~突撃 ドメーヌ最新情報!!~

2013 年 12 月吉日
~突撃★ドメーヌ最新情報!!~
◆VCN°34 マス・ベルトラン
生産地方:スペイン(ペネデス)
新着ワイン情報
DO ペネデス・バルマ(ブリュット・ナチュール・レゼルヴァ) 2010
旧カーヴで仕込んだ最後のバルマ!(熟成と瓶詰めは新しいカーヴで行っている)味わいは前回の
2008 年よりもフレッシュで超ドライ!瓶内熟成 24 ヶ月を経て、果実のふくらみと、テロワールから来る
ミネラルや鉱物の旨味が融合している! 繊細な日本料理ピッタリのワインだ!
ミレジム情報 当主サンティ・ヴェンチュラのコメント
今回リリースするワイン 2010 年のミレジムについて語る。
2010 年はペネデスでは珍しく冬から春にかけて雨が多く降った。この雨の影響でチャレッロの一部は
花流れにあったが、その他のブドウは無事開花を終え、7 月までは病気の被害もなく順調に育っていった。
だが 8 月から収穫直前の 9 月にかけて再び不安定な天気が断続的に続き、湿度が高いことからブドウ
腐敗のリスクが高まった。それを防ぐために、畑では摘房で風通しを良くしたり、収穫時は選果の作業に精力
を注いだ。バルマは自社ブドウと買いブドウのブレンドだが、ネゴスのブドウは、少しでも状態の悪いブドウは
一切買い入れず、かなり厳しいセレクションを行っている。
2010 年は、いわゆるヴィンテージチャートでいう当たり年や豊作年という訳ではないが、キレのあるエレガント
な泡をつくる上では非常に適したミレジムだったと思う!
「ヨシ」のつ・ぶ・や・き
2010 年ミレジムから、バルマは DO カヴァではなく DO ペネデスになるが、カヴァの持つ特殊な原産地呼
称制度の影響で変えざるを得なかったそうだ!
通常、原産地呼称(DO)は、地域や地方によって区分されるが、DO カヴァは地域ではなく製法そのものに
呼称が付く。すなわち、カヴァで認められた品種のブドウを使用し、伝統的なシャンパーニュ方式でワインをつ
くれば、別にペネデス地方に限らず他の州でも原産地呼称の認可を得られるのだ。実際、スペインではリオハ
やバレンシアにもカヴァがある。
ただ、DO カヴァを取得する条件として、同じ醸造所でカヴァで認定されている品種以外のワインとカヴァ
を一緒につくってはならないそうだ!要するに、「DO カヴァが取得したいのであれば、カヴァだけ造る」と言う
ことになるが、彼は、2010 年からカヴァ以外にスモイ(sumoll)という絶滅危機にある土着品種でロゼ・スパ
ークリングをつくっていて、これが抵触して DO カヴァの申請ができないそうだ!彼曰く「DO カヴァの認可を得
るために、ワインの品質とは関係のない法律上の問題でドメーヌを新たにもう一つ作るなんて、考えられな
い!」と言っている。
2013 年、デキャンター誌のワールド・ワイン・アワードで「銀賞を受賞」するなど、バルマは高い評価を得
ている!実際はカヴァなのにカヴァと言えないもどかしさはあるが、彼が原産地呼称という縛りから外れて、
新しいチャレンジをすることには大いに大賛成だ!これからのサンティがますます気になる!
(2013.8.6.ドメーヌ突撃訪問より)
母の大好きなカヴァを実現した「脱テクニカル・カヴァ」!
マス・ベルトラン
(生産者:サンティ・ヴェンチュラ)
生産地
地中海沿いに面したスペイン第二の都市バルセロナの近郊、南西へ約 30km ほど下ったところに、ヴィラフランカ・デル・ペネデ
スの街があり、その街を中心にスパークリングのカヴァで有名なペネデス地区が広がる。マス・ベルトランの畑は、ヴァラフラン
カの北に広がる小高い山の麓から中腹にかけた標高 350m(ちょうどバホ・ペネデスとメディオ・ペネデスの境目)の場所にあり、
総面積は約 4ha、南向きで、ブドウ品種はチャレッロ、パレリャーダを栽培している。
気候は地中海性気候で夏は乾燥しており平均気温は 30℃。そして冬は平均気温 8℃で、秋の終わりから冬の初め、そして冬の終わ
りから春先にかけて雨が降る。年間を通して吹き荒れる強い北風がブドウの病気や湿気を防ぐ。
また、ヴィラフランカはスペインワインの名門トーレスの本拠地があり、ワイン以外の特産物としてはアルベッキーナという極小
粒のオリーブがある。
歴史
現オーナーであるサンティ・ヴェンチュラ(37 歳)は、ヴィラフランカで 3 代にわたって続くブドウ栽培農家の家系で育った。彼
は 1994 年にタラゴーナにある醸造大学を卒業後、1994 年にカリフォルニア、1995~97 年にリオハ、1997~98 年にチリと各地で
醸造の経験を積む。再びスペインに戻った 1998 年には、カヴァの造り手カスティロ・ペレラーダの醸造責任者として 2 年働き、
2000 年にトーレス社の醸造チームに加わり 2007 年の初めまで醸造とスペイン国内向けのワインコマーシャを担当する。トーレス
社で働く一方で、今までトーレス社に毎年ブドウを売っていた父の畑を譲り受け、自らプライベートカヴァの生産に取り組む。2004
年に彼の姉と共同で正式にワイナリーを立ち上げ本格的にスタートする。
生産者
現在、サンティは 2ha のパレリャーダ品種(樹齢 28 年)と 2.15ha のチャレッロ品種(樹齢 65 年)の畑を父母妹の家族 4 人で管
理している。
(繁忙期は季節労働者が数人手伝う。
)畑は 3 代にわたり一貫してビオの農法にこだわり、醸造も限りなくナチュラル
な醸造を試みる。2.15ha のチャレッロは全て 100%チャレッロでつくるワンランク上のキュヴェ「アルジラ(ARGIL.LA)」用の
ブドウとなる。一方で、彼は毎年、ヴィラフランカにある友人のワイン農協からキュヴェ・バルマ(BALMA)のベースとなるネ
ゴシアンワインを買っている。買うワインはチャレッロ、マカベオ、パレリャーダの 3 種類。(2ha 分の自社畑パレリャーダも最
終的に BALMA 用ワインにアッサンブラージュする。
)ブドウ果汁の段階から複数のタンクを厳選し、その後、醗酵中、醗酵後と
テイスティングしながらタンクを淘汰し、最終的にベストなワインだけを買う。SO2 の量は彼が指示する。
マス・ベルトランの+α情報
<もっと知りたい畑のこと>
自社畑のチャレッロは全て ARGIL.LA(アルジラ)用の畑。
土壌:アルジロ、サブルー
総面積:約4ヘクタール
品種:チャレッロ、パレリャーダ、マカベオ(マカベオは実際持っていない⇒ワイン農協からワイン購入のみ)
樹齢:チャレッロ 65 年、パレリャーダ 28 年(他 BALMA 用のネゴシアンブドウは樹齢平均 10~50 年)
剪定方法:ゴブレ仕立て
生産量:チャレッロ 2500kg /ha 、パレリャーダ 2000kg /ha(他 BALMA 用のネゴシアンブドウは 9000~10000kg /ha)
収穫方法:収穫者 6~8 人で手摘み。畑で房レベルの選果(BALMA 用のブドウも手摘み)
ビオの認証:2008 年に CCPAE 認証予定(Consell Catala de la Produccio Agraria Ecologoca )
<もっと知りたい醸造のこと>
醸造方法:シャンパーニュ方式。
・
BALMA(バルマ)は、ドメーヌのパレリャーダを手摘みで収穫後、ブドウを除梗破砕し圧搾。ステンレスのタンクに移し一
次醗酵。そして、ワイン農協で厳選した 3 種類のネゴシアンワイン(チャレッロ、マカベオ、パレリャーダ)とドメーヌのパ
レリャーダをアッサンブラージュし、リキュール・ド・ティラージュ(蔗糖と酵母)を添加してビン内二次醗酵開始。二次醗
酵期間は約 1 ヶ月で、そのままビン内で 16~18 ヶ月の熟成を経る。デゴルジュマン(澱抜き)をして目減りした分はリキュ
ール・デクスペディション(門出のリキュール)を加えず、同じカヴァで量を満たす。デゴルジュマンのタイミングは必ずカ
ヴァ出荷 3 週間前。
・
ARGIL.LA(アルジラ)は、ドメーヌぶどう 100%。チャレッロを手摘みで収穫、選果後、ブドウを除梗破砕し圧搾。ステン
レスのタンクに移し一次醗酵。
(天然酵母)醗酵期間は約 1 ヶ月。リキュール・ド・ティラージュを添加してビン内二次醗酵
開始。二次醗酵期間は約 1 ヶ月で、そのままビン内で最低でも 32 ヶ月の熟成を経る。以下、BALMA と同じ。
*ARGIL.LA の初リリースは 2009 年の夏予定。
(現在はビン熟中)
酵母:BALMA のネゴシアンワインは培養酵母、ドメーヌは自然酵母。
発酵期間:一次醗酵、約 1 ヶ月。二次醗酵、約 1 ヶ月。
ビン熟期間:BALMA 16~20 ヶ月、ARGIL.LA 32 ヶ月以上
SO2 添加:プレス時、澱引き時に少量添加。
熟成樽:なし
フィルター:なし
ちょっと一言、独り言
「自分の母親が何よりも一番大事なお客さん!」
サンティ・ヴェンチュラが自らドメーヌを立ち上げようと決意したきっかけは、彼の母親が美味しい!と飲んでくれるようなカヴ
ァを自分の手でつくりたいという思いからだった。現在、彼がつくる低収量、長期熟成、SO2 微量、ノンフィルター、超辛口(ド
ザージュなし)というカヴァのスタイルは、彼の母親の好みから大きく影響を受けているようだ。
タラゴーナの醸造大学を出て、カリフォルニアのセインツベリー、チリ、リオハ、カスティロ・ペレラーダそしてトーレスと、い
つもワイナリーでは醸造の最前線に携わっていたサンティ。これらの過去の経験からどのようなことを学んだか?という質問に対
し彼は「カリフォルニア、チリ、カスティロ、トレース等では、ドメーヌのマネージメント、経営術、最新の醸造のテクニック。
それに対しリオハでは、経験則に基づく醸造法、生活のリズム、昔ながらのやり方を学んだ。」とのこと。そして、今一番彼が影
響を受けているのはリオハで学んだ経験則に基づくワインづくりだそうだ。「母親の舌だけは絶対にごまかすことができない。テ
クニックでつくられたカヴァは一発で見破られてしまう。彼女は極少量でも甘さを感じるドザージュ(門出のリキュール)された
カヴァが嫌い!また、SO2 の多く含んだカヴァも大嫌い!」 彼は、ワインの醗酵熟成の期間もアッサンブラージュも最終的に製
品となったカヴァも、必ず母親に味をみてもらい彼女の意見を最優先に聞く。母親に絶大な信頼を置いているのだ。「若い頃は、
醸造は経験則よりもテクニックや数値が重要だと本気で信じていた。でも今は…」とはにかむサンティ。彼の母親がかつて美味し
いと認めたカヴァのほとんどが小規模生産者のカヴァだったこと、反対に、世界的に有名な大手のカヴァはほとんど口にしなかっ
たこと、そんな彼女の正直な味覚を目の当たりにして、彼のワイン哲学も少しずつ変化していったようだ。
サンティのつくる BALMA は、一部ドメーヌのパレリャーダ品種と、ワイン農協から仕入れる、全て彼により厳選された一次醗酵
ワインからつくられる。
(ちなみに BALMA とは「洞窟、洞穴」という意味。ペネデス丘陵地の切り立つ断崖に天然の BALMA=
洞穴がいくつもある。彼自身、幼い頃にその洞穴で遊んだ経験があり、昔に戻る=初心に帰るという意味を掛けているそうだ。)
彼がワインを買い付けるワイン農協は、主にフレシネやコドーニュという大手企業にもワインを卸しているが、会社規模が中堅ゆ
えワイン不況による毎年のワイン価格のダンピングに悩まされている。彼らはこの不安定な状況を打開すべく、生き残り策として
現在はブドウ品質の差別化を図り、サンティのような小規模ワイナリーの要望に応えられる質へのこだわり、オーダーメイドワイ
ンを目指している。サンティ曰く、ワイン農協のつくるキュヴェのなかで最終的に一番品質の高いワインは必ず彼に回ってくるそ
うだ。私自身も実際に現場を見て驚いたのだが、彼の選別するワインと大手の買うワインとは完全に分かれていて、アルコール度
数も 0.5~1%の差がある。それだけブドウの完熟度が違うのだ。
「一次醗酵のキュヴェを選ぶ際に気をつけなければならないのは、
ワインの味の中に青臭さがあるかどうか?これを注意深く吟味しなければならない。」彼が言うには、デゴルジュマンの最後にリ
キュールを添加しない、完全辛口のブリュットは味にごまかしが効かないそうだ。大手のように最後にリキュールでカヴァの味を
調整するところは、たとえブドウが早熟でワインに青臭さが残ろうが全く問題はない。なぜなら、リキュールが全ての味を調整し
てくれるからだ。彼のようにリキュール添加を拒むつくり手は、ブドウの品質に全てを託すしかない。それだけ慎重な吟味を必要
とする。また、彼とワイン農協は、実験的な試みで 2007 年はスキンコンタクトで長時間漬け込んだワインを仕込んでいる。彼曰
く、ブドウの状態が完璧であれば、アロマやエキス抽出の相乗効果が期待できるそうだ。(私も実際に試飲させてもらったが、確
かに香りの部分で圧倒的な違いがある。とても華やか!)
これからは、より一歩進んで、よいブドウを提供するブドウ栽培者を選別して、最終的には畑の指導管理も行なおうと意気込んで
いるサンティ。これからも目が離せない注目の生産者だ!