全文PDF - 精神神経学雑誌オンラインジャーナル

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9
第4
6回中国 ・四国精神神経学会
地
方
会
報
告
第4
6回中国 ・四国精神神経学会
7回 目の入院 となった.修正型電気 けいれ ん療法 によ
日時 :2
0
0
5年 1
0月 2
7日 (
木)・2
8日 (
金)
り軽快 した後, リチウムを付加 したが,外泊中に幻覚
妄想が再燃 した. リチウムを増量 した ところ,症状消
場所 :大和屋本店
失 し退院 となった. その後, リチウム と抗精神病薬 を
会長 :田通 敬貴 (
愛媛大学)
併用 して 3年経過 したが,症状 の再発 はな く外来通院
中である.
座長 :上野 修一 (
徳島大学)
1. 診断 ・治療 に苦慮 した統合失調症の一例
○亀 岡尚美1
)
,友竹 正人2
)
,谷 口隆 英2
)
,大
森哲郎2) (
1) 秋田病院,2) 徳島大学大学
院ヘルスバ イオサイエ ンス研 究部情報統
合医学講座精神医学)
1
8歳男性. 自生 思考 に対 して特異 な対処行動 を示
した統合失調症の一例 を報告 した.雑念が浮かぶ と訴
え, それを打 ち消すために大声 を出 した り全身 に力 を
入れ るなどのパターン化 された不穏行動 を とることが
主な症状であった.その症状 が強迫観念 ・
強迫行動 に
類似 していたため強迫性障害 との鑑別 を要 した.仲間
関係構築の失敗,比喰表現理解の困難 さを窺わせる様
子 もみ られ,広汎性発達障害 も疑 われた.経過 中 に
「
気が飛 んで くる」「
TV か ら攻撃 され る」 とい う了解
不能 な発言や被害関係妄想が出現 し統合失調症 と診断
【
考察】幻覚妄想 を基盤 とす る昏迷状態 をエ ピソー
ド性 に繰 り返 した統合失調症 に リチウム併用療法が有
効であった.本症例のように操 うつ症状がみ られな く
て も,エ ピソー ド性の経過が顕著 な場合, リチウムの
有効性が示唆 される.
3. 当院での新規抗精神病薬の使用状況 について
○片 桐 秀 晃,福 本 拓 治,揮
雅 世,岡 田
剛,中原光史,小 山田孝裕,村 岡満太郎
(
大慈会三原病院)
日本で も 1
9
9
6年 リスペ リドンが登場 して以来,覗
在では 4種の新規抗精神病薬が使用可能 とな り,統合
失調症の治療 に対 しての抗精神病薬 の選択基準が変化
しつつある. しか し, その変化 は諸外国に比べ遅 く,
多剤併用療法か ら抜 け出せない とい う指摘 もある. そ
こで当院での現状 を把握するべ く,当院入院中の統合
9
9
8年か ら 2
0
0
4年の間に 4回
失調症圏患者 に対 して 1
実施 した処方調査の分析 を行 い,主 に新規抗精神病薬
した.ha
l
ope
r
i
dol投与 にて不穏行動 は幾分軽 減 した
が その頻度 に変わ りが なか った.pa
r
oxe
t
i
neの併 用
を開始 した ところ自生思考および衝動的な不穏行動が
見 られな くなった.統合失調症の うつ症状 や強迫症状
外路症状 の軽減がなされているか という疑問 について
検討 した.結果の概略 は,(
彰新規抗精神病薬 の使用の
の使用状況お よび新規抗精神病薬 の特徴 とされ る錐体
に対 し SSRIが奏効する例があることは知 られてい る
増加,(
塾抗精神病薬の多剤併用の改善,(
参抗 コリン薬
が,本症例 においては統合失調症 の自生思考あるいは
衝動性 に対 して SSRIが有効 である可能性 が示唆 され
の併 用の減少,④錐体 外路症状 の緩 和,⑤ BPRSの
改善 などが認 め られた.今後 はこれ らの よい変化 を継
た もの と考 えた.
続 してい くために新規抗精神病薬 をいか に使 い こなし
2. リチウム併用療法が有効だ った統合失調症の一
例
てい くかが課題 になると思われた.
4. 統合失調症におけるオランザ ピンの体重変化,
○中瀧 理 仁
,住 谷 さ つ き1
)
,大 森 哲 郎 2)
1)
糖質及び脂質代謝への影響 について
(
1
)徳島県立中央病院精神神経科,2
)徳
島大学大学院精神医学分野)
)
,滞 雅 世 1
)
,片
○福 本 拓 治1
)
,岡 田 剛1
桐秀 晃1
)
,小 山 田孝 裕 l),中 原光 史 1),町
【
症例 】3
2歳男性.2
4歳時 に発症 し統合失調症の診
)(
1) 大 意 会 三 原
野彰 彦2
)
,村 岡消 太郎 1
断にて 5年間で 7回の入院歴がある.些細 なライフイ
ベ ン トをきっかけに再発 し幻聴 に支配 された行動や亜
病院,2) 済生会広島病院心療内科)
今 回オ ランザ ピンを内服 している統合 失調症 1
2例
昏迷 をきたすが,数週間で改善 しエ ピソー ド間にはほ
とん ど症状 を認めなかった.6回 目の入院時 には抗精
,血糖 値,
服 前 と内服 6カ月後 にお ける体 重,BMI
神病薬 に反応せず,修正型電気 けいれん療法 を行い寛
HbAI
c
,中性脂肪,血清総 コレステ ロール値 を測定
解 したが,退院後 4週 で再び,幻覚妄想が活発 とな り
し比較検討 した.体重 はオランザ ピン内服前後で有意
(
男性 9例,女性 3例) を対象 としてオ ランザ ピン内
9
0
2
0
0
7)1
09巻 1号
精神経誌 (
な増加 を認 め,平均体重増加量 は 4.
2kgだった.血
れ も当院入院中の統合失調症,非定型精神病,抑 うつ
清総 コレステロール値 も有意な増加 を示 したが,中性
状態の患者 に DVT の合併 を経験 した. これ らの症例
脂 肪 は有 意 差 を 認 め な か っ た. ま た,血 糖 値,
では,臥床傾向,隔離 ・拘束,向精神薬 による過鎮静
HbAI
cは 6カ月の観察期間では有意差 を認 めなか っ
が血栓形成 に関与 した と考 えられた.幸 い,PEに発
たが,1例 のみ高血糖 を生 じて中止 した症例が存在 し
展 した症例 はなかった. この経験 か ら VTE予防の重
た.今回の結果は前回の 3カ月の観察期間での結果 と
要性 を改 めて感 じたが,先のガイ ドラインには精神科
ほぼ同様 の結果 となった.今後 も症例 を追加 し,長期
領域 に関する項 目は挙 げられていない. そ こで,今回
間の観察 を行 ってい く予定である.
われわれは, 自験例の検討 とともに文献的考察 を行 い,
精神科領域 における VTEの危険因子 の強度 に関す る
座長 :森信
繁 (
広島大学)
試案 を作成 したので報告する.
5
. Tandos
pi
r
omeが有効 であ った遅発性 ジスキネ
ジアの 2例
7
. ダン トロレン,抗 けいれん薬の効果 な く,けい
れん重積発作 を併発 した悪性症候群の一症例
○中野啓 子1
)
, 日笠
○和気洋介 1・
2
)
,吉 田英統 1) (
1) 倉敷 中央病
哲1
)
,松 岡龍 雄1
)
,野
院心療 内科 ・精神科,2) 岡山大学大学院
間 陽子1
)
,藤 田康 孝1
)
,竹 林
医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室)
秀人2) (
1
)NPO呉 医療 セ ン ター ・中 国
遅発性 ジスキネジアの治療 は非常 に難渋する事が多
い が,近 年 で は 5
‑HTI
A受 容 体 作 動 薬 で あ る
Bus
pi
r
oneによる治療報告が散見 されている.今 回,
‑
遅発性 ジスキネジアが出現 した統合失調症の 2例 に 5
HTI
A受容体作動薬 である t
andos
pi
r
oneを追加投与
実1
)
,新 野
がんセ ンター精神科, 2) 島根大学医学部
精神神経学講座)
0代 の男性. アル コール依存症 お よびアル
症例 は 5
4年間精神病院 に入院 中,消化管
コール精神病 にて 2
穿孔疑いにて当院へ転院 となった.いったん内服中止
し,不随意運動が軽減 したため報告す る.発表 と関係
し術後 5日後 より少量の抗精神病薬のみを再開.その
ない部分 は一部変更 して記載 した.
後,無動,拒絶,カタレプシーを認 めたため抗精神病
【
症例 1
】64歳女性.1
2年間の継続治療歴 あ り.少
薬 を増量 した ところ,発熱,発汗が出現.悪性症候群
な くとも 1年前か ら遅発性 ジスキネジアが出現 してい
と診断 しダン トロレンの投与 を開始 した. ダン トロレ
た.Ta
ndos
pi
r
one60mg/日の追加投与 (
3
0mg/日で
は無効) にて 4週間後 には不随意運動が軽減 していた.
れん,発熱が出現.ダン トロレン,抗 けいれん薬の投
3歳女性.2
3年間の継続治療歴 あ り.少 な
【
症例 2】6
与 を続 けたが次第 にけいれん重積状態か ら呼吸不全 に
くとも 2年前か ら遅発性 ジスキネジアが出現 していた.
至 り,人工呼吸下での全身管理 を要 した.悪性症候群
Ta
ndo
s
pi
r
one60mg/日の追加投与 (
3
0mg/日で は無
効) にて 4週間後 には不随意運動 は軽減 していた.
【ま とめ】遅発性 ジスキネジアがみ られた 6
0歳代女
性 の統合失調症 2例 にて t
andos
pi
r
oneによ り不随意
発症 か ら 2
0病 日後軽快退院 となった.けいれん重積
運動 は軽減 した.症例集積 を含め,有効性の長期的な
しまう可能性がある. このため薬物の効果が乏 しい と
検討が必要 と考 えられた.
発作 を伴 った悪性症候群 に対 して, けいれんの改善 に
はダン トロレン,抗 けいれん薬 はかな らず Lも有効 で
はな く,効果発現 を期待 している間に症状 が悪化 して
きには早期 に人工呼吸下での全身管理 を導入す ること
6. 精神科入院中に深部静脈血栓症 を合併 した 3例
一一‑精神科領域 における予防ガイ ドラインの試案‑
○田 村 達 辞,小 沼 杏 坪,清 水
ンにより発熱,亜昏迷症状 は改善 したが,喧吐, けい
が望 ましい と考 えられる.
8
. 骨髄異形成症候群 を合併 した統合失調症の一例
賢,加 藤
○岸本英樹,菅野佐和子,諸隈‑辛,片 岡
亮,田丸千波 (
医療法人 せ のがわ瀬野川
賢一,掛 田恭子,井上新平 (
高知大学 医
病院)
学部附属病院神経科精神科)
突然死 を引 き起 こす肺血栓塞栓症 (
PE) とその主
3歳男性.X‑1
2年 (
21歳)の職場検診 を
症例 は 3
な原因 とされ る深部静脈血栓症 (
DVT) は連続 した
契機 に再生不良性貧血 と診断 され,保存的治療 を受 け
VTE) と総称 さ
病態 と捉 え られ,静脈血栓塞栓症 (
ていた.
れ る.手術 ・外傷 ・長期臥床 ・出産等が VTEの危険
X‑1年 (
3
2歳)11月 に Y 病院 で骨髄移植 の前処
因子 とされてお り,昨年, 日本血栓止血学会な ど関連
置開始後の無菌室内で幻覚妄想出現 し,移植中止.同
1
0学会 か ら予防ガイ ドライ ンが発表 された.精神科
院の精神科受診, リスペ リドン 2mg+クロルプロマ
領域 において もVTEの報告 は増加 してお り,われわ
ジン 2
5mgで加療 開始.以後,当院当科及 び血液 内
91
i
7f4
6回中国 ・四国精神神経学会
科で加療 を受 けていた.
X 年 3月に慢性硬膜下血腫穿頭洗浄術の既往 あ り.
X年 7月 に幻 覚 妄 想 増 悪 し,当科 に入 院 (
入院
時 :PLTO.
5万/
〟 ,RBC1
67万/
〃J
,Hb5.
1g/
d/
,
WBC21
0
0
最大量 としてオ ランザ ピン 2
0mg+
ハ ロペ リドール 1
8mgで加療 を行 ったが,効果 を認
めなかった.3
8
o
Cを超 える発 熱 ・消化管 出血 ・汎血
/
〃
J
)
.
球減少の増悪 も合併 し,内服薬 を漸減 し,ハ ロペ リド
ール 6mgまで減量 となった.身体的危機状態回復後
に精神症状軽快 し,第 1
1
3病 日に退院 となった.
座長 :渡辺 義文 (
山口大学)
9. 当 科 に お け る 修 正 型 電 気 け い れ ん 療 法
(
mECT)の現状 と課題
,下
○片 岡腎‑1
)
,岸本 英樹1
)
,掛 田恭 子 1)
寺 信 次1
)
,加 藤邦 夫1
)
,井 上 新平 1
)
,近 藤
1
) 高知大学医学部附属病院神経
近江2) (
科精神科,2) 清和病院)
0
01年 8月 よ り,清和病院で は 2
0
0
4年 6
当科で は 2
月 よ りサイマ トロンを用 いた mECT を行 ってお り,
2
0
0
5年 9月 までに両機関 において mECT を施行 した
2
4例 について,その診 断 ・回数 ・転 帰 ・有吉事 象 ・
0
麻酔薬等 について調査 した.診 断 は うつ病性障害 2
例,統合失調症 3例,持続性妄想性障害 1例であ り,
9例 中改善 1
2例 (
1クー ル平均施 行 回数
当科 で は 1
7.
8回),清和 病 院 で は 9例 中改 善 8例 (
同 6回)で
あった.当科では軽度の頭痛や効果不充分のための中
断例 2例,発作不発 による中断例 5例 を認めた一方で,
清和病院ではけいれんの遷延化 (
1例)や強 い発作後
病態把握や経過観察,予後予測 に有用 と考 えられてい
る.近年,修正型電気痩撃療法 (
m‑
ECT)に伴 う,
血圧上昇や頻脈や徐脈 な どの心機能の変化 に関す る報
ECT によ り心臓 ポ ンプの機能
告が散見 され るが,m‑
低下が生 じるか は明確でない.今 回,我々 は m‑
ECT
と BNPの血中動態の変化 について検討 した. なお,
BNP検査 については患者家族の同意 を得て行 った.
6年度 に島根大学医学部附属病院精神
【
方法】平成 1
科神経科で m‑
ECT を施行 した症例 (
N‑6) を対 象
ECT施行前後で血中 BNP濃度 を測定 した.
に,m‑
ECT施行前後 での血 中
【
結果】いずれの症例 もm‑
BNP濃度の大 きな変化 は認 めなかった.
ECT に よる BNPの血
【
結論】 この結果 か ら,m‑
中動態の変化が ない ことか ら,m‑
ECT に よる心臓 ポ
ンプの機能低下 は生 じない可能性が高い と考 えられた.
l
l
. てんかんに合併 した うつ病 に対 して m‑ECT
が有効であった一例
○高石住専,佐々木 高仲,和 田 健, 日域
広昭,三船禎子 (
広島市立広 島市民病 院
精神科)
9歳93
J
阻 5
0歳頃か らうつ病 として精神科
症例 は 6
ク リニ ックへ通 院 していた.X年 6月 よ り記 銘力低
下,疎通性不良が出現 し,9月 には全身 けいれんを来
た して精査のため当科入院 となった.脳波異常 な どか
らてんかん と診 断 し, カルバマゼ ピンを中心 とした薬
物療法で疎通性 などは改善 しけいれん発作 も抑制 され
た.X+1年 6月 よ りうつ病 相 を反 復 し,Ⅹ+2年 4
月 には再燃のため当科へ 4回目の入院 となった.ア ミ
2例) を認 めた. これは両機関で使用 されて
せん妄 (
トリプチ リン 1
5
0mgにオ ランザ ピン 7.
5mgを追加
す るな どして も改善せず,十分 なインフォーム ドコン
い る麻酔薬 の相違 (
当院 ;プ ロポフ ォール,暗和 病
院 ;チオペ ンタール)が最 も大 きな要因であると考 え
ECT
セ ン トの上,抗 て んかん薬 を継 続 しなが ら m‑
を施行 した.短パルス波刺激器 では十分 なけいれん波
られた. また,安定 した メンテナ ンス ECT を行 えて
が出現せず,5回目か らサイン波刺激器 を使用 し,計
いるのは清和病院 に長期入院中の 1例のみであ り,今
後の課題 と考 えられ る.
1
0. 修正型電気癌撃療法 における ヒ ト脳性ナ トリ
1
1回の施 行 で著 明 に改善 した.て ん か ん の併 存 は
ECT の絶対的禁忌で はな く,抗 てんか ん薬 を継続 し
なが ら慎重 に ECT を施行す る ことは可能 と考 え られ,
ウム利尿ペプチ ドの血中動態の変化に関する検討
若干の考察 を含めて報告する.
○川 向哲也,宮 岡 剛,宇 谷悦子,安 田英
1
2. 電気 けいれん療法 (
ECT)が効果 的であ った
彰,岡崎 四 方,安 川 玲,佐 藤 勝,棉
軽度認知槻能低下 を伴 う難治性脳梗塞後中枢性痔痛の
1例
垣卓司,堀 口 淳 (
島根大学 医学部精神
医学講座)
)
,橋 本
○大 仙 隆 治 l
学l
)
, 山本 和 央 1
)
,土
【は じめ に】 ヒ ト脳 性 ナ トリウ ム利 尿 ペ プ チ ド
屋 健2
)
,渡辺 義 文l
)(
1
)山 口大 学 医 学
(
BNP) は心臓か ら分泌 され るホルモ ンの一種で,そ
部高次神経科学講座 , 2) 山口労災病院神
経科)
の血中濃度の上昇 は心臓 ポンプの機能低下 を早期 に反
映 し,病態の変化 を鋭敏 に表現することが知 られてい
症例 は 71歳 の男性.X‑1年 に左 被 殻,淡蒼 球,
る. したがって血中 BNP濃度の測定 は心不全の早期
内包,視床 を中心 とした脳梗塞 を発症.2週間後 よ り
9
2
麻痔側である右半身の痔痛が出現 し,脳梗塞後中枢性
痔癖 と診断 された.脳外科での保存的治療にて難治の
ため,Ⅹ 年 2月に ECT 目的にて当科入院 した.右上
下肢,体幹 に強度の持続性痔痛 を認 め,安静臥位 にて
も痔痛の訴 えは強 く,座位保持 は 5分間 しか可能でな
精神経誌 (
2
0
0
7)1
0
9巻 1号
座長 :氏家 寛 (
岡山大学)
1
4. 老齢初発の I
c
t
als
t
uporの 1
例
○門家 千穂 l)
,北 村恵子1
)
,藤本康 之l
)
,蘇
本 明1),岸本 由紀2
)
,高橋正幸3) (
1
)独
立行政法人岩国医療センター精神神経科,
DR0
.
5と軽
か った.他 に右片麻 痔,運動性 失語,C
度認知機能低下 を認 めた.計 1
5回の全身麻痔下 での
2
)高岡病院,3
)県立岡山病院)
9歳 の男性.既往 にけいれん発作 や意識消
症例 は 6
ECT を施行 した.臥位での痔痛 の訴 えは全 くな く,
0
‑1
5分間可能 となった.
座位保持 は 1
s
ualanal
ogs
cal
eの点数の改善 はみ
本症例 では vi
られ なか った もの の,患 者 の 日常行 動 観察 か らは
ECT によって痔痛がかな り軽減 してい ることが うか
が えた.認知機能低下 のある患者での痔痛評価 には,
客観 的指標 を用 いた評 価 が重 要 で あ る と同 時 に,
ECT は認知機能低下 を伴 った中枢性痔痛患者 に も問
題 な く行 い うると思われた.
1
3. 昏 迷 状 態 に対 して 無 け い れ ん 性 電 気 療 法
(
mECT)が著効 した SLEの 1例
○坂東仲 春1
)
,山西 一成1
)
,多 田量 行1),大
山知代2) (
1
)国立病 院機構善通寺病院精
失 はなかった.不眠にてニ トラゼパム 1
0mg, レボメ
プロマジン 2
0mgを処方 されていた.あ る日突然失
綜 し,翌 日警察 に保護 された.自宅 と反対方向に歩 き,
途中で引 き返 して一晩中線路沿いを歩 いたがなぜそう
神神経科,2) 同内科)
今回我々 は,ステロイ ドパルス療法や抗精神病薬 に
全 く反応 な く昏迷状 態 にまで至 った SLEの女性 に,
mECT が著効 した 1例 を経験 したので文献的考察 を
入院時は妊娠 1
6
加 え報告す る.症例 は 32歳 の妊婦 (
過).精 神 病 の遺伝 負 因 はないが妹 (
31歳)が SLE
のため加療 中.短大卒業後 コンピューター関連 の会社
に就職.22歳 の時 SLEが発症 したが, ステロイ ドパ
ルス療法や免疫抑制剤 によ り寛解 に至 り,以後 プレ ド
7年 1
ニ ゾ ロ ン 5mgのみで経過 良好 で あ った.H 1
月下旬 より急 に 「
会社 の人達が組織的 に自分を監視 し
「
人 が入れ替 わ る」 と言 い出 し H1
7年 2月
て い る」
1
7日不穏,錯乱状態 となったため当科紹介 され入院
となった.免疫学的指標や補体 を含 む血液検査では軽
度 甲状腺 ホルモン上昇以外 に異常な く,髄液検査で も
したかわか らない, と家人 に語った.帰宅後,強直間
代発作 を起 こし救急受診.入院後 も軽度の意識障害 は
遷延 し,脳波にて右側 に優位で左右差 はあるが,全般
性の赫徐波複合が連続 していた. また,入院時 より両
側の水平方向の眼振 を認 めた.頭部 CT では多発性脳
梗塞,慢性虚血性変化が認 め られた.脳血流 シンチグ
ラフ ィーでは小脳梗塞が疑われた. フェニ トインの静
注により意識障害,脳波所見 とも改善 した.今回のエ
ピソー ドは何 らかの脳症 による I
ct
als
t
uporと考 えら
れた.脳症の原因 としては多発性脳梗塞が挙 げられ る
が, 内服 中のニ トラゼパムに誘発 された可能性 も考 え
られた.
1
5. 痴呆 を呈 さず,ペ ニシ リン大量療法 にて異 常
行動が改善 した神経梅毒の症例
○波 田 紫1
)
, 日域 広 昭2
)
,和 田 健2),≡
,佐々木 高 伸2)
,山
船 禎 子2
)
,高橋 佳 幸2)
脇成人 1) (
1) 広島大学附属病院精神神経
科,2) 広島市立広島市民病院精神科)
症例 は 5
0代男性.主訴 は行動異常 (
道徳観欠如,
0年前,尿道 か ら膿が出た こと
児戯 的な行動)
.X‑2
が あ ったが放置 して いた.X年 6月,意識消失発作
を呈 し,A病院 を救急で受診 し,頭部 CT,脳 波検査
を施行 されたが異常 なかった.同時期 より,仕事上の
ミスが多発 し, ワインを盗んで帰 る,無謀運転で警察
一般検査,I
gG i
nde
xや Ⅰ
し6は正常範囲内であった.
ステロイ ドパルス療法や抗精神病薬 に反応 な く,一時
につか まるな ど,道徳観,倫理観が欠如 し,児戯的,
脱抑制的な行動が 目立 つよ うにな った.X年 1
2月,
は昏迷状態 となったが m‑ECT を行 った ところ著効
した .
B病院精神科受診.経過や呂律困難か ら神経梅毒が疑
われ,確定診断 と治療 目的で,当科紹介入院 となった.
神経学的には膝蓋腰反射の低下の他 に異常 を認 めず,
HDS‑
Rは 2
6点であった.入院後髄液検査 な どを行
い診断確定 した後,抗精神病薬による鎮静 とペニシ リ
4
00万単位/日を計 2回投与 し,行動異常 は改善
ン G2
した.比較的早期 に適切 な診断及び治療 を行 えた こと
が改善 に寄与 した と考 えられた.
9
3
第 46回中国 ・四国精神神経学会
1
6. 特異な MRI画像 を呈 した NPSLEの 1例
○長尾茂人,小野陽一,山田了士,黒 田重
利 (
岡山大学大学 院医歯薬学総合研 究科
座長 :中込
和幸 (
鳥取大学)
1
8
. 幻覚妄想 や気分変動 を伴わず,不安焦燥 の強
い昏迷状態 を来 た した一例
○三船禎子,佐々木 高伸,和 田 健, 日域
精神神経病態学教室)
症 例 は2
8歳 の 女 性.X‑1年 SLE と診 断 さ れ,
広昭,高石佳幸 (
広島市立広島市民病 院
PSL内服 を継続 していた.X年 6月 2
0日に過量服薬
し,救急外来 を受診 し ERに入院.翌 日当科 に転科.
症例 は 2
7歳女性.2
2歳時,姉 の 自殺 を機 に自責感,
転科時は軽度意識障害,抑 うつ気分が認め られ,血液
不眠等の症状が出現.以後当科外来へ通院 していたが,
検査で は SLEは活動期 ではなか ったが,脳 波で全般
軽度 の抑 うつや 自責感情 が消長 していた.2
7歳時,
性 に ♂波が出現,頭部 MRIで は前頭葉皮質下白質に
家の改築工事 をきっかけに不安焦燥 の強い昏迷状態 を
造影効 果 の み を淡 く認 め る病 変 が 散在 してい た.
呈 し当科入院 となった.夜間の不眠不穏が強 く, 日中
NPSLE と診断 し,mPSLのパルス療法 を行 い,精神
症状 と脳波の著明 な改善 を認 め,MRIで は一部 改善
を認 めた.NPSLEの MRI所見 で大脳皮質下 白質 に
造影効果のみを病変 とす る NPSLEは これ まで に報
びf
luni
t
r
az
e
pam の点滴 にて積極的 に鎮静 を行 い,支
4病 日よ り次第 に昏
持的 に対応 して経過 をみた.第 1
2病 日には自宅 へ退院 とな った.
迷状態 を脱 し,第 4
告 が な く,本 症例 に特 徴 的 な所 見 で あ った.一 方
入院中明 らかな抑 うつや気分の高揚,幻覚妄想等の異
ac
e
t
az
ol
a
mi
de負 荷 SPECT の 結 果 s
ubc
l
i
ni
c
alに全
般性の血管障害が存在 してお り,本症例 の MRI所見
は,血管性浮腫に至 らない BBBの透過性冗進 による
常体験 は露呈 しなかった.本症例 は明 らかな昏迷状態
もの と考 えられた.
する.
1
7
. うつ病 を疑 い入院後,せん妄 の進行 を認 め,
葉酸投与によ り軽快 した一例
○宮崎哲 治1
)
,村上 伸 治 l)
,力丸満 恵2)
,.
堅
,松 下 兼 宗1
)
,滞原
田真 司2
)
,村上龍 文2)
精神神経科)
l
ope
r
i
dol及
も自制が保 てない状態 であったた め,ha
を呈 した ものの,操作的診断基準の中の主要な診断名
には合致 しない と考 えられ,若干の考察 を加 えて報告
1
9
. 気分安定 薬 と ri
s
pe
r
i
doneの併用療法 が著 効
した r
api
dc
yc
l
e
rの 1例
○沼 田周助,谷 口隆英,大森哲郎 (
後 島大
学精神科)
光彦 1),中川彰子 1)
,青木省三 1) (
1
)川崎
医科大学附属病院精神科学教室,2) 同神
Rapi
dcyc
l
e
rの診断基準 を満たす双極 Ⅰ型 障害 の
i
s
pe
r
i
done(
RI
S)の併
操病 に対 して気分安定 薬 と r
経内科学教室)
用療法が著効 した一例 を経験 したため,若干の考察 と
4歳,男性.頭痛,発熱,全身倦 怠感,抑
症例 は 7
共 に紹介す る.
うつ感,食欲不振が出現 し希死念慮 も認 めるようにな
3歳,男性.X‑1
2年 (
2
1歳時) に抑 うつ
症例 は 3
り他院 より紹介 され, うつ病 を疑 い当院精神科に即 日
症状 出現す る も自然軽快.X‑8年対人恐怖, アル コ
入院 となった.入院当初 より抑 うつ感情 に乏 しく胃癌
ール依存症 と診 断 され,他病 院精 神科 に通院 開始.
手術歴 もあったため,身体疾患の検索 を行 ったが,特
X‑3年 当院 に転 院.X‑2年 9月頃 よ り操症状 出現.
に問題 はなかった.精査 と並行 して抗 うつ薬投与 で経
その後 うつ病相,操病相 の出現 を繰 り返 した.X年
過 をみたが症状軽快せずせん妄 を認 めるようになった.
11月頃 よ り再 び操病相 が出現 し,通院治療が困難 に
脳波検査で徐波の混入,髄液検査で代謝性脳症を疑い,
な っ た た め 入 院.入 院 後 VPA (
1
80
0mg)+CBZ
当院神経内科 に転科 となった.SPECT では両側 前頭
(
1
0
00mg)で治療 す る も症状 改善 せ ず,q
uet
i
api
ne
(
QTP)7
0
0mgを併用 し操症状消 失.強 い眠気 を訴
えるた め QTPを減r
Hl
:した ところ媒症状 再燃.QTP
を RI
SI
Omgに変更後媒症状 は消失 し,Ⅹ+1年後 5
月初旬退院.退院後 も約 3ヶ月寛解 を維持 している.
葉 と側頭葉連合野 に強い血流低下 を認めた.血液検査
で葉酸値が低下 してお り,葉酸欠乏 による代謝性脳症
と考 え,葉酸の内服投与 を開始 した ところ,せん妄だ
けでな く当初の諸症状 も軽快 し退院 となった.粁榊 症
状の鑑別診断に於 いて,葉酸欠乏の可能性 に も注意す
るべきと考 えられた.
精神経誌 (
2
0
0
7)1
09巻 1号
9
4
2
0. Cyc
l
o
s
por
i
mとの併用 にて,l
i
t
hi
um投与 中止
を余儀 な くされた双極性障害の一例
2
2. 入院 にてグループホーム導入 を行 った意味性
痴呆の一例
学 1),岡本 泰 昌l),渡 辺清 美 1),高
○樫林哲雄,兵頭隆幸,鉾石和彦,福原竜
)
,熊谷
見 浩1
)
,山下 英 尚1
)
,山脇 成人 1
和彦2) (
1
)広島大学病院精神神経科,2
)
治,小 森 憲 治 郎,池 田 学,田 辺 敬 資
(
愛媛大学医学神経精神医学)
○淵上
同第二内科)
【目的】意味性痴呆 は失語症状 に加 え,性格変化や
l
i
t
hi
um の有用性 は広 く知 られ てい る. しか し,至適
行動異常 も伴い,介吉
敷 看護が困難 な疾患 とされてい
る.今回, 自宅での生活が困難 とな り,入院 による精
血中濃度の幅 は狭 く,血中濃度上昇 にて消化署旨
症状や
中枢神経症状,運動機能症状 といった重篤な中毒症状
査 と独特の常同行劫 をコン トロールすることにより,
スムーズな施設導入 に成功 した症例 を報告する.
on‑
を起 こすた め,排胆 を阻害す る一部 の利尿剤 や n
【
症例】患者 は 6
6歳の女性.5年前 (
6
1歳)頃か ら
簡単 な名詞が出に くくな り,単語の意味 もわか らな く
双極性障害出者 の気分安定化や病相 予防にお ける
s
t
e
r
oi
dalant
i
‑
i
nf
lammat
or
ydr
ugs(
NSAI
Ds
) との
併用に注意が必要である.
なった.3年前頃 よ り生活が常同的 とな り, また,皿
をなめる等の異常行動が出現 した. このため,当科初
今回,免疫抑制剤である c
yc
l
os
por
i
n投与 によると
考 えられ る血中潰度上昇 を認 め,l
i
t
hi
um 投与 中止 に
至 った双極性障害の一例 を経験 したため,文献的考察
診,呼称 障害,了解障害,意 味記憶 の障害 を認 め,
MRI
,SPECT の所見 より意味性痴呆 と診断 された.
をふ まえて報告す る.
母親が介護施設入所予定であ り,J
i
I
.
者 自身の処遇 を検
座長 :池田 研二 (
慈圭)
行動 コン トロール,歯科治療,処遇検討 目的で某年 6
2
1
. 在宅 ピック病 患者 へ の非 言 語 的介入 と患者
QOL と介護者ス トレスの変化‑ 介護者立会 いの心
月 3日,当科入院 となった.入院中,会話 は成立せず,
筆談で も意味 は通 じないことが多かった.患者の話 も
討す る必要があ り,歯科治療の必要 もあったため常同
理療法 (
アー トセラピー)の試み‑
○阿多敏江,寺 田整 司,黒 田重利 (
岡 山大
学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病
態学)
語性錯誤が多 く内容不明の こともあった.糖尿病治療
薬の服薬指導を行い,常同行動 を利用 したルーティー
ン化療法の中に 4
6ピースのパズル を組 み込 む ことに
も成功 した.グループホーム入所が可能 と判断 され,
本研究で は,無為が目立 ちほぼ全失語 に近い状態の
在宅 ピック病女性患者 と介護者 に非言語の心理療法を
6月 2
3日退院 となった.
施行 し,患者の QOL上昇 と介護者のス トレス減少を
試みた.
で著明な異常を認めた Cha
r
l
e
sBommets
yndr
omeの
1例
【
対象 と方法】在宅 ピ ック病 患者 A (
6
0
, 辛) と介
○森 秀徳,小野 陽一,寺 田整 司,黒 田重
7.
1.
21
‑7.
8まで の期 間,1
/
Zw の頻 度
護 者 に,H 1
で焼 く 2hのアー トセ ラ ピー (
1
3回) を施行.評価
利 (
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
精神神経病態学教室)
彰QOL‑
D と(
参日本版 Zar
i
t
‑
8
.
は,(
【
結果】患者の QOL‑
D は上昇 し (
59点 ‑ 6
6点)
,
介護者 の Za
r
i
t
‑
8は減少 した (
1
1点‑ 4点)
.
2
3. 不眠,幻視 を主訴 とし,MI
BG s
c
i
nt
i
gr
aphy
1歳の男性.主訴 は不眠 と幻視.7
8歳時 に
症例 は 8
症状が発現,症状持続 により当科受診.意識 は信明,
認知症,パーキンソン症状, 自律神経症状 は認めなか
【
考察】セラピー#7以降,5分間 もジッとしておれ
小人が
った.睡眠 は約 2時間で中途覚醒 し,幻視 は 「
なかった患者が,約 1時間集中で きるようになった.
同時に介護者 も 『もっ と緩やかに患者 と共 に生 きてい
数人部屋 に入 って きて,椅子 に座 った り, タンスの中
の洋服 の袖やポケ ッ トに入 り遊んでいる」 とい う内容
ければ長い』 ことを洞察 し, これ まで一 日の全てを介
で あ っ た. SPECT で 後 頭 葉 に血 流 低 下 を認 め,
MI
BG s
c
i
nt
i
gr
aphyでは H/
M の著明な低下 とwa
s
h‑
pez
i
l内服 によ り,覗
outr
at
eの冗進 を認 めた.done
護 に費や していた生活が,時 には患者 を他者にゆだね
ることも許せ るまでに変化 した.介護者立会いのアー
トセラ ピーの施行 は,患者 の QOLの上昇 と介護者の
ス トレス軽減 に貢献 した.
在 は睡眠が 3
‑4時間 に延長 し,幻視の出現頻度 も減
少 して きている.本例 は d
e
me
nt
i
awi
t
hLe
wybodi
e
s
(
DLB)の診 断基準 は満 た さず,現 時点 で の診 断 は
Char
l
e
sBonne
ts
yndr
ome(
CBS)である.CBSは
DLBの初期 であることも多 く,DLBの初期 であれ ば
9
5
邦4
6回中国 ・四国精神神経学会
d
o
n
e
p
e
z
i
lが有効 であ る.C
BSでは DLBの初期 でな
くて も S
PECTで後頭葉の血流低下 を認 めることがあ
Bに特異的な検査 として MI
BG s
c
i
n
t
i
‑
り, よ りDL
g
r
a
p
h
yが有用であった.
2
4
. 石灰沈 着 を伴 うび まん性神 経 原 線 維 変 化 病
(
DNTC)が疑われる 1例
,石 津秀樹1
)
,池 田研 二1
)
,守
○難 波理可 1)
足, リター ンシステムや移送制度が うま く機能 してい
ないなどの諸問題が存在 してい るため, それ らの問題
解決が課題であると考 えられた.
2
6
. 総合病院における精神科診療
○大 本 芳 範1
)
,工 藤 良 二1
)
,劉 貞 一1
)
,鶴
見征志1
)
,梅 田知子 1
)
,水木 泰2) (
1) 財
1
) 慈圭病 院,2
)
田整司2
)
,黒 田重利2) (
団医療法人水の木会下関病院,2) 山口県
立病院静和荘)
岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神
経病態学)
我々は,下関市内の四つの総合病院で週 に一度非常
勤医師 として出向 し,精神科診療 を行 ってい る. この
症例 は 77歳女性.4
5歳時 に離婚後 は単身生活 を送
っていたため詳細 は不明.
皮, 出向先 の一 つで あ る済生会下 関総 合病 院 の平成
1
6年一年間の リエ ゾ ン受診状況 について ま とめ,栄
7
5歳 頃 よ り健忘,俳個が 目立つ ようにな った.7
6
歳時,近隣 と トラブル となった り万引 き行為がみ られ
表 した.総合病院 における精神科診療の役割 には,敷
居の低い精神科外来や入院患者 に対す る診療がある.
警察 に保護 される事があった.友人の援助で生活 して
その他に粁神科救急 として入院の橋波 し役,医療 スタ
いたが, 日常生活 に支障をきたす ようになったた め当
ッフへのメンタルヘルスや研修医に対 す る臨床研修指
導 として リエ ゾン精神医学 を体験 させ ることも行 って
院受診 し入院 となった.入院時,記憶障害,見当識障
S‑
R4
/
3
0点.接触性 は良好 だが言語理
害 は高度.HD
解 は不良.多弁で感情変化が激 しく暴言,暴力 も時に
出現 し些細 な事で易窓的 とな りやすかった.神経学的
T検査に
所見,血液学的所見は特記事項 な し.頭部 C
て前頭側頭葉の脳萎縮,大脳基底核 と小脳の石灰化 を
認 めた.頭部 MRI検 査 で は前頭葉 の L
e
u
k
o
a
r
a
i
o
s
i
s
いる.問題点 として総合病院に精神科 として入院で き
る病床がない ことや夜間の総合病院での精神科救急の
問題がある.総合病院では,一週間に一度の診察 に も
かかわ らず,患者数 は増加 してお り, また精神保健福
祉士や臨床心理士 も不在であ り,人的 ・時間的制約が
大 きいことも挙 げられ る.総合病院 と串科精神科病院
がみ られた.以上 の所見 よ りDNTCが疑 われた. 蕊
がお互いの不足 している部分 を補 う形で連携 し,地域
た,本症例 は幼少時に鉛の含有が疑われるどうらんの
頻回な使用歴があ り鉛 との関連で興味 ある症例 と思わ
精神科医療 に貢献 で きると考 える.
2
7
. 広江病院精神科デイケアにおける 2
0
0
5年の利
れた.
9
9
5年 ,2
0
0
0年 との比較‑
用者調査‑ 1
座長 :下寺 信次 (
高知大学)
2
5
. 平成 1
6年度における山口県精神科救急情報セ
ンターの運用実績
○青木岳也,高松範雄,藤 田 実,小林孝
吉,嵐
千 尋,河合 宏 治,水 木 泰 (
山
口県立病院静和荘)
山口県の精神科救急 システムは精神科救急情報 セン
ター (
以下,情報セ ンター) を中心 として平成 1
2年
7月に運用を開始 している.運用開始か ら 5年が経過
し,医療機関のみならず行政機関において も情報 セン
ターの利用が浸透 して きたが,いまだに課題 は山f
i
l
lし
ている.情報センター運用の現状か ら問題点や今後の
課題 を考察 した.当県 における平成 1
6年度 の和判 科
2
3件であ り,約 7割 は通院中
救急郡例 は総発生件数 2
もしくは通院歴 あ りの者だった.情報センター発足当
7倍に増加
初 の一年間 と比較すると総発生件数 は約 1.
し,相談機関の割合に変化が認め られた. しかしなが
ら輪番病院の空床確保,情報センターのマ ンパワー不
○長 田 泉 美,野 崎 由 美,宮 崎 夏 江,青 戸
忍,贋江 ゆ う (
医療 法人義和会広江病 院
精神科)
Cと略す) は,精神障害者,
精神科デイケア (
以下 D
特 に統合失調症の生活障害に対す る リハ ビリ治療 とし
て重要で,再発 ・再入院防止効果があるとされている.
また,作業所や社会適応訓練事業,就労へつなげる役
割 も担 っている.
当院 DCは,1
9
9
0年 9月 に始 ま り,同年 1
0月大規
模 DCとして認可 された.活動 は,週 6回で,適所期
間や年齢制限は行 っていない.療法形態 は, レク リエ
ー シ ョンや S
S
T,集 団精神療法 と並行 して,2
0
0
4年
か ら就労支援型,生活支援型,作業型 と小 グループ活
6年 目を迎 えた現在,一定 の効果 と共
動 を始 めた.1
Cの現状 と
に問題点 も実感 している.今回我々は,D
課題 を捉 えるた めに,2
0
0
5年 6月 1日 と 1
9
9
5年同 日,
2
0
0
0年 同 日の DC利 用者統計 をだ し,生活環境,戟
労経験の有無等 を比較,検討 したので報告す る.
9
6
精 神経誌 (
2
0
0
7)1
0
9巻 1号
28. 悪性新生物 と精神症状 の関連性 についての検
30. 摂食障害女児の入院治療 における心理療法の
1例
○謡隈‑平,掛 田恭子,下寺信次,井上新
○井上佳子,船戸 弘正,秋元隆志,渡 辺義
討
平 (
高知大学 医学部神経精神病態医学講
座)
心理社会的要素や身体疾患 に伴 う精神症状 など,抑
うつ状態 に影響す る要素 は複雑である.
文 (
山口大学医学部高次神経科学講座)
主治医 と看護 スタッフによる行動療法的アプローチ
に並行 した,臨床心理士 (
以下 CP) による個人精神
療法の導入が有効であった と考 えられ る症例 を経験 し
2002年 7月〜200
5年 6月末 の 3年間 に当院神 経精
2歳 の女性.同胞 5人 中の
たので報告す る.【
症例】1
神科受診歴 のある患者 27
21名 の中に癌の既往が ある
第 4子,一卵性双生児の妹がい る.X‑1年 4月,体
51名であったが,当院入院歴があ り当院 にて
ものは 3
死亡 した担癌患者 39名 についてカルテを用いて調査
重 22kg (
身長 1
4
0cm) とな り,神経性 無 食欲 症 の
診断にて当科入院 となる.行動療法にて順調 に体重回
した.
8kgで退 院 す る も,4月 に は 22
復 し,Ⅹ年 2月 に 2
精 神疾 患 の 内訳 は FO:F2:F3:F4‑1
6:1:l
l:
但 し重 複 あ り)で あ り FO,F3,F4で主 に 3分
1
6(
kgに減少 し,Ⅹ年 7月当科再入院 となった.再入院
時,患者 は家族や医療者 に対 し非常 に拒絶的であった
された.特徴 として若年,又 は女性 で は F4が占める
ため,心理面接 はコ ミュニケーションの回復 と治療動
割合が多 く,高齢者では F3が多かった.
機 を高 めることを目的 とし,週 2回 50分,スクイグ
亡 くな る前の精神科受診 日についての検討 で は F3
ルの変法 を用いて行われた.CP と良好 な治療同盟が
の患者で,精神科受診が遅れている可能性が示唆 され
形成 され るにつれ,拒絶的であった病棟スタ ッフとの
た.
関係 も回復 し, 自らの成長 を手助 けして くれ る対象 と
して陽性の感情 を抱 くようになった.退院後中学校 に
座長 :佐々木
高伸 (
広島市民病院)
29. 生命的危機 を呈 した神経性無食欲症の重症例
について
○三宅典 恵 1)
,宮坂 国光1
)
, 自尾直 子l
)
,古
庄 立弥1
)
,出本吉彦 l
)
,馬 場麻好2
)
,高畑
進学 し,体重減少 は認め られていない.当 日は, より
詳 しい治療経過 と文献的考察 を加 えて報告する.
31. 不登校大学生の‑症例‑
毒 との関連 について‑
イ ンターネ ッ ト中
○武 久 美 奈 子l
)
,石 元 康 仁 1),大 森 哲 郎 2)
紳‑I
)(
1) 県立広島病院精神神経科, 2)
(
1
)徳島大学保健管理セ ンター,2) 徳島
広島大学病院精神科神経科)
大学医学部情報統合医学講座精神医学分
野)
‑2
0% と報告 されて
神経性無食欲症 の死亡率 は 5
0% を超 える低体重 が死
お り,特 にるいそ う率が ‑4
情報化社会の中,多 くの学生がインターネ ッ トを利
亡の転帰 と関連があるといわれている.当科では入院
用 し 「ネ ッ ト中毒」 も増加 してい る. この度, 自 ら
時 にるいそ う率が ‑50% を超 える症例 を過去 5年間
「パ ソコン依存症」 と言い相談 に来た学生 を経験 した.
0例経験 し,3例 の死 亡例 が あった.今 回我々は
で2
3歳男性で大学院一年生.研究室 に適 えず
症例 は 2
0% を超 える神経性無食欲症患者で
るいそう率が ‑5
一 日の殆 どをネ ッ ト特にオ ンラインゲームに費や して
重度低栄養状態 を認 め,感染症等 によ り生命的危機 を
いた. その使用 は自己制御困難で,電源 を切 ることも
呈 し,I
CU管理 を必 要 とした症例 を 2例経験 した.
ゲームを中断す ることもで きず,強迫的に取 り組 む様
症 例 1:25歳,女性, るいそ う率 ‑5
5%.入 院時 よ
子 はまさに依存症的であった.「ゲーム内で は自己主
り歩行困難 であ り,下腿浮腫著明,低 K血症,貧血,
張がで き居場所がある.技術 を賞賛 される」 と言 う.
CU に転
徐脈 ,QT延長 に加 えて肺 炎 を合併 した為 I
仮想空間上の万能感 と現実生活 における無力感の落差
5%.
棟 した.症 例 2:31歳,女性, るい そ う率 ‑6
がネ ッ ト中毒か ら抜 けられない要因 と考 えられた.
近 医 よ り起座 困難 にて当院 I
CUへ搬送 された.重症
面接 は毎週行 い治療者 は現実社会上の他者 として関
感染症,排骨神経麻痔 を合併 し,呼吸筋萎縮 にて人工
わ りを続 けた.結果ネッ ト中毒か らは脱 し,実験等現
呼吸器管理 を要 した. ともに集中的な身体管理 により
実の課題 に向 き合 っている.
危機的状況 を脱 した後 に当科病棟で治療 を継続 した.
不登校大学生 は増加 してお り,その一部 はインター
臨床経過及 び当院の死亡例 も加 えて,文献的考察 を加
ネ ッ ト使用上の問題 を抱 えている可能性がある.教育
えて報告す る.
現場 における精神保健的な支援 を考 える上で,重要な
視点 と考 えられた.
Powered by TCPDF (www.tcpdf.org)
97
第4
6回中国 ・四国精神 神経 学会
3
2
. 非専門外来 を受診 す る OCD患者 の臨床特徴
‑
「
改善群」 と 「
非改善及び中断群」の比較検討
,真 田順 子2)
,北 村 ゆ り2)
○石 丸 美 和 子 1)
(
1) 菜 の花 診療 所 心理 室,2) 同心 療 内
科)
薬物療法及び行動療法的アプローチ (
以下 BT)を
併用 した OCD患者 の臨床特徴お よび治療抵抗性 に関
わる諸要因を検討 した.
3.
5
‑H1
7.
5までの 4年間
【
対象 と方法】対象 :H1
に当院 を初診 LI
CD‑1
0によ りOCD と診 断 され BT
を併用 した 3
3例.性別,治療歴,初診時年齢,発症
年齢,家族負国,人格障害合併,病型分類,不合理性
認識 ,SRI・抗精神病薬最大投与量,初診 ・最終確認
BOCS,BDI
,STAI
,BTI
s
tホーム
時就学就労,Y‑
ワー ク達成 につ0て評価 した. 1年後 Y‑
BOCSが 2
5
% 以上 の改善 を認 めた者 を 「
改善群」
,BT3ケ月未
,
満で中断 した者 を 「
中断群」 と判定 し 「
改善群」 と
「
非改善及 び中断群」の 2群間で比較 を行 った.
「
非 改 善 及 び 中 断 群」で は有 意 に
【
結 果 と考 察】
BDIが高得点,BTI
s
tホーム ワー ク達成 不可 で あ っ
P<0.
01
)合併 す る欝状 態 へ の対 応 と, 円滑 な
た. (
BT導入の重要性が示唆 された.