VCN°52 ドメーヌ・フォン・シプレ 生産地方:ラングドック

2015 年 1 月吉日
~突撃★ドメーヌ最新情報!!~
◆VCN°52 ドメーヌ・フォン・シプレ
生産地方:ラングドック
新着ワイン 6 種類♪
VdF ル・ブラン デ・ガレンヌ 2012(白)
ピンクグレープフルーツなど清涼感のある柑橘系の香りが感じられる。2012 年は醗酵が途中で止まり、残
糖がワインに残るリスクがあったが、2013 年の秋頃、再び発酵が活発に始まり完全発酵にまで至った!
VdF ル・グルナッシュ デュ・ボワ・サン・ジョーム 2012(赤)
2012 年は開花時に花が流れてしまったため、収量 30%減…。だが、その後は病気もなくブドウは順調に
育ち、最終的には収量が落ちた分ブドウの中身が凝縮した素晴らしいミレジムに収まった!酒質は力強いが、
洗練されたスマートでまとまりのある仕上がり!
VdF ル・カリニャン ド・ラ・ソース 2012(赤)
2012 年は病気が一切なく、開花もうまく行った当たり年!レティシアは、マセラシオン・カルボニックで
仕上げる時は、腐敗したブドウを一切入れないのが信条で、今回のカリニャンは腐敗のない完璧なブドウだっ
たとのこと!
VdF ラ・シラー ド・ラ・ロング・ド・ピュイ 2012(赤)
2012 年のシラーは、ラ・ピネードのブドウが蛾の幼虫被害に遭い、品質があまり良くなかったため、代わ
りに腐敗が一切なかったロング・ド・ピュイのシラーを使って仕込んだ!ロング・ド・ピュイの畑は、ラ・ピ
ネード同様にマルヌ・ブルーのある素晴らしいテロワールで、レティシア曰く、樹齢 15 年と若木だが、ミレ
ジムに恵まれた分前回のラ・ピネードに負けない凝縮感のある素晴らしいワインが出来上がったとのこと!
VdF ル・グルナッシュ ニュメロ・サンク
マグナム 2012(赤)
フォン・シプレは 18 ha の畑を所有しており、その内の 10 ha 分のワインはネゴシアンに売っている。今
回の N°5 は、このネゴシアン向けのワインの中で飛び抜けて香りも良く美味しいグルナッシュがあり、その
タンクが 5 番目のタンクだったことから、シャネルの N°5 と掛けて特別にリリースした!マグナム限定で、
グルナッシュのフレッシュな香りと果実味を残すために、樽を通さずセメントタンクのみで熟成している。
AC ル・コルビエール
ド・フォン・シプレ 2012(赤)
2012 年は SO2 無添加ながら特例的に AOC を取得している!(通常 AOC を取得するためには、ある一定
量の SO2 添加が必要)コルビエールで、これほど上品なワインは他になかなか見当たらない!
ミレジム情報
当主レティシア・ウリヤックのコメント
2012 年は、南仏にしては日照量がそれほど多くなかった。春が涼しかった影響で、花ぶるいに敏感なグルナ
ッシュが開花前に流れてしまい収量が例年よりも 30%落ちてしまった。シラーなど一部のブドウが蛾の幼虫に
食べられる被害に遭ったが、全体を通して病気がほとんどなく、また、日照りや猛暑がなかったおかげで、南
には珍しく酸の十分乗った素晴らしいブドウが収穫できた。
「ヨシ」のつ・ぶ・や・き
2011 年の新星フォン・シプレから一躍ラングドックのスターダムに躍り出たレティシア!去年、2013 年世
界一に輝いたスペインのレストラン「カン・ロカ」のワインリストにオンリストされたり、現在世界一のレス
トラン「ノーマ」にワインを卸すデンマークのインポーターと大型契約を結んだりと、注目の高まりは飛ぶ鳥
を落とす勢いだ!フレデリック・コサールの醸造方法を忠実に実践しつつ、さらに彼女の醸造の色も出し始め
ている!一昨年から卵形のプラスチックタンクを、白ワイン醸造で使用したり、去年はカリニャンでフランス
向けに少量ヌーボーをつくってみたり、はたまた近い将来グルナッシュをアンフォラで仕込もうと模索したり、
現在の彼女はチャレンジしてみたいことがたくさんあり、毎日がとても充実しているようだ!
(2014.12.10.のドメーヌ突撃訪問より)
師匠フレッドの助言とレティシアの感性が生んだラングドックのシンデレラワイン!
レティシア・ウリヤック
(ドメーヌ・フォン・シプレ)
生産地
世界遺産に登録されている城塞都市カルカソンヌを東に 30 ㎞ほど進んだ、ミネルヴォワとコルビエールの境目にあ
る村エスカル。そこにドメーヌ・フォン・シプレがある。ブドウ畑は、ドメーヌのまわり一面を取り囲むように、南
を背に標高の低い場所から小高い丘に沿ってテラス状に広がる。気候は地中海性気候で夏は暑く乾燥しやすいが、畑
が北斜面にあるおかげで、年中風の通りが良く、ブドウは直射日光から守られる。また、石灰質の分厚い粘土層は、
ブドウに細かいチョークのようなミネラルエキスを潤沢に与える。このドメーヌ周辺は、ワインの他にカルカソンヌ
の郷土料理に代表されるトマト風味のカスレや鴨のコンフィ、オリーブなどが有名。
歴史
ドメーヌの当主であるレティシアは、高校を卒業後 1985 年パリで美術商を目指し学んでいたが、一生の仕事ではな
いと判断した彼女は、美術商の道を諦め、1988 年南の両親の下に戻り、彼らと共にカルカソンヌ郊外でシャンブル・
ドット(民宿)を始める。当時、彼女の両親は祖父から引き継いだ畑 5 ha を有しており、高校の教師をしていた父
親がワインづくりを兼業していた。1998 年、エスカル村にカーヴ付で 7 ha のブドウ畑がまとまって売りに出てい
たのを知った父親は、畑を買い替えることを決める。この時ワインづくりに興味を持ち始めた彼女は、同年カルカソ
ンヌのワイン学校に通い始める。翌年の 1999 年にはドメーヌの丘の上の森を 6 ha 開墾しブドウを新たに植え、着々
とドメーヌ立上げの準備を整える。それから 5 年後の 2004 年、父親が教師の定年を迎えたのを機にシャトー・フォ
ン・シプレを立ち上げ、彼女がオーナーとなる。2005 年、彼女の夫であるシャソルネイ・デュ・スッドの共同管理
者ロドルフ・ジャネジニを通じてフレデリック・コサールに初めて出会う。2010 年、ドメーヌ経営とワイン造りに
行き詰っていたレティシアだったが、フレッドのアドバイスを取り入れワイン造りを一新し、ワイナリー名もシャト
ーからドメーヌに変え新たな再スタートを切る。
生産者
オーナーのレティシアは、父親と夫であるシャソルネイ・デュ・スッドの共同管理者ロドルフと 3 人で現在 18 ha
の畑を管理している。(繁忙期は季節労働者数名を雇う)ブドウ品種は、白ワイン用のブドウであるグルナッシュ・
ブラン、ヴィオニエ、ルーサンヌ、そして赤ワイン用のブドウのシラー、グルナッシュ、カリニャン、サンソーがあ
る。ワイン総生産量は 630 hL 前後だが、その内の約半分はまだワイン農協に桶売りをしている。元々ドメーヌを立
ち上げた時から BIO に興味があり畑も有機だったが、2005 年にフレデリック・コサールと出会って以来、ヴァンナ
チュール、特に酵母無添加、SO2 ゼロのワイン醸造に興味を持つ。2010 年、フレッドのアドバイスによりドメーヌ
は見事な改革を遂げ、ワインのスタイルもカジュアルなものからより繊細でかつ重厚で高級感のあるものに変化させ
た。彼女の現在のモットーは「完熟したブドウでエレガントなワインをつくる!」こと。シンプルだが、南では殊更
両立の難しい永遠のテーマを自らに課す。四六時中ワインのことばかり考えている、根っからのヴィニョロンだ。
ドメーヌ・フォン・シプレの+α情報
<もっと知りたい畑のこと>
土壌:
アルジロ・カリケール、砂地、マルヌ・ブルー
総面積: 18 ha
品種:グルナッシュ・ブラン、ヴィオニエ、ルーサンヌ、シラー、グルナッシュ、カリニャン、サンソー
樹齢:3~60 年以上
剪定方法:ゴブレ
生産量:赤白共に 20~35 hL/ha
収穫方法:収穫者 12 人前後で手摘み。畑で房レベルの選果
ビオの認証:2006 年からエコセール認証
<もっと知りたい醸造のこと>
醸造方法:赤は 100%マセラシオンカルボニックでの醸造、タンクと樽での熟成。白は樽とタンクでの醗酵熟成。
瓶詰め日は月のカレンダーを参照し、行っている。
 赤は完熟したブドウを畑で選果しながら収穫し、そのままブドウを房ごとセメント、もしくはステンレスタンク
に入れて 100%マセラシオンカルボニック。発酵温度は 25℃前後。デキュヴァージュ後フリーランとプレスワ
インをアッサンブラージュし、そのまま樽もしくはタンクで熟成。熟成終了後、全てのワインをアッサンブラー
ジュしタンクで少し落ち着かせた後瓶詰め。
AC コルビエールは、グルナッシュとカリニャン、シラーのそれぞれの熟成樽の中から、テイスティングにより 1
番良い樽を 2 樽ずつセレクションしアッサンブラージュ。タンクで少し落ち着かせた後瓶詰め。
 白は完熟したブドウを畑で選果しながら収穫し、そのままブドウを房ごとバスラン圧搾機にかけプレスをする
プレス時間は 3 時間。プレスしたジュースを 3℃まで冷やし 5 日間かけてデブルバージュ。澱を除いたクリアー
なジュースを卵形プラスチックタンクもしくは古樽へ移し自然発酵。醗酵熟成終了後、ワインをスーティラージ
ュしタンク内で少しワインを落ち着かせて瓶詰めする。
酵母:自然酵母
マセラシオン期間:赤はタンクで 2~3 週間。
発酵期間:赤はタンクもしくは古樽で 3 週間~1 ヶ月間。白はタンクもしくは古樽で 1 ヶ月~1 年。
熟成方法:赤は古樽もしくはセメントタンク、ステンレスタンク。白はプラスチックタンクもしくは古樽。
SO2 添加:無添加
フィルター:大きな浮遊物を除く程度の目の粗いフィルター
ちょっと一言、独り言
私が初めてレティシア・ウリヤックのつくったワインを試飲したのは 2009 年、フォン・シプレのロゼのペティアン・ナチュレ
ルだった。ちょうどヴァンクゥールがシャソルネイ・デュ・スッドを取り扱うにあたり、ワインの情報収集でロドルフ・ジャネ
ジニと会った時だった。彼が「私の妻が現在つくっているワイン」として持参したのが、そのロゼ・ペティアンだった。今でも
覚えているのだが、レモネードの透明瓶に入れられたロゼはデゴルジュマンされていなく、かなり澱が底にたまっていて、開け
る度に泡が勢いよく飛び出し、たちまちワインが半分くらいまでなくなってしまうようなかなりガス圧の高いものだった。でも、
味わいは、ちょっと還元臭がきついが、とてもミネラリーで美味しかった。
「これがガス圧の低いモノであれば面白いかも」とと
ても興味はそそられたのだが、何せ瓶の差が激しく、さらにロドルフが言うに「時々、ガス圧のせいで液漏れもある」というの
で、
「モノが良くても取り扱いはまず無理だろう…」とその場で取引が難しいと伝えた。
翌年の 2010 年 7 月、ロドルフが自宅に招待してくれた時に、私は初めてレティシア本人と会った。華奢でブロンド髪のきれい
な女性だが、どこか疲れのあるような面持ちで暗い印象だった。彼女は食事中、フォン・シプレのワインをいくつか試飲させてく
れたのだが、説明も今一つで、全体的に自分のワイン対する自信のなさだけが伝わるような内容で、結局彼女の奨めてくれた赤ワ
インも、何も印象のないまま終わってしまった。以来、彼女のワインには正直あまり良いイメージを持てずにいた。
だが、転機は 2012 年モンペリエのミレジムビオ・ワインサロンで訪れる!私自身は、シャソルネイ・デュ・スッドのロドルフ
に会うつもりでスタンドに立ち寄ったのだが、その時スタンドにはレティシアしか立っていなかったので、軽く挨拶しロドルフ
のワインだけパッと終わらせて立ち去ろうと思っていた。一通り試飲を終わらせると、彼女が「私の新しい 2011 年のワインもつ
いでに試飲しますか?」と笑顔で私に聞いてきたので、何となく流れのまま試飲してみることにした。並べ始めたボトルを見て
みると…あれ?ボトルに高級感が出ているし、ラベルはとてもシンプルになっているじゃないか!?「今年からイメージチェン
ジをしたのかな?」なんて思いながら、最初に出されたシラーを試飲してビックリ!前回、家に招待された時に飲んだワインの
味わいと全く違う!!重厚だが味わいにフィネスを感じる!グルナッシュ、カリニャンと立て続けに試飲したが、どれも同じく
アルコールが高いのに、エレガントで品格がある!私は素晴らしいワインを掘り出した時にあるドキドキ・ワクワク感で興奮し
ていた!「どうしてこんなにワインが劇的に進化したのだろう…?」、「どうやったの?畑を変えたの?」等々、突然彼女のワイ
ンに興味が沸き、短期間で変化したワケを知りたくなった。
変化のきっかけ…それは「フレッデリック・コサールの醸造アドバイス」だった。フレッドから「レティシアはセンスがある!」
と、かつてコラボワインを手掛けた時から一目置かれていた。彼女自身も、当時から SO2 無添加の完成度の高いワインをつくり
たいと思っていたが、なかなか思うようなワインがつくれず、いつも悪戦苦闘の連続だった。加えて、クラシックで教科書的な
醸造を好む父親のアドバイスも彼女の進展の足かせとなっていた。
「SO2 無添加ワインにチャレンジするに当たり、精神的な後ろ
盾となっていたのがフレッドのワインだった。でも、当時は彼のように精度の高い安定したワインをつくり上げるまで行かなか
った…」と彼女は振り返る。父親の反対にもあい、自信喪失気味になっていた彼女を見るに見かねて、助け船を出したのがフレ
ッドだった。
「ある時、フレッドと一緒に食事をして、彼が醸造のポイントを詳細に語ってくれた時に『これだ!』と直感した!」
と彼女は言う。「たとえば、樽の扱いひとつをとっても、我々とフレッドの感覚は全く違う。彼は、樽にワインを入れる直前に、
その入れるワインを使って樽を一度リンスする。こんな地味で面倒な作業は、ラングドックでは正直誰も行わない!」収穫時に
ブドウの pH に注目する点や、赤ワインでも適度なガスを残すこと等々、フレッドの醸造ディテールに対するこだわりは、彼女に
とって全て目からうろこの落ちるような大きな発見だった。
2011 年ミレジムから早速醸造ノウハウを取り入れた彼女は、今までのうっぷんを晴らすかのように、SO2 無添加で完成度の高
いワインをつくり上げることに成功する!何よりもこのワインの激変に一番興奮しているのは、アドバイスを送ったフレッド本
人だった!彼曰く、
「ちょっとしたアドバイスのつもりで彼女に醸造のコツを教えたが、まさかここまで素晴らしいワインをつく
ってくるとは想像していなかった!」とあらためて彼女のセンスに感服していた。
現在、
「SO2 無添加のワインを如何にしてつくるか?」というレベルを卒業し、もう一段上の「SO2 無添加のワインで如何にテ
ロワールを表現できるか?」というレベルを目指すレティシア。今の彼女は自信と笑顔に満ちあふれている!2010 年に会った頃
の面影はもうない。フレッドの助言から彼女の感性が大きく開花したラングドックのシンデレラワイン!これからの活躍がとて
も楽しみだ!