2016年4月28日 ブラジルの金融政策と当面のレアル相場の注目点 ブラジル中銀は6会合連続で政策金利の据え置きを決定。声明文で中銀は早期の利下げには慎重な姿勢を示す。 5月11日頃の上院弾劾決議を受けてテメル暫定政権が発足すれば、ブラジル中銀総裁ポストは交代となる可能性。 3月以降、レアル相場は上昇基調が続く。ブラジル中銀は一時的に為替介入を強化し、為替相場の急変動を抑制。 政権交代期待から海外投資家の資金流入が加速。当面は上院決議やテメル暫定政権の組閣動向が注目される。 図1:ブラジル中銀の政策金利とインフレ率 ブラジル中銀は6会合連続で政策金利据え置き ブラジル中央銀行は4月26-27日(現地時間)の金融政 策委員会(COPOM)において、6会合連続で政策金利を 14.25%で据え置く決定を下しました(図1)。前回3月の委 員会では8名の政策委員のうち2名の委員は政策金利の 引き上げを主張していましたが、今回の委員会では全会 一致で政策金利据え置きが決定されました。 金融政策はインフレ抑制に一定の効果を果たす COPOM声明文では、「委員会では、(統制価格引き上げ 16 にしたインフレ加速にも沈静化の兆しがみられます(図2)。 上回るインフレ期待を考慮すると、柔軟な金融政策の余 地は限られる」との言及もなされ、ブラジル中銀は早期の 利下げにはなお慎重な姿勢を示しています。 ブラジル中銀が集計した市場コンセンサス(4月22日時 点)によれば、政策金利は2016年上半期は14.25%で据 え置かれ、2016年下半期にブラジル中銀が利下げに転じ るとの予想が大勢となっています。 テメル暫定政権での金融政策運営にも注目 また、5月11日頃の上院での弾劾決議でテメル暫定政 権が誕生すれば、ブラジル中銀の総裁ポストは交代する 可能性が高いとみられており、6月以降のCOPOMでは暫 定政権下での金融政策運営にも注目が集まりそうです。 12.00% 11 2016年3月 10 +9.4% 9 2016年末(予) IPCA(前年比) 8 +7.0% 7 2017年末(予) インフレ目標(上限) 4 +5.8% インフレ目標(中心) 3 13 15 14 16 17 (年) (出所)ブラジル中銀、ブラジル地理統計院(IBGE) (期間)政策金利:2013年1月1日~2016年4月27日 拡大消費者物価指数(IPCA):2013年1月~2016年3月 (注)政策金利およびIPCAの点線は市場コンセンサス(4月22日時点) 図2:ブラジルのインフレ率の推移 ブラジル中銀は早期の利下げには慎重な姿勢 もっとも、声明文では「高水準のインフレ率や物価目標を 2017年末(予) 12 融政策は前進したと認識している」と述べられ、ブラジル中 比+9.4%へ鈍化するなど、統制品価格の引き上げを契機 2016年末(予) 13.25% ブラジル中銀 政策金利 13 5 (IPCA)は2016年1月の前年比+10.7%から3月には前年 14.25% 14 6 たとの見方を示しました。実際、拡大消費者物価指数 2016年4月27日 15 に伴う)二次的な物価上昇効果を抑制したという点で、金 銀は過去の利上げがインフレ抑制に一定の効果を果たし (%) 20 (前年比、%) 18 16 14 2016年3月 +10.8% 統制価格指数 12 10 +7.0% 拡大消費者物価指数(IPCA) 8 +5.8% +5.2% +9.4% 6 +7.0% 4 +5.8% +5.0% 2 0 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 (年) (出所)ブラジル中銀、ブラジル地理統計院(IBGE) (期間)2009年1月~2016年3月 (注)点線は市場コンセンサス(4月22日時点)。統制価格指数はガソリ ン価格、電気・通信料金、公共交通料金など統制品目の物価指数。 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種 データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、 将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予 告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作 成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 1 2016年4月28日 図3:レアル相場とブラジル中銀の為替介入 政治動向の進展からレアル高基調が続く 2016年3月以降の政治動向の進展を受けて、レアル相 場は上昇基調が続いています。レアルの対米ドル相場は 足元で1米ドル=3.5レアル前後で推移し、レアルの対円 3.2 3.6 中銀は為替介入強化で為替相場の急変動を抑制 3.8 下院での大統領の弾劾動議が可決された4月17日前 4.0 高圧力が強まり、ブラジル中銀は先物市場での米ドル買 い・レアル売りの為替介入を強化しました(4月11-18日の 間に合計281億米ドル(約3兆円*)規模の介入を実施)。 もっとも、4月19日以降は為替介入は沈静化の傾向に あり、ブラジル中銀の為替介入は大統領の弾劾観測を背 景にした過度な為替相場の変動を抑制することが目的で 32 レアル高 レアル相場 (対円、右軸) 3.4 相場も1レアル=31円前後へ持ち直しています(図3)。 後の局面では、大統領弾劾への観測の高まりからレアル (円) (レアル) 31 レアル安 30 29 4月17日 28 レアル相場 下院での大統領 (対米ドル、左軸、逆目盛) の弾劾動議可決 4.2 (10億米ドル) 10 リバース通貨スワップ実施額 8 27 4月11~18日 合計281億米ドル 6 先物市場での 4 米ドル買い・レアル売り介入 2 0 2月1日 2月15日 2月29日 3月14日 3月28日 4月11日 4月25日 (出所)ブルームバーグ (期間)2016年2月1日~2016年4月27日 あったと考えられます。 図4:海外投資家によるブラジルへの証券投資 政権交代期待から海外からの資金流入が拡大 大統領弾劾への動きが加速した2016年3月には、政権 交代への期待感から海外投資家のブラジルへの資金流 入が加速しました。海外投資家による証券投資(株式・債 券投資)の流入額は、2016年2月の97.0億米ドル(約1.1 兆円*)から3月には253.8億米ドル(約2.8兆円*)へ急増 しました(図4)。ネットでの資金流出入額も3月は16.5億米 ドル(約1,800億円*)の資金流入超となりました。 加えて、2014年以降の大幅なレアル安に伴って、足元 でブラジルの経常赤字が縮小に転じていることも、レアル 相場の持ち直し要因となっていると考えられます(図5)。 (10億米ドル) 30 流入 25 253.8億米ドル 20 流出 15 237.3億米ドル ネット流入 10 5 ネット流出入 0 +16.5億米ドル -5 ネット流出 -10 14年1月 14年7月 15年1月 15年7月 16年1月 (出所)ブラジル中銀 (期間)2014年1月~2016年3月 図5:ブラジルの経常収支とレアル相場 当面は上院決議とテメル政権の組閣動向が注目 海外投資家による資金流出入が活発となっていることか ら、今後も大統領の弾劾手続きや暫定政権発足に関する (レアル) 0.0 (GDP比、%) 3.0 レアル高 2.0 経常収支 (過去12ヵ月累積、左軸) 1.0 0.5 1.0 進展に応じて、為替相場は不安定な値動きが続く可能性 0.0 1.5 があります。当面の政治的な注目は、5月11日頃に予定 -1.0 2.0 -2.0 2.5 -3.0 3.0 される上院での弾劾審議受入に関する決議(過半数の賛 成で大統領は停職処分となり、テメル副大統領が暫定大 -4.0 統領となる)や、その後に見込まれるテメル暫定政権の閣 -5.0 僚人事および主要政策の公表に集まりそうです。 -6.0 (*)換算レート:1米ドル=110円。 3.5 レアルの対米ドル相場 (右軸、逆目盛) レアル安 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 4.0 4.5 16 (年) (出所)ブラジル中銀 (期間)1996年1月~2016年3月 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種 データに基づいて作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、 将来の成績を予測あるいは保証するものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予 告なく変更されることがあります。●この書面及びここに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面に よる同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作 成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 2
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