BRICS マンスリー・レター お客様用資料 2010年6月号 筆者のご紹介 門倉 貴史 (かどくら・たかし) BRICs経済研究所 代表 慶應義塾大学経済学部卒業後、1995年に浜銀総合研究所入社。 社団法人日本経済研究センター、東南アジア研究所(シンガポー ル)出向、第一生命経済研究経済調査部主任エコノミストを経て、 2005年より現職。同志社大学大学院非常勤講師。専門はアジア やBRICs等の新興国経済のほか、多岐にわたる。 主な著書 「図説BRICs経済」(日本経済新聞社) 「『今のインド』がわかる本」(三笠書房) 「日本人が知らなかったVISTA株」(翔泳社) 「イスラム金融入門~世界マネーの新潮流」(幻冬舎新書)など多数。 投資信託は一般的に、株式、債券等様々な有価証券へ投資します。有価証券の価格は市場環境、有 価証券の発行会社の業績、財務状況等により価格が変動するため、投資信託の基準価額も変動し、 損失を被ることがあります。また、外貨建の資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被るこ とがあります。そのため、投資信託は元本が保証されているものではありません。 ご注意していただきたい事項について • 投資信託によっては、海外の証券取引所の休業日等に、取得、換金の申込の受付を行わない場合があります。 • 投資信託によっては、クローズド期間として、原則として換金が行えない期間が設けられていることや、1回の解約金額 に制限が設けられている場合があります。 • 分配金の額は、投資信託の運用状況等により委託会社が決定するものであり、将来分配金の額が減額されることや、 分配金が支払われないことがあります。 ファンドの諸費用について 投資信託では、一般的に以下のような手数料がかかります。手数料率はファンドによって異なり、下記以外の手数料 がかかること、または、一部の手数料がかからない場合もあるため、詳細は各ファンドの販売会社へお問い合わせい ただくか、各ファンドの投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 投資信託の取得時:申込手数料(上限 3.675%(税抜3.5%)) 投資信託の換金時:換金(解約)手数料、信託財産留保額(上限1.0%) 投資信託の保有時:信託報酬(上限 1.995%(税抜1.9%))、監査費用 *費用の料率につきましては、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が設定・運用するすべての公募投資信託の うち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。 信託報酬、監査費用は、信託財産の中から日々控除され、間接的に受益者の負担となります。その他に有価証券売 買時の売買委託手数料、外貨建資産の保管費用、信託財産における租税費用等が実費としてかかります。また、他 の投資信託へ投資する投資信託の場合には、当該投資信託において上記の費用がかかることがあります。また、一 定の条件のもと目論見書の印刷に要する実費相当額が、信託財産中から支払われる場合があります。 金融商品取引業者等について 投資信託委託会社:JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号 加入協会:日本証券業協会、社団法人投資信託協会、社団法人日本証券投資顧問業協会 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力 により作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券 の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社 およびBRICs経済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがありま す。また本資料に掲載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆 するものではありません。 1 BRICS マンスリー・レター お客様用資料 2010年6月号 今月のコラム 豊かな自然に恵まれた南アフリカは、近年、観光立国としてのプレゼンス(存在感)を高めつつある。南ア観光局の統計によ ると、南アを訪れる外国人観光客数は1980年代までは年間100万人にも満たない水準で推移していた。しかし、アパルトヘイト (人種隔離政策)が廃止されて民族・人種の和解が実現して以降、外国人観光客数が急拡大するようになり、2008年は前年比 5.5%増の約960万人と過去最高を記録した(図表1)。 南アを訪れる外国人観光客の内訳を見ると、アフリカ大陸に位置する国々からの訪問客数が圧倒的に多いという特徴があり、 2008年の外国人観光客約960万人のうち76%(約733万人)がアフリカ大陸で占められた。外国人観光客の数が最も多いのは、 周囲を南アに囲まれたレソト王国で、2008年には216万3372人がレソト王国から南アを訪れている。外国人観光客全体に占め る割合は小さいが、アフリカ大陸以外の地域からの観光客も着実に増えている。2008年の国別外国人旅行者数(アフリカ大陸 を除く)のトップは、英国で48.5万人であった(図表2)。英国の観光客数が多いのは、かつて南アが英国の植民地であったため と考えられる。第2位は米国で28万7438人、以下ドイツ(23万8306人)、オランダ(12万8097人)、フランス(12万7956人)と続く。 ちなみに、日本からの旅行者数は2万7621人であった(2008年)。 アフリカ大陸から、あるいはアフリカ大陸以外の地域からの外国人観光客数の拡大に伴って、観光収入も増加傾向で推移し ており、2008年の南アの観光収入は前年比23.5%増の742億ランド(約9082億円)を記録した。これは南アの経済規模(名目 GDP)の約2.4%に相当する。近年の観光収入の増加には、外国人旅行者数の増加も少なからず寄与しているが、最大の要 因は旅行者1人あたりの消費金額が増えていることである。 観光地としての注目度が高まる中、南ア観光局は2010年6月11日に開催されるサッカー・ワールドカップを、南アの観光地と しての魅力を対外的にアピールする絶好の機会としてとらえている。2010年5月8日~11日には、南アのダーバンで南ア観光 局主催の「INDAVA(インダバ)」と呼ばれる観光見本市が開かれた。この観光見本市はアフリカ大陸では最大の規模で、毎年 開催されているイベントだが、今年はW杯開催年ということもあって注目度が高く、宿泊施設や旅行会社、イベント会社など 1500社以上が出展、熱心なPR活動を展開した。 では、どれぐらいの人たちがW杯期間中に南アを訪れるのだろうか。南ア政府の予測では45万人の外国人観光客が南アを 訪れると見込まれる。W杯観戦目的で南アを訪れた人たちが南アに好印象を持てば、周囲の人たちに観光地として南アを薦め るようになるため、口コミ効果によってW杯開催後の外国人観光旅行者数の増加につながる可能性もある。 最大の懸念材料となっている治安情勢については、ワールドカップ開催期間中は13億ランド(約160億円)を投じて万全を期 す。1試合ごとにスタジアムに700人の警察官を配置する予定だ。南アで犯罪が多発する最大の理由は、国民の経済格差が大 きいことにある。このため南ア政府は中長期の治安維持政策として、黒人層の雇用創出などで経済格差を縮小させ、犯罪の発 生率を引き下げることを目標にしている。治安の問題が改善に向かえば、南アを訪れる外国人観光客数はさらに増加するとみ られ、観光立国としての地位が一段と高まることになるだろう。 06 07 (出所)南ア観光局資料よりBRICs経済研究所作成 08 (年) イ ン ド ア ア カ ナ ダ ン ス ン ダ ド ー デ ン 05 ェ 04 ウ 03 ス 02 イ タ リ 01 トラ リ 00 オ ー ス 99 フ ラ 98 米 英 国 6 5 4 3 2 1 0 国 (万人) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 オ ラ (100万人) 10 9 8 7 外国人観光客数の上位10カ国 (アフリカ大陸以外、2008年) イ ツ 図表2 図表1 南アへの外国人観光客数の推移 (出所)南ア観光局資料よりBRICs経済研究所作成 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力により 作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会 社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経 済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲 載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆するものではありません。 2 BRICS マンスリー・レター お客様用資料 2010年6月号 今月のコラム 中国の不動産価格が急騰している。国家統計局が発表する主要70都市の不動産販売価格は、2009年半ば以降上昇傾 向が鮮明になっており、直近の2010年4月は前年比12.8%と過去最大の伸び率を記録した(図表1)。 最近の不動産価格高騰の背景には、中国国内で過剰流動性が発生していることがある。中央銀行である中国人民銀行 がリーマンショック後に、政策金利や預金準備率(市中銀行が中央銀行に預けなければならない預金の比率)を矢継ぎ早に 引き下げたことが過剰流動性の発生を招いた。また、人民銀行が人民元のレートを維持するために、継続的にドル買い・人 民元売り介入を実施しているため、それによって市中に人民元があふれるようになったとも考えられる。過剰になった人民元 が有利な投資先を求めて不動産市場に流入し、それが不動産価格を高騰させている側面がある。 不動産市場の過熱感が強まる中、沿岸都市部などでは不動産バブルの懸念も浮上するようになった。中国の政策当局は、 人民元の切り上げや政策金利の引き上げなどマクロ的な政策を発動して、不動産価格の上昇を抑制するのではなく、個別・ ミクロ的な引き締め政策を通じて不動産価格の上昇に歯止めをかけようとしている。マクロ的な引き締め政策を実行すれば、 中国の景気全体を冷やしてしまう恐れがあるからだ。 具体的な不動産抑制策としては、次のような政策が打ち出されている。まず、中国政府(国務院)は、2010年4月中旬に不 動産需要の拡大を抑制することを目的として、2軒目以降の住宅購入への融資を厳しく制限することを決めた(頭金比率を 最低40%から50%に引き上げる、住宅ローンの金利も1軒目に比べて引き上げる)。 ただし、この政策には「偽装離婚」という抜け道もある。実際、2軒目以降の住宅購入への融資規制を強化してから、不動 産価格が上昇している沿岸都市部では、離婚件数が増えるようになったといわれる。すでに1軒目の住宅を所有している夫 婦が「偽装離婚」をして、投機目的で、1軒目と同じ条件で2軒目の住宅を購入しようとしているのだ。不動産価格の上昇を 抑制するには、こうした「偽装離婚」の増加について、なんらかの措置をとる必要があるだろう。 また、不動産価格の上昇が顕著となっている北京(2010年4月の不動産販売価格上昇率は前年比+14.7%)、上海(同 +11.6%)、深セン(同+17.9%)、重慶(同+11.6%)の4都市については(図表2)、新たに「不動産税」を導入するといった 構想も出てきている。 一方、中国人民銀行は、金融機関に対し、不動産融資抑制を指示する通達を出すなど、いわゆる窓口指導を行っている。 また、2010年5月2日には2010年に入って3度目の預金準備率の引き上げを発表したが(5月10日から実施)、これも不動 産融資の抑制が主な狙いだ。 こうした個別・ミクロ的な政策効果の浸透によって、不動産バブルの生成と崩壊は避けられる可能性が高い。最近の不動 産価格の高騰は投機マネーの流入が主要因だが、中国の不動産価格の上昇には、基本的なところで居住用の不動産を購 入するという実需が含まれている。したがって、投機マネーの流入が抑制されても、中長期的なスパンでみれば、不動産価 格は実需の拡大に沿う形で上昇トレンドで推移していくとみられる。 図表1 中国主要70都市の不動産販売価格 図表2 主要都市の不動産販売価格 (2010年4月) (前年比、%) 20 (前年比、%) 14 12 18 10 16 14 8 12 6 10 4 8 2 6 0 4 -2 2 0 -4 07 08 09 (出所)中国国家統計局資料よりBRICs経済研究所作成 10 (年) 深セン 北京 上海 重慶 (出所)中国国家統計局資料よりBRICs経済研究所作成 本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力により 作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会 社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経 済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲 載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆するものではありません。 3
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