厚労省が概算要求 医療介護CBニュース 2015

福島、県外からの介護就職に“家族手当”-厚労省が概算要求 医療介護CBニュース 2015年9月7日(月) 18時35分
厚生労働省は、福島県外から同県相双地域などの介護施設に就職した人に対し、“家族手当”を支給する方針を固め、来
年度の概算要求に盛り込んだ。東京電力福島第1原発の事故からの復興が進む中、さらに高まると予測される介護への需
要に対応するための取り組み。【ただ正芳】
厚労省では、相双地域などでの介護施設における人材不足に対応するた
め、2014年度以降、福島県外から赴任した職員に対し、就職準備金(1人当たり30万円)や、介護職員初任者研修などを受
講するための研修費(1人当たり最大15万円)を貸与している。しかし、今後、避難指示が解除される自治体や地域が増えれ
ば、介護人材や福祉人材の需要がさらに高まると予測されることから、厚労省では従来の施策を維持しつつ、新たな人材
確保策も講じる方針を固めた。新たな施策は、特に家族を持つ人を対象としている。具体的には、▽家族と共に福島で働く
人を対象とした「世帯赴任加算」(本人分12万5000円に加え、家族1人につき5万円を追加)▽「単身赴任加算」(20万円)―
が設けられる見通し。また、自家用車を持ってくる赴任者に対しては、運送費として最大20万円の実費も支給する方針だ。
「世帯赴任加算」や「単身赴任加算」は貸与が原則だが、赴任後、相双地域などの施設で1年以上勤務すれば、返済は免
除される。
放射性廃棄物の貯蔵場も選択肢に-産業低迷のサウスオーストラリア州 Bloomberg 2015年9月7日(月) 14時27分
(ブルームバーグ):オーストラリアのサウスオーストラリア州は面積の60%が砂漠で産業は低迷している。同州の失業率は
オーストラリアで最も高く、他州への人口流出が続く。米ゼネラル・モーターズ(GM)は2017年にアデレード郊外のエリザベ
スにある豪部門ホールデンの工場を閉鎖する予定で、50年余りにわたる操業に終止符が打たれる。この地域では既に3人
に1人が失業している。サウスオーストラリア州のウェザリル知事にとってこうしたじり貧状態を食い止める選択肢は狭まって
きており、世界の放射性廃棄物の貯蔵場としての使用の可能性も含め、あらゆる選択肢を検討している。豪州の中央に位
置するサウスオーストラリア州ほど、10年に及ぶ鉱業ブームの後遺症に苦しむ豪州に突き付けられた厳しい選択肢を如実
に示している場所は他にないだろう。元貿易相で、議員らに豪州経済について行動を促すため改革を掲げたサミットを8月
に開催したクレイグ・エマーソン氏は「彼らは危機について認識しており、その時がいつやって来るかさえも知っている。そこ
で起こっていることは、実験室のようだ」と指摘する。サウスオーストラリア州は、鉱物資源が豊富な近隣州を潤した鉱業ブー
ムの恩恵をほとんど受けていない。その一方で、ブームの副作用である通貨・人件費高騰のあおりは受けた。ウェザリル知
事は、州内の自動車業界で約1万3000人の雇用が脅かされていると推計する。ウェザリル知事は2月に、同州が原子力業
界で果たす役割について検討する委員会の設立を発表。役割の中には採掘や濃縮、廃棄物貯蔵が含まれている。同委
員会は来年5月までに勧告を行う予定。国際エネルギー機関(IEA)は、原子力発電能力が40年までに60%拡大する可能
性があると予想。高レベル放射性廃棄物を含め放射性廃棄物は同期間に2倍余りに増加し70万5000トンに達するとの見通
しを示している。
汚染雨水が外洋流出=6回目、かさ上げのせき越え―福島第1 時事通信 2015年9月7日(月) 12時26分東京電力は7
日、福島第1原発で外洋に直接通じる排水路から、放射性物質に汚染された雨水が流出したと発表した。流出は8月27日
以来で、6回目。東電は対策として高さ70センチのせきを85センチにかさ上げしていたが、機能しなかった。東電によると、
流出は7日午前2時55分から同4時すぎまで続いた。流出量や放射性物質の濃度は不明。排水路の雨水は、港湾内に流れ
る別の排水路にポンプで移される仕組みだった。くみ上げ用のポンプ8台は午前2時51分からフル稼働していたが、強い雨
の影響でくみ上げが間に合わず、せきを越えたという。
災害住宅、17年度末までに全戸完成=福島県 時事通信 2015年9月7日(月) 12時19分福島県は7日、東京電力福
島第1原発事故による避難者向け災害公営住宅について、計画していた全4890戸を完成させるめどが立ったと発表した。
未定だった一部用地を確保できたためで、2017年度末までに全戸が完成する予定。県によると、今年1月時点で520戸分
の用地が未定だったという。これまでに全体の14%に当たる687戸が完成している。
資源無き国ニッポンにエネルギー安全保障は不可欠 ダイヤモンド・オンライン 2015年9月7日(月) 8時0分●
安全対策に豊富な経験を持つ 米専門家は日本の現状をどう見るか
原発の
東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発
電所事故の翌年の2012年9月、東電に「原子力改革監視委員会」が設置された。国内外の有識者から構成されている諮問
機関で、東電が「世界最高水準の安全意識と技術的能力、社会との対話能力を有する原子力発電所運営組織」に脱皮で
きるよう助言を行ってきている。8月25日、この監視委の委員長のデール・クライン氏、福島第一原発の汚染水対策などに関
して様々な助言を行ってきたレイク・バレット氏と、個別に対談させていただく機会を得た。クライン氏は、米国の原子力規制
委員会(NRC)で2006~09年に委員長を務めた。バレット氏は、NRCの元幹部で、1979年に米国で起こったスリーマイル島
(TMI)原発事故の現地対策ディレクターとして、規制関係業務を指揮した経験を持つ。今回、両氏には、(1)福島第一原発・
汚染水問題、(2)原発「40年ルール」問題、(3)原発ゴミ処分問題、(4)今後の原発再稼働の見通しなどに関して御意見をうか
がった(以下は、個別に行った対談をまとめて記述したものである。聞き手は筆者)。●
取り扱いは難しいものではない
トリチウム水は世界の原発で発生
──福島第一原発のサブドレンからの「処理済み水」(トリチウムを含んだ水)は、ようやく
地元漁連の了解を得て海への放出が行われる見通しとなった。世界の原発では、こうしたトリチウム水は発生しているの
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か。クライン
トリチウム水は、世界の全ての原発で発生している。どの国でも、これを安全に排出するための基準が策定さ
れている。米国の場合、排出基準を満たすようにトリチウム水を希釈し、その後は川や海に流す。政府や東電は、福島第一
原発のトリチウム水にはリスクがあるのかないのか、人体に影響があるのかないのか、あるとすればどの程度のリスク、どのよ
うな影響なのか、国民に向けてきちんと説明していくべきだ。トリチウムは放射性物質ではあるが、低レベル。飲んだとしても、
人体に蓄積しない。腕時計や非常口看板の蛍光塗料など身近なものにも多く使われており、取り扱い方は難しいものでは
ない。バレット
TMI事故後、それまで川に流していたトリチウム水を流さなくなった。科学的に問題ないと判断されたトリチ
ウム水であっても、下流の住民たちが感情的にどうしても受け入れることができなかった。だから、蒸発させて処理した時期
があった。今は川に流している。蒸発させれば雨になって下流の住民にも降ってくるので、同じと言えば同じなのだが、社
会的政治的な観点から蒸発処理した時期があった。そういうものだ。科学的リスクと、一般の人々が抱く精神的リスクでは、
全然違うものがある。科学の事実と人間の認識には大きな差がある。●
期間ではなく安全の確保
「40年で閉鎖」に科学的根拠はない 重要なのは
──日本の原子力規制委員会(NRA)は、「原子炉を運転開始時から40年で閉鎖する。特別
に認可すれば60年まで認める」ということを原則化した。これは、米国の「40年ルール」を参考にしたものだが、米国では40
年で閉鎖することを原則としているのか?
クライン
それは違う。私がNRC委員長を辞すとき、既に半数の原発につ
いて60年までの延長が認められていた。NRCには40年を超えて60年まで稼働させることに関する評価プロセスが確立して
いる。40年は、一つの節目にすぎない。(筆者註:現在、米国の稼働中の原発は99基、このうち60年までの延長が承認済み
なのは73基)
バレット
それはない。安全やリスクという観点からは、39年でも41年でも同じ。リスク管理が重要であり、40
年が妥当かどうかの証明は、事業者側が行うもので、NRCがそれを科学的に審査し、合否を判断するということだ。40年は
厳密な数字ではない。──「40年」の根拠は、どのようなものか?クライン
当てずっぽうだ(“It was a guess.”)。米国で
原子力発電が始まったのは1950年代だが、当時まだ新しい技術でよくわからなかったので、他の産業分野を参考にして原
発プラントに対しては「40年分の許可」とした。この「40年」には科学的根拠はない。どんな年数でも構わなかったのだが、保
守的な数字として選ばれたのが40年だった。投資回収期間を考えた場合、1950年代の頃の感覚としては、40年程度であれ
ば納得感があったということだ。バレット
米国では、事業者が稼働させたい期間を申請し、それに見合った対策が講じら
れているかどうかを見る。100年でも1年でも、60年でも40年でも30年でも、規制当局としては構わない。申請した期間を安全
に運営できることを証明すれば良い。100年ではコストが莫大になり、1年では投資回収できない。そうこうしているうちに、だ
いたい40年くらいが一般的なものとなっていった。これは、規制するNRC側ではなく、規制される事業者側の発意だ。──
延長期間として認める「20年」にも、科学的根拠はないのか?クライン
ない。これも保守的な数字だ。NRCは、40年以降
継続的に稼働させていくに当たっての安全上のポイントを見る。60年くらいまでは安全に運転できるだろうと、59年目で急に
壊れることはないだろうと、判断する。NRCは、個々の機器や設備の状態がどうなっているか、この先も安全に稼働させるこ
とができるのかといったことを見ており、これは科学的な見地からの審査だ。バレット
今から25年くらい前のことだが、最初
の世代の原発が20~30年の稼働経過となってきて、事業者側としては当初40年で許可を得たものの、それ以降どうしようか
と検討することになった。40年を超えて稼働することが社会的にも適切だし、電力供給もできるということで、20年分の安全
を確保した上で延長するという申請が出てきた。NRCがそれを科学的に審査し、合否を判定してきた。今は、費用便益を勘
案しながら60年を超えて80年という可能性が探求され始めている。●
ルは経済性以外の視点も
“原発ゴミ”の最終処分は政治問題 核燃料サイク
──使用済核燃料の再処理や、高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵・最終処分に関する問題
は、世界的にも大きな関心事項の一つだ。米国では使用済核燃料の再処理は行わず、全て直接処分を行っていくとのこ
とだが、それに対する米国民の反応や姿勢はどのようなものか。クライン
全く気にしていない人もあれば、それを口実に
原発閉鎖を叫ぶ人もいる。ほとんどの人は、使用済核燃料が現実に安全に保管されていると受け止めている。米国の最終
処分場として計画されているユッカマウンテンに係る認可手続は、技術的な問題ではなく、政治的な問題で保留になってい
る。オバマ大統領が選挙期間中に、ユッカマウンテンでは最終処分はやらないと公約した。日本では、数百年の幅で乾式
キャスクを使った貯蔵で安全にやっていけるだろう。安全の問題ではなく、政治の問題だ。バレット
私は10年間もユッカマ
ウンテンの件に携わっていた。科学的技術的な部分は1割で、政治的感情的な部分が9割だった。米国では、最終処分問
題は原発反対の口実に使われている。日本も同じ状況に見える。──日本では、使用済燃料の再処理によるリサイクル
(核燃料サイクル)を進めようとしているが、これはどうか。クライン
昨今ではウラン価格が安いので、核燃料リサイクルを
行っても、経済的には合わない。しかし、政策的に必要ならば経済的に合わずとも行われる。それはそれで良い。フランス
は現に行っている。ロシアや中国は今後行うだろうし、日本も今後行うようになるだろう。核燃料サイクルは、経済的な視点
だけではなく、包括的な視点で行われるものだ。ただやはり、ウラン価格が低迷しているうちは、核燃料サイクルは進みにく
いと思う。●
日本の全基停止は驚き 規制当局はバランスを考えろ
──日本では、原発について“発電している=危険、
発電していない=安全”といった思い込みが蔓延しているように私は思っている。今、日本の原発は全基停止している。米
国ではTMI事故以降、今の日本のように全基停止せよといった声は出たか?クライン
日本が全基停止していることに私
は驚いている。日本は理論的かつビジネスライクに物事を進める国だと私は思っているが、原発の件では違うようだ。米国
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ではTMI事故後、原発への支持は下がったが、しばらくして過剰な恐怖感も消え、世論も落ち着いたので、原発は普通に
稼働し続けた。日本では、一般国民も政治家もメディアも過剰反応したのではないか。そうした感情論が落ち着きかけても、
メディアが火をつけ続けているというのもあるだろう。TMI事故のときは、カーター大統領(当時)夫妻がTMIの現場に訪れ、
国民に向けて安全宣言をした。日本では福島事故後、当時の首相は国民の心配・不安を抑えることをしなかった。バレット
全基停止が適切かとよく訊かれるのだが、答えはNOだ。日本は、文化的な面で世界の他の国々とやり方が異なり、極め
て規律正しく、伝統的な手順から外れない国。毎年、定期検査で稼働を停止し、再稼働する際にはいちいち知事の了承を
要するという手順だ。米国にはそういう手順がなく、TMI事故後も全基停止ということにはならなかった。ルールとして厳しく
毎年停止させるとか、再稼働に知事の了承を要するということはない。TMI事故は人為的な事故だったが、米国の電力業界
が事故後ほんの数週間で所要の改善を図ったので、NRCとしても稼働を続けながらでも安全上問題ないと判断した。──
それは前民主党政権時代のことで、その際、NRAを設立した。現自民党政権はNRAが合格を出した原発については再稼
働させる方針としている。ただ、NRAの審査は非常に長い時間がかかっている。これについてどう思われるか。クライン
NRAは、発足したばかりの新しい組織なので、自分たちの意志決定に関して自信を持てていないのではないか。だから、ど
うしても保守的な方に寄り過ぎてしまうのだろう。私がNRC委員長だったときにも同じような問題が起こって、スタッフが保守
的な方に寄るというようなことがあった。規制当局は、電力供給と発電停止のバランスを考えないといけない。日本では、時
間はかかるかもしれないが、いずれはNRAも自信を持って規制を運用していける組織になっていくのではないか。バレット
大きな事故が起こった後に新設された規制機関が厳しいのは仕方ないこと。今は保守的な方に寄り過ぎているにしても、
時とともにちょうど良いところに落ち着いていくだろう。米国でもTMI事故後、そういう時期があった。ただ、米国は立ち直るま
でにそれほど時間がかからないと思うが、日本はとても秩序立った社会なので、いったんそれが崩れると立ち直るのには長
い時間がかかるのではないか。全員のコンセンサスを求める社会なので、なかなか前進しない。再稼働に関する知事の了
解や、トリチウム水の放出に関する地元漁協の了解を取り付けることなどがそうだ。米国では、そういうことはない。●
全」の考え方が日米で全く違う 「想定外の事は起きる」前提で対策を
「安
──NRAによる今の規制運用は、新基準の全てを
満たさないと合格を出さず、そして現政権はNRAが合格を出した原発でなければ再稼働させない方針だ。これについてど
う思われるか。クライン
米国の場合、NRCは、全ての基準を今すぐ満たさなければ稼働を認めないというのではなく、基
準に代替する措置を取り、その代替措置でOKとなれば稼働を認めている。米国では経験や蓄積もあるので、安全とリスクを
いかにして折り合いをつけるかが上手に行われていると思う。例えば、確率論的なリスク評価を行い、最もリスク要素の多い
ところにはより注力をし、そうでない小さなところにはそれほど注力せずとも大丈夫だろう、といったようなさじ加減ができてい
る。バレット
「安全」に関する考え方が、日米では全然違う。日本はかなり細かく“数字”で決めるなど硬直的。米国はそう
ではなく、リスクに応じて柔軟だ。日本は一つの選択肢に偏り過ぎており、柔軟性がない。おそらく、以前と同じように稼働さ
せても安全上問題のない原発は幾つもあるが、新設されたばかりのNRAは、とにかく追い詰められた状況で、うまく機能して
いない。それぞれの原子力事業者が自社プラントは安全上問題ないと申請してきても、それを認めるという判断をする人が
いない。経済合理性がベースにあり、次に安全性の確保、その上で社会的あるいは政治的にどうかとなる。経済合理性も
安全性も大丈夫と判断されたにもかかわらず、政治的に稼働できなかった例は、米国にもある。ニューヨーク州ロングアイラ
ンドの原発がその最たるもので、これは技術的問題ではなく政治的問題だった。当時のニューヨーク州知事が大衆迎合的
だったという話だ。──私は、日本の政府や電力業界には、原子力安全に対する過信や“事故ゼロ神話”があったように
思う。クライン
それは改めないといけない。悪い事は起こるという想定の下で施されるのが原子力規制。NRCは事業者に
対して、想定外の事が起こったらどうするのか?と質す。極端な例えだが、砂漠に船がいるかのように扱え!
ということ。
想定外の事が起こることを想定し、「だから止めろ」ではなく、「それに対してどう対処するのか」を厳しく問うべきだ。バレット
米国では9.11テロの後、原発についても想定外の事態を想定するようになり、福島事故のような全電源喪失に関する対
策を講じた。だから、福島事故の原因となった全電源喪失という事態が起きたとしても、米国では福島のような事故にはなら
なかっただろう。その想定外の事態が、米国ではなく日本で起こってしまった。米国では、TMI事故の前後で大きな変化が
あった。TMI事故前の原子力事業者の文化は、石炭火力や石油火力の考え方と同じだったが、TMI事故後は原子力潜水
艦や原子力施設を持つ海軍の考え方が取り入れられた。原子力に対する根本的な姿勢を変えるのに10年かかったが、お
かげで安全性も生産性も向上した。稼働率も65%から90%まで上がったので、経済効果も莫大だ。●
かる国”だが 再稼働のプロセスはいずれ確立するだろう
日本は“時間のか
──九州電力・川内原発が、新基準の適用としては初めて再
稼働する。今の状況では、再稼働するのは1年に1~2ヵ所あるかないかというペースだが、これをどう見るか。クライン
日本は“時間のかかる国”だ。全員のコンセンサスを得ることを前提としているからではないか。1番目は大変だろうが、2番
目、3番目と順次進んでくうちに、再稼働プロセスも確立していけるだろう。──日本が欧米諸国に比べて“時間のかかる国
”であるというのは、実にその通りだと私も思う。原子力規制に関して言えば、NRCの専門家や職員が、NRAに(アドバイザ
ーとしてではなく)責任ある専門家や職員として入り、発電再開に係る適否判断をしてもらいたいと真剣に思っているが…
…。クライン
日本は、しっかりとしたエネルギー政策を打ち立てることが必要だ。例えばフランスでは電力供給の8割が原
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子力によるものだが、その理由は4つある。石炭がない、石油がない、ガスがない、選択肢がない(“no coal, no oil, no gas,
no choice”)ということだ。では、日本はどうかと考えてみると、ほとんど全て輸入依存であり、国産のエネルギー源はないに
等しく、エネルギー安全保障上でも非常に脆弱だ。日本は、CO2問題では積極的な姿勢を示しているのだから、CO2排出
量削減目標を達成したいのならば、原子力を活用しないと無理だろう。──NRAの在り方について、これは5名の学識者な
どで構成されるが、こうした組織体制に関してどう思われるか?バレット
NRCも5名で構成されている。ひどい人もいれば、
とんでもない人もいる(大笑)。無能な人もいるし、優秀な人もいる。歴代の委員を見ると、技術者もいたし、科学者もいたし、
弁護士もいたし、反核運動家のような人もいた。ただ、5名もいると、1人くらい変な人がいても全体として何とかなる。また、
各委員の下に安定した専門スタッフ陣がいるので、委員が政治的思想的に揺れたとしても、組織全体としては技術的合理
性ある判断能力を持ち続けることができる。米国連邦政府が特定の政党に偏らない人選をする仕組みになっているし、議
会のチェックも入るので、そんなに変な人が入るようなことにはならない。日本国民について言えば、福島事故のトラウマが
ある中では、新しい規制機関であるNRAが事業者に対して弱腰だと思われるのは良くないので、NRAが保守的な姿勢にな
ってしまうのは仕方ないことかもしれない。●
て来られるのか
米国は10年以内に中東依存から脱却する 日本はそのとき自ら石油を持っ
──日本のエネルギー政策について、どう見ているか?バレット
国のリーダーは、国民に対してエネ
ルギーの選択肢をわかりやすく説明する必要がある。しかし、国民の心の中に、“原子力は悪の権化で、癌を引き起こす。
太陽光や風力は天使のようで、何も悪いことをしない”といった認識があるときには、政府も論理的に説明をし切るのは難し
いだろう。自国にエネルギー資源を持たずに技術立国として生きてこられたのは世界中で日本だけなのではないか。日本
の教育内容は知らないが、そもそも第二次大戦の原因は、日本が米国の禁輸措置により石油を輸入できなくなったこと。だ
から、エネルギーの確保と安定供給・自給は日本にとっても常に大きな課題であるはずだ。米国は、エネルギー資源に関し
て、今後10年以内に中東依存から脱却できる見通しだ。中東で自国民を戦死させることは愚かだと思っている。米国民が
中東に行かなくなれば、日本はホルムズ海峡に自分たちで行って石油や天然ガスを安定的に持って来られるようにするの
か。エネルギー安全保障とは、そういうことなのだ。
楢葉町への避難指示が解除へ
避難者がこの4年を振り返る NEWS ポストセブン 2015年9月7日(月) 7時6分
九州
電力川内原発が再稼働した。東日本大震災の際に発生した福島第一原発事故は多くの避難者を生む結果となったが、こ
の教訓を忘れてはいけない。避難生活は長く、辛いものになる。東日本大震災翌日に「全町避難」の指示を受け、家族3人
でいわきへと向かったのは、福島県双葉郡楢葉町で生まれ育った猪狩秀男さん(71才)だ。42年間勤めた郵便局を61才で
退職した後は、地元の特別養護老人ホームの警備員などをしていて、震災当日も勤務に出かけていた。「自家発電を備え
た施設は避難場所に指定されていて、周辺の集落の人が集まっていました。まさか原発が爆発するとは思わないし、集落
の人たちも『明日になれば家に帰れる』と考えていたんでしょう。ところが翌日になったら、町から、『原発が危ないから、いわ
きのほうへ避難してください』と放送があった。急いで家へ帰ったら家内が準備をしてくれていて、息子と飼い犬のチョコを
連れて、車に乗りこみました。道は大渋滞で、いつもなら1時間弱で着くのに、2~3時間かかった。町からは漠然といわきへ
の避難を促されるだけで、辿り着いた避難所は満員で入れない。よその土地であっちの避難所へと言われても、『あっちの
ほうじゃ、わかんねぇっぺ』とぐるぐる車で回った。右往左往しているうちに幸運にも友人と会って、泊めてもらえました。そこ
で原発が爆発して放射能が漏れたと知り、『あぁ、これはちょっと帰れないかなぁ』と、避難所にいたみんなと話し合って判断
しました」(猪狩さん・以下「」内同)
軽装だったため、本格的な避難生活を見据えて帰宅した。「家の中に入ると、本はガ
タガタに倒れているし異臭がした。たった1週間でねずみが入ったんだね。糞があり、おしっこのにおいがした。家には1~2
時間いたでしょうか。『放射能が』といわれても、目に見えるものではないし、状況がわからない。防護服もその頃はないです
し、部屋を片づけて、荷物をまとめました」
その後は別地区の避難所で10日間ほど過ごして、いわき市内の仮設住宅へ
入居した。「これが本当に住みづらいところなんです。動物がいるから人気のない住宅へ割り当てられたというのもあるんで
すが、とにかく、夏はものすごく暑い。エアコンをかけっぱなしだけど、電気代も水道代も自腹です。冬になると結露がすご
い。畳がカビてしまうんです。町に訴えても仮設は県の持ち物だから。4年以上経って、ようやく交換してもらえます。仮設に
もねずみが出ます。ゴキブリもいるね」
アパート暮らしすら経験がない猪狩さんにとって、仮設生活は戸惑いの連続だっ
た。「4畳半の2間を3人で使っています。夫婦で1間を使っているんですが、ちゃぶ台を寄せて、テレビを寄せても、布団は1
組敷くのがやっと。週末になると、同じいわき市内に避難している孫たちが5人泊まりにくるんですよ。ギュウギュウになって
大変なんだ(笑い)。幼稚園や小学生の孫たちは、土に触れて遊んだり、虫取りをしたり、野山で遊んだという記憶もなく育
ってしまうよね。犬もストレスがあるのか人をかじっちゃってね。仮設に移って、2~3週間経った頃かな。孫や私の弟など、何
人かかじっちゃった。楢葉にいた頃にはそんなことなかったのに。ここ半年くらいで、ようやく落ち着きました」
犬もまた、
楢葉に連れてくると実に生き生きとして、野山を2時間以上かけまわる。自然に囲まれた楢葉での暮らしと、都会のいわきで
は生活がまるで違うという。「楢葉では野菜やきのこを自分で作っていたからスーパーで買うという発想がなかったし、まさか
米まで買ってくるようになるとは思わなかったよね…。私はいわきで小さな畑を借りて野菜を作ることで幸いストレス解消がで
きたけれど、家内は疲れが溜まって1か月ほど入院してしまった。隣の家でくしゃみをする音が聞こえるくらい壁が薄いから、
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話すのも、テレビを見るのも気を使う。狭い部屋で縮こまって暮らしているせいで、腰まで痛めてしまって。苦労は言葉にな
らないね」
住民のほとんどが“消えた”町に、昔あった風景はない。家にかかるカレンダーは「2011年3月」のまま。猪狩さ
んは、「家族が帰ってくるまでそのままにしておくよ」と話した。町から許可が出て一時的に家へ戻れたのは、震災から約1年
後だったという。「ねずみの仕業でまぁ、障子はかじられているし、そこらへんにおしっこされて、においがすごかった。『これ
はもう住めねぇかなぁ』とも思ったけれど、『でも、故郷を捨てらんねぇなぁ』という気持ちもあるしね。できるだけやってみっか
と、布団や畳を捨てたりして、ちょっとずつ家の整理をし始めたんです」
9月5日には楢葉町への避難指示が解除された。
猪狩さんは4年以上の仮設生活を終えて、楢葉へ戻るつもりだ。「昨年あたりから帰還のためにと、家や庭の草木を手入れ
しています。戻ってきたら不便もあります。お医者さんもいないし、大根1本作るにも、肥料を買いに1時間かけていわきまで
行かなければならない。リフォームは来年の夏にならないとできないとも、いわれています。避難生活が終わってからの生活
の不安も、当然あります。それでも『ここへ住みたい!』という感情が、私にはあるんだよね。カーテンを閉めっぱなしの仮設
暮らしは息が詰まったけれど、楢葉に帰ると、気持ちがカラッとしている。震災の年に作った舞茸は放射能で食べられなくな
って、悔しかった。またきのこや野菜を作りたいなというのが、今後の楽しみ。その気持ちがハリになって、元気に暮らせるん
ですよ」
明るく、社交的な猪狩さんは、仮設で町内の人と集まって交流を深めていた。将来的には楢葉でも、交流を続
けていきたいと仲間と話している。
川内原発再稼動で再び懸念される「海の環境破壊」 HARBOR BUSINESS Online 2015年9月6日(日) 9時21分九州電
力川内原発1号機が今年8月11日、4年3か月ぶりに運転を始めた。原子炉が出した熱の実に3分の2は電気にならず、温排
水として海に捨てられる。「海暖め装置」でもあるのが原発だ。一方、2年近く続いた原発ゼロ期間中、各地で原発周辺の海
洋環境が劇的に改善したとの報道が相次いだ。◆温排水停止の4年間で徐々に海の環境が回復!?「それまで浜辺に魚な
どの死体が打ち寄せられていたのが、川内原発が運転を止めてからピタリと止まりました。劇的な変化でした」と話すのは、
市民団体「反原発・かごしまネット」の向原(むこはら)祥隆さんだ。川内原発の稼働中、近くの浜辺には毎日のようにサメや
エイなどの大型魚類、クジラやイルカなどの海生哺乳類、ウミガメなどの死体が海岸に漂着していた。ところが2011年9月の
運転停止以降はそれらが一切なくなったという。海水1度の温度上昇は、気温でいえば3~4度上がるのに相当する変化だ
とされる。原発が排出してよい温排水の温度は取水口の海水温度プラス7度まで。出力100万キロワットの原発の場合、1秒
に約70トンもの温排水が出る。九電は温排水の影響を否定するが、向原さんらは温排水によって川内原発周辺海域で環
境破壊が生じているとして、2010年10月に九電を相手取り「温廃水」訴訟を起こした。訴状で、温排水の影響として「海洋生
物の死亡漂着」「原発南側での海藻の全滅」「原発南側に隣接する漁協での漁獲の激減」などを挙げている。鹿児島地裁
は12年10月、訴えを退けた。◆火力より影響が大きい?
原子力の温排水
もっとも、温排水を出すのは原発に限らな
い。火力発電所からも温排水は出る。しかし熱効率で比べると、原子力が30%程度なのに対して、火力は40~60%だ。つ
まり火力発電所の温排水は原発よりも温度が低い。つまり原発の再稼働が進めば、火発を運転するよりもムダな熱が海に
捨てられることになる。京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾(れいじ)准教授は若狭湾で潜水調査を続ける。若狭湾では
関西電力高浜原発の停止後に周辺海域の海水温が下がり、地元特産のアカウニやムラサキウニ、マナマコなどが姿を見せ
るようになったという。海藻も茂ってきたそうだ。舞鶴湾には舞鶴石炭火力発電所があるが、こちらでは海洋生物への影響
はみられないという。「火力発電所の周辺で変化が見られないのは、第一に、火力発電所の方が効率よく熱を使っているか
らです。しかも10年前に完成した舞鶴火力発電所は、舞鶴湾内から採水。冷却に使った(つまり加温された)海水を長い地
下パイプを経て、湾外に放出しています。ですので、排水口に近い瀬崎沖で潜水中に測定しても、同所と舞鶴湾内の水温
差はほとんどありません。一方、40年前に作られた高浜原発では、湾外の海水を冷却に利用し、7℃高い水を湾内に放出し
ています。このため、原発稼働中に高浜町の内浦湾は温排水による影響を強く受けていました」(益田氏)
川内原発の
場合、現在のところ温排水を沖合に放出する地下パイプのような設備はない。向原さんは「原発が停止し、4年かけてようや
く“海焼け”した海底にヒジキなどの海藻が付き始めたところ。再稼働で徐々に影響が広がるでしょうが、これでは元の木阿
弥です」と話し、温排水の影響を懸念している。<取材・文/斉藤円華>
伊方再稼働反対アピール文
脱原発首長会議会員 愛媛新聞ONLINE 2015年9月6日(日) 8時13分
「脱原発をめざ
す首長会議」の会員になっている高知県などの元市町村長3人が5日、高知市で会見し、四国電力伊方原発3号機(愛媛県
伊方町)の再稼働に反対するアピール文を発表した。原発からの距離で区切っている国の原子力災害対策指針を「周辺
自治体では有効な避難計画を立てることができない」と批判している。アピール文は高知県の四万十市や四万十町、黒潮
町など県西部を中心とした元首長8人と首長会議の世話人で元茨城県東海村長の村上達也氏の連名。高知県の尾崎正
直知事と全34市町村に送付する。アピール文は4月に改定した原子力災害対策指針から原発30キロ圏外の防護措置に関
する記述が削除された点を批判。「原子力災害に対応しようとしている自治体の現状と課題を直視していない」と指摘した。
<福島・避難7町村>仮設の小中通学は12%
就学対象者 毎日新聞 2015年9月6日(日) 7時52分東京電力福島
第1原発事故で全域避難した福島県の7町村が避難指示区域外の自治体に開設した仮設の小中学校に通う児童生徒は、
住民票上の就学対象者の約12%にとどまることが毎日新聞の取材で分かった。帰還後の学校再開を見越して避難者の多
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い地域を中心に仮設校を設けたが、児童生徒が集まらない現状が浮き彫
りになった。町村関係者から「このままでは若い世代が帰還しない」と危惧
する声が出ている。【岡田英、喜浦遊】
全域避難したのは大熊、双葉、浪
江、富岡、楢葉5町と葛尾、飯舘2村(楢葉町は5日解除)。「地域コミュニテ
ィーを維持するため古里の学校を」との声が教育関係者や保護者から上が
り、7町村は2011年~14年、小中の仮設校を県内計10カ所に開設した
(一部は小中が同じ場所)。各教育委員会によると、今年度の就学対象者
は計5076人だが、仮設校に通う児童生徒は計608人。年月とともに子育
て世帯が散らばったり、子どもが避難先の地元の学校になじんだりしたこと
が大きな要因だ。大熊町は事故1カ月後に西に約100キロ離れた会津若
松市に仮設校を設けた。同市に臨時役場が置かれ、多くの町民が市内に
避難した。開設当初は対象者の50.9%が通学したが、大熊町の生活圏
に近いいわき市に移る町民が相次ぎ、今年度は10.2%に。町の武内敏
英教育長は「いわき市に移転しても子どもが増えるとは思えない。町立学
校で学びたい子がいる限り最後まで良い教育環境を提供したい」と話す。
浪江町も11年8月、役場移転先の二本松市に仮設校を設置。町には元々、
小中学校が計9校あり、仮設校に集まり過ぎないように各家庭にできるだけ避難先の学校に通うよう通知した。しかし、児童
生徒は予想外に集まらず、対象者1348人に対し36人(2.7%)。町の畠山熙一郎教育長は「通知を出したことを後悔して
いる。学校は地域のよりどころ。町が復興する時に学校も戻って再開したい」と話す。開設が遅れた自治体は、子どもが避
難先の学校になじんだため、苦戦する。13年4月に三春町に開設した葛尾村は20.6%、14年4月にいわき市に開設した
双葉町は2.9%だ。一方、飯舘村は、住民がまとまって避難している近隣の福島市と川俣町に設置し、53.7%と最も率が
高い。◇双葉町、不登校児を受け入れ
苦境を逆手にとる動きもある。いわき市に開設された双葉町立小中学校の仮設校
は、7町村で最も遅い昨年4月の開設時、児童生徒数は11人だったが、被災自治体への加配で教員は26人もいる。「手厚
い態勢で不登校児らに向き合う」との方針を打ち出したところ、町民ではない子どもも集まるようになり、今年9月で児童生徒
は21人に増加した。発端は、開設前に保護者から「子どもが避難先の学校になじめない」などの相談が町に寄せられたこと。
半谷淳教育長が「悩める子の最後のとりでに」と発案。保護者同士の口コミなどで広がり、避難先の学校に通っていた町民
の子どもや不登校に悩むいわき市内の子どもが転入し始めた。不登校だった生徒が登校するようになるなど少人数教育の
効果も表れているという。半谷教育長は「最終的には不登校などに悩む全国の子どもが区域外就学できる公立校にした
い」と寄宿舎建設も想定し、国の支援を求める方針だ。同町には事故前、小中の計3校に約550人の児童生徒がいた。【栗
田慎一】
家族残し帰還・自宅荒れ戻らぬ決断…
楢葉避難解除 朝日新聞デジタル 2015年9月6日(日) 7時13分東京電力福
島第一原発事故で福島県楢葉町に出ていた避難指示が5日、解除された。故郷に戻った人、戻るか迷っている人、戻らな
いと決めた人。それぞれに4年半の歳月が重くのしかかる。■「子どもたち、避難先になじんだ」
避難指示が解除された、
5日午前0時。大楽院第43代住職・酒主秀寛(さかぬししゅうかん)さん(44)は町の復興を願い、火柱の前で経を唱えた。
「寺に住む者は、人びとに寄り添うべき人間。一つの区切りの日。今日から寺に戻ります」
2011年3月11日は酒主さん
にとって特別な日だった。真言宗豊山派本部から住職に任命され、住職を50年務めた父の明寛(みょうかん)さん(78)か
ら寺の仕事の大半を引き継ぐつもりだった。避難指示が出た後、一家6人で避難した。町職員でもある秀寛さんは、同県会
津若松市の借り上げアパートに一時避難して被災者支援にあたった。その後、妻千咲さん(39)、長女真由さん(11)と長
男大誉(ほまれ)君(7)の避難する茨城県北茨城市に移った。明寛さん夫妻は群馬県を経て、福島県いわき市に避難した。
今回、楢葉町に戻ったのは秀寛さん1人だけ。子どもたちを戻らせるか決めかねている。町は17年春に小中学校が再開す
る。だが、大誉君に町の記憶はほとんどない。秀寛さんは「家族一緒に住みたい気持ちはある。だが、子どもたちは向こうの
暮らしになじんでいる。学校再開までに、家族みんなで帰るかどうかを考えたい」と話す。檀家(だんか)には生活の不便さ
や放射線への不安から楢葉町に戻れない人も多い。楢葉町民の8割が避難するいわき市に設けた「別院」は当面、維持す
るという。■「農業も無理、知り合いもいない」
事故でまちは大きく変わった。沿岸部は津波で倒壊した住宅が今なお残る。
田畑だった一帯には、汚染土を詰めた黒い袋が並ぶ。事故後、町内には原発の廃炉や除染作業に携わる業者の事務所
や宿泊施設などが建つようになった。作業員が千人以上暮らし、元からの住民の数を上回る。昼時になると仮設商店街はト
ラックやワゴン車が駐車場に並び、作業服姿の男性たちでにぎわう。町に戻った元の住民も少なく、夜は暗くひっそりとして
いる。地域の結びつきも切れたままだ。いわき市の仮設住宅で暮らす石沢輝之さん(75)は「帰りたいけど帰れない。町が
暗くて、とても妻を一人で歩かせられない」と話す。5日夕、楢葉町から名古屋市緑区の公営住宅に避難している松本頌子
(のぶこ)さん(79)は、避難指示解除を伝えるニュースを見つめた。「もう帰れねえ。今さら解除って言われてもな。悔しい。
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悔しいけどね」愛知県に住む長女(52)を頼って名古屋市にきた。当初、夫の義治さん(80)と「1年ぐらいで帰れっぺ」と励
ましあった避難生活は、4年半になる。楢葉町の自宅はかびが生え、ネズミに荒らされ、生い茂った草木は背丈を超えてい
た。家財の処分や片付けのために一時帰宅した長女らから、荒れていく様を聞いた。今春、「直すには1千万円かかる」と言
われ、頌子さんは覚悟を決めた。「私はもう名古屋にいるわ」
「おれは1人でも帰っからな」。それでも義治さんは言い続
けていた。8月上旬、片付けの仕上げのつもりで一家で帰った。腰の痛みをおし、避難後初めて自宅に戻った義治さんは、
涙をこらえきれなかった。隣は家を壊し始め、向かいも壊すと決めていた。一家5人で暮らしていた裏手は、80代のおばあ
ちゃんだけが戻るという。近所の知り合いで、ふるさとに戻るのは1人だけだった。「帰りたい。でも百姓もできない、知り合い
もいないでは、生きていかれねえ。あの家を見て、遠くなっちゃった気がした」と義治さん。自宅を取り壊すかどうかは、まだ
決められずにいる。「ご先祖様には怒られっぺな」。少なくとも代々の墓だけは、楢葉町に残して欲しい。子どもたちには、そ
う頼んだ。(長橋亮文、山田史比古)
避難解除、戻った住民1割
楢葉「医者いない、店ない」 朝日新聞デジタル 2015年9月6日(日) 7時9分東京電力福島
第一原発事故で福島県楢葉(ならは)町に出ていた避難指示が5日、解除された。全自治体規模で解除されるのは初めて。
戻ってきたのは、住民7400人のうち1割にも満たない。事故から4年半がたち、町は廃炉の前線基地へと変わった。いまだ
避難指示が出ている福島県内9市町村の7万人余りは帰還できるか。政府が試金石とする町の復興は始まったばかりだ。5
日、町内で開かれた復興祈念式典には政府関係者がずらりと並んだ。町の未来図を示したパネルが披露された。仮設校
舎で学ぶ子どもたちは植樹したエノキを「きぼうの木」と命名。町は祝賀ムードに包まれた。昨年7~11月の調査では住宅
地の空間線量の平均が毎時0・3マイクロシーベルトにまで下がり、政府は「帰還して居住することは可能」と説明する。だが、
町の水がめの木戸ダムの湖底の土から放射性物質が検出され、飲料水の安全を心配する住民は少なくない。町の姿は事
故前とは大きく変わった。空き家状態だった多くの民家が荒れた。事故で原則立ち入りが禁じられる警戒区域に指定された
が、2012年8月から日中の立ち入り、今年4月からは宿泊もできるようになった。だが、住宅の解体や修理を担う業者が足り
ず、再建が進んでない。このため、町に戻った住民は一部にとどまる。自宅に戻る準備をするための宿泊制度に登録してい
たのは351世帯780人程度。実際に戻った人はさらに少なく全体の1割に届かない。「医者もいないし、店もない」。町に戻
った志賀良久さん(77)は生活の不便さを訴える。町内にあった内科医院は10月に再開され、県立診療所も来年2月に開
院する。だが、住民が通院していた近隣自治体の医療機関は避難指示が出ており、閉鎖されたままだ。町内で食料品を買
えるのは仮設商店街にあるスーパーとコンビニ店のみ。町商工会によると、事故前に59店舗あった会員の小売店や飲食店
のうち、先月20日までに町内で営業を再開したのは14店舗にとどまる。
記録偽造で報告書案=中国電、島根原発で 時事通信 2015年9月5日(土) 20時13分
中国電力島根原発(松江市)
で低レベル放射性廃棄物処理に使う計測器の検査記録を社員が偽造した問題で、中国電は5日、他の機器の点検漏れや
偽造への組織的関与はなかったとする社内調査の報告書案を、外部有識者を交えた会議で示した。中国電の説明による
と、社員は計測器の定期点検の依頼を失念。評価が下がることを恐れて報告せず、点検したように書類を偽造した。計測
器は原発機器の点検状況を一元的に管理するシステムの対象外で、中国電はシステムの対象を広げるなどの再発防止策
を盛り込んだ。有識者からは、社員のコンプライアンス(法令順守)を求める声が相次ぎ、同社の渡部伸夫副社長は「一人
一人の自覚が欠如している」と述べ、不正の事例研修などを徹底するとした。
国や東電側、争う姿勢
地裁郡山、堆肥処分費の請求訴訟 福島民友新聞 2015年9月5日(土) 11時14分
東京電
力福島第1原発事故による風評被害などで堆肥が売れなくなり処分せざるを得なくなったとして、郡山市の上野牧場が東電
や国に堆肥の処分費用など約5億円を求めた訴訟の第1回口頭弁論は4日、地裁郡山支部(上拂大作裁判長)で開かれた。
国や東電側は請求棄却を求める答弁書を提出、争う姿勢を示した。次回は10月22日午後2時30分から弁論準備を行う。訴
状によると、同牧場は、牧場で出た堆肥をホームセンターに納品したり、農家に販売したりしていたが、原発事故後、堆肥を
引き取ってもらえなくなった。現在は牧場などに堆肥を保管しているが、処分には約20億円の費用がかかり、東電などは原
発事故によって生じた損害を賠償する責任がある、と主張している。
5時間で162トン取水
1~4号機周辺にサブドレン点在 福島民報 2015年9月5日(土) 10時13分東京電力は4日、
福島第一原発事故から4年半となるのを前に、原発構内で続く汚染水低減策の一つ「サブドレン計画」などの実施状況を
報道機関に公開した。1~4号機の建屋周辺に地下水位を調整するための井戸「サブドレン」が点在する。3日には放射性
物質を含む汚染水をくみ上げる作業が始まった。41本ある井戸のうち20本からくみ上げ、タンクに集める。専用の装置で
浄化し、放射性物質濃度を下げた上で今後、海洋放出する。4日は午前9時すぎから午後2時すぎまでの5時間で162トン
を取水した。汚染水をどう減らすかは、廃炉作業を進める上で大きな課題だ。第一原発の原子炉建屋などには現在、1日
約300トンの地下水が流れ込み汚染水になっている。サブドレン計画によって流入量は半分に減るとされるが、浄化後の
水の海洋放出に漁業者は「風評を招くのでは」との懸念を抱く。第一原発の小野明所長は「漁業者の思いを裏切らないよう、
しっかりやっていく」と話した。敷地内の高台からは、3号機原子炉建屋の上にクレーンでつり下げられた機材が見えた。ホ
ースでがれきを吸い取る除染用の装置だという。別の場所では、ためた汚染水が漏れ出す危険性の高い「フランジ型」と呼
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ばれるタンクの解体作業が進んでいた。「ゴールが百里としたら、現状は一里、二里、三里といったところ」。小野所長は、廃
炉完結までの道のりは長いとの認識をあらためて示した。
東芝、ライフスタイルなど不採算事業「年内に方針示す」
ロイター 9月7日(月)20時53分配信 [東京
7日
ロイター]
- 東芝<6502.T>の室町正志社長は7日の決算会見で、パソコン・テレビなどのライフスタイル事業や半導体の一部など
不採算部門について、年内に方向性を打ち出す考えを示した。また、原子力などのエネルギー事業、フラッシュメモリーな
どのストレージ(記憶装置)事業とともに「3本柱」として掲げていたヘルスケア事業については、計画を見直す方針を明らか
にした。室町社長は東芝再生に向けて「制約を設けない大胆な構造改革を実施していく」と強調。ライフスタイル、半導体の
一部について「少なくとも年内には方針を出していきたい」と語った。注力する3領域に関しては「大きく変えるつもりはない」
としながらも、「3本柱という力の入った表現については、(使用を)控えたい」と述べ、これまでの方針を若干軌道修正する
考えを示した。不正会計の責任をとって辞任した田中久雄前社長はヘルスケアについて、数千億円程度のM&A(合併・
買収)により、エネルギー、ストレージに次ぐ3本目の柱として育てていく計画を掲げていた。室町社長はヘルスケアについ
て「2017年度に(売上高)1兆円といった大きな目標については、原点に戻り見直していきたい」と述べ、撤回する考えを表
明した。<米WHで追加費用計上> 同社は8月18日以降の会計調査を踏まえ、米原子力事業子会社ウエスチングハウ
ス(WH)関連で2015年3月期に55億円の追加費用を計上した。一方、WHの繰り延べ税金資産については、ストレステス
トの結果、取り崩す必要がないとの判断を下した。室町社長は、WH関連で追加費用が発生したことについて「14年度決
算で、しかも後発事象という案件なので、不適切という会計処理ではない」と強調した。(志田義寧、村井令二)
東芝の'14年度は378億円の赤字。不正会計の修正額は計2,248億円に
Impress Watch 9月7日(月)19時20分配信
東芝は7日、経営刷新推進体制についての説明を行なうとともに、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績を発表
した。同社では、不適切会計問題を受けて有価証券報告書の提出を2回に渡って延長しており、今回の提出となった。東
芝の室町正志社長は、「本日、2014年度の有価証券報告書が関東財務局に受領されたことをご報告する。株主、投資家を
はじめとするステイクホルダーに、多大なる心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする」とした。新たな経営刷新推進体制
として、取締役会議長候補には、資生堂相談役の前田新造氏、社内取締役候補者には、室町正志取締役会長兼代表執
行役社長(代表執行役社長に就任予定)、網川智執行役員上席常務(代表執行役副社長に就任予定)、牛尾文昭代表執行
役上席常務(代表執行役専務に就任予定)、平田政善代表執行役上席常務(財務部担当、CFO)を予定。また、指名、報酬、
監査の三委員会には、伊丹敬之氏(東芝取締役)、野田晃子氏(公認会計士)、池田弘一氏(アサヒグループホールディング
ス相談役)、古田佑紀氏(弁護士)、小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)、佐藤良二氏(公認会計士)、前
田新造氏(資生堂相談役)で構成する。「企業経営の経験などを踏まえて議長候補を選んだ。9月30日以降は、経営刷新推
進体制として、監査委員会の直轄組織として内部監査部を新設。会計監査、適法性監査、妥当性監査、内部統制監査を
行なう。また、執行役をトップとした経営刷新推進部、内部管理体制強化プロジェクトチーム、プロジェクト審査部という新組
織を設置する。経営刷新に関わる施策を推進し、企業風土改革や内部管理体制の再構築および強化、工事進行基準案
件の受注前審査や、受注後のコスト妥当性などのモニタリングなどを行なっていく」とした。また、「不適切会計処理の問題
は、経営トップが関与し、内部統制が無効化されたことが重要なポイントだった。再発しないような仕組みにすることが必要
であり、仕組みのなかにしっかりと魂を入れなくてはならない。『魂を入れず』ということにならないようにする。それができて
いるかどうは、しばらく時間が経ってから評価していただきたい」などと語った。また、経営刷新委員会では、伊丹敬之氏を
委員長とし、11人が委員として参加。9月上旬には取締役会の運営方法の見直しなどを議論し、9月中旬からは企業風土改
革に向けて取り組みを議題にする。また、10月以降は新設する社内組織である経営刷新推進部で、具体化に取り組むとい
う。■ 2014年度連結業績は378億円の赤字
一方、2014年度(2014年4月~2015年3月)連結業績は、売上高が前年比2.
63%増の6兆6,558億円、営業利益は33.7%減の1,704億円、税引前利益は25.1%減の1,366億円、当期純損失は前年の602
億円の黒字から、378億円の赤字に転落した。東芝の室町正志社長は、「税引前損益では、8月18日以降の調査により、34
億円減の修正となった。米国子会社工事進行基準案件など6件が修正対象になり、2件が修正不要と判断された。一方で、
株主資本は1兆840億円となり、1億円を確保した」という。課徴金の引き当て、米国子会社における追加費用の計上、減損
に伴う修正費用などが影響したという。また、営業損益のマイナス要素では、パソコンのBtoC領域からの事業撤退、映像事
業の海外撤退、訴訟関連費用で481億円のマイナス、STP(South Texas Project)の減損、半導体(ディスクリート)減損、家
電の減損などで1,269億円のマイナスとなった。過年度決算修正では、2008年度~2014年度第3四半期累計で、税引前損
益修正額がマイナス2,248億円となり、8月18日の開示に比べてマイナス118億円修正となった。当期純損益修正額はマイ
ナス1,552億円。だが、「特殊事項を除く営業損益は3,454億円であり、実質的には573億円という大幅な増益になっている」
(東芝 財務部・渡邊幸一部長)とした。セグメント別の業績は、電力・社会インフラ部門の売上高が前年比11%増の2兆38億
円、営業利益が130億円増の195億円。コミュニティ・ソリューション部門の売上高が4%増の1兆4,107億円、営業利益が16億
円減の539億円。ヘルスケア部門の売上高が前年並の4,125億円、営業利益が60億円減の239億円。電子デバイス部門は
売上高が5%増の1兆7,688億円、営業利益が302億円減の2,166億円。ライフスタイル部門は売上高が11%減の1兆1,637億
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円、営業損失が551億円悪化の1,097億円の赤字。その他部門は売上高が5%増の5,290億円、営業利益が41億円減の75
億円となった。電力・社会インフラ部門では、原子力、火力・水力、送変電・配電、太陽光発電など、すべての事業で増収。
電子デバイスでは、メモリが販売数量の増加などにより増収となっている。また、ライフスタイル部門の赤字は、特殊要因が
なくても実質ベースでも赤字になったと分析しており、「パソコン事業、テレビ事業は、構造改革が道半ばの段階にある。そ
れぞれの事業が赤字を計上している状況にある」(東芝・渡邊部長)という。一方、室町社長は、「エネルギー、ストレージ、ヘ
ルスケアの3本柱が軸になることは変わらない。だが、これまでのように、これらを3本柱と呼ぶような、力の入った表現は控え
たい。前社長である田中が打ち出したヘルスケアの大きな売り上げ目標についても、原点に戻って見直したい」としたほか、
「年内には、構造改革の必要な事業に対しては、構造改革の方針を打ち出し、制約を設けない大胆な改革をしていくことに
なる。売り上げは、一時期に下がるかもしれないが、筋肉質な体質ができあがる」などと述べた。また、構造改革の対象とな
るライフスタイル部門に関しては、「売却や撤退ということまで踏み込んだ話については、現時点では言及できない。現在、
カンパニーのトップと話を進めている」と語った。さらに、キャッシフロー経営に軸足を移行することを強調。「これまで社長月
例と呼んでいた会議を、業績報告会と名称変更し、これを2015年9月から開始する。少人数で密度の高い会議を行ない、
議事録は監査委員会に提出することになる。また、業績評価制度においては、2015年度からキャッシュフロー項目の配点
を増加。一方で、事業収益の改善やコア事業に関連しない保有資産売却を、今後も加速していくことになる」とした。資産
売却では、7月22日付けでコネ社の株式を売却し、1,130億円の売却益を得たほか、8月31日付けでトプコンの株式を売却
することを決定している。なお、今回の発表では、2015年度の業績見通しは公表しなかった。「現在、不適切会計の影響に
ついて、営業面などの影響を慎重に見極めている状況であることから、2015年度の業績予想は開示しない」とし、同社では、
「公表可能な状態になり次第速やかに開示する。できれば10月末に予定している上期決算発表の段階で、なんらかのメッ
セージを出すことを考えている」とした。室町正志社長は、「40万人の株主、国内外の投資家、取引先、関係当局に対して、
ご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする。社会的な責任を痛切に感じている。新経営体制により、東芝の信頼回復を
目指していきたい」と述べた。なお、臨時株主総会を9月30日午前10時から、千葉市の幕張メッセで開催する予定。不適切
会計問題や過年度決算訂正に関する報告、取締役選任など16議案の決議を行なう。さらに、9月14日に予定している第1
四半期決算発表については、「発表できるように、なんとしてでもこの日の発表を死守したい」と語った。【AV Watch,大河原
克行】
【英国】英南西部の新規原発、着工遅延:2023年の運転開始は不可能
NNA 9月7日(月)9時0分配信
フランス電
力公社(EDF)は、イングランド南西部サマセット州で計画する新規原子力発電所「ヒンクリーポイント(Hinkley Point)C」の
着工が当初予定より遅れ、2023年の運転開始は不可能となったと明らかにした。同社の発表を元に、BBC電子版が4日伝
えた。EDFは、最終投資決定を下す際に新たな建設スケジュールを発表するとしている。「ヒンクリーポイントC」の総工費は
245億ポンドに上り、同社は資金の確保に苦慮している。プロジェクトにはEDFのほかに仏国営原子力企業アレバ、中国広
核集団(CGN)、中国核工業集団(CNNC)、サウジアラビアの国営電力会社であるサウジ電力会社(SEC)が参画する予
定。EDFは中国の習近平国家主席が10月に英国を訪れる際に、中国からの出資を確定させたい意向だ。EDFは2013年
に英政府と同プロジェクトの主要条件で合意。当初は総工費160億ポンドの予定で、2014年7月に最終投資決定を下す計
画だった。しかし、政府とEDFの電力買い取り価格交渉や欧州連合(EU)からの承認獲得に時間がかかり計画が遅延。さ
らに、「ヒンクリーポイントC」で採用する予定の欧州加圧水型原子炉(EPR)の開発が大幅に遅れていることも、同プロジェ
クトの見通しに影を落としている。エネルギー・気候変動省は、「英政府とEDFは最終的な計画の策定に向け引き続き協力
している」とした上で、「プロジェクトには投資額に見合う価値がなくてはならず、今後各省庁の承認を得る必要がある」とコメ
ントしている。国際エネルギー機関(IEA)と経済協力開発機構(OECD)傘下の原子力機関(NEA)がこのほど公表した発
電コストに関する最新報告書によると、英国の原子力発電コストは今後、世界でも最高水準となる見通し。1メガワット時当た
りの発電コストは87ポンドと、フランスの1.2倍、中国や韓国の2倍以上に達する可能性もある。[環境ニュース]
<フランス>新型原発また稼働延期
4度目
廃炉計画に影響
毎日新聞 9月6日(日)22時18分配信
【パリ宮川
裕章】フランス電力公社(EDF)は、北西部フラマンビルで建設中の最新型原発EPR(欧州加
圧水型炉)の稼働開始時期を、トラブルなどのため、現行予定の2017年から1年延期し、18年
末とする計画を発表した。電力需給への影響から、オランド大統領が脱原発依存政策の象徴と
して公約した東部フッセンハイム原発の任期中の廃止が実現しない可能性が高まった。フラマ
ンビル原発のEPRは、出力165万キロワットの大型炉で、航空機の墜落にも耐えられる安全構
造などを売り物にし、07年に着工した。だが、仏原子力安全機関(ASN)に原子炉の一部で欠
陥が指摘されたほか、部品の落下事故などのトラブルが相次ぎ、12年稼働開始予定だった工
期をこれまでに3回延長。今回の4回目の延長計画で、建設費は当初見積もりの30億ユーロ(約4000億円)から3倍以上
の105億ユーロに膨らんだ。オランド大統領は12年大統領選の公約に、老朽化が進むフッセンハイム原発を17年5月の任
期末までに廃止する方針を盛り込んでいた。今年7月に採択されたエネルギー関連法案で、原発による電力の上限を現状
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維持水準に定めたため、17年にEPRが稼働すると、フッセンハイム原発の運転停止が事実上、義務付けられる計算だった。
だがEPRの稼働開始延期で、電力不足への懸念を理由にフッセンハイム原発の存続を訴える野党・右派が勢いづく見通
しで、任期中の廃止が難しくなってきた。EPRは仏政府の原発輸出戦略の中心的存在で、英国での導入が決まったほか、
サウジアラビアやインドなどへの販路拡大を目指している。だが度重なるトラブルと工期の延期で、信頼性が失われかねな
い事態となっている。
株価、秋に大暴落の恐れ
東電株、謎の人気で爆騰も?
Business Journal 9月6日(日)6時1分配信
年初より右
肩上がりの推移で、日経平均株価2万円の大台を維持していた東京株式市場だが、8月下旬以降は一転して波乱に見舞
われている。これは、中国経済の減速を懸念した上海株式市場の暴落や米国の利上げ予想という、国外の要因が影響し
たものだ。ここから劇的なV字回復を望むのは、無理があるだろう。証券業界関係者からは、「一度崩れた相場はどうしても
もろくなりがちで、秋に向けて不安定な動きが続くのではないか」という指摘がある。過去の経験則から見ても、暴落は秋に
発生しやすい傾向があり、気になるところだ。一方で、荒れる相場を歓迎する投資家もいる。デイトレーダーに代表される、
プロはだしの個人投資家たちだ。株式の運用額が億を超える首都圏の投資家は、「中国発の暴落は、これで終わりにはな
らない。今後、もっと大きいものが起きるはずだ」と予測し、「大暴落直後の急反発を狙う」と腕を撫している。こうした個人投
資家の間で人気が高いのは、東京電力の株だ。同社は、2011年3月に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電
所事故により、存続の危機に瀕した。企業評価の即物的な指標である株価も、それを反映し、事故の翌年には“ゾンビ企業
”の水準といわれる120円にまで暴落している。「解体すべき」との極論すらあった当時の空気を考えれば、無理もないといっ
たところだろう。しかし、存続の危機が薄らぎ、リストラも一巡し、さらに株式市場自体が好転した13年に入ると、一転して反
発を始めた。そして、今年に入ると株価は震災後の高値を抜き、4ケタ目前の水準まで買われたのだ。あらためて東電株の
推移を見ると、ハイリターンを好む個人投資家の支持を集めているのもうなずける。年間の変化率(年初来高値÷年初来安
値)が高いからだ。株価の本格的な回復が始まった13年は4.6倍、今年もすでに2.1倍になっている。ちなみに、代表的な値
がさ株(1単元当たりの株価の水準が高い銘柄)であるファーストリテイリングの今年の変化率は1.5倍、トヨタ自動車は1.3倍
にとどまっており、「株式投資=投機」と割り切る投資家にとって、東電株はうってつけの銘柄といえる。もはや、巨大な“仕
手株”と呼んでも過言ではない東電株だが、今後の見通しを立てるのは難しい。終結からほど遠い原発事故の賠償や施設
の処理のために業績は流動的であり、配当はおろかブランドイメージの復元は困難を極めている。●東電株の「売買価格
の空白地帯」
ただ、株価の動向を決める大きな要因である需給関係を調べてみると、興味深いことがわかる。東電株に
は、売買価格の空白地帯があるのだ。震災および原発事故の発生前、東電の株価はおおむね2000~4000円で推移して
いた。年間を通じて2000円以下の水準だったのは、バブル景気前の1984年までさかのぼらなければならない。それが、事
故直後に700円台に急落し、一度は1000円台まで戻したものの、その後は下落を続け、11年3月末には400円台まで売り込
まれている。つまり、1000円以上2000円未満のゾーンで買い、現在も保有している株主は極めて少ないことになる。仮に東
電の株価が4ケタを上回れば、戻り待ちの売り圧力は皆無になり、上値に売り物がないことを支援材料にして棒上げしたIT
バブル時の関連株と同様に、空白地帯を駆け上がる局面も十分に想定されるわけだ。もちろん、今後、東電の再建が順調
に進むかどうかは不透明であり、不測の事態が生じる可能性もある。しかし、同社の株価が業績や財務内容、事業環境に
沿って動くノーマルなものではなくなっていることを考えれば、4ケタより上に広がる空白地帯の存在を覚えておいて損はな
いだろう。【東京電力の過去20年間の株価推移】 (※以下、年、年初来高値、年初来安値<2015年は8月末日まで>)201
5、939円、442円;2014、519円、318円;2013、841円、182円;2012、262円、120円;2011、2197円、148円;2010、2504円、18
53円;2009、3070円、2085円;2008、3280円、2215円;2007、4530円、2680円;2006、3960円、2760円;2005、2950円、2440
円原子力機構
未完成施設 納税16億円 東京新聞2015年9月6日
日本原子力研究開発機構(原子力機構)が、未完成のまま休眠状態にある高速増殖原型炉もんじゅの関連施設(茨城
県東海村)をめぐり、本来なら完成後に支払う固定資産税など総額約十六億円をこの十五年間に茨城県と東海村に支払っ
てきたことが明らかになった。機構の運営資金は国民の税金でほぼ賄っているが、実質的な「地元対策費」として立地自治
体に流れていたことになる。原子力機構によると、施設の工事を中止した二〇〇〇年度以降、一四年度までに固定資産税
と都市計画税として計約十四億円を東海村に納付。茨城県には〇〇年度に施設建物の不動産取得税として約二億三千
八百万円を支払った。固定資産税、都市計画税、建物の不動産取得税は、建物が完成すると評価額が決まり、課税される。
本来なら支払う必要のない税金を納めた理由について、原子力機構は「課税当局が完成していると判断したので従わざる
を得ない」と説明。茨城県と東海村は本紙の取材にいずれも「個別の税情報についてはコメントできない」と回答した。この
問題を国会で質問した自民党の秋本真利衆院議員は「政治的判断で地元対策に使ってきた」と指摘する。施設は、もんじ
ゅなどの使用済み核燃料の再処理を研究する「リサイクル機器試験施設(RETF)」。一九九五年に着工し、約八百三十億
円の建設費をかけたが、もんじゅのナトリウム漏れ事故などの影響で〇〇年に工事を中止。年間約二千七百万円の維持費
がかかっており、一一年に会計検査院が改善を求めた。そのため、百億円規模の国費を投じて別目的の施設に改造する
計画を検討している。(宮尾幹成、妹尾聡太)
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[豪]2030年温室効果ガス削減目標を2005年比26~28%減と設定
電事連2015年9月7日豪州連邦政府は2015年8
月11日、温室効果ガス(GHG)削減目標として、2030年の排出量を2005年比で26~28%減とする目標を発表した。同国で
は、これまで2020年までのGHG 排出削減目標を2000年比5%減としていた。連邦政府は、2014年7月に廃止した炭素価
格制度に代わる同国の温室効果ガス削減策として、直接行動計画(Direct Action Plan)という方策を掲げている。直接行
動計画の骨子となるのは、「排出削減基金(ERF)」と、「セーフガードメカニズム」である。ERFでは、事業者が提案した排出
削減政策を、連邦政府が入札で買い取る仕組みで、2015年4月に1回目の入札が行われている。他方、セーフガードメカニ
ズムとは、排出量の多い事業者に対して、基準を上回る排出量に対して罰則金が科されるもので、2016年7月から開始が
予定されている。連邦政府は、これらの施策の他、エネルギー部門の生産性向上等により、2030年目標を達成するとしてい
る。
[英]英国初の乾式使用済燃料貯蔵施設の試運転が承認
電事連2015年9月7日2015年8月20日付の報道によると、英
国原子力規制局はサイズウェルB原子力発電所において建設中の英国初の乾式使用済燃料貯蔵施設の試運転を施設所
有者であるEDFエナジーに許可したことが明らかとなった。当該施設は原子力発電所の寿命期間中、あるいは地層処分施
設が利用可能になるまでの間の使用済燃料の貯蔵を対象にしている。貯蔵キャニスタは、Holtec社が提供するHI-STORM
型多目的キャニスタを採用しており、貯蔵施設への使用済燃料の搬入は2016 年頃を予定している。同社によれば、ヨーロ
ッパにおいて同社の技術は英国以外にスペインのアセコ原子力発電所およびホセカブレラ原子力発電所でも採用されて
いる。
[米]原子力規制委員会 がフィルター付ベント導入を義務付ける規則作成を中止
電事連2015年9月7日
2015年8月19日、米国原子力規制委員会(NRC)はNRCスタッフに対し、米国のほとんどの沸騰水型原子炉にフィルター付
ベントの導入を義務付ける規則の作成を中止するよう伝えた。NRCは他の安全対策を進める一方で、2013年にNRCスタッ
フに対し事故時の放射性物質放出を防ぐためフィルター付ベントのほか、より柔軟で費用のかからない方法を考慮した規
則作りをするよう伝え、フィルター付ベントについての決定を延期していた。
スウェーデン:バッテンフォール社がリングハルス1、2号機の早期閉鎖を最終決定
原産新聞2015年9月7日
スウェーデ
ンのバッテンフォール社は9月4日、リングハルス原子力発電所(=写真)1、2号機(90万kW級のBWRとPWR)の運転期
間について4月に公表していた方針どおり、これらへの投資は最長でも2020年までに限定し、永久閉鎖するとの最終決定
を下したと発表した。電力価格の低迷と高額な原子力税が両炉の採算性を低下させているのが主な原因だと同社は指摘。
同発電所の所有権約30%を保有する独E.ON社からの同意は未だ得られていないが、今後は2017年以降に実行する
はずだった現行の投資プロジェクトを停止し、2018年~2020年に両炉を閉鎖という新たな日程に基づいて両炉の運転・
保守を合理化していくとしている。両炉はバッテンフォール社が所有する原子炉の中では最も古く、どちらも1970年代半ば
に営業運転を開始した。同社はこれらの運転を2025年まで続けるため、安全要件に準拠した改善・最新化作業を進めて
きたが、電力価格が上がらないという市場状況下では、両炉で将来的に必要となる投資を続けていく余地は無いと言明す
るも、同原子力発電所3、4号機については、今回の決定が影響しないことを強調した。同社はまた、8月5日付けの発表の
中で、スウェーデンにおける原子力税が熱出力に基づいて掛けられており、発電量とは無関係である点を説明。1kWhあ
たり6~7オーレ(0.8円~0.9円)という原子力税が同社の所有原子炉で発電コストの5分の1まで占めているにも拘わら
ず、政府が同税の17%値上げを提案していることを明らかにした。同社はこのほか、今回の決定が、ある筋からはスウェー
デンにおける原子炉建て替えの議論にとって命取りと受け取られている点に言及。T.ワールボリ発電担当上級執行副社長
は「技術的な寿命が来る前に原子炉を閉鎖するのは純粋に商業上の理由による」と述べた。その上で、「確かに今日のよう
に電力価格が低い状態では、いかなる形態の電源設備も補助金なしで建設することは不可能だ」とコメント。電力が余り、
風力発電が拡大しつつあるというスウェーデンの現状を考慮すれば、原子炉も(現在の)10基は必要ないということに注目
すべきだと指摘した。同国では2011年初頭の法改正により、既存炉10基に限り建て替えが許されることになり、バッテンフ
ォール社ではリングハルス発電所の建て替えを念頭に2012年から情報収集などの事前調査を開始した。しかし、昨年10
月に発足した新政権は脱原子力政策を表明し、バッテンフォール社にも同調査の停止を命じるとしていた。
サウジアラビア:「SMART」炉の技術で韓国と協力契約締結
原産新聞2015年9月7日
サウジアラビアの原子力導入
計画推進機関である「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KACARE)」は9月3日、韓国原子力研究所(KA
ERI)が中東諸国向けに開発したモジュール式小型炉「SMART」技術に関するパートナーシップ構築で両者が協力契約
を締結したと発表した(=写真)。サウジ国内で同炉の建設可能性を探るだけでなく、将来的に共同でSMART炉を世界市
場に売り込むことを視野にいれた契約。サウジは韓国の協力を通じて、SMART炉の技術に関する知識インフラ、関連する
人的資源も国内で整備していく考えだ。両国は2011年に結んだ原子力平和利用分野での2国間協力協定に基づき、今
年3月にはKACAREがサウジ国内で2基以上の小型炉建設を念頭に、韓国の未来創造科学部と協力覚書を締結。今回
の契約はこれらを進展させる内容で、具体的にはSMART炉の炉心設計、流体システム設計、機器設計、マンマシン・イン
ターフェース設計、安全分析などについて協力と共同建設を推進するとしている。SMART炉は海水脱塩と熱電併給が可
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能なシステム一体型先進モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ、33万kWと10万kW。韓国政府は2020年ま
でに同炉を10基輸出する目標を公表しており、初輸出はサウジ向けとすることを狙っている。一方、サウジは2040年まで
に1,200万~1,800万kWの原子力発電設備導入を計画。技術移転により原子力技術の国産化と供給チェーンの国内
構築も目指している。
東京電力、IAEAの福島第一原子力発電所事故最終報告書公表を受けコメント
原産新聞2015年9月7日
東京電力
は9月4日、IAEAによる福島第一原子力発電所事故の最終報告書公表を受け、「原子力分野における権威ある国際機関
による包括的なものであり、報告書において指摘された内容について真摯に受け止めたい」とのコメントを発表した。8月31
日にIAEAが公表した報告書による「事故の要因として大きかったのは、原子力発電所は安全であり重大事故は起きないと
の想定が日本に広がっていた」、「事故発生時の規則、指針及び手順書は、幾つかの重要な分野に関して十分に国際慣
例に従うものではなかった」という指摘への対応を含め、根本原因である「安全意識」、「技術力」、「対話力」の向上に向け、
安全対策をさらに加速していくこととしている。また、経営層からの改革を筆頭に、「福島原子力事故を決して忘れることなく、
昨日より今日、今日よりも明日の安全レベルを高め、比類なき安全を創造し続ける原子力事業者となる」という決意を示した
上で、事故の経験と教訓を踏まえ、国内だけでなく国際社会にも、同社の安全対策について説明していくとしている。
ドイツなしには成り立たないフランスの電力 2015年9月7日
林佑志
在独コンサル会社
欧州環境政策調査員ドイツ
の再エネが拡大し、脱原発も順調に進んでいると聞けば必ず出てくるのが「でもドイツはフランスの電力を輸入しており、原
発の電力を使っているではないか」という反論だ。フランスとの関係を見る前にドイツだけを見れば、物理的な電力フローで
はドイツは35.7TWhの輸出超過であり ⅰ 、発電容量もピーク時をゆうに上回る設備を抱えており、あえてフランスから電力
を輸入する必要はない。欧州送電系統ネットワーク(ENTSO-E)が公表している統計データ ⅱ によれば、物理的な電力フ
ローで見ればドイツはフランスから14,788GWhの電力を輸入しているのに対して輸出はわずかに831GWhであり、フランスの
輸出超過である。しかし、フランスの高圧送電系統の運営会社RTEが公表しているデータでは、実際の商業取引ベースで
見た場合、2014年にはフランスはドイツから13.2TWhの電力を輸入している一方、輸出はわずかに7.3TWhであり、純粋な
電力輸入国となっている ⅲ 。商業取引ベースで見てフランスが純輸入となっている理由は、ドイツとフランスの暖房システ
ムの違いにあり、電気暖房が多いフランスでは国内の発電設備だけでは厳冬期の暖房需要が賄えないためにドイツの電力
を輸入していることにある。一方でなぜ物理的な電力フローで見てフランスが輸出超過になっているのかと言えば、フランス
の電力がドイツを経由して他の諸国へと販売されているからである。参考例としてフランスとイギリス、スペイン及びイタリアを
見てみると、ドイツとの違いは明らかである(表1参照)。これを見ると、ドイツのみが商業取引ベースと物理的な電力フロー
のバランスが逆転している。
表1:フランスと隣国の電力取引と物理的な電力フロー(2014年) 出所:各種資料より作成
商業取引ベース(TWh)
物理的な電力フロー(TWh)
輸入
輸出
輸入
輸出
スペインとフランスの間にはピレネー山脈を通る
ドイツ
13.2
7.3
0.8
14.8
系統以外に電力をやりとりする手段がほぼないた
スペイン
2.9
6.5
2.4
5.9
め、商業取引ベースと電力フローの差がほとんど
イギリス
0.8
15.9
0.01
15.0
ない。このことからスペインはフランスから来た電
イタリア
0.5
19.8
0.7
15.5
力をほぼ自国で消費していることがわかる。イギリ
スイス
9.1
25.5
2.9
10.0
スは直接的な系統以外にオランダやベルギーを
通る系統も利用できるが、商業取引ベースと物理的な電力フローのバランスは近い。つまりイギリスはフランスの電力をオラ
ンダの系統を経由しても一部調達しているが、基本的には直接的な系統での電力取引がベースとなっている。フランスとイ
タリアを見た場合、商業取引ベースと物理的な電力フローを見ればその差は4TWhもある。少なくともこれだけの電力がフラ
ンス・イタリア間の系統を通らずに、つまりドイツなどを通ってイタリアへ流れ込んでいる。全く同じことがフランスとスイスの間
でも当てはまる。フランスからスイスへの電力輸出は商業取引ベースと物理的な電力フローの間に15TWhもの差がある。ス
イスがドイツとオーストリアから輸入している物理的な電力フローは合わせて17.3TWhであり、スイスがフランスから購入した
電力のうち、直接に系統を通じて送られない電力の多くがドイツとオーストリアを通じて(フランスとオーストリアは国境が接し
ていないので、結局はすべてドイツを通過して)届けられているのである。まとめると、フランスで生産された電力が物理的に
ドイツに流れ込んでいるのは確かである。しかし、その多くがドイツの系統を通じてイタリアやスイスへと輸出されており、ドイ
ツはこれらの間のバイパスとなっているに過ぎない。商業取引ベースで見ればフランスはかなりの輸入超過であり、ドイツの
電力がなければ冬を乗り切ることが出来ないとさえ言えるだろう。巷間言われる、ドイツはフランスの原発がなければ成り立
たないというのは事実ではなく、むしろドイツがいなければフランスは成り立たないのである。
ⅰ ENTSO-E、2015年、「Statistical Factsheet 2014」
ⅱ 同上
ⅲ RTE、2015年、「2014 Annual Electriciy Report」
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