BRICS マンスリー・レター お客さま用資料 2011年8月号 筆者のご紹介 門倉 貴史 (かどくら たかし) BRICs経済研究所 代表 慶應義塾大学経済学部卒業後、1995年に浜銀総合研究所入社。 社団法人日本経済研究センター、東南アフリカジア研究所(シンガ ポール)出向、第一生命経済研究経済調査部主任エコノミストを経て、 2005年より現職。同志社大学大学院非常勤講師。専門はアジア やBRICs等の新興国経済のほか、多岐にわたる。 主な著書 「図説BRICs経済」(日本経済新聞社) 「『今のインド』がわかる本」(三笠書房) 「日本人が知らなかったVISTA株」(翔泳社) 「イスラム金融入門~世界マネーの新潮流」(幻冬舎新書) 「中国経済の正体」(講談社現代新書) 「世界を席巻するインドのDNA」(角川SSC新書)など多数。 投資信託は一般的に、株式、債券等様々な有価証券へ投資します。有価証券は市場環境、有価証券 の発行会社の業績、財務状況等により価格が変動するため、投資信託の基準価額も変動し、損失を 被ることがあります。また、外貨建の資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被ることがあ ります。そのため、投資信託は元本が保証されているものではありません。 ご注意していただきたい事項について • 投資信託によっては、海外の証券取引所の休業日等に、購入、換金の申込の受付を行わない場合があります。 • 投資信託によっては、クローズド期間として、原則として換金が行えない期間が設けられていることや、1回の換金 (解約)金額に制限が設けられている場合があります。 • 分配金の額は、投資信託の運用状況等により委託会社が決定するものであり、将来分配金の額が減額されることや、 分配金が支払われないことがあります。 ファンドの諸費用について 投資信託では、一般的に以下のような手数料がかかります。手数料率はファンドによって異なり、下記以外の手数料 がかかること、または、一部の手数料がかからない場合もあるため、詳細は各ファンドの販売会社へお問い合わせい ただくか、各ファンドの投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 投資信託の購入時:購入時手数料(上限3.675%(税抜3.5%))、信託財産留保額 投資信託の換金時:換金(解約)手数料、信託財産留保額(上限1.0%) 投資信託の保有時:運用管理費用(信託報酬)(上限年率1.995%(税抜1.9%))、監査費用(上限年間315万円(税抜 300万円)) *費用の料率につきましては、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が設定・運用するすべての公募投資信託の うち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。 運用管理費用(信託報酬)、監査費用は、信託財産の中から日々控除され、間接的に受益者の負担となります。その 他に有価証券売買時の売買委託手数料、外貨建資産の保管費用、信託財産における租税費用等が実費としてかか ります。また、他の投資信託へ投資する投資信託の場合には、当該投資信託において上記の費用がかかることがあり ます。また、一定の条件のもと目論見書の印刷に要する実費相当額が、信託財産中から支払われる場合があります。 金融商品取引業者等について 投資信託委託会社:JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号 加入協会:日本証券業協会、社団法人投資信託協会、社団法人日本証券投資顧問業協会 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」といいます。)が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、 BRICs経済研究所の協力により作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。ま た、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて 作成されていますが、当社およびBRICs経済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なし に変更されることがあります。また本資料に掲載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用する ファンドへの組入れを示唆するものではありません。 1 BRICS マンスリー・レター お客さま用資料 2011年8月号 今月のコラム 2011年1~3月期の実質個人消費が前年比5.9%増を達成するなど、ブラジルの個人消費が好調に推移している。この 背景としては、失業率が低下すると同時に実質賃金が高い伸びを示すなど、雇用・所得環境の改善が続いていることが挙 げられる。また好景気が続く中で消費者心理が上向いていることも消費の好調につながっている。さらにもうひとつ、新たに 台頭するようになった中産階級の間で、割賦販売を中心に消費者ローンが普及しつつあることもブラジルの消費の拡大に 少なからず貢献していると考えられる。 実際、ブラジルの消費者ローン市場は2000年代後半に入ってから速いペースで拡大するようになった。ブラジル中央銀 行の統計によると、2011年5月末の消費者信用残高(政府系金融機関と民間金融機関の合計)は、約1兆7400億レアルで、 2005年1月末時点に比べて3.6倍の規模に達した(図表1を参照)。消費者信用残高の名目GDP(国内総生産)に対する比 率も2000年代後半から一貫して上昇傾向をたどっており、2005年1月末の24.8%から2011年5月末には45.1%へと上昇し ている(図表2を参照)。足元におけるブラジルの消費者信用マーケットは過熱気味で、2011年5月末の消費者信用残高は 前年比+20%を超える高い伸びだ。 インフレの加速を懸念するブラジル中央銀行が2010年の春から金融引き締め政策をとっているので、本来は(金利の上 昇に敏感に反応しやすい)クレジットカードを使った高額商品の買い物が手控えられ、信用残高の伸びは鈍化するはずなの だが、今回の利上げの局面ではそうした現象はみられない。 その理由は、政策金利の上げ幅が小さなものにとどまっているので、ローンの返済負担がそれほど重くなっておらず、まだ 債務不履行(デフォルト)の増加が懸念されるような状況ではないということがある。また商品の販売サイドの戦略として、政 策金利が上昇しても、ローン金利を政策金利に連動させず、あえて低めのローン金利に据え置く小売業者が多くなっている。 これは、金利上昇分のコストを小売業者が負担しているというわけではなく、ローン金利を据え置いているように見せかけて、 実際には金利の上昇分を商品価格に上乗せして販売するというカラクリになっている。現金で購入するよりも割高な価格設 定であっても、価格の上昇に慣れているブラジルの中産階級の消費者は、割賦であれば毎月の給与からの天引きでなんと か購入できるとの算段で、たとえ割高な商品であっても購入する傾向が強い。 このままブラジルの消費者信用残高が速いペースで拡大を続けて、個人消費の過熱が沈静化しなければ、インフレが加 速し、ブラジル中央銀行が一段の利上げを実施する可能性が高まるだろう。急激な利上げが実施されれば、低所得層を中 心にローンの返済に支障をきたす人たちが増えていき、最終的にはクレジット・バブルが崩壊してしまう恐れもある。 こうした状況下、クレジット・バブルの発生と崩壊を懸念するブラジルの政策当局は、消費者信用残高の伸びを現在の前 年比+20%超から同+12~+15%の伸びに鈍化させることを目標としている。この数値目標を達成し、消費者信用市場の 安定化を図るべく、ブラジルのマンテガ財務相は、2011年4月、消費者がローン取引をする際に負担する税率を従来の 1.5%から3.0%へと2倍に引き上げることを決定した。今後は、これまでの政策金利の引き上げの効果が浸透してくるととも に、消費者信用取引に対する課税強化の効果が重なることで、消費者信用残高の拡大ペースが鈍化してくると予想される。 それに伴って、過熱気味となっている個人消費の伸びも徐々に落ち着いた動きになっていくだろう。 図表1 ブラジルの消費者信用残高(実額) 図表2 ブラジルの消費者信用残高(GDP比) (千億レアル) 20 (名目GDP比、%) 50 18 45 16 14 40 12 政府系金融機関 10 35 8 30 6 民間金融機関 4 25 2 20 0 05 06 07 08 09 10 11 (年) (出所)ブラジル中央銀行資料よりBRICs経済研究所作成 2 05 06 07 08 09 10 11 (年) (出所)ブラジル中央銀行資料よりBRICs経済研究所作成 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、 BRICs経済研究所の協力により作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的とした ものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。 本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経済研究所がその情報の正確 性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲 載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを 示唆するものではありません。 BRICS マンスリー・レター お客さま用資料 2011年8月号 今月のコラム BRICSの一角を占める南アフリカで「エクステンション(つけ毛)」や「ウィッグ(ファッションかつら)」、パーマなどいわゆる 女性向けヘアケア市場が急成長している。ヘアケアの主要な需要層は黒人女性だ。南アフリカでは、1994年にアパルトヘ イト(人種隔離政策)が撤廃されており、1990年代後半以降、黒人女性の社会進出が加速するようになった。それに伴って 黒人女性の中から「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」と呼ばれる富裕層・中産階級が台頭、この「ブラック・ダイヤモンド・ ウーマン」がファッションにお金をかけるようになったという事情がある。 かつての南アフリカの社会では、女性のヘアスタイルは自然のままが望ましいとされていたのだが、近年では、ストレー ト・パーマをかけたり、つけ毛をするなど、髪型をおしゃれにすることが働く女性のステータス・シンボルのひとつとして考えら れるようになった。 では、南アフリカの黒人女性の富裕層・中産階級はどれぐらいの購買力を持っているのだろうか。ケープタウン大学ユニ リーバ研究所の調査によると「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」の数は2008年で約150万人となっており、その消費額は年 間1200億ランド、南アフリカの女性の消費額全体の4割を占める。同研究所は「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」の大きな 特徴として、好奇心が強い、ブランド志向が強くステータスを重視するなどの点を挙げており、そうした特徴がヘアケアに対 する関心の強さ、購買意欲の高まりにつながっていると考えられる。「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」の多いヨハネスブル ク近郊やダーバン、ケープタウンでは、黒人向けに特化した美容院の新規開業が相次いでいる。 ヘアケア市場の成長性を見込んで、インドなど比較的所得水準の近い他の有力新興国のヘアケア関連企業が南アフリカ に進出するといった動きも加速している。南アフリカだけでなく、ナイジェリアなど他のアフリカ諸国でもヘアケア市場は拡大 しており、ある調査によれば、アフリカ全体のヘアケア市場の大きさは10億ドル(約800億円)超に達する。マーケットサイズ は毎年15%前後の速いスピードで拡大する見込みだという(インドの日用品大手ゴドレジの調査による)。 ただし、「ブラック・ダイヤモンド・ウーマン」が台頭しているとはいえ、黒人層の所得格差は他の人種に比べると依然として 大きい。たとえば、所得格差の度合いを示すジニ係数(ゼロから1の間をとり1に近づくほど格差が大きいことを示す)を人 種別にみると、白人が0.46、アジア系が0.53、カラード(混血)が0.56にとどまるのに対して黒人では0.62にも達する(図表1 を参照)。同じ中産階級のカテゴリーに属していても、上位中産階級と下位中産階級ではかなりの所得格差が存在するとい うのが実情だ。 このため、販売サイドは黒人女性向けのヘアケア商品について、さまざまな価格帯を用意するといった工夫をしている。 たとえば、「ウィッグ」の場合、最低30ランドから最高600ランドまで、幅広い価格の商品が店頭に並ぶ。600ランドの「ウィッ グ」は人毛を使った高品質の商品となっている。 南アフリカでは、2004年に黒人層の経済活動への参加を促す「ブラック・エコノミック・エンパワーメント」が施行されており、 今後も黒人女性の富裕層・中産階級の台頭が続くことが見込まれる。女性の社会進出が進み、新たな富裕層・中産階級が 増えることによって、ヘアケアや化粧品、美容など、女性向け商品・サービスの販売がトレンドとして拡大していくと予想され る。 図表1 南アフリカの人種別ジニ係数(2007年) (ジニ係数) 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 黒人 カラード アジア系 白人 (出所)南アフリカ政府資料よりBRICs経済研究所作成 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力により 作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会 社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経 済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲載 されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆するものではありません。 3
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