シーフェアラーズ ブルテン

シーフェアラーズ
ブルテン
No.29/2015
国際運輸労連(ITF)
現場
最前線
レポ―ト
舵を取る女性:海事コーディネーターと
船員トラスト部長
エボラ出血熱:船員への影響
綴じ込み案内書:ITFに支援を求めるには
目次
4-5
数字に見る
FOC
ITFのFOC
キャンペーン
15
カナダの
ITF
コーディネーター
6
プロフィール
新海事
コーディネーター
16-18
7-11
ITFの
支援活動
現場最前線レポート
12-14
MLC
最新情報
MLC発効する
19-23
健康問題
ITF船員
トラスト
綴じ込み
8頁の案内書
部長
キンバリー・カルショエイ
ITFの連絡先と
アドバイス
労働組合
29
水産
30-31
港湾
業界の動向
活動中
タイ水産業の
奴隷労働の実態
変わりゆく港湾労働者
船舶自動化は夢なのか?
24-28
エボラ出血熱とHIV
32-34
35
地中海の
写真
海の写真家
国際運輸労連(ITF)は約150か国の交通運輸労働者450万人を組織する国際的な労働組合の連合体。船員、水産、
内陸水運、港湾、鉄道、路面運輸、民間航空、観光の8つの産別部会で構成され、国際レベルで交通運輸労働者を
代表するとともに、グローバルな運動や連帯活動を通じて労働者の利益増進を図っている。
シーフェアラーズ・ブルテン No.29/2015
発行:国際運輸労連(ITF)東京事務所 〒108-0023東京都港区芝浦3-2-22田町交通ビル3F
☎03-3798-2770 FAX03-3769-4471 Eメール [email protected] Web http://itftokyo.org/
日本語以外の言語版(英語、アラビア語、中国語、ドイツ語、インドネシア語、ロシア語、スペイン語、トルコ語)については、上記までお問
い合わせください。
ようこそ
2015年版シーフェアラーズ・ブルテンへようこそ
2013年8月に発効したILO海上労働条約(MLC)。すばらしいことに、既
に、ILO条約最多の批准国数を誇っており、世界の船員に多くの利益をもたらし
ている。本誌は、MLCの二つの重要な改正について取り上げている。改正が承
認されれば、船員が遺棄されたり、長期障害所得補償を請求したりする際、こ
れまで以上の支援を受けられることになる。
2人の強い女性-海事産業の全労働者の利益擁護を担う新ITF海事コーディネ
ーターと、船員に対する支援拡充を決意する新ITF船員トラスト部長―も紹介する。
今日、エボラ出血熱が西アフリカで猛威を振るい、何千人もの命を奪っている。感染国に入出国する船員
が健康へのリスクを懸念するのも当然のことだ。既に業界が感染予防のガイドラインを発行しているが、こ
れだけで船員の懸念が払拭されることはないだろう。そこで、本誌は、港や船内でできる予防策をまとめた
特集記事を掲載した。長期間、自宅を留守にする船員は、HIV-エイズの感染リスクも高い。特集記事では、
ITFのHIV-エイズ活動も紹介している。
ITFは加盟組合と共に、船主の行動に目を光らせ、政府や国際機関に圧力をかけるとともに、港や船内で発
生する日常的な問題(いじめや差別、未払い賃金、遺棄船員の支援など)にも日々、取り組んでいる。7~
11頁の「ITFの支援活動-最前線からの報告」を是非ご覧いただきたい。
漁船員は、世界で最も搾取され、最も保護が薄い職業の一つだ。29頁で、英国紙「ガーディアン」の記者
がタイの奴隷労働の実態を暴露する。ITFがどのように強制労働や人員売買の問題に取り組んでいるかも紹介
する。
綴じ込み8頁の案内書では、ITFの支援をどこで、どのように受けたらよいか、ITFインスペクターへの連
絡方法、仕事を得るためのアドバイスなどを紹介する。また、船員募集の詐欺にも注意を呼び掛ける。
我々が権利のために闘えるのは、船員の集団としての力、労働組合があってこそだ。正義を勝ち取り、労
働条件を向上させる唯一の方法は、組合員になることである。組合に入ろう!そして、国際的な労働者ファ
ミリーの一員となることの利益を実感しよう!
ITF書記長
スティーブ・コットン
4
FOCキャンペーン
数字に見る
FOC
キャンペーン
ITFの査察
ITFが回収した
未払賃金総額
(2014年)
ITFが査察した船舶の数(2014年)
USD
59,372,806*
船舶数 ※1社28隻から回収した$1,900万を含む
10,111隻
問題が判明した船舶数
6,508隻
問題がなかった船舶数
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
3,603隻
FOCキャンペーン
5
青色の国はILO海上労働条約を批准済
査察で判明した問題上位5種
(2014年)
ITF協約の対象となる
船舶と船員の数(本誌発行時点)
283,220人
対象船員
賃金未払い 1,589件
契約違反 1,189件
10,241
ITF協約数
国際基準の非遵守 589件
荷役違反 258件
医療関係 223件
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
6
プロフィール
ジャクリーン・スミス
ITF海事部門の舵を取る
元船員のジャクリーン・スミスがITF海事コーディネ
ーターに就任した。スティーブ・コットン現書記長が
務めた海事コーディネーターの仕事は、船員のニーズ
、懸念、力に対するITFのコミットメントの中核を担
うものだ。ノルウェー船員組合の書記長時代を含め、
これまでの経験をITF海事コーディネーターの仕事に
どのように活かしていくのかを尋ねた。
経歴は?
米国ワイオミング州で生まれ、
ノルウェーで育った。大学で1年
間法律を学んだが、退学を決意。
ノルウェーからデンマークやド
イツに就航するフェリーのカジ
ノディーラーの仕事を得た。1年
程度、これまでと違うことをやっ
てみようと思っただけだったが、
結果的に8年間続いた。船内の環
境がよかったのと、2週間働い
て、2週間休むという勤務スケジ
ュールが自分に合っていた。
男性支配的な組織の中で、初の
女性かつ最年少の委員長に選ば
れたことだ。進歩的な組合員のお
かげだと思う。
NSU では二つの大きな成果を
上げたことを誇らしく思ってい
る。
一つは、訪船を重ねることで、
組合員の問題を把握し、彼らの権
利について教えることで、組合員
との関係を築いてきたことだ。も
う一つは、組合のオーナーシップ
を組合員に戻すために、構造改革
を実施したことだ。人の姿勢を変
労働者の権利にかける情熱はど えるのは実に難しいが、組織を変
革する価値はある。
こから来るのか?
フィリピンの孤児院で暮らす、
カジノディーラーとして乗船
していた時、同一労働同一賃金の 虐待を受けた子供たちを精神的、
原則が守られていないことを知 教育的に支援するプロジェクト
った。ディーラーは皆、個人契約 に対して、NSU が私の名前で寄
で、労働条件も様々だった。団体 付をしてくれたことも誇らしく
協約の必要性を感じ、同僚に声を 思っている。NSU への感謝の気
かけ、ノルウェー船員組合(NSU) 持ちを忘れない。
に相談した。NSU は、それまでコ
ンセッショネアを組織したこと 船員へのメッセージは?
船員は組合のこと-組合が何
がなかったが、ナショナルセンタ
ーの介入を経て、我々を組織する をしてくれるのか、どうしたら組
合が活発になるか、権利侵害を防
ことに同意した。
ぐために、団体協約をどのように
活用したらよいか-をもっと知
NSU 委員長になった経緯は?
1998 年に大会代議員に選ば る必要がある。知識は力なり。知
れ、その後、全国委員会の副委員 識で船員のエンパワーメントを
に選出された。すると、すぐにマ 行う必要がある。
イアミ(米国)を拠点とするクル
ーズ船部長補佐に任命された。若 将来をどのように考えるか?
船員を国際的な団体協約で守
い女性にとっては大役で、とても
や り が い の あ る 仕 事 だ っ た 。 り、その協約の履行を確保しなけ
2002 年に役員選挙への立候補 ればならないと考える。条件向上
を要請されたので、オスロ(ノル のために闘い、雇用期間の短縮に
ウェー)に戻った。その後、2006 取り組む。
カボタージュを守ることに全
年の大会で委員長に選出され、
力を尽くす。ブラジル、ノルウェ
2010 年に再選した。
ー、米国、オーストラリアのよう
な国は、低賃金諸国とは競争でき
最も誇りとする成果は?
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
ない。内航船には自国籍船員が乗
船し続けられるようにしなけれ
ばならない。
港湾労働者の雇用確保は最優
先課題だ。港湾労働者は世界中で
攻撃に晒されている。港湾労働者
なしには FOC キャンペーンは成
り立たない。FOC キャンペーン
の実施に必要な「筋肉」を提供し
てくれるのが港湾労働者だ。港湾
は海運と他の輸送モードの接点
だ。港湾のオートメーション(自
動化)は阻止できない。しかし、労
働者を教育して、新しい職務に就
かせることは可能だ。会社が組合
回避のためにオートメーション
を利用するのも阻止しなければ
ならない。それは組合つぶしに他
ならない。また、訓練不足、長時
間労働、安全衛生の低下につなが
るアウトソーシングにも反対す
る。
グローバル・ネットワーク・
ターミナル(GNT)に関しては、最
低基準を確保することが必要だ。
港湾労働者と船員の連帯を強化
し、GNT に関して我々が影響力
を行使できるところはどこかを
把握し、そこに資源を投入するこ
とが重要だ。
水産は大きな可能性を秘めて
いる。特にアジアでは、無規制・
無秩序の状態が問題となってい
る。我々がノルウェーで成し遂げ
た、遠洋漁船の団体協約という珍
しい成果を各国に広めていきた
い。漁船員の基準向上は大きな課
題だ。違法漁業や規制の欠如の問
題に取り組む ITF と国際食品労
連(IUF)の合同プログラムは、一
定の成果を出している。これを足
掛かりに、さらに活動を拡げてい
きたい。全ての漁船員にディーセ
ントな労働条件を確保するため
に、履行可能な協約の締結が我々
の目標だ。
目下の最大の課題は?
投資家のために、コスト削減と
収益アップを追及し続ける船主
との闘いだ。政策立案者、政治家、
国際機関に対して、真の影響力を
行使できるよう、我々の知識・経
験を活かしながら、信念を持っ
て、闘い続ける。
ITF は強い組織だ。加盟組合や
船員と共に、国際的な力をつけ、
ITF をさらに強力な組織にした
い。これが、今後数年間の私の目
標だ。
ITFの支援活動
7
現場最前線
レポート
港湾労働者がフィリピン人船員を支援
コートジボワールのアビジャン港の港湾労働者が素晴らしい連帯を表明したことで、アビジ
ャン港は奴隷労働とは無縁であることが証明されたとITFに加盟するSYMICOM労組のヨアキ
ム・メル・ディジュリとドイツのロストック港でITFインスペクターを務めるハマニ・アマド
ゥは述べる。
TF は 2010 年以降、船員の西
アフリカ港訪問を支援してい
る。2014 年 11 月には、ITF 訪
問団がアビジャンに派遣され、
現地の ITF 担当者の活動を把
握したり、ITF インスペクター
新設の準備を行ったりした。訪
問団が現地に到着したまさに
その時、ある乗組員から困って
いると連絡が入った。
リベリア籍のコンフィデン
ス 1 号に乗り組む 22 人の乗
組員の窮状を最初に ITF に報
告したのは地元の港湾労働者
だった。同船には 3 人のルーマ
ニア人職員とフィリピン人の
職員と部員 19 人が乗り組ん
でいた。
コンフィデンス 1 号は 11
月 12 日にアビジャン港に到
着した。フィリピン人船員のう
ち、12 名が、7 月以来、マニラ
の配乗代理店から賃金を全く
受け取っていないことを理由
にストライキ中だった。ドイツ
の船社が配乗代理店を変えた
ばかりで、乗組員の多くの雇用
契約が既に期限切れしていた
ため、乗組員たちの不安が募っ
ていた。19 名のフィリピン人
船員全員が賃金回収と本国送
還を求め、ITF に支援を求めた。
また、地元の港湾労組、
CNDD が私たちに同行し、コン
フィデンス 1 号を訪船し、乗組
員を話した後、連帯行動を取る
ことを決めた。地元では有名人
である荷主の圧力に屈するこ
となく、荷役を止め、5 日間ス
トを続けた末、コンフィデンス
1 号の乗組員に正義をもたら
すことができた。
12 月には、最後の 5 名が賃
金を満額受け取り、19 名のフ
ィリピン人船員全員が本国に
送還された。回収された賃金の
総額は 4 万 9 千ドルだった。
こうした成功に加えて、この地
域では初めてのことだが、ドイ
ツのヴェルディ労組がドイツ
の船主と団体協約を締結し、新
しい配乗代理店も ITF 協約を
申請した。
12 月には、最後の 5 名が賃金を満額受け取
り、19 名のフィリピン人船員全員が本国に
送還された。回収された賃金の総額は 4 万 9
千ドルだった。
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
8
ITFの支援活動
デルフィン1号の乗組員
多額の未払い賃金を回収
ドイツとオランダのITFコーディネーター、ラッド・ト
ーウェンが、乗組員200人の大勝利について報告する
インド所有のクルーズ船、デ
ルフィン1号の乗組員からド
イツの ITF に連絡が入った。ウ
クライナ人を主とする乗組員
199 人の賃金が未払いであ
り、乗客の予約人数が減ってい
ることから、船主が支払いを
「遅らせた」に違いないとの相
談だった。
その後、新たな問題が発生し
た。2014 年 10 月に予定され
ていたクルーズが、乗客不足で
キャンセルとなることが発表
されたのだ。デルフィン1号は
ドック入りした後、レイアップ
となるらしかった。
つまり、問題が二つに増えた
ことになる。未払い賃金だけで
なく、ITF 協約に基づく解雇手
当も貰わなければならなかっ
た。
我々はブレーメンの ITF 事
務所で本船のマネージャーと
会い、
「直ちに行動を取らなけ
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
れば、本船は拘束されることに
なる」と警告した。その後すぐ、
船主は本船がブレーマーハー
フェン(ドイツ)に到着し次第、
未払い分を全額支払うと約束
した。解雇手当を含む未払い賃
金は、総額 850,392.42 ドル
に達していた。この中には、ホ
テル部門の乗組員のために交
渉したチップも含まれていた。
ブレーマーハーフェン到着
後、我々は、ハンブルクの銀行
から未払い賃金が“スーツケー
スで”到着するまで、船内で1
日中待つと主張した。その後、
乗組員は無事に賃金を受け取
り、ITF に深く感謝した。
我々の最後の仕事は、乗組員
のウクライナへの帰国を支援
することだった。大きな荷物を
抱えている乗組員のためにバ
ス3台を手配し、オデッサまで
輸送した。残りの乗組員は空路
で帰国した。乗組員にとって大
きな勝利となった。
遺棄された
パナマ人船員の
帰国を支援
一方、船主と連絡がつくまで
には何日もかかった。その上、
賃金、食料、水、燃料を提供す
るという約束は反故にされた。
我々は、船社が指定した人物に
面会を求め、未払い賃金全額の
オランダのインスペクター、 支払いを要求した。しかし、こ
アズウィン・ノーダミアが、ロ の人物は、家族の問題を理由
ッテルダム港で遺棄された貨 に、面会をキャンセルした。そ
物船乗組員の帰国を支援した の後、船長も家族の問題を理由
時の様子を報告する。
に帰国していたことが判明し
た。
ITF インスペクターが訪船
乗組員の孤立感はますます
で衝撃を受けることは珍しく 高まっていった。我々は、この
ないが、2014 年 10 月 23 日 ままの状態を継続することは
の午後にロッテルダム近くの もはや不可能だと判断し、旗国
ボ ル ネ ス 港 に 停 泊 中 の レ ッ のパナマ大使館に連絡した。す
ド・ダッチェス号(パナマ籍) ると、船主と連絡を取り、乗組
を訪船した時に目の当たりに 員の帰国用のフライトを用意
した船内の様子は驚愕に値す すると約束してくれた。しか
るものだった。
し、彼らと話したのはこれが最
乗組員が ITF に報告した不 後だった。
満は、もっとも過ぎる内容だっ
一方、乗組員は、ウェスタ
た。食料庫はほとんど空っぽ ン・ユニオンを通じて、賃金の
で、食料一日分と飲料水二日分 一部を受け取ったが、全員の航
しか残っていなかった。冬がす 空券を買うには十分でなかっ
ぐそこまで来ているというの た。我々は、必死の思いで、ロ
に、燃料もせいぜい二日分しか ンドンの ITF 本部に助けを求
残っていなかった。
めた。
また、6人のうち1人は、機
2時間も経たないうちに、航
関室の事故で腕と背中に火傷 空券が手配され、乗組員は 11
を負っていた。病院で手当てを 月 21 日に帰国した。彼らは感
受けたらしいが、傷は完全に治 謝の気持ちでいっぱいの様子
っていなかった。さらに治療が だった。
必要なことは明らかだった。
ITF は IMO/ILO データベー
書面の契約書を持っている スに本件に関する報告書を提
のは1人だけであることが判 出した。これが、功を奏したら
明した。残りは口頭契約で乗船 しく、旗国パナマは、MLC の規
していた。乗船前に雇入契約を 定通り、乗組員に対する責任を
書面で交付することを義務づ 最終的に認めた。そして、11
ける ILO 海上労働条約(MLC) 月 22 日、パナマ海事当局が介
違反だ。この頃には、賃金も未 入し、ITF が負担した乗組員の
払いで、乗組員の家族が困窮し 本国送還費用を支払うことで
ていることが判明しても、何ら 合意した。
驚かなくなっていた。
それだけではない。修繕費や
港湾使用料も未払いで、造船所
やポートステートコントロー
ル(PSC)に拘束されたことも ITFはIMO/ILOデータベ
あった。翌年1月に入札にかけ
ースに本件に関する報
られることも十分あり得ると
告書を提出した。これ
思われた。
オランダの人道支援団体、 が、功を奏したらしく
CASCO が、我々の要請に即応 、旗国パナマは乗組員
し、食料を船内に運んでくれ に対する責任を最終的
た。造船所も我々の説得に応
に認めた。
じ、飲料水と電気を提供してく
れた。
ITFの支援活動
9
欠陥だらけの問題船
ITFと港湾当局の協力で御用
オーストラリアのITFアシスタント・コーディネーター、
マット・パーセルは、オーストラリア港湾当局による
問題船の入港禁止措置を歓迎する
リベリア籍のコンテナ船、ベ
ガ・マーズ号の乗組員の問題
が解決して間もなく、姉妹船の
ベガ・オーライガ号で深刻な
事態が発生していることが分
かった。我々は、ニュージーラ
ンドの ITF インスペクターや
オーストラリア港湾当局と密
接に協力して問題解決にあた
った。
2014 年2月、ベガ・マーズ
号の乗組員から連絡が入った。
ドイツ船主のベガ・リーデレ
イ GMBH&CoKG 社が乗組員
の賃金の支払いを3か月間も
遅延しているという相談だっ
た。乗組員は、同時に、フィリ
ピンのベガ・マニラ・クル
ー・マネージメント社による
本国への送金も遅れているの
ではないかと心配していた。
次の寄港地はニュージーラ
ンドのブラフだった。ウェリン
トンの ITF インスペクター、グ
恥ずべき海
黒海
ラハム・マクラーレンが訪船
の準備をしていた。マクラーレ
ンは、船主に未払い賃金
$121,887 を支払わせること
オーストラリアに
入港する船舶は、
最低国際基準を満
たしていなければ
ならない。
に成功した。
間もなく、ニュージーランド
のタウランガに向け、オースト
ラリア領海を航行中のベガ・
オーライガ号の問題が耳に入
った。グラハムが訪船し、約
$40,000 の賃金未払いを確
認し、次の寄港地で、オースト
ラリアの ITF コーディネータ
全世界で鑑賞されている ITF
制作映画「黒海の暗部」につい
て、ITF の広報・編集担当部
長、サム・ドーソンが語る。
もう帰ってくることのない
息子を想い、海に向かって叫ぶ
老母-孫たちに父親の遺骨を
見せてやることもできない。貴
重なタバコを5人で分け合う
船員たち。基準以下船で発生し
た事故で大やけどを負った乗
組員。これらは、ITF の新作映
画「黒海の暗部(Darksideofthe
BlackSea)」に記録された遺
棄、腐敗、苦悩の物語の一部で
ある。
https://www.youtube.com/wa
tch?v=Tk440t7IIh8
ITF 加 盟 の 海 事 連 帯 労 組
(DAD-DER)が制作したこの
映画は、多くの船員が強いら
ー、ディーン・サマーズが全額
回収した。
話はここで終わらない。オー
ストラリア海事当局(AMSA)
は、サマーズと協議した後、船
員福祉の問題(乗組員の食事や
疲労等)を理由に、ベガ・オー
ライガ号を拘束した。1 年間で
3度目の拘束だった。
そして、AMSA は、ベガ・オ
ーライガ号に対して、前例のな
い、称賛すべき措置を下した。
船員福祉や船体保守に関する
度重なる違反を理由に、3か月
間、オーストラリアへの入港を
一切禁止したのだ。
AMSA のア
ラン・シュウォーツ安全局長
は、
「オーストラリアに入港す
る船舶は、最低国際基準を満た
していなければならない。船員
は、家族や友人と離れて、何か
月間も海上で厳しい生活を送
っている」と述べた。
ベガ・オーライガ号はニュ
ージーランドに向かい、8月
31 日にタウランガに到着し
た。しかし、ニュージーランド
海事当局に 14 件の問題を指
摘され、拘束された。行き場を
失ったフィリピン人乗組員
18 人は、6月から賃金を受け
取っていなかった。ITF は、彼
らの未払い賃金と、9 月、10
月、11 月分の賃金総額 10 万
ニュージーランドドル(約
79,200 米ドル)を回収し、11
月にマニラへ帰国させた。
その後、本船の管理を引き継
いだドイツのヨースト・トー
デ社が ITF 協約の申請を開始
した。ニュージーランド出港前
に、全ての問題は是正され、代
替乗組員も雇用された。船名も
ハンサ・リライアンス号に変
更された。
れ、時には死亡することもある
過酷な状況を暴露している。
ITF が「恥ずべき海」と呼ぶ
黒海の海運産業の醜態を検証。
信じられないほど危険な船の
物語だ。
なぜこのようなことが起こ
り得るのか?船主はどうして
責任を逃れられるのか?この
映画は数々の疑問を投げかけ
ると同時に、その答え-腐敗、
惰性、犯罪-も示唆している。
ある船社の元マネージャーは、
「家畜どもを働かせろ」という
のが上司の口癖だったと告白
する。
船員は困窮生活の実態を直
接、カメラに語っている。これ
らの危険、搾取、虐待の事実は
記録に残されるべきものであ
る。そして、この映画がついに
それを実現した。映画を観終わ
った後は、泣き叫ぶ母親の言葉
がしばらく頭から離れなかっ
た。
深い悲しみと不名誉の中に
も希望は存在する。ITF「黒海」
プロジェクトのメンバーは、
ILO 海上労働条約がカギを握
ると指摘する。しかし、変化を
起こすためには、条約を適用さ
せる組合の力が必要だ。黒海の
船員たちは、
「決して一人では
ない。団結すれば変えられる」
ということを忘れないでほし
い。
映画「黒海の暗部」は、我々
にも行動を促している。
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
10
ITFの支援活動
アルベド号の
賃金未払いを
乗組員の家族
繰り返す船に
補償金を勝ち取る 旗国と共に挑む
行方不明の船員の家族が、4年間の苦悩の末、補
償金を勝ち取った事例をランジャン・ペレラ
ITF インスペクターが報告する。
ハンブルグのITFインスペクター、ウルフ・ク
リスチャンセンが、旗国のジブラルタルと協
力して、ドイツ受益所有船のリチェルー号に
取り組んだ事例を報告する。
2014 年3月、リシュルー号
のフィリピン人乗組員2人が
スウェーデンの ITF に支援を
求めてきた。9カ月の雇用契約
は満了を迎えようとしており、
次の港での下船が迫っていた。
しかし、二人は未払賃金(休日
労働手当を含む)を全額受け取
るまでは下船しない覚悟を決
めていた。船内に留まらない
と、レシュルー号の元乗組員、
ジョセフ(仮名)の二の舞にな
ると確信していたからだ。ジョ
セフは契約満了で2月に帰国
したところ、マニラの代理店か
ら、未払い賃金(休日労働手当
を含む)約 4,000 ドルのうち
1,200 ドルしか払えないと通
告された。ジョセフは ITF に連
絡を取り、未払賃金全額を取り
戻す決意を表明し、支援を求め
た。
刑事裁判の悪夢
2010 年 11 月、マレーシア
籍のアルベド号がソマリア沖
200 海里で海賊に襲撃された
時、乗組員 23 人が乗船してい
た。
人船員2人が 1288 日ぶりに
開放され、2014 年6月にコロ
ンボに帰国した。
一方、行方不明となったスリ
ランカ人船員4人の家族の苦
悩は続いた。ITF や海賊被害人
海賊に拘束されている間に、 道支援プログラム(MPHRP)
インド人船員1人が死亡した。 は支援運動を展開し、2014 年
しかし、2012 年7月、ITF は 10 月に、セイロン・シッピン
現地での運動を経て、パキスタ グ・コーポレーションのジャ
ン人船員7人の解放を交渉し、 ヤナス・コロンバージュ会長
7人を無事に帰国させること か ら 補 償 金 50,000 ル ピ ー
(約 813 ドル)を受け取ること
ができた。
1年後、日々老朽化していっ ができた。
補償金で愛する者が帰って
たアルベド号は、激しい嵐に見
舞われ、沈没した。スリランカ くるわけではないが、少なくと
人船員4人(ナキンダ・ワクウ も今後の生活の一部を支える
ェラ、DL サラス・シルバ、ア ことはできるだろう。
ントン・ボニフェイス、GC ペ
レラ)が行方不明となり、死亡
したものと推定された。
残りの船員 11 人(バングラ
デッシュ人7人、スリランカ人
2人、インド人1人、イラン人
1人)は陸上で拘束された。彼
らの解放・帰国を求める交渉
が続けられ、最後のスリランカ
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
海難事故に巻き込まれた船員を保護するめの
法改正の必要性を
トーマス・セバスチャン
ITFインスペクターが訴える
この悲劇は 2012 年3月1
日未明、ケララ(インド)沖で
発生した海難事故から始まっ
た。事故から1年半が経過した
今、事故当時ワッチ当番だった
スリランカ人船員はスケープ
ゴートにされ、刑事訴追を受け
ている。生活の自由を奪われ、
将来の不安に怯える毎日だ。
ラニ・シッピング・ムンバ
イが所有するインド籍のパラ
ブダヤ号が漁船を回避するた
めに進路を急変した時、サンジ
ーブ(仮名)はワッチ当番だっ
た。サンジーブと操舵手は衝突
を回避できた自信があったが、
船長をブリッジに呼んだ。船長
は、
2 人の対応に満足し、
30 分
後に船長室に戻った。
その日の午後、インドの沿岸
警備隊が、漁船が船舶と衝突し
たと連絡してきた。漁船は転覆
し、沈没したという。乗組員7
人のうち、5人の死亡と、2人
の負傷が確認された。事件に対
する地元の漁業コミュニティ
ーの怒りが、ケララ州政府への
圧力となり、州政府は州警察に
船舶の発見、拘束を命じた。
事件への関与を疑われた船
舶7隻のうち、1 隻がパラブ・
ITFの支援活動
そ し て 、 2014年
3月、我々は再び
リシェルー号と対
面した。まず、船
主のブリーゼ社と
代理店、レダ・シ
ッピング社に連絡
し、ジョセフの未
払賃金全額の支払
いと、乗船中の二
人の下船、および
総 額 10,500ド ル
に及ぶ未払賃金全
額の支払いを要求
した。
ダヤ号だった。パラブ・ダヤ
号は、事件当時の位置を説明
するよう求められた後、イン
ドに戻るよう命令された。そ
して、3月5日にチェンナイ
で拘束された。
一方、精神的に追い詰めら
れたサンジーブは、船尾側の
船体下部に残っているかもし
れないペンキ跡を探してみよ
うとしたところ、過って海面
に転落してしまった。9時間
もの間、瀕死の状態で海面を
さ迷っていたところ、幸いに
もスリランカ漁船の FV ラン
ジャン・プタ号に救出され、
トリンコマレ病院に搬送され
た。急性肺炎を患っていた。
サンジーブの帰国を任され
た船主の代理人が、入院中の
サンジーブを訪れ、サンジー
ブの旅券を預かったが、その
後、行方をくらましてしまっ
た。サンジーブが退院すると、
在スリランカのインド大使館
がサンジーブを保護拘置下に
置き、パスポートを緊急発行、
3月 15 日にケララに送還し
た。
ITF はかつてリシェルー号
を扱ったことがあった。2013
年 11 月、ゴラン・二ルソン
ITF インスペクターがウッデ
バラ(スウェーデン)で、一部
の乗組員(ジョゼフと今回支援
を求めてきた乗組員2人を含
む)の未払賃金を回収したの
だ。乗組員は、ITF 協約で約束
されている賃金を遙かに下回
る賃金しか受け取っていなか
った。
そして、2014 年3月、我々
は再びリシェルー号と対面し
た。まず、船主のブリーゼ社と
代理店、レダ・シッピング社に
連絡し、ジョセフの未払賃金全
額の支払いと、乗船中の二人の
下船、および総額 10,500 ド
ルに及ぶ未払賃金全額の支払
いを要求した。
ブリーゼ社は、契約が満了す
る前にこのような支払いを行
うことは異例だと主張した。し
かし、ITF は譲らなかった。
レダ・シッピングは、ビザの
問題があるため、次のハンブル
トリバンドラム空港に到着
すると、サンジーブは正式に
逮捕され、起訴された。操舵手
と船長もサンジーブと同様、
インド海事組合
(MUI)の精神的・
金銭的支援がなけ
れば、サンジーブは
たった一人で正義
を追及しなければ
ならなかっただろ
う。MUI はサンジー
ブの旅費や生活費
に5ラーク
(10,100
ドル)を費やした。
保釈は認められなかった。警
察は尋問の際、海事法で保障
11
「ITF 問題」が解決するまで
クで二人を下船させるのは不 は、
可能だと主張した。これが嘘で は積み込みを行うことはでき
あることは、水上警察から聞い な い と ブ リ ー ゼ お よ び ピ ー
ていた。我々はさらに圧力をか ク・シッピングに通告した。
これを受け、レダ・シッピン
ける必要があった。
ノルウェーのチャータラー、 グは我々に連絡をし、ジョセフ
ピーク・シッピング社や旗国 の未払賃金全額を支払うこと
のジブラルタルにも連絡を入 に合意した。その日のうちに、
れた。これが効力を発揮し、3 ドイツの ITF 口座に未払賃金
月 22 日、我々の目の前で、ハ が振り込まれた。数日後、マニ
ンブルクの代理人がキャプテ ラのジョセフが未払賃金全額
ンに 10,000 ドルを手渡し、 (3,834.53 ドル)を受け取っ
キ ャ プ テ ン が 2人 に たと、喜び勇んで連絡してき
10,749.89 ドルを支払った。 た。
一方、旗国のジブラルタルも
二人は喜んで下船した。この日
の晩は、船員センターに宿泊 ジョゼフの未払賃金の支払い
し、翌日、マニラに帰国した。 をブリーゼに要求していた。5
一方、ジョセフの件は未解決 月中旬に我々が聞いたところ
のままだった。我々は、本船が によると、ジブラルタルは未だ
間もなく、ハンブルクの別のタ にブリーゼとレダ・シッピン
ーミナルで肥料の積み込みを グを厳しく追及しており、ITF
行うという情報を得たため、ハ 問題に関して満足のいく回答
ンブルクの ITF 関係者に連絡 が得られなければ、リシュルー
し、賃金問題をターミナル管理 号に MLC 証書を発行しない
者に知らせるよう要請した。本 と通告したらしい。
船がターミナルに接岸する3
月 24 日、ターミナル管理者
されている乗組員の保護規定
を全て無視し、事件を交通事
故のように扱った。
サンジーブがパスポートの
再発行を申請するためには、
複雑な法的手続きが必要だっ
たばかりではなく、許可が下
り る ま で に 13 カ 月 を 要 し
た。代理人から法的書類を回
収するには、さらに多くの時
間がかかった。幸いにも、イン
ド海事組合(MUI)のスダカー
ル・ドゥリ部長が船主の説得
にあたってくれたおかげで、
2014 年6月 24 日にサンジ
ーブの契約期間を証明する船
員手帳が正式に確認された。
会社は事故の責任を全てサ
ンジーブに押し付けた。転落
事故を自殺未遂と決めつけ、
金銭補償や法的支援を一切し
なかった。一方、操舵手や船長
は支援し、他船への乗船を許
可した。
死亡した漁船員の親族と負
傷した乗組員 2 人が船主と和
解し、P&I クラブが損壊した
漁船に対する補償金を支払っ
た途端に、政府は本件に対す
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
る関心を失った。
しかし、サンジーブにとっ
ての悲劇が終わったわけでは
なかった。サンジーブの容疑
を裏付ける書類が裁判所に提
出されていないのにもかかわ
らず、刑事裁判は続いた。MUI
の精神的・金銭的支援がなけ
れば、サンジーブはたった一
人で正義を追及しなければな
らなかっただろう。MUI はサ
ンジーブの旅費や生活費に5
ラーク(10,100 ドル)を費や
した。
この恐ろしい事件は、多く
の問題を提起している。海難
事故に対応し、事故の責任を
分析し、訴追に直面する船員
を支援・保護するための制度
改革に向けて、産業全体で運
動していく方法を ITF で検討
したい。
www.itfseafarers.org
12
船員の権利章典
海上労働条約の
最新情報
海上労働条約
発効する
海上労働条約(MLC)が発効して2014年8月
20日で一年になる。ITFマリタイムオペレーシ
ョン・プロジェクト・キャンペーン指導者の
ケイティ・ヒギンボトムがMLCの実際的な効
力を評価する
2013 年 9 月 19 日 か ら
2014 年 8 月 19 日までの間
に 、 ITF イ ン ス ペ ク タ ー は
7,486 隻に対し、9,646 の査
察を行った。
か国のうち、7 か国が MLC を った。一部の船主と乗組員の問
批准していた。このことから、 題を解決するにあたって、ベリ
旗国の責任の面で改善を図る ーズはロシアとウクライナの
余地は大いにあることがわか ITF インスペクターから友好
る。問題の件数が最も多かった 国と認識されている。
のはパナマだが、登録隻数を考
これらは全て良い兆候だが、
上記の査察された船舶のう 慮すると、査察を受けた船舶の
ち 32%で、MLC で規定されて 6 割以上で問題が発覚した最 悦に入っている場合ではない。
いる居住・労働条件上の問題 も劣悪な国は、ベリーズ、カン 自国の旗を掲げる船舶に乗船
が見つかった。同条約では、賃 ボジア、クック諸島、モルドバ、 する乗組員のディーセントな
金は「少なくとも毎月、満額で」 ロシア、セントクリストファ (人間らしい)労働条件を確保
する主な責任は旗国にあるの
支払わなくてはならないとさ ー・ネーヴィスだった。
であり、ITF はこれからも旗国
れているが、問題の多くが依然
一方、改善の兆しも見られ の責任を追及していく。
として賃金関係だ。これには驚
かない。MLC が世界中の全て た。その具体的な例は本誌 7~
しかし、MLC を守らせる上
の海運関係の問題を一夜に解 11 ページの「現場最前線レポ
決できるはずもない。問題なの ート」からも明らかだ。ロッテ で真に力を持っているのは港
は 、 こ う し た 問 題 の 解 決 を ルダムで遺棄された船舶に乗 湾においてだ。発効からの一年
MLC がいかに支援できるかと り組んでいた乗組員の本国送 間で、MLC に関連する不備の
いうことだ。それには旗国と寄 還の資金をパナマが出したり、 ため、113 隻の船舶が拘留さ
港国の責任を考える必要があ ジブラルタルが乗組員の賃金 れたとパリ覚書が報告してい
の支払いが遅れている企業に る。オーストラリア海上安全局
る。
海上労働証書を発行すること (AMSA)は船舶を拘留しただ
違反の多かったトップ 10 を拒否したりしたケースがあ けにとどまらず、現在、常習的
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
に違反が見られた 3 隻につい
て三か月にわたりオーストラ
リアの港への入港を禁じてい
る。ITF のインスペクターが各
国のポートステートコントロ
ール(PSC)査察官と緊密に協
力し、深刻な不備のある船舶が
法の網の目をくぐることが決
してないよう、目を光らせるケ
ースも増えている。
明らかに、MLC は未完成品
だが、外航船に関していえば状
況を改善させていることは疑
いの余地がない。乗組員を尊重
しない船主、適切な労働協約を
もたない船舶、賃金の遅配があ
る船舶、船員が休息時間を得ら
れない船舶などは、ディーセン
トな海運産業に存在する余地
はない。悪しき慣行を排除する
ために MLC をうまく活用で
きるか否かは、我々の連帯責任
だ。
船員の権利章典
13
遺棄と乗組員の要求に関する
新たな改正
船員の権利章典であるMLCを船員にとってより良い条約にするため、どのような改正が加えられたか
について、ITF船員部会のファブリチオ・バルセロナ部次長が解説する。
熱烈に歓迎された MLC は
既に職種を問わず、世界中の船
員に恩恵をもたらし、海運業界
をよりバランスの取れたもの
にしている。
重要なのは、この条約を作成
した ILO と船員および船主の
代表者が、この条約を「生きた
条約」にすることを確実にした
ことであり、業界や船員の労働
条件の変化に合わせ、容易に改
正できるようにした点だ。
船員と船主の代表者から要
請があったため、MLC 発効か
ら一年足らずで、ILO は特別に
一週間の三者構成委員会を開
催し、この委員会でまず二点を
改正することが合意された。
MLCの改正概観
あなたが遺棄されたら:
・旗国は金銭上の保証システムを設置し、あらゆる自国籍
の船舶に支援を提供しなければならない。
・あなたが遺棄について報告し、早急に金銭上の支援を得
られるような、比較的シンプルなシステムが整備されて
いなければならない。
・あなたには、最高過去、4か月分の未払い賃金と、船内
で発生したあらゆる費用、送還費を請求する権利があ
る。
死亡若しくは長期障害に関する請求:
・あなたやあなたの家族が受け取るべき契約上の補償を容
易に受け取れるようにする法律を策定することは旗国の
義務となる。
・あなたやあなたの近親者、あなたの代表者は、契約上の
補償を直接請求できる。
・長期の障害の性質上、補償の全額の評価がしにくい場合
は、不当に困難な状況に陥ることを避けるため、暫定的
な支払いが行われなければならない。
上述の二つの改正により、金銭上の保証を示す証拠と、保
証の提供者の詳細を船内に掲示し、全ての船員が見られる
ようにしなければならない。いかなる金銭上の権利も、あ
なたが追求することができる他の形態の補償を損なうもの
ではない。
第一に、外国で船が座礁した
ことにより、身動きできなくな
った船員たちを救うため、本国
送還させ、賃金を回収できるよ
うにする。自国に登録した全て
の船舶について、金銭上の保証
システムを用意し、船員が直
接、十分な補償を確実に受けら
れるようにすることは、旗国の
義務となる。そのような金銭上
の保証の提供者の情報は、船内
に掲示され、全ての船員に周知
されなければならない。船員あ
るいは船員の代表者が遺棄に
ついて報告し、必要な金銭上の
支援を早急に実施するための
簡易なシステムが設置される
ことになろう。
非常に重要なのは、この金銭
上の保証システムにより、船員
が請求できる他の形態の補償
を損なうことなく、雇用契約の
もとに船主が船員に支払うべ
き過去 4 か月分の未払い賃金
が保証されるという点だ。ま
た、送還費や食糧、衣料、飲み
水、医療などの必需品を含め、
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
船内および船員が帰宅するま
でに発生し、本来、船員が負担
すべきではないあらゆる費用
も保証の対象とする。
第二に、船主による死亡ある
いは長期障害への対応を改善
する。補償を受け取るまでの
間、船員とその家族が主に海難
事故後の事務手続きや法的手
続きが原因で不必要な苦境に
晒されることが余りにも多い
と報告されている。
新たに合意された改正によ
り、死亡あるいは長期障害が発
生した場合、雇用契約上、船員
が受け取る権利のある補償を
船員とその家族が容易かつ迅
速に受け取ることができるよ
うにすることは、旗国の義務と
なる。これもまた、船員が行使
を希望するその他の法的権利
を損なうものではなく、雇用契
約上の補償請求は、当該の船員
自身かその近親者、あるいは船
員の代表者が直接行うことが
できる。金銭上の保証の証拠と
保証の提供者の詳細は船内に
掲示され、全ての船員に周知し
なければならない。長期障害の
性質上、補償の全額が評価でき
ない場合は、不当に困難な状況
に陥ることを避けるため、船員
に対し、暫定的な支払いが行わ
れなければならない。
この 2 つの改正が 2017 年
の ILO 会議で発効することが
望まれる。そうすることで、全
ての MLC 批准国がこの改正
を国内法に落とし込む時間的
余裕もできるだろう。
www.itfseafarers.org
14
船員の権利章典
船員を守る新たな
安全衛生ガイドライン
新たにできた実践的安全衛生ガイドラインが国内法に盛り込まれることになると上級船員部会
アシスタントのローセン・カラバチョフが解説する。
ILO の 概 算 で は 、 毎 日
6,300 人 が あ ら ゆ る 労 働 災
害、職業病が原因で命を落とし
ている。一年で見れば 230 万
人以上だ。
そのコストは当該の労働者
の家族と地域社会にとっては
甚大だ。その経済的な負担は毎
年、GDP の 4%に上ると言わ
れている。
船員は世界で最も危険な職
業の一つと見なされていると
聞いても驚かない。
今、船内の職場環境で職業安
全衛生(OSH)を促進しようと
する国際的な気運がある。この
目的で、海運界の OSH 専門家
が 2014 年 10 月に ILO で会
議を開催し、安全衛生の保護と
事故防止の面で、MLC を強化
するため、新たなガイドライン
に合意した。
使の責任が具体的に示されて
いる。
また、乗組員が 5 名以上の
船における、安全委員会と船内
安全代表の義務と責任、船内事
故防止のための適切なリスク
評価の必要性も記している。
新ガイドラインの最終文書
は、船員を保護するため、OSH
の基準を下げることなく柔軟
性をもったものとなり、MLC
に沿って OSH の枠組みを新
たに設置するか、または既存の
枠組みを見直そうという意思
のある者にとって有益な資料
となる。同ガイドラインには、
OSH 措置は「経済的コストと
してではなく、船員の安全衛生
を継続的に向上させるための
投資」と見なされるべきだと書
かれている。
新ガイドラインを歓迎し、カ
ナダ船員国際労組のパトリ
海事安全衛生ガイドライン ス・キャロン副委員長は次の
「海運業界で職
(MOSH)は、国内法や他の方策 ように述べた。
に 盛 り 込 む こ と を 目 的 に 、 業安全衛生措置を実施するこ
MLC に実地の補足情報を提供 とには多くの困難があるだろ
するためのものであり、海特有 うが、このガイドラインが役に
の労働環境に対応している。す 立つはずだ。リスクを最小限に
なわち、肉体的にハードな労働 抑えることは船員や船内で働
条件、危険をはらむ業務、隔離、 く全ての労働者にとって最大
長時間労働、硬直的な組織機 の懸案事項だ」
構、ストレスレベルの高さや疲
修正の箇所と安全衛生ガイ
労などに対応しているのだ。
ドラインの全文は以下の ILO
10 月の ILO 会議では、アル サイトで閲覧できる:
コールや薬物の常用、暴力、嫌 http://www.ilo.org/global/sta
がらせ、感染症を含め、船員の ndards/maritime-labour職業安全衛生のあらゆる分野 convention.
について議論した。ガイドライ
ンには、事故防止と病気の予
防、その実施と訓練、緊急事態
や事故への対応に関して政労
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
毎日6,300人が
あらゆる労働災害や
職業病が原因で
命を落としている。
一年で見れば
230万人以上だ
プロフィール
15
インスペクターの生活
ITFインスペクター、コーディネーター歴22年のピーター・ラヘイがインスペクター生活の実情
を報告する。
今の仕事に就いたきっかけは?
船員をしていた時、活動家だった。残業や労働時間、休暇など
について仲間が問題を抱えている時に、経営者に苦情を申し立
て、解決してもらう役回りはいつも私だった。
ある時、バンクーバーの ITF インスペクターが会議のため不在
だったので、問題を抱えたブルガリアの乗組員に私が会ってほし
いと言われた。その時のことは今でもよく覚えている。それはゾ
ディアック海運の船舶「ヘムレック号」だった。船員はベネズエ
ラのオリノコ川からポンプで引き上げた水を飲み水に使ってい
た。冷蔵庫には船長用のペットボトル入り飲料水いっぱいに詰ま
っていたが、乗組員用の飲料水はなかった。賃金もごまかされ、船
員は飢餓状態に近く、すぐに治療を受ける必要を感じた。船員た
ちの歯茎は後退していた。一人の乗組員が自分の臀部から垂れ下
がっている 2 フィートもある紫色の痔を見せた。私はショック
を受け、この乗組員たちのためにできる限りのことをしなければ
ならないと感じた。
これがきっかけとなって海運ビジネスに興味を持ち始め、あら
ゆる人からできる限りのことを学んだ。そして ITF インスペクタ
ーという道に行きついた。船員の窮状を目の当たりにする中で、
船員はもっと敬意を払われ、組合に代表される必要があると感じ
てきた。
インスペクターの仕事の中で最も難しい面は?
ITF インスペクターは主に単独で仕事をしている。外国人船員
を代表し、FOC キャンペーンに従事することを専門としている
人間は、
この地球上にたった 135 人しかいない。
周りからは多く
の支援を受けるが、仕事をする時はいつも独りだ。
最も誇りに思うことは何ですか?
船員がインスペクターを信用してくれ、毎日色々要求して来る
ことや、秘密保持の原則を厳守し、船員を直接代弁していること
を本当に誇らしく思っている。また、しばしば船員だけでなく、そ
の家族や時に、船員の賃金に依存する地域社会全体を代弁してい
るような時もある。
新任の ITF インスペクターのメンターを務めたり、研修したり
していること、また、カナダの PSC 査察官の研修を行い、船員の
労働条件に関する MLC 条項を実施する上で、彼らが果たすべき
新たな役割を理解してもらったりしていることを誇りに思う。
しかし、最も誇りに思うのは、ITF インスペクターが船員の状
況を真の意味で改善しているということだ。一つ例を挙げよう。
冬の嵐の中、あるばら積船に乗り組むボースンが、老朽化した彼
の船が北大西洋をヨーロッパからカナダ領北極圏に向け、横断し
ようとしているが、恐らく乗組員は助からないだろうと娘に伝え
た。娘が私にフェースブックでコンタクトを取ってきたので、私
はカナダ運輸省に警告を発し、ばら積み船が入港したら入念に査
察するよう要請した。
ボースンの恐れは的中した。大西洋を渡り始めて半分の地点で
ヘムレック号の主エンジンのターボチャージャーが故障した。カ
ナダ運輸省が同船を監視し、国防省も空中監視をしており、同船
を安全な港へと退避させる計画を立てていた。ITF インスペクタ
ーと PSC 査察官が同船に乗り込み、調べたところ、船首の前方フ
レーム 3 本にへこみがあることを発見した。4 本目も損傷して
いたら、プレートが落ちて船は沈んでいただろう。
ITF はボースンやその家族、規制当局などとチームを組むこと
ができた。同船は構造上の欠陥で拘留され、修理された。死亡者
はいなかった。エンジンを単純に修理するだけで、そのまま航海
を続けていたなら、乗組員の命は確実になかっただろう。ボース
ンと彼の娘が乗組員の命を救ったのだ。私も一助となれたこと、
また皆が信頼する運動に参加できていることを誇りに思う。
近年最も大きな海運界の変化は何だと思いますか?
船主の造船計画が最大の変化をもたらした。黒海に見られるよ
うな例外もあるが、世界中でより水準の高い船舶が誕生してい
る。だが、現在、多くの船主が非常に少ない貨物をめぐり争って
いる。ほとんどの船主が財政的に逼迫しており、そのことが食糧
や水の不足、賃金の遅配、雇用契約の延長、残業代のごまかし、船
舶の保守不足といった形で船員を襲っている。
2006 年 MLC はあなたの仕事にどう影響しましたか?
同条約を批准した国では、ITF インスペクターに法律を実施す
るツールが与えられた。ITF インスペクターが船主に彼らの船が
MLC を遵守していないので、PSC に船を拘留させるというと、
船主は問題を深刻に受け止める。世界中で ITF インスペクターは
海事当局と強い協力関係をもっているので、船舶を拘留させるこ
ともできるのだ。実際、世界中で船が拘留されている。MLC が発
効した最初の一年間で実に 113 隻が拘留された。カナダだけで
もその数は 11 隻に上った。
上船前の船員にどのような助言をしますか?
自分の労働条件をよく理解し、船内で行った仕事内容と、労働
時間や休憩時間の記録をきちんとつけておくように助言したい。
世界中の ITF インスペクターの電話番号を掲載した小冊子「メッ
セージ・トゥー・シーフェアラーズ」は必携だ。そして、危険な
労働条件があると感じたら、メールなり、電話なり、フェースブ
ックなどのソーシャルメディアで ITF インスペクターに連絡を
取って欲しい。インスペクターはいきなり問題解決の行動を起こ
すのではなく、まず秘密厳守で船員の話を聞くことができるとい
うことを信じてもらいたい。
仕事を忘れて気分転換する方法は?
仕事が大好きなので特にない。
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
16
船員トラスト
船員のための
よりよいサービス
を目指して
船員福祉に多大な関心を持ち、ITF船員トラストのサービス向上に
意欲を燃やすキンバリー・カルショエイ。
ITF船員トラスト部長に就任した彼女のビジョンと動機を探る。
海 運 業 界 の に取りつかれ、2002 年に TK
有 力 者 の デ ン ファンデーションという慈善
マ ー ク 人 と ア 信託を共同で設立した。この名
メ リ カ 人 女 性 称はキンバリーの父の名前に
の 間 に 生 ま れ 由来する。キンバリーの信条
「成功は決して一人の人間
た。アメリカで は、
誕生した後、人 によって成されるものではな
生 の ほ と ん ど い。他人との協力によって成さ
を デ ン マ ー ク れるものだ」である。TK ファン
で過ごすが、他の国での生活も デーション時代、この信条をも
経験している。父親の影響で、 とに、船員緊急救援基金(SEF)
海運業界を身近に感じて育っ を設立したり、世界海事大学
たキンバリーは、
「私の血には (WMU)理事に選出されたり、
海水が流れている」と自身を表 海賊被害人道支援プログラム
(MPHRP)を立ち上げたりと、
現する。
数々の功績を残した。
2012 年、新境地を求めて、
初めは、看護師や心理学者に
なるための訓練を受けるなど、 デンマークからイギリスに向
海運業界とは異なる進路を歩 かった。「(父親の仕事の関係
、
んだ。しかし、船員福祉の魅力 で)船員には借りがあるから」
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
イギリスでも海運界に関わり
たいと思っていた。ITF 船員ト
ラストの仕事と巡り合えて非
常に嬉しかったという。
キンバリーの同僚は、キンバ
リーのことを「火山のようにア
イデアが噴出する人」と表現す
る。ITF 船員トラストの運営方
法を改善し、全ての活動が目に
見える成果をもたらすように
したいと意欲を燃やすキンバ
リー。彼女は、
「welfare(福祉)
」
よりも「wellbeing(幸せな生
活)
」という言葉の方がふさわ
しいと感じている。船員は自身
の幸福追求や生活向上に積極
的であり、上から「福祉」を押
し付けられる存在とは異なる
と考えるからだ。
どのような改善が望まれて
船員トラスト
るのかを船員から直接聴き、彼
らとよりよい関係を築き上げ
ることが、キンバリーがやろう
としている改革の中心だ。ま
た、ITF 船員トラストをもっと
船員に知ってもらい、ソーシャ
ルメディアを通じて、船員とよ
り直接的なコミュニケーショ
ンをとり、加盟組合との関係も
密にしていきたいと考えてい
る。
その手始めとして、船員の意
見調査を行うほか、船員トラス
トをより身近な存在に感じて
もらうために、ウェブサイトの
刷新や、船員センターのアプリ
や案内一覧の開発・普及を行
う計画だ。これらを 2015 年
5月1日までに完了させたい
と考えている。
船員トラストに来てから1
カ月も経たないうちに、キンバ
リーは決意-訪船をできるだ
け多く行うこと-を実行した。
リバプールの ITF インスペク
ター、トミー・モロイに同行
し、1日を共に過ごした。
「トミ
ーと一緒に行動させてもらい、
多くのことを学んだ。訪船先
で、再び船員と話すことができ
て嬉しかった。あるロシア人船
員が、最寄の船員センターの場
所を尋ねてきたので、ITF の
「ShoreLeave」アプリを見せな
がら、船員センターの場所を教
えることができた」とキンバリ
ー。
船員トラストを ATM にた
とえられた時にはゾッとした
という。同時に、この種の認識
を変えなければならないと決
意を新たにした。船員トラスト
はこれからも寄付を続けるが、
目的をより重視する方向に転
換する。つまり、これまでより
も大規模で長期的なプロジェ
クトを提案し、競合させるの
だ。その際、モニタリングや評
価に重きを置く明確な条件を
設定する。
「このやり方は、海運界では
目新しいかもしれないが、慈善
活動の世界では古くから行わ
れている」とキンバリーは説明
する。
「船員トラストをプロの
慈善信託にして、その価値を証
明したい。各団体が船員トラス
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
17
トの支援獲得競争に乗り出し、
プロジェクトを実施する能力
をつけてもらうために、各団体
と密接に協力していく」とキン
バリーは語る。
船員トラストが資金提供し
たいと考えるプロジェクトの
一例として、上陸することがで
きない船員のための移動船員
センターの運営を挙げる。設備
の整った車両で、船員がオンラ
インで購入した物品を本船ま
で運搬したり、インターネット
へのアクセスを提供したりす
るのだ。
ITF 加盟組合と協力して、
ILO 海上労働条約(MLC)が義
務づける港の福利に関して、組
合が政府に意見を述べたり、影
響力を行使したりするのを支
援することも考えている。
「船員の生活向上に全力を尽
くしたい。船員トラストが船員
の生活を変えることができる
という事実にワクワクする。最
大の課題は、全ての人に共通の
目標に向かって動いてもらう
ことだが、私としては、船員の
ためのサービス向上を海運業
界全体に粘り強く訴えていく。
幸い、労働組合や、ミッショ
ン・ツー・シーフェアラーズ、
セイラーズ・ソサイエティー、
ステラマリス等の団体(その中
には数百年の歴史を持つもの
もある)と共に活動することが
できる。彼らはこれまでにすば
らしい活動を行ってきた。しか
し、改善の余地は常にある。こ
れからも彼らと密接に協力を
重ねながら、共通のビジョンを
追及していきたい」とキンバリ
ーは言う。
幸福な船員のビジョンにつ
いては、「ディーセントな仕
事-安定、自由、公正、尊厳が
確保された仕事-を行い、幸せ
で、健康な船員」と答えた。
キンバリーは、どこに行くと
きも、船員との対話を求めてい
る。空港や港、あるいは社交行
事で、船内や港での生活につい
て話しかけてくる女性がいた
ら、それは、ITF 船員トラスト
部長かもしれない。船員のサー
ビス向上を常時考えているの
だ。
www.itfseafarers.org
18
船員トラスト
船内の通信環境
改善のために
あなたの意見を
長期間、家を離れる時は、家族との連絡が非常
に重要になる。ITF 船員トラストのルカ・トマシ
は、船内のインターネット環境をどのように改
善したらよいかについて、多くの意見を求めて
いる。
衛星ブロードバンド回線を
利用した船内のインターネッ
ト接続は、自宅で経験するブロ
ードバンド接続よりも容量が
少ない。例えば、スカイプは、必
要とされる帯域幅が大きいの
で、船内では利用できない。一
般に考えられているのとは逆
に、乗組員がインターネットを
利用できる船舶は未だに少な
いのが現実だ。
「インターネッ
ト利用可」がナローバンド接続
を意味し、会社との連絡や、せ
いぜいテキスト・メッセージ
の送信しかできなかったとい
うのもよくある話だ。
インターネット時代の船員
は、仲間や家族に連絡するの
に、テキスト・メッセージやチ
ャット、ソーシャルメディアを
利用することに慣れているの
で、会社にもこのようなニーズ
に対応してほしいと思うだろ
う。
ある船社が船内に衛星ブロ
ードバンドを導入し、信頼でき
るインターネットの接続料と
して、船員から1カ月 25 ドル
を徴収した。国際船員福利厚生
支援ネットワーク(ISWAN)が
2014 年に実施した乗組員の
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
コミュニケーションに関する
調査によると、船員の1カ月の
通信料は 134 ドルなので、こ
のサービスは悪くない。
港湾の通信環境が船内より
も常に優れているというわけ
ではない。アントワープやサザ
ンプトンのように、Wi-Fi が使
える港はごく僅かだ。Wi-Fi の
導入は高額で、容易ではないた
め、新しい港で Wi-Fi が導入さ
れたという話はあまり聞かな
い。あるフィリピン人船員は次
のように語る。
「港に着き、仕事
から解放されたら、まずやるこ
とは、コンピューターの電源を
入れて、Wi-Fi が繋がるかを確
認することだ。残念ながら、ほ
とんどの場合、パスワードを要
求される」実際、このような経
験をしている船員は実に多い。
船内の通信環境を改善させ
る動きは見られるものの、港の
船員センターのコンピュータ
ーが主要な通信手段であるこ
とに変わりはない。船員センタ
ーがなければ、家族や友人への
連絡は、もっと難しく、高価な
ものとなるだろう。
しかし、今日、多くの船員が
スマートフォンやノートパソ
コンを持っている。本船のスケ
ジュールが決まっていて、一国
の複数の港に寄港する場合は、
現地の SIM カードを購入する
こともできる。船員センターの
中には、陸上と同じようにスマ
ートフォンでインターネット
を1か月間利用できる SIM カ
ードの販売を行い、その申し込
みを手伝ってくれるところも
ある。多くの船員が感謝する
SIM カードは、存続が厳しい船
員センターにとっても、貴重な
収入源だ。
一つの港にしか寄港せず、船
内に泊まる場合は、ポータブル
のホットスポットを使って、
Wi-Fi 接続を可能にしてくれる
訪船サービスを受けられれば
幸いだ。出港までインターネッ
トを利用できる。このようなサ
ービスが受けられるなら、寄付
金を払ってもいいという船員
もいる。
しかし、このようなサービス
を提供するには、訪船者が適切
な訓練を受け、一定の IT の知
識を習得する必要がある。1カ
月に一度のボランティアでは、
このような技術・知識を習得
するのは難しい。だからこそ、
我々は、訪船を職業選択の一つ
として考えられるようにした
いのだ。IT に詳しい若い世代を
募り、彼らの技術、熱意、創造
性を海運の世界で活かしてほ
しいと思う。
一方、船内のインターネット
利用は誰もが望み、恩恵をもた
らすものなのかという疑問も
存在する。ここ数年、ターンア
ランドタイムの短縮や保安対
策強化等の理由により、船員の
上陸期間が短くなっている。船
内という孤立した環境の中で、
インターネットに長時間を費
やせば、社会的孤立が深まるの
ではないかと懸念する声は多
い。また、余暇の過ごし方が若
い世代とは全く異なるベテラ
ンの船員とのジェネレーショ
ン・ギャップが広がることも
懸念される。
サービスを利用する船員、港
の船員福祉団体、サービスを提
供する訪船者との間の議論を
活発化させたい。港で機会があ
れば、是非、声を上げてほしい。
ITF 船員トラストに、イ
ンターネット接続に関す
る経験を知らせて下さい
([email protected])
。皆様の意
見をお待ちしています。
綴じ込み案内書
ITFに
支援を求めるには
船員組合やITFインスペクター
の見つけ方
まずは、所属の組合に連絡しよう。組合
に未加入の場合は、加入する方法を見つけ
よう。今すぐ支援が必要な場合や、所属の
組合と連絡が取れない場合は、ITF のイン
スペクターをつかまえよう。インスペクタ
ーの連絡先は、この綴じ込み案内書の3頁
または6頁へ。
のアドバイスを提供した後、担当部署(イ
ンスペクターや ITF 本部など)に引き継ぎ
ます。
ITF 本部の業務時間中は、
+442079409287 へ
ヘルプライン(24 時間対応)
:
+442082530177
電話する前に
次のチェックリストを参考に、問題を整
理しておこう。
ITFの船員用ホームページ
(www.itfseafarers.org)にアクセスし、 あなた自身について
「FindandInspectororUnion(インスペクタ ・名前
ーと組合の見つけ方)をクリックすれば、 ・職位
・国籍
ITF 加盟組合の連絡先が分かる。
スマートフォンやタブレットの場合は、 ・連絡先
無料アプリ「ITFSeafarers」をダウンロー 本船について
・船名
ドしよう。
・船籍
www.itfseafarers.org/seafarer-apps.cfm
・最も近くにいる ITF インスペクター、コ ・IMO ナンバー
ーディネーター、または組合の連絡先が ・現在の位置
・乗組員の数と国籍
分かる
問題について
・乗船契約を結ぶ前に、本船の労働条件を
・どのような問題か?
調べることができる
・乗船期間は?
・乗組員全員が同じ問題を抱えているか?
船員センター
ITF に連絡するには
船員センターは、問題に対するアドバイ
ス、相談相手、通信手段、本船から離れて
リラックスできる場所などを提供してく
れる。無料アプリ「Shoreleave」をダウン
ロードして、最寄の船員センターを見つけ
よう。
http://www.itfseafarers.org/seafarerapps.cfm
ITF は 24 時間対応のヘルプライン(電
話相談サービス)「グローバル・サポー
ト・ライン」を開設しています。多言語に
対応できる、訓練されたスタッフが、当面
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
2
雇 用
雇用契約 配乗代理業者
ILO 海上労働条約は、民間の配乗代理業者は規制されなければならないとし、船員に雇用機会提供のための手数料を課すこと
や、賃金からの違法な控除を行うこと、船員のブラックリストを作成することを禁止している。また、船舶所有者は、利用
する配乗代理業者がこれらの要件に適合することを確保しなければならないとしている。配乗代理業者に関して、問題に直
面した場合は、ITF にメールで連絡を([email protected])
。
契約書にサインする前に
雇用契約に関するITFのアドバイス
ITF が承認する団体協約に準拠した雇用契約なら、
ほぼ間違いなく適切な労働条件を保障される。
そうでない場合は、次の項目をチェックしてみよう。
必ず文書による契約を交わしてから
就労すること。
白紙の契約書、または内容が具体的
ではない、もしくは聞き慣れない条
件を含んでいる契約書には絶対にサイン
しないこと。
れる一律の時給の場合と、時間外手当とし
て毎月支給される一定額の場合とがある。
いずれにしても、規定内の残業時間を超え
た場合の時間給は、明確に規定されなけれ
ばならない。ILO の規定では、時間外手当
は最低「1.25×通常の時間給」で計算すべ
きである、とされている。
1 ヶ月に取得できる有給休暇の日数
契約にサインする前に、団体交渉協
が明示されているか確認すること。
約についての記述があるかを確認す
ること。もしあれば、その条件について完 ILO の規定では、有給休暇は年間 30 日
全に理解し、写しを取って契約書と共に保 (月 2.5 日)を下回らないこととされてい
る。
管しておくこと。
契約の有効期限が明示してあるかを
確認すること。
船主の一方的な意思で雇用期間を変
更できる内容を含んだ契約書にはサ
インしないこと。雇用期間のいかなる変更
も双方の合意に基づいて行われるべきで
ある。
労働者が自ら選択する労働組合への
加入、連絡、相談もしくは組合の代表
となることを禁じる条項を含む契約書に
はサインしないこと。
契約書は、サインした後、必ず写しを
もらい、保管すること。
賃金、時間外手当、有給休暇がそれぞ
れ別項目に分かれて規定されている
か確認すること。
契約解除の条件(契約を解除するに
は何カ月前に本人に通告しなければ
ならないか等)を確認すること
上下船の費用の一部を船員に負担さ
せる内容を含む契約書には絶対にサ
インをしないこと。
自らの意思で締結した労働条件、契
約書、協約は、条件の如何に関わら
ず、ほとんどの司法権の下において、法的
拘束力を持つことを認識しておくこと。
契約期間中、船主が賃金の一部を留
保できる内容を含む契約書にはサイ
基本給および基本労働時間(例えば、
週 40 時間、44 時間、48 時間など) ンしないこと。船員は毎月末にその月の給
が契約に明示されているか常に確認する 料全額を受け取る権利を有する。
こと。国際労働機関(ILO)が規定する基本
個々の労働契約には各種手当が必ず
労働時間は最長週 48 時間(月 208 時間)
しも詳細に明示されているわけでは
である。
ないので、以下の場合にどれだけ補償金が
時間外労働の補償の額と支給方法が 支払われるかを確認しておく必要がある。
契約に明示されているか確認するこ (書面の契約書か、契約上の権利として認
)
と。基本労働時間を超過した場合に支払わ めさせるのが望ましい。
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
・契約期間中の疾病、障害
・死亡(近親者への補償額)
・船舶の喪失
・船舶の喪失による私物の喪失
・契約満了前の解雇
あなたの船に ITF 協約が締結されてい
るかどうかを確認するには、ITF のホーム
ページ(itf.seafarers.org)へ(
「LookUpa
Ship」をクリック)
。
携帯電話やタブレット用アプリのダウン
ロードは www.itfseafarer-apps.org へ。
3
連絡先一覧
ITFインスペクターの連絡先
氏名 役割
Agustin Suarez
Rigoberto Suarez Cardozo
Roberto Jorge Alarcón
Rodolfo Vidal
Ben West
Brian Gallagher
Dean Summers
Graham Bragg
Keith McCorriston
Matt Purcell
Christian Roos
Marc Van-Noten
Roger Opdelocht
Souradjou Alassane Fousseni
Ali Zini
Renialdo de Freitas
Vladimir Miladinov
Gerard Bradbury
Peter Lahay
Vincent Giannopoulos
Juan Villalon Jones
Miguel Sanchez
Milko Kronja
Predrag Brazzoduro
Romano Peric
Jens Fage-Pedersen
Morten Bach
Talaat Elseify
Jaanus Kuiv
Heikki Karla
Ilpo Minkkinen
Jan Örn
Kenneth Bengts
Corine Archambaud
Geoffroy Lamade
Laure Tallonneau
Pascal Pouille
Yves Reynaud
Merab Chijavadze
Hamani Amadou
Karin Friedrich
Susan Linderkamp
Sven Hemme
Ulf Christiansen
Darren Procter
Liam Wilson
Paul Keenan
Tommy Molloy
Costas Halas
Stamatis Kourakos
Januario Jose Biague
Jason Lam Wai Hong
Yu-Sak Ming
Jónas Gardarsson
B V Ratnam
Chinmoy Roy
K Sree Kumar
Kersi Parekh
Louis Gomes
Mukesh Vasu
Narayan Adhikary
Terence Fernando
Thomas Sebastian
Ken Fleming
Michael Whelan
Michael Shwartzman
Bruno Nazzarri
Francesco Di Fiore
Francesco Saitta
Gianbattista Leoncini
Paolo Serretiello
Paolo Siligato
Kodjara Calixte
Joachim Mel Djedje-Li
Kape Hie
Fusao Ohori
Shigeru Fujiki
Toshihiro Ame
Contact
Contact
Coordinator
Inspector
Contact
Contact
Coordinator
Inspector
Inspector
Assistant Coordinator
Inspector
Inspector
Coordinator
Contact
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Assistant Coordinator
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Assistant Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Contact
Contact
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Contact
Inspector
Contact
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Contact
Inspector
Contact
Coordinator
Inspector
Inspector
国
港
Argentina
Buenos Aires
Argentina
Buenos Aires
Argentina
Rosario
Argentina
Buenos Aires
Australia
Newcastle
Australia
Brisbane
Australia
Sydney
Australia
Townsville
Australia
Fremantle
Australia
Melbourne
Belgium
Zeebrugge
Belgium
Antwerp
Belgium
Antwerp
Benin
Cotonou
Brazil
Paranagua
Brazil
Santos
Bulgaria
Varna
Canada
Halifax
Canada
Vancouver
Canada
Montreal
Chile
Valparaiso
Colombia
Barranquilla
Croatia
Sibenik
Croatia
Rijeka
Croatia
Dubrovnik
Denmark
Copenhagen
Denmark
Copenhagen
Egypt
Port Said
Estonia
Tallinn
Finland
Helsinki
Finland
Helsinki
Finland
Turku
Finland
Helsinki
France
Le Havre
France
St Nazaire
France
Brest
France
Dunkirk
France
Marseille
Georgia
Batumi
Germany
Rostock
Germany
Hamburg
Germany
Bremen
Germany
Bremen
Germany
Hamburg
Great Britain
Southampton
Great Britain
Aberdeen
Great Britain
Hull
Great Britain
Liverpool
Greece
Piraeus
Greece
Piraeus
Guinea-Bissau Bissau
Hong Kong, China / Hong Kong
Hong Kong, China / Hong Kong
Iceland
Reykjavik
India
Visakhapatnam
India
Calcutta
India
Chennai
India
Mumbai
India
Mumbai
India
Kandla
India
Haldia
India
Tuticorin
India
Kochi
Ireland
Dublin
Ireland
Dublin
Israel
Haifa
Italy
Livorno
Italy
Genoa
Italy
Sicily
Italy
Taranto
Italy
Naples
Italy
Trieste
Ivory Coast
San Pedro
Ivory Coast
Abidjan
Ivory Coast
San Pedro
Japan
Tokyo
Japan
Chiba
Japan
Osaka
事務所
携帯電話
+54 (0) 11 4300 7852
+54 911 386 22490
+54(0)11 4300 7852/3/4/5
+54(0)911 61525221
+54(0)341 425 6695
+54(0)9 11 4414 5687
+54 (11) 4331 4043
+54(0)9 11 4414 5911
N/A
+61(0)4 0037 3028
+61(0)7 554 78716
+61(0)414 799134
+61(0)2 9267 9134
+61(0)419 934 648
+61(0)7 4771 4311
+61(0)419 652 718
+61(0)8 9335 0500
+61(0)422 014 861
+61(0)3 9329 5477
+61(0)418 387 966
+32(0)2 549 11 03
+32(0)486 123 890
+32(0)3 224 3419
+32(0)475 775700
+32(0)3 224 3411
+ 32(0)475 440088
+229(0)97080213
+229(0) 95192638
+55(0)41 34220703
+55(0)41 9998 0008
+55(0)13 3232 2373
+55(0)13 99761 0611
+359 2 931 5124
+359 887888921
+1(0)902 455 9327
+1(0)902 441 2195
+1(0)604 251 7174
+1(0)604 418 0345
+1 514 931 7859
+1 514 970 4201
+56(0)32 2217727
+56(0)992509565
+57(0)5 3795863
+57 (0) 310 657 3399
+385(0)22 200 320
+385(0)98 336 590
+385(0)51 325 343
+385(0)9 821 1960
+385 20 418 992
+385 99 266 2885
+45(0)36 36 55 94
+45(0)22 808188
+45(0)88920355
+45(0)21649562
+20(0)66 3324 100
+20(0)10 1638402
+372(0)6116 392
+372(0)52 37 907
+358 9 61520255
+358 40 4356 094
+358(0)9 615 20 253
+358(0)40 7286932
+358(0)9 613 110
+358(0)40 523 33 86
+358(0)9 615 20 258
+358(0)40 455 1229
+33(0)235266373
+33(0)685522767
+33(0)2 40 22 54 62
+33(0)660 30 12 70
+33(0)2 98 85 21 65
+33(0)6 85 65 52 98
+33(0)3 28 21 32 89
+33(0)6 80 23 95 86
+33(0)4 915 499 37
+33(0)6 07 68 16 34
+995(0)5 222 70177 / 222 273920 +995(0)5 93 261303
+49(0)381 670 0046
+49(0)170 7603862
+49(0)40 2800 6812
+49(0)170 85 08 695
+49(0)421 330 33 33
+49(0)1511 2 666 006
+49 421 330 33 30
+49 1512 7 037 384
+49(0)40 2800 6811
+49(0)171 64 12 694
N/A
+447949 246219
+44 (0)1224 582 688
+44 (0)7539 171323
+44(0)20 8989 6677
+44(0)7710 073880
+44(0)151 639 8454
+44(0)776 418 2768
+30(0)210 411 6610/6604
+30(0)6944 297 565
+30(0)210 411 6610/6604
+30(0)6 9 77 99 3709
+245(0)5905895
+245(0)6605246
+852 2541 8133
+852 9735 3579
+852 2541 8133
+852 9352 8651
+354(0)551 1915
+354(0)892 79 22
+91(0)8912 502 695 / 8912 552 592 +91(0)9 8481 980 25
+91(0)33 2459 1312
+91(0)98300 43094
+91(0)44 2522 3539
+91(0)9381001311
+91(0)22 2261 6951
+91(0)98205 04971
+91(0) 22 2261 8368 / 8369
+91(0) 8080556373
+91(0)2836 226 581
+91(0)94272 67843
+91(0)3224 252203
+91(0)9434517316
+91(0)461 233 9195
+91(0)9940 767323
+91(0)484 2338249 / 2338476 / 2700503 +91(0)98950 48607
+353(0)1 85 86 317
+353(0)87 64 78636
N/A
+353 872501729
+972(0)4 8512231
+972(0) 54699282
+39(0)586 072379
+39(0)335 612 9643
+39(0)10 25 18 675
+39(0)33 1670 8367
+39(0)91 321 745
+39(0)338 698 4978
+39(0)99 4707 555
+39(0)335 482 703
+39(0)81 265021
+39(0)335 482 706
N/A
+39(0)3484454343
+225(0)08 17 60 65
+225(0)21 35 72 17
+225 07 88 00 83
N/A
+22547053632
+81(0)3 5410 8320
+81(0)90 6949 5469
+81(0)3 3735 0392
+81(0)90 9826 9411
+81(0)6 6616 5116
+81(0)90 4673 5671
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
Eメール
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4
インスペクターと
ITFインスペクター
世界中で船員を支援
Reykjavik
ITF HEAD OFFICE
ETF EUROPE
Hamilton
Montreal
Vancouver
Seattle
Halifax
Cleveland
Portland
Los Angeles
New Orleans
Houston
New York
Baltimore
Morehead CIty
Haif
ITF
Port Said
Port Canaveral
Las Palmas
Manzanillo
Veracruz
Cristobal
San Juan
ITF AFRICA (FRANCOPHONE)
Dakar
Bissau
Barranquilla
Abidjan
San Pedro
Cotonou
Lagos
Lome
ITF AFRIC
M
ITF AMERICAS
Santos
Paranaguá
ITF本部
ロンドン(英国)
Tel: +44 (0) 20 7403 2733
Email: [email protected]
Valparaiso
Rosario
Buenos Aires
欧州運輸労連(ETF)
ブリュッセル(ベルギー)
Tel: +32 (0)2 285 46 60
Email: [email protected]
米州地域事務所
リオデジャネイロ(ブラジル)
Tel: +55 (21) 2223.0410
Email: [email protected]
ITFインスペクターの連絡先詳細はwww.itfglobal.org/seafarers/msg-contacts.cfm
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
Durban
Cape Town
5
地域事務所の所在地
Tromso
国際運輸労連(ITF)
Bergen
Oslo
Turku
Stockholm
St Petersburg
Helsinki
Tallinn
Stavanger
Norrkoping
Porsgrunn
Riga
Gothenburg
Helsingborg Klaipeda
Kaliningrad
Liverpool Hull Copenhagen
Hamburg
Gdynia
Dublin
Delfzijl
Rostock Szczecin
Bremen
Bristol
Rotterdam
Zeebrugge
Southampton
Dunkirk Antwerp
Odessa
Brest
Novorossiysk
Le Havre
St Nazaire
Trieste
Constanta
Batumi
Rijeka
Genoa
Bilbao
Vigo
Varna
Marseille
Sibenik
Livorno Dubrovnik Bar
Istanbul
Barcelona
Lisbon
Taranto
Naples
Aberdeen
Valencia
Vladivostock
Chiba
ITF ASIA PACIFIC (TOKYO)
Seoul
Incheon
Pusan
Osaka
fa
ARAB WORLD
CA
Umea
Palermo
Piraeus
Algeciras
Valletta
ITF ASIA PACIFIC (DELHI)
Taichung
Kolkata
Hong Kong
Haldia
Visakhapatnam
Kandla
Mumbai
Keelung
Kaoshiung
Manila
Kochi
Chennai
Tuticorin
Cebu City
Colombo
Singapore
Mombasa
Townsville
アフリカ地域事務所
ナイロビ(ケニヤ)
Tel: +254 20 374 2774/5
Email: [email protected]
アフリカ仏語圏事務所
ワガドゥグ(ブルキナファソ)
Tel: +226 (0) 50 375610
Email: [email protected]
Brisbane
Fremantle
Newcastle
ITF ASIA PACIFIC (SYDNEY)
Melbourne
Wellington
アラブ地域事務所
アンマン(ヨルダン)
Tel: +962(0)6 5821366
Email: [email protected]
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
アジア太平洋地域
デリー事務所
Tel:+91 (0) 11 2335 4408 / 7423
or 11 2373 1669
Email: [email protected]
東京事務所
Tel:+81 (0) 337 982 770
Email: [email protected]
シドニー事務所
Tel:+61 420 928 780
Tel: +64 21 227 1519
www.itfseafarers.org
6
連絡先一覧
ITFインスペクターの連絡先
N氏名 役割
Betty Makena Mutugi
Bae Jung Ho
Hye Kyung Kim
Kyoung-Woo Jang
Norbert Petrovskis
Andrey Chernov
Rafiq Ramoo
Paul Falzon
Enrique Lozano
Honorio Alberto Galvan Aguilar
Tomislav Markolović
Aswin Noordermeer
Debbie Klein
Ruud Touwen
Grahame McLaren
Akintunde Oladipo Leoso
Cyril A Nzekwe
Deborah Adekemi Akinware
Goodlife Elo Okoro
Henry Akinrolabu
Omeiza Jimoh Umar
Aage Baerheim
Angelica Gjestrum
Erling C Ween
Tore Steine
Truls M Vik Steder
Yngve Lorentsen
Luis Fruto
Joselito Pedaria
Rodrigo Aguinaldo
Adam Mazurkiewicz
Grzegorz Daleki
João de Deus Gomes Pires
Felipe Garcia Cortijo
Adrian Mihalcioiu
Kirill Pavlov
Olga Ananina
Petr Osichansky
Sergey Fishov
Vadim Mamontov
Mouhamed Diagne
Seydina Keita
Daniel Tan Keng Hui
Gwee Guo Duan
Cassiem Augustus
Sprite Zungu
Gonzalo Galan Fernandez
Joan Mas Garcia
Jose M Ortega
Juan Ramon Garcia
Luz Baz
Mohamed Arrachedi
Ranjan Perera
Annica Barning
Fredrik Bradd
Göran Larsson
Goran Nilsson
Haakan Andre
Sven Save
Sanders Chang
Tse-Ting Tu
Franck Kokou Séyram Akpossi
Muzaffer Civelek
Nataliya Yefrimenko
Barbara Shipley
Dwayne Boudreaux
Enrico Esopa
Jeff Engels
John Metcalfe
Lila Smith
Martin D. Larson
Michael Baker
Shwe Tun Aung
Stefan Mueller-Dombois
Tony Sacco
Tony Sasso
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Contact
Contact
Inspector
Inspector
Contact
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Contact
Contact
Contact
Contact
Inspector
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Consultant
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
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Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
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Coordinator
Inspector
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Contact
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Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Inspector
Inspector
Assistant Coordinator
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
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Inspector
Inspector
Inspector
Coordinator
Coordinator
Coordinator
Contact
Inspector
Inspector
Contact
Inspector
Inspector
Inspector
Inspector
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
国
港
事務所
携帯電話
Kenya
Korea
Korea
Korea
Latvia
Lithuania
Malaysia
Malta
Mexico
Mexico
Montenegro
Netherlands
Netherlands
Netherlands
New Zealand
Nigeria
Nigeria
Nigeria
Nigeria
Nigeria
Nigeria
Norway
Norway
Norway
Norway
Norway
Norway
Panama
Philippines
Philippines
Poland
Poland
Portugal
Puerto Rico
Romania
Russia
Russia
Russia
Russia
Russia
Senegal
Senegal
Singapore
Singapore
South Africa
South Africa
Spain
Spain
Spain
Spain
Spain
Spain
Sri Lanka
Sweden
Sweden
Sweden
Sweden
Sweden
Sweden
Taiwan, China
Taiwan, China
Togo
Turkey
Ukraine
USA
USA
USA
USA
USA
USA
USA
USA
USA
USA
USA
USA
+254(0)41 2491974
+254(0)721 425828
Mombasa
Pusan
+82(0)51 463 4828
+82(0)10 3832 4628
Busan
+82(0)2 716 2764
+82(0)10 5441 1232
Incheon
+82(0)32 881 9880
+82(0)10 5268 9346
Riga
+371(0)67709242
+371(0)29215136
Klaipeda
+370(0)46 410447
+370(0)699 28198
+60(0)12 2926380
+60(0)122926380
Port Klang
Valletta
+356 79969670
+356 79969670
Veracruz
+52(0)229 932 1367 / 3023
+52(0)1 229 161 0700
Manzanillo
+52(0) 22 99 32 83 23
+52(0)1 314 122 9212
Bar
+382(0)32 322300
+382(0)69 032 257
+31(0)6 53 337522
Rotterdam - Vlissingen - Terneuzen
Rotterdam – Amsterdam - Ijmuiden
+31(0)6 53 182 734
Rotterdam - Delfzijl - Eemshaven - Harlingen
+31(0)6 533 15072
Wellington
+64(0)4 801 7613
+64(0)21 292 1782
Lagos
+234 805 3367779
Lagos
+234(0) 803 3091057
Lagos
+234 708 7331148
+234(0)7025801024
Lagos
+234(0)1 774 0532
+234(0)8068468607
Lagos
+234(0)803 835 9368
+234(0)803 835 9368
Lagos
+234 708 7331148
_+234(0)8037132332
Stavanger
+47(0)51 84 05 49
+47(0)90 75 5776
Oslo
+47(0)22 82 58 24
+47(0)9 77 29 357
Oslo
+47(0)22 825 825
+47(0)90 50 6084
Bergen
+47(0)55 23 00 59
+47(0)907 68 115
Porsgrunn
+47(0)35 54 82 40
+47(0)90 98 04 87
Tromso
N/A
+47(0)41401222
Cristobal
+507(0)264 5101
+507(0)6617 8525
Cebu City
+63(0)32 256 16 72
+63(0)920 9700 168
Manila
+63(0)2 536 8287
+63(0)917 8111 763
Szczecin
+48(0)91 4239707
+48(0)501 539329
Gdynia/Gdansk +48 58 6616096
+48 514 430 374
Lisbon
+351(0)21 391 8181
+351(0)91 936 4885
San Juan
+1787(0)783 1755
+1787(0)410 1344
Constantza
+40(0)241 618 587
+40(0)722 248 828
St Petersburg
+7(0)812 718 6380
+7(0)911 929 04 26
Novorossiysk
+7(0)8617 612556
+7(0)9887 621232
Vladivostock
+7(0)4232 512 485
+7(0)4232 706485
St Petersburg
+7(0)812 718 6380
+7(0)911 096 9383
Kaliningrad
+7(0)4012 656 840/475
+7(0)9062 38 68 58
Dakar
+221(0)775364071
+221 70 477 26 92
Dakar
+221(0)776926408
+221 70 795 07 61
Singapore
+65(0)6379 5660
+65(0)9616 5983
Singapore
+65(0)6390 1611
+65(0)9823 4979
Cape Town
+27(0)21 461 9410
+27(0)82 773 6366
Durban
+27(0)31 706 0036
+27(0)827 73 63 67
Las Palmas
N/A
+34 638809166
Barcelona
+34(0)93 481 27 66
+34(0)629 302 503
Algeciras
+34(0)956 657 046
+34(0)699 436 503
Valencia
+34(0)96 367 06 45
+34(0)628 565 184
Vigo
+34(0)986 221 177
+34(0)660 682 164
Bilbao
+34(0)944 93 5659
+34(0)629 419 007
Colombo
+94(0)112583040
94(0) 773 147005
Stockholm
N/A
+46(0)70 57 49 714
Umea
+46(0)10 4803103
+46(0)761006445
Gothenburg
+46(0)10 480 3114
+46(0)70 626 7788
Gothenburg
+46(0)10 480 31 21
+46(0)76 100 65 12
Norrkoping
+46(0)8 791 4100
+46(0)70 574 2223
Helsingborg
N/A
+46(0)70 57 49 713
Taichung
+886(0)2658 4514
+886(0)955 415 705
Kaoshiung
+886(7)5212380
+886(0)988513979
Lome
+228(0)90 04 24 07
+228(0)99 50 5335
Istanbul
+90(0)216 4945175
+90(0)535 663 3124
Odessa
+380(0)482 429 901
+380(0)50 336 6792
Baltimore/Norfolk +1 757 622 1892
+1 202 412 8422
New Orleans
N/A
+1(0)504 442 1556
New York
+1(0)718 499 6600 ext. 240
+1(0)201 417 2805
Seattle - Tacoma +1(0)360 379 4038
+1(0)206 331 2134
Portland, Maine – Boston +1(0)207 785 4531
+1(0)207 691 5253
Seattle - Tacoma +1(0)206 533 0995
+1(0)206 818 1195
Portland
N/A
+1(0)503 347 7775
Cleveland
+1(0)216 781 7816
+1(0)440 667 5031
Houston
+1(0)713 659 5152
+1(0)713 447 0438
Los Angeles - Southern California +1(0)562-493-8714 +1(0)562 673 9786
Morehead City
+1(0)910 859 8222
+1(0)910 859 3153
Port Canaveral +1(0)321 784 0686
+1(0)321 258 8217
Eメール
[email protected]
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[email protected]
7
争議行為
争議行為を起こす前に
これを読んでください!
ITF は、便宜置籍船に乗り組む船員が、正当な賃
金と適正な団体協約の適用を受けられるよう、支援
を約束しています。
時には船員が、現地の裁判所に提訴しなければな
らないこともあります。場合によっては、船舶に対
するボイコットも必要です。どのような手段が適切
かは、国または場所によっても異なります。ある国
では適切な行動が、他の国においては全く不適切な
こともあります。
最初に取るべき行動は、先ず、現地の ITF 代表に
連絡することです。本誌の綴じ込み資料3~6頁に
記載されている連絡先を参考にしてください。何ら
かの行動を取る前に、現地の助言を必ず得てくださ
い。
一部の国においては、船舶の乗組員によるストラ
イキが、違法行為となることもあります。そのよう
な場合には、現地の ITF 加盟組合の代表が状況を説
明します。
多くの国において、労使紛争での勝利の鍵を握る
のはストライキです。この場合にも、現地の助言に
基づいて行動する必要があることは言うまでもあ
りません。多くの国で、船員には、航行中を除き、入
港中のストライキ権が法律上、認められています。
あらゆるストライキにおいて重要なことは、規律
と安全を守り、団結を維持することです。多くの国
で、ストライキ権は基本的人権の一部として、法律
あるいは憲法により保障されています。
どのような行動を選択するにせよ、事前に現地の
ITF 代表に連絡することを決して忘れないでくだ
さい。お互いに協力することによって、正義と基本
的権利の闘いに勝利することができるのです。
海難事故
あなたの船が海難事故に巻き込まれた場合、船主、港湾当局、沿岸国、旗国、あるいは出
身国による公正な処遇を確保するための国際的なガイドラインが存在することを知っておき
ましょう。このガイドラインに基づくあなたの権利を理解しておくことが重要です。
・あなたには弁護士を呼ぶ権利があります。質問に答えたり、供述を行ったりする前に、弁
護士を要求してください。あなたの回答や供述が、将来の法的手続きにおいて、あなたに
不利な材料として利用される可能性があるからです。
・言われたことを理解できない場合は、質問の中止を求めて下さい。使われている言語に問
題がある場合は通訳を要求して下さい。
・会社はあなたを支援する義務があります。会社に連絡して下さい。それが難しい場合は、
組合に助言と支援を求めて下さい。
詳しくは、www.itfglobal.org/fairtreatmentへ。
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
8
詐欺に注意
偽の募集広告の特徴をつかもう
偽の職業斡旋業者は弱い立場にある船員を容赦なく食い物にする。ITF加盟労組、ノーティラス
インターナショナルのアンドリュー・リントンが、船員が注意すべきポイントを概説する。
既に十分すぎるほどの被害
が出ているにもかかわらず、最
近、乗組員が偽の職業斡旋業者
に現金をだまし取られるケー
スが大幅に増えている。有名企
業から高い給料をもらえると
騙されるケースが多い。
「詐欺師たちの巧妙さには際
限がない」とノーティラス・イ
ンターナショナル労組のマー
ク・ディキンソン書記長は述
べる。
「詐欺師たちは立場の弱
い船員を食い物にしている。騙
されるのはほとんどが途上国
の船員だ。仕事を得るために必
死な者が多く、借金をして仲介
料を支払ってまで仕事を得よ
うとするからだ」
キューナード、カリスブルッ
ク、シーライオン、ゾディアッ
ク、フルーンなどの大手海運会
社の名前が詐欺師たちに利用
されている。名前に加え、これ
らの企業のロゴなど他のもの
も利用し、詐欺師たちは一見魅
力的な仕事を紹介する。
後にビザ取得や入管書類の
準備金を前払いするように言
われ、船員の苦難は始まる。偽
のビザ取得代行会社に船員た
ちが送った金は二度と戻って
こない。
似たような手口に、船員から
「斡旋料」や「登録料」
、あるい
は健康診断やパスポートの処
理代金をだまし取ったり、中に
は上船に必要な航空券代金を
取ったりするものすらある。
詐欺師たちがターゲットと
するのは主に東欧やアジア出
身の船員だが、伝統的な海運国
出身の船員が騙されることも
ある。そのため、ノーティラ
ス・インターナショナル労組
はこの問題の対処に特に積極
的な役割を果たしている。最も
らしく見せるため、詐欺師たち
が英国などの架空の住所を使
うことが多いからだ。
ノーティラスに報告があっ
たあるケースでは、インドネシ
ア人の職員がノーティラス所
属の ITF インスペクター、トミ
ー・モロイに連絡をしてきた。
自称、英国を拠点とする企業か
ら客船のセカンド・オフィサ
ーの職を「非課税の」4500 ポ
ンド(約 80 万円)の月給およ
び十分な有給休暇つきで紹介
するという連絡があったとい
うのだ。
しかし、この仕事に就くには
条件がついていた。まず、英国
への移動に必要な全書類の作
成費用と旅行代理店の仲介料
を支払わねばならないという
のだ。
幸い、モロイ・インスペクタ
ーの助言に従い、このインドネ
シア人職員は会社が要求して
きた 230 ポンド(約 4 万円)
を支払わずに済んだ。ノーティ
ラス労組はこの詳細を二つの
政府機関、ビジネスイノベーシ
ョン・技能省(BIS)と、英国の
詳しい情報
信じられないくらいうまい話が来たら、以下を参照に
しよう:
www.itfseafarers.org/job_scams.cfm
危険信号に関する助言なら
www.scam-job-emails.tkを参照のこと。
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
ビザが絡んでいたので英国移
民局(OISC)に報告し、調査す
るよう要請した。
しかし、詐欺師たちに対し
て、政府機関が実質的な行動を
取ることはほぼないことが懸
念される。詐欺師の多くが私書
箱の住所を隠れ蓑に、数か国を
股にかけて活動しているため、
管轄権の問題があり、法の適用
が極めて困難だ。政府機関に摘
発の意思があったとしても難
しいのだ。
ITF が暴露したケースがこ
の一例だ。カレドニアン・オフ
ショアと名乗る会社が実際は
パナマに所在していたにも関
わらず、カナダの私書箱を使っ
ていた。ITF はまた、アラブ首
長国連邦(UAE)を拠点とし、何
千人もの船員から「医療費」を
だまし取ったアル・ナジャッ
トの詐欺についても公表した。
2006 年の海上労働条約に
は民間の船員の募集及び職業
紹介のための機関が従うべき
要件が明確に規定されている
ため、この条約が不正行為との
闘いを支援してくれるかもし
れないとの希望もある。
しかし、当面は、
「船員に対す
る詐欺行為」を船員自身が告発
していくべきだ。そうすること
で、この問題の深刻さが明白と
なり、当局もより効果的な策を
取らざるを得なくなるからだ。
疑わしい会社についての議論は
www.fraudwatchers.org へ。
いわゆる「詐欺会社」のリストは以下を参照のこと。但し、
詐欺
が暴露した時点で社名を変える可能性が高いので要注意:
www.cruiselinesjobs.com/cruise-ship-jobsscam
英国職業紹介業界詐欺対策フォーラム
www.safer-jobs.com
危険信号
に気を
つけよう
ノーティラス労組はしばし
ば、雇用詐欺を思わせる危険
信号に注意するよう助言して
いる。
・船で働くにあたり、何らか
の料金の前払いを要求して
くる。
(そのような行為は国
際法で禁じられている)
・私書箱や、固定電話ではな
く携帯電話を会社の連絡先
に利用している。
・料 金 の 支 払 い を ウ ェ ス タ
ン・ユニオンなどの送金サ
ービス会社を通じて行うよ
うに指示してくる。
・下手な英語で E メールを送
ってくる。
・政府のEメールアカウント
ではなく、ビザや労働許可
証を管轄省庁を装い、支払
いを求める E メールを送っ
てくる。
英国詐欺報告センター
www.actionfraud.police.uk
疑わしい電話番号に関する情報
www.scammmertelephonenumbers.blogspot.
co.ukwww.fraudwatchers.org/forums/view.ph
p?pg=fw_personal_nos
ITF 船舶検索アプリ
www.itfseafers.org/sefarer-apps.cfm
健康特集
19
エボラ出血熱と
HIV/エイズ
船員への影響
エボラ出血熱から
自分を守るために
海運産業の助言
ITF、国際海運会議所(ICS)
、
国際海事使用者委員会(IMEC)
が国際ガイドラインに合意し
た。このガイドラインでは、エ
ボラ出血熱が発生している国
の港に入港する船舶に乗り組
西アフリカのリベリア、シエラレオネ、ギニア、セネガ む船長と船員は、ウイルスの危
険やウイルスがいかに伝染す
ルに入港する船員や港湾労働者はエボラ出血熱に感染す るか、リスクを減らす方法につ
るリスクを心配しているだろう。
いて認識しておくようにと助
しかし、国際海事機関(IMO)や世界保健機関(WHO) 言している。同ガイドラインに
によると、これらの国内外に移動したことによって感染す よると:
・ISPS コード要件では、船舶
るリスクは低い。
が港に停泊中に、許可を得な
また、現段階では、船員が感染したという報告も上がっ
い人間が船に入ることは厳
しく禁じられている。
ていない。ここでは、自己の安全を守る方法を伝授する。
・エボラ出血熱の発生国の場
合は、船員に上陸を許可する
べきか慎重に検討するべき
だ。
・船主や船舶運航者は、エボラ
出血熱の発生国で船員を交
替させることは避けるべき
だ。
・出港した後、感染の兆候を感
じた船員は、直ちに医療担当
者に報告するべきだ。
発生国でリスクを減らすには?
・個人個人が常に衛生を保ち、
定期的に手を洗うよう努め
る。
・誰であれ握手や身体的接触
を避ける。
・ギャングウェイや他の目立
つ場所に、塩素、水、粉石け
ん、バケツや洗い場を必ず用
意しておき、上船してくる人
間全員が手を洗い、除菌する
ようにする。
・感染者の血液や体液が触れ
エボラ出血熱:事実
筋力の極度の低下などが多い。ほとんどの症状が風邪と同じで
・エボラ出血熱は重篤な、しばしば死に至る病気で、死亡率は 9
あるため、エボラ出血熱への感染はすぐには明確に分かりにく
割に上る。
いが、最近、発生国に渡航した経験がある場合は感染を疑うべ
・現在では、病気の症状を治療することしかできない。
きだ。
・重症患者が嘔吐、出血、下痢などにより排出し、その体液から
感染する。血液、大便、嘔吐物が最も感染力の強い体液で、病 ・最初に症状が現れて以降、下痢、嘔吐、湿疹、腹痛、腎臓と肝
臓の機能低下などが起き、一部のケースでは体内外の出血も見
気がかなり進行した段階では、ごくわずかな体液にも非常に多
られる。
くのウイルスが含まれる。
・肌が荒れていたり、肌に傷があったりすると感染リスクが高ま ・エボラ出血熱で亡くなった人の遺体を処理する場合は、強力な
防護服と手袋を着用し、遺体は直ちに埋葬しなければならな
る。感染リスクの高い地域に足を踏み入れる場合は、傷などを
い。世界保健機関(WTO)は、訓練を受けたケースマネジメン
覆うようにする。
トのプロが遺体の処理と埋葬を行うべきだと助言している。
・症状が現れるまでに 2-21 日間かかるが、大抵は 5-7 日で
症状が出る。感染するのは症状が出た後のみである。
・最初の兆候は頭痛を伴う発熱、関節や筋肉の痛み、のどの痛み、
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
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20
健康特集
エボラ出血熱の発生国からの渡航や発生国への渡航はリスクが低い
知っておくべき事実とは?
熱とエボラ出血熱の症状
が自分に現れた場合、船長
あるいは医療問題担当の
職員に直ちに知らせる。
船内にて
船内または
港湾ターミナルで
エボラ出血熱で亡
くなった人の遺体
に触らない。
発熱、衰弱、筋肉の痛み、
頭痛、のどの痛みが現
れ、その後、嘔吐、下痢、
出血がある。
エボラ出血熱の症状
が出ている船員や乗
客、その他の人間に
ついて船長あるいは
医療問題担当の職員
に知らせる。
エボラ出血熱の症状が
出たら、直ちに医師の
診断を受ける。
エボラ出血熱の症
状が見られる人と
の直接的な身体の
接触を避ける。
次の寄港地まで航海を続けて
も大丈夫かを考え、次の寄港地
で治療を受けさせる。エボラ出
血熱の疑いのある船員で、既に
病気の兆候が出始めている場
合は、直ちに外部の専門家の助
言を受ける。この場合、船長は
直ちに状況を次の寄港地に連
絡する。
海上で船員にエボラ出血熱
の兆候が見られた場合、以下の
警戒措置を取ることを勧め
る:
・患者の隔離のために別の部
屋を用意できない場合、感染
の疑われる船員の部屋のド
アを閉める。
・その部屋に出入りした人間
の名前をログに記録する。
・部屋に入る人間は必ず個人
防護具(PPE、手術用保護マ
スク、目の保護具、顔面を覆
う物、未滅菌グローブ、使い
船内で病人が出た場合、どうす
捨ての不浸透性のガウン)を
ればいいのか?
身に着け、衣服全体と肌の出
船員がエボラ出血熱以外の
ている部分を全て覆わなけ
治療を必要としている場合は、
たと思われる物に触らない。
・動物や生肉との接触を避け
る。
・セキュリティ監視や出向前
調査の強化を含め、密航者の
侵入を避ける。
・エボラ出血熱の兆候が見ら
れる乗組員の監視を行い、船
長、地方当局、船主に直ちに
報告する。
・発熱、頭痛、痛み、のどの痛
み、下痢、嘔吐、腹痛、湿疹、
目の充血などの症状のある
船員がいた場合、直ちに治療
を受けさせる。
・エボラ出血熱の患者の治療
を行っている病院へ船員を
行かせない。大使館や P&I ク
ラブの担当者から適切な受
け入れ施設について助言を
受ける。
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
一日中、
アルコール消毒
液で消毒を続ける。
手が
実際に汚れている場合
は石鹸と水で洗う。
ればならない。浸透性のガウ
ンしかない場合はその上か
ら防水エプロンをつける。
・隔離部屋を出る前に汚染物
や顔面との接触を避ける方
法で PPE を外さなければな
らない。
・どうしても必要な時以外は
隔離部屋から患者を動かさ
ない。また、患者に手術用マ
スクを着用させる。
・排泄物がある場合は、スプレ
ーやエアロゾルを使わずに
清掃し、殺菌する。
・患者の身体や体液に接触し
た物体は、個別に収集し、ス
プレーを使わず、他者への感
染や、環境汚染を起こさない
方法で殺菌しなければなら
ない。効果的な殺菌剤は次亜
塩素酸ナトリウム 0.05ppm
の希釈液、または 500ppm
の入手可能な塩素で、30 分
液に浸すことを推奨する。
・隔離部屋から出たいかなる
廃棄物も、船舶の臨床廃棄物
の取り扱い規則に従って処
理されなければならない。船
内に焼却炉がある場合は、廃
棄物は焼却する。廃棄物を陸
上で処理しなければならな
い場合、特別に注意を払う必
要があり、その旨を港湾局に
事前に連絡する必要がある。
エボラ出血熱の発生国に寄港
する船への乗船を拒否できる
のか?
現段階では、船員のリスクは
非常に低いと考えられている。
但し、全ての船員が上述の助言
を気に留めておく必要はある。
それでも感染地域の港に行
きたくないと思う場合、雇用契
約を終了する、あるいは自身の
健康や安全への潜在的な脅威
がある環境で、本国送還される
権利があるかを調べる必要が
ある。乗船拒否した場合、契約
違反などの法的な状況が発生
する可能性がある。
健康特集
そのような権利が自分にあ
るかどうかは、船員雇用協約
(SEA)や雇用条件、団体協約の
内容により、異なる。例えば、解
雇予告と本国送還に関する条
項や旗国の法律をチェックし、
健康面の差し迫ったリスクが
ある場合、契約を終了する、あ
るいは本国送還させてもらえ
るといった、具体的あるいは一
般的な権利について言及され
ているかを見る。そうした言及
がない場合は、不安である旨を
船長か船主に伝え、休暇を取ら
せてもらう、あるいは本国送還
させてもらう許可を得るべき
だ。
もちろん、所属の労働組合
や、次の寄港地で ITF インスペ
クターに相談し、いつでも労使
問題面のサポートや助言を得
ることができる。
エボラ出血熱のリスクに関
する最新情報は以下のサイ
トを参照のこと:
www.who.int
www.ics-shipping.org
www.imo.org
21
フィリピンの水際対策
AMOSUP がいかにエボラ出血熱の水際対策を強化しているか、コンラッ
ド・オカ委員長が語る。
リベリア、シエラレオネ、ギ
ニアの西アフリカ諸国では、エ
ボラ出血熱で 2014 年だけで
も約 8 千人が命を落とした。
人類史上最も致死率の高いエ
ボラ出血熱ウイルスがもたら
す脅威をもはや否定すること
はできない。
幸いにも、世界中で善意の
人々が人類存続のため、この病
気と不断の闘いを展開してい
る。フィリピン船舶職員部員合
同労組(AMOSUP)には、若き
開業医として昔、西アフリカで
働いた経験をもつ医学のプロ
がいるので安心だ。実にエリア
ス・ガンボア医師は 1976 年
にナイジェリアでエボラ出血
熱が初めて発生した際に、この
病気の蔓延を防ぐために活躍
した経験をもつ。
世界中の第一線でエボラ出
血熱と闘った後、ガンボア医師
は現在、フィリピンの雇用前健
康診断部に在籍している。エボ
ラ出血熱の水際対策が彼の使
命だ。
マニラにある AMOSUP の
船員病院も、船員や医療従事者
を対象とした教育、ポスターの
掲示、ビラ配布などを行い、エ
ボラ出血熱に対する認識と知
識をますます高めている。
AMOSUP はまた、医師、看護
師、ラボの技術者などを熱帯医
学研究所に研修のため派遣し
たり、エボラ出血熱対応のため
の治療プログラムを策定した
り、個人防護具(PPE)を購入
したりしている。
幸運にも、今のところ、フィ
リピンの水際対策は成功して
おり、フィリピン人の感染者は
いない。エボラ出血熱の診断を
下す能力は備えているし、感染
を防ぐ手段も講じている。ま
た、もっと重要なことだが、万
一、将来的に発生したとして
も、感染を制御する準備はでき
ている。
しかし、これで満足している
わけではない。WHO はエボラ
出血熱を「公衆衛生上の緊急事
態」と宣言し、全ての国に警戒
と対策を講じることを要請し
た。ガンボア医師と彼のチーム
の支援を受けられるため、フィ
リピンではこの闘いの勝算は
大きいと見ている。
エボラ出血熱
海運産業への影響は?
エボラ出血熱の危機がリベリア、シエラレオネ、ギニアで破壊的な被害をもたらす一方、海運業
界への影響は当初恐れられたほどは大きくないようだ。その実態を探ってみた。
カリブ海地域とマルタの港
がエボラ出血熱を懸念し、船舶
の入港を拒否したというニュ
ースは ITF から大きな反響を
得た。そのような行動は海洋法
と、共通の人間性に反するもの
であると ITF は指摘した。
しかし、概して、海運界は
2014 年 8 月に業界が合同で
発表した助言(19 ページを参
照)を受け止め、西アフリカの
貿易路線を開放し続け、労働者
の健康を優先させる形で、ウイ
ルスの拡散を避けるための実
践的な方策を取っている。その
おかげで、現段階では、感染し
た船員は一人もいない。
リベリア、シエラレオネ、ギ
ニアの港を迂回し、これらの国
の経済を破綻させるリスクを
冒すのではなく、この地域に多
くのコンテナ貨物を運んでい
る 2 社、CMA・CGM とマース
クラインは、同地域のサービス
形態を変更し、この地域を他の
西アフリカの輸送ネットワー
クと切り離してサービスを提
供している。
船社の中には別の予防策を
講じたところもある。CMA・
CGM はリベリア、シエラレオ
ネ、ギニアで働く従業員に車を
長時間運転しないように助言
した。これは交通事故を起こし
て、感染リスクが最も高い病院
に搬送される可能性を減らす
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
ためだ。同社はまた、船員が上
陸することを禁じ、入港中に上
船できる寄港地の役人の数も
制限した。また船に入る者は厳
格な衛生規則に従わせ、身体的
な接触も許可していない。
健康診断などの安全対策を
導入した港湾もあるが、その場
合、検査実施のために船が遅れ
る可能性もあると、2014 年
10 月 20 日にロイズリストが
報告している。少なくとも、グ
www.itfseafarers.org
22
健康特集
エボラ出血熱‐
海運産業への影響は?
ローバルコンテナ船社のうち
の一社、ハンパックロイドは、
これにより発生した追加コス
トをカバーするため、1TEU
につき、250 米ドルの追加料
金を導入した。
2014 年 10 月、シーインテ
ル・マリタイム・アナリシス
は、
「コンテナ船に関して言え
ば、我々の分析の結果、西アフ
リカでのエボラ出血熱が発生
しているが、地域の海運業へ
の影響は大きくないことが分
かった」と発表した。また、
「ア
フリカの大きな課題は、以前
として港湾の渋滞と後背地へ
の接続のまずさだ」と補足し
た。しかし、この状況はウイル
スが、ナイジェリアやガーナ
など、この地域の大きなコン
テナ港のある国に感染しない
ことが前提となっている。
しかし、2014 年 12 月 1
日にワールド・マリタイム・
ニュースが、英国の海運コン
サルタント、ドゥルーリー社
が提供した情報によると、西
アフリカの貿易がエボラ出血
熱の発生以降、
3 割減になる見
込みであると発表した。
12 月 16 日にはロンドン
のロイターニュースが最大の
業界団体、国際独立タンカー
船主協会(INTERTANKO)が、
エボラ出血熱の発生国に寄港
する船社の商業的エクスポー
ジャーを削減し、船員を守る
ため、貨物運送契約を改定し
たと発表した。INTERTANKO
は乗組員のリスクがある場
合、別の港へ迂回する、また船
舶が検疫を受けた場合のコス
トは用船主に負担してもら
う、といった取り決めを含む、
エボラ出血熱に関する条項を
運送契約に盛り込んだと言わ
れている。
全体的に見て、エボラ出血
熱が海運産業に及ぼした影響
はそれほど大きくはないと確
信できる。しかし、そのリスク
は続いており、警戒を怠らな
いことが重要だ。
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
エボラ出血熱に対する
組合の対応
西アフリカの労働組合はエボラ熱危機への対応に苦労している。どうすれば最善
の支援ができるのか、ITF は主に感染が見られる 3 か国において、交通運輸労働
者にどのような影響が及んでいるかを調査した。最新の状況はまた変わっている
可能性があるが、調査の結果についてその概要を紹介する。
シエラレオネ、リベリア、ギ
ニアの 6 労組の調査から、シ
エラレオネとリベリアの交通
運輸労働者は最悪の事態に直
面していることが分かった。シ
エラレオネ船員組合(SLSU)
では、43 名の組合員がエボラ
出血熱の疑いがあり、5 人の感
染が確認されたが、そのうち
30 名が死亡したと述べてい
る。リベリアの USPOGL 労組
では、31 名で感染の疑いがあ
り、10 名の感染が確認された
が、そのうち 3 名が死亡した。
リベリアでは外国人労働者の
間に感染者はいない一方、ギニ
ア人運転手がシエラレオネで
感染した。
影響を受けていると述べる。犠
牲者が検疫を受けたり、通常の
葬式を行わないまま埋葬され
たりしていることによる、社会
的、文化的影響もある。
シエラレオネとリベリアの
組合は失業率の高まりから組
織人員減、労働条件の悪化、労
働時間の長時間化、賃金引き下
げ、利用者の低下に起因する交
通運賃の引き上げを問題とし
て指摘している。これに加え、
リベリアでは、労働者が船舶へ
の乗船を制限されたり、海運会
社のサービスの頻度が下がっ
たり、サービス自体がキャンセ
ルされたりしている。
両国の組合は、各国の ITF 加
盟組合協議会を通じて対応し
ている。シエラレオネのナショ
ナルセンターは、国家レベルの
エボラ出血熱タスクフォース
の一部を成しており、リベリア
労働会議は労働権司法省とと
もに意識向上キャンペーンを
展開している。
SLSU は、エボラ出血熱の発
生により、組合員との関わりや
支援の面で組合に影響が及ん
でいると報告する。例えば、会
合が禁止されているために組
合の会議もキャンセルせざる
を得なくなったし、組合費収入
が低下したため、組合の事務所
も閉鎖されてしまった。SLSU
はまた、運転手と乗客の関係も
シエラレオネとリベリア両
国の組合は、エボラ出血熱への
組合の対応が世界レベルで取
られている対策と合致したも
のになるよう、努めている。リ
ベリアの ITF 加盟組合は地元
の NGO と協力し、エボラウィ
ルスに対する意識向上を図り、
組合員を対象とした教育や訓
練を実施している。
一方、
SLSU
は船員に特化した予防緩和策
を構築した。
な衛生物資を提供することで、
ITF 加盟組合は、エボラ出血熱
との闘いで重要な役割を果た
している。ITF は実用的な支援
を提供するため、できる限りの
ことをする」と語った。
10 月に ITF の役員、世界レ
ベルの産別部会の議長、地域代
表の副会長がロンドンで会議
を開催した際も、アフリカ地域
事務所の職員からの報告を受
け、エボラ出血熱との闘いで教
育が果たす役割に焦点があて
られた。
ITF 調査の対象国
シエラレオネ
・シ エ ラ レ オ ネ 船 員 組 合
(SLSU)
リベリア
・リベリア船員港湾一般合同
労組(USPOGUL)
・リベリア独立マノ川運輸労
組
・リベリア運輸合同労組
SLSU の報告によると、殆ど ギニア
の使用者が職場やマスコミを ・ギニア海運水産労連
通じて意識向上に努めている。 (FENATRAMP.G)
また、リベリアでは、労働者に ・自動車二輪労組連合
殺菌剤を配布する使用者もい
た。
ITF のパディ・クラムリン
会長は、
「ITF 加盟組合は、エボ
ラ出血熱の発生に伴う様々な
制限の中、通常の組合活動を維
持しようと必死に努力してい
る。予防に関する教育や基本的
健康特集
23
加盟組合にHIV/エイズについて尋ねた
組合活動家は、HIV/エイズ予防を他の健康問題と結びつけるべきだという確信をますます強めている。そのため、ITF
船員部会は加盟組合を対象に調査を実施し、組合がアプローチの選択肢を広められるよう支援した。コンサルタントの
スーザン・レザーが調査を手伝った。ITF グローバル HIV/エイズ・プログラム・コーディネーターのサイード・アシ
フ・アルタフ博士が第一の調査結果を報告する。
ITF は船員を組織する組合を対
象に 2014 年末に、HIV/エイズ、
健康と福祉に関する簡単なアンケ
ートを実施した。ここでは船員のニ
ーズを分析し、どう対応するかの計
画を立てる。
全地域(アフリカ 4 か国、南北ア
メリカ 3 か国、アラブ諸国 2 か国、
アジア太平洋地域 10 か国から
12、欧州 10 か国から 11 の回答)
の 29 か国、32 組合から回答があ
った。インド、インドネシア、ミャ
ンマー、
フィリピン、
トルコなど、
ほ
とんどの船員供給国が回答した。ま
た、ドイツ、ノルウェー、韓国など
の主な受益船主国の組合からも回
答があった。
第一の分析では、ITF 加盟組合が
「組合員の健康」を扱うべき重要な
問題と認識していることが判明し
た。加盟組合は、HIV/エイズ予防
とケアなどを含むより広範なプロ
グラムを作成するというアイディ
アを受け入れる用意があり、ITF か
ら支援を受けることを歓迎してい
る。
組合員が抱える最も大きなエイ
ズと福祉に関する問題は何かを尋
ねたところ、24 労組が予防、17 労
組が性感染症
(STI)
、
14 労組が偏見
と差別、10 労組がアルコールの多
飲、9 労組が体重コントロール、5
労組がうつとメンタルヘルスと回
答した。一方、HIV/エイズ以外の
健康問題を組合のプログラムに加
えるとするなら何にしたいかを尋
ねたところ、うつが最も重要との回
答だった。また、21 労組が栄養関
係の活動、17 労組が運動、17 労組
が飲酒、18 労組がうつ、15 労組が
エイズ以外の性感染症と回答した。
心強いことに、多くの組合が既に
何らかの健康プログラムを運営し
ている。回答のあった 32 労組のう
ち、22 労組が組合員に情報提供を
しており、12 労組が教育と訓練を
行い、11 労組がコンドームを配布
し、8 労組が秘密の任意テストを実
施しており、10 労組がその他の医
療テストを提供している。32 労組
中 8 労組が病院の紹介サービスを
提供しており、組合員が適切な医療
サービスを受けられるようにして
いる。
殆どの国の HIV/エイズ政策に
は職場での戦略が包括されており、
船員対象に特別の活動を行ってい
る国は少ないが、この意味ではアジ
アが最もサービスの充実した地域
だ。健康問題を包括した枠組み協約
や団体協約を策定する点で進歩が
見られている。そのような進歩が見
られていると回答した組合は、欧州
で 9 つ、アジアで 6 つ、アフリカで
3 つ、南北アメリカとアラブ諸国で
それぞれ 1 つだった。
メンタルヘルスもますます深刻
な問題となっている。自殺する船員
が増えていると回答した組合もい
くつかあった。船上での生活と労働
条件がいかに船員のストレスやう
つ状態、自殺の原因となっている
か、組合が健康と福祉を促進するた
めに合法的に何ができるかについ
て、もっと調べる必要があることは
明らかだ。
この調査のフォローアップは
2015 年に実施し、今度は船員の知
識、態度、行動(KAB)をより詳細
に調査する。行動と健康、HIV/エ
イズについて、より詳細なアンケー
トに回答する用意のある組合をど
こにするかの選定作業を全地域の
組合にお願いすることになる。
この KAB 調査をもとに今後のア
プローチを決定していくことにな
ろう。例えば、関係する健康状態を
包括し、趣旨を強化し、行動変化を
促すような資材を作成したり、活動
をしたりすることも合理的かもし
れない。
港湾労働者、
協約にHIV/エイズ条項を盛り込む
団体交渉の中で HIV/エイズに関する条項を交渉の結果、協約に盛り込むことに成功する港湾労組が増えている。ここ
ではその一例を紹介する。
港湾の団体協約(CBA)の共通の
要素は、仕事の獲得において、また
仕事を継続するにあたり、いかな
る差別もしないこと、HIV/エイズ
検査を強制しないこと、労働者や
その家族に医療を提供すること
だ。
グアテマラは中南米でエイズ感
染率が最も高い国の一つだ。ITF に
加盟する SITRUEMPORCNAC 労
組はこの 4 年間、港湾の経営者と
ともに、職場の HIV/エイズ・プ
ログラムを実施してきた。新たに
締結した協約に盛り込まれた
HIV/エイズ条項によって、労働者
と家族を対象に教育や意識向上プ
ログラムを実施することや、偏見
や差別のない職場環境を保つこ
と、職場にコンドームを常備して
おくことが確保された。
グアテマラの事例を聞き、中米
HIV/エイズ能力構築セミナーに
港湾 10 労組から参加した参加者
12 名は感銘を受けた。セミナーの
参加者は、協約交渉での条項の盛
り込み方や、HIV/エイズ関連の活
動を組織化に活用する方法を学ん
だ。その後、ニカラグアとホンジュ
ラスとパナマも HIV/エイズ条項
を協約に導入することに成功し
た。
ニカラグアの FSTPS 港湾労連
には 10 労組が加盟しているが、
国のエイズ・プログラムと協力
し、中米で最低の患者・感染率を
確実に維持し、HIV 陽性の労働者
に対する差別を撲滅しようとして
いる。FSTPS 港湾労連はまた、
2014 年 9 月に国営港湾会社の
EPN と協約を新たに結んだ際、
HIV/エイズ条項を盛り込むこと
に成功した。
インドの港と港湾労働者、港湾
労組は、2014 年 10 月に 12 の全
ての主要港で賃金構造や労働条件
を包括する 5 か年の合意書に
HIV/エイズ政策を盛り込むこと
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
に成功した。
アフリカでは、南アフリカ、トー
ゴ、ケニアが 2014 年に港湾労働
者のための団体協約と HIV/エイ
ズ政策を締結した。ケニア港湾局
の政策は経営者、スーパーバイザ
ー、組合指導者、職場代表を対象と
した具体的なガイドラインを含ん
でおり、予防と教育、ケアを特に重
視している。
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24
組合の活動
労働組合
活動中
交通運輸労働者の条件改
善のために、ITF ファミリ
ーが世界中で奮闘してい
る。ここでは、船員の権利
向上のために活動する組
合をいくつか紹介する。
設立間もない
スリランカの組合
奮闘中
スリランカ船員組合(NUSS)は、設立間もない若い組合
だが、様々な重要なサービスを組合員に提供していると
ランジャン・ペラン ITF インスペクターは語る。
スリランカ船員組合
(NUSS)は、2007 年の設立
以来、組織拡大に努めてきた。
現在、全国の現役船員の 55%
に相当する 7,220 人を組織
している。 ようと、資格をもったカウン
セラーによる、カウンセリン
グサービスを開始し、組合員
の仕事や私的な問題の相談に
応じている。
HIV-エイズの啓発も優先課
題の一つだ。NUSS の定期プ
組合員に対するサービスで ログラムは ILO からも支援を
最も重要なものの一つが、社 受けている。IBF 協約に HIV
会保障制度だ。船員とその家 条項を盛り込ませることにも
族に医療保険、生命保険、退職 成功した。
外国人船員の送迎も積極的
基金の給付サービスを提供す
る。この制度はとても好評で、 に行っている。コロンボ港に
既に大勢の組合員が多大な恩 入港した乗組員のための無料
シャトルサービスや、コロン
恵を被っている。
船員という職業には危険や ボ市内の重要な場所への案内
困難が伴う。ストレスも多い。 も行っている。
困難に陥っているスリラン
そこで、NUSS は、困難に直面
している組合員をサポートし カ人船員や外国人船員のため
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
に NUSS が行っている法務
相談や連帯支援を誇らしく思
う。
2010 年 12 月、インド洋
でアラブ首長国連邦所有の貨
物船(パマナ籍)、オラナ号が
ソマリアの海賊に襲撃され、
2012 年 10 月に乗組員 19
人のうち 13 人が本船と共に
解放された。13 人のうち6人
がスリランカ人だった。彼ら
はジャングルの中で2年間拘
束された後、2012 年 12 月
にコロンボに帰国した。
NUSS は残されたスリランカ
人 機 関 士 1人 の た め に カ サ
ブ・インター・シッピング社
と交渉を続け、2014 年1月
に 1年 間 の 賃 金 を 支 給 さ せ
た。
NUSS は行方不明となった
アルベド号(10 頁に関連記
事)のスリランカ人船員4人
の家族も支援した。ソマリア
の海賊に 30 か月も拘束され
た ス リ ラ ン カ 人 船 員 2人 に
は、海事学校の研修コースを
無料で受講できるようにし
た。
船員のためにこれまでに獲
得した未払い賃金は、総額 30
万ドルに及ぶ。
組合の活動
25
ウクライナ人船員の社会保障
ウクライナ海運労組(MTWTU)は、船員の組合員のための手厚い社会保障制度を誇りに思って
いる。オレグ・グリゴリュクMTWU第一副議長が報告する。
MTWTU は、乗船中の船員
のための社会保障制度を重視
している。この制度は、健康保
険、財政援助、社交の3つに分
類できる。
ウクライナには国の健康保
険制度が存在しない。公的医
療は飽和状態で、船員のニー
ズを十分満たすことができな
い。そのため、民間の医療部門
が著しい成長を遂げている。
現代的な診療所があちこちに
開設され、個人の医療保険が
人気を集めている。MTWTU
は、2008 年から船員のため
の任意健康保険制度を開始し
た。最初は、小規模な試験プロ
ジェクトとして、適切な保険
会社1社を選び、約 200 人の
船員に保険をかけた。今や、世
界の著名な保険会社数社と協
力関係を持ち、3000 人の船
員に保険をかけている。
経済的な問題を抱えている めに、遠足、博物館、遊園地、
船員が組合加入を希望するこ 映画鑑賞など、さまざまな家
とも多い。保険が適用されな 族イベントを実施している。
い病気に関係しているのかも 「MTWTU 子どものための新
しれない。近親者が病気にな 年映画会」はとても素晴らし
ったり、死亡したり、子供が誕 いイベントで、オデッサの最
生 し た り し た 場 合 な ど は 、 高の新年行事として評価され
MTWTU から金銭的な支援を ている。毎年、組合員の子ども
受けられる。金額はニーズに 8000 人 が MTWTU の 行 事
よって異なる。例えば、癌との を楽しんでいる。
組合員の中には、外国籍船
闘病生活を余儀なくされた場
合、その支援金は多額になる の労働・居住条件に関する相
だろう。近親者の葬儀に対す 談 や 法 的 助 言 を 求 め て
る支援金も相当の額が支給さ MTWTU に 加 入 す る 者 も 多
い。そのため、MTWTU は定期
れる。
その他、MTWTU 加入の理 的にワークショップや研修を
由として多いのが、保養地で 開催し、法律専門家に国内法
の療養費の一部助成だ。船員 や国際法の問題について説明
の中には、有給休暇を使って してもらっている。MTWTU
保養地で療養する者が少なく 協約が締結されている船舶へ
ない。家族の療養も対象とな の訪船も定期的に実施し、乗
組員と情報交換をしている。
る。
さらに、将来の船員のため
組合員には、家族ぐるみで
組合活動に参加してもらうた のセミナーも実施している。
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カデットやその保護者に対し
て、MTWTU や ITF のこと、船
員の権利について話をする。
これが未来に対する我々の貢
献と考えている。カデットは
間もなく船員になる。その時
は、組合で学んだ事を活かし
て、苦しい状況を乗り越えて
ほしいと思う。
他の組合との協力事例もあ
る。ドイツの Verdi と、Verdi
協約船の乗組員のためのワー
クショップを共催し、組織船
の割合や両組合の覚書などに
ついて説明したり、差し迫っ
た問題に関する質問に答えた
りしている。この協力を通じ
て、国際労働組合運動の力強
い将来を見ることができる。
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26
組合の活動
インド人船員の
免税を勝ち取る
インド船員組合(NUSI)のアブドゥラガニ Y セラン書記長兼財
務部長が、インド籍船に乗船するインド人船員の所得税免除をい
かに勝ち取ったか、また、この施策に対する政府への謝意をどのよ
うな形で示したかを報告する。
NSUI は長年、インド籍船に
合の主張を力強く訴えたこと
ンド籍船の乗船期間は全て、外
ッセージを SCI に訴えた。
我々
乗船するインド人船員は、乗船
もある。何千人もの船員から署
国領海での雇用とみなされる
のこの活動をマスコミが好意
期間中、内航、外航を問わず、外
名を集め、政府に提出したりも
ことになった。
的に報道したため、大きな注目
国の領海で雇用されており、非
した。国際的には、ITF に協力
居住者とみなされるべきだと
を求めた。
主張し、所得税の免除を訴えて
きた。
国内では、海運省、財務省、労
我々は、政府に対する謝意
を、モディ首相が始めた「スワ
を集めることができた。
海運界の友愛関係によって、
2014 年、人民党(BJP)政
ッチ・バーラト(インドをきれ
きれいで緑豊かな未来を目指
権の誕生で再びチャンスが訪
いにしよう)
」運動に参加する
す、この国家的な取り組みにお
れた。あらゆる機会を利用し
ことで示そうと考えた。10 月
いて、模範的な行動を示すこと
て、関係大臣に陳情した。そし
29 日を統一行動日に設定し、 ができたことは実に誇らしい。
働省等、関連省庁に要請を繰り
て、6月 25 日の船員の日に、 沿岸諸州の 12 の NUSI 支部
清潔で衛生的な環境を維持す
返したほか、海運大臣や国家海
シュリ・ニチン・ガドカリ道
がポスターやバナーを掲げ、一
るための我々の活動は、これか
運委員会、国家福利委員会と定
路交通・高速道路大臣が、イン
斉に清掃活動に勤しんだ。
期的に協議した。法律専門家の
ド人船員の正義のためにこの
ムンバイでは、何百人もの参
意見や、オーストラリアや英国
問題を解決することを約束し
加者が、英字紙「フリープレス
等の諸外国の船員税制との比
た。
ジャーナル」本社からナリマン
較を提出したこともある。
大臣は約束通りに行動した。 ポ イ ン ト の イ ン ド 海 運 会 社
2010 年の直接税法案に関す
そして、9月 11 日、我々はつ (SCI)本社に至る道路を清掃
る財務常設委員会に出席し、組
いに、闘いに勝利した。外航イ
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
し、
「スワッチ・バラード」のメ
らも「スワッッチ・バーラト」
運動を発展させていくことだ
ろう。
組合の活動
27
搾取的な船員派遣
会社に注意
組合の意識啓発活動
インド前進的船員組合(FSUI)のマノジュ・ヤダヴ部長が、
無免許の船員派遣会社の危険性を警告する組合活動について
報告する。
自国籍船の船員配乗を行う
政府機関の船員雇用事務所
(SEO)が 2001 年に廃止さ
れ、船社が独自に船員を募集
するようになって以来、イン
ドでは、船員の募集・配乗が
大きな問題になっている。外
国籍船の船社は、SEO が廃止
される前から、直接、あるいは
代理店を通じて、船員を募集
している。
安を抱いている場合、政府は、
RPSL を所持する代理店に対
して、依頼主や依頼内容の詳
細(保険、賃金、福利等)を問
い合わせることができる。
ILO 海上労働条約や IBF 協
約、ITF 協約に基づいて、船員
を適切な保険に加入させるこ
とも RPSL 制度のねらいだ。
しかし、RPSL を持たない、
無免許の代理店が増えてい
る。船主がルールを守ること
インド政府が義務的な「船 に消極的なのがその理由の一
員の募集・配乗免許(RPSL)」 つだ。無免許の代理店は、違法
を導入して以来、船員派遣会 な募集を行い、船員をリスク
社(代理店)は、海運省から に晒している。そこで、FSUI
RPSL を取得しなければなら は 全 国 で 意 識 啓 発 活 動 を 行
「無免許の代理店には近づ
なくなった。この免許制度の い、
目的は、
「代理店とその代表者 くな。合法的に仕事をもらえ
の記録を残し、透明性を確保 ることはない」と警告を発し
ている。
する」ことである。
RPSL を所持する代理店に
船員が自らの雇用条件に不
仕事を紹介された場合は、例
えば、賃金未払いやハラスメ
ントに直面したとしても、政
府が RPSL を取り消すなどし
て、代理店の責任を追及して
くれる。
しかし、無免許の代理店の
場合、政府はなかなか行動を
起こしくれないかもしれない
し、全く行動をとらないかも
しれない。代理店の方も、政府
の制裁を避けるために、所在
地を変更したり、配乗した船
員の書類を隠したり、一時閉
店したり、船員を紹介したこ
と自体を否定するなど、様々
な手段に出るだろう。
利益が守られるのは、免許
を持った代理店を通じて仕事
をする場合だけだと船員に教
える必要がある。我々は、6か
国語でビラを作成し、船員の
自宅に郵送したり、業界誌や
全国紙、組合のウェブサイト
に定期的に記事を掲載した
り、ソーシャルメディアを活
用したりするなどして、意識
啓発活動に取り組んでいる。
ワークショップを開催した
り、組合役員が船員宿泊施設
を訪問したりすることもあ
る。
国際的な船社の多くは
RPSL 所持の代理店を好む、
あるいは指定する。政府が目
を光らせているし、信頼でき
る船員が配乗されることを知
っているからだ。
Verdi. とAMOSUPバイラテラル協約を締結
二つの有力組合-ドイツのVerdi.とフィリピンのAMOSUP-が、ITFソフィア大会(2014年)で、メキシコシティー・ポリシ
ーに基づいたバイラテラル(二者間)協約を締結した。ITFのジョン・カニア海事オペレーション部長とエヴェリン・トムソン
戦略実施アシスタントがこの協約の利点を説明する。
ITF 協約は、FOC 船の最低
労働基準を規定しているが、
FOC 船員が組合のさまざまな
サービスを享受するためには、
組合同士の協力が不可欠だ。
FOC キャンペーンに参加する
組合は、自国籍船の非居住船員
の最低基準を設けるために策
定されたメキシコシティー・
ポリシー(2010 年の ITF メキ
シコ大会で採択)を遵守しなけ
ればならない。
Verdi.と AMOSUP のバイラ
テラル協約では、
Verdi.が、
受益
船主国の組合として、ドイツの
企業、団体、個人が受益所有ま
たは管理する船舶の乗組員を
代表する権利を有する。一方、
労働供給国の組合、AMOSUP
も、AMOSUP の既存のサービ
スを享受するフィリピン人船
員やその家族と緊密な関係を
有しており、フィリピン人船員
の協約において、継続的かつ実
務的な利害を有している。
バイラテラル協約において、
両者は、協力、相互尊重、平等
の精神の下、相互の利害を認め
合うことになる。
Verdi.は、
ドイ
ツの法律や規則の解釈につい
て AMOSUP に助言を与える
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
一方、AMOSUP はフィリピン
の法律に関して、Verdi.に助言
を与える。両者とも今後の協約
交渉に参加する。
FOC 協約やその他の協約、
Verdi./AMOSUP 協 約 に 影 響
を及ぼしかねない法律や政府
決定、職場委員の研修等に関す
る情報交換も行われる。
「二つの組合が協力すれば、
労使交渉においても、法律問題
の解決においても、より強い立
場に立つことができる」と ITF
公正慣行委員会(FPC)の委員
を務める Verdi.のトーベン・
シーボルド海事コーディネー
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28
組合の活動
Verdi. とAMOSUP
バイラテラル協約を締結
ターは言う。
「我々は、あらゆる地域で多
くの組合と長年の協力関係を
維持している。船員は皆、母国
の組合の質の高いサービスと
同時に、協約締結組合の保護
および支援を受けられるべき
である。バイラテラル協約の
締結は、受益船主国の組合と
労働供給国の組合のパートナ
ーシップへのコミットメント
であり、このパートナーシッ
プは、善意、勤勉、相互尊重の
精神で醸成されるべきもので
ある。決して恐れるべきもの
ではない」
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
増えるフラッグ・アウト
全英鉄道海事交運労組(RMT)のスティーブ・トッド海運・オフショア担
当部長がフラッグ・アウト(自国籍船の FOC 化)について報告する。
欧州の船社の「フラッ
グ・アウト」が増加して
いる。
トの削減を追及する船社の搾 与えてしまうかもしれない。ま
取的慣行を抑制するには至っ た、コスト削減や利益のため
に、乗組員の権利や乗客の安全
ていない。
英国の海運会議所は、
「トン がないがしろにされる可能性
フラッグ・アウトとは、船主 数標準税制と部員の養成を関 もある。
欧州の他の国と同様に、英国
が船舶を受益所有・運航する 連づける必要はない。制度の導
国とは別の国に船籍登録する 入自体によって、養成される英 でも自国籍の部員の数は大幅
ことである。こうすることで、 国人部員の数は、年間 25%増 に減少している。ここ 30 年間
船主は受益所有・運航国の法 加するだろう」と主張する。し で 7割 以 上 減 り 、 現 在 は
律や規制、最低基準の賃金・労 かし、英国の船社が実際に養成 8,500 人強となっている。防
働条件を回避することができ している英国人部員の数は、 ぐことのできた沈没事故や乗
る。例えば、英国では時給 15 1999 年に比べて四分の一以 組員の死亡事故は、規制が緩
く、問題の多い FOC が原因で
~22 ドルに相当する船員を時 下に減っている。
あることが多いと指摘されて
欧州の船員の賃金がフィリ
給 2.5 ドルほどで雇うことが
ピン等の船員の賃金よりも高 いる。
できるのだ。
一方、海運業界は、低コスト
いのは事実だ。しかし、これは
の配乗モデルは経済的に不可
生活費とも関連している。
組合
欧州でフラッグ・アウトが
増加している理由は簡単だ。フ は、船社が特に部員に関して 欠であり、正当化できると主張
ラッグ・アウトしても、トン数 (最近は職員についても言える する。しかし、国や国民の海上
、最も安い乗組員を求めて 輸送ニーズをグローバル資本
標準税制による減税措置が適 が)
の手に委ねるのはあまりにも
世界中を物色していることに
用されるからだ。自国海運業の
リスクが大きい。FOC に内在
苛立ちを覚えている。
支援を目的とする欧州各国の
欧州各国政府は、自国の海運 するリスクは取るに値しない
このような制度によって、欧州
に登録する船舶の数は増えて 産業を脅かす、無責任な切り下 ものであり、持続可能な海運を
いるものの、自国籍の職員・部 げ競争に従事している。例え 目指すべきである。 英国の鉄道海事交運労組
員の養成という側面は実質的 ば、英国政府は、船舶登録料を
に欠如しているため、制度を最 引き下げるばかりか、「レッ (RMT)が ITF の反 FOC 運動
大限に利用しながら、労働コス ド・エンサイン」として知られ を支持する理由もここにある。
る英国商船旗を低コストの置 この運動の政治的目標は、旗国
籍先として売り込んでいる。英 と船主、管理者、船員の国籍・
国が商船員の供給能力を失う 所在地との間に真正な関係を
ことは、英国人船員にとっての 確保すべく、国際的な合意を取
悲劇を意味するだけでなく、英 り付けることだ。
我々は、この目標を国連海洋
国の経済・保安に非常に深刻
な影響が及ぶかもしれないこ 法条約(UNCLOS)の再交渉を
通じて達成できると考える。こ
とを意味する。
フラッグ・アウトの増加で、 のような合意ができれば、FOC
安全最小定員にも影響が出る 制度そのものを追放し、船員、
ことが懸念される。英国では、 旅客、納税者、そして政治家に
安全最小定員は船舶のクラス も利益をもたらすことができ
や大きさによって決まるわけ るだろう。
ではなく、船主、安全当局、海
上保安庁(MCA)が船舶ごとに
決めている。最小安全定員とい
う非常に重要な議論から労働
組合が締め出される可能性が
あるだけでなく、本来必要な定
員を切り崩す余地を使用者に
水産
29
タイ水産業の奴隷労働の実態
Photo: Chris Kelly
英紙ガーディアンが 2014 年に6カ月かけて実施した秘密調査で、タイ水産業の奴隷労働の実態
が明らかになった。東南アジア特派員、ケイト・ホダルがバンコクから報告する。
業の労働力不足を補うために、
トロール漁船に売られること
となる。
タイは、約5万籍の漁船が登
録される、世界最大規模の漁業
国だ。しかし、国内の漁業資源
の減少と共に、漁船は国際水域
に向かうようになった。タイ漁
船の船長は、
「労働力不足のた
め、奴隷を買うしかない」と言
う。船長がブローカーに支払う
のはたった£250 だが、この
£250 も乗船させられた労働
者に債務として課せられる。何
年間も海上で過酷な労働を強
カンボジアで僧侶をしてい いられ、結局、陸に戻れず、賃
たヴァシーは、建設現場の仕事 金を受け取れないということ
に就くはずだった。しかし、実 もあり得る。
我々がインタビューした
際は、タイ南部の漁港に連れて
いかされ、トロール漁船の船長 15 人の現役あるいは元労働
に売られた。それから毎日、1 者は皆、船上の生活を残酷で予
日 22 時間、暴力の恐怖におび 想がつかないと表現した。仲間
えながら、公海上で奴隷のよう の船員が船長に殺害されるの
を目撃した者が 10 人いた。目
に働かされた。
餓えにさらされ、殴られ、灼 の前で 20 人が殺害されるの
熱の太陽の下、デッキに鎖で縛 を目撃した者もいた。漁船4隻
り付けられることもあった。 の各船首に手足を結び付けら
33 歳のヴァシーは、当時の悪 れ、そのまま引きちぎられたケ
夢を思い出し、恐怖に震えた。 ースもあったという。
食事は通常、1日1回、皿に
「死ぬかと思った。動物のよ
うに売られた。しかし、我々は 米飯が盛られただけのものが
動物ではない。人間だ」とヴァ 与えられる。働き続けるため
に、メタンフェタミンも摂取さ
シーは訴える。
タイ国内で約 50 万人が奴 せられる。病気になって働けな
隷労働を強いられていると言 くなると、海に投げ捨てられ
われている。タイ政府は、水産 る。トイレ休憩を取ろうものな
業に従事する 30 万人の労働 ら、激しく殴打される。漁船は
者のうち、90%が人身売買の 陸から遙か遠くを航海してい
リスクが高い移民労働者だと るため、世間の監視の目が届か
ない。接触するのは、漁獲物を
見ている。
移民労働者の多くは、隣国の タイの港に運送し、漁船に必要
ビルマ、カンボジア、ラオスか 物資を供給する貨物船だけだ。
逃亡を図れば間違いなく殺
らやって来る。タイの経済力や
豊富な単純労働の働き口に惹 される。見せしめとして、他の
かれ、ブローカーに斡旋料を支 仲間たちの前で。ビルマ人のア
「ある晩、2 人が
払い、建設現場、工場、農業の ウン・ミョは、
仕事を紹介してもらおうとす 逃亡した。船長は1人を捕ま
る。しかし、実際には、彼らの え、殴り、電気ショックを与え
多くが、80 億ドル規模の水産 た後、銃殺し、海に蹴とばした」
と語った。
これらの奴隷船が捕獲した
魚介類は、タイ国内および海外
の市場で消費される。我々の調
査の結果、英国や米国、EU で
販売されている養殖エビの生
産にとって、タイ漁船の奴隷労
働は欠かせない存在であるこ
とが分かった。
米国務省は何年も前からタ
イ政府に対して、問題への対応
が十分でないと忠告してきた。
そして、2014 年6月、人身売
買に関する年次報告書で、人身
売買や奴隷労働を根絶させる
意思が欠如しているとして、タ
イをサウジアラビア、北朝鮮、
イランと共に最低ランクに格
付けした。報告書では、タイ政
府役人や漁船の船主・船長の
犯罪が頻繁に見逃されている
理由として、
「あらゆるレベル」
での「制度的欠陥」と汚職を指
摘している。
タイ政府は、次回報告書が出
される前に事態を改善しよう
と躍起になっている。プラユッ
ト・チャンオチャ首相は、自身
を人身売買・違法漁業対策委
員長および移民労働・漁業政
策委員会議長に任命した。しか
し、現場のリサーチャーは、事
態はほとんど変わっていない
と指摘し、労働力不足を解消す
るために受刑者をトロール船
で働かせるという政府の計画
に苦笑した。
弱い立場の船員を支援する
団体のある活動家が言う。
「私
が見る限り、人身売買は依然と
して盛んに行われている。ビル
マ人が最近、漁船から逃げて来
たが、同じように奴隷労働を強
いられている船員がまだたく
さんいると語っていた」
タイの奴隷労働は、他の東南
アジア諸国の漁船でも見られ
る。ある業界関係者は、
「漁船の
奴隷労働は、海賊と同じくら
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
い、古くて蔓延した問題だ」と
指摘する。しかし、ITF のケ
ン・フレミングは、この問題は
永久に追放しなければならな
「タイの水産業が奴隷
いとし、
なしには成り立たないのなら
ば、産業自体をなくさなければ
ならない」と記者に語った。
漁船員の安全を守るため、人
物の名前は仮称である。
ITF・IUF 共同プログラム
「漁獲から売り場まで」のリ
ーダー、リズ・ブラックショ
ーのコメント
関係するリテイラーを名
指ししたのは、ガーディアン
紙が初めて。サプイチェーン
全体で透明性および企業の
社会的責任を追及すること
の重要性を訴えている。
広報やメディアで政府や
司法機関、業界に圧力をかけ
ることはできるが、真の改善
は、より多くのリテイラーが
改善を要求し、労働者が自ら
の権利を行使し、団結するこ
とができるようになってこ
そ実現する。
ITF と国際食品労連(IUF)
が水産業の強制労働・人身
売買の根絶に取り組む理由
はそこにある。我々は以下を
求める。
・ILO 漁業労働条約(第 188
号)の批准促進
・陸上の水産労働者の団体
協約適用と漁船の団体協
約締結
・ILO 強制労働条約新議定
書の全加盟国による批准
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30
港湾労働者
港湾での
新たな機会
港の女性たち
アントワープ港を組織するBTB労組のモニク
・バービーク書記長は世界の港で女性港湾労
働者が増えることが全ての港湾労働者の状況
を改善するはずだと確信している。
この 10 年で港湾産業は大
きく変貌してきた。
た女性荷役労働者の数は 3 人
から 30 人にまで増え、さらに
増え続けている。それでも女性
港湾労働者の仕事は様々な の割合は低いが、港湾が最も男
意味で肉体的な力を必要とし 性優位的な職場であることも
ないものになってきた。アント 忘れてはならない。
ワープ港で港湾労働者になり
この変化は偶然起きたわけ
たいと思う女性が増えてきて ではない。アントワープでは、
いるのもうなずける。
組合と経営側が様々な取り組
みで協力してきた。女性港湾労
現在、アントワープ港で働く 働者用の安全服はかなり改善
女性の数は約 300 人になっ されたし、衛生設備も女性用に
た。ほとんどが登録ロジスティ 調整した。しかし、特に昔なが
ックス作業員、フルーツの仕分 らの一般貨物ターミナルに関
け人、検数人として倉庫で働い しては、男女両方の港湾労働者
ているが、女性のフォアマンも のために、もっと多くの改善が
一人いるし、ストラドルキャリ 必要だ。最近、労使が新たに港
アーの運転手も数名いる。検数 湾の安全憲章 2020 に調印し
の女性副主任も数名、女性保守 た。これは 2020 年までに職
作業員も数名いる。
場の事故発生率を半減させ、ク
しかし、最も印象的なこと リーンな労働環境を創設させ
は、港の中でも比較的女性がや ることを目指すものだ。
りやすい仕事だけに惹きつけ
ITF 港湾部会の女性代表と
られて女性が港湾労働市場に して、港湾部会、女性部門の両
参入してきているわけではな 部門と協力し、私は懸命に港湾
いということだ。船舶の荷役を 産業における女性の雇用促進
行う一般港湾労働者に応募す 運動を支援してきた。この取り
る女性がますます増えており、 組みが、カナダの ILWU の取り
男性の同僚と互角に仕事をし 組みと同様、昨年 8 月の ITF
ている。2000 年以降、こうし 世界大会でも取り上げられた
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
ことを喜ばしく思っている。
重要なことだが、欧州運輸労
連(ETF)
、政府、使用者といっ
た欧州の社会的パートナーが
最近、欧州の港湾使用者に対
し、港湾産業を女性にとっても
っと魅力あるものにし、そのた
めのガイドラインを国レベル、
港レベルで実施するよう促す
勧告に合意・調印した。
1984 年以来、私は BTB 労
組で男女両方の港湾労働者を
代表し、直接、港湾産業の変貌
を目の当たりにしてきた。女性
港湾労働者を増やしたいとい
う思いは単なる女性枠の問題
ではなく、この男性支配的な港
湾産業に参画するという課題
に立ち向かおうとする女性た
ちに公正かつ平等な機会を与
えるという問題だ。
アントワープ港では女性労
働者の数が増えたことが全て
の港湾労働者のためになって
いる。男女がともに働くこと
で、港湾産業全体のイメージが
改善された。他の海運産業と協
力すれば、船員、港湾、水産と
いった海運産業全体のイメー
ジアップも図れるだろう。ま
た、女性港湾労働者も組合の強
化に役立つ。
もちろん、最終的に重要なこ
とは男女両方が今後も必要な
訓練、資源、設備を職場で与え
られ、安全かつ健全で問題のな
い環境で共に働くことができ
るよう担保していくことだ。
船舶の荷役を行
う一般港湾労働
者に応募する女
性がますます増
えており、男性
の同僚と互角に
仕事をしている
港湾労働者
31
リバプールのより明るい未来へ
世界的に有名なリバプール港で ITF とその加盟組合、リバプール・ユナイト労組が構築する協力関
係は、港湾労働者に大変革をもたらしている。シーフェアラーズブルテンは、英国およびアイルラ
ンドの ITF コーディネーター、ケン・フレミングと、ユナイトのリバプール地域・港湾水路担当部
長、テリー・ティーグに詳細を尋ねた。
1995 年 9 月 29 日にマー
ジー・ドック&ハーバー社がピ
ケラインを越えることを拒否
した 500 人の労働者を解雇し
た後、英国で最も長いストライ
キを打ったのはリバプールだ
った。この時の闘いは日雇い労
働と規制緩和反対だったが、世
界中の港湾労働者は今、グロー
バル化した港湾産業で全く同
じ問題に直面している。
ケン・フレミングはティーグ
とともに、人員整理を止めさ
せ、船員に港湾労働者の仕事を
やらせないためには、どのよう
な駆け引きができるかを考え
た。 「組合員は一丸となってイン
フレ率を下回る賃上げと、3 か
月の残業手当の据え置きを受
け入れ、25 人の雇用を守った」
とティーグは述べる。
「組合員
は喜んで犠牲を払った。1995
テリー・ティーグによると、 年以降、港の業務量が短期的に
それ以来、リバプールは安価な でも落ち込めば、すぐに労働者
労働力を得るための「回避地」 を解雇するのが当たり前にな
となり、この状況を変える術は っていたが、会社が自分で招い
ないと港湾労働者は思うよう た財政難の穴埋めをするため
になった。このことが、ユナイ に組合員を解雇することは許
トと ITF を駆り立て、リバプー さないと組合が明言したこと
ル港でより緊密に活動ができ に会社はショックを受けた」
ケン・フレミングはこの経
ないかを模索する動きにつな
験からインスピレーションを
がった。
港湾局のピール・ポーツ・ 受け、リバプールにさらに焦点
「2012 年 1 月に ITF
リバプールと労働供給会社の をあてた。
ドレークス港湾流通サービス コーディネーターを引き継い
社が船員に貨物の荷役をさせ、 だ際、荷役をやるよう強制され
250 名いる港湾労働者のうち ている船員を支援するための
25 名を整理するとしたため、 真の意味での力が ITF にはな
ユナイト労組は ITF に抗議運 いと感じた。アイルランドで
は、組合の活動が全国連絡担当
動の支援を求めた。
「職場代表と組合活動家は、 者委員会の立ち上げにつなが
解雇される労働者を支援する った経験があったので、他の地
ため、組合のキャンペーンを立 域でも同じことができると思
ち上げるよう私に指示してき った」
そこで、フレミング、ティー
た。すぐ支援を得るためには
ITF に協力を仰ぐのがベストだ グ、北西イングランド担当の
と考えた。港湾は国際的な産業 ITF インスペクター、トミー・
だから」とティーグは言う。 モリーは 2 回のワークショッ
プを実施し、港湾労働者、タグ した。これは連帯とコミュニケ
ボート乗組員、港湾保守作業 ーションを構築するために定
員、パイロット、事務員が一堂 期的な会議を行う労働者の連
に会するイベントを企画し、実 合体だ。連合の会議には様々な
施するタイミングを検討した。 港湾労働に従事する労働者が
結果的にリバプール港湾労働 参加している。
者のたまり場、バー「カーサ」で
それ以来、状況は進展した。
のイベントは大成功を収め、前 現在、労働者供給契約がドレー
向きなフィードバックももら クス社から別企業のブルー・
えた」とフレミングは語った。
アロー社に移ったため、300
ティーグもこのイベントに 人のリバプールの港湾労働者
の賃金と雇用・労働条件を守
るためにユナイトは懸命に交
リバプールがかつて 渉している。 だが、将来の展望は明るい。
の活気あふれる港に 港湾局(ピール・ポーツ・リバ
戻るよう期待してい プール)は新たに水深の深い河
川施設、
「リバプール 2」を開発
る。
している。リバプール 2 の出
昔はこの港で働く善 現で、コンテナ処理能力はこれ
までの 2 倍になり、2015 年
良な労働階級が将来 9 月に稼働開始が予定されて
に夢をもち、十分家 いる。これにより、まず、初期
族を支えていくこと 段階で港湾労働および補助業
務として新たに 300 人の雇用
ができたのだから
が生まれ、潜在的には港全体で
数千人以上の雇用創出が見込
まれる。ITF とユナイトは協力
ついて、
「重要な瞬間だった。カ し、新たに生まれてくる雇用が
ーサでのイベントで何年も顔 完全に組織化されるよう担保
すら合せていなかった様々な しようとしている。
人々が一堂に会し、自分がやっ
ティーグはこの野望につい
ている港湾の仕事について経 て「小さなステップの後の大き
験を分かち合い、ユナイトや なステップ」であり、達成可能
ITF が国際連帯のもと、英国 だと述べている。ITF がピー
で、また世界レベルでどのよう ル・ポーツと良好な関係を維
な支援ができるかを議論した」 持していることも奏功してい
と述べた。
て、ユナイトが経営側と交渉す
「このイベントは、港湾労働 る上でも恩恵をもたらしてい
者たちに『一人ではないし、使 る。
「この労使関係は、まさに労
用者の言うことを鵜呑みにす 働運動のあるべき姿だ」
る必要はない』というメッセー
最後にフレミングの言葉を
ジをはっきりと伝えることに 紹介する。
「リバプールがかつ
成功した。労働者は自らのため ての活気あふれる港に戻るよ
に立ち上がるべきだ。国際労働 う期待している。昔はこの港で
運動を通じ、リバプールと交易 働く善良な労働階級が将来に
のある世界中の港湾の労働者 夢をもち、十分家族を支えてい
に助けを求めることができる」 くことができたのだから」
このイベントは「マーシー河連
合」の立ち上げと時期を同じく
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32
業界の動向
自動化船 現実か
自動化船の概念は物議を醸しているが、海運界の一部では推奨されてい
る。一方、ITF と加盟組合はこの動きを懸念し、懐疑的に見ている。シー
フェアラーズブルテンは、自動航行するロボット貨物船開発プロジェク
ト、
「MUNIN プロジェクト」の研究助手を務めるウィルコ・ブラッシュに
話を聞いた。また、ITF 船員部会やその他の海運界の主要人物の意見も紹
介する。
世の中は自動車両や完全ま
たは部分的に無人の車両に慣
れてきている。無人運転の都市
列車システムが導入されてい
る都市は多い。自動操縦車の試
験運転も公道で行われている
し、旅客機のパイロットは一般
にほとんどのフライトで操縦
を自動操縦装置に任せている。
は無人船や自動化船には大き
な可能性があると確信してい
る。進化したテクノロジーと船
内のさらなるシステム統合に
よって、システムの信頼性はま
すます高まり、より回復力の高
い情報が生成できるだろう。遠
隔監視サービスや遠隔保守サ
ービスなどといったビジネス
チャンスも生まれ、陸上ででき
一方、海運界では、自動操舵 る魅力的な海の仕事が新たに
システムの導入は海軍か科学 創出される。何よりも、海の上
調査用潜水艦に限られており、 での人命や貨物の一般的な安
その場合も人間による監督が 全面、海洋環境面で恩恵があ
不可欠だ。しかし、これらのケ る。
欧州連合から資金援助を受
ースから、自動化船による輸送
は技術的に不可能ではないこ け、MUNIN プロジェクトは自
動航行する商船隊を陸上ベー
とが示されている。
造船会社、機械メーカー、船 スで監視、官制するという概念
会社などの多くの組織が商船 を構築しつつある。
各船は測気ステーションや、
への自動化導入の可能性に関
心を強めており、応用に向け、 レーダー/ARPA、AIS、エコー・
技術開発を進めている。例え サウンダー、ECDIS(電子海図
ば、近海や遠洋海運での代替推 情報表示システム)といった、
進システムやナビゲーション 実証済みの高度センサー・ナ
方法の開発などがそれにあた ビゲーション・システムを備
えることになる。また、常に船
る。
MUNIN プロジェクト関係者 の周辺環境を監視するため、自
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
動見張り機器、デイライトカメ
ラ、赤外線カメラなど備えるこ
とになろう。そうして収集され
た情報をもとに船の周辺状況
を認知し、それをもとに自動ナ
ビゲーションシステムを運用
する。船が沿海に接近すると、
乗り込みチームが上船し、寄港
地へと誘導する。
したがって、この概念は、ブ
リッジと機関部の二つの基本
的な職業グループをベースと
している。
まずは監視だ。陸上の官制セ
ンターには十分な経験と資格
をもった海事労働者を配置す
る。各センターは 24 時間体制
で監視と、世界中の海を航行す
る一定数の船隊の管理を行い、
衛星でつながれている。一方
で、航路や保守計画などを担当
する部署も設ける。これは既に
クルーズ船業界では実践され
ている。個々のオペレーターは
割り当てられた一定数の船舶
を安全かつ効率よく航行させ
ることに責任をもつ。船内シス
テムで解決できない問題が発
生した場合は、オペレーターの
支援を要請する。もっと深刻な
事態の場合は、特別な訓練を受
けた海事専門職スタッフがブ
リッジのような環境で、船を遠
隔制御する。
第二に、ブリッジで働くスタ
ッフがいる。沿岸からの距離、
渋滞、環境条件などの特別な状
況により、船内乗り込みチーム
が船内に乗り込み、船を直接制
御し、港へと誘導する。この方
式は水先案内としてや、渋滞海
域や沿海部を航行する数日間
だけの比較的短時間に使える
方式だ。船内乗り込みチーム
は、船舶に備えられた先進セン
サー技術から大きな恩恵を受
ける。従来型の船舶では利用す
ることのできない、より正確か
つ信頼できるデータや物体感
知システムにより、航海の安全
は大幅に改善される。航海上の
課題の多い海域を通過した後、
船内乗り込みチームは下船し、
港を出港する別の船に移動す
る。
今日、船舶は既にかなりの部
continued page 34
業界の動向
33
Background image © Rolls Royce
それとも空想か?
業界の対応
ITF船員部会、ファブリチオ・バルセロナ部次長
自動化船という概念は何も
新しいものではなく、時々話題
になっては、船社に大きな恩恵
とコスト削減を約束してきた。
ようとも、高いプロ意識をも
ち、安心、安全な貿易の遂行に
船員が果たしている根本的な
役割を都合よく無視している。
MUNIN はまた、海上の状態の
テクノロジーは船員が船を 変化など、航海を規制する多く
より安全にし、プロの船員が安 の問題や、それがどう航海に影
全かつ効果的に世界の貨物の 響するか、世界の海洋汚染、安
9 割がたを輸送する支援をす 全器具、海洋法の法的枠組み、
るためには必要だと ITF は確 海洋国経済への社会的責任と
信している。しかし、ITF は自 いった問題の多くに対応する
動化がスキルをもったプロの ことができていない。
今日応用されている自動化
船員に取って代わるべきだと
だけでは、自動化船が運航可能
は考えない。
しかし、現実には自動化船の であり、そうすることが望まし
問題はもっと複雑なものだ。自 いということの証明にはなら
動化船とは、MUNIN が構想す ない。一隻の 1 万 9 千 TEU の
る革新的な輸送方式を越えた、 船舶あるいはさまざまな海を
より高度な夢の世界のように 遠隔制御されて運航する船隊
思われる。安全なナビゲーショ と、前もって決まった限りある
ン、リスク管理、環境への脅威 形のある線路の上を走る都市
と事故防止に真剣に対応する 部の電車との間には完全なる
方法は、乗組員を排除して、船 隔たりがある。
自動化船運航の失敗例は数
をセンサー、赤外線カメラ、先
進自動化で埋め尽くすことで えきれないほどある。その際、
乗り組んでいたプロの船員が
はないはずだ。
MUNIN や類似のプロジェク 間違えを正し、環境、沿岸部の
トは、どんなに自動化が先進し 地域社会一体、そして人命に壊
滅的な被害が及ぶことを未然
に防いできた。
MUNIN が想定する海運の未
来は、少数のコントローラーで
船をある場所から別の場所へ
と動かすという、よくできたビ
デオゲームのように見える。遠
隔運航を支える次世代の雇用
や港湾の水先案内が創出され
たとしても、船を操舵するため
に必要な労働者をどこでどの
ように訓練するのか、荒れた海
で船員が晒される危険につい
ては何の説明もない。
MUNIN が創出されると主張
するわずかな数の仕事も、今
日、国際海運で働く船員の総数
には到底匹敵できない。これは
結局、さらに労働基準を下げ、
より安価で低スキル、プロとし
ての自覚の低い船員を利用し
ようとする試みなのだ。
ITF は乗組員がいなくなれ
ば、船舶の運航費用は下がると
いう MUNIN の主張には同意
できない。自動化船を建造し、
機器を装備するコストは莫大
であり、そのような最先端の船
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の保守費用は、定員まで船員が
乗り組み、より安全な近代船を
大幅に上回る。
MUNIN のいう夜間に無人の
機関室や、ルーティングを陸上
に移行させるという例は、熟練
したプロの船員が控えていて、
すぐに問題を是正してくれて
初めて可能になる。
テクノロジーがいかに複雑
になったとしても、100 パー
セント問題の起きないシステ
ムなど誰も保証できない。遠隔
制御ステーションの保安、どこ
にステーションを置くのか、陸
から船舶の制御ができなくな
った場合どうするのか、といっ
た問題についても考えられて
いない。
海運界がより進んだテクノ
ロジーに関心をもつことは間
違いないが、重要なのは、船か
ら船員を追い出すことではな
く、燃料の消費を低減させ、船
をより安全かつグリーンにす
ることだ。
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34
業界の動向
自動化船事実か
それとも空想か?
分まで自動化されているが、
さらにシステム統合を進め、
陸上のステークホルダーとよ
り緊密な連携が進んでいる。
これにより船舶の機関室では
乗組員が当直から解放され
る。しかし、当然のことだが、
ブリッジについては 24 時間
体制で人員を配置する必要が
ある。ただ、標準化、システム
の自動化と統合により、当直
も様変わりした。IMO の E ナ
ビゲーション戦略と EU の E
海事イニシアチブより、この
動向はさらに支援されてい
る。現在、無人船には技術上、
法律上の障壁があるが、例え
ば、遠隔保守モニタリングや
ウェザールーティングなど、
全体的に元来船内でやってい
た業務を陸上に移そうという
傾向は依然として存在する。
広範な完全自動化を商船に
導入することは今すぐに起き
る話ではないが、第一世代の
自動化船の試験運航は 2020
年前に行われる可能性が高
い。
このリサーチ実施中に既に
開発されているシステムを見
ても、船員は明らかに貴重な
支援を得ることができる。例
えば、単調な仕事から解放さ
れたり、機器の信頼性が増し
たり、ナビゲーションがより
安全になったりするからだ。
船員の疲労や状況把握不足な
どが再三、海難事故につなが
り、しばしば、取り返しのつか
ない結果を招いてきた。人員
を配置した船上でナビゲーシ
ョンに自動化システムを利用
することで、船員の仕事量が
減る可能性はかなり大きい
し、船舶と陸の間のより緊密
な連携により、船内の労働環
境も改善されるだろう。
ITF Seafarers’ Bulletin 2015
Industry responses continued
国際海運会議所および
国際海運連盟
事務局長
ピーター・ヒンチリフ
「多数の完全な無人船が大洋
を渡り、世界貿易に従事する日
が来るのは遥かに先の夢だ。
国際船長航海士
パイロット協会
副会長
ジョージ・クイック
無人船の可能性については
何十年も議論がなされてきた。
電子ナビゲーションシステム
は依然として新興テクノロジ
ーであり、異常事態が発生しや
すく、したがって失敗する可能
性もある。役に立つ支援情報は
提供してくれるが、得られた情
報も、現実の世界を観察し、そ
の信頼性を検証しなければな
らない。ナビゲーション上の問
題に加え、船舶の主推進や補助
機器は非常に複雑なシステム
なので、長時間にわたり人間の
介入がないまま、問題なく運用
できることはない。
近代船とそこに積み込まれ
る貨物への巨額な投資や、海洋
航海で遭遇する変化の激しい
環境や高いリスク、海運コスト
全体に占める人件費が比較的
少額であることを考慮すると、
近い将来に無人船が実用化す
る可能性は低い。
ITF 国際海事機関(IMO)
代表
ブランコ・バーラン
たくさんの自動化技術が船
内に応用され、船員に恩恵をも
たらしている。しかし、陸上や
空中で使われている技術のほ
とんどが海には応用できない。
とりわけ厳しい天候の中でや、
何百マイルも離れた場所で直
接のコントロールなく利用す
ることはできない。
私は特に MUNIN の概念で
二つ気になる点がある。まず、
船員になりたいという人材が
ますます不足する中、陸上の制
御センターで経験を積み、高い
資格をもつ海事のプロを雇え
るようどう担保するのかとい
う点だ。この仕事はビデオゲー
ムのように習得できるもので
はなく、シミュレーターでもう
まくはいかない。次に、陸上ベ
ースのモニターやコントロー
ル・ステーションにより、船員
はスキルの多くを失うことに
なる一方、船長や乗組員は、責
任は負わされるという点だ。公
海上で有人船と無人船が行き
交うことは、安全、保安、保険
の観点から、混沌とした状態を
生み出す。
こうした理由から、海上交通
をより安全かつ安心できるも
のにするために、近代技術を船
内に導入するという本来の意
図が、陸上ベースの技術でより
金になるビジネスを生むとい
う方向にシフトしてきている
ように思われてならない。
れば、商業的な悪影響は大き
く、また安全面の問題も生じ
る。
大型船を陸上のシミュレー
船内のルーチンワークの一 ターからコントロールすると
部の遂行について、テクノロジ いう考えにも懸念をもってい
ーの活用度が上がっていくこ る。船の運航の余りにも多くの
とは明確であり、このことはお 部分が、船長が足の裏で感じる
そらく歓迎すべきことだろう。 船の動きの感覚や、船が周辺環
しかし、MUNIN の概念の大き 境にどう対応するかを聞き取
な欠陥は、沿岸部で船員が船に る耳に依存している。遠隔地に
乗り込んで誘導する必要があ いるオペレーターが船とその
ることを当然視している点と、 ような一体感をもつことは決
そうした場合に船員を船に上 してない。あるいは船に乗り込
船させたり、下船させたりする む個々人の幸福を考えること
ことが容易だと想定している も決してないが、それこそまさ
点だ。しばしば、気象状況によ に海の安全確保に極めて重要
り、ボートとヘリコプターのど な要素だ。
ちらでも船員の移動が不可能
になる可能性が高く、このよう
な原因で船がしばしば遅延す
‘Section’
head
海の写真家
35
地中海の
本質をとらえる
国際的な受賞歴のあるフォトジャーナリスト、マティア・インソレラは、船員、港湾労働者、密輸
業者、移民が住み着く世界を捉えようと、7 年にわたり地中海沿岸を旅してきた。この経験は間も
なく写真集として世に出ることになるが、その軌跡をたどってみよう。
数人の友人と帆船でイタリ
アを出発し、大西洋を横断した
時から、マティア・インソレラ
の生活は一変した。海よりも陸
の生活への興味が深いことに
すぐに気づき、ジブラルタル海
峡を訪れた際、インスピレーシ
ョンを受け、地中海文化に関す
る総合的なプロジェクトを開
始した。
インソレラは 13 か国を訪
れた。様々な船に乗り、バイク
で 2 万 5 千マイルを走った。
地中海に行く観光客が決まっ
て訪れる観光地の表面をなぞ
りながら、その真髄を捉えよう
と試みた。
インソレラはこう言う。
「今
日、地中海は分断されている。
北と南の間に鉄条網が存在し、
世界中の主な紛争はここで発
生している。苦難や戦争から逃
れる者にとっては危険な海域
であり、この 20 年間に船が地
中海で転覆し、海の藻屑となっ
た2万人余りの移民たちの墓
場でもある」
「これまで、地中海は来るも
のを拒まなかった。向かい合う
海岸どうしも異文化も橋で結
ばれていた。人類初の文明を生
んだ肥沃な土地だ。
『ハリカナ
サスの漁師』として知られるト
ルコ人作家によると、
『地中海
は地理学者たちが恣意的に決
めた5大陸とはかけ離れた第
6の大陸であり、地球の対極か
ら集まった人間が一つになる
ところ』なのだ」
インソレラはその当時の名
残が残っているのかを探りた
かった。そこで、今日でも地中
海を交通手段として利用し、そ
こで働き、異文化と接触して生
きている人々にカメラをフォ
ーカスした。つまり、今もなお
第6の大陸として地中海を体
験している人たちだ。
写真集「第6の大陸」はクラ
ウド・ファンディングを通じ
て出版される。マティア・イン
ソレラの地中海プロジェクト
の写真は以下のサイトで閲覧
できる。
www.indiegogo.com/projects/
6th-continent-photobook-onmediterranean-culture
ITF Helpline: +44 (0)20 7940 9280 | SMS Textline: +44 (0)7950 081459
www.itfseafarers.org
の
め
た
の
員
船
の
世界
ト
イ
サ
情報
ズ
ー
ラ
ア
ェ
フ
ー
g
r
o
.
ITFシ
s
r
e
r
a
f
a
e
s
f
t
i
.
www
船員のための
信頼できる情報サイト
* 自分の権利について学ぼう
* 自分の船の情報を得よう
* 助けが必要なときにどうしたらよい
かを学ぼう
* 組合がしてくれることを知ろう
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