平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活

平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
(総括・分担)研究報告書
日本人の食事摂取基準の改定と活用に資する総合的研究
研究代表者
徳留 信寛 国立健康・栄養研究所 理事長
Ⅲ.研究協力者の報告書
1.日本人のクロム摂取量とクロムの必須性に関する考察
研究協力者
吉田 宗弘
関西大学化学生命工学部
研究要旨
市販弁当類のクロム濃度を測定し、過去の食事献立の分析例とあわせて日本人のクロム摂取量に
ついて考察した。その結果、献立分析にもとづくクロム摂取量推定値と、食品成分表と食事記録に
もとづくクロム摂取量との間には無視できない乖離の存在することを認めた。また、クロムの生理
機能に関する文献にもとづいてクロムの必須性を考察し、クロムの必須性には大きな疑問があると
判断した。これらより、食事摂取基準においてクロムの推定平均必要量と推奨量を示すことは誤解
を招くおそれがあると結論した。また、クロム摂取量の推定が困難であることから、摂取量にもと
づいて目安量を設定することも難しいと考察した。
ない」という論文を発表した 4)。一方、日本人
A.目的
栄養学の教科書には、「クロムはヒトを含む
のクロム摂取量に関しては、食品成分表と食事
高等動物にとって必須の微量元素であり、欠乏
記録からの算定値と、食事献立の化学分析値と
した場合には耐糖能が低下する」と記述されて
の間に無視できない乖離のあることが指摘され
いる。わが国の食事摂取基準にも、クロムは栄
ている
養上必要な微量ミネラルに位置づけられており、
濃度を測定し、過去の食事献立の分析例とあ
成人に対して推定平均必要量と推奨量が設定さ
わせて日本人のクロム摂取量について検討し
れている
1)
5)
。本研究では、市販弁当類のクロム
。糖代謝の維持や糖尿病予防を目的
た。また、およびクロムの生理機能に関する
としたクロムサプリメントも販売されており、
文献にもとづきクロムの必須性を考察し、食
米国ではカルシウムサプリメントに次ぐ売り上
事摂取基準におけるクロムの扱いについて検
げがある
2)
討した。
。最近では、インスリンの作用を増
強するクロム含有オリゴペプチド(クロモデュ
リン)の存在も報告され 3)、糖代謝におけるク
B.方法
ロムの作用について分子レベルでの理解も進ん
コンビニエンスストアなどで市販されている
でいる。ところが、クロモデュリンの命名者で
弁当類の中で、飯に複数の献立が配置されてい
ある Vincent は、「クロムは必須の栄養素では
る形式のものを 17 点収集し、クロム測定用の試
117
料とした。各弁当試料は、全量を凍結乾燥後、
比較して低いことにある。日本の成分表のクロ
細粉化した。
ムの数値については再検討が必要かもしれない。
細粉化試料の一定量を 550℃で灰化し、0.1M
成分表からのクロム摂取量算定値は、出納実
硝酸に溶解後、
含有されるクロムを ICPMS で定
験にもとづいて設定された食事摂取基準におけ
量した。なお、内部標準元素にはロジウムを用
るクロム摂取の推定平均必要量を大きく下回る。
いた。
このため、食事記録から単純に摂取量を算定し
本研究は、対象が市販弁当類であることから、
摂取基準の数値と比較すると、日本人はクロム
摂取不足になり、クロムサプリメントの宣伝材
倫理面への配慮は不要である。
料に使われるおそれがある。
表 2 は成分表に記載されたクロム含有量を数
C.結果
値の高い食品から順に抜き出したものである。
収集した 17 点の弁当試料に含有されるエネ
クロム含有量の高い食品の大半は粉末化した香
ルギー量の平均値は 667 kcal であり、成人の平
辛料と加工食品であり、穀物、豆、および生鮮
均的なエネルギー摂取量である 2000 kcal の 3 分
食品の中に 100 g あたり 10 µg を超えるクロム
の 1 であったことから、測定したクロム量を 3
含有量のものは皆無である。クロムの分析にお
倍したものを 1 日摂取量換算値として、食事摂
いては周囲からのクロム汚染に細心の注意を払
取基準の指標(推定平均必要量)と比較した。
うことが要求される。加工食品のクロム含有量
比較の結果は図 1 に示した。弁当類に含まれる
が高いこと、および献立中クロム濃度に関して
クロムの 1 日摂取量換算値は、半数以上が食事
実測値が成分表からの算定値を大きく上回るこ
摂取基準(2010 年版)の推定平均必要量(30 µg/
とは、献立に含まれるクロムの多くが調理加工
日)を上回っており、平均値±標準偏差は 42 ±
中に紛れ込んだ可能性をうかがわせる。
25 µg/日だった。この値は、食事記録と食品成
分表から算定される摂取量推定値である約 10
µg/日
2. クロムの必須性に対する疑義
5、6)
を大きく上回るものである。
食事から摂取されたクロムの吸収率は種々の
条件によって変動するといわれるが、米国の食
D.考察
事摂取基準ではこれを平均1%と見積もってい
1. クロム摂取量
る 14)。最近の同位体を用いた動物実験の結果は
表 1 に今回の測定値を含めて、成人のクロム
摂取量を推定した報告
この見積もりを支持している 15)。クロム摂取量
5, 7-13)
をまとめた。クロ
20〜80 µg/日に吸収率1%を適用すると、食事か
ム摂取量の推定値は、日本、欧米ともにおおむ
ら体内に吸収されるクロムは 1 µg/日未満にな
ね 20〜80 µg/日の範囲であり、成分表からの推
る。ヨウ素、セレン、モリブデンは、摂取量も
定値である 10 µg/日未満を大きく上回る。同一
しくは必要量がクロムと同水準であるが、これ
献立について成分表からの計算値と実測値を比
らは消化管で大半が吸収される。マンガンは吸
較しても同様の乖離が認められている 5)。乖離
収率が数%未満であるが、1 日摂取量が mg のオ
の原因のひとつは、日本の成分表に記載されて
ーダーであるため、吸収量はヨウ素やセレンと
いる食品のクロム含有量がこれまでの報告値に
ほぼ同水準となる。つまり、
クロムの吸収量は、
これまで知られている必須微量元素に比較して
118
100 分の 1 未満であり、あまりにも少ない。ま
し、これを栄養的に適切なクロムを摂取する群
ず、この点において、クロムの必須性には疑問
と位置づけて低クロム飼料投与群と比較した。
がある。
Vincent と同様に、飼料中濃度 0.03 µg/g の低ク
ロム飼料を用いて、飼料中濃度 1 µg/g のクロム
クロムの主排泄経路は尿であると考えられる
15)
。尿クロムの分析値は研究者ごとに差異が大
投与が耐糖能に影響を与えないことを示す研究
きいが、最近は吸収率1%に見合う尿排泄量(1
が存在することから 19)、ラットの耐糖試験にお
µg/日未満)とする報告が多い 16-18)。
いてクロムの効果が生じるには、飼料中濃度 1
4)
は、ラット標準精製飼料である
µg/g では不十分であり、2 µg/g という高い水準
AIN93G からクロムを除き、クロム濃度 0.016
の摂取が必要であることは確かである。以上よ
µg/g というこれまでにない低クロム飼料を調製
り、単純なクロム欠乏では耐糖能低下が起こら
した。そして、ラットを 4 群に分け、1 群には
ないことは明白であり、クロムを必須元素でな
この低クロム飼料、他の 3 群には、それぞれ通
いとする Vincent の主張はきわめて妥当なもの
常の AIN93G 飼料(クロム濃度 1.135 µg/g)、
といえる。
Vincent
AIN93G に 0.2 µg/g のクロムを添加した飼料
(ク
ロム濃度 1.331 µg/g)、AIN93G に 1.0 µg/g のク
E.結論
ロムを添加した飼料(クロム濃度 2.080 µg/g)
クロムの必須性に大きな疑問が生じているこ
を与えて約 6 か月間飼育後、耐糖試験を行った。
とから、食事摂取基準においてクロムの推定平
血糖値の変化量を積分した Area under curve
均必要量と推奨量を設定することの意義はない
(AUC)を比較すると、1.0 µg/g クロム添加群
と判断する。むしろ、成分表からの摂取量算定
が AIN93G 群に比べて有意に低値となった。ま
値が現在設定されている推定平均必要量を大き
た、試験中の血中インスリン濃度の AUC はク
く下回ることを考慮すると、推定平均必要量と
ロム摂取量に依存して小さくなり、1.0 µg/g ク
推奨量を設定することは、日本人がクロム不足
ロム投与群が最低値を示した。ただし、いずれ
であるという誤解を生じる。
の指標においても、低クロム群と AIN93G 群と
また、成分表からの摂取量推定値と献立分析
の間に有意差は認められなかった。Vincent は、
低クロム群と AIN93G 群との間に有意差のない
からの摂取量推定値との間に大きな乖離がある
ことは、国民健康・栄養調査の結果からクロム
ことから、耐糖試験において血糖値やインスリ
摂取量を算定したとしても、その信頼性が低い
ン濃度に差が生じるには薬理水準のクロム投与
ため、目安量の設定に使えないことを意味する。
が必要であると述べ、これまでの研究で認めら
次回の食事摂取基準の策定においては、クロ
れたクロムの効果は栄養素としての作用ではな
ムを対象から除くことを検討する必要があると
く薬理作用であると結論している。そして、ク
考える。
ロムは必須微量元素ではないと主張している。
AIN93G のクロム濃度がヒト食事換算では
F.研究発表
400 µg/日程度のクロム摂取に相当しており、ヒ
1.論文発表
トの摂取範囲に該当する群が設定されていない
吉田宗弘. クロムはヒトの栄養にとって
ことにやや不満は感じる。しかし、Vincent は
必須の微量元素だろうか?日本衛生学雑
AIN93G がラットの標準飼料であることを重視
119
誌 (2012) 67, 485-491.
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120
表 1 クロム摂取量の推定値
国
推定法
フランス
高齢者献立の分析
スペイン
クロム摂取量
発表年
文献
40 ± 14
2007
(7)
病院一般食の分析
77 ± 17
2008
(8)
ベルギー
病院や軍隊の食事の分析
53 ± 31
1995
(9)
メキシコ
食品分析値からの算定
30 ± 2
2001
(10)
日本
一般家庭献立の分析
47 ± 33
1988
(11)
菜食者献立の分析
27 ± 8
2011
(12)
病院一般食の分析
43 ± 20
2011
(5)
市販弁当の分析
42 ± 25
2013
今回の分析
一般成人献立の分析
33 ± 3
1985
(13)
アメリカ
(µg/日)
表 2 クロム含有量の高い食品(µg/100 g)
バジル、粉末
47
紅茶、葉
18
あおのり、素干し
41
とうがらし、粉末
17
パセリ、乾燥物
38
シナモン、粉末
14
パプリカ、粉末
33
さらしあん
14
刻みこんぶ
33
黒砂糖
13
こしょう(黒)、粉末
30
かぼちゃ種、味付け
13
ほしひじき
24
こしょう(混合)、粉末
12
ミルクチョコレート
24
まこんぶ、素干し
11
カレー粉
21
カットわかめ
10
さんしょう
21
日本食品標準成分表 2010 より抜粋
121
図 1 市販弁当類からのクロム摂取量(1 日摂取量換算値)
122
平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
(総括・分担)研究報告書
日本人の食事摂取基準の改定と活用に資する総合的研究
研究代表者
徳留 信寛 国立健康・栄養研究所 理事長
Ⅲ.研究協力者の報告書
2.ビタミン K
研究協力者
田中 清
京都女子大学家政学部食物栄養学科
研究要旨
重症心身障害者 (Severe motor and intellectual disabilities; SMID)患者におけるビタミン K 不足
に関する報告は乏しいので、この点を検討した。SMID 患者 82 名(男性 41、女性 41)に対し、
肝臓及び骨におけるビタミン K 不足の指標として、血清 protein induced by vitamin K absence-II
(PIVKA-II)、及び undercarboxylated osteocalcin (ucOC) を測定し、施設からのビタミン K 供与
量に平均摂取率を乗じて、ビタミン K の摂取量を求めた。
基礎疾患としては、脳性麻痺が最も多く 66 例で、46 例は経口摂取可能(OI 群)であったが、
36 例は経管栄養(EN 群)を受けており、長期抗生剤投与例は 19 例、抗痙攣薬服用者は 71 例
であった。血清 PIVKA-II 濃度は 52%、血清 ucOC 濃度は 30%において、基準上限値を超えて
いた。OI 群に比して EN 群では、また抗生剤非投与群より投与群において、ビタミン K 摂取
量は有意に低く、血清 PIVKA-II 濃度・ ucOC 濃度は有意に高かった。重回帰分析の結果有意
の寄与因子は、PIVKA-II に対して EN 及び抗生剤投与、ucOC に対しては抗生剤投与であった。
抗生剤投与有の EN 群において、血清 PIVKA-II ・ucOC 濃度は他の 3 群より高かった。抗生
剤非投与例において、ビタミン K 摂取量は血清 PIVKA-II・ucOC 濃度と逆相関した。血清
PIVKA-II・ucOC 濃度を上昇させるビタミン K 摂取量は、2.5 μg/BW/day and 5.5 μg/BW/day であ
った。
本研究の臨床的意義に関しては、SMID 例では骨折リスク増加が報告されているが、骨粗鬆
症治療薬のほとんどは、SMID 例への投与は困難であり、ビタミン K 補充は、有力な候補とな
り得るであろう。栄養学的には、経口的ビタミン K 供給が不足している状況では、腸内細菌に
よる産生も、臨床的意義を持つことが示唆され、新生児におけるビタミン K 欠乏の発生機序の
理解にも示唆を与えるものである。
ど種々の疾患から構成される。全体的に低栄
A.目的
(Severe motor and
養状態であるだけではなく、微量栄養素欠乏
intellectual disabilities; SMID) は、脳性麻痺な
のリスクも高い。SMID 患者は、抗痙攣薬の
重症心身障害者
123
統計処理には SPSS 18.0 J を用い、2 群間の
服用率が非常に高く、抗痙攣薬は肝臓におけ
るビタミン D 代謝酵素を誘導することから、
相関は Pearson または Spearman の相関係数に
SMID 患者におけるビタミン D 欠乏症に関し
より、ビタミン K 不足に関与する要因の解析
ては、多くの報告があるが、SMID 患者にお
には、重回帰分析を用いた。独立した 4 群間
いて出血傾向が見られたという報告もあるが、
の比較には、Mann-Whitney 検定を行い、
ビタミン K に関する報告は乏しい。そこで
Bonferroni 補正を加えた。
SMID 患者におけるビタミン K 不足の頻度、
ビタミンK 不足をきたすビタミンK 摂取の
breakpoint に関しては、以下の方法に寄った。
及びそれに対する寄与因子を検討した。
予め 1.0 μg/BW kg/day から 6.0 μg/BW kg/day
B.対象と方法
まで、0.5 μg/BW kg/day 間隔で、種々のビタ
1. 対象
ミン K 摂取のカットオフ値を定め、対象者を
それ以上・未満の 2 群に分けた。血清
対象者は、びわこ学園草津に入所中の
SMID 患者 82 名(男性 41、女性 41)であっ
PIVKA-II・ucOC 濃度について t 検定を行い、
た。本研究の目的・内容を、本人あるいは家
最小の p 値(最大の t 値)を示した値を
族に文書にて説明して、
書面にて同意を得た。
breakpoint とした。
本研究の内容は、びわこ学園における倫理審
査委員会の承認を得た。ビタミン K・ワルフ
C.結果
ァリン・ビタミンのサプリメント服用者や、
1. 対象者の背景
表 1 に対象者の背景を示す。基礎疾患とし
肝臓・骨疾患を有する例は除外した。
ては、脳性麻痺が最も多く 66 例であった。
2. 方法
嚥下障害を伴う例が多いことから、経管栄養
早朝空腹時に採血を行い、血清分離後、測
を受けている対象者も多く、46 例は経口摂取
定までの間-30°C にて冷凍保存した。肝臓及
可能であったが、36 例は polymeric diet によ
び骨におけるビタミン K 不足の指標として、
る経管栄養を受けていた。長期抗生剤投与例
血清 protein induced by vitamin K absence-II
は 19 例(平均 7.0 年)、抗痙攣薬服用者は 71
(PIVKA-II)、及び undercarboxylated osteocalcin
例であった。
(ucOC) を 、 electro
chemiluminescence
immunoassay (ECLIA) 法にて測定した。その
2. 血清 PIVKA-II ・ucOC 濃度の分布(図 1)
他血小板数、プロトロンビン時間 (PT) をも
INR はほぼ全例基準値範囲内であった。血
清 PIVKA-II 濃 度 は 60.9±106.5 mAU/mL
検査した。
7 日間の食事記録に基づき、施設からのビ
(median: 29.0 min-max;10- 632 mAU/mL )、基準
タミン K 供与量に平均摂取率を乗じて、ビタ
上限値 28mAU/mL を超えたのは 52%であっ
ミン K の摂取量を求めた。
た。
血清 ucOC 濃度は 5.44±5.70 ng/mL (median:
3.49; min-max; 0.39-32.56)、基準上限値を超え
3. 統計処理
たのは 30%であった。
124
p=0.02)。
3. 背景因子とビタミン K 状態の関連
6. 血清 PIVKA-II・ucOC 濃度に対するビタミ
表 2 に示すように、OI 群に比して EN 群で
ン K 摂取の breakpoint の決定
は、摂取エネルギーのうちたんぱく質からの
割合が有意に高く、脂質からの割合が低かっ
次に血清 PIVKA-II and ucOC に対するビタ
たが、炭水化物には差がなかった。経腸栄養
ミン K 摂取の breakpoint を決定した。上記の
剤からの分も含めたビタミン K 摂取は、全体
ように、
抗生物質とビタミンK 摂取の間には、
として 4.5 μg/BW/day であり、EN 群では (2.0
有意の交互作用があるので、抗生剤非投与例
μg/BW/day)、OI 群 (5.7 μg/BW/day) より有意
のデータを用いた。図 3 にしめすように、ビ
に低かった。
タミン K 摂取量は血清 PIVKA-II 濃度と有意
血清 PIVKA-II 濃度・ ucOC 濃度はいずれ
の逆相関を示し(r= -0.448, p< 0.001)、血清
も、OI 群より EN 群において、また抗生剤非
ucOC 濃度とも逆相関の傾向であったが(r=-
投与群より投与群において有意に高かったが、
0.247, p=0.051)、INR とは相関しなかった。血
INR には差を認めなかった。なお抗生剤投与
清 PIVKA-II・ucOC 濃度に対する、ビタミン
群では、ビタミン K 摂取が有意に低かった。
K 摂 取 の breakpoint は 、 そ れ ぞ れ 2.5
μg/BW/day and 5.5 μg/BW/day であった。
4. 重回帰分析
ビタミンK 不足の規定因子を重回帰分析に
D.考察
2
て解析した。PIVKA-II に対して、R は 0.229
従来 SMID 例におけるビタミン K 不足に関
であり、EN 及び抗生剤投与が有意の寄与因
する報告は乏しかった。吉川らの報告は、
子であった(標準化係数 β はそれぞれ 0.221、
PIVKA-II の み の 評 価 で あ る が 、 今 回 は
0.327)。一方 ucOC に対しては、R2 が 0.270
PIVKA-II・ucOC の両方を測定しており、不
であり、抗生剤投与が唯一の有意の寄与因子
足者の割合はそれぞれ 52%・30%であった。
であった(標準化係数 β0.428)。
すなわち SMID 例においては、肝臓・骨のい
ずれにおいても、ビタミン K 不足者の割合が
5. EN 及び抗生剤投与の相互作用
高かった。重回帰分析の結果、EN の有無、
図 2 に示すように、EN の有無、抗生剤投
抗生剤投与の有無が、有意の寄与因子であっ
与の有無により、対象者を 4 群に分けた。
たことから、対象者をこれらの有無によって
両方の要因を有する群(EN/AB+)においては、
4 群に分けたところ、EN かつ抗生剤投与例に
血清 PIVKA-II ・ucOC 濃度はいずれも、他の
おいて、血清 PIVKA-II・ucOC 濃度が最も高
3 群より高かった。次に EN の有無と抗生剤
い、すなわち最もビタミン K 不足状態であっ
の有無の交互作用を検討したところ、抗生剤
た。
が血清 PIVKA-II ・ucOC 濃度に及ぼす影響は、
EN 例については、ビタミン K 摂取量の低
OI 群と EN 群では、有意に異なっていた
いことで説明できるかもしれないが、抗生剤
(interaction p value PIVKA-II; p=0.06, ucOC;
に関しては、複数の要因が考えられる。一部
125
の抗生剤は、ビタミン K サイクルを阻害し、
法が開発されたが、
費用・所要時間の面から、
ビタミンK の再利用を障害することが知られ
疫学調査・臨床研究への応用は困難である。
ている。また腸内フローラへの影響も考えら
またビタミン K は、phylloquinone(ビタミン
れる。腸内細菌は長鎖のメナキノンを産生す
K1)と menaquinones (ビタミン K2)からな
るが、その寄与はそれ程大きくないと通常は
り、後者はさらに多くの同族体で構成される
考えられている。しかし食事からのビタミン
ため、どれか 1 つの血液中濃度のみで、ビタ
K 摂取が不足の状態では、腸内細菌による産
ミン K 状態を決定するのが難しい。
生が意味を持つ可能性があり、そのような機
序が想定される。
E.結論
抗生剤非投与例のデータを用いて、ビタミ
本研究は、臨床的意義・栄養学定義の両者
ン K 不足に対する摂取の breakpoint を求めた
を持つものと考えている。まず臨床的意義に
ところ、PIVKA-II については 2.5 mg/BW
関しては、SMID 例では出血傾向の報告に加
kg/day、ucOC に関しては 5.5 μg/BW/day とは
えて、骨折リスク増加の報告もある。現在多
るかに高かった。腸管から吸収されたビタミ
くの骨粗鬆症治療薬が開発されているが、
ンK はまず肝臓で利用された後骨などで利用
SMID 例への投与は困難なものがほとんどで
されるため(first pass effect)、骨では肝臓よ
ある。Bisphosphonates は嚥下困難者には投与
りビタミン K 不足になりやすく、より多量を
できないし、selective estrogen receptor modifier
要するものと考えられる。
(SERM) は深部静脈血栓症の懸念から、寝た
図 1 に示したように、抗生剤非投与例のデ
きり例には使えない。従って、このような対
ータから、
OI に比してEN では、
血清PIVKA-II
象者に対するビタミン K 補充は、有力な候補
濃度は有意に高かったが、血清 ucOC 濃度に
となり得るであろう。
は差がなかった。ビタミン K 摂取の中央値
また栄養学的には、ビタミン K の供給には
(25% 、 75% 値 ) は、 EN では 2.0 (1.6, 2.4)
食事からの経口摂取が大きな意味を持ち、腸
μg/BW/day、OI では 5.7 (5.0, 6.3) であった。
内細菌による産生の寄与は小さいと従来考え
すなわち EN 群のほとんどの例ではビタミン
られてきたが、本調査の結果から、経口的ビ
K 摂取が PIVKA-II の breakpoint である 2.5
タミン K 供給が不足している状況では、腸内
μg/BW/day 未満であるのに対し、OI 群では
細菌による産生も、臨床的意義を持つことが
ucOC の breakpoint である 5.5 μg/BW/day 周辺
示唆された。ビタミン K 欠乏による出血は、
にあり、上記の相違は、この摂取量の違いに
成人では基本的には起こらないが、新生児で
よるものと思われた。
は重要な問題である。新生児におけるビタミ
研究においては、血清ビタミン K 濃度測定
ン K 欠乏の発生機序として、母乳中ビタミン
ではなく、血清 PIVKA-II・ucOC 濃度をビタ
K 濃度低値などに加えて、腸内フローラの未
ミン K 不足の指標として調査を行ったが、下
成熟も挙げられている。すなわち本研究は、
記 2 点の理由によるものである。まず最近
このような病態の理解にも貢献し得るものと
LC/MS/MS による、ビタミン K の優れた測定
考えている。
126
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128
表1
表2
129
図1
図2
図3
130
平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
(総括・分担)研究報告書
日本人の食事摂取基準の改定と活用に資する総合的研究
研究代表者
徳留 信寛 国立健康・栄養研究所 理事長
Ⅲ.研究協力者の報告書
3.「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」策定に用いた文献の体系的分類と
今後の課題に関する検討
研究協力者
中出 麻紀子
(独)国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部
研究協力者
今井 絵理
(独)国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部
研究分担者
坪田(宇津木)恵
(独)国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部
研究分担者
笠岡(坪山)宜代
(独)国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部
研究要旨
本研究では「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」におけるエビデンス不足部分及び基準値策
定の考え方について抽出し、根拠論文の内容を体系的に分類することで、次期策定の課題を明ら
かにすることを目的とした。
成人において食事摂取基準値が策定されているエネルギー及び 34 種類の各栄養素について、
基
準値策定に直接使用された文献を「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」報告書より抽出し、策
定の考え方及び以下の項目(対象者の人種、出版年、対象者の性別、文献の種類及び研究デザイ
ン、解析人数、論文内容)を体系的に分類した。
基準値策定に直接関わる根拠として 166 件の文献が抽出され、どの指標にも共通して日本人に
関する文献が少ないこと、一部の栄養素について策定の考え方に対応する文献が不足しているこ
と、1980 年代の文献 1 件のみで基準値(耐容上限量)が策定された栄養素(ビタミン A、ビタミ
ン D、ビタミン B6、鉄、銅)が存在すること等が明らかとなった。策定の考え方の内容について
は、特に目標量の策定において栄養素間で不統一性が認められた。
食事摂取基準次期策定の際には、策定の考え方、及びビタミン A、ビタミン D、ビタミン B6、
鉄、銅の耐容上限量等をはじめとするエビデンスが少ない栄養素の扱い等について再検討する必
要性が示唆された。また、今後は日本人を対象としたエビデンスの増加が望まれる。
A.目的
教育や各種施設における給食の提供等にお
日本人の食事摂取基準は、国の健康増進
いて幅広く活用されている。食事摂取基準
施策や栄養改善施策等を策定する際の基本
は近年では 5 年毎に改定が行われ、最新の
となるものであり、現在、保健所、保健セ
ものは「日本人の食事摂取基準(2010 年
ンター、民間の健康増進施設における栄養
版)」(平成 22 年度から 26 年度までの 5
131
年間使用)である。「日本人の食事摂取基
用いた文献)に限定し、栄養素の特性およ
準(2010 年版)」では、策定の目的として、
び策定の背景に使用された文献や、基準値
1)
の妥当性に関する文献は抽出対象から外し
摂取不足からの回避、2)過剰摂取による
3)
健康障害からの回避、 生活習慣病の一次
た。その後、抽出された文献は、推定エネ
予防を設定し、国内外の学術論文や学術資
ルギー必要量、推定平均必要量または目安
料をレビューした上で基準値を策定してい
量、耐容上限量、目標量の各指標別に、以
る。基準値策定の根拠は報告書の文章に記
下の項目に沿って分類した:対象者の人種
載されているが、指標毎に体系的に示され
(日本人、それ以外(人種が不明なものも
た報告は少ない。次期策定の基礎資料とし
含む))、出版年(1940 年代、1950 年代、
て、また活用を進めるためにも策定根拠の
1960 年代、1970 年代、1980 年代、1990 年
明確化が必要である。
代、2000 年代)、対象者の性別(男性のみ、
そこで本研究では、「日本人の食事摂取基
女性のみ、男女、不明)、文献の種類及び
準(2010 年版)」の成人における基準値策
研究デザイン(論文の場合は横断研究、コ
定の考え方の抽出、及び基準値策定の際に
ホート研究、症例対照研究、介入研究、総
使用された文献を体系的に分類することに
説、メタアナリシス、症例報告、その他の
より、1)エビデンス不足部分、2)策定の考
文献の場合はガイドライン、解説、報告書、
その他)、解析人数(10 名未満、10 名~100
え方における課題について明らかにするこ
名未満、100 名~500 名未満、500 名~1000
とを目的とした。
名未満、1000 名以上、不明)、論文内容。
「推奨量」は「推定平均必要量」から推奨
B.方法
量算定係数を用いて算出するため、対象外
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」報
告書
1)
とした。分類は、以下の定義に従って行い、
で成人について食事摂取基準値が策
栄養素間及び指標間で比較を行った。1)「日
定されているエネルギー及び 34 種類の各
本人の食事摂取基準(2010 年版)」の報告
栄養素(たんぱく質、脂質、飽和脂肪酸、
書で、論文の一部の結果のみが使用されて
n-6 系脂肪酸、n-3 系脂肪酸、コレステロー
いる場合には、その結果について解析した
ル、炭水化物、食物繊維、ビタミン A、ビ
人数とした(例えば、基礎代謝に関する論
タミン D、ビタミン E、ビタミン K、ビタ
文で、寝たきりの者と寝たきりでない者の
ミン B1、ビタミン B2、ビタミン B6、ビタ
結果が示され、「日本人の食事摂取基準
ミン B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、
(2010 年版)」の報告書で寝たきりでない
ビオチン、ビタミン C、ナトリウム、カリ
者の結果のみが採用されている場合には、
ウム、カルシウム、マグネシウム、リン、
寝たきりでない者の人数を解析人数とし
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、
た)、2)出納試験が実施された研究のうち、
クロム、モリブデン)について、報告書本
窒素出納や、水溶性ビタミンの出納等、出
文中の記載から基準値策定の考え方、その
納の平衡維持量について検討している研究
基準値策定に使用された文献を抽出した。
は介入研究に分類し、二重標識水法を用い
抽出する文献は成人の基準値策定に直接使
た身体活動量の測定等、検討目的が出納の
用された文献(数値の加工・未加工は問わ
平衡維持以外の場合は横断研究等に分類し
ず、食事摂取基準値、又は基準値の計算に
132
た、3)日本人を対象とした文献の抽出は、
ン、カリウム、リン、マンガン)で策定さ
方法に日本人の人種の記載があること、調
れており、合計 28 種類の栄養素について策
査地域が日本に限定されており外国人が含
定されていた(表 2)。一方、脂質、飽和
まれているという記載がないこと等を根拠
脂肪酸、n-3 系脂肪酸、コレステロール、炭
とした、4)抽出された文献が総説、ガイド
水化物、食物繊維に関しては推定平均必要
ライン・解説、その他の資料の場合には、
量及び目安量のいずれも策定されていなか
性別及び解析人数の項目には含めなかった。
った。耐容上限量は 16 種類の栄養素(ビタ
なお、
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
ミン A、ビタミン D、ビタミン E、ナイア
の報告書では 1)、「推定エネルギー必要量」
シン、ビタミン B6、葉酸、カルシウム、マ
とは、個人又は集団において、体重を維持
グネシウム、リン、及びクロム以外の微量
するために必要なエネルギー摂取量の推定
ミネラル)について基準値が策定されてお
値、「推定平均必要量」とは、ある対象集
り(表 3)、目標量は 9 種類の栄養素(脂
団に属する 50%の人が必要量を満たすと推
質、飽和脂肪酸、n-6 系脂肪酸、n-3 系脂肪
定される摂取量、「目安量」とは、推奨量
酸、コレステロール、炭水化物、食物繊維、
が算定できない場合に設定されるもので、
ナトリウム、カリウム)について、基準値
特定の集団において、ある一定の栄養状態
が策定されていた(表 4)。
を維持するのに十分な量、「耐容上限量」
2.基準値策定に直接使用された文献の数
とは、健康障害をもたらすリスクが無いと
みなされる習慣的な摂取量の上限量、「目
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
標量」とは、生活習慣病の一次予防を目的
の報告書に引用されている文献のうち、基
として、特定の集団において、その疾患リ
準値策定に直接使用された文献の数は、重
スクや、その代理指標となる生体指標の値
複分を除くと、推定エネルギー必要量で 14
が低くなると考えられる栄養状態が達成で
件、推定平均必要量(85 件)及び目安量(9
きる量と定義されている。
件)で合計 94 件、耐容上限量で 47 件、目
標量で 11 件であった。
推定エネルギー必要量の策定には、基礎
C.結果
代謝量や身体活動レベル等に関する日本人
1.各栄養素における基準値策定の有無
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
男女を対象とした文献が 14 件使用され、出
の基準値策定に直接使用された文献につい
版年も 2000 年代が 10 件(71.4%)を占めて
て、指標別に表 1 から表 4 に示した。基準
いた(表 1)。
値が策定されている 34 種類の栄養素のう
一方、栄養素の推定平均必要量の策定に
ち、推定平均必要量は 19 種類の栄養素(た
は、85 件中、日本人を対象とした文献が 13
んぱく質、ビタミン A、パントテン酸及び
件(15.3%)使用されており、ビタミン B6
ビオチン以外の水溶性ビタミン、ナトリウ
を除く水溶性ビタミン及びナトリウム、鉄
ム、カルシウム、マグネシウム、マンガン
を除く微量ミネラルでは、日本人を対象と
以外の微量ミネラル)、目安量は 9 種類の
した文献の使用は無かった(表 2)。栄養
栄養素(n-6 系脂肪酸、ビタミン D、ビタミ
素別に見ると、たんぱく質(16 件)の文献
ン E、ビタミン K、パントテン酸、ビオチ
使用数が最も多く、次いでカルシウム(15
133
件)、亜鉛(9 件)、ビタミン A(8 件)、
定されていた(表 1)。
葉酸(7 件)であり、その他の栄養素の使
推定平均必要量は、出納試験の結果によ
用文献数は 5 件以下であった。たんぱく質
るもの(たんぱく質、ビタミン B1、ビタミ
では窒素出納法に関する文献が多く使用さ
ン B2、ナイアシン、ナトリウム、マグネシ
れていたものの、1970 年代及び 1980 年代
ウム、クロム、モリブデン)、生体指標を
の文献が中心であった。目安量に関しては、
アウトカムにしたもの(ビタミン A、ビタ
使用された 9 件の文献のうち日本人を対象
ミン B6、ビタミン B12、葉酸、ビタミン C、
とした文献が重複分を除き 7 件(77.8%)を
銅、ヨウ素、セレン)、要因加算法による
占めていた。日本人を対象とした文献のう
もの(カルシウム、鉄、亜鉛)等、栄養素
ち、ビタミン K、ビオチン、マンガン以外
により様々であった(表 2)。また、推定
は、国民健康・栄養調査の結果を使用して
平均必要量が算定できない場合の代替指標
いた。
である目安量は、主に、食事調査による推
定平均摂取量(n-6 系脂肪酸、ビタミン E、
耐容上限量では、基準値が策定されてい
る 16 種類の栄養素のうち、日本人を対象と
パントテン酸、ビオチン、リン、マンガン
した文献が使用されているのはビタミン E、
等)に基づいて策定されていた。生体指標
リン、ヨウ素、セレンのみであり、使用文
をアウトカムにした栄養素では、栄養素の
献数は 47 件中 5 件(10.6%)であった(表
欠乏症状が生じないと考えられる摂取量を
3)。ビタミン A、ビタミン D、ビタミン
主な策定の考え方としていたが、ビタミン
B6、鉄、銅は 1980 年代の文献 1 件のみで耐
C のみ例外で、生活習慣病の一次予防に当
容上限量の値が策定されており、特にビタ
たる心臓血管系疾病の予防や抗酸化作用が
ミン A は 10 例未満の症例報告 1 件のみで
期待できる摂取量を策定の考え方としてい
あった。
た。また、ビタミン D では、血清 25-ヒド
目標量に関する使用文献数は、重複分を
ロキシビタミン D 濃度を摂取量の考え方と
除くと、日本人を対象としたものが 11 件中
していたが、実際の食事摂取基準値は、国
4 件(36.4%)であった(表 4)。日本人を
民健康・栄養調査による摂取量の中央値を
対象とした文献が使用されている栄養素
参考に策定されていた(国民健康・栄養調
(脂質、飽和脂肪酸、n-3 系脂肪酸(下限値)、
査では血清 25-ヒドロキシビタミン D 濃度
ナトリウム、カリウム)のうち、飽和脂肪
を測定していない)。
酸以外は国民健康・栄養調査の結果を使用
耐容上限量では、ビタミン A であれば肝
していた。また、目標量では、推定平均必
臓障害、ビタミン D であれば高カルシウム
要量及び目安量や耐容上限量とは異なり、
血症、マグネシウムであれば下痢の様に、
対象者数 1000 名以上の大規模なコホート
各々特定の健康障害(過剰症)に焦点を当
研究やメタアナリシスの結果が多く使用さ
て、基準値が策定されていた(表 3)。策
れていた。
定に使用された文献の内容は、疾患の治療
目的で投与試験を行った際の健康障害の有
3.策定の考え方
無の報告(ビタミン D、ナイアシン、ビタ
推定エネルギー必要量は基礎代謝量及び
ミン B6、銅、セレン)、症例報告(事故の
身体活動レベルを用いた計算式を根拠に算
事例)(ビタミン A、カルシウム)、他国
134
の基準(マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガ
文献が少ないこと、耐容上限量では、日本
ン、モリブデン)が多かった。そのうち、
人を対象とした文献が少ないことに加え、
総説、報告書、ガイドラインを除く文献に
全体的に古い文献が多く使用されているこ
おいて健康障害の発現の報告がある栄養素
と、n-6 系脂肪酸、炭水化物の目標量におい
は、ビタミン A、ビタミン D、ナイアシン、
て、策定根拠に対応する文献が不足してい
カルシウム、マグネシウム、ヨウ素、セレ
ることが課題として挙げられた。
ンであった。一方、ビタミン E、ビタミン
今後、日本人のエビデンスを増やす方法
B6、葉酸、銅では健康障害の発現は報告さ
としては国民健康・栄養調査の有効活用が
れていなかった。
考えられる。しかし、国民健康・栄養調査
は対象者数は多いものの、食事調査が 1 日
目標量は 9 種類の栄養素について策定さ
れていたが、そのうち、n-6 系脂肪酸(上限
間のみで習慣的な摂取量を把握できない点、
値)は十分な根拠が無いまま基準値が策定
比例案分法を用いた世帯単位の調査法であ
されていた(表 4)。炭水化物も同様に、
る点、及びデータのクオリティコントロー
「推定エネルギー必要量から脂肪エネルギ
ル等の問題
ー比とたんぱく質エネルギー比を差し引い
て、今後、食事摂取基準の改定が行われる
たもの」との考えの下に基準値が策定され
5 年に 1 度でも食事調査の日数を増やした
ていたものの、その値の根拠は十分ではな
国民健康・栄養調査を実施することや、調
いとの記述があった。
査法の妥当性や信頼性についての検討
2)
がネックとなっている。従っ
3)
等
飽和脂肪酸、コレステロール、食物繊維
を実施すること、生体指標を測定すること
は脳出血や冠動脈性心疾患のリスク低下の
で、推定平均必要量策定の際の日本人デー
考えに基づき基準値が策定されていた一方
タの創出が可能となると考えられる。また、
で、n-3 系脂肪酸(下限値)では日本人にお
国民健康・栄養調査の対象者を追跡するこ
ける摂取量(国民健康・栄養調査結果)の
とで、将来的には目標量の策定にも活用す
中央値を策定の考え方としていた。また、
ることが期待できる。耐容上限量について
ナトリウムやカリウムは、高血圧予防(治
は、栄養素の過剰摂取の報告は発生件数も
療)のためのガイドライン値と、国民健康・
少なく、古い文献に頼らざるを得ないのは
栄養調査による摂取量の中央値との中間値
現状としてあるものの、参考になる文献が
を策定の考え方としていた。
他に存在しないか再検索すると共に、存在
しない場合、根拠の妥当性についても再検
討する必要があると思われる。また、炭水
D.考察
本研究では、「日本人の食事摂取基準
化物の目標量の値は、推定エネルギー必要
(2010 年版)」報告書を基に、基準値の策
量から脂肪エネルギー比及びたんぱく質エ
定根拠の抽出及び基準値策定に用いられた
ネルギー比を引いて算出されていることか
文献の体系的分類を行い、エビデンス不足
ら、今後は基準値の妥当性について、身体
部分及び策定の考え方の面から検討を行っ
計測値や血液指標との関連も含めて検討を
た。その結果、様々な課題が明らかとなっ
行うことが望ましい。
た。まずエビデンス不足部分に関しては、
策定の考え方については、統一性に欠け
どの指標にも共通して日本人を対象とした
ることが重要な課題と考えられた。例えば、
135
ビタミン C については、心臓血管系疾病の
なることから、見かけ上の根拠文献数が多
予防等を根拠に推定平均必要量が策定され
くカウントされており、策定の方法を踏ま
ていたが、これらは生活習慣病の一次予防
えた上で、エビデンスの不足状況を判断す
としての意味合いが強いことから、この根
ることも必要である。②については、本研
拠はむしろ目標量に近いと考えられる。ビ
究ではメタアナリシス等の原著論文を統合
タミン C については 1 日 6-12 mg 摂取して
した文献についても 1 件とカウントされて
いれば壊血病は発症しないことが報告され
いることなどが挙げられる。エビデンスの
4)
、今後は壊血病が生じな
質に関しては、海外ではガイドライン等作
いビタミン C 摂取量を推定平均必要量とし
成の際のシステマティックレビューにおい
て策定するのも 1 つであると思われる。ま
て、研究デザインによるエビデンスの質の
た、目標量においても策定の考え方の不統
分類が行われている
一が多く見られた。この様に策定の考え方
くまでアウトカムが類似した場合であり、
が栄養素間で異なることから、日本人の食
本研究の様に指標や栄養素によって必要と
事摂取基準を活用する際には、基準値が導
するアウトカムが異なり、それによって適
き出された根拠を理解することの重要性が
切な研究デザイン等も異なる場合には、エ
改めて示唆された。
ビデンスの質の比較は困難である。更に、
ていることから
ビタミン D については、策定根拠で「血
11)
。しかし、それはあ
本研究では論文のみならず、ガイドライン、
清 25-ヒドロキシビタミン D 濃度(> 50
解説、報告書等も含まれる。従って、今回
nmol/L)となる摂取量」と記載されている
は「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
にも関わらず、基準値策定には国民健康・
におけるエビデンス不足部分を明らかにす
栄養調査による摂取量の中央値が用いられ
るための試みの 1 つとして、文献数のみで
ていた。これは血清 25-ヒドロキシビタミ
本論文をまとめた。本研究により、日本人
ン D 濃度はビタミン D の栄養状態を反映す
を対象としたエビデンス増加の必要性が示
る指標であることから、近年では血清 25-
唆された点については意義があると考えら
ヒドロキシビタミン D 濃度のみを測定した
れる。しかしながら、今後は文献数のみな
研究が多く報告されている
5-10)
らずエビデンスの質等も考慮した包括的な
ためである
と考えられる。従って、今後、食事摂取基
評価法を考え、実施することが重要である。
準値策定のためには、様々な年代層におい
また今後の策定に向けても、日本人のエビ
て血清 25-ヒドロキシビタミン D 濃度の測
デンスを創出することに加え、策定の際に
定及び食事調査の両者を実施した研究が必
はエビデンスの質も含めた明確化、つまり
要であると思われる。
食事摂取基準値に加えて策定に用いたエビ
デンスの強さについても検討、提示してい
以上、本研究によりエビデンスの不足部
くことが期待される。
分、策定の考え方等の課題点が明らかとな
ったが、本研究の限界点としては、①文献
日本人の食事摂取基準は近年では 5 年毎
の数は策定方法の影響を受けること、②文
に改定が行われ、改定の度に、よりエビデ
献の質の評価ができてないことが挙げられ
ンスの充実したものになってきている。本
る。①については、出納試験等に比べ、要
研究では、文献の抽出段階において条件を
因加算法では各要因に対する文献が必要に
付けて絞り込みを行ったため、結果に示し
136
たのは 166 件のみであったが、「日本人の
スの少ない栄養素に関する基準値策定の必
食事摂取基準(2010 年版)」の報告書に引
要性等が今後の課題として挙げられた。
用されている文献数は全部で 1300 件近く
次期策定の際にはこれらの課題について
にものぼる。また、今回、基準値の妥当性
検討すると共に、他国の動向も見ながら新
について検討した文献は抽出対象から外し
たな食事摂取基準の根拠についても考案し
たが、「日本人の食事摂取基準(2010 年
ていく必要がある。更に、日本人により適
版)」報告書では、数多くの文献が妥当性
した基準値策定のためにも、今後は日本人
検討のために引用されており、十分検討さ
を対象としたエビデンスの増加が望まれる。
れた上で食事摂取基準値が策定されている
ことが伺えた。カルシウムの基準値は、「食
F.研究発表
事摂取基準(2005 年版)」では目安量・目
1.論文発表
標量であったのが、エビデンスの蓄積によ
なし
り「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
2.学会発表
では推定平均必要量・推奨量へと変更され
なし
た。この様に、未だ目安量が設けられてい
る栄養素は数多く存在するものの、今後エ
G.知的財産権の出願・登録状況(予定を
ビデンスの蓄積と共に、推定平均必要量や
含む)
推奨量へ変更されることが望まれる。
1.特許取得
更に、次期策定の際には、新たな策定の根
拠についても検討が必要であると思われる。
例えばビタミン K は現在血液凝固に焦点が
2.実用新案登録
なし
当てられて目安量が策定されているが、骨
形成との関連
なし
3.その他
12,13)
も示唆されており、ター
なし
ゲットとする根拠の内容についても適宜変
更、追加していく必要があると考えられる。
H.引用文献
これらについては、日本人の食生活や健康
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準
状態、及び、アメリカを始め、食事摂取基
(2010 年版)厚生労働省「日本人の食
準を策定している他国の動向についても注
事摂取基準」策定検討会報告書,東京.
意を払いながら検討を行うことが重要であ
平成 21 年 5 月.
ると思われる。
2. Sasaki S. The value of the National Health
and Nutrition Survey in Japan. Lancet
E.結論
(2011) 378, 1205-1206.
本研究では、食事摂取基準の次期策定に
3. Tokudome S, Nishi N, Tanaka H. Towards
向け、「日本人の食事摂取基準(2010 年
a better National Health and Nutrition
版)」で基準値策定に用いられた文献の体
Survey in Japan. Lancet (2012) 379, e44.
系的分類、及び今後の課題について検討を
4. Hodges RE, Hood J, Canham JE, et al.
行った。全部で 166 件の文献が抽出され、
Clinical manifestations of ascorbic acid
基準値策定の際の根拠の不統一、エビデン
deficiency in man. Am J Clin Nutr (1971)
137
women: a prospective study. Am J Clin Nutr
24, 432-443.
(1999) 69, 74-79.
5. Nakamura K, Nashimoto M, Tsuchiya Y, et
13. Cockayne S, Adamson J, Lanham-New S, et
al. Vitamin D insufficiency in Japanese
female college students: a preliminary
al. Vitamin K and the prevention of
report. Int J Vitam Nutr Res (2001) 7,
fractures: systematic review and
302‒305.
meta-analysis of randomized controlled
trials. Arch Intern Med (2006) 166,
6. Nakamura K, Nashimoto M, Matsuyama S,
1256-1261.
et al. Low serum concentrations of 25‒
hydroxyvitamin D in young adult Japanese
women: a cross sectional study. Nutrition
(2001) 17, 921‒925.
7. Nakamura K, Nashimoto M, Hori Y, et al.
Serum 25‒hydroxyvitamin D levels in
active women of middle and advanced age
in a rural community in Japan. Nutrition
(1999) 15, 870‒873.
8. Nakamura K, Nashimoto M, Yamamoto M.
Summer/winter differences in the serum
25‒hydroxyvitamin D3 and parathyroid
hormone levels of Japanese women. Int J
Biometeorol (2000) 44, 186‒189.
9. Nakamura K, Nashimoto M, Hori Y, et al.
Serum 25‒hydroxyvitamin D concentrations
and related dietary factors in peri‒and
postmenopausal Japanese women. Am J Clin
Nutr (2000) 71, 1161‒1165.
10. Nakamura K, Nashimoto M, Yamamoto M.
Are the serum 25‒hydroxyvitamin D
concentrations in winter associated with
forearm bone mineral density in healthy
elderly Japanese women? Int J Vitam Nutr
Res (2001) 71, 25‒29.
11. Atkins D, Best D, Briss PA, et al. Grading
quality of evidence and strength of
recommendations. BMJ (2004) 328,
1490-1494.
12. Feskanich D, Weber P, Willett WC, et al.
Vitamin K intake and hip fractures in
138
エネルギー出納が0となる確
率が最も高くなると推定され
るエネルギー摂取量(基礎代
謝量×身体活動レベル)
策定の根拠
EER: 推定エネルギー必要量
エネルギー
(EER)
栄養素
3-15、19
[14件]
報告書の文献
番号
対象者の性別
1980年代 : 2件 男性のみ : 2件
1990年代 : 2件 女性のみ : 6件
2000年代 : 10件 男女
: 6件
出版年
解析人数
文献内容
<論文>
基礎代謝量、二重標識水法
横断研究 : 12件 10-<100名 : 9件
による身体活動量、身体活動
介入研究 : 1件 100-<500名 : 5件
レベル
総説 : 1件
文献の種類( 研
究デザイン)
日本人を対象とした文献
表1 食事摂取基準(2010年版)における推定エネルギー必要量の科学的根拠及び使用された文献
-
報告書の文献
番号
-
出版年
-
対象者の性別
-
文献の種類(研
究デザイン)
-
解析人数
それ以外の文献(人種が不明なものも含む)
-
文献内容
策定の根拠
食事調査:
国民健康・栄養調査による摂
取量の中央値
出納法:
窒素平衡維持量を日常食混
合たんぱく質の消化率で補正
55、56
[2件]
55、56
[2件]
-
生体指標:
血中副甲状腺ホルモン濃度
を正常に保つため、血清25ヒドロキシビタミンD濃度が>
50nmol/Lとなる摂取量
食事調査:
国民健康・栄養調査による摂
取量の中央値
生体指標:
血液凝固の遅延の原因とな
る潜在的欠乏状態を回避す
るために必要な摂取量
ビタミンD
( AI)
ビタミンE
( AI)
ビタミンK
( AI)
-
-
出納法:
ビタミンB 1摂取量と尿中排泄
量との関係に基づく
出納法:
ビタミンB 2(リボフラビン)摂取
量と尿中のビタミンB2排泄量
に基づく
EAR: 推定平均必要量、AI: 目安量
ビタミンB 2
( EAR)
ビタミンB 1
( EAR)
【 水溶性ビタミン】
14
[1件]
ビタミンA
( EAR)
2、3
[2件]
16-19、28
[5件]
報告書の文献
番号
生体指標:
ビタミンA欠乏症に罹患するこ
とのない肝臓内ビタミンA蓄積
量の最低値(20μg/g)を維持
できる摂取量
【 脂溶性ビタミン】
【 脂質】
n -6 系脂肪酸
( AI)
たんぱく質
( EAR)
栄養素
-
-
-
2000年代 : 2件
2000年代 : 2件
2000年代 : 1件
2000年代 : 2件
1970年代 : 1件
1980年代 : 4件
出版年
男女
男女
男女
-
-
-
-
: 2件
: 2件
: 2件
男性のみ : 4件
女性のみ : 1件
対象者の性別
-
-
-
<その他>
報告書 : 2件
<その他>
報告書 : 2件
<その他>
その他 : 1件
<その他>
報告書 : 2件
<論文>
介入研究 : 4件
<その他>
その他 : 1件
文献の種類( 研
究デザイン)
解析人数
1000名-
1000名-
1000名-
-
-
-
-
: 2件
: 2件
: 2件
<10名
: 2件
10-<100名 : 3件
日本人を対象とした文献
表2 食事摂取基準(2010年版)における推定平均必要量及び目安量策定の科学的根拠及び使用された文献
-
-
-
15、16
[2件]
7
[1件]
96
[1件]
-
-
平成17年と平成18年の国民
健康・栄養調査による摂取量
の中央値
※18-49歳は、50-69歳の
値を目安量とする
-
8-13、15
[7件]
平成17年と平成18年の国民
健康・栄養調査による摂取量
の中央値
出版年
対象者の性別
文献の種類( 研
究デザイン)
解析人数
-
-
-
1940年代 : 1件 男性のみ : 1件
1950年代 : 1件 女性のみ : 1件
1960年代 : 1件 不明 : 1件
1980年代 : 1件 男性のみ : 1件
-
-
1970年代 : 2件 男性のみ : 1件
1980年代 : 1件 男女
: 1件
2000年代 : 4件 不明 : 1件
-
<論文>
介入研究 : 2件
-
窒素出納法による窒素平衡
維持量
文献内容
10-<100名 : 1件
-
-
10-<100名 : 2件
ビタミンB2摂取量と尿中のビ
タミンB2排泄量との関連
ビタミンB1摂取量と尿中排泄
量との関係に関する18か国
データのメタアナリシス
潜在的欠乏状態を回避する
ために必要な摂取量
-
-
肝内最低貯蔵量、推定平均
必要量を算出するための計
算式、ビタミンAの体外排泄
10-<100名 : 2件
処理率、体外排泄量、成人体
100-<500名 : 1件
重1kg当たりの肝臓重量、ビ
タミンA蓄積量の体全体と肝
臓の比
-
<論文>
メタアナリシス : 1 不明 : 1件
件
<論文>
介入研究 : 1件
-
-
<論文>
横断研究 : 1件
介入研究 : 2件
総説 : 4件
-
1970年代 : 3件
<論文>
男性のみ : 10件
<10名
: 6件
13-15、20-27
1980年代 : 7件
介入研究 : 11件
女性のみ : 1件
10-<100名 : 5件
[11件]
1990年代 : 1件
報告書の文献
番号
成人の体重1kg当たりの肝
臓重量
平成17年と平成18年の国民
健康・栄養調査による摂取量
の中央値
窒素出納法による窒素平衡
維持量、日常食混合たんぱく
質の消化率
文献内容
それ以外の文献( 人種が不明な ものも含む)
-
5
[1件]
-
-
策定の根拠
出納法:
ペラグラ発症の指標となる尿
中のN1-メチルニコチンアミド
排泄量(1.0mg/日)に基づく
生体指標:
神経障害の発症等の欠乏症
を回避するため、血漿ピリドキ
サールリン酸の濃度が>
30nmol/Lとなる摂取量
生体指標:
悪性貧血の発症を回避する
ため、血液学的性状及び血
清ビタミンB12濃度を適正に
維持する摂取量
生体指標:
赤血球葉酸≧300nmol/L、及
び血漿総ホモシステイン<14
μmol/Lを維持する摂取量
ナイアシン
( EAR)
ビタミンB 6
( EAR)
ビタミンB 1 2
( EAR)
葉酸
( EAR)
115-118
[4件]
-
食事調査:
トータルダイエット調査による
摂取量
生体指標:
心臓血管系疾病の予防、抗
酸化作用が期待できる血漿
ビタミンC濃度(50μmol/L)を
維持する摂取量
ビオチン
( AI)
ビタミンC
( EAR)
3、4
[2件]
出納法:
ナトリウム不可避損失量を補
い平衡を維持する量
カリウム
( AI)
EAR: 推定平均必要量、AI: 目安量
-
出納法:
ナトリウム不可避損失量を補
う量
ナトリウム
( EAR)
【 多量ミネラル】
110、111
[2件]
食事調査:
国民健康・栄養調査による摂
取量の中央値
パントテン酸
( AI)
栄養素
報告書の文献
番号
(表2続き)
2000年代 : 2件
-
-
2000年代 : 4件
2000年代 : 2件
-
-
2000年代 : 1件
-
出版年
男女
男女
-
-
-
-
-
: 2件
: 2件
女性のみ : 1件
-
対象者の性別
<その他>
報告書 : 2件
-
-
<論文>
横断研究 : 4件
<その他>
報告書 : 2件
-
-
<論文>
介入研究 : 1件
-
文献の種類( 研
究デザイン)
1000名-
1000名-
-
-
-
-
-
-
: 2件
: 2件
: 1件
解析人数
<10名
日本人を対象とした文献
平成17年と平成18年の国民
健康・栄養調査による摂取量
の中央値
-
-
トータルダイエット調査による
摂取量
平成17年と平成18年の国民
健康・栄養調査による摂取量
の中央値
-
-
相対生体利用率
-
文献内容
-
5-7
[3件]
128
[1件]
114
[1件]
-
70-76
[7件]
対象者の性別
-
-
1970年代 : 1件
1980年代 : 1件
1990年代 : 1件
2000年代 : 1件 男女
2000年代 : 1件
-
-
-
-
-
: 1件
1980年代 : 2件 男性のみ : 1件
1990年代 : 3件 女性のみ : 4件
2000年代 : 2件 男女
: 2件
1件
1件 男女
: 1件
1件 不明 : 1件
1件
1990年代 : 1件
-
<10名
: 1件
10-<100名 : 2件
解析人数
-
<論文>
総説 : 1件
<その他>
ガイドライン : 2件
食品中のビタミンB12の吸収
率、赤血球産生能
血漿ピリドキサールリン酸の
濃度を30nmol/L維持できる
摂取量
摂取ナイアシン等量と尿中の
N1-メチルニコチンアミド排泄
量との関連
文献内容
-
-
-
-
-
成人の不可避損失量
血漿ビタミンC濃度を50μ
mol/Lに維持する摂取量
トータルダイエット調査による
摂取量
-
10-<100名 : 6件 血球葉酸、血漿総ホモシステ
100-<500名 : 1件 インを維持する摂取量
<論文>
メタアナリシス : 1 1000名- : 1件
件
<論文>
横断研究 : 1件
-
<論文>
介入研究 : 7件
<論文>
介入研究 : 2件
総説 : 1件
<10名 : 2件
<その他>
ガイドライン : 1件
<その他>
ガイドライン : 1件
<論文>
介入研究 : 3件
総説 : 1件
文献の種類( 研
究デザイン)
それ以外の文献( 人種が不明なものも含む)
1950年代 : 3件 男性のみ : 2件
1980年代 : 1件 男女
: 1件
出版年
1950年代 :
48、49、53、54 1960年代 :
[4件]
1990年代 :
2000年代 :
41
[1件]
22、24-26
[4件]
報告書の文献
番号
72、73、83
[3件]
113
[1件]
3、4
[2件]
策定の根拠
要因加算法:
(体内蓄積量+尿中排泄量
+経皮的損失量)/見かけの
吸収率
出納法:
マグネシウムの出納が0にな
るときの摂取量
食事調査:
国民健康・栄養調査による摂
取量の中央値
カルシウム
( EAR)
マグネシウム
( EAR)
リン
( AI)
-
-
131
[1件]
-
-
-
-
要因加算法:
腸管内因性排泄量、腸管以
外への対外排泄量、真の吸
収量と摂取量とに関する数学
モデルから算出
生体指標:
銅欠乏症を回避するため、銅
の栄養状態を示す指標(血漿
銅濃度、尿中銅排泄量、唾液
中銅濃度、スーパーオキシド
ジスムターゼ活性)に変化が
認められない最低銅摂取量
食事調査:
陰膳法による摂取量と日本人
におけるマンガン摂取量の報
告(総説)の摂取量の平均値
生体指標:
甲状腺へのヨウ素蓄積量に
基づく
生体指標:
欠乏症を回避するため、血漿
グルタチオンペルオキシダー
ゼ活性が最大となる時の摂
取量の2/3
出納法:
海外の2つの文献に基づく
出納法:
海外の文献から得られたモリ
ブデンの平衡を状態を維持す
る摂取量に、汗、皮膚などか
らの損失量3μgを加算
亜鉛
( EAR)
銅
( EAR)
マンガン
( AI)
ヨウ素
( EAR)
セレン
( EAR)
クロム
( EAR)
モリブデン
( EAR)
EAR: 推定平均必要量、AI: 目安量
13、15
[2件]
要因加算法:
健康な成人の場合 (基本的
損失/吸収率)、月経のある
女性の場合{(基本的損失+
月経による損失)/吸収率)}
鉄
( EAR)
【 微量ミネラル】
栄養素
報告書の文献
番号
(表2続き)
-
-
-
-
1990年代 : 1件
-
-
1960年代 : 1件
2000年代 : 1件
2000年代 : 2件
2000年代 : 1件
2000年代 : 3件
出版年
: 2件
: 1件
-
-
-
-
-
-
-
女性のみ : 1件
男女
男女
女性のみ : 2件
男女
: 1件
-
-
-
-
<論文>
総説 : 1件
-
-
<論文>
横断研究 : 1件
総説 : 1件
<その他>
報告書 : 2件
<論文>
介入研究 : 1件
<論文>
横断研究 : 1件
介入研究 : 3件
文献の種類( 研
対象者の性別
究デザイン)
解析人数
: 2件
-
-
-
-
-
-
-
10-<100名 : 1件
1000名-
100-<500名 : 1件
10-<100名 : 3件
日本人を対象とした文献
-
平成17年と平成18年の国
民健康・栄養調査による摂
取量の中央値
-
-
-
-
食事調査(陰膳法)による
摂取量、マンガン摂取量の
報告(総説)の摂取量
-
-
対象者の性別
-
-
249
[1件]
218
[1件]
181
[1件]
150、151
[2件]
-
110、111
[2件]
6件
0件
1件
0件
-
男女 : 1件
不明 : 1件
-
1990年代 : 1件 男性のみ : 1件
1980年代 : 1件 男女 : 1件
1990年代 : 1件
1960年代 : 2件
-
1990年代 : 2件 男性のみ : 2件
:
:
:
:
1960年代 : 1件
1980年代 : 1件 男性のみ : 1件
1990年代 : 1件
-
-
男性のみ
1980年代 : 4件
58-64、68、69
女性のみ
1990年代 : 3件
[9件]
男女
2000年代 : 2件
不明 7、16、17
[3件]
-
月経出血量と月経周期
出版年
解析人数
文献内容
<論文>
介入研究 : 1件
<論文>
介入研究 : 1件
<その他>
報告書 : 1件
<論文>
介入研究 : 1件
<その他>
その他 : 1件
-
<論文>
介入研究 : 2件
<論文>
介入研究 : 7件
<その他>
ガイドライン : 2件
<論文>
介入研究 : 1件
総説 : 1件
<その他>
報告書 : 1件
-
-
-
安定同位元素を用いた試験
による、銅の栄養状態を示す
指標(血漿銅濃度、尿中銅排
泄量、唾液中銅濃度、スー
パーオキシドジスムターゼ活
性)に変化が認められない最
低銅摂取量
腸管内因性排泄量、体外排
泄量、19-30歳男性の基準体
重
基本的損失、ヘモグロビン濃
度、吸収率
-
-
<10名 : 1件
10-<100名 : 1件
-
モリブデンの出納実験
クロムの出納実験
血漿グルタチオンペルオキシ
ダーゼ活性が最大となる時の
摂取量、血漿グルタチオンペ
ルオキシダーゼ活性値とセレ
ン摂取量との間の回帰式
10-<100名 : 1件
甲状腺へのヨウ素蓄積量
100-<500名 : 1件
-
10-<100名 : 2件
<10名
: 5件
10-<100名 : 2件
10-<100名 : 1件
-
-
<10名
: 1件
<論文>
横断研究
: 8件 10-<100名 : 6件 体内蓄積量、尿中排泄量、見
コホート研究 : 2件 100-<500名 : 2件 かけの吸収率
総説 : 2件 500-<1000名: 1件
文献の種類( 研
究デザイン)
それ以外の文献( 人種が不明な ものも含む)
60、61、71、74、
1980年代 : 2件
77、82、84-87、
女性のみ : 6件
1990年代 : 4件
89、93
男女
: 4件
2000年代 : 6件
[12件]
マグネシウムの出納が0に
なるときの摂取量
尿中排泄量、見かけの吸
収率
文献内容
報告書の文献
番号
-
87
[1件]
高カルシウム血症が生
じないと考えられる摂取
量の上限
出血作用が生じないと
考えられる摂取量の上
限
ビタミンD
ビタミンE
-
-
感覚性ニューロパシー
が生じないと考えられる
摂取量の上限
プテロイルモノグルタミ
ン酸投与による副作用
が生じないと考えられる
摂取量の上限
ナイアシン
ビタミンB 6
葉酸
-
-
113、140
[2件]
ミルクアルカリ症候群が
生じないと考えられる摂
取量の上限
下痢が生じないと考え
られる摂取量の上限
(通常の食品以外から
の摂取の場合のみ)
血清無機リンが正常上
限になる摂取量
カルシウム
マグネシウム
リン
【多量ミネラル】
-
消化器系および肝臓障
害が生じないと考えら
れる摂取量の上限
【水溶性ビタミン】
-
報告書の文献
番号
肝臓障害が生じないと
考えられる摂取量の上
限
策定の根拠
ビタミンA
【脂溶性ビタミン】
栄養素
-
-
-
-
-
-
-
1980年代 : 1件
男女 : 1件
2000年代 : 1件
-
-
-
-
-
解析人数
文献内容
報告書の文献
番号
出版年
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
α-トコフェロールの投与試
験 (健康障害の報告無し)
-
-
<論文>
血清無機リンの正常上限、
介入研究 : 1件
100-<500名 : 1件
<その他>
リンの吸収率
解説 : 1件
-
-
-
-
-
<論文>
10-<100名 : 1件
介入研究 : 1件
-
-
-
-
<論文>
介入研究 : 1件
<論文>
症例報告 : 1件
<論文>
介入研究 : 1件
男性のみ :
1980年代 : 6件 女性のみ :
1990年代 : 3件 男女
:
不明 :
5件
<論文>
2件
横断研究 : 1件
1件
症例報告 : 8件
1件
139
[1件]
1980年代 : 1件
-
<論文>
総説 : 1件
ビタミンA多量摂取による肝
臓障害の報告 (健康障害の
報告有り)
文献内容
-
-
10-<100名 : 4件
血清無機リン、吸収リン量
健常人等へのマグネシウム
の投与試験 (健康障害の報
告有り)、アメリカ/カナダの
食事摂取基準値
ミルクアルカリ症候群患者に
<10名
: 8件
おけるカルシウム摂取量
10-<100名 : 1件
(健康障害の報告有り)
葉酸投与による貧血マスキ
ング作用、妊娠可能な女性
への葉酸(マルチビタミン)
の投与試験等 (健康障害の
報告無し)
手根管症候群患者へのピリ
10-<100名 : 1件 ドキシンの投与試験 (健康
障害の報告無し)
糖尿病患者や脂質異常症
者等へのニコチンアミドやニ
<10名
: 1件
コチン酸の大量投与による
10-<100名 : 2件
健康障害の報告 (健康障害
の報告有り)
-
肺疾患患者及び健常人への
100-<500名 : 1件 ビタミンDの投与試験 (健康
障害の報告有り)
<10名 : 1件
解析人数
<論文>
コホート研究 : 1件
1980年代 : 4件
症例対照研究 : 1件
100-<500名 : 2件
1990年代 : 4件 女性のみ : 7件 介入研究 : 5件
1000名: 5件
2000年代 : 1件
総説 : 1件
<その他>
ガイドライン : 1件
1980年代 : 1件 男女 : 1件
<論文>
1970年代 : 1件 男性のみ : 1件 介入研究 : 2件
1990年代 : 3件 男女
: 2件 総説 : 1件
症例報告 : 1件
-
1980年代 : 1件 男女 : 1件
1980年代 : 1件 男女 : 1件
<論文>
111、122-125 1980年代 : 1件 女性のみ : 1件 介入研究 : 4件
[5件]
1990年代 : 4件 男女
: 3件 <その他>
ガイドライン : 1件
98-106
[9件]
84-92
[9件]
46
[1件]
32-35
[4件]
-
70
[1件]
27
[1件]
対象者の性別
文献の種類( 研究
デザイン)
対象者の性
別
文献の種類
(研究デザイ
ン)
2000年代 : 1件 男性のみ : 1件
-
-
出版年
それ以外の文献( 人種が不明な ものも含む)
日本人を対象とした文献
表3 食事摂取基準(2010年版)における耐容上限量策定の科学的根拠及び使用された文献
-
-
-
-
162
[1件]
168
[1件]
-
亜鉛過剰症状(血清
HDLコレステロール、
フェリチン、ヘマトクリッ
ト、赤血球SOD活性の
低下、血清亜鉛増加
等)が生じないと考えら
れる摂取量の上限
ウイルソン病が生じな
いと考えられる摂取量
の上限
血清マンガン濃度上昇
が生じないと考えられる
摂取量の上限
甲状腺機能低下が生じ
ないと考えられる摂取
量の上限 ※連続的な
ヨウ素摂取の場合
セレンの過剰摂取によ
る健康障害発生(毛髪
や爪の脱落等)を防止
し得る摂取量の上限
ヨーロッパ食品安全委
員会の耐容上限量に基
づく
亜鉛
銅
マ ンガン
ヨウ素
セレン
モリブデン
報告書の文献
番号
鉄
策定の根拠
着色剤用酸化鉄、妊娠
及び授乳中の鉄サプリ
メント、治療用鉄剤を除
く、全ての鉄に対する暫
定耐容最大1日摂取量
(FAO/WHOの安全性
評価基準)
【 微量ミネラル】
栄養素
(表3 続き)
-
1990年代 : 1件
-
-
-
-
-
-
文献内容
報告書の文献
番号
出版年
: 1件
-
-
-
-
-
<論文>
総説 : 1件
-
-
<論文>
<10名 : 1件
横断研究 : 1件 1000名- : 2件
-
-
-
-
-
日本人の平均セレン摂取量
甲状腺機能低下症の有病
率、症例報告 (健康障害の
報告有り)
-
-
-
-
258
[1件]
201-205
[5件]
-
130
[1件]
119
[1件]
68、69
[2件]
38
[1件]
-
-
-
-
2000年代 : 1件
-
1990年代 : 3件 男女 : 4件
2000年代 : 2件 不明 : 1件
-
2000年代 : 1件
1980年代 : 1件 男女 : 1件
2000年代 : 2件
1980年代 : 1件
対象者の性別
<その他>
報告書 : 1件
<論文>
横断研究
: 1件
コホート研究 : 1件
介入研究 : 3件
-
<その他>
ガイドライン : 1件
<論文>
介入研究 : 1件
<その他>
ガイドライン : 2件
<その他>
ガイドライン : 1件
-
-
: 1件
-
アメリカの食事摂取基準に
おける健康障害非発現量
背部痛患者への銅の投与
試験 (健康障害の報告無し)
アメリカ/カナダの食事摂取
基準による最低健康障害発
現量及び不確実性因子、基
準体重
FAO/WHOの安全性評価基
準
文献内容
-
ヨーロッパ食品科学委員会
の耐容上限量
セレンの健康障害非発現
<10名
: 1件
量、皮膚がん既往者等への
10-<100名 : 1件
セレンサプリメント投与試験
1000名- : 3件
(健康障害の報告有り)
<10名
-
-
解析人数
文献の種類(研究
デザイン)
解析人数
文献の種類
( 研究デザイ
ン)
対象者の性
別
1990年代 : 1件 男女
-
-
-
-
出版年
それ以外の文献( 人種が不明なものも含む)
日本人を対象とした文献
上限値
3、4
[2件]
高血圧予防のためのカリ
ウム摂取量(高血圧合同
員会第6次報告)と平成17
年、平成18年の国民健
康・栄養調査による摂取
量の中央値の中間値
カリウム
-
-
-
2、3
[2件]
3、4、21
[3件]
心筋梗塞のリスクを低くす
る摂取量
推定エネルギー必要量か
ら、脂肪エネルギー%Eと
たんぱく質%Eを差し引い
たもの (値の設定におい
て、十分な根拠はない)
冠動脈性心疾患リスクを
低下させるための摂取量
平成17年と平成18年の国
民健康・栄養調査による
摂取量の中央値
ナトリウム
上限値
下限値
-
上限値
総エネルギー摂取量の
10% (ただし、値の設定
において十分な根拠は無
い)
-
冠動脈性心疾患リスクを
低下させるための%E
上限値
28
[1件]
脳出血のリスクを低下さ
せるための%E
下限値
2、3
[2件]
血漿総コレステロール、
LDLコレステロール、中性
脂肪、総コレステロール
/HDLコレステロール、体
重の減少をもたらす%E
下限値
報告書の文献
番号
n-6系脂肪酸とn-3系脂
肪酸の目安量、飽和脂肪
酸の目標量、一価不飽和 (文献引用なし)
脂肪酸の中央値、グリセ
ロールの分を考慮し策定
策定の根拠
高血圧予防と治療のため
の食塩摂取量(6g/日)と
平成17年、平成18年の国
民健康・栄養調査による
摂取量の中央値の中間
値
【多量ミネラル】
食物繊維
【炭水化物】
炭水化物
コレステロール
n- 3系脂肪酸
n- 6系脂肪酸
飽和脂肪酸
【脂質】
脂質
栄養素
-
対象者の性
別
-
-
: 1件
-
-
-
2000年代 : 2件 男女 : 2件
2000年代 : 3件 男女 : 2件
-
-
-
2000年代 : 2件 男女 : 2件
-
-
2000年代 : 1件 男女
平成17年と平成18年の国民
健康・栄養調査による一価
不飽和脂肪酸の中央値
文献内容
平成17年と平成18年の国民
1000名- : 2件 健康・栄養調査による%Eの
中央値
-
解析人数
-
-
-
-
-
-
-
-
H17年とH18年の国民健康・
1000名- : 2件 栄養調査による摂取量の中
央値
-
-
<その他>
報告書 : 2件
平成17年と平成18年の国民
1000名- : 2件 健康・栄養調査による摂取
量の中央値
平成17年と平成18年の国民
<その他>
健康・栄養調査による摂取
ガイドライン : 1件 1000名- : 2件
量の中央値、日本高血圧学
報告書 : 2件
会ガイドライン
-
-
-
<その他>
報告書 : 2件
-
-
<論文>
飽和脂肪酸摂取量と脳出血
1000名- : 1件
コホート研究 : 1件
罹患率との関連
<その他>
報告書 : 2件
-
文献の種類(研
究デザイン)
日本人を対象とした文献
2000年代 : 2件 男女 : 2件
-
出版年
表4 食事摂取基準(2010年版)における目標量策定の科学的根拠及び使用された文献
33
[1件]
19、20
[2件]
19
[1件]
-
30
[1件]
-
-
18、48
[2件]
30
[1件]
18
[1件]
-
報告書の文献
番号
-
対象者の性別
-
文献の種類( 研究
デザイン)
-
解析人数
-
文献内容
<論文>
コホート研究 : 1件
1000名- : 1件
飽和脂肪酸摂取量と脳卒中
等死亡率との関連
-
-
-
1990年代 : 1件
2000年代 : 2件
-
-
2000年代 : 1件 男女 : 1件
-
1980年代 : 1件 男性のみ : 1件
-
-
-
-
-
-
コレステロール摂取量と虚血
1000名- : 1件 性心疾患による死亡との関
連
-
-
<その他>
ガイドライン : 1件
<その他>
ガイドライン : 2件
-
-
アメリカ高血圧合同委員会
(第6次報告)
アメリカ高血圧合同委員会
(第7次報告)、WHO/国際高
血圧学会ガイドライン
<論文>
食物繊維摂取量と心筋梗塞
1000名- : 1件
メタアナリシス : 1件
による死亡率との関連
-
<論文>
コホート研究 : 1件
-
-
National Cholesterol
<論文>
Education Programの介入効
男性のみ : 1件
1990年代 : 2件
コホート研究 : 1件 1000名- : 2件 果に関するメタアナリシス、
不明 : 1件
メタアナリシス : 1件
飽和脂肪酸摂取量と循環器
疾患や総死亡率との関連
1980年代 : 1件 男性のみ : 1件
脂肪エネルギー比率30%と
脂肪エネルギー比率と血漿
<論文>
総コレステロール、LDLコレ
1990年代 : 1件 不明 : 1件
1000名- : 1件
メタアナリシス : 1件
ステロール、中性脂肪、総コ
レステロール/HDLコレステ
ロール、体重との関連
-
出版年
それ以外の文献( 人種が不明なものも含む)
平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
(総括・分担)研究報告書
日本人の食事摂取基準の改定と活用に資する総合的研究
研究代表者
徳留 信寛 国立健康・栄養研究所 理事長
Ⅲ.研究協力者の報告書
4. 食事摂取基準の策定システム構築に関する研究
~国内外のガイドラインの作成手順とレビューシステム~
研究協力者
今井 絵理
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究分担者
坪田(宇津木)恵
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究協力者
中出 麻紀子
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究分担者
笠岡(坪山)宜代
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究要旨
本研究では、栄養に関連するガイドラインを作成するためのガイダンスが公開されている国
内外の研究機関等(World Health Organization、コクラン共同計画、米国 Agency for Healthcare
Research and Quality、Medical Information Network Distribution Service 診療ガイドライン選定部
会)を対象に、レビューシステムについて体系的分類を行い、「日本人の食事摂取基準(2010
年版)
」との比較を行った。対象とした 4 つのガイダンスでは、作成手順は研究機関によって
大きな違いはなく、
「PICO(P: Patient, I: Intervention, C: Comparison, O: outcome)形式を用いた疑
問の定式化」
、
「情報源としてプライマリーデータベースと非出版物を使用」、
「研究デザインは
出来る限りランダム化比較試験とし、観察研究をも含む」は、共通していた事項であった。エ
ビデンスの質、推奨度を判断するスケールは、
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)
」では決ま
ったものは公表していなかったが、
「GRADE システム」を推奨しているガイダンスが多くみら
れた。今後、
「日本人の食事摂取基準」を策定する上で、目的に応じた系統的かつ網羅的なレ
ビューシステムのさらなる構築が期待される。
量からの大きな変更点は、新しい概念の導入
A.目的
「日本人の食事摂取基準」は、「栄養所要
を行ったことであり、これによって、欠乏症
量」から「食事摂取基準」に変更され、これ
の予防だけではなく、過剰症の回避や生活習
まで 5 年ごとに改定を行ってきた。栄養所要
慣病の一次予防を目的とした指標が設定され
146
た。「日本人の食事摂取基準」の基準値は、
のうち、エビデンスに基づいて決められてお
国内外の栄養学および医学の学術誌等から系
り、質が高く信頼性がおけるとされているも
統的にレビューを実施し、根拠に基づいて策
のの中から、以下を対象とした。World Health
定された。1990 年代に「根拠に基づく医療
Organization が推奨するガイドライン作成の
(Evidence-based medicine; EBM)が提唱され、
ためのハンドブック(以下「WHO」と称す)
欧米の臨床分野では、EBM が基本的な考え方
3)
となっており、近年、栄養の分野でもこの考
統的レビューのためのハンドブック
(以下
「コ
え方が取り入れられてきつつある。EBM の手
クラン共同計画」と称す)4)、及び米国連邦
法による診療ガイドライン作成は、まずテー
政府の外部機関である Agency for Healthcare
マを明確化し、系統的レビューの方法に準じ
Research and Quality の報告書(以下「AHRQ」
て関連文献の系統的検索と吟味を行なう。し
と称す)5, 6)、栄養に関するガイダンスではな
かし、実際には臨床分野とは異なり、栄養学
いが、Minds 診療ガイドライン選定部会が監
ではエビデンスレベルを判断し、EBM に基づ
修した
「診療ガイドライン作成の手引き」
(以
いた系統的レビューを行い、ガイドラインを
下「Minds」と称す)7)である。これらのガイ
決めている例は、国際的に見ても非常に少な
ダンスから、以下に示した項目について、該
い。
当する部分を抜粋し、分類した。項目は、資
、コクラン共同計画によって作成された系
実際に「日本人の食事摂取基準」において
料タイトル、作成国、作成者、作成年、ガイ
も、系統的レビューが取り入れられたのは、
ドライン作成までのステップ、組織編成、疑
前回の改訂「日本人の食事摂取基準(2005 年
問の定式化、文献の評価者、出版言語、情報
1)
版)」 からである。「日本人の食事摂取基
源(文献データベース)、出版されていない
準」を、より根拠に基づいて策定するために
研究からの情報源、ハンドサーチの有無、必
は、独自のクライテリアを設定し、栄養素ご
要に応じた著者へのコンタクトの有無、研究
との策定のバラツキを減らす必要がある。そ
デザイン、エビデンスのレベル、推奨度、改
こで、我々は、国内外の質の高いレビュー方
訂の頻度、である。「日本人の食事摂取基準
法を参考にし、日本独自のレビューシステム
(2010 年版)」については、作成手順につい
を構築することが必要であると考えた。
てまとめた資料は公表されていなかったため、
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」報告
本研究では、系統的レビューに基づきガイ
ドラインを作成するためのガイダンスを公開
書 2)、厚生労働科学研究報告書 8)及び厚生労
している研究機関等を対象に、レビューシス
働省から公表されている関連資料を参考にし
テムについて体系的に分類し、「日本人の食
た。上記の参考にした資料に記載されていな
2)
い項目については、表中では、
「–」で示した。
事摂取基準(2010 年版)」 との比較を行っ
た。
C. 結果
B. 方法
1.
ガイドライン作成のステップと組織編
成、文献の評価
栄養に関連するガイドラインを作成する
ガイドライン作成の手順は、表 1 に示すよ
ためのガイダンスを公開している研究機関等
147
うに、ガイダンスによる大きな違いはなく、
(Population)
、Intervention
(Indicator、
Exposure)
、
組織編成から公表までの間に 10~15 のステ
Comparison、Outcome の頭文字であり、どの
ップを踏んでいた。WHO に関しては、レビ
ようなヒト(患者)を対象に、何をすると(測
ュー作業部分の項目も細かく記載されていた。
定・介入・評価)、何と比べて、どのような
コクラン共同計画では、およそ 51 もの専門レ
結果が得られるか、について文章で定式化す
ビューグループがあり、それぞれで、専門分
るものである。WHO では、これに、Time(観
野(トピック)を担当し、準備~レビューの
察期間)を加えた PICOT 形式を、AHRQ で
更新・改訂までを行っていた。AHRQ では、
は、Time と Setting(研究施設)を情報として
年に 20~25 項目の系統的レビューを専門的
加えた PICOTS 形式を推奨していた。
に担当していた。これらのガイダンスでは、
文献の評価者に関しては、「少なくとも 2
組織編成において、栄養、臨床疫学の知識を
人以上で査読を行う」
という内容についても、
有する専門家(研究者も含む)、統計学の専
4 つのガイダンスで一致していた。
門家、また、可能な限り、患者の立場を有す
2.情報源
る人や消費者も参加することが望ましいと記
載されていた。一方、「日本人の食事摂取基
表 1 に示すように、調査対象としたガイダ
準(2010 年版)」では、栄養に関する専門家
ンスでは、レビューにおいて、文献検索の情
による策定検討会および専門別の 11 ワーキ
報源に出版言語の制限は行っていなかった。
ンググループ(WG)が組織され、40 回にも
プライマリーデータベースである MEDLINE
わたる WG の検討の中で、厳選した国内外の
(Pubmed)、EMBASE、コクランレビューな
学術誌論文等がレビューされていた。このほ
どを対象に網羅的な文献検索を行い、これに
か、「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
各自ハンドサーチで抽出した文献を加えてい
では、文献の系統的検索サポートチームが作
た。また、状況に応じて著者へのコンタクト
られ、専門家の作業を支えた。サポートチー
を行う必要性について明記されていた。出版
ムが行った作業は、WG の作業を円滑に進め
バイアスが入ることを避けるために、可能な
るために、2002 年以降に発表された文献につ
限り、ガイドライン、教科書、専門書等、出
いて「必要量(requirement)」とメタアナリ
版されていない研究についても調査を行う必
シス、
系統的レビューに限定して検索を行い、
要性が示されていた。一方、「日本人の食事
タイトル・抄録から、「日本人の食事摂取基
摂取基準(2010 年版)」では、情報源は、国
準」に資する論文かどうか判断した後、必要
内外の学術論文ならびに入手可能な学術資料
な文献を抽出したことであった 8)。
を最大限に活用すること、
と記載されていた。
テーマに沿った疑問点の抽出と定式化に
3.研究デザインの分類
ついては、「日本人の食事摂取基準(2010 年
版)」では明記されていなかったが、それ以
対象とする研究デザインを、
表 1 に示した。
外のガイダンスにおいては、PICO 形式を用
WHO では、Grading of Recommendations
い、疑問を定式化し、その上でキーワード検
Assessment、 Development and Evaluation シス
索が行なわれていた。PI(E)CO とは、Patient
テム(以下「GRADE システム」と称す)9)
148
(表 2)の研究デザインに準じて、ランダム
に対して、バイアスのリスク(RCT では、7
化比較試験(Randomized Controlled Trial;
項目)をチェックした後、評価し、サマリー
RCT)と観察研究を対象としていた。コクラ
を作成することが可能であった。RCT のバイ
ン共同計画についても、基本は RCT と観察研
アスのリスクは、1) 割り付けの順序、2) 割
究のみで、テーマに応じて非 RCT も含んだ検
り付けの隠匿化、3) 参加者・研究者のマスク
索を行っていた。Minds では、データ統合型
化、4) アウトカム評価者の隠匿化、5) 不完
研究、実験研究(RCT、非 RCT)、観察研究
全なアウトカム、6) 選択的な報告、7) その
を対象としていた。「日本人の食事摂取基準
他バイアス、であった。
(2010 年版)」では、メタアナリシスなど、
AHRQ では、いくつかツールを推奨してお
情報の統合が定量的に行われている場合には、
り、中でも RCT の質的評価には、ハダッドス
基本的にはそれを優先的に参考にしていた。
コア 10)を推奨していた。ハダッドスコアは、
摂取不足からの回避には、実験研究、疫学研
表 3 に示すように、5 つの質問から構成され
究を、過剰摂取による健康障害からの回避に
ており、無作為割り付け、二重盲検、投与中
は症例報告を、生活習慣病の予防には疫学研
止や脱落について評価を行うものである。
究を策定根拠となる主な研究として採用して
「はい」が 1 点、「いいえ」が 0 点の最低 0
いた。
点、最高 5 点で、総スコアが 3 点以上であれ
ば、比較的、質が高い研究と判断される。ま
4.文献のエビデンスレベル
た、最近、AHRQ では、3 区分の序列システ
WHO、コクラン共同計画、AHRQ では、
ム 6, 11)(表 4)が用いられている。このシステ
文献のエビデンスレベルを判断するために、
ムは、個々の研究について、「A=質が高い
GRADE システム(表 2) 9)を推奨していた。表
(バイアスによるリスクが低い)」、「B=
2 に示すように、GRADE システムは、エビデ
中程度」、「C=質が低い(バイアスによる
ンスの質を、「高」、「中」、「低」、「非
リスクが高い)」のカテゴリーに分類されて
常に低」に判定し、①研究デザイン、②グレ
いた。Minds では、Ⅰ~Ⅵの 7 区分のエビデン
ードダウン 5 要因、③グレードアップ 3 要因
ススケールを独自に作成していた(表 5)。
から評価していた。研究デザインは、RCT=
一方、「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
「高」、観察研究=「低」に分類され、グレ
では、エビデンスレベルの判断は行っていな
ード判定では、RCT は「高」から、観察研究
かったが、メタアナリシスなど、情報の統合
は「低」から開始していた。グレードダウン
が定量的に行われている場合、それを優先的
5 要因は、研究の限界、非一貫性、非直接性、
に採用していた。
不精確さ、出版バイアス因子であり、グレー
5.推奨度
ドアップ 3 要因は、効果の程度が大きい、用
量依存的な効果、交絡因子であった。WHO
推奨度のレベルは、WHO、コクラン共同計
では、ソフトウェア(GRADE profiler)のダ
画、AHRQ では、GRADE システムを用いて
ウンロードを推奨しており、
このソフトでは、
いた(表 1)。表には示していないが、GRADE
例えば、あるアウトカムごとに、複数の研究
システムでは、「強」、「弱」の 2 段階から
149
推奨度を決定していた。判断材料には、①エ
問点の明確化の重要性については、どのガイ
ビデンスの質、②利益と害のバランス、③価
ダンスにも明記されており、これには、数回
値観と好み、④資源の利用(コスト)があっ
の議論が重ねられている。
情報源については、
た。Minds では、Minds 推奨グレード(表 6)
MEDLINE やコクランレビューなどのデータ
を用い、エビデンスのレベル、エビデンスの
ベースが推奨されており、出版されていない
数と結論のバラツキ、
臨床的有効性の大きさ、
研究についても出版バイアスが入ることを避
臨床上の適用性、害やコストに関するエビデ
けるため、系統的・網羅的に検索する必要性
ンスを勘案して、「A」、「B」、「C1」、
が示されている。どの情報源を使用するのか
「C2」、「D」の 5 段階で分けていた。一方、
については、研究テーマや研究デザインに応
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」では、
じて使い分けていくことが望ましいだろう。
決まった推奨度は明記されていなかった。
研究デザインの分類については、RCT がバイ
アスによる影響が少ないことから優先的に使
6.改訂の頻度
用することが望ましいとされているが、研究
ガイドラインの改訂の頻度については、
テーマによっては、観察研究をも含んだ文献
WHO では 2~5 年ごと、コクラン共同計画で
検索が必要である。また、当該テーマに関す
は 2 年ごとに内容を見直し、更新することを
る系統的レビューが、既にいくつか報告され
推奨していた(表 1)。AHRQ では、決まっ
ている場合は、有効に使用すべきである。
た年ごとの改訂はなく、新たなエビデンスが
エビデンスレベルの判定、推奨度の方法は、
増えた場合、随時改訂を行うよう推奨してい
国内外でいまだスタンダードとされているも
た。Minds では 3~4 年ごと、「日本人の食事
のがなく、本稿で示したように、それを作成
摂取基準」
では 5 年ごとに改訂を行っていた。
した機関・組織によって異なっている。エビ
デンスレベルの判定は、いずれも、RCT が最
D. 考察
もエビデンスレベルが高く、非 RCT、観察研
本研究の目的は、ガイドライン作成のため
究、の順に低くなっていくという点では一致
のガイダンスが公開されている研究機関等を
している。
対象に、レビューシステムの動向を把握する
多くの機関で、アウトカムごとのエビデン
ことである。
スの質、推奨度を評価するために、GRADE
まず、本研究では、レビューのためのガイ
システムが採用されている。本稿で調査した
ダンスが作成されている、WHO、コクラン共
ガイダンスでも、WHO、コクラン共同計画、
同計画、AHRQ、Minds の 4 つの研究機関等
AHRQ が、このシステムを推奨している。
から、作成ステップを中心に、それに必要な
GRADE システムは、アウトカムごとのエビ
情報を抜粋し、
「日本人の食事摂取基準
(2010
デンスのレベルに関して、研究デザインだけ
年版)」との比較を行った。4 つのガイダン
でなく、種々のバイアスを 8 項目に分類し、
スに共通して言えるのは、PICO 形式を用い、
グレードアップ、グレードダウンする手法で
テーマに沿って疑問点(リサーチクエスチョ
ある。このシステムであれば、評価者ごとの
ン)を明確化し、各疑問点について、それぞ
判定の解釈が異なる影響が比較的少ないと考
れ文献検索を行っているという点である。疑
えられ、一定水準のエビデンステーブルが作
150
成でき、策定のバラツキを軽減することが期
ため、詳細は結果として示すことができなか
待できるであろう。
った。しかしながら、実際にはワーキンググ
推奨度に関しては、レベルの数が多い推奨
ループ内において、諸外国のガイドライン作
度スケールでは、その中間に該当するレベル
成と類似の検討が行われているものと推察さ
の判定の解釈が難しく、評価者ごとに判定が
れる。今後、本稿で紹介したスケール等を参
異なってしまう可能性が考えられる。そのた
考にし、レビューシステムを明確化し、アブ
め、推奨度に関しては、できる限り判定の解
ストラクトテーブル、エビデンスレベル、推
釈が容易なスケールを用いるか、あるいは、
奨度等、レビューを行うに当たり必要となる
評価者間で事前に判定の解釈について議論し、
ツールを用いる必要があるだろう。
明確化しておくことが必要であろう。また、
今後、本研究が、次期「日本人の食事摂取
推奨度は、研究デザインだけで決定されるも
基準」を策定する上で、レビュー作業を円滑
のではない。
に進める基礎資料として活用されることが望
本稿で示したレビューのためのガイダン
まれる。
スは、主に医療現場における治療や診療に焦
点を当てたガイドライン作成が目的であり、
E. 結論
最近では、栄養分野への GRADE システム導
本研究では、ガイドライン作成を目的とし
入が難しい事が、
国際的にも議論されている。
た、レビューのためのガイダンスが公開され
その理由として、GRADE システムは、RCT
ている研究機関等を対象に、レビューシステ
に依存するところが大きいこと、栄養に関連
ムについての動向を調査し、「日本人の食事
した慢性疾患予防はアウトカムの考え方が医
療とは異なること、
が挙げられる
摂取基準(2010 年版)」のレビューシステム
12)
。Academy
と比較した。今後、本研究が、次期「日本人
of Nutrition and Dietetics(以下「AND」と称す)
は、現場レベルで実践的に利用できるような
つ網羅的なレビューシステム構築を行う上で
情 報 の 提 供 を AND ホ ー ム ペ ー ジ 上 の
EVIDENCE ANALYSIS LIBRARY
13)
の基礎資料として役立つことが期待される。
で公開
しており、エビデンス分析のためのマニュア
ルも公表している
の食事摂取基準」を策定する上で、系統的か
F .研究発表
14)
。AND の採用している
1.論文発表
推奨度は、5 つ(強い、可、弱い、専門家意
なし
見のみ、割振りできない)のグレードで示さ
2.学会発表
れている。この「割振りできない」のグレー
なし
ドは、2004 年から新たに追加された項目であ
り、栄養に関連した分野では、グレード付け
が容易ではないことがうかがわれる。
今後は、
G .知的財産権の出願・登録状況(予定を含
「日本人の食事摂取基準」の現状を考慮した
む)
上で、それぞれの指標の策定目的に適したツ
1.特許取得
なし
ールを選択していく必要があるだろう。
2.実用新案登録
「日本人の食事摂取基準」では、策定のた
なし
めの手引きやマニュアルが公表されていない
151
東京. (2007).
3.その他
なし
8.
佐々木敏,森田明美,坪田(宇津木)恵.
「日本人の食事摂取基準」策定のための
文献学的研究 文献検索システムの構築,
H.引用文献
1.
2.
厚生労働省. 日本人の食事摂取基準
平成 19 年度厚生労働科学研究費補助金
(2005 年版)厚生労働省「日本人の食事
循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
摂取基準」策定検討会報告書,東京. 平
事業「日本人の食事摂取基準」策定のた
成 16 年 10 月.
めの文献学的研究報告書. 厚生労働省,
厚生労働省. 日本人の食事摂取基準
東京. (2008) pp. 7-11.
(2010 年版)厚生労働省「日本人の食事
3.
9.
摂取基準」策定検討会報告書,東京. 平
GRADE guidelines: 1. Introduction
成 21 年 5 月.
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World Health Organization. WHO
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Handbook for Guideline Development.
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http://www.who.int/hiv/topics/mtct/grc_han
4.
10. Jadad A R, Moore R A, Carroll D, et al.
dbook_mar2010_1.pdf
Assessing the quality of reports of
The Cochrane Collaboration. Cochrane
randomized clinical trials. Is blinding
Handbook for Systematic Reviews of
necessary? Control Clin Trials (1996) 17,
Interventions Version 5.1.0.
1-12.
11. Chung M, Balk E M, Brendel M, et al.
http://www.cochrane-handbook.org/
5.
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Review of Health Outcomes. Evidence
Effectiveness Reviews.
Report/ Technology Assessment No. 183.
http://effectivehealthcare.ahrq.gov/ehc/produ
AHRQ Publication No. 09-E015. Agency
cts/60/318/MethodsGuide_Prepublication-D
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12. Mann JI. Evidence-based nutrition. Does it
raft_20120523.pdf
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Lichtenstein A H, Yetley E A, Lau J.
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Methodology to the Field of Nutrition.
Technical Review 17/ Nutritional Research
EVIDENCE ANALYSIS
Series, Vol. 1. AHRQ Publication No.
LIBRARY.http://andevidencelibrary.com/
14. Research and Strategic Business
09-0025. (Rockville MD) Agency for
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Healthcare Research and Quality. (2009).
7.
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Dietetics. Evidence Analysis Manual. Steps
診療ガイドライン作成の手引き 2007(福
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井次矢 吉田雅博 山口直人)医学書院,
http://andevidencelibrary.com/files/Docs/20
12_Jan_EA_Manual.pdf
152
153
国際機関
WHO
作成国
作成者
テップ
までのス
イン作成
ガイドラ
5.
3.
4.
2.
1.
3)
組織編成とスコー
ピング・ドキュメン
ト
レビューガイドラ
イン委員および外
部評価委員の編成
利益相反の管理
リサーチクエスチ
ョ ン の 設 定
(PICOT)と適切な
アウトカムの設定
体系的な検索
2010
Guideline Development
タイトル
作成年
WHO Handbook for
6.
7.
4.
5.
3.
2.
1.
2011
プロトコール の準
備
出版/非出版文献の
検索
採択基準のた めの
予備調査
包括評価
“バイアスのリス
ク”評価のための予
備調査
妥当性の検証
収集文献の予 備調
コクラン共同計画
英国
Comparative
Interventions 4)
Copy)
–
2012(Prepublication Draft
AHRQ
米国
the field of nutrition 6)
review methodology to
Application of systematic
Effectiveness Reviews 5)、
Effectiveness and
Methods Guide for
Systematic Reviews of
Cochrane Handbook for
国内外のレビューシステムに関する情報
資料
表1
7.
6.
3.
4.
5.
2.
1.
2007
作成の目的( テー
マ)、対象、利用者
の明確化
作成主体(団体)の
決定
作成計画の立案
作成委員の選定
当該テーマの 現状
把握
クリニカル・クエス
チョンの作成
文献検索
博、 山田直人
編集:福井次矢、吉田雅
ライン選定部会、
監修:Minds 診療ガイド
日本
の手引き
7)
診療ガイドライン作成
3.
4.
5.
1.
2.
2009
*
策定検討会
策定検討会・WG 合
同会議
各 WG 会議
各 WG 間総合調整
各 WG による報告
書素案
–†
(実際には下記に
記した項目で遂行)
厚生労働省
日本
2010 年版2)
日本人の食事摂取基準
154
式化
疑問の定
組織編成
PICOTS
立案者、研究者
者などのステークホル
PICO‡
の代表者、納税者、政策
学者、経営者や医療従事
PICOT
文献選択―採 用と
不採用
文献の批判的 吟味
とアブストラク
ト・フォームの作成
エビデンスの分類
推奨の決定
外部評価と試行
公開
有効性の評価
改訂
PI(E)CO
有識者)
該疾患の経験者や一般
の立場を代表する者(当
識を有する専門家、患者
事業・労働団体、連邦・ 学、図書館、情報学の知
州政府、ヘルスケア産業
ダー、患者や消費者
10.
11.
12.
13.
14.
9.
8.
臨床医、消費者や患者、 臨 床 疫 学 や 生 物 統 計
者、健康経済学者、統計
門家、消費者
査
文献検索
採択文献(文献の登
録)
不足している 情報
の追加収集
分析
レビュー報告 書の
準備
アップデート の保
存
スについて評価できる
13.
11.
12.
10.
8.
9.
研究者、ヘルスケアの専
系統的レビューの
質の評価
レビューのための
採択基準の設定
リサーチストラテ
ジーに沿った文献
検索
採択基準を満たし
た研究の選択
テーブルの特性と
採択研究の結果
採択研究の方法の
質的評価
系統的レビュー:
GRADE*- エ ビ デ ン
スプロフィールの
作成
アウトカムによる
エビデンスの質的
評価
推奨の定式化
普及・施行
評価
改訂
エビデンスやガイダン
14.
15.
16.
17.
13.
12.
11.
10.
9.
8.
7.
6.
策定検討会に よる
報告書素案総 合調
整
策定検討会
変更点・修正点等の
整理
最終報告書提出
する専門家
–
た、栄養学等の知識を有
厚生労働省が選定し
*文献の系統的検索サポ
ートチームを組織化
9.
7.
8.
6.
155
タクト
へのコン
〇
〇
〇
(実際には〇)
–
(実際には〇)
〇
〇
じた著者
〇
らの情報
抄録、インターネットか
専門書、書籍、学会発表
ガイドライン、教科書、
料を最大限に活用する。
びに入手可能な学術資
国内外の学術論文なら
–
–
–
録
調査する
いない研究についても
可能な限り、出版されて
ーなど
くコクランライブラリ
(医中誌 Wed)だけでな
EMBASE、医学中央雑誌
MEDLINE ( Pubmed )
言語制限なし
望ましい
価者で評価することが
以上、できれば 4 人の評
–
必要に応
ーチ
〇
試験登録データ、会議抄
らの情報
〇
Regulatory データ、臨床
イン、採択・除外文献か
ハンドサ
品審査報告書などの
の文献リスト、ガイドラ
の情報源
薬品庁の欧州公開医薬
録、他のレビュー担当者
物データベース、欧州医
FDA、カナダ保健省の薬
研究から
国、地方、対象者特有の
ども使用
Abstracts、CENTRAL な
データベース、会議抄
政府報告書、非出版研究
など
メ イ ン と し 、 CAB
MEDLINE(Pubmed)を
言語制限なし
ていない
出版され
ンベル共同計画の系統
ベース)
的レビューなど
コクランレビュー、キャ
献データ
(Pubmed)、EMBASE
MEDLINE(Pubmed)、 CENTRAL§ 、 MEDLINE
情報源(文
言語制限なし
言語制限なし
出版言語
に決定権を委ねる
合には、第 3 者の査読者
査読を行い、意見に相違
言を求める
名で評価を行うこと
少なくとも 2 人以上で 各ガイドラインは 2 人
があり争議となった場
場合、WHO 文献管理者
価者
少なくとも独立した 2
やその他の専門家の助
意見の不一致があった
文献の評
156
GRADE システム(表 2) GRADE システム(表 2) GRADE シ ス テ ム ( 表
2)、ハダッドスコア(表
スのレベ
1)メタアナリシス
2)決断分析等
実験研究
データ統合型研究
しない場合、その理由に
ついて注釈をつけるこ
の場合、2~5 年が望まし
い
–
「強」、「弱」の 2 段階
GRADE シ ス テ ム ;
テム(表 4)
3)、3 区分の序列シス
い
処に行うことが望まし
原則として、3~4 年を目
「C2」、「D」の 5 段階
6)「A」、「B」、「C1」、
Minds 推奨グレード(表
ベル分類(表 5)
Minds のエビデンスのレ
5 年ごとに改訂
–
–
メタアナリシス
実験研究
疫学研究(介入研究
を含む)
症例報告
「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」報告書 2)では、ガイドライン作成までのステップ、情報源(文献データベース)および出版されていない研
とが望ましい
2 年ごと、あるいは改訂
「強」、「弱」の 2 段階
「強」、「弱」の 2 段階
標準、フルガイドライン
GRADE シ ス テ ム ;
GRADE シ ス テ ム ;
ポート)
シリーズ、ケースレ
4)その他(ケース
ロール研究
3.
4.
1.
2.
3.
(Indicator、Exposure), Comparison, Outcome. §CENTRAL: The Cochrane Central Register of Controlled Trials.
究からの情報源ついては記載されていないため、本文中に示した資料を参考にした。†表中の「–」は記述なし。‡PICO: Patient(Population), Intervention
*
改訂頻度
推奨度
ル
2.
1.
2)非 RCT
観察研究
RCT
観察研究
3)ケースコント―
1.
2.
1)RCT
RCT
観察研究
2)コホート研究
は準実験的研究
1)前後研究もしく
1.
2.
エビデン
イン
RCT
観察研究
1.
2.
研究デザ
157
非常に低
低
中
高
観察研究
RCT
研究デザイン
-2 非常にありそう
-1 ありそう
出版バイアス
-2 非常に深刻
-1 深刻
データの不精確さ
-2 非常に深刻
-1 深刻
エビデンスの非直接性
-2 非常に深刻
-1 深刻
研究の非一貫性
-2 非常に深刻
-1 深刻
研究の限界
グレードダウン
グレードアップ
+1
交絡因子
+1 あり
用量依存的な効果
+2 極めて大きな効果
+1 大きな効果
効果の程度が大きい
GRADE システムによるエビデンスの質・評価のためのクライテリア 9)
エビデンスの質
表2
158
その研究は、投与中止や脱落が記載されているか?(はい=1、いいえ=0)
5
低い
やや高い
高
中
B
の可能性
A
バイアス
研究の質
項目
て情報を満たせていないが、大きなバイアスではない。
このカテゴリーでは、カテゴリー“A”のクライテリアのうち、リミテーションの評価やいくらかの問題につい
いくらかのバイアスの可能性はあるが、正当な根拠に不足はない研究である。
最もバイアスの可能性が低く、結果に正当な根拠(以下に示す)がある質の高い研究である。

一般的な研究デザイン

集団、セッティング、介入および比較群の明瞭な記述がなされている。

アウトカムが適切に測定されている。

統計および解析方法、報告の妥当性がある。

エラーの報告がない。

脱落者 20%未満である。

脱落者の報告が明瞭である。

明瞭なバイアスがない。

食事評価やバイオマーカーから、測定誤差の範囲内で栄養素摂取量の推定が行える。
内容
その研究は、二重盲検の方法について明記されており、かつ適切か?(はい=1、いいえ=0)
4
3 区分の序列システムによるエビデンスのレベル分類 6, 11)
その研究は、二重盲検と明記されているか?(はい=1、いいえ=0)
3
表4
その研究は、割り付けの方法が明記されており、かつ適切か?(はい=1、いいえ=0)
質問内容
2
10)
その研究は、ランダムに割り付けがされているか?(はい=1、いいえ=0)
ハダッドスコアによる RCT の質的評価
1
項目
表3
159
強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
科学的根拠があり、行うよう勧められる。
科学的根拠はないが、行うよう勧められる。
科学的根拠がなく、行わないよう勧められる。
無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる。
B
C1
C2
D
内容
A
推奨グレード
Minds 診療ガイドライン選定部会による推奨グレード 7)
患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
Ⅵ
表6
記述研究(症例報告、ケースシリーズ)
分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳa
Ⅴ
非ランダム化比較試験
Ⅲ
分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
1 つ以上のランダム化比較試験
Ⅱ
Ⅳb
系統的レビュー/RCT のメタアナリシス
Ⅰ
内容
ている。
研究デザイン、解析方法、報告にいくつかの問題があるなど、記載しなければならない情報の大部分が欠落し
最もバイアスの可能性が高く、結果に正当な根拠がない質の低い研究である。
項目
高い
Minds 診療ガイドライン選定部会によるエビデンスのレベル分類 7)
低
表5
C
平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
(総括・分担)研究報告書
日本人の食事摂取基準の改定と活用に資する総合的研究
研究代表者
徳留 信寛
国立健康・栄養研究所 理事長
Ⅲ.研究協力者の報告書
5. アメリカ・カナダの Dietary Reference Intakes におけるビタミン D とカルシウムの改定
~米国 Agency for Healthcare Research and Quality におけるレビューの方法論~
研究協力者
今井 絵理
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究分担者
坪田(宇津木)恵
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究協力者
中出 麻紀子
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究分担者
笠岡(坪山)宜代
(独)国立健康・栄養研究所栄養疫学研究部
研究要旨
本研究では、2011 年に改定されたアメリカ・カナダの Dietary Reference Intakes から、ビタミ
ン D・カルシウム基準値策定の根拠となった主要なレビュー論文(Agency for Healthcare Research
and Quality(AHRQ)-Ottawa と AHRQ-Tufts)から、レビューの採択基準、検索方法やエビデン
スの質、結果の詳細等について体系的に分類を行った。AHRQ-Ottawa では 167 件、AHRQ-Tufts
では 176 件もの文献が採択されていた。PICO(P: Patient, I: Intervention, C: Comparison, O: outcome)
形式を用いた疑問の定式化、英語で出版された論文を対象とすること等については、両レビュー
論文で一致した内容であった。エビデンスの質を判断するスケールは、AHRQ-Ottawa では、RCT
の質的評価にはハダッドスコアを、観察研究の質的評価には改変した Harris らの序列システムを
用いていた。AHRQ-Tufts では、RCT と観察研究の質的評価には、3 区分の序列システムを用いて
いた。本研究が、次期「日本人の食事摂取基準」を策定する上で,レビュー作業を円滑に進める
基礎資料として活用されることが望まれる。
シウム、リン、マグネシウム、ビタミン D と
A.目的
ア メ リ カ ・ カ ナ ダ の Dietary Reference
フッ素の DRIs」1)が初めて公表され、14 年後
Intakes (以下「DRIs」と称す)は、日本のよ
の 2011 年に、「カルシウム・ビタミン D の
うに決まった年ごとの改訂は行われておらず、
DRIs」2)改訂版が公表された。これまでの目
初版時(1997 年~2005 年)にエビデンスが不
安量(Adequate Intake; 以下「AI」と称す)か
十分であった栄養素や新たに疾病と関わりの
ら 、 推 定 平 均 必 要 量 ( Estimated Average
あるエビデンスが増えた栄養素についてのみ、
Requirement; 以下「EAR」と称す)、推奨量
随時改訂を行う方法をとっている。ビタミン
( Recommended Dietary Allowance; 以 下
D・カルシウムについては、1997 年に「カル
「RDA」と称す)に変更された。その背景は、
160
質の高い研究およびそのレビューにより、ビ
情報源、エビデンスのレベル、総合評価、探
タミン D 栄養状態を判断するのに最もよい指
索語数、適格基準に沿った抄録のスクリーニ
標である血中 25−ヒドロキシビタミン D 濃度
ング、文献の収集数、採択文献数、除外文献
(以下「25−OHD」と称す)に基づいた研究
の記載、要約表の数、である。使用したレビ
成果が得られたためである。これら 2 栄養素
ュー論文は、AHRQ−Ottawa の Cranney らによ
の策定時に使用された情報源は、1)
る ビ タ ミ ン D に 関 す る レ ビ ュ ー 3) 、
AHRQ−Ottawa の レ ビ ュ ー 報 告 書
3)
AHRQ−Tufts の Chung らによるビタミン D・
、2)
4)
AHRQ−Tufts のレビュー報告書 、3)米国医
カルシウムに関するレビュー
4)
である。
学研究所(The Institute of Medicine; IOM)に
より 1997 年に初めて公表された、
「カルシウ
C.結果
ム、リン、マグネシウム、ビタミン D、フッ
1.
1)
レビュー作業者の選定
素の DRIs(1997 年版) 」、4)レビュー委
AHRQ−Ottawa では、表 1 に示すように、
員会による文献検索、5)
ステークホルダー(利
栄養学、内分泌学、小児科学、生化学の専門
害関係者)から委員会へ出された文書あるい
家を、AHRQ−Tufts では、栄養学(カルシウ
は、
ワークショップで収集された情報である。
ム、ビタミン D)、臨床分野、系統的レビュ
なかでも、AHRQ による報告書のエビデンス
ーの専門家をレビュー作業者としていた。
の質の高さは、DRIs の発展にもつながってい
ると高く評価されている 2)。
2.
本研究では、2011 年に改定されたアメリ
リサーチクエスチョンの設定および対
象とした研究デザインの範囲
カ・カナダの DRIs から、ビタミン D・カル
ガイドライン作成(基準値策定)では、テ
シウム基準値策定の根拠となった主要なレビ
ーマから、当該問題の現状を把握し、問題点
ュー論文から、レビューの採択基準、検索方
を明らかにする必要があるため、
法やエビデンスのレベル、結果の詳細等につ
AHRQ−Ottawa、AHRQ−Tufts ともに PICO 形
いて体系的分類を行った。
式を用いて、大きく分けて 5 つのリサーチク
エスチョンが導き出されていた。
AHRQ−Tufts では、Population、Intervension、
B.方法
本稿では、アメリカ・カナダの DRIs にお
Comparison、Outcome ごとに詳細に採択基準
いて、2011 年に改訂版が公表されたビタミン
について明記していた。AHRQ−Ottawa では、
D・カルシウムの基準値策定の根拠となった
バイアスによる影響を尐なくするため、でき
主要なレビュー論文から、以下に示した項目
る限り RCT のみを対象とすることと定めて
について、
該当する部分を抜粋し、
分類した。
いた。しかし、テーマによっては、それが難
項目は、資料タイトル、作成者、作成年、組
しい場合もあるため、リサーチクエスチョン
織編成、レビュー作業者、全体構造、リサー
1 の血中 25−OHD と健康、に関しては、観察
チクエスチョンの設定、出版言語、ヒトを対
研究まで含んだ文献検索を行っていた。
また、
象とした研究に限定しているかの有無、研究
リサーチクエスチョン 4 に関しては、焦点の
デザイン、情報源(文献データベース)、検
範囲を狭めるため、系統的レビューのみを対
索期間(年)、出版されていない研究からの
象としていた。AHRQ-Tufts では、基礎的研
161
究と系統的レビューを対象としていた。出版
13)伝染病、14)骨軟化症((耐容上限量
言語は、どちらのレビューも英語で出版され
(Tolerable Upper Intake Level; 以下「UL」と
た論文を対象とし、MEDLINE(Pubmed)、
称す)のみ))、15)腎疾患、高カルシウム
EMBASE、コクランレビューなどのプライマ
血症(UL のみ)。レビューには、上記アウ
リーデータベースを対象とした網羅的な文献
トカムと、下記に示すビタミン D とカルシウ
検索を行い、これに各自ハンドサーチした文
ムに関する検索用語を掛け合わせた検索を行
献を加えていた。オンライン検索は、
っていた。使用されたビタミン D とカルシウ
AHRQ−Ottawa では、1982 年から 2006 年まで
ムに関する検索用語は、
次に示す通りである。
に発行された論文を対象としていた。
“vitamin D”、“plasma vitamin D”、
AHRQ−Tufts では、まず、1969 年から 2008
“25-hydroxyvitamin D”とその略語、
年 9 月までに発行された論文全てを対象とし、
“25-hydroxycholecalciferol”、
さらにアップデートされた文献検索を 2008
“25-hydroxyergocalciferol”、“calcidiol”、
年 9 月から 2009 年に絞り、再度、文献検索を
“calcifediol”、“ergocalciferol”、“cholecalciferol”、
行っていた。AHRQ−Ottawa は、データベー
“calciferol”、“calcium”、“calcium carbonate”、
スからの情報のみを対象としており、
“calcium citrate”、“calcium phosphates”、
AHRQ−Tufts は、抄録、会議議事録など出版
“calcium malate”。系統的レビューの検索につ
されていないものは対象外としていた。
いては、MEDLINE(Pubmed)、CENTRAL、
AHRQ−Ottawa では、リサーチクエスチョン 1
コクランレビュー、英国ヨーク大学の Centre
については、小児(0~18 歳)、出産可能年齢
for Reviews and Dissemination によって製作さ
女性(19~49 歳)、高齢者(65 歳以上)を対
れている Health Technology Assessments デー
象とし、それぞれ分けて検索していた。例え
タベースを用いて、検索式は、上記に示した
ば、「骨の健康」については、アウトカムと
ビタミン D とカルシウムの検索用語に、
して、骨密度、骨塩量、骨折、転倒、転倒に
“systematic”、“evidence”、“evidence-based”、
関連した身体指標(筋量、平衡感覚;高齢者
“meta-analysis”、“pooled analysis”など、系統的
と閉経後女性のみ)、カルシウム吸収(グルー
レビューに関する検索用語を掛け合わせて検
プ 2 のみ)、副甲状腺ホルモン(小児、出産可
索を行っていた。
能年齢女性のみ)、くる病(小児のみ)を対
3. エビデンスのレベル
象としていた。AHRQ−Tufts では、アウトカ
表 1 に示すように、RCT の質的評価には、
ムごとの検索用語について、次のように分類
AHRQ−Ottawa は、ハダッドスコア 5)(表 2)
していた。1)体重か body mass index、2)成
を用いていた。さらに、AHRQ−Ottawa では、
長(身長、体重)、3)骨折、骨密度、4)転
割り付けの隠匿化について、次に示すように
倒、筋量、5)心血管疾患、6)高血圧、血圧、
個別に評価を行っていた。「適(Adequate)」
7)癌、新生物(腺腫、大腸ポリープ、乳房 X
が 1 点、「不適(Inadequate)」が 2 点、「不
線撮影)、8)自己免疫疾患(1 型糖尿病、尋
明(Unclear)」が 3 点とし、実際のアセスメ
常性乾癬、
リウマチ性関節炎、
多発性硬化症、
ントシートの割り付けの隠匿化の欄には、
炎症性大腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病
「A」、「I」、「U」と表記していた。観察
等)、9)子癇前症、子癇、妊娠高血圧症、10)
研究(前向きコホート、症例対照研究を含む)
早産、低体重、11)母乳、授乳、12)死亡、
162
の質的評価には、AHRQ−Ottawa は、Harris ら
イン検索によって、18479 件が抽出された。
6)
の序列システムを改変したものを用いてい
その後、抄録によるスクリーニングを行い、
た。改変した Harris らの序列システムは、研
17827 件を除外し、介入・観察研究 584 件、
究集団の代表性、バイアスや交絡因子、脱落
系統的レビュー68 件、計 652 件が残った。次
に、2 次スクリーニングとして、本文を精査
について評価を行い、「不可」、「可」、「良」
し、採択基準を満たさない 476 件を除外し、
で示されるものであった。AHRQ−Tufts は、
最終的に 176 件の論文を採択した。その内訳
RCT と観察研究の質的評価のために、表 3 に
示した 3 区分の序列システム
4, 7)
は、RCT 60 件、非 RCT 3 件、観察研究 102
を用いてい
件、系統的レビュー11 件であった。除外理由
た。
については、出典と除外理由について、明記
されていた。
4. 総合評価
AHRQ-Ottawa は、研究の質、量、一貫性な
D. 考察
どから総合評価を行い、「良(good)」、「可
本研究では、アメリカ・カナダ DRIs のビ
(fair)」、「矛盾あり」の 3 段階で評価を行
タミン D・カルシウムの改訂の根拠となった
っていた。
主要なレビュー論文 2 報から、方法論部分を
中心にまとめた。AHRQ−Ottawa、AHRQ−Tufts
5. 文献検索結果の概要
ともに、PICO 形式を用い、リサーチクエス
AHRQ-Ottawa
チョンを明確化している。AHRQ−Ottawa は、
検索キーワード(130 語)を用いたオンラ
イン検索によって、6566 件が抽出された。そ
ビタミン D のみに関するレビューであるが、
の後、
抄録によるスクリーニングを行い、
5119
それでも、大きく 5 つのリサーチクエスチョ
件を除外し、計 1447 件が残った。次に、2 次
ンが導き出され、クエスチョンによっては、
スクリーニングとして、本文を精査し、採択
さらにライフステージごとに細かく検討され
基準を満たさない 765 件を除外し、682 件の
て い るも の もあ る。 情 報源 につ い ては 、
論文が残った。除外理由は、リサーチクエス
AHRQ−Ottawa では、MEDLINE などの文献デ
チョンが明記されていない(749 件)、入手
ータベースからの情報のみ、AHRQ−Tufts で
不可(13 件)、英語論文でない(3 件)であ
は、MEDLINE などの文献データベースを使
った。次に、研究デザインについて精査を行
用し、出版されていないものは対象外として
い、リサーチクエスチョンごとの採択基準を
おり、どちらも出版バイアスよりも、研究の
満たさない 515 件を除外し、最終的に 167 件
質のバイアスによる影響を受けないよう配慮
を採択した。その内訳は、RCT112 件、前向
した情報源の選択を行っている。
きコホート 19 件、症例対照研究 30 件、前後
AHRQ−Ottawa では、リサーチクエスチョン
比較研究 6 件であった。
除外理由については、
QUOROM フォーマット
ごとに検索対象とする研究デザインを設定し
8)
を用い、出典と除
ており、これによって比較的バイアスが尐な
外理由について明記していた。
く、一定水準の研究を抽出することが可能で
AHRQ-Tufts
あると思われる。リサーチクエスチョンに基
検索キーワード(347 語)を用いたオンラ
163
づいて、最終的に AHRQ−Ottawa では、167
National Academy Press, Washington, D.C..
件、AHRQ−Tufts では、176 件もの文献が採
(1997) .
2.
択されている。AHRQ−Ottawa では、一栄養
IOM (Institute of Medicine): Dietary
素に限ったレビューではあるが、それでも厳
Reference Intakes for Calcium and Vitamin
格な採択基準によりこれほどの数多くの論文
D. The National Academy Press,
Washington, D.C.. (2011).
の中から、系統的にレビューされているとい
3.
うことに注目すべきである。今後は、アメリ
Cranney A, Horsley T, O'Donnell S, et al.
Effectiveness and Safety of vitamin D in
カ・カナダの DRIs で参考・採択された文献
Relation to Bone Health. Evidence Report/
を基に、「日本人の食事摂取基準」において
Technology Assessment No. 158. AHRQ
も、ビタミン D について、AI から EAR、RDA
Publication No. 07-E013. Agency for
に変更できるかどうか、十分検討する必要が
Healthcare Research and Quality. (2007).
あるだろう。
4.
Chung M, Balk E M, Brendel M, et al.
今後、本研究が、次期「日本人の食事摂取
Vitamin D and Calcium. A Systematic
基準」を策定する上で、レビュー作業を円滑
Review of Health Outcomes. Evidence
に進める基礎資料として活用されることが望
Report/ Technology Assessment No. 183.
まれる。
AHRQ Publication No. 09-E015. Agency
for Healthcare Research and Quality.
F. 研究発表
(2009).
5.
1.論文発表
Jadad A R, Moore R A, Carroll D, et al.
Assessing the quality of reports of
なし
randomized clinical trials. Is blinding
2.学会発表
necessary? Control Clin Trials (1996) 17,
なし
1-12.
6.
G.知的財産権の出願・登録状況(予定を含
Harris R P, Helfand M, Woolf S H, et al.
Current Methods of the US preventive
む)
Services Task Force. a Review of the
1.特許取得
Process. Am J Prev Med (2001) 20, 21-35.
なし
7.
2.実用新案登録
Lichtenstein A H, Yetley E A, Lau J.
Application of Systematic Review
なし
Methodology to the Field of Nutrition.
3.その他
Technical Review 17/ Nutritional Research
なし
Series, Vol. 1. AHRQ Publication No.
09-0025. (Rockville MD) Agency for
H.引用文献
1.
Healthcare Research and Quality. (2009).
IOM (Institute of Medicine): Dietary
8.
Moher D, Cook DJ, Eastwood S, et al.
Reference Intakes for Calcium, Phosphorus,
Improving the quality of reports of
Magnesium, Vitamin D, and Fluoride. The
meta-analyses of randomised controlled
164
trials. the QUOROM statement. Quality of
Reporting of Meta-analyses. Lancet (1999)
354, 1896-1900.
165
166
栄養学、内分泌学、小児科学、生化学の専門家
レビュー作業者
研究デザイン
るか
研究に限定してい
ヒトを対象とした
出版言語
ョンの設定
リサーチクエスチ
発展(全体構造)
フレームワークの
アナリティック・
報告は EPC 、レビュー作業は、TEP と外部査読者
組織編成
レビューの専門家
栄養学(カルシウム、ビタミン D)、臨床分野、系統的
報告は EPC*、レビュー作業は、TEP と外部査読者
2009
AHRQ-Tufts
Outcomes 4)
Vitamin D and Calcium: A Systematic Review of Health
1.
5.
4.
3.
1.
2.
1)RCT パラレルデザイン
RCT(可能な限り RCT のみとする)
〇
英語
血中 25–OHD と関連する健康への暴露は何か
食事からの摂取(強化食品・サプリメント)や日光暴露は
血中 25–OHD に影響するか
ビタミン D サプリメント摂取が骨密度、骨折、転倒へ及
ぼす影響
血中ビタミン D レベルを必要最低限維持でき、かつ非黒
色腫/黒色腫皮膚癌のリスクが増加しない日光暴露量は
どのくらいか
健康に害となる(高カルシウム血症、高カルシウム尿症、
骨軟化症)ビタミン D の上限量
D)と骨の健康
1.
5.
4.
3.
2.
1.
1)RCT
基礎的研究
〇
英語
ビタミン D、カルシウム単独、併用摂取による健康
状態へ及ぼす影響
ビタミン D、カルシウム単独、併用摂取が、代替あ
るいは中間アウトカムとしての高血圧症、血圧、骨
密度などへ及ぼす影響
血中 25–OHD、カルシウム平衡と健康状態との関連
性
ビタミン D 単独、カルシウムとの併用摂取が血清
25–OHD へ及ぼす影響
血清 25–OHD と代替あるいは中間アウトカムとの関
連性
ルシウム併用摂取による健康状態へ及ぼす影響
摂取量、血中 25–OHD、血中活性型ビタミン D(1、 25(OH) ビタミン D、カルシウム単独、あるいはビタミン D とカ
†
2007
作成年
*
AHRQ-Ottawa
Effectiveness and Safety of vitamin D in Relation to Bone Health 3)
作成者
資料タイトル
表 1 レビュー方法論に関する情報
167
7)生態学的研究
6)連続的対照試験
5)ケーススタディ
4)ケースシリーズ(非比較研究)
3)前向きコホート研究
2)前後比較研究
1)横断研究
3)前向きコホート研究、後向きコホート研究
ケースコントロール
前後研究
2)前向きコホート研究
1)比較臨床試験(非 RCT)
1982–2006
検索期間(年)
6566 件
130 語
探索語数
適格規準に沿った
3 段階評価(good、fair、inconsistent)
観察研究:Harris ら 6)の序列システム
ル
総合評価
RCT:ハダッドスコア(表 2)
エビデンスのレベ
研究からの情報源
文献データベースのみ
Biological Abstracts
タベース)
出版されていない
MEDLINE、CENTRAL、EMBASE、CINAHL、AMED、
情報源(文献デー
系統的レビュー
18479 件
347 語
–§
3 区分の序列システム(表 3)
抄録や会議議事録等、出版されていないものは対象外
1969–2009
HTA
MEDLINE、CENTRAL、コクランレビュー
横断研究、 後向き症例対照研究
除外対象
2.
4)前向きコホート内症例対照研究
3)前向き研究、縦断研究、観察研究
3)RCT 要因デザイン
コホート
8)その他
3.
4.
2.
2)非ランダム化試験、前向き比較試験
2)RCT クロスオーバーデザイン
168
TEP:Technical Expert Panel
EPC:Evidence-based Practice Center
その研究は、割り付けの方法が明記されており、かつ適切か?(はい=1、いいえ=0)
その研究は、二重盲検と明記されているか?(はい=1、いいえ=0)
その研究は、二重盲検の方法について明記されており、かつ適切か?(はい=1、いいえ=0)
その研究は、投与中止や脱落が記載されているか?(はい=1、いいえ=0)
2
3
4
5
質問内容
その研究は、ランダムに割り付けがされているか?(はい=1、いいえ=0)
5)
〇(出典と除外理由)
1
項目
表 2 ハダッドスコアによる RCT の質的評価
18
〇(出典と除外理由)QUOROM format 8)
107
観察研究(コホート、コホート内症例対照研究): 102
前後研究:6 件
系統的レビュー:11 件
非 RCT:3 件
ケースコントロール:30 件
件
基礎的研究(165 件)
RCT:112 件
RCT:60 件
176 件
167 件
前向きコホート:19 件
652 件
1447 件
表中の「–」は記述なし
§
†
*
要約表の数
除外文献の記載
採択文献数
文献の収集数
ング
抄録のスクリーニ
169
低
やや高い
中
B
C
低い
高
A
高い
の可能性
研究の質
項目
バイアス
内容
ている。
研究デザイン、解析方法、報告にいくつかの問題があるなど、記載しなければならない情報の大部分が欠落し
最もバイアスの可能性が高く、結果に正当な根拠がない質の低い研究である。
て情報を満たせていないが、大きなバイアスではない。
このカテゴリーでは、カテゴリー“A”のクライテリアのうち、リミテーションの評価やいくらかの問題につい
いくらかのバイアスの可能性はあるが、正当な根拠に不足はない研究である。
最もバイアスの可能性が低く、結果に正当な根拠(以下に示す)がある質の高い研究である。

一般的な研究デザイン

集団、セッティング、介入および比較群の明瞭な記述がなされている。

アウトカムが適切に測定されている。

統計および解析方法、報告の妥当性がある。

エラーの報告がない。

脱落者 20%未満である。

脱落者の報告が明瞭である。

明瞭なバイアスがない。

食事評価やバイオマーカーから、測定誤差の範囲内で栄養素摂取量の推定が行える。
表 3 3 区分の序列システムによるエビデンスのレベル分類 4, 7)