チャプター(5) 身体の発育 身体の発育を測定する必要性 1.BACIC EDUCATION レベルの学生は、発育が著しいので、年齢にそって発育しているかどうかを測定し、評価 する必要がある。年齢に応じて発育するからこそ健康で、利口な子どもとして勉強ができる。年齢に対して発育 が遅れている場合には、栄養状態が不良であったり、何かの病気であったりすることが分かったならば必要な 支援(栄養補給など)、ケア(指導)を早期にすることができる。 病気があるかどうかチェックして知ることができ、 早めに治療できる。 2.BACIC EDUCATION レベルの全学生に身体測定を学年のはじめ、あるいは保健週間(8 月の第 2 週目)に 1 回、学年の終わり頃に 1 回、合計 2 回できれば、1 人 1 人の年内の身体発育を比べることが出来、発育が遅れ ている子どものために必要な指導や手当ができます。全校生徒に出来ない場合には、特に発育が正常でない 子などを優先して測定する。測定する時には、測定する人、記録する人の 2 名で行う。 身体測定の種類と使用する道具 3.身体の発育のいろいろな計測と使う用具は以下のとおりです。 計測の種類 計測の道具 (a)立って身長を測る → 身長測定棒あるいはメジャー (b)体重計測 → 体重計 (c)皮下脂肪の計測 → 皮下脂肪厚計キャリパー (d)身体の周囲の計測 → ロールテープ 行っている 2 つの測定 4.小等部校で身長と体重測定を毎年行っています。その 2 つの計測をきちんと正しく出来るように、測定方法、 順番を続けて示します。皮下脂肪の厚さの計測と、周径計測の方法を Appendix (A)で示します。 15 身長測定 5.子どもの身長を以下のとおり測る事が必要です。 (a)身長を測るため床が水平な場所を選ぶ。 (b)測定を受ける子どもより高い壁、あるいは床と直角な柱にメジャーを立て、垂直に貼り付ける。メジャーと床は 90°にし、メジャーと床があたる場所を 0 とする(図 1)。 (c)身長を正確に測るため、直角形定規、プラスチック、あるいは板を頭に当てて計測する。定規は、縦 15cm、 横 20cm あれば良い(図 2)。 図2 図1 (d)計測される生徒は裸足になり、背中と尻とかかと、後頭部を、計測用メジャーが貼ってある壁を背にして直立 する。その時、両腕を身体の側面に垂らす。両足の踵を密着させ、足先を 60°に開く(図 3)。頭を耳、目に水 平にさせ、耳珠点と眼窩点を結んだ面を水平に保つこと(図 4)。 図4 図3 (e)計測する人は、生徒の目の前に立ち、生徒の頭の一番高いところを直角定規を立てて当て、 身長の値(cm、mm)を読み上げ、記録する人に伝えます。 16 体重測定 6.体重を知るため、体重計で計測する。必要以外の衣服を脱がせる。衣服を着たまま計る場合には、合計体重 から衣服の重さを引く。 (a)体重計を箱から出して、床に、静かに、動かないように置きます。体重計の下に、柔らかい物、段ボールなど を敷いてはいけない。 (b)生徒に必要のない衣服を脱がせ、アクセサリーは外させる。 (c)生徒に前を見させ、体重計を見下ろさないようにする。 (d)計測する教員が生徒の体重を記録する人に伝える。 発育基準評価チャート 7. この標準値は、ミャンマーにおいて非常に多数のデータを収集し、その結果を統計解析して求められたもの です。この5歳から19歳までの発育評価のチャートによって、科学的な発育栄養評価をしてください。 三角 定規などをチャートにあてて、2 つの軸の接点の値を読んでください。 17 標準値 (チャート)の読み方と解釈 図 A と D 「身長と体重の組み合わせグラフ」 8.このチャートを使って、ミャンマーの 5 歳から 19 歳までの子供の体格(肥満、やせ)を評価・判定します。横軸 に身長、縦軸に体重をとり、二つの測定値の組み合わせで、身長に対して体重がどれくらい軽いか、あるいは重 いか、を評価・判定します。図 A と D では、年齢は考慮しません。評価・判定の基準は、0% ~3%未満(やせす ぎ)、3% ~ 10%未満(やせ)、10% ~ 90%未満(正常(ふつう))、90% ~ 97%未満(肥満)、97% ~ 100%(非常に肥満)と 5 段階で評価・判定します。たとえば例 1~ 例 3 の子供は、次のように評価・判定しま す。 例 1:身長が 140cm で 体重が 30kg の男子は、チャートで評価すると、25% ~ 50%(未満)のゾーンに入って います。 この子は平均よりはすこし痩せていますが、「正常」と評価・判定します。 例 2: 145cm の男子が体重は 25kg なら 0% ~3%(未満)のゾーンに入っています。「やせすぎ」と評価・判定 します。 さらにその男子が 150cmに成長しても体重が 32kg ならば 3% ~ 10%(未満)のゾーンに入っており、「やせ」と 評価・判定され、栄養や健康に問題があると考えます。 例 3:150cm の身長の男子の体重が 58kg ならば、97% ~100%ですから、身長に対して体重が重過ぎます。 つまり「非常に肥満」と評価・判定します。この場合は健康上の問題が起きやすいですから、運動の指導や食生 活の改善が必要です。 図 B,C,E,F 「年齢別の身長と体重」について 9.このチャートは年齢を横軸に、身長(または体重)を縦軸にして、年令に対するその子の発育状態を評価・判 定します。 たとえば例 4~ 例 5 の子供は、次のように評価・判定します。 例 4:10 歳のある男子の身長が 115cm だとすると→その子の値は 0% ~ 3%(未満)のゾーンに入っていま す。 つまり、その子は同年齢(10 歳)の子供 100 人のうちで、身長が低い方から 1 番~3 番未満(3%未満)にはいりま すので、「非常に背が低い」、と評価されます。成長に問題があるようです。 例 5:10 歳のある男子の身長が 140cm だったら→90% ~ 97%(未満)ゾーンに入ります。100 人の同年齢の 中で小さい方から数えると 90 番 ~97 番未満(90% ~ 97%未満)に入ります。その年齢では「かなり背が高い」 と評価・判定されます。 身長、体重のどちらの項目でも、0% ~ 3%(未満)は、「非常に背が低い」「非常に体重が軽い」と評価・判定さ れます。 その様な子供については、健康状態や生活習慣に何か異常がないか、栄養の不足や運動の不足、何か病気を 持っていないかと言うことを注意してください。 反対に 97%~ 100%は、「非常に背が高い」「非常に体重が重い」と評価・判定します。 18 10.ミャンマー児童生徒の発育栄養評価チャート(OS チャート)について このチャートはミャンマーの子どもたち 17,000 人の測定値をもとに作製された。 性別、年齢別に集められたデータを整理すると、Fig.1のような distribution 分布(Normal distribution)になる。 Fig.1 11. この Fig.1を、男女別に、5才から19才まで並べて、Fig.2が作られ、さらにこれを曲線にした ものが Fig.3のチャートである。 Fig.2 19 12. (a) Chart A~F で3%以下の子どもに対する指導 3%以下とは 100 人のうち小さいほうから 3 人はいるということで、大変、小さい子供です。なかには、強いストレ スや病気によって発育がおさえられている子供がいるかもしれません。従って、教師がその子供の健康状態や、 生活、学校での行動、家庭の様子を知って、適切に相談にのり指導してください。 特に病気がないか、食事をしていないか、運動しないか、友人と問題がないかなどは重要です。もし問題が見 つかったら解決法を HQC で考えましょう。病気がないかどうか医師に相談してもらうことも考えましょう。栄養不良 のうたがいがある子どもには特にタンパク質やビタミン D、カルシウムを多く含んだ食物をとるようにします。夜は 早く寝て朝早く起き、運動をよくするなどの規則正しい生活を指導しましょう。(皮下脂肪のうすい子供の場合も対 応は同じです。) (b)身長 VS 体重で 97%以上の子どもの指導 100 人の子供のうちで 97%以上に位置づく(身長に対して)体重が重い子どもという意味です。肥満児ということ になります。この子供の対応は、なぜ太っているかを HQC のフィッシュボーン図で考えてみます。食事、運動不 足、不規則な生活、親の甘やかしやおやつのとりすぎなどチェックします。そしてチェックリストをつくって毎日チェ ックしてゆきます。(皮下脂肪の厚い子供の対応も同じです。) (c) その子どもたちの身長と体重測定を 3 カ月に 1 回チェックし、状態を親に知らせて、相談し、アドバイスする。 (d)身長と体重測定を来年も続けて、発育状態をチェックして、必要なことを教えて、補わなければならない。 (e)「健康サプリメント」と書かれた子どもたちに、学校保健医、あるいは保健所の関係者の協力で 健康診断を行う。 (f)寄生虫症、結核病とその他、体内外の病気を検査して、医師の治療とアドバイスに従わせる。 (g)病気のない場合には、栄養満点になるよう食品 3 つのグループ(果物、野菜、豆、卵、肉、魚)などをバランス よく食べるよう指導する。(●3 つのグループではない) (h)上記(b)~(g)(●g を、f に直す。)の事業を行う時、親たちも参加させて教育する。 練習すること 13.小学校の子ども(GRADE 1)を 10 人適当に選んで、身長と体重を測定し、発育基準に達した子ども、普通に 発育した子ども、発育不良の子ども、などと分別して評価する。 例 学生氏名 年齢 年 月 身長(cm) 現在 体重(kg) 基準の% 20 現在 基準の% 検討 Appendix (A) 皮下脂肪の厚さを測る 皮下脂肪の厚さを測る方法 1.皮下脂肪の厚さを測るには、そのための道具を使わなければならない。 (a)決められた部位の脂肪の厚さを正確に測るため、図 1 のように測定される子どもの身体に事前にマーカーな どで印をつける。 (b)計測する人は、計測される子どもの身体につけてある印を中心にして、両横に 1cm 位余分に左手の親指と 人差し指を使ってつまみあげる。つまんだ親指と人差し指は、皮下脂肪をその下にある筋肉から完全につま みあげることが出来るよう、十分に離す。 (c)計測する人がキャリパー(図 2)を使って、図 3 のように皮下脂肪計を握り、目盛りを mm まで読み取る。 (d)服の上から計測しなければならない場合、図 4 のように脂肪の厚さと服の厚さを測って、合計の厚さから服の 厚さを引く。 図1 図2 図3 図4 いろいろな部分の測定方法 2.上腕背部…子どもは肩と腕の力を抜き、両腕を下げる。計測する人は後方から図 5 のように決められた腕の 部分をつまんでキャリパーで計測する。 3.肩甲骨下部…子どもは肩と腕の力を抜き、両腕を下げる。計測する人は図 6 のように、子どもの背中の左肩 甲骨の下、45°斜めの筋肉の脂肪の厚さを測る。 図5 図6 21 4.腰骨の上…図 7 のように、測る人は左腰骨の前 45°斜めの脂肪の厚さを測る。 5.お腹の部分…図 8 のように、測る人は子供のへそのそばにある皮下脂肪の厚さを縦につまんで測る。しかし、 へそに触れないように気を付ける。 6.下腿部…測る人は、子どもの横から、下腿部の最も太い位置の内側の脂肪をつまんで測る。 図7 図8 図9 周径 7.胸囲…子どもは立った状態で肩と腕の力を抜き、両腕を下げる。測る人は、乳頭の高さでメジャーを体に沿う ように当てる。後ろ側が下がる場合があるので、他の人の手助けを受ける。女子で下着によって乳頭が確認で きない場合には、最も胸が前に出ている点を測定してもよい。 8.最小胴囲…子どもは立った状態で、肩と腕の力を抜き、両腕を自然に下げる。測る人は、子どもの前の位置 から最も幅が狭い位置を、子どもが息を吐いてから吸うまでの間に測る。 9.殿囲…子どもは立った状態で、肩と腕の力を抜き、両腕を下げる。測る人は、側方からおしりが後方に出てい る高さで、体に沿うようにして測る。 図 10 図 11 図 12 図 13 10.上腕囲…(測れる…腕を下げる)測る人は、図 14 の通り、子どもの左上腕で、側方よりみて最も幅の広い位 置に体に沿うように測る。 22 11.下腿囲…自然に立った状態で、やや脚を広げて立ち、体重は左右均等にかける。測る人は、図 15 の通り、 前方から左下腿の最も太い位置を、体に沿うようにして測る。 図 11 図 12 Skinfold Thickness の判定と指導 12. Chart16 の評価基準を用いてください。特に測定値が 4mm 以下の子どもは栄養不良がうたがわれます。身 長、体重の場合と同じように栄養指導をし、活発に運動するように指導してください。また、測定値が基準値 より大きな子どもは肥満がうたがわれます。脂肪や糖質のとりすぎに注意し、運動をよくするように指導して ください。HQC をつかうと改善できるでしょう。 ミャンマーの子どもの Skinfold Thickness の評価基準 やせ 男 肥満 やせ 女 肥満 each measurement <4mm total <20mm age 5-9 10 - 19 triceps >12mm >15mm other measurements >15mm >18mm total >70mm >85mm each measurement <4mm total <20mm age 5-9 10 - 11 12 - 19 triceps >12mm >15mm >20mm other measurements >15mm >18mm >22mm total >70mm >90mm >105mm 【Chart 16】 23
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