情報解析のプロ集団:分析担当者の役割

WHITE PAPER
情報解析のプロ集団:分析担当者の役割
顧客インサイトや分析結果を利用し、ビジネスを加速するために
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
目次
要旨..................................................................................................................................... 1
はじめに:金の採掘と情報解析のプロ集団...................................................................... 2
情報解析のプロ集団................................................................................................. 3
情報ソースと「分析組織」の定義...................................................................................... 4
分析組織.................................................................................................................... 5
分析チームの進化:
高みへと続く道はデータで埋め尽くされている................................................................... 5
博士号取得者........................................................................................................... 5
洞察の集約................................................................................................................. 6
分析チームを率いるリーダー....................................................................................... 6
発見の時代:答えはデータの中に..................................................................................... 7
分析力の競争............................................................................................................ 8
顧客中心のビジネスモデル........................................................................................ 8
情報の激増......................................................................................................................... 9
データの複雑化........................................................................................................... 9
分析組織に求められる情報解釈能力.................................................................. 10
サービス提供者からビジネスの牽引者へ........................................................................ 10
チャンスを生む領域................................................................................................... 12
まとめ.................................................................................................................................. 14
重要な要素:人材................................................................................................... 14
i
Lori C. Bieda氏は、カナダで「ビッグ5」として知られる銀行の1つであるCanadian Imperial Bank of Commerce(CIBC)で、顧客インサイトおよびデータベース・マーケティングの担当責任者
として活躍中です。Bieda氏は、データベース・マーケティングをはじめ、市場調査、モデル化、統計、分析、プログラミングといった幅広い業務を担当する分析専門スタッフ80名から
なるチームを率いています。マーケティングや広報、分析といった領域で15年を超える経験を積んできた彼女は、データを有益なビジネス戦略へと変換させていくことを生涯の仕事と
し、自らのチームにも指導を重ねてきました。また、消費者マーケティングおよびB2Bマーケティングの分野に関する著作活動や講演活動を通じて、大量のデータに囲まれた今日のビ
ジネス環境において、データの中から最大限のビジネスメリットを掘り起こすヒントを提案しています。
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
要旨
本書「情報解析のプロ集団」は、「顧客インサイトや分析結果を利用し、ビジネスを加速するため
に」というタイトルで書かれたホワイトペーパー3連作の第1弾です。このシリーズでは、ビジネスを加速
するためにインサイト・チームや分析担当者、調査担当者を率いるリーダーに必要なものは何かを
探り、それによってデータの有効活用をさらに推し進め、意思決定の支援やビジネスメリットの促進
につなげることを目指していきます。
本書では特に情報解析に特化したプロ集団に着目し、情報と業務アプリケーション間のギャップを
埋めることを目的に、分析業務を担う人々が組織内で実行する役割、あるいは果たすべき役割
について考えます。そして、こうした分析業務を担当するコミュニティの進化について模索すると同時
に、組織内に強い影響力を及ぼすために必要となる進化の方向性についても解説していきます。
続く2つのホワイトペーパーでは、現在のような技術寄りの立場から、より強力にビジネスを牽引し、
数々のインサイトを統合していく方向へと進化する手法について考えていきます。技術力をビジネス
力へと進化させることを通じて、企業はデータを最大限に活用できるようになっていくのです。
さらに続編では、分析チーム内に優秀な人材を確保し、革新へと向かう気運を育てる優れた文化
を創り上げるための手法について解説します。分析担当者を、事業や顧客や従業員に価値をも
たらす存在へと育て上げていく文化の築き方を紹介します。
本シリーズ中で触れた情報の中には、カナダ国内の分析・調査担当者のグループ100名以上を対
象としたアンケート調査やインタビューの結果が反映されています。参加者が働く業界は、金融サ
ービス業をはじめ、小売業、通信業など多岐にわたります。この場をお借りして、皆様から寄せられ
た貴重なご意見と調査へのご協力に心からの感謝を申し上げます。
1
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
金の採掘と情報解析のプロ集団
インサイトを担当するプロフェッショナルのほとんどは、データを宝の山と見ています。データは、うま
い具合に掘れば会社にとってとてつもない価値をもたらしてくれる情報が湧き出してくる豊かな源
泉のようなものなのです。
インサイト担当の多くは、データの中に潜む真実こそが私たちを解放してくれると信じています。
私たちは金脈を探す人々と同様に、まずデータ全体を見渡し、黄金にも匹敵する洞察の薄片
がその姿を現すのを待ちます。そして、価値ある洞察の粒がいくつか見つかると、そのデータを自
由に共有して図やレポートを作成し、経営層が一目見ただけで何かを気づいてくれるようにと願
いつつ、会議の場へと送り出します。
「どうか思いが届きますように」と願いながら。
「データの中から見つけた、あの淡い光が輝くアイデアであってほしい」と、このわずかな兆しが組
織を行動へと駆り立ててくれることを祈る気持ちで、指摘した事実が明確に伝わることを期待す
るのです。
しかし「金鉱」に眠るデータを抱える担当者たちと、実際に金の売買を決める経営会議の間には
大きな隔たりがあります。こうした隔たり、つまり知識と行動の間にある大きなギャップを乗り越え、
分析力を武器にした勝負に勝てるかどうかは、分析組織の手腕にかかっているのです。
分析担当者はビジネス戦略にひもづいた明確かつ総合的な洞察を、ビジネスメリットや対応策と
ともに提示しなければなりません。その洞察が、ビジネスに意味のある変化をもたらす分析となる
か、それとも分析担当者の頭の中で永遠に眠る類の事実に終わるかの違いはここにあるのです。
2
■ 分析担当者はビジネス戦略にひもづい
た明確かつ総合的な洞察をビジネスメ
リットや対応策とともに提示しなければ
なりません。その洞察が、ビジネスに意
味のある変化をもたらす分析となるか、
それとも分析担当者の頭の中で永遠
に眠る類の事実に終わるかの違いはこ
こにあるのです。
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
情報解析のプロ集団
数多くの事業部門を抱え、大規模かつ充実したデータベースを保有する大企業にとっては、もは
や「情報の意味を理解すること自体が1つの業務となっています。そのため、さまざまな事業部門に
対して実績データにもとづいた意思決定の基礎を教える情報解析のプロ集団がこれまで以上に
必要とされているのです。
■ 分析担当チームは自らの業務機能の
枠を超えて外の世界に足を踏み出し、
データの提供者から洞察を集約するイ
ンサイト・インテグレーターへと進化しな
ければならないのです。
分析業務を担当する組織は情報解析のプロ集団へと成長する可能性を秘めた独自の位置にい
ます。本書では、データからビジネスに関する洞察を探し出す分析担当者、とりわけチーム単位で
働く分析担当者が形成する組織を詳しく定義します。彼らは「分析チーム」あるいは「インサイト・
チーム」などといった名称で呼ばれますが、一般の人には白黒しか区別できないデータやパズルの
一部しか見ることができないデータの中から微妙な色の違いを識別するスキルを備えています。さら
に彼らはビジネス課題を明確に指摘し、業績を正確に予測するために情報を活用して、ビジネス
チャンスをつかむための最善のソリューションを見つけ出すことができます。
このチームが現在のサービス提供者という考え方を捨て、ビジネスの牽引者へと進化することができ
たら、各事業を成長させる力や、顧客と事業部門との関係の質を向上させる力を発揮することが
できるでしょう。しかし、そのためにはまず、分析担当チームは自らの業務機能の枠を超えて外の世
界に足を踏み出さなければなりません。そしてビジネスをより総合的な視野で捉え、会社の戦略に
照らしてビジネス全体を見渡しながら個々の洞察を関連づける必要があります。つまり、データの
提供者から洞察を集約するインサイト・インテグレーターへと進化しなければならないのです。
3
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
情報ソースと
「分析組織」
の定義
ほとんどの企業には情報を蓄えるデータバンクがあり、それらは各事業部門に情報
へのアクセスを提供する人々によって管理されています。従来、こうした人々を「分
析担当者」と呼び、情報ソースを「データベース」と呼んできました。時代とともにデ
ータ量は増大しましたが、情報へのアクセスは容易になり、情報ソースの数も増えて
きました。すべてのデータを1カ所にもっている企業など、もはや存在しません。BI(ビ
ジネス・インテリジェンス)は、あらゆる部署やデータベースで利用され、生のデータを
引き出し、次々に洞察を導き出しています。時にはデータベースを情報源としない
(たとえば、市場調査や消費者動向、クライアントからのフィードバックといった)情報を引き出す
ことも可能です。
従って、次のように増殖し続ける情報を含めるために、ビジネス情報の範囲を大きく捉え直す必
要が出てきました。
• マーケティング・データベースおよびデータウェアハウス
• 財務データベースおよび各種財務レポート
• チャネル・データベースおよび各種レポート(コールセンターや小売拠点、オンラインを利用した
販路など)
• リスク情報(信用調査の結果や支払い状況)
• マーケティング・キャンペーン分析
• 予測的分析(モデリングや予測、最適化)
• 顧客からのフィードバックおよびクレーム
• 従業員からのフィードバックおよびアンケート
• 各種分類結果(顧客、市場、その他)
• 予測のためのデータ・マイニング
• 消費者動向
• 市場調査(独自調査および共同調査、定性調査、定量調査)
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THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
分析組織
分析組織は、情報ソースと分析結果の間に介在する個々の担当者から構成されます。分析
担当者は重要な役割を担っており、データ中に眠る金塊のようにビジネスにとって価値ある存在
であるにもかかわらず、十分に活用されていません。
分析組織に属する人材のほとんどは、SASのプログラム・スキルを含むテクニカルな専門能力を
備えています。統計学に関する見識をもつ者も少なくありませんし(基礎的な経験に留まる者も
いますが、ほとんどが非常に高度な専門性を身に着けています)、専門家として公認マーケティ
ング・リサーチ・プロフェッショナル(Certified Market Research Professional:CMRP)などの認定資格
を保持する者もいます。こうした人々は、データベース・マーケティングや市場調査、モデリング、
統計、分析、業務分析、プログラミングといった業務を担当しています。
■ 分析組織は、情報ソースと分析結果
の間に介在する個々の担当者から構
成されます。分析担当者は重要な役
割を担っており、データ中に眠る金塊の
ようにビジネスにとって価値ある存在で
あるにもかかわらず、十分に活用されて
いません。
分析チームの進化:
高みへと続く道はデータで埋め尽くされている
15年~20年前、企業はまだデータの取得やデータベースの作成、データの整理に翻弄されてい
ました。テクノロジーが進歩した現在、データの収集・操作は以前より簡単になり、データは至る
所に存在しています。私たちは常により優れた情報をより多く入手しようとしていますが、今のよ
うな情報過多の環境においてデータへの柔軟かつ容易なアクセスは当然のこととなっています。
そして、こうして得たデータの使い方によってビジネスの成否が決まってくるのです。
博士号取得者
分析チームは、複数のデータ保管場所(後のマーケティング・データベース)から情報を掘り起こ
す人々のグループとしてスタートしました。彼らは標準的な検索を行って情報を抽出し、その結
果をビジネスユーザーに提供していました。やがて、チームに鳴り物入りで統計の専門家や博士
号取得者が加入し、彼らはデータ担当グループに論理的思考力をもたらしました。もしその時
代に分析担当者たちを率いるリーダーがいたとしたら、彼らは統計学者と同じ言語を使っていた
ことでしょう。言い方を替えれば、統計マニア同士が一般の人々には理解できない「専門用語」
で会話していたということになります。
こうした人材はマーケティングやリスク管理、製品チームにも投入されるようになりました。しかし、
彼らのスキルが正しく理解されることはなく、その価値も未活用のままでした。つまり彼らは「データ
を処理する人たち」と見なされ、放っておくのが一番と考えられていたのです。
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THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
洞察の集約
その後、分析グループは、データベース・マーケティングや市場調査の専門家といった多彩な人材
を広く迎え入れるようになりました。新たに迎えられた者たちの中には、自分が本来属すべき場所
は分析グループではないと大騒ぎして抵抗する者もいました。彼らはマーケティングや統計といった
業務を担当する部署が自分たちの本来の居場所だと考えていたのです。彼らは統計マニアが使
うものとはまた別の「専門用語」を使って会話したため、分析グループの人々は彼らに普通の言葉
で話してくれるよう懇願しました。そもそも全員が洞察を引き出すという仕事に携わっているわけで
すし、黄金を取り出すためにそれぞれが異なる道具を使っているだけのことだったのです。
ビジネスに関する洞察を集める業務は、次第に1人のリーダーの下に取りまとめられるようになりま
した。グループ内がそれぞれ異なる信念をもった個々の専門家の寄せ集めで、全員を結束させる
明確な拠り所が存在しないことに問題があったためです。結局、事業部門がそれぞれのリーダー
の下で製品ライン別に運営されているのと同じように、分析という縦割り組織の壁の中だけで彼ら
は仕事をしていました(そしてほとんどの場合、いまだにそれを続けています)。全員が同じリーダー
の質問に答え、経営会議のテーブルを囲んで、好奇心に任せて互いをチェックし合っているだけな
のです。
ですから、たとえデータが意図して1カ所に集められ、それを管理するリーダーが任命されたとして
も、BIが導入されたとしても、会社のデータバンクまたはデータ中枢の中に眠っている洞察という金
塊は難解なままで、いまだに私たちを右往左往させているのです
分析チームを率いるリーダー
分析組織を管理するリーダーは、ある種のハイブリッドな存在です。分析系の業務に精通してい
る人もいますし、CRM畑やテクノロジー畑を出自とする例もあります。中にはマーケティングや一般
の事業部門を担当していた人材が抜てきされるケースも見られます。ですから、リーダーたるべき
人物がどういう人かを真から理解することは不可能ですし、こうしたリーダーの職務明細を作成す
る際に経営層が求めていた人物像を正確に知ることなど無理だと言っていいでしょう。私たちは単
にリーダーがデータについて何らかの知識を持ち合わせ、そのデータを外部のすべての人に平易な
言葉で説明できることを願うばかりです。
分析チームが作られると、分析担当者は奥の部屋に閉じこもってデータを引き出し始めます。ビ
ジネスに役立つ可能性を秘めた洞察に偶然出くわすかもしれませんが、発見したお宝情報を伝
える術を豊富にもつ分析担当者はわずかです。ですから貴重な情報が伝わるか否かは、データ
分析を依頼した側の理解力に大きく依存することになります。つまり、依頼者自身が何を求めて
いるか、得た情報をどう使うべきか知っていること、また、問題点を広い視野で捉えて分析結果が
ビジネスに十分な価値を与えてくれるかどうかを見極めることが重要です。依頼内容があまりに大
まかで、何を求めているのかが明確でない場合もあります。一方で依頼範囲が極端に狭く、なぜ
データベースチームやインサイト・チームが動員されなければならないのかと疑問に思うようなケース
も存在します。
6
■ ビジネスに役立つ可能性を秘めた洞
察に偶然出くわすかもしれませんが、
発見したお宝情報を伝える術を豊富
にもつ分析担当者はわずかです。です
から貴重な情報が伝わるか否かは、
データ分析を依頼した側の理解力
に大きく依存することになります。 つまり、依頼者自身が何を求めている
か、得た情報をどう使うべきか知ってい
ること、また、問題点を広い視野で捉
えて分析結果がビジネスに十分な価
値を与えてくれるかどうかを見極めるこ
とが重要です。
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
「事業」部門
分析組織
・ マーケティング担当
・ データベース ・ マーケティング担当
・ 戦略立案担当
・ 市場調査担当
・ 製品チーム
・ モデル作成担当
・ チャネル管理および流通チーム
・ 統計担当
・ リスク管理チーム
・ 分析/業務分析担当
・ 財務チーム
・ プログラム担当
必要な情報の入手を依頼
依頼の明確化、
疑問を解釈しコード化、
問題解決策の検索および調査
分析の結果を出し、
対応策とともに業務部門に回答する
図1.事業部門と分析組織間における現在のやり取り
年月の経過とともに、集中的に分析業務を行うチームが作られました。金融サービスや通信業
界を筆頭としたデータを豊富に保有している業界に、大規模なインサイト・チームや分析チーム
が出現したのです。このような分析的思考をもつ人々が集結したことによって変化の兆しが現れ
ましたが(分析担当者の貢献については別の形で評価されました)、同時にある種の挑戦も示
唆されました。業務上の問題を1つ解明するだけでも十分難しいというのに、広範にわたる洞察
をどう利用すれば、ビジネス全体に起きていることを説明できるのでしょうか?
しかし、分析系の人材が1カ所に集められたことによる最も意義深い影響として現れたのは可能
性でした。
発見の時代:答えはデータの中に
答えは常にデータの中に存在しています。今日私たちがデータを見る時のように明快ではないに
せよ、なぜビジネスは成長しているのか、あるいは成長していないのか、投資すべき領域はどこ
で、倹約すべきところはどこかといった問いへの答えは、目の前にあるデータの中に存在している
のです。
もしデータベースの中にないとしたら、そして確かなバックエンド分析からも引き出せないとしたら、
その時は市場調査を行うことで、対応しようとしている顧客ニーズは明らかになるでしょう。お客
様の声を引き出すことも可能です。競合他社との比較によって自社のブランドの健全性を知る
こともできるでしょう。市場におけるギャップやチャンスを探ることも可能です。このような黄金にも
匹敵する情報は、すべて1つの保管場所に存在するのですが、発掘の努力なしには目にするこ
とはできません。
■ なぜビジネスは成長しているのか、ある
いは成長していないのかといった問いへ
の答えは、目の前にあるデータの中に
存在しているのです。
7
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
分析力の競争
トーマス・H・ダベンポート教授とジェーン・G・ハリス氏は、重要な著書「分析力を武器とする企業
(原題:Competing on Analytics1)」の中で、独自の調査を通じて次のように主張しています。
「多くの産業において複数の企業がよく似た製品や同程度のテクノロジーを提供して
いる場合には、高パフォーマンスの業務プロセスがビジネスの成否を分ける最終要素
となります。これまで競争力の基礎とされてきた多くの要素はすでにその効力を失って
います。地理的優位はグローバル競争においては問題になりませんし、保護的規制
も大部分が解除されました。企業が開発した独自のテクノロジーは瞬く間にコピーさ
れ、画期的な革新性をもつ製品やサービスを生み出すことがますます困難になってき
ているようです。競争優位のもととなるものとして残るのは、最大限の効率性と有効
性をもってビジネスを実践すること、そして可能な限り賢明な意思決定を行うことだけ
です。分析力を武器とする競合企業は、業務プロセスや意思決定から最後の一滴
までビジネス価値を絞り出そうと努力しているのです。」
顧客中心のビジネスモデル
ビジネスモデルは、コスト中心、製品中心、顧客中心という3つの基本形に集約されます。世界
的企業であるWalmartなどを除けば、ほとんどの企業は価格競争に参戦するだけの余裕を持ち
合わせていません(こうした競争が可能なのは、規模を武器とした購買力を備える大企業だけな
のです)。またAppleやMicrosoftのように革新的な製品を最初に出荷して差別化を図れる企業も
極小数に限られています。彼らに続く偉大な改革を生むには膨大なコストがかかりますし、そうし
た戦略を実践するためには企業全体を再構築しなければならないでしょう。ですから、圧倒的多
数の企業は、顧客をよく理解し競合よりも顧客サービスを充実させることで競争力を高めること
を目指しています。こうした努力によってシェアを勝ち取り、利益を上げようとしているのです。
複雑で競争が激しいトランザクション・ベースの産業に身を置く企業にとって、分析力は不可欠
の武器であり、顧客中心主義のカギにもなります。簡単に勝つことも競争力を急激に高めるこ
とも、もはや現実にはあり得ない夢と化しました。競争力が均衡している市場では、競合よりも
多くの「金」の洞察を見つけ出し、調整を図ることで利益を上げることのできる成熟企業が優勢
です。分析を武器とするにはまずデータが必要ですし、ビジネスチャンスを掘り起こすには熱意が
必要です。しかし、それにはまず洞察に行き着くための優れた情報解釈のプロがいなければなら
ないのです。
1 Davenport, Thomas H., and Jeanne G. Harris. Competing on Analytics: The New Science of Winning.
Boston: Harvard Business School Press, 2007.
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■ 複雑で競争が激しいトランザクション・
ベースの産業に身を置く企業にとって、
分析力は不可欠の武器であり、顧客
中心主義のカギにもなります。
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
情報の激増
だれもが有益なデータを切望しています。テクノロジーの助けによって、データの収集・モニター・
解釈は容易になってきました。今ではリアルタイムで絶えずデータを「読み込み」、進捗を確認す
ることができます。かつては、たとえば年に1度あるいは四半期に1度といった頻度でアンケートを
実施し、市場調査を行っていましたが、現在ではオンライン・ポータル上のアンケートへの書き込
みを日々チェックして、その場で活動方針を調整することができます。チャンピオン/チャレンジャ
ー方式へと進化したテスト手法(※)を利用することで、現在進行中のパフォーマンスについても
より流動的な読み込みを行うことや迅速な対応が可能となり、調査対象の維持・管理に苦労
することも少なくなりました。より多くのデータをより迅速に入手できるようになったために、私たち
はデータに飢えるようになり、胃袋は底なしの状態です。
分析組織は、こうした変化に対応するためにこれまで以上に迅速に行動する必要に迫られている
ものの、情報を集約し理解する私たちの能力は、それを集めるスピードに比べると見劣りします。
情報を入手すべき場所はかつてないほどに増え、必要な情報に自由にドリルダウンできる可能性
も高まって、発見したことのすべてを統合する仕事はますます複雑になってきています。
■ 情報を集約し理解する私たちの能力は、
それを集めるスピードに比べると見劣りし
ます。
データの複雑化
私たちが集めた情報そのものも昔に比べると複雑化しており、より詳細なものへと変化しています。
アクセスできる情報の量は膨大になり、矛盾するデータを発見する機会も増えてきました。こうし
た矛盾は、多様なシステムからデータを抽出していることやそれぞれから微妙に異なる結果が出る
といった問題から必ずしも生じるわけではありません。データベース内にある行動データに対して市
場調査データが示すものや、あるいは合同研究に対して独自調査が示すものの機能的な違い
に起因する場合もあります。また、データ間で「切り口」や時間設定が異なっていたり、データウェ
アハウスと財務システムとの連携が不完全だったりする場合や、各顧客セグメントの特色が簡単
には理解されていないことが原因になっているケースもあるようです。
年に1度、お客様に自社との取引についてどのくらい満足されているか質問していた頃のことを思
い出してみてください。今日ではそうした情報は日常的に収集され、他の合同研究や独自研究
の結果との整合性も日々チェックされています。私たちは個々の測定値にさかのぼろうと試み、満
足度を操る手段を探ります。そして結果ごとに統計的優位性をテストして進歩を示す早期指標
や問題の兆しを見つけ出そうと努力します。さらに顧客の満足度と従業員の満足度の間には相
関性や因果関係があるのか、関連性を測ろうとします。また、満足度と売上の関係を計測して
理解しようとするなど、さまざまなシナリオをモデル化し、今後の結果を予測することが日常となっ
ています。
■ データは豊富にあるものの、真の洞察を
見逃すことはよくあります。こうして、デー
タはあふれるほどあるのに手にした洞察
はお粗末だったという結果になるのです。
データは豊富にあるものの、真の洞察を見逃すことはよくあります。こうして、データはあふれるほど
あるのに手にした洞察はお粗末だったという結果になるのです。
※チャンピオン(最善)モデルとチャレンジャー(次善)モデルを常に競わせることで、よりよいモデルを生み出していく評価手法
9
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
分析組織に求められる情報解釈能力
結局、データの中の微妙な違いを読み取るためには熟練した鋭い観察眼が必要になります。デ
ータがあれば即座に白黒がはっきりするわけではありませんが、いずれ結論を出すためには正確
なデータにもとづく分析が最善の策であることは確かです。結果が明らかになるのは、優秀な情
報解析のプロ集団が手に入れた情報のすべてを煮詰めた後のことです。統計上の力仕事が全
部終わってからでなければ結論は出ません。
もはや分析担当者は自らの専門分野という壁の中に閉じこもっているわけにはいきません。キャ
ンペーン間での共食い現象による影響や顧客の声が何を伝えようとしているのか、市場全体が
どのように変化・収束しようとしているか、ブランドの影響力が全体の業績にどう影響しているの
かといった広範な市場力学を考慮することが必要であり、マーケティング・キャンペーンのバックエ
ンド分析のように次々と分析をこなすことの優先順位は下がっていきます。
もし分析業務を担当する組織がこうしたデータ間の相関性について配慮しなかったら、他にだれ
が気にするでしょう? 他には気を配る人などいないのです。
仮に情報解釈の仕事が他の事業部門(たとえばマーケティング部門や製品チーム、財務チー
ム、戦略担当、経営層)の手に委ねられたとしても、任された彼らは事業部門の枠を超えてデ
ータを正確に解釈できるほどデータに慣れ親しんではいません。分析組織は、事業部門のため
に情報の「解釈」を行わなければならないのです。
サービス提供者からビジネスの牽引者へ
インサイト・チームは通常、製品やチャネルについて何も知らない組織の中では数少ないグループ
の1つです。しかしマーケティング部門とは頻繁に協力し、顧客に注目して、組織全体や顧客のた
めになる意思決定を促そうとチーム間の橋渡し役になって「外交的」に振る舞ったりもします。
またインサイト・チームは、顧客データや顧客インサイトを管理するという付加的な強みをもってお
り、このことによって強力な「付加価値」集団という独自の位置づけを得ています。こうした立場か
ら、多くの分析チームはサービス提供者としての地位を確立するようになり、仕事の良し悪しはリ
クエストされた情報を正確かつ期限内に提供することで評価されていました。そしてますますデー
タが企業にとってビジネスの成功を左右する重要な要素としての色彩を濃くしていくにつれて、分
析組織が果たすべき役割に進化が求められるようになりました。ビジネスの牽引者としての役割を
期待されるようになったのです。
10
■ 分析組織は、事業部門のために情報
の「解釈」を行わなければなりません。
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
サービス提供者としての
分析組織
コンサルタントとしての
分析組織
ビジネスの牽引者としての
分析組織
定義:
定義:
定義:
組織のために分析や調査の実行を助け、 意思
決定を可能にする分析的サポートを提供する。
組織の中で分析や調査に関するあらゆる知識 ・
専門技術の集中型ハブの役割を果たし、 その専
門知識と関連づけてベストプラクティスに関する情
報交換を促進させる。
業務知識に加えて専門知識を利用して分析 ・
調査業務に当たり、 ビジネス全体の利益となるよ
うに依頼を内容ごとに切り分け、 妥当性を確認し
て優先順位をつける。 組織の戦略に沿った、 あ
るいは業務の有効性を高めるために必要な分析
業務を積極的に見つけ出す。
業務の有効性を高めるため、 事業部門に対して
専門知識を活かしたコンサルティングを継続的に
行う。
分析チーム全体の洞察を統合して 1 つにまとめる。
その際は掘り起こした洞察のすべてを考慮し、 組
織の戦略に照らして対応策を提案する。
組織の特性:
組織の特性:
組織の特性:
業務上のニーズが生じ、 特定の情報が必要になっ
た場合の依頼先となるグループ。 依頼者の手足
となって必要な情報を取り出す。
分析/調査を必要とする業務上の問題が発生し
た場合に、依頼先となるグループ。問題を解決し、
解決策を提案してくれる頼れる専門家。 問題点
を別の視点から見る方法やさまざまな解決策を提
供してくれる。
主要な業績指標 (売上、 市場シェアなど) が
変化した場合に問い合わせ先となるグループ。 変
化の原因を理解するのを助け、 ギャップを埋めて、
ビジネスチャンスを創出するために注力すべき事業
領域を見極めるのを手伝ってくれる。
解決すべき問題点について依頼時に背景知識は
提供されるものの、 依頼内容を変更したり、 結
果に影響を及ぼしたりするような意見を述べること
はない。 最終的な判断は事業部門が下す。
分析業務をビジネス牽引の要素と捉え、 業績に
最大のリターンをもたらすことを念頭に置いて分析
業務を行っている。
時には業務に関連する背景情報、たとえば「なぜ」
その業務を行うのかといった情報も依頼時に提供
されるが、 それが道理にかなっているか否か、 達
成できそうかどうかといった見解は述べず、 影響力
をもたない。 意思決定はあくまでも事業部門に委
ねられている。
事業部門との関係性は社内のサービス契約やソ
フトウェア ・ ライセンス契約によって管理される場
合もある。
依頼と優先順位付けのバランスを取る努力を
する。 依頼された作業のどちらが重要か、 重要で
ないかについて事業部門に質問することが多い。
仕事内容を表す言葉:
サービス – サポート – 実現 – 適応 – 反応
戦略立案やマーケティング活動にも積極的に意見
を述べ、 確固たる役割を担っている。 (データを
根拠として注力すべき事業領域やビジネスチャン
スを見極め、 提言を行う)
仕事内容を表す言葉:
仕事内容を表す言葉:
最適化 - エキスパート - 相談 - 知識 - 反応
ビジネスの牽引者 – 先見性 – 戦略的 - 連携 - コ
ミュニケーション - 影響力 - 新性
成功を測る指標:
成功を測る指標:
分析 ・ 調査について役に立つ優れたアドバイスや、
活用可能なベストプラクティスの提供を迅速に行っ
ている。
各部署が容易に専門的アドバイスを受けられるよ
うになっている。
効率的な業務処理を目指した取り組み
業務の精度 (品質管理)
業務コスト (効率性)
業績目標を達成している (売上、市場シェアなど)
成長や主なトレンドを操る要因が明確に理解され
ている。
マーケティング投資に対して満足な ROI (投資対
効果) が得られている。
景気動向や行動計画を見極め、 先を見越した
対応ができている。
関連性および精度の高い顧客情報をタイムリーに
提供し、 収益につながる意思決定を促している。
コスト削減と ROI の向上といった観点からマーケティ
ング活動の効率性を継続的に評価している。
マーケティング予算を常に評価し最適化している。
(分析結果にもとづいて再配置を行う)
成功を測る指標:
「社内顧客」 と呼ばれることもある業務上のパート
ナーの満足 (顧客満足度)
効率的な業務処理 (サービス)
業務の精度 (品質管理)
業務コスト (効率性)
表1.組織内における分析組織の役割
11
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
チャンスを生む領域
それでは、分析チームをビジネスの牽引者へと進化させたいと考える企業が、すぐに効果を実感
できる3つの領域を紹介しましょう。どれも分析担当者と分析チームを管理するリーダーのスキル
と成長に大きく依存しています。
分析組織内でビジネスに関する鋭い洞察力を育てる
• 分析組織に属するほとんどの人々は、スペシャリストとして高度な分析業務を監督するのに
必要な独自の技術的熟練を備えており、鋭い観察眼がなければ難しい情報解釈にもそうし
たスキルを生かしています。彼らは専門性の高い縦割り組織の中で成長を遂げていきます。
モデル作成担当者はモデル担当グループを率いるリーダーへと成長し、分析担当者は高度な
SASの機能を習得し、より複雑なプロジェクトに参加できるようになり、熟練した市場調査担
当者は調査グループのリーダーへとそのキャリアを高めていきます。分析組織に対して洞察を
解釈することへの熟練度を求める声が高まる中、このようにして専門知識が伝達されていく経
緯を見ると、分析担当者はビジネスに関する鋭い洞察力を身につけていかなければならない
ことを痛感します。
■ 分析担当者が縦割りの専門組織とい
う枠の中に閉じこもって、事業戦略や
優先順位、業績や財務状況、市場の
状況などに広く関心をもつことがないと
したら、とても進化は望めませんし、企
業も彼らが提供する情報から最大限
の価値を引き出すことはできません。
• 分析担当者は、業績を向上させ、より大きな成長を見込めるポジションを獲得する手法を理
解しなければなりません。分析担当者が縦割りの専門組織という枠の中に閉じこもって、事業
戦略や優先順位、業績や財務状況、市場の状況などに広く関心をもつことがないとしたら、と
ても進化は望めませんし、企業も彼らが提供する情報から最大限の価値を引き出すことはで
きません。
• 分析組織の知識基盤向上のための投資は不可欠です。それが成功を収めれば彼らがもた
らす分析情報の価値は飛躍的に高まり、ビジネスの成長を推進してくれることでしょう。
分析組織のコミュニケーション・スキル向上を図る
• 分析組織は提供する洞察の明確さと徹底度を大幅に向上させる必要があります。同時に「
何を」「どのように」伝えていくかということについては、コミュニケーション能力を高める必要があり
ます。
• コミュニケーションには複雑なデータを一般社員にも理解できる「筋書き」へ再構成する作業
も含まれます。分析担当者がコミュニケーションを図って情報を伝達する相手は、データの専
門家ではありません。通常はマネージャーやさまざまな知識をもった一般社員ですから、それに
合わせてチーム内でのコミュニケーションとは別レベルのコミュニケーションを行う必要があるでし
ょう。また洞察は、事業戦略の枠組みにしっかりと沿った形で提供し、発見した事象や予測、
対応策も合わせて明確に指摘しなければなりません。
• こうした目標を達成するには、まずインサイト・チーム内でのコミュニケーションを活発化させ、
頻繁にしていくことが大事です。データベース・マーケティングの担当者であれば市場調査担
当者と会話する必要があります。一方、市場調査担当者も分析担当者やモデル化担当者
とコミュニケーションを図るよう働きかけます。このような取り組みによってインサイト担当のプロフ
ェッショナルたちは会社全体で起きていることとその理由を総合的に捉えられるようになってきま
す。さらにデータや調査結果に表れた差異についても上手に説明できるようになり、それがビ
ジネスチャンスの発見にも役に立つでしょう。
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■ 洞察は、事業戦略の枠組みにしっかり
と沿った形で提供し、発見した事象や
予測、対応策も合わせて明確に指摘
しなければなりません。
THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
• チームの垣根を越えてこれまでの働き方を変えていかなければ、分析結果を誤って解釈して
しまうリスクを冒しかねませんし、業績向上への影響力を高めることはできません。縦割り組織
の中に閉じこもっていては、業界全体や消費者動向の一部として実際に発生している現象
を、独自の出来事であると誤解してしまう可能性もあります。また現実には他の事業の利益
を共食いしているだけなのに、キャンペーンは成功したと結論づけてしまうかもしれません。ビジ
ネスの規模や戦略に照らして考えれば、本来はまったく実現不可能なビジネスチャンスを絶好
の機会と見なしてしまう、という失敗を犯す危険もあるのです。
• 事実をしっかりと把握し、ビジネスにひもづいた筋書きを完成することができたら、次は伝えるべ
きメッセージをシンプルにするという重要な仕事が待っています。インサイト担当のプロフェッショ
ナルは、データに対して一般の人々とは異なる嗜好をもっているものです。彼らは収益図やグラ
フ、数値や集団分析の結果などを加えることで、事実をより明確に伝えることができると考えが
ちですが、ほとんどの場合、こうした情報は受け手側を圧倒してしまい、内容の理解を遅らせる
だけです。分析のプロフェッショナルとしてスキルの向上を図るとともに、(書面および口頭での)コ
ミュニケーション全体に注意を向け、適切な事実を使って伝えようとする筋書きを組み立て、受
け手を混乱させて情報の価値を低下させることなく、メッセージ力を強化していかなければなり
ません。
■ 分析のプロフェッショナルとしてスキルの
向上を図るとともに、(書面および口頭
での)コミュニケーション全体に注意を向
け、適切な事実を使って伝えようとする
筋書きを組み立て、受け手を混乱させ
て情報の価値を低下させることなく、メッ
セージ力を強化していかなければなりま
せん。
提供した
「洞察の効果」
をチェックする
• データ・マイニングや市場調査を担当する部門に属する人々は、自らの仕事を異なる角度か
ら見直す必要があります。まずデータや調査をチェックし、組織の戦略に沿っていることを確認し
なければなりません。
• 分析担当者やインサイト担当のプロフェッショナルであれば、自分自身が経営者になったつも
りで自らが提供する「洞察の効果」を評価しながら業務に取り組むべきです。つまりビジネスメ
リットにするために時間を割く対象や、より大きなリターンを生むと考えられる事業領域に投資
しなかったために生じた機会費用の両方に目を向け、事業戦略にも配慮します。マーケティン
グ費用が賢明な投資であるか否かを企業が確かめようとするのと同様に、分析の仕事も精
査すべきなのです。
■ マーケティング費用が賢明な投資であ
るか否かを企業が確かめようとするのと
同様に、分析の仕事も精査すべきな
のです。
• 情報を収集することが戦略的投資だとするならば、私たちはそこから得るリターンを最大化す
ることを考えなければなりません。まず作業にとりかかる前に、こうした姿勢をもつことが変革へ
の第一歩となるのです。
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THE TRANSLATION LAYER: THE ROLE OF ANALYTIC TALENT
まとめ
重要な要素:人材
実績データにもとづいた意思決定はビジネスに多大なるメリットをもたらします。増え続ける洞察
と高まる複雑性に負けず、情報を有効活用するカギを握っているのは個々の“人材”であり、分
析組織がもつ“才能”なのです。分析担当者は洞察と行動の間を取り持つ重要な情報解釈の
プロです。洞察の集約に高額な投資を行っている企業にとっても、データの収集・分析を始めた
ばかりの企業にとっても、優れた情報解釈のプロは不可欠です。分析組織は、縦割り組織の枠
を飛び出し、さまざまな洞察を統合しビジネスの牽引者になるという新たな挑戦へと向かう準備
を整えなければなりません。
この才能あふれる貴重な人材を古い手法で管理していては、しかるべき効果は得られません。
分析担当者を奥の部屋に閉じ込めて技術的な専門性を磨き上げ、金脈に出くわすことを祈る
余裕はもはやないのです。分析組織に対する期待は劇的に高まり、今後もこの傾向は続くでし
ょう。それに応じて、こうした人材を引きつけ、育成し、維持していくためのアプローチにも変化が
求められています。優秀な分析担当者は市場では引く手あまたですから、転職の機会も多いは
ずです。分析担当者を数多く抱える企業は常に人材の維持に苦労しているものです。
企業が優れた人材を確保し、最高レベルの分析力を獲得できるかどうかは分析組織に大きく
依存しています。人材こそが差別化要因となるわけです。企業の分析力は、分析組織に属す
る人材の能力によって大きく左右されます。
情報解析のプロ集団へ投資した時間は、数々の洞察を生み、その洞察は利益へと姿を変えて
いくのです。
顧客インサイトや分析結果を利用してビジネスへの影響力を高めるにはどうしたらよいかというこ
とについては、次のホワイトペーパーで詳しく触れたいと考えています。当シリーズの第2弾は、分
析業務を役割とする組織の文化をいかに変革していくかに焦点を当てます。
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■ 分析組織は、縦割り組織の枠を飛び
出し、さまざまな洞察を統合しビジネス
の牽引者になるという新たな挑戦へと向
かう準備を整えなければなりません。
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JP2010_SAS