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小柳・村松・小橋:分解特性からみたバイオマスおよび堆肥の利用方向
分解特性からみたバイオマスおよび堆肥の利用方向
小柳渉・村松克久’・小橋有里
現所属:’新潟地域振興局農業振興部
RecommendationofEffectiveUtilizationofBiomassandCompostsBased
onOrganicMatterDecompositio、Property
WataruOYANAGI,KatsuhisaMURAMATSUandYUriKOBASHI
キーワードバイオマス,堆肥,分解特性,利用方向
要約酸性デタージエントリグニン(ADL)が難分解性有機物(土壌中3年間で残存する有機物)
の指標になることを、ガラス繊維浦紙法を用いて確認した.さらに,易分解性有機物の指標として酸
性デタージエント溶液可溶有機物(AD可溶有機物),難分解性有機物の指標としてADLを用い,さ
まざまなバイオマスや堆肥の有機物分解特性を評価し,分解特性からみた望ましい利用法について提
案した.
(1)食品残さやエタノール発酵残さの乾燥物(DDGS)等易分解性有機物が多く難分解性有機物が少な
いバイオマスは飼料利用やメタン発酵利用に向く.土壌改良資材として利用した場合は有機物を有
効に利用できない.
(2)林業残さ等難分解性有機物が多く易分解性有機物が少ないバイオマスは,土壌改良資材としての利
用や炭素貯留(二酸化炭素固定)に向く.
(3)各バイオマスについて無機成分も考慮した利用案を示した.
(4)生ごみコンポストや豚ぷん堆肥(副資材なし)等難分解性有機物が少なく易分解性有機物が多い堆
肥は,分解しやすいという特性を考慮した利用が望ましい.
(5)パーク堆肥や牛ふん堆肥等難分解性有機物が多く易分解性有機物が少ない堆肥は,土壌改良的利用
や炭素貯留に向く.
わが国では,年間2億8000万tと推定される(農林水
改良効果をもたらすと考えられる(西尾2007).さらに
産省,1999),家畜ふん尿,農産廃棄物,汚泥,食品廃棄
近年注目されている有機物施用による土壌での炭素貯留
物,生ごみ等のバイオマスが大量に発生しており,その
(二酸化炭素固定)もこの難分解性有機物によるものと
有効利用が課題となっている.これらバイオマスそれぞ
考えられる.このように有機質資材の農地施用において
れに適した利用を促進するためには,水分や無機成分だ
も分解特性の評価は重要である.
けではなく,有機成分の性質すなわち分解特性も考慮す
有機物共通の易分解性有機物の指標としては酸性デ
ることが重要である.具体的には,分解されやすく生物
タージェント溶液可溶有機物(以下AD可溶有機物)
に利用されやすい易分解性有機物と,分解されにくく残
含量が有用と考えられている(小柳ら2010).難分解性
りやすい難分解性有機物がどの程度含まれているかを評
有機物の指標の候補としては一般的に分解しにくい成分
価することが,各バイオマス中の有機物(炭素)を有効
とされているリグニンが有望であると考えられる(志賀
に利用するために必要と考えられる.
1985).そこで,酸‘性デタージェントリグニン(以下
農地施用の視点からみると,堆肥等有機質資材に含ま
ADL)が有機物共通の難分解性有機物として適切かどう
れる易分解性有機物は土壌微生物を活‘性化させる一方,
かを検証し,さらに易分解性有機物の指標としてAD可
急激な分解に伴う作物の生育障害の原因ともなる(原田
溶有機物,難分解性有機物の指標としてADLを用い,
2004).なたね粕等の有機質肥料では,易分解性有機物の
さまざまなバイオマスや堆肥の有機物分解特性を評価し,
分解により無機態窒素を供給する.難分解性有機物は土
分解特性からみた望ましい利用方向を示した.
壌に残留・蓄積することにより団粒形成等いわゆる土壌
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小柳・村松・小橋:分解特性からみたバイオマスおよび堆肥の利用方向
(mg/g乾物)とADF(mg/g乾物)を差し引き算出した.さら
材料と方法
に酸性デタージェント溶液で煮沸後の乾燥残さ中ならび
1.供試試料
に硫酸処理残さ中の炭素を乾式燃焼法により測定し,ケ
バイオマスは,新潟県内から収集した食品残さ29点,
イ酸含量を考慮してADFならびにADLとして有機物中
に含まれる炭素含量(それぞれADF−C,ADL−C)
生ごみ3点,活性汚泥1点,農産副産物8点,バイオエ
タノール発酵残さの乾燥物(DDGS)4点,家畜ふん4点,
を求めた.
キノコ廃菌床10点,果樹勢定枝2点,林業残さ(竹1点,
2)無機成分
葉部5点,枝5点,樹皮5点)を用いた.評価にあたっ
全窒素含量は乾式燃焼法で測定した.リン酸含量は湿
ては,食品残さは原料,キノコ廃菌床は培地基材で分別
式灰化後,バナドモリブデン法で測定した.カリウム
(カリ)含量は湿式灰化後,原子吸光法で測定した.塩
した.
堆肥は,主に新潟県内から収集した生ごみコンポスト
素含量は堆肥をアルカリ含浸一灰化溶解(石橋2001)後,
6点,キノコ廃菌床堆肥2点,豚ぷん堆肥57点,鶏ふん
青山(1992)の手法で間接吸光イオンクロマトグラフィー
堆肥14点,牛ふん堆肥59点,パーク堆肥20点を用いた.
を用いて測定した.
評価にあたっては,豚ぷん堆肥は副資材の有無,牛ふん
堆肥は畜種で分別した.
供試したバイオマスおよび堆肥は、いずれも凍結乾燥
結果と考察
または風乾後,1mm以下に粉砕し,試料とした.
1.難分解性有機物の指標、および分解性とデター
ジェント分析値の関係
2.ガラス繊維漁紙法による3年間炭素残存量(難分
解性有機物)の測定
難分解性有機物は微生物には分解されにくい有機物で
供試試料の中から牛ふん堆肥10点,豚ぷん堆肥6点,
あるので,ガラス繊維瀧紙法で測定した3年間土壌中に
鶏ふん堆肥2点,家畜ふん3点,なたね粕1点,米ぬか
残存する炭素量を本稿での難分解性有機物とした.図1
1点,パーク堆肥1点,スギの葉1点,腐葉土1点,桜
に3年間炭素残存量(難分解‘性有機物)と,ADF−C
チップ1点を用いた.
(ADFとして含まれる炭素)およびADL−C(ADLと
風乾した黒ボク士の乾士20g相当量に試料を49混合
して含まれる炭素)の関係を示した.3年間炭素残存量
し,ガラス繊維円筒浦紙(ADVANTECj35×120mm)
とADF−Cの関係(図1-A)では,相関関係は認められ
に入れ,防虫網に包み,新潟県農業総合研究所畜産研究
るもののすべての有機物でADF−Cは3年間炭素残存量
センターの黒ボク土土壌の10cm深に3連で3年間埋設し
より大きく,ADFは難分解性有機物の指標としては過大
た.取り出し後風乾し,重量と乾式燃焼法(スミグラフ
評価になり不適当であると考えられた.それに対して
NC-90A)で求めた炭素含量から混合物中の全炭素量を定
ADL−Cの関係(図1−B)では,相関係数がADF−C
量し,対照(士のみ)の全炭素との差し引きから混合物
より高く,またプロットはy=x直線上にあり,3年間
中に残存している試料由来の炭素量を求めた(土壌環境
炭素残存量とADF−Cはほぼ等量の関係であった.こ
分析法編集委員会編1997).さらに試料49中の全炭素で
の結果と一般的にADLは分解しにくい成分より成って
除して残存率を求め,試料の炭素含量を乗ずることに
いると考えられていることを併せると,ADLは様々な有
よって乾物あたりの炭素残存量を算出した.
機物共通の難分解性有機物の指標となり,その含量で難
分解性有機物を評価できると考えられた.
3.成分分析
易分解性有機物については,AD可溶有機物がその指
1)AD可溶有機物,酸性デタージェント繊維(ADF),
標となることが小柳ら(2010)により示されている.こ
ADL
のことと上記の結果を併せると,さまざまな有機物の分
デタージェント分析の手法(自給飼料品質評価研究会
解特性はデタージェント分析により統一的に評価でき、
編2001)で酸性デタージエント繊維(ADF),ADL,AD
その概念は図2のように整理できる.なお,易分解性有
可溶有機物を測定した.有機物をlOO倍量の酸性デター
機物とAD可溶有機物との回帰式は約200mg/gDMでx
ジェント溶液(O5molL-l硫酸lOOOmlに臭化セチルトリ
軸と交差している(小柳ら,2007:小柳ら,2010).これ
メチルアンモニウム209を溶解したもの)で1時間煮沸
は,AD可溶性有機物が200mg/gDM以下であれば易分解
後浦過p洗浄・乾燥・秤量(a)し,さらに72%硫酸で処
性有機物がゼロと評価できることを示している.実際に
理し水を加え煮沸後,漉過・洗浄・乾燥・秤量(b)し,灰
AD可溶有機物で易分解性有機物を評価するにあたって
化後秤量(c)した.cはケイ酸であり,ADFはaとcの差,
は,ゼロを最小値とした方がわかりやすいので,本稿で
ADLはbとcの差で求めた.AD可溶有機物はADF以外
はAD可溶有機物−200(mg/gDM)を易分解性有機物の
の有機物であるので,乾物重'000(mg/g乾物)より粗灰分
指標とした.なお,数値がマイナスとなるものもあるが
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小柳・村松・小橋:分解特性からみたバイオマスおよび堆肥の利用方向
B・ADL−C
A,ADF−C
400
300
200
鼠
』
塞
ぎ
亀
100
400
︵尋墾仰浬駐余識︶
三島通E噸仲諜牒追糎叶飼
︵尋懇拝趨駐余熱︶
室ロ靭勘E噸件諜僻巡腫
叶
500
300
200
100
4
懲
奏
”
‐Rこ=0F
く
り
〕
0
0
01002003004005000100200300400
ADL−Cmg/gDM
ADF-Cmg/gDM
◇牛ふん堆肥■豚・鶏ふん堆肥△その他有機物◇牛ふん堆肥■豚・鶏ふん堆肥△その他有機物
図1ADF-C,ADL-Cと3年間炭素残存量の関係
無機物
謹
議
簿 蕊蕊蕊蕊 難織蕊蕊蕊J蕊
§;蕊難戦
I
蛸
蕊
i
i
i
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識
デタージェント
分析値
I獅
蕊鎧『鱒
・・出茎竺
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灰分
ふ︲。・非.畦。眼醍・・・ぜぇ
︲、。グ.豚︲・も︲.。
概念的
分画
重
い相関関係
有機物の
分解性
顎
韮
風
│
土 ほぼ一致
騒謹
識
静
易分解性有機物:
AD可溶有機物含量−200
指標
(mg/gDM)
難分解性有機物:
ADL含量
(mg/gDM)
図2有機成分,デタージェント分析値,分解性相互の関係
いう我が国の現状を鑑みると,できるだけ飼料利用する
この場合はゼロとする.最大値は800であり,この数値
ことが望ましい.堆肥化等の処理後土壌改良資材として
の有機物は成分すべてが易分解性有機物であるとした.
利用しても,有機物のほとんどを占める易分解性有機物
2.各バイオマスの分解特性と利用方向
が堆肥化中あるいは施用後に微生物により分解され,わ
易分解性有機物の指標としてAD可溶有機物含量,難
ずかしか含まれていない難分解性有機物が残るのみなの
分解性有機物の指標としてADL含量を用い,図3に各
で,有機物を有効には利用できない.稲わらや麦かん等
バイオマスについて有機物分解特性の特徴を示した.食
の農産副産物は食品残さにくらべて易分解性有機物が少
品残さやDDGS等は易分解性有機物が多く難分解性有機
なく難分解性有機物が多いが,飼料自給率向上の観点か
物が少ない.このようなバイオマスは,有機物の分解率
らできるだけ飼料利用することが望ましいと考える.林
(消化率)が高いほど望ましい飼料利用やメタン発酵利
業残さや果樹煎定枝は難分解性有機物が多く易分解性有
用に向くと考えられる.特に飼料自給率が極めて低いと
機物が少ない.このようなバイオマスは,土壌により多
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三島通E
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6
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飼料利用・メタン発酵利用に向く
ITiⅢmILi
処Q
:堕しD米Dを
D D −
回AD可溶有機物-200(易分解性有機物の指標)■ADL(難分解性有機物)
0
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三口函へ即E
ノコ廃菌床
図3各バイオマス中AD可溶有機物−200(易分解性有機物の指標)とADL(難分解性有機物)
くの難分解性有機物を供給できるという観点から土壌改
キノコ廃菌床,カリ肥料には農産副産物類がそれぞれ適
良資材としての利用や土壌での炭素貯留(二酸化炭素固
している.ただし,土壌改良資材としての利用適‘性を含
定)に向く.
めてこのような農地での利用には,植物病原菌や雑草種
子が付着している恐れがあるものや施用により生育阻害
3.その他の成分を考慮した各バイオマスの利用方向
の恐れがあるものは堆肥化等により植物に対する安全性
上記に示した利用方向はあくまでも分解特性からみた
を高める必要がある.また水分が多いものは乾燥や堆肥
方向であり,実際の利用にあたっては水分や無機成分等
化等によりハンドリングを改善する必要がある.
の要因も考慮する必要がある.そこで,無作為に抽出し
燃焼し燃料として利用する場合は,水分が少なく,肥
た各バイオマスついてAD可溶有機物とADLの他に全窒
料成分,灰分,塩素が低いものが適する.これには林業
素,リン酸,カリ,粗灰分,塩素を測定し,各成分の含
残さや果樹勢定枝が適している.
量とこれらの成分をもとに整理した利用適性(案)を表l
なお,表lに示した値はあくまでも分析例であり各成
に示した.なお,水分は概ねの区分で示した.
分値は個々のバイオマスによりばらつくことと,実際の
易分解性有機物と安全性が高いほど適性が高い飼料利
利用にあたっては地域での発生量や利用設備等の要因も
用には,上記に示したとおり食品残さや一部の農産副産
考慮する必要がある.
物が適している.易分解性有機物が高く肥料成分(特に
窒素)が低いほど適‘性が高いメタン発酵利用には,デン
4.各堆肥の分解特性と利用方向
プン系の食品残さや生ごみが適している.特に安全性に
各堆肥についての有機物分解特性の特徴を図4に示し
難がある場合が多い生ごみについては,その高い易分解
た.生ごみコンポスト,豚ぷん堆肥(副資材なし)は易分
性有機物を生かすためにメタン発酵利用が最適だろう.
解性有機物が多く難分解性有機物が少ないという特徴が
肥料的利用には有機物分解特性よりも,肥料成分含量
ある.生ごみコンポストの易分解性有機物が多いのは原
がポイントとなる.窒素肥料には全窒素含量が高いタン
料である生ごみ中に多く含まれていること(図3)や堆肥
パク質系食品残さやDDGSが,リン酸肥料にはDDGSや
化ではなく乾燥法で製造されている場合が多いことが要
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表1各バイオマスの成分と利用適性(案)
利用適性(案)
成分含量(mg/gDM)
多多多中多中中多多中中
へへへ多多多中多多多多一少一へ一へ少少へ一少少
中へ少
少少中少少中中少少
△
△
△
○△
○
○ ○
○ ○
○
○○○○
○
○ △
△△○○△○○
○○○○○○○
○△
・各日乃・4■巳−4■巳
、.t,:データなし
○○○
●
●
l)エタノール発酵残さ(乾燥前)
○
○○△○△
もみがら
果樹勇定枝
林業残さ竹
林業残さ葉
林業残さ枝
林業残さ樹皮
○○○○○○○○○○○△
キノコ廃菌床オガクズ系
■
キノコ廃菌床コーンコブ系
弼羽6旧000崎2327刻皿5610112101
麦かん
腿弧Ⅳお判刀削皿刃釘闘卯耐幻”お恥判脳刀脇棚鵡刃
大豆皮
稲わら
①■
1411崎ul3加巧、n%Ⅳ創り川93,6mm
6
スイカ収穫残さ
●●■
73237刀Ⅱ44飢幻叫箪429型nOmlnn
n
生ごみ
0
DGSl)精白米
■■
卯塑Ⅱ塑侶刈糾粥Ⅲ茄乃犯茄型95腿旧3829,,
DDGSトウモロコシ
2
36剥妬釘叩6㈹刀師お婚姻駈兜幽酌動狐獅狐峨
食品残さ麺類
食品残さ米菓など
食品残さパン系
食品残さ豆腐粕
食品残さ酒粕類
食品残さビール粕
食品残さ醤油粕
ハネ出いも
穏砺fADL皐種カリ息塩素飼料驚繍醗脆蕊織
0
1刀
0乃
7⑲
8斜
6里
2お
5氾
3剥
7砧
3別
7諏8羽5
刀乃
お5
創2
測0
Ⅳ7
03
旧9
旧4
犯5
旧4
4
食品残さタンパク系
34m232312243121173121555
、数水分
○:適する△:やや適する
因としてあげられる.豚ぷん堆肥(副資材なし)について
がその要因であると考えられる.これら難分解性有機物
は,モミガラや林業残さなど副資材が使われていないこ
が多い堆肥は,土壌中に有機物が残存するため土壌改良
とや,急速な堆肥化(密閉縦型方式)で製造されている場
資材として優れており,また易分解性有機物が極めて少
合が多いことが要因としてあげられる.これら易分解性
ないので,水田における異常還元(いわゆる「湧き」)
有機物が多い堆肥は,大量に施用しなければならない土
のリスクが小さいと考えられる.
壌改良資材としての利用よりも,分解しやすいという特
キノコ廃菌床堆肥,汚泥堆肥,豚ぷん堆肥(副資材あ
徴を考慮した利用が望ましい.具体的には,一時的では
あるが施用により土壌微生物が増殖するので,土壌の生
り)は,両グループの中間的な特徴を持つので,易分解
性有機物と難分解性有機物両方を考慮した利用が望まし
物性の改善や有用微生物の増殖資材としての活用である.
い.鶏ふん堆肥は,易分解性有機物は比較的少なく,か
さらに土壌の還元消毒等による土壌病害等の抑制(新潟
つ難分解性有機物も少ないという特徴をもつ.これは他
農総研2009)にも利用できる可能性もある.また豚ぷん
の堆肥に比べて有機物としての施用効果は低いというこ
堆肥は比較的窒素が多く含まれているので,地力窒素を
とを示す.
なお,以上に示した利用方向はあくまで分解特'性から
底上げする資材としての活用も期待できる.
みた方向であり,実際の利用にあたっては無機成分(特
パーク堆肥や牛ふん堆肥は難分解性有機物が多く易分
に肥料成分)を考慮する必要がある.
解性有機物が極めて少ないという特徴がある.パーク堆
肥については原料に難分解性有機物が多い樹皮を用いて
5.本研究の活用面
いること,牛ふん堆肥についてはもみがらや林業残さな
どの難分解性有機物が多い有機物が副資材として大量に
本稿で示した各バイオマスおよび各堆肥の分解特性か
用いられていること,両者については堆積方式で長時間
らみた利用方向は,行政や現場における利用法策定のた
堆肥化するため易分解性有機物の分解程度が大きいこと
めの基礎資料としての活用ができると考えている.また,
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二口四へ四E
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季霊羅:蕊憲:
り
肥 肥
回AD可溶有機物-200(易分解性有機物の指標)■ADL(難分解性有機物)
図4各堆肥中AD可溶有機物(易分解性有機物の指標)とADL(難分解性有機物)
本研究で分析した有機物以外にも国内にはさまざまなバ
石橋晃.2001.新編動物栄養試験法.pp、512-513.
イオマスが存在し,さまざまな有機質資材が農地におい
養賢堂,東京.
て利用されており,新たな利用方法も開発されている.
自給飼料品質評価研究会編.2001.改訂粗飼料,の品
未知のバイオマスや有機質資材がどういった利用に適す
質評価ガイドブック.Pp・'1-12.(社)日本草地畜産
るかは,今後データを積み重ねて判断していく必要があ
種子協会,東京.
るが,有機物(炭素)の特‘性を最大限に利用するための
新潟県農業総合研究所.2009.糖蜜を用いた土壌還元消
分解特‘性の把握には,本稿で示した指標すなわち酸性デ
毒法によるトマト青枯病およびネコブセンチュウの
タージェント分析値が広く活用できるのではないかと考
防除.
えている.
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2/070112.html
西尾道徳.2007.堆肥・有機質肥料の基礎知識.pp、40‐
55.農文協,東京.
謝 辞
農林水産省.1999.平成11年度食料・農業・農村の動
パーク堆肥を提供して頂きました(NPO)日本パーク
向に関する年次報告.
堆肥協会に感謝申し上げます.
http:"wwwma伍gojp/hakusyo/、Cu/hll/html/SB1.3.6.ht‐
m
小柳渉,安藤義昭,棚橋寿彦.2007.有機質資材の分
解特性とその指標.土肥誌78,407-410.
文 献
小柳渉,棚橋寿彦,村松克久,小橋有里.2010.易分
青山正和.1992.間接吸光クロマトグラフィーによる土
解性有機物の指標としてのAD可溶有機物の有用性.
壌溶液中の無機陰イオンの分析.土肥誌63,597-601.
土肥誌81,383-386.
土壌環境分析法編集委員会編.1997.土壌環境分析法.
志賀一一.1985.施用有機物の分解様式と地力・作物へ
pp、120-123.博友社,東京.
の影響.農林水産省農業研究センター編農耕地に
原田靖生.2004.家畜ふん堆肥の腐熟度.畜産環境保全
おける有機物施用技術.pp、8-28.(社)農林水産技術
情報協会,東京.
対策大事典第2版.pp、114-120.農文協,東京.
新潟畜セ研報Nol7(2011):9−14
1
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