全圧力 - 埼玉工業大学

埼玉工業大学
テーマ J04:
機械工学学習支援セミナー(小西克享)
水圧力(全圧力)と圧力中心 1/6
水圧力(全圧力)と圧力中心
1.長方形板の水圧力(全圧力)と圧力中心
水中に没した物体には水深に比例した水の圧力(水圧)が作用します.このとき,物体
には水圧に物体の面積をかけた値に等しい力が加わることになります.この力を水圧力と
いい,全圧力や全水圧と呼ぶ場合もあります.物体が薄い平板で水平に水没している場合,
水圧は物体表面のどの位置でも同じ値となりますが,平板が傾いて水没している場合には,
物体表面の位置によって水深が異なるため,作用する水圧も異なることになります.
図に示すように,長方形の板を水中に沈めた場合,この板には,面に垂直に水圧 p [Pa]
が作用し,水の密度を [kg/m3],重力加速度を g [m/s2],水深を y [m]とすると,水圧の大
きさは
p  gy [Pa]
で表されます.
参考:大気圧 pa [Pa]が水面を押すため,物体に作用する絶対圧力は大気圧が加算され
ps  pa  gh [Pa]
と表されます.
水圧の分布は直線的なため,水圧の平均値は
1 
h
h 

p  g  yG    g  yG    gyG
2 
2
2 

[Pa]
となり,この値は板の重心(図心)G における水圧に一致します.
pG  p
この板に作用する力(水圧力)F は pG に板の面積 A を乗じたものとなり,
F  pG A  gyG  bh  gbhyG [N]
で表されます.この水圧力を板の 1 点(作用点)に作用する力として代表させる場合,こ
の作用点 C を圧力中心といいます.
水面
水圧力 F
G
C
x
h
b
y
板の両側から水圧がかかる.
(左側のみ表示)
圧力中心の位置を求めるには,モーメントのつり合いを考えます.水圧による x 軸回り
のモーメント M [Nm]は
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h
2
h
yG 
2
M 
yG 
h
2
h
yG 
2
 pbdy y  
yG 
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h
2
h
yG 
2
gybdy y  gb 
yG 
水圧力(全圧力)と圧力中心 2/6
y 2 dy
h
yG 
3
3

h 
h  
1 3  2 1
 gb  y 
 gb yG     yG   
2 
2  

 3  yG  h 3
2
2
2
 3
1
h h3   3
h h3 
2 h
2 h
 gb yG  3 yG  3 yG     yG  3 yG  3 yG  
3
2
4
8 
2
4
8 




1
h3  1
h3  1
h2 
2 h
2
2
 gb 6 yG  2   gb 3 yG h    gbh 3 yG  
3
2
8 3
4 3
4



 2 h2 
 gbh yG   Nm
12 

このモーメントが圧力中心 C に作用する水圧力によるモーメントは
M  FyC  gbhyG yC [Nm]
両者を等しくおくと,
 2 h2 
gbh yG    gbhyG yC
12 

 2 h2 
 yG    yG yC
12 

h2
2
yG 
2
12  y  h
 yC 
G
yG
12 yG
m
となります.
例題.水中に,b=1.00m,h=2.00m の長方形板がおかれ,c=1.00m のとき,水圧力の大きさ
および圧力中心の位置を求めよ.ただし,水の密度は 1000kg/m3,重力加速度 g は 9.81m/s2
とする.
解答
重心(図心)までの距離は
yG  c 
h
2.00
 1.00 
 2.00
2
2
[m]
水圧力の大きさは,
F  gbhyG  1000  9.811.00  2.00  2.00  39240  3.920 104
圧力中心の位置
yC  yG 
h2
2.002
 2.00 
 2.1666  2.17 [m]
12 yG
12  2.00
2.非軸対象の板の水圧力と圧力中心
[N]
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水圧力(全圧力)と圧力中心 3/6
非軸対象の板に対して,水圧力と圧力中心を求めます.板の微小面積を dA とすると,水
圧力は
F   pdA   gydA  g  ydA [N]
A
A
A
となります.  ydA は断面 1 次モーメントであり,
A

A
ydA  AyG
と表せます.そこで,水圧力は
F  gAyG [N]
水面
x
水圧力 F
y
y
板の両側から水圧がかかる.
(左側のみ表示)
板の微小面積を dA とすると,水圧による x 軸回りのモーメントは
M    pdAy   gydAy  g  y 2 dA
A
A
A
と表されます.ここで, y 2dA は x 軸回りの断面 2 次モーメント I です.物体の面積を A,
A
回転半径を k とすると,水圧による x 軸回りのモーメントは
M    pdAy   gydAy  g  y 2 dA
A
A
A
断面 2 次モーメントの性質より,

I   y 2dA  IG  AyG  Ak 2  AyG  A k 2  yG
2
A
2
2

なので,

M  gA k 2  yG

と表すことができます.水圧力による x 軸回りのモーメントは
M  FyC  gAyG yC
モーメントのつり合いを考えると,圧力中心の位置は
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
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水圧力(全圧力)と圧力中心 4/6

gA k 2  yG 2  gAyG yC
k  yG
k2
 yC 
 yG 
yG
yG
2
2
m
となります.
物体の微小面積を dA とすると,水圧による y 軸回りのモーメントは
M    pdAx   gydAx  g  xydA
A
A
A
と表されます.水圧力による y 軸回りのモーメントは
M  FxC  gAyG xC
モーメントのつり合いを考えると,圧力中心の位置は
g  xydA  gAyG xC
A
 xC 
 xydA m
A
AyG
となります.
例題.図に示すように,水中に辺 a=1.00m の直角二等辺三角形板がおかれている.水面か
ら重心(図心)までの距離が 2.00m のとき,水圧力の大きさおよび圧力中心の位置を求め
よ.ただし,水の密度は 1000kg/m3,重力加速度 g は 9.81m/s2 とする.
水面
x
c
a
水圧力 F
G
C
a
y
y
板の両側から水圧がかかる.
(左側のみ表示)
解答
水圧力の大きさは,
1
1
F  gAyG  g  a 2  yG  ga 2 yG
2
2
1
 1000  9.811.002  2.00  9810  9.81103
2
回転半径は
N
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水圧力(全圧力)と圧力中心 5/6
a
k
[m]
2 3
圧力中心の y 方向の位置は
yC  yG 
k2
a2
2.002
 yG 
 2.00 
 2.1666  2.17 [m]
yG
12 yG
12  2.00
x 方向の位置は

xC 
A
xydA
AyG


ca
c
 yc xydx dy
 0

1 2
a yG
2
ここで,分子は
I   xydA  
A
y c
ca
c

2
 y c xydx dy  ca y  x  dy
c  2 
 0

0

1 ca
2
y  y  c  dy

c
2
1 ca 3
  y  2cy 2  c 2 y dx
2 c



ca
1 1
2
1

  y 4  cy 3  c 2 y 2 
2 4
3
2
c






1
c  a 4  c 4  1 c c  a 3  c 3  1 c 2 c  a 2  c 2
8
3
4
1
 c 4  4c 3a  6c 2 a 2  4ca 3  a 4  c 4
8
1
1
 c c 3  3c 2 a  3ca 2  a 3  c 3  c 2 c 2  2ca  a 2  c 2
3
4
3
1
1  
1
1
1
 1

  c 3a  c 2 a 2  ca 3  a 4   c 3a  c 2 a 2  ca 3    c 3a  c 2 a 2 
2
4
2
8
3
2
4

 
 

1
1
3
1
1
1
1
 c 3a  c 3a  c 3a  c 2 a 2  c 2 a 2  c 2 a 2  ca 3  ca 3  a 4
2
2
4
4
2
3
8
1
1
1 
1
 ca 3  a 4  a 3  c  a 
6
8
8 
6







さらに,三角形の重心の位置は,底辺から 1/3 のところにあるので
2
c  yG  a
3
となり,式に代入すると
1 
2  1 
1
1 
1 
1
1
I  a 3   yG  a   a   a 3  yG  a  a   a 3  yG  a 
3  8 
9
8 
72 
6
6
6 
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水圧力(全圧力)と圧力中心 6/6
よって
1 
1
a 3  yG  a 
a2
6
72  a
xC  
 
1 2
3 36 yG
a yG
2
となります.
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/TotalWaterPressure.pdf
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