第10章 施設・設備 【到達目標】 ・これまでの 4 年制薬学部教育の経験を生かし、6 年制薬学部の教育・研究の水準と質を確 保できる体制を整える。 具体的には 5,6 年次生の教育と大学院学生の教育・研究が十分 にできる講義室、通常の実習室、実務実習室の整備を平成 21(2009)年度までに完成するこ とを目標とする。6 年制薬学部を基礎とする大学院博士課程(4 年制)の設置申請に適する教 育・研究に必要な施設・設備を整える。 ・学生の有意義なキャンパスライフを支援するために、食堂、学生談話室、体育施設、学生 部室などの施設の整備と生活環境の向上を目指す。 【現状の説明】 (1)施設・設備等の整備 1)大学・学部、大学院研究科の教育研究目的を実現するための施設・設備等諸条 件の整備状況の適切性 <校地の整備状況> 緑ゆたかな環境のもとで豊かな人間性と科学の心をもつ薬剤師の養成を目的として創立 60 周年を迎えた平成 2(1990)年に世田谷より町田市にキャンパスを移転した。薬科大学と して自然環境と教育・研究設備を兼ね備えたキャンパスである。校地面積は 172,634.0 m2 で、設置基準上必要校地面積(9,600 m2)のおよそ 18 倍もあり、薬用植物園に加えてコンピ ューター管理された薬用植物用温室も整備されている。また、キャンパス内の植物には、植 物学上の分類が表示され、四季を通じて自然に接することのできる環境が整備されている。 <校舎の整備状況> 校舎面積は 38,967 m2 で、設置基準に必要な校舎面積(12,527 m2)を十分に満たしている。 校舎は、研究棟、実習棟、講義棟、センター棟(本館)、「大学基礎データ」 表 36 に示した ように体育館・部室棟から成り、これらは 2 階で 200 m にも及ぶアクセスコリドールにより 結ばれているため、雤天時の移動も容易である。付属棟として温室棟、薬品庫、器具庫があ る。実習講義室・演習室・学生自習室総数は 30 室である。福利厚生棟には、学生寮と同窓 会館がある(「大学基礎データ」表 36 参照)。主要な内訳を表1に示す。 表1 本学の主な建物の構造と面積 建築年 平成 2年 名称 研究棟 実習棟 内訳 構造 面積 鉄筋コンクリート造 地下 1 階 地上 6 階建 同上 地上 5 階建 159 10,308.23 m2 7,059.19 m2 鉄骨鉄筋コンクリート造 講義棟 地上 5 階建 同上 地下 1 階 地上4階建 9,585.90 m2 アリーナ 同上 4,208.43 m2 道場 同上 センター棟 体育館 6,645.92 m2 地上 3 階建 (同棟内 655.40 m2) 鉄筋コンクリート造 921.60 m2 部室棟 部室 付属棟 温室棟 同上 地上 2 階建 764.45 m2 薬品庫 同上 地上 3 階建 171.36 m2 器具庫 同上 地上 2 階建 189.72 m2 焼却施設 同上 地上1階建 105.00 m2 地上 3 階建 以下に主な棟について概説する。 1. センター棟は地下 1 階、地上 4 階建てで, 次のような設備が配置されている。 B1 駐車場(職員、来訪者専用) 、書庫、倉庫 1F 大学事務室、食堂ひまわり(220 席、386 m2) 2F 喫茶、売店(紀伊国屋) 、学生ロビー 3F 図書館 4F 役員室、会議室、法人事務室 2. 講義棟・記念講堂は 5 階建てで、340 席の大講義室(第 1 番教室)のほか、小・中講義室、 セミナールーム、LL 教室がある。中講義室は 1 年次~ 3 年次の学生の自教室が割り当てら れ、室内には学生全員分の個人ロッカーが設置されている。4 階には英語および人文社会の 個人研究室、大学院講義室および非常勤講師控室がある。5 階には、医療薬学教育研究セン ターの一部の教員室、事務室がある。 <教室(講義室、演習室、実習室)等施設・設備の状況> 講義室は 全 22 室で、 「大学基礎データ」表 37 の備考に示されている教室 1~15 は通常の 講義室、他に、LL 教室、小規模講義室としてのセミナールームが第 1~3、4、5-2、7 ゼミと して配備されており、添付「学生便覧」のキャンパス平面図に示されている。講義室、コン ピューター(PC)演習室、学生自習室を含めて利用学生 1 人当り 3 m2 となる。大学院薬学 研究科としての講義室は 2 室(総面積 120 m2、収容定員総数 93 名分)が設置されている。 講義室の使用頻度は 151~200 名収容の各学年の自教室がもっとも多く 33.2%となってい る。これは、301~350 名収容できる教室が 1 つしかなく、学部の必須科目の講義は、当該学 年を 2 クラスに分け同じ教員が 2 度行っていることに起因している。 学部学生の実習室は、面積 485 m2 の 7 室が設けられている。講義室に比べて、コンピュ ーター演習室(収容定員 136 名)を除く実習室は、収容定員 160 名で各種の実習に対応でき 160 ている。各講義室には、学内 LAN、プロジェクターに対応できる機器を設置している(「大学 基礎データ」表 38)。 <教員研究室の施設・設備の整備状況> 15 の専門研究室、基礎薬学教育研究センター、医療薬学教育研究センターを含めて教授に は原則として教授室(個室)が配備されている。ただし、基礎薬学教育研究センターの一部 教授室は個室ではあるが、通常の面積より狭いスペースの利用を余儀なくされている。 【到達目標】 大学は優れた研究成果を発表し、優れた人材を育成し、社会に送り出すことで社会的評価 が高まり、それによってより能力の高い入学生を確保することができる。優れた教育、研究 の遂行を可能にするために、これを支えるための教育研究施設・設備が常に整備されている ことを目標にしている。 本学には以下に示す研究施設・設備が配備されている。 i)排水・廃棄物処理 ⅱ)研究用共同機器 実験動物研究施設 ⅵ)薬用植物園 ⅲ)機器分析研究施設 ⅳ)RI 研究施設 v) ⅶ)ハイテク・リサーチ・センター ⅷ)ネットワー ク研究施設 ⅸ)組換え DNA 実験室(生物用、RI 用) x)コンピューター演習室 xi)サー バー室、xⅱ)実務実習用薬局、xⅲ)無菌製剤室、xiv)抽出室、xv)特殊実験室、xvi)標本 室等である。このうち、i)~ ⅵ)に関しては常設の運営委員会で定期的、あるいは必要に 応じて運営について審議している。i)~ ⅷ)までの施設について以下に詳しく説明する。 これらの施設・設備の予算については毎年、教授総会において承認、決定される。 【点検・評価、長所と問題点】 共通で利用する研究施設、設備については、前年度に各委員会で大型機器購入の希望を提 案し、教授総会での承認により決定する。平成 19(2007)年度新規採択されたハイテク・リサ ーチ・センターは、関連研究室予算からの持ち寄りで整備したため、教授総会の支出は、0 円ベースである。 【将来へ向けての改善・改革に向けた方策】 前項で述べた機器購入の承認システムは、今後とも継続して行うべきである。ハイテク・ リサーチ・センターの設備費、機器費、運営費は大学全体としての予算にはなく、関連研究 室に配分される予算に依存している。今後、大学院研究科を中心に検討すべき課題である。 以下、各施設・設備について詳細に記載する。 161 研究関連施設・設備 【現状の説明】 i) 排水・廃棄物処理 本学での排水および廃棄物処理は環境安全委員会によって管理・運営されている。 当委員会は、教育研究活動によって発生する各種の廃棄物等による環境汚染を防止するこ とを目的として設置されている。そのためには、廃棄物を適切に分別、貯蔵、および処理す ることが大切であり、委員会としては実験等に従事する者(排出者)が守らなければならな い事項を定めるとともに、実験者各自が環境汚染を防止する責務を有するとの自覚を持って 教育研究に取組むように指導する立場にある。 過去数年間、環境保全委員会では、“実験研究廃液の 100%原点回収の徹底と監督官庁への 報告体制の整備”を目標と課題に掲げて活動してきた。実験研究廃液の 100% 原点回収に関 しては、年度初めに研究室に新たに配属された学生に対して各研究室での実験廃液の処理に 関する徹底指導の依頼を行う。また、学部 1・2 年次に対しては、委員会で作成した「排水・ 廃棄物管理指針」冊子の配布および実習開始時に実習廃液の捨て方、回収方法についての教 育指導を慣行している。このように本学では、教育•研究で排出する廃液をほぼ 100%原点で 回収し、回収廃液の処理は、年 3 回の割合で業務契約している外部の業者に委託している。 その他、学外活動として 揮発性有機化合物(VOC)排出規制説明会、PCB 廃棄物の処理に関す る説明会の開催、私立大学環境保全協議会への参加や、廃液の最終処理施設の現地視察等を 行い、廃液処理の現状認識に務めている。 監督官庁に提出するために作成すべき各種報告書等の作成には、以下のものがある。 ・ 管理化学物質の使用量等の報告 ・ 「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律(化 管法) 」への対応および効果に関するアンケート調査 ・ 廃棄物の減量および再利用に関する計画書 ・ ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物保管状況等の届出書 ・ PRTR 対象物質の取扱等に関する調査票 ・ 特定排出事業者の産業廃棄物適正処理報告書 ・ 化学物質管理方法報告書 ・ 第一種指定化学物質の排出量および移動量の届出書 これまで、年 1~2 回不定期に検査される町田市下水道部水質管理課による事業場排水検 査結果は、下水道法並びに町田市下水道条例の水質基準に概ね適合している。この様に、環 境保全委員会は、学内の教育•研究活動で排出する廃液を 100%原点で回収し、環境に排出さ せないことを目標として取組んでいる。 162 【点検•評価、長所と問題点】 実験廃液についての本学の基本姿勢である「100%原点回収」は、関係各位の努力により概 ね厳守されているが、町田市下水道部水質管理課による排水検査結果ではクロロホルム等が 時折検出されており、今後とも特に研究室に配属されたばかりの 4 年次および学生実習が本 格的に始まる 2 年次に対しては、きめ細かな指導を徹底して継続していくことが必要になる。 例えば「有機溶媒を完全に乾かしてから容器の洗浄を行う」等である。 また、環境保全委員会で作成している「排水・廃棄物管理指針」冊子には廃液の処理方法 の記述に加えて、一般廃棄物、産業廃棄物、特別管理産業廃棄物に関する適切な分別、貯蔵 および処理の記述もあり、学内で発生する各種廃棄物等による環境汚染防止の具体的な対処 方法にも取組み、成果を挙げている。 【将来の改善・改革に向けての方策】 現在、環境保全委員会は、実験研究廃液の 100%原点回収と各種廃棄物の適正処理の徹底を 目標にして、学内排出物による環境汚染を最低限に留めるべく努力を継続しているが、新規 の法的な規制が加わり、併せて規制内容が緻密化の傾向があり、新たな規制に対する対処法 を再考しなければならない時期にきていると考える。 また、新制薬学部 6 年制に伴い、本学で新しく始まった医療実習における医薬品廃液と医 療用廃棄物等の廃棄物対策についても、同様に適正に処理していかなければならないものと 考える。 ⅱ) 研究用共同機器室 共同機器運営委員会では、電子顕微鏡室、組織培養実験室、低温実験室、遠心機室の各共 同機器が適切に利用される様に維持管理を行い、教育・研究の円滑な進展をバックアップし ている。 共同機器運営委員会は、学長が任命した委員によって構成され、各共同機器室の管理・運 営状況の調査・把握などの実施、申請される共同機器修理の妥当性などを審議し、利用者へ のより良い運営方法をフィードバックして便宜を図っている。 平成 12(2000)年度以降に購入した共同機器備品は、以下の通りである。 平成 12(2000)年度購入 オリンパス培養顕微鏡 CK40-21PHP-S 490,000 円 平成 18(2006)年度購入 微量高速遠心機 sakuma M150-IVD 490,000 円 この他、平成 12(2000)年度以前に購入した機器備品も十分に稼働している。 これらの機器は各共同機器室の管理責任者を中心に適切な管理・運営が行われている。ただ し、共同機器という性格上、使用頻度の高い熟練した職員・学生から使用頻度が稀で使用方 法を熟知していない職員・学生まで幅広く使用するので、時として予期しないトラブルが発 163 生することがある。 【点検•評価、長所と問題点】 上記共同機器は各共同機器室に設置してあり、日常の管理・運営は、管理責任者よりも、 利用頻度の高い利用者から管理責任者への機器使用状況の報告が中心となって運用されてい るのが現状である。各利用者間の使用予定などの情報交換は適切に行われており、効率的な 維持管理・運営がなされているが、大学という性格上、毎年、新しい大学院学生・学部学生 が各研究室で研究活動を始めるため、研究室内での研究指導の伝達が不十分の場合、時とし て予期しないトラブルが起こり得る。そこで、各年度初めに、各共同機器室の利用研究室登 録を行い、共同機器の利用に際しては、使用方法の熟練した職員とともに利用するように指 導している。 多くの共同機器が研究活動で使用され、そのための運営費が用意されているが、運営費は、 基本的に修理費のみとし、消耗品などの費用は利用当事者で負担することにしている。使用 頻度の高い機器、および購入後年数を経た機器については部品交換・修理等が増加傾向にあ るが、機器類の故障や維持に対する迅速な対応と利用者への説明により、円滑な利用が可能 になっている。 【将来の改善・改革に向けての方策】 現在、共同機器室は概ね順調に機能しているが、より効率的で安全な運営を図るためには、 共同機器の正しい使用方法を各利用者に徹底することが必要である。そのためには運用方法 を明文化し、 「共同機器一覧表」 、 「研究用共同機器利用の手引き」等の作成が今後の課題にな ると考える。 ⅲ)機器分析研究施設 本学の分析機器の中核施設である機器分析研究施設は、最新鋭の高度な分析機器 -核磁気 共鳴装置(NMR)3 台、質量分析装置(MS)3 台、卖結晶 X 線回折装置(ハイテク・リサーチ・ センター整備事業経費で購入)1 台、円二色性分散計 1 台を保有している。 研究施設教員は、各分析機器の管理・運営および学内を対象とした依頼測定や測定指導、構 造解析および測定法などの機器分析関連セミナーを開催し、同研究施設設置の分析機器を用 いる学生実習を担当している。また、民間企業、他大学、研究機関との共同研究および相談 受付を行う等、地域および社会への貢献も重視し、学内外において教育および研究に寄与し ている。 164 (組 織) 機器分析研究施設は、機器分析研究施設運営委員会により運営されている。 同運営委員会 は、装置利用研究室専任教員 7 名と同研究施設教員 2 名の計 9 名で構成され、同研究施設に おける新規および更新の分析機器選定等、導入計画の策定はじめ、管理・運営に当っている。 同研究施設の組織体制は施設長 1 名(兼任)および専任教員 2 名で組織されている。各装 置の担当者として、NMR および卖結晶X線回折装置に 1 名が管理および測定業務に専門に従 事し、MS(管理・測定)および円二色性分散計(管理のみ)に 1 名が従事している。 (1)核磁気共鳴装置(NMR) 機種名:JNM-AL300(日本電子) 購入年度:平成 8 年度 購入価格:27,810 千円 補助金額:16,760 千円 機種名:AV-600(ブルカー・バイオスピン) AV-300M(ブルカー・バイオスピン) 購入年度:平成 17 年度 購入価格:195,300 千円 補助金額: 98,040 千円 (2)質量分析装置(MS) 機種名:JMS-HX110(日本電子) 購入年度:平成 2 年度 購入価格:148,000 千円 補助金額:73,450 千円 機種名:JMS-700MStation(日本電子) JMS-T100LP AccuTOF LC-plus(日本電子) 購入年度:平成 18 年度 購入価格:99,960 千円 補助金額:49,980 千円 (3)卖結晶 X 線回折装置 機種名 VariMax RAPID II(リガク) 購入年度 平成 19 年度 購入価格 53,000 千円 補助金額 22,525 千円 (4)円二色性分散計(ORD-CD) 機種名:J-600(日本分光) 購入年度:平成 1 年度 購入価格:12,225,000 円 補助金額:なし 165 表 2 設置機器・利用状況 166 167 168 169 170 171 172 【点検・評価】 1) NMR 関係 NMR に関しては、トラブル発生時は即刻、研究施設の装置担当者に報告するよう利用者に 徹底するとともに、施設側も一刻も早く原状回復するべく迅速な対応を心がけている。300MHz の NMR は、多数のサンプルを効率的に測定するために、条件設定が簡卖な自動測定システム での測定を行っている。2 台の装置の年間の測定総数は約1万本にのぼるが、利用者の利用 規則遵守による協力により順調に運用している。600MHz の NMR はクライオプローブを装備し ており、微量試料による構造決定およびタンパク質の構造解析実験も可能である。本装置を 所有している教育・研究機関は稀であり、今後その性能を利用しさらに高度な研究・教育に 貢献していくことが可能である。依頼測定に関しては、予約期間を決めて受付けているが、 それ以外でも可能な限り柔軟に対応し利用者の要望に応えるよう努力している。 本学の全 NMR 装置には自動測定システムが装備されており、複数のサンプルそれぞれに対 して複数の測定条件を設定し、測定することが可能となっている。また、各研究室の専用パ ソコンには各メーカーおよび ACD/Labs 社の NMR Manager のデータ処理システムが設置され、 各 NMR の端末とネットワークにより接続されている。研究室設置のデータ処理システムに関 しては、所属の 4 年生も利用することが可能なので、実践的な研究・教育を可能にしている。 ACD/Labs 社のソフトに関しては、常に最新版を提供するとともに利用講習会を開催している。 以上のように、本学の NMR およびそれに伴うデータ処理システムは非常に効率よく設置され ており、私学においても最高位のレベルにあると言える。 2) MS 関係 MS は日本電子製 MS700,T100 および HX110 を使用して測定している。平成 18(2006)年の MS700、T100 の導入を機に、機器の利用者への開放も可能となり、学生、職員向けに 20 回程 度の講習会を行った。 現在までは依頼測定が主となっている。Low-MS と High-MS の比率は 約 6:4 の比率である。通常の依頼測定としては以下の様な測定が主となっている。依頼測 173 定は、毎年運営委員会の承認のもと、予約方法および測定のための期間を決めて受付けてい るが、それ以外でも可能な限り柔軟に対応し利用者の要望に応えるよう努力している。本学 の MS は平成 18 年度に更新した新機種であり、今後種々の研究に対応できる体制が整ってい る。試料および希望するデータにより、下記に示すイオン化法および MS の種類(H:高分解能、 L:低分解能)を適切に選択することができる。 ①EI-LM(+および) ⑥FAB-LM(+および) ⑩ESI-LM(+および) ②EI-HM(+) ⑦FAB-HM(+) ⑪ESI-HM(+および) ③CI-LM(+および) ⑧FAB-CI(+および) ⑫APCI-LM(+および) ④GC-MS(+) ⑨FAB-LINK(+) ⑬APCI-HM(+および) ⑤EI-LINK(+) 3) 卖結晶 X 線回折装置関係 平成 20 年度に導入した装置は、ダイナミックレンジの広いイメージングプレートを検出器 として採用し、光学系は高強度モデルの人工多層膜ミラーを採用している。これまでは困難 とされてきた極微小結晶による構造解析が可能になると同時に、新しい研究テーマへの挑戦 が可能となり、薬学分野での種々応用の検討を行なっている。現在、装置を導入した直後で 専任職員の装置に対する習熟度を深める努力を行っている所であり、検体数はあまり多くは ない。しかし、X 線回折は結晶形により測定そのものが全て成功する訳ではなく、実際には 測定に供された検体数は多いのが実情である。今後は、X 線回折装置での解析が確率高く成 功するよう学内での各種 X 線回折に関する啓発を行うと同時に、タンパク質の構造解析等を 含む幅広い研究のための解析機器として利用されることが可能になる。 4) 円二色性分散計関係 利用に関しては、全面開放しており、利用者自身が測定する方式を採用している。現在、 一時的に夜間・休日は施錠しなければならない部屋に設置してあるため、24 時間いつでも利 用可能な状態になく、利用者に迷惑をかけている。装置の設置場所に苦慮しているが、今後 改善していきたいと考えている。 【総 括】 NMR、MS および X 線結晶構造解析に関して、依頼測定以外にも測定・研究相談を随時受け 付けている。利用者とのコミュニケーションを心掛けており、利用方法および規則に関して 不都合が生じた際は、全利用研究室の利用者同士での意見交換を行い、相応しい規則に変更 するなどの対応をとっている。施設利用に関しては出入り口に電気錠を設置しているが、利 用研究室には専用カードキーを配布し、夜間・休日も入退室が可能となっている。定期点検 や故障発生時以外は、年間を通して 24 時間利用可能な体制をとっている。 全装置をフル稼働させているため、故障発生時には利用者に即刻報告の依頼をしている。 更に各機器は保守契約を結んでおり故障時の迅速な対応を可能にし、万全の体制を整えて年 174 間を通して高性能な状態を維持している。 同研究施設は、利用者が安全で利用し易く、より良い成果を挙げられるよう施設の体制作 りを運営委員が努力するとともに、利用者の協力により円滑に管理・運営・運用されている と評価する。 【展 望】 現行では、同研究施設の学生利用者は大学院学生のみであるが、薬学部 6 年制に伴い、今 後、主な利用者である学生利用者が、大学院学生から学部学生へ移行する。今後、装置の使 用に際しての説明・指導・教育体制に関して、より一層強化していかなければならないと考 えている。さらに、本学の所有する機器を地域および社会の発展にも貢献できるよう、取り 組んでいかなければならないと考える。 ⅳ) RI 研究施設 【基本概念】 RI 研究施設は、 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(以下、「障害 防止法」)による文部科学省の許可施設である。 以下の表 3-表 6 に施設、主要機器および、表 7 に使用許可数量などを示す。 表3 施設および面積 実習棟1階 175 表4 RI 排水設備 床面積(㎡) 槽設置部分 100 モニタ部分 20 計 概 要 120 地下1階 3 槽一体型ステンレスパネルタンク 3 m×16 m×3 mH 36 ㎥+36 ㎥+72 ㎥ 排水モニタ 表5 RI 給排気設備 床面積(㎡) 概 要 地下1階 空調機械室内 110 高性能フィルター 12 台 ヨウ素系統 高性能フィルター 6台 活性炭フィルター 6台 24 時間系統 高性能フィルター 4台 排気モニタ 176 表6 施設内の主要機器 機器名 メーカー 型式 液体シンチレーションシステム アロカ LSC-6101 液体シンチレーションシステム アロカ LSC-5101 ラジオクロマナイザー アロカ JTC-600 オートウェルガンマシステム アロカ ARC-370M バイオイメージングアナライザー 富士フィルム BAS-5000 ハイブリッド高速冷却遠心機 クボタ 6200 高速冷却遠心機アングルロータ付 トミー CX-250 分離用超遠心機 日立 CP-56 ノーバランス型遠心機特型 トミー CD-505R 遠心機 トミー MRX-150 オートクライオトーム 東洋中川製作所 200F サーベイメータ一式 アロカ TPS-303 ハンドフットクロスモニタ ベルトルード LB1043B 放射線管理システム 富士通 FMV-7000TX 真空凍結乾燥装置 UNITER DA-585Ⅱ RI 耐火冷蔵庫(γ) 日本原子工業 GRI-RF30H メディカルフリーザー:サンヨー MDF-436, ディープフリーザー(2 台) :GIBSON 日本フリーザー CL-500U, フリーザー(2 台) :ナショナル FV21M6, NR-473FC,サンヨー MDF-535, RI 保管用冷蔵庫(β) :東芝 GR-M14T, 冷凍冷蔵庫(2 台) :日立 R-22AT, R106-W, バイオ メディカルクーラー:日本フリーザー UKS-5000A, ラボオートクレーブ:サンヨー MLS-2400, ステリライザー(2 台):サンヨー MOV-2025, コールターカウンター:SKATRON INSTRUMENTAL 11025, 倒立顕微鏡:オリンパス BNA-121D:インキュベータ:太陽科学 ブルビーム分光光度計:日立 5500B, PC SLP-1018OP, M-100N, 恒温振とう培養器:TAITEC U-2000, エ プ ソ ン : PRO3850DBS, ノート PC:エプソン 物乾燥装置:大和アトミック CK2, CO2 インキュベータ:エスペック BR-3000L, ダ ガンマーカウンティングシステム:ベックマン 半 導 体 検 出 器 ( 2 台 ): セ イ コ ー NT-5000, 有機廃液焼却装置:富士工業 DA-585Ⅱ (管理システム) ハンドフットクロスモニタと連動した入退用カードリーダ 177 DFG-DV1, FRB-20S, 動 表 7 使用許可核種および使用許可数量 核種 年間許可数量(MBq) 核種 年間許可数量(MBq) H-3 11100 Se-75 200 C-14 11100 Br-80 18.5 Na-22 200 Br-80m 18.5 Na-24 185 Br-82 18.5 P-32 1900 Rb-86 S-35 1900 Cl-36 200 In-111 37 K-42 200 Sn-113 80 Ca-45 200 Cd-115m 80 Sn-119m 74 Sc-46 185 Mo-99+Tc-99m 18.5 740 Cr-51 200 I-123 185 Mn-54 200 I-125 740 Fe-55 380 I-125 370 Co-57 370 I-131 185 Fe-59 18.5 Cs-137 200 Zn-65 200 Eu-152 37 As-73 40 Hg-203 200 【点検・評価、長所と問題点】 当施設は本学移転と同時に設置され、約 20 年が経過した。この間、施設面および主要機 器などにおいて大きなトラブルもなく順調に運営されてきた。 管理区域内に立ち入った RI 業務従事者は、過去 5 年間 70 名前後で推移している(表 8) 。 延べ入室回数は、平成 18(2006)年度の 3,900 回から平成 19(2007)年度は 2,600 回へと減尐 した(表 9)。使用核種も H-3,C-14,P-32 と軟β線源に限定されてきた(表 10)。このことは、 日本全体で種々の研究分野において脱アイソトープ化が進んだ結果の反映であり、本学にお いても脱アイソトープ化の傾向が現れたものと考えられる。 表 8 RI 業務従事者数 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 70 名 68 名 59 名 67 名 71 名 表 9 延べ入室回数 2006 年度 2007 年度 3903 2616 178 表 10 年間使用数量 核種名 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 (kBq) (kBq) (kBq) (kBq) (kBq) H-3 95998.0 163664.0 238749.2 108567.9 43977.5 C-14 6252.5 11615.1 2338.8 5530.3 2018.9 Na-22 0 33.8 35.7 0 0 Na-24 0 0 8429.0 200.0 0 297325.0 147802.5 55810.4 160400.8 327702.0 Ca-45 0 98200.0 57800.0 66000.0 0 Fe-55 232000.0 98000.0 0 0 0 I-125 1077.0 437.0 0 0 0 P-32 【将来の改善・改革に向けた方策】 平成 17(2005)年 4 月に障害防止法が全面的に改正された。本学で 2 名選任されている放射 線取扱主任者に対する再教育が初めて義務化された。薬学 6 年制と将来の 4 年制博士課程に おける薬学教育研究ニーズにきめ細かく対応し、RI 施設の遺漏無き管理・運営をさらに継続 していきたい。 v)実験動物研究施設 薬学など生命科学の進展に伴い、動物実験の重要性はますます大きくなっている。 本施設は、実験動物の飼育環境を向上させ、信頼性の高い実験動物を研究者に提供すること を目的としている。また、本施設の運営には動物福祉、愛護の点からも十分に配慮がなされ ている。 本施設は研究棟一階の約半分を占め、小動物・中動物飼育域、SPF 動物飼育域、管理関係 区域からなる。本施設の運営は実験動物研究施設運営委員会が担当している。また、動物の 飼育、ケージ等の消毒、本施設の清掃等の実際の管理は専門性の高い動物研究施設の管理会 社に委託している。 動物実験の倫理的観点からの妥当性は、研究室から提出された動物実験研究計画審査申込 書および動物実験実施計画書の内容を動物実験倫理委員会で審査している。 本施設利用者に対しては、毎年 4 月に施設利用者教育訓練を行っている。さらに 12 月初 旬には動物慰霊祭を執り行っている。 本施設の運営実績は毎年「昭和薬科大学教育・研究年報」に公表している。 179 表 11 実験動物研究施設の利用実績 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 2007 年度 年間動物使用数 6,704 5,957 5,234 3,083 1,688 施設利用回数 5,265 4,936 4,835 2,134 626 9 9 10 10 10 施設利用研究室 【点検・評価、長所と問題点】 平成 18(2006)年度から動物使用数、利用回数が減尐している(表 11) 。これは in vivo 実 験が主体の研究が減尐したことによる。大学では研究室の実験テーマの変更により施設の利 用頻度が変動することはよくあることであるが、この変動は実験動物研究施設運営委員会の 予想を超えたものである。実験動物研究施設運営委員会では当施設を毎年点検し、施設の修 理、クリーンアップ等を行い、動物飼育における最良の状態を保っている。 〈施設の修理等の状況〉 平成 15 年度 水道・電気メーター取り付け工事 ラット自動流水ユニット 4 台およびオートクレーブ用真空ポンプ搬入据え付け 証明タイマー交換 平成 16 年度 オートクレーブ元蒸気バルブ交換 ケージワッシャー修理 低温飼料庫室外機の洗浄作業 平成 17 年度 オートクレーブ蒸気配管バルブの工事 フリーザー新規搬入 クリーンアップ実地 2 室 平成 18 年度 クリーンアップ実地 2 室 微生物モニタリング実地 平成 19 年度 ラット流水洗浄ユニット 4 台搬入据付 洗浄室床補修工事 クリーンアップ実地 5 室 なお、各飼育室の減圧弁交換は半年卖位で行っている。 180 【将来の改善・改革に向けた方策】 現在のところ研究室から要請はないが、将来に向けて、遺伝子改変動物の飼育設備を充実 していく必要がある。また、現在使用されず、これからも使用予定のない犬室、猫室等の有 効利用を検討していく必要がある。 ⅵ) 薬用植物園 【基本概念】 平成 2(1990)年に世田谷区から移転した現在の町田キャンパスは、武蔵野の自然林を残し つつ、キャンパス全体の 40%を緑地とすること、また、その中に薬用植物園をつくり、定期 的に一般市民に公開すること等を念頭に整備されている。キャンパス内全域の自然林内には 自然観察路が整備され、かつ、武蔵野の林を維持するために外来植物を極力植えないように 配慮されており、キャンパス全体が環境教育のための植物園であるともいえる。 薬用植物園は、キャンパスの最北に位置し、自然林と植栽林(薬木区)に囲まれた中に見 本園(草本植物区)と、管理棟を兼ねる温室棟が配置されている。また、大雤などの水害時 用の調整池を普段は水生植物区、湿生植物区として利用している。さらに、町田キャンパス へ移転後大学が購入した北側隣接地も現在は薬用植物園(自然林および圃場)として利用し ている。 このように薬用植物園には、自然環境の保全や地域住民との交流において中心的役割を果た すことが求められている。また、緑豊かなキャンパスを維持し、恵まれた環境の中で学生が 勉学に励めるようにすることが本学薬用植物園の最大の任務であり、広さ約 23,000 平米の 薬用植物園を利用して、 (1)学生の教育、(2)研究、(3)一般市民への正しい知識の啓発な どの活動を行っている。 1. 面積 総面積 23,423 ㎡ 標本園 圃 15,100 ㎡ 場 5,358 ㎡ 管理棟 878 ㎡ 温 366 ㎡ 室 2. スタッフ 園 長(教授、兼任) 准教授(兼任) 嘱 託(栽培管理担当) アルバイト(事務担当、栽培担当各 1名) シルバーボランティア(栽培補助 2 名) 181 3. 運営 通常の栽培管理等は上記スタッフを中心に実施し、催事等の際には薬用植物園運営委員会 の委員が協力して実施している。薬用植物園内の薬木の手入れと、草本植物区、民間薬区、 温室以外の区画の除草については外部委託している。 薬用植物園運営委員会は教授会/教授総会の常設運営委員会の一つで、教授総会会員 6 名か らなり、薬用植物園の年間事業、予算、組織等運営に関する問題を審議する。 本施設は社団法人日本植物園協会に所属しており、国内の植物園と連携をとりながら運営 している。 4. 利用 U 学生の教育 日本社会の自然派健康志向は定着しつつあり、健康のためと称して新たな自然素材が次々 と社会に登場している。また医療現場における漢方製剤の利用も EBM データの蓄積に伴い、 着実に普及してきており、医学部の教育カリキュラムの中に東洋医学が採用され、2007 年、 2008 年と医学部の学生が実習のために本学薬用植物園を訪れている。 一方、薬剤師を目指す学生の多くは、入学時点では、自然界から多くの医薬品が開発され ているという事実を知らない。また、化学には興味があっても、生物、特に植物に興味を示 す者は尐ないのが現状で、普段の日常生活の中で、健康に直結する食べ物、つまり、野菜や 果物がどのような姿の植物であるかさえ知らない学生が多い。これでは、人間としての基本 がないままに、難しい薬の知識だけを身につけた薬剤師が社会に出ていくことになりかねな い。 薬剤師を目指す学生に対して、薬用植物園を利用して実際の植物を見ながら知識を身につ けさせることは、一般常識と専門知識の知識バランスのとれた薬剤師を社会へ送り出すため に大切なことである。本学では、学部 2 年生および 3 年生で開講している「生薬学(Ⅰ,Ⅱ) 」 および「生薬学実習」 、また学部 1 年生で開講している「人と文化(自然科学)」等の科目で 薬用植物園を活用し、生きた植物に触れる機会を学生に提供している。 U 研究 薬用植物園が研究に関与する場合にはいくつかのケースがある。 ケース① 薬用植物園のスタッフが独自に、あるいは、外部の研究者と共同で実施している もの。これまで薬用植物園では、薬用植物に関する研究の中で、分類に関する研究、栽培に 関する研究、品質評価に関する研究などを行ってきた。ヒマラヤ地域に産する薬用植物資源 の調査と、そこで採取したマオウ属やサイコ属植物の栽培と品質評価に関する研究、北海道 産タンポポ属植物の分類に関する研究などが挙げられる。 ケース② 学内の研究者が研究に用いる材料の栽培管理を薬用植物園が支援するもの。 薬用植物園では、天然物化学研究室や生物系薬学教育研究室などの教員の研究材料となる 植物の栽培をしており、彼らへの支援も行っている。 ケース③ 学外研究者への試料の提供、あるいは、学外研究者との共同研究 182 前述のように薬用植物園は社団法人日本植物園協会に所属しており、協会に所属する各園 と種苗交換を行って、貴重な遺伝資源の保存と有効利用に努めている。また、外部研究者か らの試料提供の要請にも積極的に応えている。 U 市民への正しい知識の啓発 平成 4(1992)年から一般公開を開始し、当初は年に 6 回「薬草教室」を実施していた。 この取り組みは現在まで継続しており、 「薬草教室」の開催回数はほぼ 100 回に達した。1992 年度からは 年 6 回の「薬草教室」の中の 1 回を「身近な薬用植物シンポジウム」と称して 規模を拡大して実施している。また、一般公開日以外にも団体見学(申込み制)を受入れて おり、年に 3~ 10 件前後の団体(自治会、地方公共団体、薬剤師研修会、民間サークル、 小学校、大学など)が利用している。詳細は「7 章 社会貢献」で記載する。年間延べ 600 ~1,300 人程度の一般市民が活用しており、薬草に関する正しい知識の普及活動を実践して いる。 【点検・評価、長所と問題点】 薬用植物園では、学生の教育、研究、市民への正しい知識の啓発という活動の三本柱を掲 げて日々活動を行っている。本学薬用植物園は、薬学部を有する国内の大学の中でも恵まれ た規模を誇る。この充実した施設を有効に活用することを目標に、平成 2(1990)年の移転以 来、圃場の土壌改良や植栽植物の充実、また、植栽植物のコレクションの特徴付けなどに取 り組んできた。圃場の土質については、当初から現在に至る栽培担当職員の努力により大き く改善され、当初とは見違える良質な土質になってきた。 植栽植物については、外部の様々な植物園の協力を得て種類もかなり充実してきている。ま た、コレクションの特徴付けとしては、スリランカやネパールなどで海外調査を実施したこ とによって、アーユルヴェーダ(インド医学)で用いる薬用植物を多数保存する園となった。 また、近年では、ブラジルやミャンマーなどの珍しい薬用植物が導入され、コレクションも 充実してきており、規模に応じた内容になりつつある。この資源を有効に活用するために上 記の活動を行っているが、カリキュラム中のコマ数の関係で学生が植物園で十分な時間を過 ごせないのが実情である。また、研究については、限られたスタッフが限られた時間で研究 を実施しており、スタッフの充実がない限り、所有する材料(試料)を提供することによる 外部機関との共同研究が中心になると思われる。一般市民への正しい知識の啓発に関しては、 年 6 回の「薬草教室」の開催や団体見学の受け入れが定着しており、十分に機能していると 考えている。 薬用植物園が抱える問題点は、栽培管理および所有する情報を公開するためのマンパワー の確保である。薬用植物は、野菜や果物などの農作物と異なり、栽培方法が確立しているも のは尐ない。さらには、新たな素材が海外から次々と導入され、栽培維持するのにも苦労す ることが多い。このような材料を相手にする日々の栽培管理は試行錯誤の連続であり、それ を丁寧に記録して次代に伝えていくことが、ノウハウの蓄積につながり、薬用植物園におけ 183 る栽培管理の最も重要な作業の一つである。このような作業を実施できる人材の継続的な確 保は薬用植物園の充実、維持、有効活用に必須であるが、残念ながら、6 年制への移行の時 期を迎えている薬科大学では他部署でも新たなマンパワーが多数必要となっており、植物園 が抱えるマンパワー不足の問題は、学内の職員を含め、専門外の人たちからは理解されがた く、この問題は全国の薬用植物園に共通する大きな問題となっている。 【将来の改善・改革に向けた方策】 薬用植物園では、学生の教育、あるいは、一般市民へ薬草に関する正しい知識を啓発する ことを目的として、そのために必要な薬用植物、社会に流通している健康食品やサプリメン トの原植物、その他の有用植物、さらには有毒植物を可能な限り収集して植栽し、展示公開 すること、また、それらの植物に関する情報を収集整理して解析し、必要な正しい情報を提 供することである。 限られたスタッフでその理想的な薬用植物園に近づくためには、スタッフの自己研鑽はも ちろんであるが、国内外の植物園(薬用植物園)や専門研究機関等と密に交流することによ って、専門家からの指導を受けつつ、情報交換等を行い、効率的にステップアップしていく 必要がある。 ⅶ)ハイテク・リサーチ・センター 薬学 6 年制に対応すべく平成 21(2009)年 3 月竣工予定の新棟一階部分に共同機器実験室 を設けることが決定されている。本学所有の共同研究機器、すなわち DNA シーケンサー、質 量分析計付高速液体クロマトグラフ装置、クリーンベンチ、細胞分離・機能解析システム (FACS)、モルフォロジカルバイオセンサー、光散乱光度計および粉体 X 線回折装置等に加 え、ハイテク・リサーチ・センター整備事業の上述の最新鋭機器も、新棟一階に順次集約す るよう準備中である。これらの機器の効率的な有効活用により、さらなる研究環境の充実と 研究推進が期待されている(6 章「研究環境」参照)。 ⅷ)ネットワーク研究施設 ネットワーク研究施設は平成 16(2004)年に発足し、(1) 学内ネットワークの管理、運営、 (2) ディレクトリサーバー、DNS、DHCP、メール、WEB、ファイル、計算、ネットブート、プ リンター管理、プロキシー、コンテンツフィルタリング、ウィルススキャンの管理、運営、 (3) コンピューター演習室の管理、運営の業務を担っている。 【現状の説明】 学内ネットワーク (Shoyaku-net) は学術研究と教育への利用を目的として平成 9(1997) 年に誕生した。Shoyaku-net の管理、運営は教職員から成るネットワーク運営委員会の委員 184 によって行われ、ネットワークの管理を始め、ネットワークの維持および将来計画に関する 予算計画の立案などを担当している。センター棟 3 階にはネットワーク管理の中枢としての 部室が設置され、全学的な管理に関わる基幹と基幹ネットワーク機器が稼働している。 学内の組織の変更に伴い、Shoyaku-net を管理、運営するネットワーク管理施設が平成 16(2004)年に設立され、その後、他の研究施設と名称を統一するためネットワーク研究施設 へと名称が変更になった。ネットワーク管理施設、ネットワーク研究施設の設置後も、 Shoyaku-net はネットワーク運営委員会によって、管理、運営されている。 (Shoyaku-net の構成) Shoyaku-net は部屋が置かれているセンター棟の基幹スイッチから、講義棟、実習棟、研 究棟の 二重化された基幹スイッチそれぞれまで、二重化された 1 Gbps の光回線で接続され ている。各棟のフロアのスイッチまでは各棟の二重化された基幹スイッチ各々から 1 Gbps の UTP ケーブルで接続されている。フロアのスイッチからは、各教室、各実習室、各研究室 等へ 100 Mbps の UTP でネットワークが引かれている。また、女子寮、薬用植物園といった 離れたところへは、100 Mbps の光回線で基幹ネットワークと接続されている。部室棟の各部 室にも、100 Mbps の UTP でネットワークが引かれている。 一方、学内のネットワークからインターネットへの接続は 2 重化されたファイアウォール を経由して、回線の負荷分散装置を通して、100 Mbps の光回線 2 回線で、商用インターネッ トサービスプロバイダの回線に接続されている。聖マリアンナ医科大学内にある本学の「臨 床薬学実習室」には、100 Mbps の光回線で VPN 接続している。 (基幹と提供しているサービス) 全学的な情報サービスを提供するため、センター棟 3 階の室には、ディレクトリ、DNS、 DHCP、メール、WEB、ファイル、計算、ネットブート、プリンター管理、プロキシー、コンテ ンツフィルタリング、ウィルススキャンが設置され、サービスを提供している。 ディレクトリは全教職員、学生、研究員、研究生等、本学の情報サービスを使用するユー ザのユーザ ID とパスワードが一元的に管理され、メール、ファイル、コンピューター演習 室の PC、図書館システム、e-ラーニングのシステム等によって使用されている。DNS は Shoyaku-net に接続される機器に対してドメインネームサービスを提供している。DHCP は Shoyaku-net に接続される機器に対して IP アドレスを始め、ネットワークを使用するのに必 要な情報を提供している。 メールは、教職員、学生に対して電子メールサービスを提供している。通常の POP 機能の 他に IMAP の機能もある。また、WEB メールのサービスも提供しており、学外からでも、大学 内メールのメールを自由に読み書きすることが可能である。通信は SSL で暗号化している。 学外向け、学内向け 2 つの WEB サーバーを運用している。学外向け WEB サーバーでは、大 学の情報を学外に発信するとともに、研究室の成果を公表するため、ブログシステムを導入 して、安全に各研究室でコンテンツを自由に書き換えることができるようになっている。学 内向け WEB サーバーでは、各教員が学生向けに情報を発信するとともに、会議室の予約シス 185 テムといったサービスや、学生向けのリメディアル教育用ストリームコンテンツも提供され ている。また、学生のホームページ作成実習でも使用されている。 ファイルサーバーはネットワーク越しでのファイルの保存サービスを提供している。また、 コンピューター演習室の PC と連動して、ログインしたユーザ自身のデータは全て自動的に ファイルサーバーに保存されるようになっている。ファイルサーバーの有効活用により、デ ータの一元管理が可能となり、個人情報の流失の危険性が減尐すると考えられる。また、ま た、PC の故障によるデータ損失の心配もなくなる。WEB ファイルシステムも提供しているの で、学外からもファイルサーバーにアクセス可能であるとともに、チケッティングシステム も提供しているので、メール添付では送れないデータを共同研究者等へ送ることが可能であ る。 計算サーバーは、CPU コアが 8 個あり、また、32 GB のメモリを搭載しているので、研究 室の PC では不可能な大型科学技術計算が可能となっている。アプリケーションソフトとして、 各種高速コンパイラーのほか、分子軌道計算の標準ソフトであるガウシヤンとモルプロ、ド ッキング計算ソフトである「シビル」がインストールされている。 ネットブートサーバーは演習室の PC をネットブートする為のサーバーで、OS を一元管理 することにより、演習室の管理コストを大幅に削減するとともに、演習室の安定稼働に大き く寄与している。管理サーバーにより、学生の演習室での印刷枚数を制限した上で、学生に 対して、印刷サービスを提供している。 プロキシーサーバーは WEB アクセスの効率向上の機能を果たしており、コンテンツフィル タサーバーは、学内から、アダルトサイト等不適切なサイトの閲覧を禁止している。ウィル ススキャンサーバーはメールに添付されているファイルのウィルススキャンを行い、安全な 電子メールの運用をサポートしている。 【点検・評価、長所と問題点】 計算機科学、情報科学の技術進歩は著しく、その進歩を正しくフォローすることが大切で ある。幸い本学では、教員の大部分は理系であり、研究活動に情報システムを十分に活用し ている教員も尐なからずおり、計算機科学、情報科学の技術進歩は正しくフォローされてい ると思われる。大学の教育研究活動における、ネットワーク施設の必要性を正確に認識して、 その時々の最新の情報ネットワーク機器を適切に導入し、本学のシステムは順調に発展して 来ていると思われる。 薬学教育、研究活動に必要十分な情報システムが提供されていることは高く評価される点 であると思われるが、そのシステムを 120%使いこなす為の利用者に対する十分な情報の提 供や教育が担当部署での人的資源不足により行われていないことが問題点としてあげられる。 e-ラーニングシステムの導入等、教育活動における情報システムの活用が進んでいるが、 その恩恵を学生が受ける為には、ブロードバンドのネットワーク環境が必要である。自宅か らの通学生は現在では、ほとんどの家庭にブロードバンドインターネット回線が引かれてい るので問題はあまりないと思われるが、下宿生はブロードバンドインターネットを下宿先に 186 引いているものは尐ないため、格差が生じる可能性が高く、今後大きな問題となる可能性が ある。また、情報システムを活用するために、教育職員の負担も増加していると考えられる ので、その点も問題である。 【将来の改善・改革に向けての方策】 ネットワーク利用者のストリーム系のコンテンツを視聴する機会が増えつつあるので、近 い将来、インターネットへの接続の回線容量不足が予想される。この問題に対しては帯域保 証のある、高速ネットワークである NGN の導入等を検討したい。また、学内ネットワークで は、フロアのネットワーク機器から末端までのネットワークがまだ 100 Mbps の UTP なので、 現在のネットワーク機器のレンタルが切れる 2 年後には、末端まで 1 Gbps のネットワーク へと増強したい。 情報システムをより有効活用する為には、情報化の進んでいる図書館および e-ラーニング の部門と統合して情報メディアセンターとし、図書館や教務課の事務職員と教員との協力に よる情報システムの管理・運営を考える必要がある。 前述した学生のネットワーク格差に関しては、広域、高速の無線ネットワークシステムが 普及し、そのサービスが安価に提供されることを期待したい。 2)教育の用に供する情報処理機器などの配備状況 実習棟 5 階に学生用端末 134 台、教員用端末 1 台、管理用端末 1 台の演習室が、学生へ の情報リテラシー教育を始め、学生、教職員の教育研究活動に利用されている。 コンピューター演習室の PC はネットブートシステムを採用しており、PC の OS は一元管 理され、常に最新の状態に置かれているとともに個別に PC を管理する必要がないので、管理 コストは大幅に削減されている。また、ディレクトリサーバーおよびファイルサーバーと有 機的に連携して、ユーザは演習室の PC にログインすると自分固有の PC を使用しているのと ほぼ同じ状態となる。サーバー室にあるネットブートサーバーやファイルサーバーとコンピ ューター演習室の PC とは、二重化された 1 Gbps の光回線 6 セットで接続され、各 PC まで は 1 Gbps の UTP で接続されている。この高速なネットワークのため、コンピューター演習 室のユーザはネットブートされていることやファイルの保存がローカルのハードディスクで はなく、離れたところにあるファイルサーバーになされていることを意識することはない。 コンピューター演習室の PC には、情報リテラシーで標準的に使用するマイクロソフト社 のオフィスの他、化学構造式描画ソフトである Chem Bio Draw、分子の 3D 描画ソフトであ る Gauss View、分子軌道計算ソフトのガウシヤンがインストールされており、情報リテラシ ー実習等を通じ、分子レベルで薬学の理解ができる教育が学生に対して提供されている。ま た、OS は UNIX をベースにした Mac OS X を用いており、UNIX としての使用も可能となって いる。また、仮想化ソフトを導入して、Windows XP も同時に起動可能となっている。マルチ 187 OS 環境を経験することにより、学生は幅広い情報科学の基礎を身につけることができる。授 業や実習で使用しているときを除き、コンピューター演習室は平日午前 8 時から午後 8 時ま で解放されており、学生は、WEB の閲覧、レポートの作成、e-ラーニングコンテンツの視聴 等に広く使用している。 (2)キャンパス・アメニティ等 1) キャンパス・アメニティの形成・支援のための体制の確立状況 大学周辺は静かな住宅地で、キャンパスは三方を緑の丘に囲まれ自然との調和を醸し出し ている。各棟(本館、講義棟、実習棟、研究棟、アリーナ)は雤の日でも濡れずに移動でき るアクセスコリドール(連絡通路)で結ばれている。 本学の周辺地域への配慮として、本学はその持てる緑豊かな環境での施設・設備を可能な 限り提供している。その一例として、本学キャンパス・グランドの災害時避難場所としての 供与や薬用植物園等を利用する講座開講がある。そのほか、キャンパスの樹木の落葉時期に は、キャンパス外周道路の清掃も行っており、周辺の美化に努めている。 <食堂> 本学は、立地の関係から大学近隣には飲食店が尐なく、多くの学生は学内にある食堂を利 用している。しかし昼食時間帯には、食堂が混雑しているため食堂以外の場所で持参の弁当 や購入した弁当・パン類を食べている学生も多く見受けられる。 表 12 食堂の規模等 食堂名 ひまわり 経 営 外部委託 シダックス すずらん りんどう 外部委託 シダックス 床面積 386 m2 座席数 192 席 推定利用数 460〜520 人 含、職員 給食システム 日替わり定職 麺類他 107 m2 48 席 60~70 人 座席のみ 153 m2 94 席 120〜130 人 含、職員 軽食の販売 <学生談話室> 学生のための談話室として上記の「すずらん」と「りんどう」を終日開放しており、キャ ンパスの中で学生が憩うことのできる場所の中心となっている。本来の使用目的である学生 の団らんのほか、部活動等で貸し切りでの使用も認めている。他に、研究棟 2~ 5 階にラウ ンジ(32 m2、14 席)が各フロアにあり、学生が談話、学習等に使用している。 188 <体育施設> 体育施設は、「昭和薬科大学体育施設管理運営規程」に基づき、町田キャンパス体育施設の 管理・運営を行っている。 規程に示されている通り、体育施設は下記に挙げる施設を本学行事、体育実技、本学学生 の課外活動、本学学生が所属する学生団体の各種大会、教職員の福利厚生を目的として利用 している。 1 体育館 2 武道場(空手、柔道、尐林寺拳法・剣道) 3 卓球場 4 テニスコート 5 グランド 6 弓道場 7 トレーニングコース 体育施設は下記に示す用途に用いている。 1 本学が主催する式典および集会 2 体育実技 3 体育系クラブ活動 4 学生および職員主催の体育スポーツ行事等 5 職員のレクリエーション 6 学生のレクリエーション 7 その他大学が必要と認めた諸行事 上記に示したように、原則として使用は本学学生、職員としている。但し、学外者の使用 も状況により許可している。 体育施設の管理・運営について必要な事項を審議するため、体育施設管理運営組織として 学生支援委員会が当り、体育施設管理者として、体育研究室主任が当っている。 体育施設管理者は下記の業務を統括している。 1 体育施設の管理運営に関する事項 2 体育施設の仕様に関する事項 3 体育施設の整備に関する事項 4 その他体育施設に関する事項 体育施設を利用するときは、使用責任者が使用予定日の 1 週間前までに、体育施設使用許 可願を体育施設管理者に提出し、許可を得る。学生の場合は、学友会の承認を得ることとし ている。体育施設管理者によって使用が許可されたときは、体育施設管理者が使用許可書を 交付する。 189 体育施設の詳細 各体育施設の詳細は下記の通りである。 【体育館】 体育館棟1階にあり、下記のスポーツ競技が使用できる。 ・ハンドボールコート 1面 ・バスケットコート 2面 ・バレーボールコート 2面 ・バドミントンコート 4面 主に、体育実技、日常のクラブ活動、本学のクラブ活動部が加盟している団体の公式試合、 学園祭、大学入試センター試験会場(500 名収容) 、入学式後の懇親会場として使用している。 大学行事、体育実技、クラブ活動等で使用していなければ、一般学生が使用することができ る。 【武道場・卓球場】 体育館棟 2 階には、前記以外の施設が 4 室あり、体育実技、学生・職員の健康診断所、大 学入試センター試験受験生控え室、各学期の教科書販売に使用している。各室では、下記の スポーツ競技が使用できる。 ・空手 ・柔道 ・尐林寺・剣道 ・卓球 空手道場は専用の打ち込み器具を、柔道場は専用の畳を、また、尐林寺・剣道場にはサン ドバックを設置している。 【テニスコート】 屋外グランド横に、全天候テニスコート 4 面があり、それぞれに夜間照明装置を設置して いる。体育実技、クラブ活動で使用できる他、日曜日早朝を主に、地域住民に開放している。 【グランド】 屋外テニスコート横にグランドがある。体育実技、学園祭、避難場所として使用している。 グランドでは下記のスポーツ競技が使用できる。 ・野球 ・サッカー ・ハンドボール ・陸上競技 【弓道場】 正門から道路を隔てたトレーニングコースに弓道場があり、4 射場を設置している。 【トレーニングコース】 正門から道路を隔てたトレーニングコースがあり、陸上競技に使用されている。 190 < 学生部室> 課外活動のための部室は部室棟と体育館棟に分かれて配置されている。部室棟の概要なら びに収容クラブは下記の通りである。 表 13 部室棟の面積 建物名称 部室棟 構 造 竣工日 RC 構造・3 階建 平成 2 鉄筋コンクリート 年4月 建築面積 延床面積 414 m2 996 m2 表 14 部室棟の収容クラブ等一覧 建物 部室棟 階数 1 名称 階数 名称 スキー 華道 会議室 バドミントン 文芸 実行委員会 柔道 写真 薬理部 軟式テニス ハンドボール 学友会倉庫 バレーボール 陸上 実行委員会倉庫 尐林寺拳法 弓道・表千家 2 フォークソング 野球 体育館 棟 裏千家 ワンゲル 衛生化学 吹奏楽 バスケット 臨床薬剤 コピー室 硬式テニス 有機化学 洗濯室 サッカー 生薬 卓球 倉庫 名称 階数 名称 音楽室1(七面鳥) 1 3 軽音楽部 表 15 部室棟の収容クラブ等一覧 階数 名称 学友会総務室 (七面鳥) 建物 階数 音楽室2(軽音楽) 音楽室3(吹奏楽) 柔道場 2 空手道場 尐林寺・剣道場 卓球場 191 2)「学生のための生活の場」の整備状況 < 学生寮> 本学学生寮は、教育施設とは離れたキャンパス单側の静かな場所に設置されている。地方 出身の女子学生を対象にした「なるせ寮」は、下記収容定員を持つ鉄筋コンクリート造・4 階 建て、全室单向・冷暖房および電話完備・学習室(30 席・無線 LAN 完備) 、談話室(各階テ レビ・冷蔵庫等完備) 、集会室、洗面所、給湯室、共同浴室/シャワー室 洗濯室他、延べ床 面積 1,486.08m2 である。大学までの通学時間は約 2 分の場所にあり、日曜祝祭日以外は朝 夕 2 食付、日曜・祝祭日は朝食のみの寄宿舎である。セキュリティのために管理人およびス タッフが 24 時間常駐し、IC カードによる入退管理システムを導入している。 収 容 定 員 : 80 名 40 室 居 室 概 要 : 各室 17 ㎡、定員 2 名、ベッド クローゼット 学習机 付き 表 16 女子学生寮在籍者内訳 年度 1 年生/名 2 年生/名 3 年生/名 4 年生/名 合計/名 平成 15 年度 36 25 2 5 68 平成 16 年度 36 32 4 2 74 平成 17 年度 28 35 2 2 67 平成 18 年度 28 14 12 2 56 平成 19 年度 16 21 2 10 49 表 17 に示すように、寮の費用は近隣のアパートと比較して安価であり、地方出身学生の保 護者にとっては評価し得る施設となっている。 表 17 学 なるせ寮の費用 年 1 年次 納入期/科目 入 寮 費 2年次 前期 (入学時) 200,000 後期 (10 月) 前期 (4 月) 後期 (10 月) 寮費(管理費) 180,000 180,000 180,000 180,000 食費(朝 夕) 120,000 120,000 120,000 120,000 500,000 300,000 300,000 300,000 合 計 <福利厚生施設(昭薬会館)> 女子寮に隣接する 5 階建ての来客用宿泊施設。食堂(女子寮と兼用) 、和室 4 室、洋室シ ングル 6 室、ツイン 6 室、同窓会事務所および同窓会会議室。 利用条件 : 同窓会・大学職員・その他、法人において特に許可された者が諸会議を開催、 並びに宿泊することができる。 宿泊期間 : 2 泊以内(海外からのゲストは別に定める※) 192 宿泊料金 収容定員 宿 泊 例 : 和室 4,000 円(朝食込み) 洋室(シングル) 5,000 円 洋室(ツイン)1 人利用 6,000 円 : 約 45 名 和室(33 ㎡ 12 畳) 4 室(1 室 6~ 7 名)24~ 28 名 シングル(21 ㎡) 6室 6名 ツ イ ン(21 ㎡) 6室 12 名 : 大学院講義のための招聘講師の宿泊(宿泊料大学負担) 共同研究における研究者の宿泊 同窓会総会時および同窓生 OB 会(小規模クラス会)の出席者の宿泊 入試業務による教職員の宿泊(宿泊料大学負担) その他 年間宿泊者数 : 50 名前後 ※国際交流委員会で受け入れを決定した者(本学と学術協定を結んでいる米国单カリフォル ニア大の教員、または海外から招聘した外国人研究員等)の宿泊にも対応できるよう、長期 滞在型設備を整えている。 また、館内の和室では本学の茶道部・華道部等クラブ活動が毎週行われている。本学の一 般教養課程の演習科目である茶道の授業もこの和室で行われている。 3)大学周辺の「環境」への配慮状況 11 月 2- 3 日に行われる学園祭「昭薬祭」の開催期日を大学近隣の自治会に予め知らせ、 前夜祭、後夜祭等における騒音等で迷惑をかけないように心がけている。昭薬祭では、近隣 の人たちに大学を公開する意味で各種の取り組みを実施している。フルーツ市の開催、学生 の各サークル、部主催の催し等を通じて大学を公開している。また、4 日には学園祭終了後 の参加部活の協力を得て、1 日かけて後片付けを行い、学園祭期間中に生じたごみの分別回 収を行うなど清掃、美化に注意をする他、学園祭以降の授業に影響が及ばないように心がけ ている。 市民との交流の機会を増すために、毎年体育館で「フリーマーケット」を開催し、近隣の 人たちが自由に参加できるようにしている。このフリーマーケットは、近隣の人たちも積極 的に参加して好評を得ている。大学と近隣との良好な関係を維持するための一つとして今後 とも続けていきたい。 (3)利用上の配慮 1)施設・設備面における障がい者への配慮の状況 研究棟、実習棟、センター棟、部室等はアクセスコリドールで結ばれ、雤天でもそれぞれ 193 のブロック、教室間等の移動には問題はない。校舎内で教室の出入り口と導線に段差のある ところには、スロープを設けて車椅子等による移動に支障が無いよう配慮してある。これま でに利用者が学部および大学院に入学し、卒業した実績もあり、障がい者に対する施設面で のバリアーフリー化の整備はなされている。 2)キャンパス間の移動を円滑にするための交通動線・交通手段の整備状況 本学は町田キャンパスだけなのでこの項目は記載の必要なし。 (4)組織・管理体制 1)施設・設備等を維持・管理するための責任体制の確立状況 施設・設備の維持・管理は、「学校法人昭和薬科大学事務組織規程」に施設課の業務と定め られており、これらの業務を行なうために、課長および係長が配属されている。施設課には、 一級建築士の資格を有する者と電気主任技術者が専任職員として配属されている。中央監視 室においては、ボイラー主任技術者は外部委託に依存している。 2)施設・設備の衛生・安全の確保を図るためのシステムの整備状況 <学内の整備状況> 施設・設備の衛生・安全を確保するために衛生・安全委員会が設置されており、委員会で 必要な点検・検査項目が審議され、決定されている。また、校舎敷地内の手入れ、建物内の 清掃業務、ごみ収集および焼却、環境衛生業務、門衛業務、警備業務、設備保守運理業務に ついては外部委託している。 研究室、共同利用室、実習室を管理する総括責任者を理事長とし、個々の研究室の使用責 任者は原則当該研究室教授となっている。 図書館には、入退室管理システムが配備され、教育職員、事務職員、外部非常勤講師、お よび学生等の利用は、すべて許可制になっており、磁気カードにより利用されている。 校内防犯対策としては、キャンパス内、校舎内への侵入者を監視するためにキャンパスに 入る 4 つの各門に監視カメラが設置されている。正門守衛所の夜間警備は定時に行われ、警 備体制は整えられている。講義棟、第二講義棟には防犯カメラが設置されている。また、緊 急時対策の一環として校内トイレには防犯ベルが設置されている。 火災等の災害の防止、および安全確保のために、防火管理者(施設課課長)を長とする防 火管理体制を敷いて統括している。防火管理のための消防計画の検討および変更など、年度 初めに行なっている。出火防止と初期消火に関しては、防火管理者のもとに火元責任者等、 連絡系統図を作成し、研究室ごとに配布し周知させ、また消火設備の点検を定期的に行なっ ている。火災発生時の避難訓練、および消化訓練は、毎年 1 年次生と寮生を主な対象として 行っている。表 18 に昭和薬科大学における設備の保守・点検を示す。 194 表 18 昭和薬科大学における設備の保守・点検一覧 消防設備点検 法定点検 年 2 回(6 ケ月毎) 防火対象物点検 法定点検 年1回 電気設備精密点検 年1回 中央監視盤 年1回 自家発電設備 年1回 空調制御点検 年2回 空調用ターボ・吸収式冷凍機 年 4 回 3 ケ月毎 空調フィルター点検・清掃 月1回 圧力容器 貯蔵槽検査 法定点検 年1回 ボイラー 年3回 オートクレーブ 法定点検 年1回 バキューム 年1回 排水処理設備 月2回 ボイラー中和設備 年1回 エレベーター点検検査 月1回 駐車場設備 年3回 自動ドア 自動ドア 飲料水検査 法定検査 毎日 飲料水水質検査 年2回 貯水槽検査 年1回 害虫駆除 年 12 回(1 ヶ月に 1 回) ばい煙測定 法定検査 年1回 放流水検査 法定検査中和槽年 2 回、動物屎尿年 4 回 汚水槽他清掃 法定検査 年 2 回 建築設備定期検査 法定検査 年 1 回 <校舎の整備状況> 平成 2(1990)年の竣工以来、本学における建物の増築は、6 年制教育のための新棟建設(平 成 19(2007)年)までなかった。建物は、堅牢で、設備は、保守点検により年次計画で修理、 補強が行なわれており大きな支障はない。室内換気、温度調節などの保守・点検、および必 要に応じた修理も定期的に行なわれている。また、諸設備の突発的な故障等の対応も施設課 を中心に良くなされている。キャンパスを取り巻く環境は、自然には恵まれているが都市型 195 ではないので、今後、厚生補導面の施設・設備の充実が必要となる。 <教室(講義室、演習室、実習室)等施設・設備の状況> 大教室がもっと多くあれば教員の講義回数を減らすことができる他、入学試験・学期末試 験等で試験監督回数、事務系の負担を軽減できるメリットがある。しかし、現在では、小人 数と個人教育で学生の“個”を育てることが主流になってきている。教室の数とその学生収 容人数、カリキュラムとそれを実現する教員数に密接に関係している。6 年制の薬学教育で は、とくに導入教育において 1 クラスに一つの課題を掲げて最初に全体説明、次に小人数に 分かれて議論する(SGD) 。その結果を再び初めのクラスに全員が戻って議論の結果を発表す る方法がとられる。そのために多くの小教室が必要となる。これに必要な小教室は、平成 21(2009)年 3 月 24 日竣工の新棟に配備される。 <教員研究室の施設・整備の設備状況> 研究棟には 15 の専門研究室、基礎薬学教育研究センター、医療薬学教育研究センターが あるが、共通の小教室あるいは会議室として使用できる部屋は 2 階に第 7 セミナー室、4 階 に大学院講義室があるのみである。准教授、講師、助教は、2 室から 3 室の実験室で学生と ともに研究と学生指導を行っている。これは、大学院学生、学部学生(卒業研究の学生)に とってすぐに指導を受けられる配置となっており、きわめて効率的で良いことであるが、一 方、教員にとっては、講義の準備、期末試験問題、国家試験のための認定試験問題、卒業試 験問題の作成、およびそれらの採点など、秘密性を要する作業の場所を確保する必要がある。 <体育施設> 教育に使用する各体育施設は、有効に利用されている。特に、体育館、グランド、武道場、 卓球場、テニスコートは、体育実技で年間利用されている。また、全体育施設は、体育系ク ラブが年間を通じてその活動に利用している。 上記した一部の体育施設は大学行事にも利用されており、全体として有効に使用されてい る。 大規模修理を下記のように行った。体育館は平成 18(2006)年度に床面の研磨をし、修理し た。また、平成 19(2007)年度、学園祭コンサートにおいて、観衆が一部の場所に集まり踊っ たため、床面が陥没したため、その補修工事を行った。平成 15(2003)年度、テニスコートの 夜間利用を誰でもできるようにするために、照明装置を従来のコイン型から卖純なスイッチ 点灯型に変更した。また、平成 19(2007)年度に水銀灯の修理を行った。その他の施設につい ては、故障、破損等の損傷がなく、現在に至っている。 今後は、グランドの雤天後の表面が荒れる点、雤水による泥の沈着による排水問題等を改 善するために、人工芝の敷衍を検討することが必要と思われる。また、グランドの夜間照明 装置の照度は、スポーツ競技を行うには照度が足らず、照明装置の更新が必要と思われる。 また、学生から器具倉庫を設置して欲しいとの要望があり、新たな設置の検討が必要と思わ れる。 196 <施設・設備の維持・管理、およびその責任体制> 施設・設備の維持・管理、およびその責任体制は確立している。保守・点検項目も法律、 規程を遵守して行われているが、人件費削減のため、多くの点検項目は外部業者に依存して いる。 火災等の災害の防止、洪水、大雪、地震等の事前災害に対するマニュアル、連絡網など、 机上の対策は概ね整ってきているが、実際に起こったときにマニュアル等を使いこなせるか は今後の課題である。 <学生寮> 学生寮はキャンパスから徒歩 2 分の隣接地に設置されており、管理人夫妻が館内に居住し、 IC カード入退室管理システムを導入するなどセキュリティ面においても安心である。管理人 およびスタッフが 24 時間体制で常駐しており、夜間の緊急時等への対応や昼間不在時の郵 便、荷物の受け取りまで、寮生には細やかなサービスが受けられる。また、調理士の資格を もつ管理人手作りの栄養バランスのとれた食事は寮生に大変好評である。寮内の運営は、寮 長を中心とした寮生主体の自主運営となっており、寮室の部屋割りをはじめ、異学年学生間 の共同生活を通じ、相互にコミュニケーションを図り、寮内で発生した問題を寮生自ら解決 する力を養うことが出来るなど、日々の生活を通じて社会生活に役立つ能力が身につき、豊 かな人間性を育むことができる。なるせ寮では新入生歓迎会、クリスマス会などの行事も、 寮生自ら企画し和やかな雰囲気で寮生活を送っている。さらに、学内の女性教員が寮のアド バイザーとなっており、解決が難しい問題や、寮生活の悩みなど気軽に相談できるサポート 体制が出来ている。また、平成 16(2004)年度に無線 LAN を完備した 24 時間利用できる学習 室(全 30 席)を増設するなど寮生の学習面における支援にも力を注いでいる。 近年の家庭における生育事情を反映し、定員 2 名の居室での共同生活は敬遠される傾向に あり、入寮希望者数は減尐している。18 歳人口の減尐および地方の薬学部新設等により地方 出身者が減尐している現在、地方からの入学希望者にとっては女子学生寮の存在は大学選択 の重要な要素であり、女子学生寮の維持は地方の優秀な学生を確保する上で意味がある。 【長所、問題点と将来の改善・改革に向けた方策】 1.キャンパスへのアクセス等 本学は東京都ではあるが、町田市の丘陵地帯を整地して校地としたために交通の便は必ず しも良いとはいえない。近くに商店、喫茶店等があるいわゆる都市型の大学とは全く異なる。 学生が実験等で夜遅くまで研究室にいるときには、食堂なども営業しておらず不便さは残る。 最寄りの電車の駅は、小田急線「玉川学園前」駅か、JR 横浜線「成瀬」駅であり平成 17(2005) 年度まで双方からのアクセスは良くはなかった。本学までのバスの本数は 1 時間に 2~3 便 であったが、平成 18(2006)年度から「玉川学園前駅」と大学のバス停とが、コミュニティバ スによって結ばれ、大学へのアクセスは幾分改善されてきた。朝 7 時から 8 時にかけては 4 197 便、夜 17 時から 19 時にかけては 4 便ある。しかし、その他の時間帯は1時間に 2 便でいつ でも便利とはいい難い状況である。大学へのアクセスは本学にとって重要な課題として、町 田市の主催による「町田市と大学学長会議」等を通じて、最寄りの駅から本学へのアクセスの 改善を町田市に要望している。 2.キャンパス、施設・設備 緑豊かな環境のもとで豊かな人間性と科学の心をもつ薬剤師の養成を目指す薬科大学とし ては十分すぎるほどの自然環境と教育設備を備えたキャンパスである。薬用植物園、薬用植 物用温室も整備されている。付属棟として温室棟、薬品庫、器具庫がある。実習講義室・演 習室・学生自習室総数は 30 室である。校舎のすぐ近くにある福利厚生棟には、学生寮と同 窓会館等が配備され、大学キャンパスとして優れていると判断できる。 3.キャンパス・アメニティ等 U 学生食堂 本学食堂は健康を守るための衛生的な設備であり、廉価で栄養バランスの取れたメニュー で提供されており評価できるレベルにある。昼食時の混雑解消が課題となっているが、学生 の昼休み時間中に 2 回ほど回転しており、これ以上利用率を上げることは難しいと思われる。 テーブルの配置等の見直しをしてきたが、根本的な混雑解消には食堂の拡張もしくは増設が 必要と思われる。また、食堂閉店時間帯についてはパン類等の自動販売機を講義棟に設置し ている。 6 年制教育課程が完成する平成 23(2011)年度になると食堂は、極めて混雑すること は確実である。 U 学生寮 平成 2 年に建てられ、建物および配管・空調設備等の老朽化は否めなく、建物を維持する ために改修工事等がここ数年続いている。今後も 5 年以内で順次更新工事を行う必要がある。 時代とともに学生の寮に対する考えも寮を取り巻く環境も変化し、入寮生を確保するには、 改修工事による個室化や 1 年次~ 6 年次まで在寮できる環境を整えることが必要である。現 在、要望書を理事会に提出し在寮期間の延長を申請中である。 U 福利厚生施設(昭薬会館) 学生寮と昭薬会館は同じ建物内にある。キャンパス隣接地に来客用の宿泊施設があること は、利用次第では大変便利で貴重であるが、現状としては会館を利用するケースはあまり多 くなく、年間利用者数のうちほぼ半数が入試時期に宿泊する本学教職員となっている。 しかしながら、平成 20(2008)年度および平成 19(2007)年度には国際交流の一環として单 カリフォルニア大学から教員が来学した。今後も学生間の交流を図る目的で单カリフォルニ ア大学の教員のみならず、その学生が来日することが予測される。また平成 19(2007)年度に は共同研究のために海外から招聘した研究員が 3 ヶ月に渡って滞在するなど、今後、主に海 外からのゲストを受け入れる機会が増加する見込である。このため、現在、利用法の見直し 198 を行っている。施設設備等の改良や、ウエルカムパーティー等の企画をするなど、会館を活 性化していく必要があると思われる。建物については女子寮と同様、設備等の老朽化が進ん でおり、今後客室の空調等の更新工事が必要とされる。 199
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