津戸 ∼あいらんどパーク周辺∼

島根地質百選選定委員会
隠岐地域のジオサイト
つ ど
津戸 ∼あいらんどパーク周辺∼
ジオサイトの特徴やみどころ
つ ど
島後南西部のあいらんどパークから津戸にかけての海岸では,南に島前,その間の島々あるいは漁
り火を眺めることができます。また、白色の流紋岩溶岩の切りたった崖が真昼の太陽や夕日に照らさ
れると大変きれいです ( 写真 1)。
あいらんどパークから津戸までの海岸
沿いの遊歩道では、550 万年ほど前に
噴出した流紋岩溶岩の噴出源でのよう
すをみることができます。ここの流紋
岩には縞模様がみられますが、これは
マグマが地下深くから上昇してくる間
に別のマグマと混合したり、冷却によっ
て組成の変化したものが混じり合って
できたもので流理構造と呼び、マグマ
の流動した方向をあらわしています。
ここでは 90°近い角度で傾斜した流
理構造が、しだいに緩い傾斜に変化し
ていくようすが見られます。これは下
から上昇したマグマが次々に横に広
写真1:津戸から鵜図島を望む
がって流動した噴火の状況を示したも
のです ( 写真 2).
流紋岩マグマが冷えて固まる
ときには、組成ごとに収縮度合
いが異なるため、主に流理面に
沿って割れ目(節理)ができます。
海岸で見られる、ろうそく状の
奇岩や切りたった絶壁は、風化・
浸 食 で 流 紋 岩 の 節 理 が 拡 大 し、
波浪によって下側が削られると、
節理に沿って上部斜面が崩壊す
ることによって形成されたもの
です。
また、ここではさまざまな不
整合現象を観察することもでき
ます。
所在地とアクセス方法
●島根県隠岐郡隠岐の島町津戸
→自家用車あるいはレンタカーを
利用する場合は、西郷港から加
茂経由で約 20 分、原田・歌木経
由で約 30 分。バスを利用する場
合は加茂経由の都万・向山行き
(1 日 4 便 ) で約 50 分。津戸入り
口あるいは津戸で下車。
a:波食棚
b:海成段丘
c:不整合と生痕化石の観察ポイント
赤の破線は遊歩道を、
× 印は海水浴場を示す。
c
a
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写真 3
a
b
a
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×
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写真1
写真 2
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関連する見学場所と情報
隠岐の島町
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/
記念物指定など
a
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1km
国土地理院発行 1:25000
地形図「都万」を使用
大山隠岐国立公園特別地域
う ず
写真2:海岸沿いの遊歩道で見られる流紋岩の流理(スケールは1m)
地質学的な意義
あいらんどパーク周辺では時代の異なる浸食や堆積のようすが、地形や堆積物として残されています。最
も新しいものは、海岸の岩盤に刻まれた海面から約 1m の高さにある平坦面で、波食棚と呼ばれます.これ
は数千年前に海面が約 1m 高かったときに形成された浸食地形です ( 地図の a 地点 )。あいらんどパーク内
には標高 15 ∼ 20m の平坦地形があります.これは海成段丘と呼ばれ、
約 12 万年前の温暖で海水準が高かっ
たときに海底に堆積した礫や粘土からなります ( 地図の b 地点 )。
あいらんどパークの北の県道脇の崖 ( 地図の c 地
点 ) では、久見層の珪藻土層と都万層の砂岩との不
整合現象がみれます。前者は約 1500 万年前に深い
砂岩
海で堆積したもので、後者は約 650 万年前に浅い
海底で堆積したものです。不整合面直下の珪藻土に
は砂の詰まった直径 1 ㎝ほどの穴が沢山あります
( 写真3 )。この穴は波打ち際の岩に穴を開けて生活
していた貝の住み跡 ( 生痕化石 ) です。珪藻土が海
珪藻土
底に堆積した後、この地域は隆起して陸地になり、
約 850 万年後に再び浅い海底になって砂岩が堆積
したことを示すものです。
写真3:久見層珪藻土と都万層砂岩の不整合面と直下の生痕化石