行政におけるDevOpsの 適用可能性を考える

行政におけるDevOpsの
適用可能性を考える
日本ITガバナンス協会(ITGI Japan)
副理事長
梶本政利
はじめに
• 本プレゼンテーションは、ISACAから公開されている
「DevOps Overview」(邦訳「DevOps概説」)をベースと
して、日本の行政における実情から考察したものである。
• 言うまでもなく、「DevOps」はDevelopmentとOperation
という単語の合成語である。ツールでもなく、プロセス
でもない。
• 開発部門と運用部門との間の分断をなくし、開発を効率
化させ、運用と捕手を容易にするためのアイデアを集め
たものがDevOpsと言える。
• キーはアジャイルである。
政府における現状への疑問
• 機能変更や追加が発生した場合に、運用/保守における
サービスマネジメントの機能から、開発へのフィード
バックはできているか?
• ある情報システムが本番稼動を開始してから更改の時期
を迎えるまで、全く機能変更、機能追加、脆弱性対策等
を必要とせずに稼動するケースは存在するであろうか?
• 主流の開発手法であるウォーターフォール型の開発の前
提である「要件は設計・開発の前までに全て確定可能で
ある。」あるいは「要件は一旦定義した後に変更される
ことはない。」といったことは真実であろうか?
政府における現状への疑問(続き)
• 企画されてから本番稼動までの期間に、その情報システ
ムが前提としている環境や制度は不変であろうか?
• 政策目的・目標を達成するために、その情報システムは
十分かつ迅速に完成し、運用に供されているであろう
か?
• 企画から運用までにかかるコストは十分に引き下げられ
ているであろうか?
行政機関の置かれている環境は?
• 今日の大きく変化する社会経済環境の中で、行政サービ
スの高度化は宿命。
• これまで以上に迅速で、より改善された機能、より費用
対効果の高い行政サービスに対する国民/住民からの新
たな要求に適応できるように、行政機関は変化しなけれ
ばならない。
• 行政サービスは強くITに依存している。
• 財政健全化
今、求められていること
• これまで歴史的に独立し、かつ分離された機能であった
ソフトウェア開発と運用との間のコミュニケーションの
橋渡しをすること。
• ソフトウェア開発のライフサイクルをサポートする全て
の機能に対してアジャイルの原則を適用することが必要。
• 最終的な目標は、国民/住民及び政策立案者の要求に適
合させるために行政サービスの効率性を改善し、より高
い価値を提供することにある。
アプローチの違い
古典的アプローチ
DevOpsのアプローチ
ISACAの文献「DevOps概要」から引用
政府のITマネジメント
(「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン」の記載)
プロジェクトの工程レビュー(第3編第2章2)
プロジェクトの遂行
システム監査の
実施(第3編第10章)
予算要求(第 調達(第3
3編第3章)
編第6章)
プロジェクト
計画書等の
作成
業務の見直
し(第3編第4
(第3編第2章1)
章)
要件定義
(第3編第5章)
プロジェクト
計画書等の
改定の検討
(第3編第2章4)
設計・開
発(第3編
第7章)
業務の運営と改
善(第3編第8章)
運用及び保守
(第3編第9章)
プロジェクト進捗及び実績報告(第3編第2章3)
情報シ
ステム
の見直
し又は
廃止(第
3編第11
章)
ハードウェ
ア,ソフトウェ
ア製品等
の廃棄
又は再
利用
(第3編第
12章)
プロジェク
トの
完了
(第3編第
2章5)
政府におけるプロジェクト体制
(例)
(「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン」の第3編第2章に関する
実務手引書の記載)
情報化推進委員会
プロジェクト
推進会議
PMO
関係機関
PJMO
内閣官房、総務省等
PJMO
※他のプロジェクト
プロジェクト管理
支援事業者
要件定義書作成
支援事業者
設計・開発
事業者
ハードウェア等
環境構築事業者
運用事業者
S/W等
保守事業者
H/W等
保守事業者
DevOpsの成功要因
• コラボレーション
• クラウドと仮想化
• 自動化
• バージョン管理
• 構成管理
• 組織文化
行政におけるIT組織にかかる圧力
• 政策的要求の高度化がもたらす圧力
• IT技術の変革がもたらす圧力
• 開発手法の高度化がもたらす圧力
• より高いサービスレベル、よりセキュアな環境等の実現
圧力
行政サービス提供に関するDevOps
の価値
• 行政サービス提供開始までの時間の短縮
• 効用の早期刈り取り
• 行政サービス提供能力の向上
• 品質の向上
• ステークホルダー満足度の向上
• ITの無駄の削減
• 事業者の遂行能力の改善
• 人的要因に起因するリスクの低減
DevOpsを行政に導入する上の課題
• 新たな手法を導入することへの抵抗
• 既存の情報システム
• 組織体制
• 予算管理
• 調達管理
新たなKPIの必要性
• 本番導入の頻度
• 本番導入のスピード
• 本番導入の成功率
• 本番導入が失敗した後に、いかに迅速にサービスを復旧
させたか
• 組織文化の改善
終わりに
• 解決すべき課題は多く、民間で取り組みを開始するより
もハードルは高いが、DevOpsの導入は可能であるばかり
ではなく、導入すべきである。