2010年10月号 - JPモルガン・アセット・マネジメント

BRICS マンスリー・レター
お客様用資料
2010年10月号
筆者のご紹介
門倉 貴史 (かどくら・たかし)
BRICs経済研究所 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、1995年に浜銀総合研究所入社。
社団法人日本経済研究センター、東南アジア研究所(シンガポー
ル)出向、第一生命経済研究経済調査部主任エコノミストを経て、
2005年より現職。同志社大学大学院非常勤講師。専門はアジア
やBRICs等の新興国経済のほか、多岐にわたる。
主な著書
「図説BRICs経済」(日本経済新聞社)
「『今のインド』がわかる本」(三笠書房)
「日本人が知らなかったVISTA株」(翔泳社)
「イスラム金融入門~世界マネーの新潮流」(幻冬舎新書)など多数。
投資信託は一般的に、株式、債券等様々な有価証券へ投資します。有価証券の価格は市場環境、有
価証券の発行会社の業績、財務状況等により価格が変動するため、投資信託の基準価額も変動し、
損失を被ることがあります。また、外貨建の資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被るこ
とがあります。そのため、投資信託は元本が保証されているものではありません。
ご注意していただきたい事項について
• 投資信託によっては、海外の証券取引所の休業日等に、取得、換金の申込の受付を行わない場合があります。
• 投資信託によっては、クローズド期間として、原則として換金が行えない期間が設けられていることや、1回の解約金額
に制限が設けられている場合があります。
• 分配金の額は、投資信託の運用状況等により委託会社が決定するものであり、将来分配金の額が減額されることや、
分配金が支払われないことがあります。
ファンドの諸費用について
投資信託では、一般的に以下のような手数料がかかります。手数料率はファンドによって異なり、下記以外の手数料
がかかること、または、一部の手数料がかからない場合もあるため、詳細は各ファンドの販売会社へお問い合わせい
ただくか、各ファンドの投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
投資信託の取得時:申込手数料(上限 3.675%(税抜3.5%))
投資信託の換金時:換金(解約)手数料、信託財産留保額(上限1.0%)
投資信託の保有時:信託報酬(上限 1.995%(税抜1.9%))、監査費用
*費用の料率につきましては、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が設定・運用するすべての公募投資信託の
うち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。
信託報酬、監査費用は、信託財産の中から日々控除され、間接的に受益者の負担となります。その他に有価証券売
買時の売買委託手数料、外貨建資産の保管費用、信託財産における租税費用等が実費としてかかります。また、他
の投資信託へ投資する投資信託の場合には、当該投資信託において上記の費用がかかることがあります。また、一
定の条件のもと目論見書の印刷に要する実費相当額が、信託財産中から支払われる場合があります。
金融商品取引業者等について
投資信託委託会社:JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号
加入協会:日本証券業協会、社団法人投資信託協会、社団法人日本証券投資顧問業協会
本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力
により作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券
の販売会社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社
およびBRICs経済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがありま
す。また本資料に掲載されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆
するものではありません。
1
BRICS マンスリー・レター
お客様用資料
2010年10月号
今月のコラム
2010年9月9日、日本とインドの両政府は、EPA(経済連携協定)を結ぶことについて大筋で合意した。EPAは、FTA(自由貿
易協定、輸出入にかかる関税やサービス業の規制をなくすことでモノやサービスの取引を自由化する協定)の内容に加えて、
投資や人的交流の自由化、知的財産権の保護といった分野も国際協定の対象にするというものだ。いわば、拡大版のFTAで
ある。日本はすでに11カ国・地域との間でEPAを発効・署名済みで、インドとの締結は12件目となる。日印EPA締結の交渉は
2007年に開始され、累計13回の会合を経て、今回の合意に至った。
日印のEPAは2011年内に正式発効する見込みで、発効してから10年で貿易総額の94%にあたる分野で関税が原則撤廃さ
れる。日本がインドとのEPA締結を急いだのは、韓国が日本よりも早い2010年1月にインドとの間でFTAを発効させたというこ
とがある。韓国は日本と同様に、将来の大国であるインドとの貿易・投資関係の強化を図っている。韓国とインドの関税障壁が
撤廃される一方で、日本とインドの間に関税障壁が残っていると競争上、著しく不利になってしまう恐れがあった。
今回のEPA締結によって恩恵を受けると考えられる日本の産業は、自動車部品メーカーや鉄鋼メーカー、電気機械メーカー
だ。インド側の貿易統計で見ると、日本の対印輸出品目(2009年度の金額ベース)で輸送機器は13.3%、鉄鋼は12.9%、電子
機器は10.7%を占めている(図表1参照)。
とくに、EPA締結で自動車部品の関税が撤廃されることのメリットは大きい。インド国内では、まだ部品などのサポーティン
グ・インダストリーが十分に発達していないため、日本の自動車メーカー各社は、これまで一部の部品を日本本国から調達して
いたのだが、関税障壁によって部品の調達コストが高くなり、価格競争上、不利になっていた。インドでは国内外の自動車メー
カーによる価格競争が激化しているので、EPA締結による関税撤廃で部品調達コストが下がれば、低価格車の製造・販売が
容易になる。
一方、インドの産業でEPA締結の恩恵を受けると考えられるのは、製薬産業である。今回のEPA締結にあたっては、インド
側が後発(ジェネリック)医薬品審査の簡素化を強く求めていたが、その点について、日本は認可手続きの迅速化を約束した。
日本では医薬品の品質に対する要求水準が高いため、EPA発効の効果によってインドのジェネリック医薬品の対日輸出が大
きく伸びるとは限らないが、日本市場への進出が容易になることを通じて、インドの製薬会社による日本の製薬会社の買収案
件が増える可能性はあるだろう。
2000年代以降、日印貿易は拡大傾向で推移してきたが、貿易総額(輸出金額+輸入金額)でみると、日印貿易は日中貿易
に比べて大きく見劣りしていた。2009年の日印の貿易総額は日中貿易総額の4.3%にすぎない。このことは、逆にみれば日印
貿易の拡大余地が大きいことを意味しており、今回のEPA締結によって日印の貿易総額が飛躍的に拡大することが期待され
る。ただし、今回のEPA締結では解決すべき課題も残った。インド側は日本に対して看護士や介護士を受け入れるように迫っ
たのだが、日本は資格制度や就労制度の見直しに手をつけておらず、この点については協議が先送りされることとなった。
ところで、日本はEPAとは別に、インドとの間で原子力協定を締結する交渉も進めている。原子力協定が締結されれば、日
本の原発インフラをインドに輸出することが可能になり、関連業界は大きな恩恵を受けると考えられる。慢性的な電力不足に直
面するインドも原子力発電の分野で日本の先端技術を導入することを切望している。しかし、原子力協定の締結交渉は、インド
が核拡散防止条約(NPT)に未加盟であるため、難航しているというのが実情である。
図表1 インドの日本からの輸入上位品目(2009年度)
順位
品目
構成比(%)
図表2
インドの日本への輸出上位品目(2009年度)
順位
品目
構成比(%)
1
非電気式機械
23.4
1
原油・石油製品
2
輸送機器
13.3
2
鉄鉱石
8.8
3
鉄鋼
12.9
3
宝石・宝飾品
7.2
4
電子機器
10.7
4
海産物
6.9
5
特殊機器・光学製品
4.9
5
大豆絞り油
4.8
金額(米ドル)ベース
(出所)ジェトロ資料よりBRICs経済研究所作成
33.2
金額(米ドル)ベース
(出所)ジェトロ資料よりBRICs経済研究所作成
本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力により
作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会
社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経
済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲載
されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆するものではありません。
2
BRICS マンスリー・レター
お客様用資料
2010年10月号
今月のコラム
日本を含めた先進国のグループでは離婚件数が高水準で推移しているが、近年ではBRICs(ブラジル、ロシア、インド、
中国)をはじめとする有力新興国グループでも離婚件数が増加するようになった。たとえば、中国民政部の統計によると、
2008年の中国の離婚件数は前年比8.1%増の226万9000組となった。1985年の離婚件数は、わずか45万8000組だったの
で、離婚件数は四半世紀弱の間に約5倍に膨らんだ計算になる。地域別にみると、北京や上海など沿岸の大都市部で離婚
率が高い。
中国で離婚するカップルが増えるようになった要因のひとつに、2001年に「婚姻法」が改正されたことがある。それまでの
「婚姻法」では、離婚後の財産分配に関する明確な規定がなかったため、離婚後の生活が保障されず、夫婦生活がうまくい
かなくても離婚に踏み切ることが難しかった。しかし、改正「婚姻法」では、離婚後の財産分配に関する規定が明確に示され
ており、それにより離婚することが容易になった。また、離婚に際して、職場や町内会の証明書などをつける必要がなくなり、
離婚の手続きも簡素化されている。さらに中国社会の価値観の変化によって、離婚した人に対する偏見が弱くなったことも
離婚を容易にさせている側面がある。
中国では熟年離婚は少なく、若い世代で離婚するケースが多いのだが、これには1980年代から導入された「一人っ子政
策」が影響している。一人っ子世代は、親に過保護に育てられ、「思いやりが足りない」、「寛容性がない」「自我意識が強い」
などと指摘されている。お互いにわがままに育てられてきたため、結婚しても、ちょっとしたことが我慢できず、夫婦生活に亀
裂が生じ、すぐに離婚に走るという流れになるのだ。
一方、南米のブラジルにおいても、近年、離婚件数が増加している。南米諸国は、キリスト教のカトリックが広く普及してい
るということもあって、世界的にみて離婚が少ない地域であったのだが、状況は変わりつつある。国際連合の資料によると、
2001年のブラジルの離婚件数は12万2791件だったが、2007年には18万455件まで増加した(図表1)。
結婚してからの経過年数別に離婚件数を見ると、2007年は結婚後20年以上経過した夫婦の離婚が全体の39.9%を占め
た(図表2参照)。次に多いのが結婚後10~14年での離婚で、全体の16.2%を占める。構成比でみれば、熟年夫婦の離婚
が圧倒的に多いが、比較的若い世代の夫婦でも離婚件数は着実に増加している。
ブラジルで離婚件数が増えている背景には、法改正の影響がある。ブラジルでは07年1月に法令が改正され、それまで5年
を必要としていた離婚手続きが2年にまで短縮されることになった。離婚手続きが容易になったことが、離婚の増加につな
がっていると考えられる。
離婚件数が増えているもうひとつの理由として、テレビの連続ドラマの影響も指摘されている。米州開発銀行(IDB)が
2009年1月に発表した調査レポートによると、「ブラジル国内で放送される連続ドラマの主人公が未婚であったり、離婚して
いたりすると、実際の離婚率は平均0.1%上昇する」といった関係が観察されるという。ブラジルで放送されるドラマは女性の
結婚観や家族観にも無視できない影響を及ぼしているということだ。
図表1 ブラジルの離婚件数
図表2 結婚後何年で離婚したか
(2007年、ブラジル)
(10万件)
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
20年以上
39.9%
1.0
0.8
不明 3年未満 3年 4年
2.2% 3.3%
5年
0.5%
3.8% 3.8% 6年
4.1% 7年
4.3%
8年
3.8%
0.6
9年
3.6%
0.4
0.2
0.0
2003
2004
2005
2006
2007 (年)
(出所)国際連合資料よりBRICs経済研究所作成
15~19年
14.5%
10~14年
16.2%
(出所)国際連合資料よりBRICs経済研究所作成
本資料はJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が、BRICS諸国の政治、経済、文化等の情報を提供するために、BRICs経済研究所の協力により
作成したものです。本資料は特定のファンドもしくは個別銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。また、当社が特定の有価証券の販売会
社として直接説明するために作成したものではありません。本資料は信頼性が高いとみなす情報に基づいて作成されていますが、当社およびBRICs経
済研究所がその情報の正確性を保証するものではありません。また、当該意見・見通しは将来予告なしに変更されることがあります。また本資料に掲載
されている個別銘柄については、その売買の推奨を意図したものではなく、また当社が運用するファンドへの組入れを示唆するものではありません。
3