後、「巨大ドミノチャレンジ」が行われた。何度も倒してしまい、あきらめそう になるメンバーを励まし、協力しながら巨大な作品づくりを進め、3時間後、目標の 8,000個ものドミノを立てることに成功した。 2日目午前、「巨大ドミノチャレンジ」をふりかえる「挑戦から得たモノ」と、それ ぞれの今後に展望を持つ「将来に向けて」にて、ブレインストーミングなどによるグル ープワークが行われた。巨大ドミノへの挑戦についてふりかえり、学んだことについて まとめた後、今回の学びをどのように生かしていくか考えを深め、意見交換をした。 ■ 4 事業評価 参加者の声 (※満足度については、左下グラフのとおり。 ) ○ いろいろな人とコミュニケーションをとり、巨大ドミノをつなぐことができた。 ○ ドミノ立てを周りの人と交流しながら、とても楽しく行うことができた。 ○ 少しかもしれないけれど、コミュニケーションができるようになったと思う。 ○ 自分の意見を積極的に言えるいい機会だった。 ○ 現状の自分で満足していないことに対して、質問してもらいとても役に立った。 ■ 評価方法・重点 事業に取り組む参加者の様子とアンケートによる評価(記述を含む)により、コミ ュニケーション能力を高める意欲が培われ、能力の向上を図られたか評価する。 参加者の変容【IKR調査結果】 ■ 「積極性」 「まじめ勤勉」が 0.688、 「視野・判断」が 0.625、 「適応行動」 「身体的耐性」が 0.563 ポイントの 伸びを示している。 ■ 結果の分析・考察 仲間と話し合い、積極的に活動に加わり、それぞれの役割を果たすことが 求められる、グループワークやドミノ立て等の活動を通し、 「積極性」 「まじめ 勤勉」 「適応行動」に向上が見られた。 また、自分たちで活動を進めたことから「視野・判断」が、地道な努力が要求 されるドミノ立て等の活動により「身体的耐性」が向上したと考えられる。 5 まとめ ■ 成果 ○ ドミノ立てをメインに据え、コミュニケーションについて理解を深め、能力を向 上させるプログラムが提供でき、子どもたちに満足していただくことができた。 ○ コミュニケーションについて理解を深め、チームの結束を高めた上でドミノ立て に挑戦させ、更に、活動を振り返らせ、学びをどのように生かすかグループワー クで確認するという流れは、コミュニケーション能力向上への意欲を高めた。 ■ 課題・今後の方向性 ○ 北空知及び滝川市の全中学生、高校生にチラシを配布したが、空知からは1名も 参加申込がなかった。一方で、旭川市在住の過去事業参加者へダイレクトメール を発送した上、申込者に対して友人を誘ってほしい旨伝えたところ、10 名の参 加申込をいただくことができた。多くの参加者が得られる魅力的なプログラムを 組むことに加え、効果的な広報を展開できるよう工夫が必要である。 中高校生のコミュニケーション能力を高めるプログラム - 76 - 足寄 中高校生のコミュニケーション能力を高めるプログラム 出 会い・ 発見 ■ ネイ パル キャン プ 事業のねらい コミュニケーション能力を高める活動をとおして、人と関わる楽しさを知るとともに、より良い人間関係づくりを促進 するためのスキルを学び、他者の多様な面を尊重し認め合う態度を育む。 ■ ■ ■ ■ 1 実 施 日 平成 26 年 12 月6日(土)~7日(日) 1泊2日 参加対象 中学生 20 名 参加実績 参 加 者:12 名 幕別町1名、音更町1名、足寄町1名 帯広市9名 運営協力者:高校生1名、社会人2名 備 考 活 動 場 所:北海道立青少年体験活動支援施設ネイパル足寄 事業実施の背景 少子高齢化、過疎化や核家族化の進行、価値観やライフスタイルの多様化などの社会の急激な変化に伴い、子どもたちの生 活体験の機会が減少したことにより、社会性の未発達、コミュニケーション不足による人間関係の希薄化等の課題が見られる。 内閣府「小学生・中学生の意識に関する調査報告書(平成 26 年7月) 」では、友達や仲間のことで悩みや心配事があると答 えた中学生の割合は、平成 26 年2月調査で 15.1%、平成 18 年3月調査で 20.0%、平成7年 11 月調査で 8.1%との調査結果 が出ている。今回(平成 26 年2月)の調査と過去2回の調査を比較すると、平成 18 年3月調査からは減少しているが、平成 7年 11 月調査よりも高い割合のままであることからも、良好な人間関係の形成やコミュニケーションに課題があることが伺え る。また、インターネットを通じたコミュニケーションが子どもたちに普及している一方、外での遊びや自然体験等の機会の 減少により、身体性や身体感覚が乏しくなっていることが、他者との関係づくりに負の影響を及ぼしているとの指摘があるこ とからも、多種多様な人々との交流や体験的な活動の場及び機会の充実・確保が課題となっている。 2 プログラムデザイン 日 時 ネ 1 イ 日 パ 目 ル 泊 2 日 目 ■ 6:00 7:00 8:00 10:00 11:00 12:00 10:00集合 受 13:00 14:00 15:00 起 入 朝 後 後 片 片 付 床 浴 食 アクティビティについて 昼入 16:00 17:00 伝える・聞く☆ 開会式 コミュニケーションゲーム 協力する☆ オリエンテーション ~初めて会う仲間と 班での話し合い アイスブレイク たくさん交流しよ テント設営 付 食室 う!!~ 12/6 (土) 12/7 (日) 9:00 Let'sクッキング☆ 焼き芋&石窯での調理 け 付 け ふ り か え り 閉 14:00解散 18:00 19:00 20:00 21:00 活 プナ星 目指せ!優勝☆ ロ 空 ニュースポーツ大会 動 グイ観 ・キンボール 準 ラ 察 ・ドッヂビー 食 備 ムト☆ 夕 22:00 23:00 し語 ら ゃ い 就 べタ り イ ム 場☆ 寝 陸別方面の参加者の帰りについては、希望により最寄りのバス停留所まで、 所用車で送迎致します。(降車地点は参加案内にて連絡) 会 荒天時の場合は、プログラムを変更する場合がありますので、ご了承ください。 式 ■ 意図 ○ プログラムの内容や実施順序を工夫することで、他者との人間関係が徐々に深化 するようにした。 ○ ペア・グループでの活動を多く取り入れた体験活動をとおして、コミュニケーシ ョンの必要性や他者の良さ等への気づきが促進されるようにした。 ○ 身体的・心理的負荷の高い活動を敢えて取り入れることで、協力すること必要性 や仲間の大切さに気づけるようにした。 ■ 留意事項 ○ 冬季野外テント泊の実施にあたり、事前研修等によりリスクの洗い出しを行い、 手立てを講じることで防寒対策・安全対策を徹底した。 ○ 参加者の主体的な行動を促すために、直接的な指導を最低限にとどめるようにし た。また、そのために指導者・支援者の事前打合せを入念に行った。 - 77 - 3 活動の様子 4 事業評価 ■ 当日の様子 1日目は、最初にコミュニケーションゲームから活動開始。人と関わる楽しさを知 るとともに、コミュニケーションを円滑にするための要素の一つである「傾聴」につ いて学んだ後、課題解決ゲームのパイプラインを実施。グループごとに目標タイムを 設定し、作戦会議をしてから実技に入った。見事目標を達成できた時には、ガッツポ ーズやハイタッチ、大きな歓声が上がるなど喜びを共有する様子が見られた。夕方か らは、テント設営後に、2日間の班の目標やルールを決めた。夜は、ニュースポーツ 大会であまり馴染みのないキンボールとドッチビーの2種目に挑戦。初めは、用具の 使い方に戸惑っている様子だったが、やがてコツをつかみ、チームワークを発揮した 好プレイが見られるようになった。ニュースポーツ大会後の「星空観察」ではプラネ タリウムで冬の星座の概要について学んでから、冬のダイヤモンドや月の観察を楽し んだ。また、ナイトプログラムでは、ブラインドウォークに挑戦。目隠しで3人4脚 を行い、仲間との信頼を深めた。1日目の最後プログラム、 「語らいタイム☆しゃべり 場」では、カードに書かれているテーマに沿って、一人一人が家族や友人、将来の夢 などをテーマに日頃の不安や悩み、想いを本音で語り合うひとときを過ごした。その 後、気温-16℃の中、野外テント泊を行い、1日目を終了した。 2日目は、石窯ピザ、玉ねぎの丸ごと煮込み、炭火あぶり焼きソーセージの調理を 行った。この頃には、各グループとも仲間とのより良い人間関係が作られ、協力して 調理に取り組んだり楽しそうに話したりする様子が随所に見られた。 ■ 参加者の声 ○ 自分から話しかけてコミュニケーションを取るのはドキドキした。その中で、人 と関わる楽しさや協力して物事に取り組む大切さを学んだ。 ○ 野外テント泊はびっくりするほど寒かった。仲間と励まし合って何とか乗り越え ることができた。 ■ 評価方法・重点 本事業は、コミュニケーション能力の向上を目的として実 施した。コミュニケーション能力には、さまざまな能力が含 まれているが、特に「適応行動」 「思いやり」 「自己規制」 「交 友・協調」に重点をおいた。 ■ 参加者の変容【IKR調査結果】 事前の平均が 4.8 ポイント、事後の平均が 5.1 ポイントと なった。重点項目については、 「適応行動」0.3、 「思いやり」 0.4、 「自己規制」0.4、 「交友・協調」0.2 の向上が見られた。 事業後の変化が大きかったのは、 「視野・判断」で 0.7 向上、 「日常的行動」で 0.5 向上だった。 ■ 結果の分析・考察 重点項目に関わる質問項目ごとの結果を見ると、「人の話をきちん と聞くことができる(適応行動) 」が 0.4 ポイント向上、 「人の心の痛 みがわかる(思いやり) 」が 0.5 ポイント向上、 「自分勝手なわがまま を言わない(自己規制) 」が 0.5 ポイント向上した。傾聴の必要性を 認識し、相手の気持ちを考えようとすることや自分自身の行動を見つ め直そうとすることへの意識が高まったと考えられ、一定の効果が伺 える。また、 「身体的耐性」の事後評価が事前調査から 0.2 ポイント 下降した。これは質問項目の「暑さや寒さに負けない」が 0.4 ポイン ト下降したためである。-10℃を下回る寒さの中をテントで一晩を過 ごすという体験は、多くの参加者にとって初めての体験であり、予想 を大きく上回る寒さだったはずである。その寒さを体験することで、 自己の評価規準が変容し、事前より低い評価になったと考えられる。 非依存 野外生活・技能 5.5 5.3 身体的耐性 4.9 4.7 まとめ 明朗性 4.5 4.3 日常的行動 4.1 交友・協調 3.9 3.7 3.5 思いやり 現実肯定 まじめ勤勉 視野・判断 自然への関心 5 積極性 5.1 適応行動 自己規制 ■ ○ 系列4 事前 系列5 事後 成果 ○ プログラムの進行に合わせて「出会う→知る→興味を持つ→信頼する」という段階を経ながら、より良い人間関係を構築 していくことができた。 ○ 事業のはじめにコミュニケーショントレーニングを実施したことが、以降の活動で他者を尊重しようと意識する行動につ ながり、コミュニケーションの必要性や他者の良さ等への気づきが促進された。 ○ 他者への励ましや参加者同士の助け合いが活動の中で行われることを期待して「冬期野外テント泊」を実施した。その結 果、運営者のねらいどおりに励まし・助け合いの場面が数多く見られ、他者を思いやる気持ちを育成できた。 ■ 課題・今後の方向性 ○ 今回の事業では参加者が定員に達しなかったが、直前のキャンセルを含めると定員に近い申込があり、ニーズがあること がわかった。次年度以降も事業を継続する中で、より良い事業運営、プログラム開発を目指したい。 ○ 冬期間の野外テント泊は、ネイパル足寄では数年ぶりの開催だったが、とても教育的効果の高い活動であることがわかっ た。今回の実施でノウハウを得られたので、今後も他の事業を含め積極的に実施していきたい。 中高校生のコミュニケーション能力を高めるプログラム - 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