Vol.51-55 - ebaron.net

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インドネシア雑感記 : 希多 いくと
Vol.51
2007.7.6(毎週金曜夜配信)
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インドネシアの自然、土地、食べ物、生活、社会などを、エッセイ風の雑感記
として、メルマガにて紹介します。当国の理解に役立てれば幸いです。
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皆さん、こんばんは。
今日は《食べ物編 Food13》
、果物にはおいしい産地があるお話です。
■51 果物には厳然たる産地がある…
この広∼いインドネシアに産する種々の果物は、もちろんどこでも同じ味で
はありません。
それぞれの果物には厳然たるおいしい産地というものがあることを、インド
ネシアに暮らした方でも余り知らないのではないでしょうか。
以下に、ぼくの知っている範囲でこの産地に触れてみたいと思います。
まず、おいしさとまずさが一番はっきりしているのがサラッ Salak です。
大きさと形はイチジクやビワに似ていますが、その外観は如何にもグロテス
クな印象です。まるで蛇のうろこのようですね。
こげ茶で鱗のような硬く薄い皮を剥くと、真っ白い果実が現れます。この果
実は2つか3つほどに分かれており、食べると中にはビワのような大きい種が
入っています。
その味はというと、産地により本当に美味しいものからとても食べれない代
物まであるのです。
おいしいのは何といっても、ジョグジャカルタ産のサラッ・ポンド Salak
pondo。これは上品な弱い酸味と甘さがあります。もう美味しくて、次から次
へと10個くらい食べてしまいます。
ポンドに比べると、他の産地のものは一般に渋みが加わり、渋いほどまずく
なります。バリ産のはやや渋いのですが、食べれないほどではありません。
しかし、東ジャワのスメル山南方の町で買ったサラッは、とても食べれたも
のじゃありませんでした。その渋さたるや渋柿の如し。
このようにサラッの味は両極端ですが、最近では流通がよくなり大都市では
ポンドが手に入るようです。
次にランブータン Rambutan 。ふつう甘味と酸味が同居し、さっぱりした
おいしさの果物です。これは一般に赤いほど熟しています。
ところが、西ジャワに産するものは熟しても緑ないし淡いピンク色ですが、
これがめっぽう甘くておいしいのです。
またこの果物は、中の種の薄皮が果実に付くか付かないかでおいしさの基準
が分かれます。何故かというと、この薄皮はごわごわして渋くまずいのです。
ですから、種の薄皮が剥げない方がおいしいということになります。
西ジャワ産のものを除いて、赤いランブータンは似たり寄ったりですが、な
るべく薄皮が果肉に付かない(これは試食しないとわかりませんが)ものを選
びたいですね。
ジャンブーJambu はグァバのことで、この国ではいろいろな種類がありま
す。
果肉はちょっとナシに似たような(半透明感はない)食感で、割と淡白です。
ふつうは硬式野球のボールからソフトボール大の大きさで、緑の厚い皮に覆わ
れ、中の種は大きいものが多い。
この種は3∼4mm大の小さな種の集合体で、間違って噛もうものなら歯が
欠けそうなほど硬いのです。
そんなジャンブーですが、西チモール(クーパンの北東、車で3∼4時間の
ケファメナヌー近郊が産地)のものはすごくうまい。
テニスボールを一回り小さくした位の大きさで、色は薄緑ないし薄いピンク
色。中の種はと言うと、普通はびっしりある堅い種が数えられるほど少ない。
種の間も果実同様とても甘く軟らかくておいしく、かつ皮も薄くまるごと全
部食べられると言う代物なのです。とにかく美味しいジャンブーで、都会のス
−パーなどではお目にかかれません。
ジャンブーには他の種類もあり、ジャンブー・アイル Jambu air (Water
apple) という種類はやや透明感のある口の開いたビワ状の果物です。
色は白かピンクを呈し、皮は薄いので良く洗って皮ごと食べます。水っぽく
てさっぱりした味ですが、中心部はモサモサして美味しくないので残すように
しましょう。
さて、マンゴーManga はどうでしょう。これは、東ジャワ産が種類も多く、
かつ甘くて美味しいらしいのです。
バンドンから東ジャワに来ているローカルスタッフが、帰省みやげにマラン
Malang のマンゴーをどっさり抱えて帰って行きます。バンドンにはそれほど
美味しいマンゴーがないそうです。
ぼくはどこでも結構うまいと思っていますが、現地の人の舌のほうが微妙な
味を見分けられるのでしょうか。
マランで美味しいといえば、バナナ Pisang もそうですね。
Pisang Raja Molo(モロ王バナナ?)と言うのですが、全体にやや太目で、
果肉が独特のオレンジ色!これは甘くてほんとに美味しいバナナです。
ついでに言うと、果物ではありませんがマランはテンペも美味しいことで知
られています。高原都市ですから、水がおいしいのでしょうか。テンペも軟ら
かく、味わいのあるおいしさなのです。
また、人から聞いた話ですが、パイナップル Nanas は何といっても西スマ
トラ、メダン近郊のものだそうです。
ぼくも、いろいろな所で結構おいしいパイナップルを食べていますが、メダ
ンの方には行っていないので何とも言えません。そちらへ行ったことのある人
は、口をそろえて「甘くて最高だ」と言うので本当なのでしょう。
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【後記】
本文は以前に書いたものですが、読み返して今何が食べたいかと言うと、マ
ランの美味しいオレンジ色のバナナ、そして果物ではないテンペですね。
これらはスラバヤに帰れば近いので買いに行くことができますが、とても買
いに行けないものもとても懐かしいのです。
それは何かと言うと、本文では述べていませんが、カリマンタンのジャング
ルで出会った小さな山ドリアン。果肉が見事な山吹色(濃黄色)のドリアン、
これに尽きます。
この最初に食べたドリアンは、筆舌にしがたいほど美味しかった。こんなド
リアンに皆さんも出会うことを祈っています。
そのドリアンですが、どこに行ってもピンからキリまでその味は多彩です。
どこの産地が美味しいとは言えません。以前書いたように、とにかく白より黄
色いものを求めて美味しいドリアンを探し当ててください。
では、また来週をお楽しみに。
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インドネシア雑感記 : 希多 いくと
Vol.52
2007.7.13(毎週金曜夜配信)
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皆さん、こんばんは。
今日は《食べ物編 Food14》
、果物の旬と旅行の好機について考えます。
■ 52 トロピカルフルーツと現地旅行の好機について
インドネシアで1年中あるような果物は、日本でもお馴染みであまり珍しく
ありません。特にバナナ・パイナップルなどは、食事のデザートとしては南国
に来ているとは感じにくいので敬遠しがちです。
またスイカですが果物か野菜かという問題はさておき、厳密には時期がある
のでしょうがほぼ一年中ある感じです。最初にこの国を訪れた時は、濃緑色の
縞模様のない外観、そしてあまり甘いとは言えないスイカが優勢でした。
現在ではこれはほとんど姿を消し、日本と同様に縞々模様の甘いスイカが多
くなりました。もちろん果実の色も赤がほとんどですが黄色もあります。
1年中ある果物でもパパイヤ Papaya だけは別格です。初めてインドネシア
に来てから、朝食にパパイヤがないと1日が始まりません。
ちょっと細めのラグビーボールくらいのどでかいパパイヤ、果肉はとても鮮
やかなオレンジ色で、小さく黄色っぽいパパイヤとはまるで味が違います。
ふつう大きなサイコロ大に切り、ジュルック・ニピス Jeruk nipis というこ
れも1年中あるレモンを絞って食べる。これがとっても美味!
このジュルック・ニピス。レモンと言いましたが、徳島の「すだち」にそっ
くりです。徳島の旅館にその時期に泊まると、食事時にはすだちの半切りない
し四つ切が魚、冷奴などすべての皿に付いてきます。
ジュルック・ニピスもすだち同様いろんな料理にかけることができます。そ
の代表がソト・アヤム、そしてこのオレンジ色のパパイヤなのです。
その他ジュルック・ニピスのジュースもおいしいですね。カラマンシーもお
いしいですが、ちょっと風味が違います。
さらに言うとジュルック・ニピスは料理の香辛料の役目もするし、絞り汁に
甘いケチャップマニス Kecap manis を混ぜると、咳止めに良いという薬効も
あります。現地でかぜ気味となり、咳が出る時に重宝します。
これらの1年中ある果物に対し、出まわる期間が短いのがマンゴー。
雨季の初めにやっと出てきたなと思ったら、1ヶ月間もあるかないか、それ
こそ「あっという間」に果物屋の軒先からなくなります。
これほど早いのも珍しい。果物の女王と言われるマンゴスティンも似たよう
なものです。
(ジャカルタやバリなど観光地では各地からの流通により、もう少
し長い期間出回ると思います)
それにひきかえ、王様であるドリアンは専門店(屋台∼路店)に4ヶ月ほど
鎮座しています。
1ヶ月でなくなってしまうと次が待ち遠しくてなりませんが、
4ヶ月もあれば次の8ヶ月はゆっくり待てるというものです。
この辺で、皆さんのたぶん気になるところの「インドネシア旅行はいつが良
いか」について。
ふつうは7∼8 月に行く方が多いでしょう。子供の夏休みに合わせて海外旅
行、学生の方も長期の休みということで、一番訪れやすい時期です。しかし、
多くの人が移動する夏場はチケットが取りづらいし費用も非常に割高です。
そこで費用の面から、閑散期に格安チケットを手配し優雅に旅行する方もい
るでしょう。そのときに現地の果物状況を一つの選択肢にしませんか。
さて、日本の夏はこちらが乾季の真っ只中、果物の種類が非常に少ない時期
に当たります。しかし、天候が安定しており、飛行機が大きくゆれる心配も少
ないというメリットがあります。
逆に冬休みは雨季の初めに当たり、
果物が豊富に出回りだす時期になります。
その代わり飛行機は、特に国内便が雷雲などにより大きく揺れることが多いで
すね。
東ジャワに3年ほど滞在していた時、日本人学校は春休みが一番長い休みで
した。春休みの1ヶ月を休暇に当て、日本に帰国してから母、伯母と叔父夫婦
を連れてバリに旅行したことがあります。
その時は好みの分れるドリアンにもありつけたし、他のトロピカルフルーツ
も豊富にありました。
かたや夏休みから秋にかけての旅行は、ホテルなどでも1年中あるパパイ
ヤ・パイナップル・バナナ・スイカなどがメインの果物になります。
また、5月の連休あたりはちょうど果物が切れたばかりの時期です。それで
も、バリ辺りでは5月いっぱい他島から来る果物があるかもしれません。
また、日本のジメジメした梅雨を抜け出し、6月にバリに行く手もあります
が注意が必要です。というのはインドネシアの学校は 7 月始まりで、6月20
日頃から1ヶ月間ほど学生が年度末休暇に入ります。
ちょうど日本の春休みみたいなもので、この時期には裕福な人たち(主に華
僑が多い)がこぞってバリに旅行したりします。それで、ホテルや国内航空便
が結構混雑しているのです。
そこでぼくなりの結論。旅行の楽しみの一つは南国のおいしい果物を味わう
ことにあり、インドネシア旅行の最適期は「冬季」になります。
細かく見ると、
冬休みから春休みにかけての12月中旬∼4月上旬位の時期、
これがお勧めですね。
しかし、この冬場は正直言って衣類がかさばり、また短期間に真夏と冬が入
れ替わることになり多少身体に負担がかかります。
それでも、海外旅行で始めて目にする素敵な風景、そして体験する異質の文
化。その中に南国の彩を添えるフルーツがありそれを味わえれば、より潤いの
ある思い出の一つとして永く心に残ることになると思います。
(注:果物の最盛期は雨季の始まりにより1‐2ヶ月ずれることがあります)
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【後記】
11日のニュースで、熱帯果実の輸入関税が廃止になり、今年はトロピカル
フルーツが大量に輸入されるかもしれない、と報じていました。特に、今まで
日本には馴染みのなかったドリアンが入ってくる可能性が高いとか。
近年、ドリアンは3千円ほどでタイ物が出回っていましたが、今年はさらに
安く消費者の手に届くことを期待しましょう。
それでもインドネシアものは季節はずれですから、残念ながら夏場に輸入さ
れることはありません。
旬に輸入されるとすると、日本の正月の食卓にドリアンが並ぶ可能性があり
ますが、おせち料理にはちょっと合わないかもしれませんね。
正月の晴れ着などに匂いが付いたら大変です。どこに出かけても周りの人か
ら白い目で見られることになるでしょう。
では、また来週をお楽しみに。
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インドネシア雑感記 : 希多 いくと
Vol.53
2007.7.20(毎週金曜夜配信)
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皆さん、こんばんは。
今日は《土地編 Land13》
、ジョグジャにアクセスした時のお話です。
■53 ジョグジャへの裏街道を車がひた走る
97年8月25日(金)
、仕事を15時に終えトゥルンアグン Tulungagung
からソロ Surakarta に向かいました。スラバヤ Surabaya から来ていた家族
と共に、最終目的地はジョグジャ Yogyakarta です。
車の混雑や距離を考え、リマン山 Mt. Liman(2,563m)/ラウー山 Mt.
Lawu(3,265m)の南麓を通過するルート。これは峠越えや山裾を走る起伏の多
い路線で、案の定のろのろトラックには殆ど会いませんでした。
車外の風景が目を楽しませてくれる面白いルートで、山の形状がさまざま。
次から次へと珍奇な山が現われ、飽きることがありません。
リマン山は他にウィリス山などピークが複数ある複合火山で、粘着力のある
石英安山岩からできているのか、実に奇怪な山容を呈しています。
また、進行方向の左側に現われる山々も、この辺りの地質が桂林の如く石灰
岩からできており、これもまた面白い奇観を呈します。
道路を横切る河川は、リマン山の南東側と南∼南西側ではその水量がまるで
違うことに気付きました。
トレンガレック Trenggalek より西方の河川は、この乾季の影響を受けてい
るのか、水が非常に少ないのです。今年の干ばつは異常らしく、何日か前の新
聞でも東部∼中部ジャワ各地での干ばつ被害を報じていました。
東∼南東部の山間部の水田は灌漑による水が豊富で、つい最近田植えが終わ
ったばかり。片や南西側では水が殆どなく、広い低地部などカラカラ。リマン
山でなく、南西に連なる低い山地が源流のようです。
今年の雨は極端に少なく空気が乾いており、風邪を引くまでには至りません
が、乾いた咳が止まらない状況が続きます。
全世界的な異常気象の一環でしょうか。7月末のヨーロッパ(特にドイツ)
では、大雨による堤防決壊、大洪水が相次いでいました。
トレンガレックの西方にはジャワ東部の2大河川、ブランタス Brantas 水系
とソロ Solo 水系を画する峠があります。
この峠ですが標高は500m程度、その東側はハチミツ Madu の産地なので
しょう。粗末な屋台で4合ビンほどの空瓶に詰めたマドゥが売られています。
ところでブランタス川はスラバヤ南方の都市、マラン北西方のバトゥ付近を
源流とし、南から西へさらに北へ、そして東側に流れてスラバヤでマドゥラ海
峡に注ぎます。いわば「の」文字を横にしたような本流の河道を呈しています。
またソロ川はいわずと知れたブンガワン・ソロ。ブンガワン Bengawan は
ジャワ語で「大河」を意味します。
ラウー山南方の山地を源とし、ラウー山の西側を大きく取り巻くようにソロ
付近を北流します。さらには大きく蛇行しながら低地を滔々と北東方に流れ、
ついにはスラバヤの北西30kmほどにある河口でジャワ海に注ぎます。
さて、ポノロゴ Ponorogo を過ぎ、車がラウー山の南麓部に入ると、この道
路が実に面白い。
ガリーで刻まれた緩やかな山裾をほぼ一直線に横断しており、
勢い乱高下の激しい道となっています。
まるでジェットコースターの緩傾斜版。
それでも重力の変化が身体に伝わり、
これには子供たちも大喜びでした。
「道はまっすぐに限る」とでも言うかのように、上り下りの起伏の激しい一直
線の道路。でも、少し大きな川では橋の建設が大変なのでしょう。時折等高線
に沿った湾曲な道になりますが、すぐまっすぐに戻るのです。
遊園地気分も抜け、その内に夕陽が西側に大きく傾きます。大きな落日が周
りを赤く染めたかと思うと、車外の風景は夕闇の中に徐々に消えて行く。
ウォノギリ Wonogiri を過ぎたのは18時頃。ここのダム(ソロ川水系で最
大の湛水面積がある)の見学は次回に譲りましょう。
ソロでは市街地を通らず近道を走ったので、途中なかなか手頃な食堂が見つ
かりません。だんだんとお腹が空いてきます。
やっとソロとジョグジャの中間ほどにあるクラテン Klaten でパダン料理屋
を見つけました。
そこで19時頃、あまりおいしいとは言えない遅い夕飯を取り、やっとジョ
グジャのホテルに着いたのは20時半過ぎ。出発地のトゥルンアグンからは5
時間強の楽しい道程でした。
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【後記】
祝日の16日、また大きな地震が新潟・柏崎を中心に発生。その前日には、
7月における最大の台風が沖縄から西日本に多大な被害をもたらしました。被
災者の方々に心からお見舞いを申し上げます。
インドネシアも日本同様地震の多い国です。先のスマトラ大地震、ジョグジ
ャカルタの地震ともに被災地の早い復興を祈っています。
どちらの国も地震が頻発するのは、ともに地勢的に共通しており、大陸の一
部ではなく島国であることの宿命です。
インドネシアのせめてもの救いは、台風がないことでしょうか。
では、また来週をお楽しみに。
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インドネシア雑感記 : 希多 いくと
Vol.54
2007.7.27(毎週金曜夜配信)
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今日は《土地編 Land14》
、古都ジョグジャカルタのお話です。
■ 54 芸術と古都、混沌の街ジョグジャカルタ
ジョグジャカルタ Yogyakarta は単に「ジョグジャ Yogya」と呼ばれ、多く
の人々に親しまれています。ジャワ島のほぼ中央部に位置し、インドネシアを
代表する古都になります。
その歴史は8世紀の王国から発し、直系では16世紀に興った新マタラム王
国が 1755 年に分裂した際、皇太子がこの地に王宮を定めたのが始まりです。
その後、1945 年の独立で共和国の一部となり、ジョグジャカルタ特別州に
指定。その後のオランダとの独立戦争の間には一時首都となっています。
王宮クラトンはこの街の真ん中に位置し、メラピ山を仰ぐ神殿として建立さ
れました。そのスルタン Sultan と呼ばれる王様は神の使いとして、今でも民
衆から崇められているのです。
さらに、インドネシアの伝統的なガムラン音楽や宮廷舞踏、ワヤン影絵芝居
など、ジャワの伝統文化がここには息づいています。
まことに歴史の重さを充分に感じさせる街で、インドネシアにおける伝統・
芸術の都。ここが日本の古都京都に喩えられる所以です。
まずは、伝統のワヤン・オラン Wayang Orang という舞踏劇から。ワヤン
は影絵芝居ですが、これを人 Orang が演じるというものですね。
劇場やホテルなどでは、このワヤン・オランを観劇しながら、もしくは上演
後に食事ができるようになっています。
ジャワの古い伝統を引き継ぎ、人の舞踏劇が上演されているのは(バリ独自
の舞踏を除き)ジョグジャしかありません。
ジョグジャの最大の魅力は、世界遺産ボロブドゥールやプランバナン等の遺
跡が近郊に控えていることですね。これらの遺跡は圧倒的な迫力とともに、私
たちを悠久の時にタイムスリップさせてくれます。
これだけの観光地はバリを除いて他にありません。いや、バリを凌いでいる
と言ってもいいでしょう。
ジョグジャカルタは外国人、特にヨーロッパの人々が多く訪れています。
ボルブドゥールでは多くの国に対応する通訳が待機しています。現に一度間
近で聞こえた通訳の会話は、どことも想像できないような言語でした。それほ
どあらゆるヨーロッパ人が訪れているのです。
彼らは一流ホテルもさることながら、一般には小さな安宿を選びます。そし
て、市街の屋台で買い物を楽しんでいるようです。
これは時代錯誤を覚悟で言うと、いわゆるヒッピー風というのがぴったりし
ますね。そういうぼくも学生時代はヒッピー風に髪を伸ばし(初夏に床屋で角
刈にし、一年中刈らない)
、ヒッチハイクで旅をしたものです。
ヒッチハイク・角刈なんて今では死語ですね・・・。
何がなんだかわからなくなりかけていますが、そう、ヨーロッパ人は何とな
く古めかしいのが好きらしい、ということなのです。
さらにジョグジャの魅力は、バティック・絵画・銀細工などの伝統工芸品が
街に溢れていることです。バリもそうですが、ヨーロッパあたりの画家が定住
するなど、まさに芸術の都と言われる所以ですね。
そしてそれら土産品はバリの観光立国並みの途方もない値段に比べると、格
段に安いのです。
と、かなりいいことばかりのジョグジャにはバリからツアー観光客が激増す
ること間違いなしなのですが・・・。
ぼくのちょっと気になることがあります。まずここの料理はとにかく甘い。
宮廷料理がもともと甘いのか、昔の王様が甘党だったのか、その辺りのことは
全くわかりません。
インドネシアの辛い料理が目当ての人は、ジョグジャでは料理は甘いものだ
と頭に隅に置いといてください。まあサンバルをたくさん入れれば問題ないで
しょう。
以前スラバヤ長期滞在中に家族で2度ほどジョグジャを訪れており、期間は
2∼3 日ですが確かにおっとりしたいい街だとの印象がありました。
しかし、今(2001 年)仕事で3ヶ月ほど滞在してみると、街中どことなく
汚いことに気がつきます。方々でなんとなく・・・、という感じなのです。
これは、街のメインストリート、マリオボロ通りというこの街を代表する通
りで強く感じます。
そこはデパートなどがひしめく商店街なのですが、広い歩道のほとんどを占
領してみすぼらしい屋台が軒を並べています。
ですから、ここの歩道は土日など人であふれる時には狭い通路と化し、人が
すれ違うのにも苦労する有様なのです。
すぐ近くにボロブドゥールという世界遺産を控え、観光客が非常に多いこの
街は、他の都市に比べて税収入が多いのではないでしょうか。
ぼくはそういうお金を、ぜひ街の整備資金に使ってほしいと思うのですが…。
「それは違うよ」という声も聞こえてきそうです。というのは逆に、このゴチ
ャゴチャした雰囲気が好きな観光客も多いのかもしれません。
ごく庶民的なイメージと歴史が入り混じる渾沌とした印象と風景。それらが
奇妙に融合した街の雰囲気があることも事実です。
一度ジョグジャを訪れると必ず行くマリオボロなので、どちらがいいかは皆
さんの判断にお任せすることにしましょう。
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【後記】
先日パラパラめくった「地名の世界地図」
(21 世紀研究会編、文春新書)に
地名の由来がいろいろと書かれています。
ご存知の方もおられると思いますが、
スペルのある詳しいものは初めてなので紹介します。
「インドネシア共和国:
自称はヌサンタラ Nusantara(ジャワ語で島々の帝国、列島)
。インドネシア
は、ドイツの民族学者アドルフ・パスティアンによって、1883 年以降地理概
念の用語として定着した。ギリシア語の Indos「インド」と nesos「島々」か
らなる。−後略−」
「ジャカルタ Djakarta:
1526 年イスラム教徒がこの地を占領した時、サンスクリット語でジャイア・
ケルタ Jaiakerta「勝利の地」と名付けた。−中略―
1942 年、日本軍が占領して「ジャカルタ」とした。江戸時代には、ここから
ジャガタライモ(ジャガイモ)が日本にもたらされた。
」
以上のように、地名には昔から培われた歴史というものが脈々とあるのです
が、今日本について考えてみると、近年の市町村合併に伴い古い地名がどんど
ん消えています。
新しい地名には歴史とはまったく無縁のものもあり、首を傾げています。郷
土の地名を大事に扱わない風潮は、それこそ法律で規制しない限り止まらない
かもしれません。
何か大事なものをごみ箱にでも捨てるような浅はかな行為は、あとでとんで
もないしっぺ返しがあるような気がしてならないのですが・・・。
では、また来週をお楽しみに。
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Vol.55
2007.8.3(毎週金曜夜配信)
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皆さん、こんばんは。
今日は《食べ物編 Food15》
、南国のおいしい飲み物のお話です。
■55 南国の飲み物、ココナツは天然のポカリだ
「南国で一番美味しい飲み物は?」と聞かれたら・・・。
即座にぼくはココナツジュース(クラパ・ムダ Kelapa muda)と答えます。
若い椰子の実の中に溜まっている果水は、南国一の自然飲料ですね。
早速ですが、この椰子の果水は「天然のポカリスエット」とぼくは固く信じ
ています。それは何故か・・・。
まずこの椰子水を飲むと、暑い国でも半日はまったく喉が乾きません。また
飲んだ直後でも水のような満腹感がまるでないのです。
がぼがぼ飲んでも胃の中でチャポチャポしない、ということは、すぐに身体
の中に吸収されているということに他なりません。
これは、まさしく天然のポカリではないでしょうか。
また、ウイスキーをこの椰子水で割ると大変だと聞いたことがあります。お
そらくアルコールがすぐ身体に吸収されるから危険なのでしょう。
飲み過ぎるとおそらく急性アルコール中毒症状になるに違いありません。こ
れも天然ポカリを暗示するには充分です。
ところで、
ドリアンも酒との相性が悪いとよく言われています。
というのは、
ドリアンは食後に身体の中でそれ自体がアルコール発酵するので、同時に酒を
飲むと危険のようです。
現にドリアンを食べた現地人が酒を飲んで死んでしまった、という話を聞き
ますが、酒はご法度ですからアルコールに弱いことも確かでしょう。ビールを
飲んだ後ドリアンを食べて平気でいる日本人もいますが、ともかくドリアンを
食した後の強い酒には要注意です。
さらにその酒を椰子水で割ろうものなら、覚悟をして一杯やるしかありませ
んね。
ココナツに話は戻りますが、美味しいのは果水だけではありません。
殻の内側にある白い半透明の果肉、これがまたとってもおいしい。ココナツ
を注文する時はまるごと頼んで、飲んだ後真っ二つに割ってもらいましょう。
殻の内側にへばりついている果肉をスプーンですくう快感は、そのおいしさ
故に最高なのです。
でも、注文時に砂糖 gula は不要と告げないと、とてつもなく甘いクラパジ
ュースが目の前に置かれます(どんなジュースも同じ)
。
糖分は自然の甘さだけ、
「タンパ・グラ Tampa gula = without sugar」と
言いましょう。これでシュガーフリーの天然ココナツジュースが味わえます。
さて、食堂などでココナツがメニューにない時、一般に熱い紅茶(テッ・パ
ナス teh panas)がいいですね。これは別項で述べるように氷に注意しようと
いうことなのです。
こちらの人はごく普通に熱い紅茶を飲むことが多く、これは日本の緑茶に相
当しています。
コーヒーも当然庶民の飲み物です。マンダリンやトアルコ・トラジャなど有
名な豆を産するインドネシアですが、現地の人はまずその呼称を知りません。
コーヒー豆はアラビカ種かロブスター種か表示してスーパーなどで売られて
います。他にはその産地、バリとかランプンとかで種がわかるようです。
一般の家庭では生豆をフライパンでほとんど真っ黒になるまで焙煎し、細か
く挽いておきます。ティースプーン一杯ほどをカップに入れに湯を注ぐと、即
座に本物のコーヒーの出来上がり。
その飲み方は・・・、少し工夫が要ります。砕けた細かな豆片が浮いている
ので、それをスプーンで懸命にかき混ぜて沈め、上澄みを静かに飲むのです。
紅茶・コーヒーを店で何も言わずに注文すると、先ほどのジュースと同様も
のすごく甘いのが出てきます。
そこで砂糖なし紅茶を所望する時には「テッ・タワル teh tawar」と言いま
す。タワルは「味のない」という意味。もちろん先の「タンパ・グラ」でも通
じます。
コーヒーの場合は「コピ・パイッ kopi pahit」と言えばブラックになります。
ぼくは最初この甘いコーヒーに閉口したので「パイッ pahit:苦い」という単語
はすぐに覚えました。
また、ちょっと甘いのが好きな向きには「グラ・スディキット gula sedikit」
がいいでしょう。砂糖をほんのちょっとね、という意味です。
ちなみに砂糖が入ると飲み物の値段が上がります。砂糖なし紅茶と砂糖入り
紅茶では値段が結構違うのです。
甘いのが好きでないのに高い料金を払うのは、
もったいないですよね。
そして氷(エス es)も別料金です。南国ゆえの料金設定なのでしょうが、こ
れでお腹をこわすこともあるので注意が必要です。
先の料金の対象となるカップの底に溜まっているシュガー。これは優に大さ
じ4∼5杯分もあるでしょうか。値段が違うだけのことはあります。
この異常なる甘さ願望−それは超辛料理の反動?、それとも食事で足りない
糖分を飲み物で補う知恵なのでしょうか。
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【後記】
参議院選挙が終わり、その結果はともかく、投票場に向かうご夫婦の姿を見
かけるとちょっといいなと微笑ましく感じます。
それは、ぼくの妻に選挙権がないからですね。既に20年以上も日本で生活
し、かつ永住権も取得しているのに、外国籍ということで選挙権は認められて
いません。
ですから連れ立って選挙に行ったことはありません。
また、妻はぼくの退院後の昨年春からフルパートに出ています。そして、配
偶者控除の枠を少し超えただけで、先日住民税納付の通知が来ていました。
選挙権がなくても、しっかり住民税を取られるんですね。
皆さんはご存じないでしょうが、ぼくの家庭の住民票には妻の名は記載され
ていません。国際結婚で日本籍のない場合、誰でもそうです。
どんな住民票かというと、ぼくと二人の子供の名前があるだけ。永年一緒に
生活し、同じ家に住んでいるのに妻の名はありません。
まるで女房に逃げられた家庭のような、とってもおかしな住民票です。
住民票に載らずに住民税を納める・・・、摩訶不思議ですね。
外国人に対して選挙権を含め法律でも、この日本という国はとても冷たい先
進国?です。
この件に関してはいずれ詳しく書きたいと思います。
では、また来週をお楽しみに。
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