日本を襲った地震、津波そして原発事故

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プロジェクトマネジメント・コミュニティーの対応
日本を襲った地震、津波そして原発事故
プロジェクトマネジメントを実践する
人たちは、3月に日本を襲った地震
や津波のような災害復旧に役立つ
スキルやツールを身につけています。
世界中の PMI 支部とメンバーには、
今回のような事態に惜しみなく対応
してきた経緯があります。
以下、いくつかの現地調査と世界中
で PMI が対応している概要を紹介し
ます。
プロジェクト・マネジャー
視点からの災害復旧
ビクトル・オレリャーナ、PMP
チリ国・公共建設相
地
震と津波に関する二国
間の経験を情報交換す
るために、チリ政府が派
遣した保健省、公共建設省および公
安省の専門家チームが2011年3月1
1日に訪日しました。偶然にもその日
は、死者 1 万 4000 人以上、行方不明
者 1 万 2000 人以上、建物の損壊 12
万 5000 戸以上という悲惨な結果を日
本にもたらしたマグニチュード 9.1 の大
地震とそれに続く津波が発生した日で
した。
私は、チリ公共建設省のチリ地震後復
興計画に関する公共工事総責任者へ
のアドバイザーかつ PMI のメンバーと
して、今回の訪日に参加していました。
今回の不幸な災害をきっかけとして、
日本とチリの地震と津波に関する類似
体験を交換することができました。
チリは 2010 年に大地震を経験しまし
た。津波によって打撃を受けた地域、
まった10メートルの防波堤を信用して
建物の取り壊しプロセスや孤立した地
いたことで甚大な打撃を受けました。
域における災害警報システムなどの
さらに、チリの時と同様に携帯電話シ
復旧・復興にどのように取り組んでい
ステムも不通となりました。
るかに関して、私たちの経験を日本と
私は今回の訪日で重要な教訓を学び
共有しました。
ました。それは、自然災害対策は相互
復旧プロセスを始める上で被害状況
に関連するフェーズ(リスク、警報、緊
評価のフェーズに入っていた日本の
急対応、復興)で統合されたダイナミッ
人々は、2010 年 2 月 27 日のチリ地震
クなプロセスである、ということです。
での体験に関心をもっていました。私
復旧の目的を達成するためには、これ
たちは、単に知識に関して貢献する以
らを全体としてマネジメントしなければ
上に、同じような大規模自然災害に遭
なりません。私たちは、母国の公共建
遇したチリの人たちの実体験について
設省で行っている復興作業を強化し、
語ることができます。それこそ日本の
また将来の自然災害に前もって備え
人々が最も期待した点でした。
るために、この教訓をチリに持って帰
日本に限らず、この震度の災害に対
りました。
応できる備えを十分にできている国な
災害に直面して生き抜こうとする日本
ど、どこにもありません。日本の人々
人の逞(たくま)しさを間近に見て、私
は住民に対する災害の備えを最優先
は大変な感銘を受けました。同様に注
にしてきました。過去の津波の経験と
目したいのは、災害に対する組織的な
警報による避難行動のおかげで住民
備えについて、傾向として日本人一人
の命が救われた町もあります。一方、
ひとりが深い関心を持っている点です。
ある町では津波によって破壊されてし
また一方で、今回の日本の惨事を見
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て、自然災害がどのような想定も上回
る可能性がある、ということも揺るぎな
PMI日本支部会長からの手紙
2011年4月17日
い事実です。
プロジェクトマネジメントを実践する人
たちのビジョンとマネジメント能力は、
平常時と同様に、危機発生時の対処
に関しても大変に有効なツールになり
ます。プロジェクトマネジメントのスキ
ルは、プロジェクトを計画して潜在的な
解決方法を確立するために体系的な
フレームワークを構築する助けとなり
ます。
とりわけ、プロジェクト・マネジャーのス
キルには、リスクをより効果的にマネ
ジメントするためのツールと技法を含
みます。たとえ事前の特定が困難な未
知リスクであっても、異なった対応戦
略への準備は行っておくようにしま
す。
その上で、主に既知リスクに焦点を当
てる必要があります。プロジェクト・マ
ネジャーは、プロジェクトをマネジメント
する経験とコンピテンシーを駆使して、
震災後の復興において支援する使命
があります。
PMI による義援金について
PMI 支部とコミュニティーは日本の地
震と津波に対応してきました。特に
PMI シンガポール支部では、日本にお
ける救援活動に赤十字を通じて 5,000
シンガポールドルの義援金を計画して
います。インド支部の PMI バンガロー
ルは、10,000US ドルの寄付を計画して
います。
この度の東日本大震災に際しては、PMI の旧知からだけではなく見知ら
ぬ支部のメンバーも含めて世界中から多数の温かいメッセージを日本支
部にいただきました。
これらのメッセージは私たちを大いに勇気づけてくれましたし、PMI という
組織の連帯をあらためて感じさせてくれるものでした。
お寄せいただいた温かなメッセージに心から感謝いたします。また、このこ
とは決して忘れることは無いと思います。
ご存じの様に、私たちはとりわけ原子力発電所の被害により、依然として深
刻な非常事態に直面しています。地震・津波・原発による打撃から本格的
復興の段階に入るには、まだ数ヶ月以上を要すると思われます。いつか水
やガスなどは復旧するでしょう。しかし、この困難で厳しい状況下、たとえ
人々が立ち直り職場が何とか再建されたとしても、この災害によって失わ
れた家族たちは二度と戻って来ないのです。
私たちは依然として支援を必要としています。もし皆さんが被災者のため
に何かしたいと考えておられるなら、どうぞ寄付をお寄せください。
東日本大震災の被災者はそうした寄付を必要としており、寄付があれば彼
らを強く勇気づけてくれると信じています。また、金額もさることながら、どれ
だけ多くの人々が支援の手を差しのべてくれようとしているのかという事
に、感動するはずです。
繰り返しになりますが、皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたしま
す。今、日本は復旧・復興に向けてもがいています。大災害を経てこれか
ら日々の生活を再建するには長い道のりが待っています。
PMI日本支部は、PMMPDR(災害復興プロジェクトマネジメント手法)の翻訳
に着手しました。また、4つのプロジェクトとPMOから構成される支援プロ
グラムも編成しました。日本支部のボランティアたちは堅い連帯感の下、献
身的な努力を払っています。
私たちは東日本大震災の被災者や原子力発電所事故による避難住民の
ために、セミナー収入から寄付を続ける事、セミナー参加者にも幾ばくか
の寄付をお願いすることを決めました。
どうか、これからも私たちの歩みを見守ってくださいますようお願いいたしま
す。
敬具
PMI リージョン3では、今月のリーダー
シップ・ミーティングにおいてサイレン
ト・オークションの開催を計画していま
ます。
助に貢献している場合
す。PMI 支部はこのサイレント・オーク
義援金に関するお問い合わせ
PMI Today® 編集部アドレス宛てへご
ションに寄付を行い、集まった義援金
各国の慈善団体か、または Web サイト
一報ください。
は全て救援活動災害救助にあてられ
www.jrc.or.jp/english.を見てください。
dan.goldfischer @pmi.org.
所属するコミュニティーが既に災害援
翻訳:PMI 日本支部
依田
研司(よだ
翻訳・出版委員会
けんじ)