作業療法 効果・ 実践での応用 * 略歴等については,P4 参照 星城大学リハビリテーション学部作業療法学専攻・教授 竹 田 徳 則 作業療法の効果・実践での応用 活動場面を通じて 生活の基本と作業療法 座位 ・ 食事 ・ 排泄 ・ 清潔 ・ 活動 寝たきり予防 生命維持 覚醒作用 基本欲求 上肢使用 楽しみ 快適 衛生 人間らしさ 刺激 精神活動 身体活動 作業活動場面紹介と説明 人間の尊厳 コミュニケーション・環境整備 症 例 紹 介 • 83歳 女性 老年期認知症 長男夫婦と同居 作業療法の効果・実践での応用・考え方 生 活 • 生活歴 構成要素 作業活動 • ADL・IADL • 仕事・生産的活動 • 遊び・余暇活動 18歳で結婚し夫出征中は苦労して2人の 子を育てた。主たる仕事は農業。 工事関係の会社勤務も経験。 70歳以降は自宅にて主に家事を担っていた。 症例79歳の時に夫入院 症例81歳の時に夫死亡 その後、電気のスイッチが分からない、 洗濯機を操作できない、ガスの消しわすれ や徘徊が顕著となる。 平成XX年9月XX認知症療養病棟入所 • 運動機能 • 感覚機能 • 知的機能 • 社会的機能 • 心理的機能 治療・訓練・指導・援助に応用 ADL :身の回り動作 IADL :手段的ADL(生活関連)の活動 症例入所時状況 ・ HDS-R 12点(30点満点) 認知症の人のための作業活動を 用いた実践 基本的な考え 見当識2点,3つの言葉記憶3点,計算1点,逆唱1点, 物品記銘2点,言語流暢3点 ・ N-ADL 45点(50点満点) 歩行・起座10点,生活圏7点,着脱衣・入浴9点,摂食10点 失ったものよりも残された よい面を積極的に活用する 排泄9点 ・ NMスケール 33点(50点満点) 家事・身辺整理7点,関心・意欲5点,会話9点, 記名・記憶7点,見当識5点 ・ 生活の様子 「することがないでつまらん」,「何かすることはないか」 作業活動 活動 共有 感情 目的 コミュニケーション 「早く家に帰りたい」など時間をもてあまし、落ち着かない 様子 作業活動には促せば参加可 技術 認知症の人 10 症例にとっての作業活動の意義 作業療法目標 参加・個人因子・環境因子に着目 1.役割を担える • 活動と話題を共有する場 • 交流を広げる契機 • 役割を担える場 • 賞賛が自己確認の場 • 生活過程を語る場 • 存在感を感じることのでき 心理・社会面に好影響 2.対人交流が広がる 3.存在感を感じる 以上から心理面と日常生活の安定、活動性 の回復を図る 方法 ・小集団による藁を用いた継続的な活動に 参加(3ヶ月) ・開放的集団活動 ・週1回 1時間 ・職員は補助的立場、入所者から教わる役割 ・賞賛の言葉を惜しまない る場 経過 平成XX年10月以降 その後 初回 小集団活動の説明 藁にまつわるエピソード 2回目 積極的な取り組み ・ 「たたいて柔らかくせんと手が荒れる」 ・ 「強く叩きすぎると藁が切れてしまう」 3回目以降 率先して縄綯い・草履編み ・ 周囲の賞賛の声に対して教える役割 ・ 昔を思い起こす発言 「昔は土間やいろりのそばの座敷で編んだ」 「貧乏だったで縄を綯って売った」 「学校に履いていく草履は自分で編んだ」 「子供にもよく教えた」 • 療養病棟にて生活を継続 • 薬物療法を併用しながら、各種作業活動 に参加 生活の中で役割意識の持てる 活動 • 帰宅願望が強くなり、職員による対応の みでは限界 • ケア検討、家族との面談を繰り返し、 症状の理解を促し、定期的な電話連絡や 面会を継続 • XX年X月 脳血管障害発症 右片麻痺 臨床応用のポイント ・ 他の参加者や入所者間での会話に広がり 「甲乙丙で評価された」 「兄弟で一番下手だった」 「藁か懐かしいな」 「上手に編むね」 ・ 職員の反応 入所者の普段と違う取り組みと会話の 広がりに驚きの反応 ・ 再評価 平成XX年12月末 NMスケール 33点から37点 関心・意欲・交流面の向上 1.生活史を重視した活動を選択する 2.成功体験による喜びをもたらす 3.肯定的なコミュニケーションを用いる 4.活動の工程に応じた役割の分担を考慮する 5.視覚的な情報呈示を用いる 6.認知症の人が心理的に負担とならない 物理的距離を保つ 7.落ち着ける雰囲気の環境を設定する 8.日常のあらゆる場面において上記に留意する HDS-RとN-ADLは入所時同様維持 文献 1)日本作業療法士協会(監):作業療法学全書(改 訂第2版)第2巻.協同医書出版,1999. 症例作業活動場面の紹介 2)日本認知症ケア学会(編):認知症ケアの実際Ⅱ ;各論(改訂第2版).ワールドプランニング, 2006. 11
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