天然ガス自動車の 普及に向けて

天然ガス自動車
天然ガス自動車の
普及に向けて
2013年度版
一般社団法人 日本ガス協会
天然ガス自動車 の 普及に向けて
目 次
目 次
1.はじめに ................................................................................................................................................................................................................. 2
2.世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車 ............................................................................................... 3
3.天然ガス自動車の普及に向けて .................................................................................................................................................... 9
4.日本における天然ガス自動車を取り巻く環境と支援措置 ....................................................................................... 19
5.参考資料 ........................................................................................................................................................................................................... 23
天然ガス自動車 の 普及に向けて
1.
はじ め に
我が国では1970年代の石油危機をきっかけに、家庭用・業務用・製造業部門においては過度の石油依存が
是正され、エネルギー源の多様化が進みました。しかしながら、輸送用燃料は現在でも98%をガソリン・軽油など
の石油系燃料に依存しています。2011年3月の東日本大震災においては、燃料供給網の寸断によりガソリンスタン
ドに燃料を求める長蛇の列ができました。生活のライフラインを担う運送事業者においても軽油の調達が困難とな
り、被災地における物流機能の低下が見られました。災害時対応を含め、輸送分野のエネルギー源を多様化し
極端な石油依存構造から脱却することは、わが国の大きな課題です。
輸送部門の石油依存度の低減を図るため、エネルギーセキュリティの観点から、国の基幹エネルギーである天
然ガスの利用拡大が必要とされています。天然ガスは産出地域が世界各地に分布しており、大規模埋蔵地域
が集中する石油よりも価格変動や輸出入のリスク分散が可能です。また可採年数も石油の53年に対して、天然
ガスはシェールガスなどの非在来型ガスの開発により、回収可能な埋蔵量は250年分と言われ、可採年数の拡大
と市場価格の安定化も見込まれます。
また、低炭素社会の実現に向け、二酸化炭素(CO₂)の削減がますます重要視されています。温室効果ガ
スが引き起こしている地球温暖化の進行により、世界各地で多雨や寒波、異常高温などの異常気象が発生して
おり、世界中で対策が求められています。天然ガス自動車はCO₂排出量をガソリン車やディーゼル車より低減でき、
地球温暖化防止に役立ちます。また、窒素酸化物(NOx)や黒煙等の粒子状物質(PM)といった大気汚染
物質の排出量が極めて少なく、大気環境改善にも貢献できます。
天然ガスの環境性や経済性、エネルギーセキュリティの優位性を背景に、我が国では天然ガス自動車は実用
性の高い石油代替エネルギー車として、既にトラック、バス、塵芥車、軽貨物車、バン等の広い用途で普及して
います。
一方、世界に目を向けると、天然ガス自動車の普及台数は1,700万台を突破しています。世界では年間200万
台以上の規模で増加しており、
その実用性や環境性能から、次世代自動車のなかで主流に位置づけられています。
2011年秋、日本ガス協会では「2030年に向けた天然ガスの普及拡大」を発表し、産業部門、業務用・家庭
用部門での天然ガスシフト・高度利用の推進に加え、運輸部門でも取り組みを強化し、貨物自動車を主なターゲッ
トに50万台の天然ガス自動車を普及させる目標を掲げました。この目標においては、これまでの都市内輸送車両
への普及に加え、長距離・都市間輸送への大型トラックの普及を目指しています。このため、大型トラックの試作
車を物流事業者に使っていただき、性能の評価や運用上の課題を抽出し改善することを目的に「大型天然ガスト
ラックの普及推進事業」をスタートさせました。大型天然ガストラックの導入により、長距離・都市間輸送は大型車、
都市内輸送は中・小型車と、物流全体での省CO₂化、省エネ化、省コスト化が可能になります。
日本ガス協会は、天然ガスのメリットをより多くのお客さまにご享受いただくために、使命感を持って、天然ガス
自動車の普及拡大に取り組んで参ります。
自 動 車 を 取り巻く課 題
天 然 ガ ス 自 動 車
運輸部門の石油依存大
石油代替エネルギーとして
エネルギーセキュリティに貢献
CO₂などの温室効果ガス
による地球温暖化
NOx・PM等による大気汚染
2
はじめに
天然ガス自動車の
普及拡大に向けて
長距離都市間をつなぐ
大型天然ガストラックを軸とし
CO₂排出量削減
運輸部門への普及に向けた
環境にやさしく、ポスト新長期
規制値を大幅にクリア
取り組みと推進
天然ガス自動車 の 普及に向けて
2.
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
世 界 における次 世 代自動 車 の 主 流 は 天 然ガス自動 車
2.1 普及状況概要
自国で算出する天然ガスの有効利用(エネルギーの自給と経済性)として利用が始まった天然ガス自動車は、
イラン、パキスタン、アルゼンチン、ブラジル、インド、アメリカなどを中心に普及し、世界で現在約1,720万台が走
行しています。なかでもアメリカでは、技術革新によるシェールガス革命を追い風に国策として取り組んでおり、普
及がより一層期待されています。IEA(国際エネルギー機関)では2035年の普及予測台数を3,500万台と見込
んでいます。
世界の普及状況
ウクライナ
388,000
ドイツ
95,162
ロシア
86,012
ウズベキスタン
アルメニア 310,000
イタリア
746,470
244,000
ブルガリア
61,256
中国
1,500,000
イラン
インド
3,300,000
1,500,000
エジプト
178,000
パキスタン
3,100,000
バングラデシュ
200,000
アメリカ
112,000
日本
42,590
タイ
352,652
ベネズエラ
105,890
合計
約1,720万台
マレーシア
53,783
コロンビア
387,250
ペルー
136,662
ブラジル
1,730,223
ボリビア
140,400
アルゼンチン
2,172,768
図1 世界の普及状況 ※1
表1 世界における天然ガス自動車及び充填所数 ※1
国 名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
イラン
パキスタン
アルゼンチン
ブラジル
インド
中国
イタリア
ウクライナ
コロンビア
タイ
ウズベキスタン
アルメニア
バングラデシュ
エジプト
ボリビア
天然ガス自動車
台数(台)
3,300,000
3,100,000
2,172,768
1,730,223
1,500,000
1,500,000
746,470
388,000
387,250
352,652
310,000
244,000
200,000
178,000
140,400
CNG充てん所数
(基)
1,960
3,330
1,920
1,796
724
2,800
909
324
676
481
175
345
600
160
156
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
国 名
天然ガス自動車
台数(台)
ペルー
アメリカ
ベネズエラ
ドイツ
ロシア
ブルガリア
マレーシア
日本 ※2
スウェーデン
韓国
ミャンマー
カナダ
フランス
スイス
その他
合 計
136,662
112,000
105,890
95,162
86,012
61,256
53,783
42,590
41,789
35,872
30,005
14,205
13,500
11,500
104,161
17,194,150
CNG充てん所数
(基)
189
1,035
166
904
250
103
173
314
195
190
51
83
197
166
1,014
21,386
※1 出典:
「The Gas Vehicles Report」2013年3月号 ※2 2013年3月末実績
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
3
天然ガス自動車 の 普及に向けて
2.2 北中米での普及状況
アメリカでは環境意識の高いカリフォルニア州を中心に、バス11,000台、塵芥車4,000台、スクールバス3,000台
など、約11万台の天然ガス自動車が普及しています。特筆すべきは、光化学スモッグ対策として、2010年にロ
サンゼルスの市バス約2,200台すべてが天然ガス化を完了しました。今後一層の天然ガス自動車の普及が期待さ
れています。
2011年4月6日に連 邦 議 会
に「天然ガス自動車普及推
進法案(NAT GAS Act of
2011)
」 が 提 出されました。
この法案は都市内および長
距離輸送のディーゼルトラック
を天然ガス自動車に代替する
ことを主目的とし、乗用車や
ロサンゼルスの路線バス
ロサンゼルスの塵芥車
家庭用充填設備に対する優遇策も盛り込まれています。
オバマ大統領は2011年3月30日に国内での燃料の増産、天然ガス
やバイオ燃料の使用拡大および自動車の燃費改善により石油輸入量を
2025年までに3分の1削減するという計画“Blue Print For A Secure
Energy Future”で前述の天然ガス自動車普及推進法案への支持を
表明しました。さらに2012年1月26日には、政府車両へのNGV導入や
天然ガストラックの導入事業者への税制優遇、都市間を結ぶ天然ガス
ロサンゼルス空港のリムジンバス
スタンドのネットワークの構築に向けて民間企業と協力していく意向を示
しました。2013年2月の一般教書演説では、
「エネルギー安全保障基金」
を創設し、天然ガス自動車等の研究に充てることを表明しました。
こうした動きを受けて、ホンダが、これまでカリフォルニアなど4つの州
でのみ販売していたCivic Natural Gas(旧GX)を2012年モデルから
全米で発売することとしたほか、いすゞやフォードも天然ガス自動車の販
演説するオバマ大統領
売に力を入れ始めています。
米国エネルギー省は、2009年から2035年までの輸送用分野でのエネ
ルギー消費の年平均伸び率を0.6%と予想していますが、天然ガス自動
車向けの圧縮天然ガスの需要は年平均7.4%の伸び率で増大していくも
のと見込んでいます。
カナダでは、アメリカ同様に天然ガス料金が安く、連邦および州政府、
ロサンゼルス市内の天然ガススタンド
ガス事業者による天然ガス自動車普及策が進められています。当初は
乗用車への導入が中心でしたが、最近ではトラックやバンへの導入が
進んできています。
メキシコでは、天然ガスパイプライン網の整備に伴ない、メキシコ州
の公共用車に天然ガス自動車を導入し、パイロットプログラムを実施して
います。
4
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
クリーン・エナジー社のスタンド計画
※クリーン・エナジー社は、北米において輸送用天然
ガス燃料の最大プロバイダ
天然ガス自動車 の 普及に向けて
2.3 ヨーロッパでの普及状況
欧州では2003年の50万台から2012年には170万台へと急速に普及しています。EUとしても、2020年までに輸
送用燃料の20%を代替燃料に転換する政策を導入しました。
天然ガス自動車発祥の地であるイタリアではエネルギー自給の必要性から、国内産の天然ガスを利用しての天
然ガス自動車の普及が1930年代に始まりました。先進国で最も普及が進んでおり、CNG・LPG改造車産業が発
達しています。2013年2月現在、
75万台の天然ガス自動車が普及し、
天然ガススタンドは900ヶ所設置されています。
豊富なOEM(※3)天然ガス自動車
マルチディスペンサー
ドイツでも石油依存からの脱却やPM対策などの環境政策により天然ガス自動車の普及が進められており、
2013年2月現在9.5万台が普及しています。そのうち8割が乗用車です。天然ガススタンドは900ヶ所となっており、
24時間営業、セルフ化、マルチディスペンサー対応など利便性向上に向けた取り組みが進められています。
天然ガス自動車・天然ガススタンドが
一貫して増加
ニュルブルクリンク24に出場したバイオガス車
出典:Germany-Country Report, Timm Kehler-Erdgas Mobil(NGV2010)
ドイツの天然ガス自動車/スタンドの普及状況
OEM(※3)天然ガス自動車メーカー
2011年発表されたVW up!
環境先進国であるスウェーデンでは、自動車燃料におけるバイオ燃料
シェア拡大を進めており、これを燃料とする天然ガス自動車が増えてい
ます。
スウェーデンのCNG市バス
※3 OEM車:Original Equipment Manufacturer Vehicle…メーカーが自ら生産した天然ガス自動車のことをOEM車と言い、ガ
ソリン車やディーゼル車として一度完成させた車両を後改造によってCNG車にしたものと区別している。
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
5
天然ガス自動車 の 普及に向けて
2.4 アジアでの普及状況
イラン、パキスタン、インド、中国といった天然ガスを産出する国々では自国資源の有効利用と大気環境改善の
観点から、天然ガス自動車の普及が進められています。
インドでは、大気汚染改善のために、ディーゼルのバス、オート三輪車、商用車に焦点をあて、2013年2月現在、
約150万台が普及しています。そのうち147万台が乗
用車です。天然ガススタンドは700ヶ所となっています。
また石油価格の高騰などもあり、中核都市でCNG
乗用車市場が急成長しています。安価な改造キット
による改造が主ですが、マルチスズキ、タタ自動車な
どOEMメーカーが増えてきています。日産自動車は
Ashok LeylandとのJVを検討中であり、
丸紅オートモー
ティブはデリー周辺にCNG容器関連工場の進出を計画
しています。
マルチスズキ アルト、WagonR、Eeco、他
タタ CNGハイブリッドバス/ CNG乗用車
Bajajオート三輪車
インド天然ガススタンド
中国では2008年の北京オリンピックを契機に天然ガス自動車の大量普及が進められ、2013年2月現在約150万
台が普及しています。安凱客車、宇通客車、金竜汽車など業界大手が参入しています。天然ガススタンドは約
2,800ヶ所となっています。
普及施策として、四川省では2015年までにCNG車38万台、CNGスタンド350ヶ所、LNG車1万台、LNGスタン
ド80ヶ所を計画中です。チベット自治区でも初の天然ガススタンド、LNG車の導入が始まっています。
中国のCNG / LNGバス・トラック
韓国では1998 ∼ 99年に4台のCNGバスを2都市で試験走行したことを皮切りに、都市部での大気環境改善
(NOx、PM削減)を目的に、政府の強力な普及施策によって、2012年度中に韓国全土の公共バス約3万台す
べての天然ガス化をする予定です。ソウル市内の約1万台については既に完了しています。また、現在天然ガス
スタンドは190ヶ所となっています。
6
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
天然ガス自動車 の 普及に向けて
ソウル市内のCNGバス
HyundaiのCNGハイブリッドバス
タイでは、都市部での大気環境改善(NOx、PM削減)と石油輸入依存度(80%)を下げるため、国産天
然ガスの利用拡大を目的として天然ガス自動車の普及が進められてきました。2013年2月現在、バス約1.6万台、
トラック約4.4万台、小型車約29.1万台など合計約35万台が普及しています。天然ガススタンドは481ヶ所となって
います。
日本メーカー例:トヨタカローラLimeCNG /いすゞCNGトラック/日野CNGトラック
2.5 天然ガス自動車に関係する海外の組織
天然ガス自動車の普及組織としては、ガス産業の団体であるIGU、世界的活動を行う組織としてNGV
Global、各地域の普及組織として北米のNGVAmerica、欧州のNGVA Europe、アジアのANGVAなどがあり
ます。さらに国レベルでの普及活動を行う組織がイギリス、カナダ、韓国などにあります。これらの組織がお互い
に情報交換を行うなど有機的に結びつき、天然ガス自動車の普及活動を行っています。
■ IGU(International Gas Union:世界ガス連盟)
世界のガス産業の技術的・経済的発展と進行を目的に、1931年に設立されたガス産業を中心としたNPOで
ある:2012年9月現在78ヶ国加盟。
日本は2000年から2003年まで会長国を努め、2003年には東京で第22回世界ガス会議(WGC2003)を開
催した。
IGUは3年ごとに世界ガス会議を開催し、その3年間にガス産業のあらゆるテーマについて討論、検討などを
委員会やタスクフォークで行っている。
天然ガス自動車については、現在、第5専門委員会(WOC5:ガス利用分野)で産業用/家庭用機器、
燃料電池などとともに検討されている。
2012年6月には第25回世界ガス会議(WGC2012)がマレーシアのクアラルンプールで開催され、90ヶ国から
5,300人あまりが参加した。
◆ホームページアドレス:http://www.igu.org
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
7
天然ガス自動車 の 普及に向けて
■ NGV Global(旧名称IANGV:国際天然ガス自動車連盟)
天然ガス自動車の全世界的な普及・発展を目的に、1986年に創設された世界的組織で、2010年に名称を
NGV Globalに変更したもの。事務局はニュージランドにある。現在、10の国・地域NGV協会を含む300以
上の企業・団体が加盟している。
主な活動としては、1988年以降2年ごとに開催している国際天然ガス自動車会議・展示会のほか、世界銀
行などへのロビー活動などを行っている。近年IGUの活動にも協力している。
日本では、2000年10月に横浜市でNGV2000(第7回天然ガス自動車会議・展示会)を開催した。前回は
2012年11月にメキシコシティで開催され、次回は2014年5月ロサンゼルスで開催される予定である。
◆ホームページアドレス:http://www.ngvglobal.org
■ NGVAmerica(Natural Gas Vehicle for America:アメリカNGV協会)
アメリカガス事業者を中心に天然ガス自動車の普及のために組織されたNGVC(Natural Gas Vehicle
Coalition)から発展した組織である。
現在は、天然ガスおよび水素を輸送用燃料として利用することの普及活動を行っている。
年1回定期的に会議を開催したり、ロビー活動、マスコミへの意見広告など積極的に活動している。
◆ホームページアドレス:http://www.ngvamerica.org
■ NGVAEurope(Natural Gas Vehicle Association for Europe:欧州NGV協会)
1994年から14年間欧州におけるNGV普及活動を行ってきたENGVA(European Natural Gas Vehicle
Association)に代わり、2008年4月より組織される。会員の大半はENGVAから移り、また、本部もオランダ・
アムステルダムからスペイン・マドリッドになった。
技術、マーケティング、国別普及の3つの委員会を持ち、欧州での天然ガス自動車普及のために、技術基
準検討、EUへのロビー活動などを行っている。
◆ホームページアドレス:http://www.ngvaeurope.eu
■ ANGVA(Asia Pacific Natural Gas Vehicle Association:アジア太平洋NGV協会)
日本ガス協会が主催したアジア太平洋NGV協力会議を前身に、2003年に発足したアジア/オセアニア地域
の天然ガス自動車普及を目的とした組織である。2013年1月現在、24ヶ国、109社・団体が会員になっている。
ANGVAの目的は、アジア太平洋地域において天然ガス自動車を普及させることにより、環境にやさしい燃
料である天然ガスのマーケットを継続的に収益性のあるマーケットとして開発することである。
2年ごとに国際会議を主催しており、2011年10月には中国で第4回会議が開催され、次回は2013年11月イン
ドのニューデリーで開催予定である。
◆ホームページアドレス:http://www.angva.org
8
世界における次世代自動車の主流は天然ガス自動車
天然ガス自動車 の 普及に向けて
3.
天 然ガ ス自 動 車 の 普 及 に 向 け て
3.1 天然ガス自動車普及により期待できる効果
⑴ エネルギーセキュリティの向上
輸送用燃料はほとんど石油に依存しています。天然ガス自動車の普及により、輸送用燃料を多様化でき、エ
ネルギーセキュリティの向上が図れます。
⑵ 環境貢献
天然ガス自動車は、光化学スモッグ・酸性雨などの環境汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)の排出量が
少なく、喘息など呼吸器疾患の原因となる黒煙や粒子状物質(PM)をほとんど排出せず、大気環境改善に貢
献できます。また、
地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO₂)の排出量をガソリン車やディーゼル車より低減でき、
地球温暖化防止に貢献できます。
⑶ 経済性
非在来型天然ガスであるシェールガスやCBMの生産拡大により、可採年数の拡大および価格の安定化が見込
まれます。
3.2 エネルギーセキュリティの向上
⑴ 求められるエネルギーセキュリティ
輸送部門のエネルギー源は、大きく石油に依存している中、2011年3月の東日本大震災においてはサプライ
チェーンの寸断によりガソリンスタンドに給油のために長蛇の列ができ、市民生活にも甚大な影響がでました。生
活のライフラインである運送事業者においても、緊急物資を輸送する際、貨物用燃料の軽油の調達に関東地区
だけでなく関西地区においても苦慮していました。一方、天然ガススタンドは一部の津波被害を受けたものを除き、
電源の回復と共に営業を開始できたため、天然ガス自動車のユーザーからは「非常に助かった」と、数多くの
声をいただき、震災後の2週間は関東地区の40ヶ所の天然ガススタンドで充填が20%増加しました。
また、図2のように日本では他部門に比べて運輸部門における石油依存度が高く、大きな課題となっています。
97.9
運輸部門
家庭用部門
27.8
石油
業務用部門
石炭
26.6
ガス
電力
製造業部門
0%
39.0
20%
その他
40%
60%
80%
100%
図2 各部門のエネルギー源における石油の割合 ※4
※4 経済産業省 資源エネルギー庁 平成23年度総合エネルギー統計
天然ガス自動車の普及に向けて
9
天然ガス自動車 の 普及に向けて
⑵ モビリティの適材適所
「新・国家エネルギー戦略」(2006年5月)では、原油価格の高騰をはじめ、世界の厳しいエネルギー情勢、
構造変化を踏まえた新たなエネルギー戦略が策定され、運輸燃料の石油依存度を2030年までに80%とする計画
が公表されました。現在検討されている代替エネルギーとしては電気、天然ガスが実用的です。貨物分野では
小型車では電気自動車も実用的ですが、重量車では天然ガス自動車のみが実用的な車両と言えます。
日本 の 現 状
日本 の 将 来
貨物トラック・バス
燃料電池車
天然ガス自動車
ディーゼル車
ハイブリッド車
高効率クリーン
ディーゼル車
ハイブリッド車
プラグイン
ハイブリッド車
日当たり走行距離
車両重量
車両重量
ガソリン車
高効率ガソリン車
電気自動車
日当たり走行距離
図3 モビリティの適材適所のイメージ ※5
※5 出典:日経ビジネス2010.12.6
10
天然ガス自動車の普及に向けて
乗用車
天然ガス自動車 の 普及に向けて
3.3 環境貢献
⑴ 天然ガス自動車の環境特性
C O ₂ 排 出 量 の 比 較( 乗 用 車 )
光化学スモッグ・酸性雨などの環境汚染の原因となる窒素酸
%
化物(NOx)
、炭化水素(HC)の排出量が少なく、硫黄
100
酸化物(SOx)は全く排出されません。
100%
82%
80
喘息などの呼吸器疾患の原因となる黒煙や粒子状物質
△19%
60
(PM)はほとんど排出されません。
40
地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO₂)の排出量を、
20
ガソリン車より約2割低減できます。
0
ガソリン
NGV
PM規制値(g/kWh)
図4 従来車とNGVのCO₂排出量の比較例 ※6
天然ガス自動車の排出ガス例
0.03
ディーゼル車新長期規制値(JE05)/2005年10月∼
0.027
ディーゼル車ポスト新長期規則値(JE05)/2010年10月∼
0.02
圧縮天然ガス自動車の排出ガス技術指針値(2008)
(JE05)/2010年10月∼
0.01
圧縮天然ガス自動車の排出ガス技術指針値(2003)
(JE05)/2005年10月∼
2.0
0.00
0
0.5
0.7
1.0
1.5
2.0
NOx規制値(g/kWh)
図5 重量車(車両総重量3.5t超∼ 12t以下)のNOx・PM規制値との関係
⑵ 運輸部門のCO₂排出
貨物自動車の台数は図6のように、自動車台数比では20%弱ですがCO₂の排出量は輸送部門の34%と高く、
特に大型トラックは1台あたりの排出量が大きいため、天然ガス自動車導入によるCO₂排出量削減効果は高いと言
えます。
自動車台数比
運輸部門のCO₂排出状況(2011年度)
貨物車
1,496万台/19.6%
営業用貨物車
17.6%
(うち大型トラック約25万台)
特種(殊)車
166万台/2.2%
自家用貨物車
16.6%
乗用車等※
5,981 万台
78.3%
自家用
乗用車
50.0%
バス
1.9%
タクシー
1.6%
※「乗用車等」にはバス約23万台を含む
「貨物車」には軽貨物動車を含む
自動車検査登録情報協会 「自動車保有車両数 平成25年2月末現在」
船舶 鉄道 航空
4.6% 3.7% 3.9%
国立環境研究所 「日本の温室効果ガス排出量データ」
図6 輸送部門のCO₂排出状況
※6 出典:国産1,500㏄小型バンで比較。メーカーカタログ値を用いて算出。
天然ガス自動車の普及に向けて
11
天然ガス自動車 の 普及に向けて
⑶ 天然ガス自動車のCO₂排出量
小型貨物車でガソリン代替の場合
天然ガス自動車は、燃料種の違いによりCO₂排出量が20%弱削減できます。
(図5参照)
トラックでディーゼル代替の場合
大型天然ガストラックと大型ディーゼルトラックのCO₂排出量の実測値は、走行実験の算定から表2の通りとな
りました。
表2 大型トラック走行実験 ※7
走行実験の概要
実 験 日
平成23年9月2日∼ 4日
走行区間
大阪∼東京2往復(高速道路利用)
車 両
Ⓐ
Ⓑ
Ⓒ
分 類
大型天然ガストラック
大型ディーゼルトラック
大型ディーゼルトラック
いすゞGIGA改造車
いすゞGIGA
三菱ふそうスーパーグレート
車 種
車 種
PDG‐CYJ77WS改
PDG‐CYJ77WS
PJ‐FS54JVZ
排 気 量
9.83L
9.83L
12.88L
車両総重量
11,620㎏
11,320㎏
11,880㎏
積載重量
10,000㎏
10,000㎏
10,000㎏
※貨物積載条件として10トンのダミー貨物を積載
実験結果
車 両
走行距離
燃料消費量
CO₂排出係数
1㎞当たり排出量
Ⓐ天然ガス
2,068㎞
568.9㎥
2.22㎏‐CO₂/N㎥
609.7g‐CO₂
Ⓑディーゼル
2,085㎞
604.0L
2.59㎏‐CO₂/L
750.0g‐CO₂
Ⓒディーゼル
2,100㎞
594.3L
2.59㎏‐CO₂/L
732.7g‐CO₂
※CO₂排出係数は標準発熱量に単位発熱量当たりCO₂排出量を乗じて算定
大型天然ガストラックは、大型ディーゼルトラックに比べ1㎞当たりの排出量平均で、約18%のCO₂排出削減効果。
3.4 経済性
⑴ 2035年までのエネルギー需要見通し
IEA(国際エネルギー機関)が毎年発表する World Energy outlook 2012(WEO2012)
によると、
天然ガスは、
想定されるすべてのシナリオにおいて世界需要が増加する唯一の化石燃料で、世界のエネルギー需要増分の多
くをまかなうと予測されています。
WEO2012では、天然ガスの需要や価格を下記のように見通しています。
世界の天然ガス需要は、2010年時点の約2,700Mtoe(Mtoe:石油100万トンエネルギー量)から、2035年
には約4,000Mtoeへ約1.6% /年伸びる見通し。
2035年までの世界全体の天然ガス生産量増加分の約半分を非在来型ガスが占める。
2020年における米国から日本への輸出価格は液化・輸送コストを含め14ドル/MMBtu(100万英国熱量単
位)から15ドル/MMBtuの間と予測される。また、世界的に見て、2035年に向けて天然ガス価格は相対的
に石油価格より下回る状態で推移する。
※7 みずほ情報総研㈱「業務用車両のCO₂排出量削減試算」より
12
天然ガス自動車の普及に向けて
天然ガス自動車 の 普及に向けて
2035年までの世界の一次エネルギー需要の見通し ※8
2035年における非在来型ガスの主要生産国 ※8
Mtoe
0
2010年
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
石炭
石油
天然
ガス
再生可能
エネルギー
15
30
45
60
アメリカ
中国
カナダ
オーストラリア
インド
ロシア
アルゼンチン
メキシコ
インドネシア
アルジェリア
欧州連合
2035年
原子力
75
90%
シェールガス
コール・ベッド・メタン
タイトガス
非在来型ガスの
占める割合
0
100
200
300
400
500
600
bcm
⑵ 原燃料価格の動向と安定調達の取組み
①原燃料価格の動向
非在来型ガスの生産拡大などにより、原燃料である天然ガスの価格は低下が見込まれています。
シェールガス革命の起きたアメリカでは、天然ガス価格が低下傾向
欧州はアメリカ向けであったカタールLNGが流入し、ロシアからのパイプラインガス依存度が低下
シェールガスの生産拡大を受け、アメリカやカナダで複数のLNG輸出プロジェクトが開始予定。日本をはじめと
するアジア諸国への輸出価格は、米国天然ガス価格を反映するため、LNG輸入価格の低減が見込まれる
天然ガス価格は、今後も石油に対する価格優位性を維持する見込み
$/MMBTU
25
エジプト騒 乱
日本向けLNG
20
ロシアPLガス(ドイツ)
原 油との 乖 離
JCC(日本向け原油)
15
WTI(米国)
米国向けLNG
10
ヘンリーハブ(米国)
ドバイ原油
13/04
13/01
12/10
12/07
12/04
12/01
11/10
11/07
11/04
11/01
10/10
10/07
10/04
10/01
09/10
09/07
09/04
09/01
08/10
08/07
08/04
08/01
07/10
07/07
07/01
0
07/04
5
〈出典〉IEA「World Energy Outlook2010」、
EIA、貿易統計、日本経済新聞ほかを加工
図7 原燃料価格の推移
②都市ガス事業者によるLNG安定調達の取組み
増大するガス需要に対応するため、複数の国から輸入するなど、安定調達に努めています。また、さらなる
価格低減を目指して、上流事業への参画に取り組んでいます。
例えば
安定調達のための長期にわたるLNG契約、輸入量の増大に合わせた柔軟な引取契約。
新たな取組みとして、上流権益の獲得、非在来型ガス田への進出やFLNG(洋上浮体式)を活用した中
小ガス田開発への参画。
複数のプロジェクトと契約することによる調達先の多様化。
※8 出典:World Energy Outlook 2012
天然ガス自動車の普及に向けて
13
天然ガス自動車 の 普及に向けて
1999年
2011年
その他
(ナイジェリア・
エジプト・ペルー)
ロシア 赤道ギニア
アラスカ
カタール
オマーン
カタール
オースト
ラリア
ブルネイ
ブルネイ
マレーシア
インド
ネシア
インド
ネシア
オースト
ラリア
マレーシア
1,400万トン
2,382万トン
図8 LNG調達先 ※9
3.5 天然ガス自動車普及最近の取組み事例
天然ガス自動車を活用した取組みが、国土交通省と経済産業省が主宰する「グリーン物流パートナーシップ会
議」において平成23年度優良事業表彰を受賞。
⑴ 朝日新聞社とパナソニックのパートナーシップで進む異業種企業間の往復運送。朝日新聞の朝刊を静岡県
の新聞販売店に輸送後、同県内でパナソニックの修理部材を積み込んで東京・神奈川方面に配送します。
空きトラックを有効に用いたうえ、荷扱い品が全く異なる企業が連携した点などが評価され、経済産業大臣
賞を受賞しました。これには天然ガストラックが使用されています。
パナソニックでは他でも異業種企業間の往復運送を展開しており、異業種企業間の往復運送も含めて、
長距離用大型天然ガストラックを10台以上使用しています。
⑵ 土屋運輸と札幌市水産物卸売共同組合の天然ガストラックを
使った共同配送。各仲卸業者が個別に使用していたトラックの台
数が減り、また、天然ガス車化を図ったため、CO₂の排出量が半減。
一方、札幌市中央卸市場では黒煙ゼロを標榜し、全国に先駆け
てフォークリフトや構内運搬車の全車両を天然ガス化、市場内に天
然ガススタンドも整備し、市場全体の低炭素化を実現、国土交通
大臣賞を受賞しました。
札幌中央卸売市場天然ガススタンド
3.6 日本ガス協会の2030年ビジョン
日本ガス協会は2030年に向けて天然ガスの普及拡大ビジョンを次のように掲げています
⑴ 天然ガスシフト・高度利用の推進
①産業部門
熱需要の天然ガスへの燃料転換の加速(高度利用エンジニアリングの活用促進)
②業務用・家庭用部門
高性能・高機能ガスシステムの普及拡大、再生可能エネルギー、エネルギーマネジメントの導入
③輸送部門
天然ガス自動車(大型CNGトラック)の普及展開、燃料電池自動車向け水素供給インフラの整備
※9 一般社団法人 日本ガス協会 ガス事業便覧(平成24年版)
14
天然ガス自動車の普及に向けて
天然ガス自動車 の 普及に向けて
表3 天然ガスの普及拡大〈ポテンシャル〉
2010年
2030年
ガスコージェネレーション
460万kW
3000万kW
ガス空調
1300RT
2600RT
産業用熱需要天然ガス比率
10.7%
25.0%
家庭用燃料電池
2万台
500万台(LPG含む)
天然ガス自動車
4万台
50万台
⑵ 天然ガス自動車の今後のビジョン
輸送分野における燃料の多様化
環境貢献
「新・国家エネルギー戦略」(2006年)の中で、
運輸エネルギー部門で石油依存度を80%まで下げる
NOx・PM削減(地球環境対策)
CO₂削減(温暖化対策)
2030年の普及台数:約50万台(全トラック250万台の約2割)
都市間大型トラック:5万台(都市間需要10万台の50%を天然ガス自動車化)
都市内トラック:40万台
その他ガソリン代替:5万台
想 定
◎スタンド
物流拠点を中心に大型スタンド(年間300万㎥)を
約1,000箇所整備
1箇所にて大型トラック50台、都市内トラック400台
が充填
◎車両
メーカーによる大型車投入 2015年∼
高効率化
現行ディーゼルトラックと比較して
2015年∼ 25%CO₂削減
2020年∼ 50%CO₂削減
表4 【数値の概要】普及台数とCO₂削減量・ガス販売量・スタンド数
大型天然ガス車普及台数
都市内天然ガストラック普及台数
合計普及台数
CO₂削減量
天然ガス使用量
(軽油代替量と2009年実績比)
建設スタンド数
スタンド費用累計
2020年
1.3万台
10万台
11万台
79万トン
9.2億㎥
(9.5億L、3.5%)
260箇所
624億円
2030年
5万台
45万台
50万台
670万トン
27.3億㎥
(28.5億L、10.4%)
1,000箇所
2,104億円
天然ガス自動車の普及に向けて
15
天然ガス自動車 の 普及に向けて
①天然ガス自動車の普及ロードマップ
600,000
1,200
天然ガス自動車の普及計画及び天然ガススタンドの整備計画
1,000
500,000
1,000
大型トラック
970
中・小型トラック・バス・塵芥車
910
小型バン・構内運搬車等
840
天然ガススタンド累計
400,000
800
普及台数︵台︶
660
600
300,000
560
スタンド数︵箇所︶
760
470
2020年
超高効率量産車
投入
200,000
320
2015年
メーカー大型車
(高効率量産車)
投入
100,000 2011年
改造大型車投入
400
390
260
200
200
140
90
0
0
2
3
20
6
50
0
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 2027年 2028年 2029年
2030年
図9 天然ガス自動車の普及ロードマップ
〈今後の主な取組み〉
高圧容器等のコストダウンや、国内外の自動車メーカーがCNG車を国内市場に投入しやすい環境を作り出
すため、規制緩和や海外基準の導入等を働きかけます。
大型CNGエンジンの開発を行い、大型トラック分野のさらなる高効率化、低公害化を進め、他の次世代自
動車との差別化を図ります。
荷主や運送事業者、スタンド事業者の協力の下、天然ガス自動車と天然ガススタンドを計画的に普及させる
ことにより、天然ガススタンドの利便性の向上や運営の安定化を図ります。
CNG燃料費低減を進めることで、運送事業者の経済性に寄与し、天然ガススタンド経営の安定化を図ります。
天然ガス自動車、天然ガススタンドの普及拡大には、政府の積極的な支援が必要なため、普及政策を明確
に位置付け、また、補助、優遇税制等の継続、拡大をするよう働きかけます。
②普及シナリオ
貨物車を中心とした天然ガス自動車の普及
都 市と都 市をつなぐ貨 物 輸 送 ( 大 型 ・ 長 距 離 )と都 市 内 輸 送での 普 及 拡 大
都市内輸送
中・小型天然ガストラック
による都市内輸送
都市間輸送
大型天然ガストラック
による都市間輸送
都市内輸送
中・小型天然ガストラック
による都市内輸送
サービスエリア
物流拠点
物流拠点
大型天然ガススタンド
●物流の大動脈である拠点間・都市間輸送に大型天然ガストラックが導入されることで、高いCO₂削減効果が計れます
●都市間輸送のルートである高速道路や貨物ターミナルへ設置された大規模スタンドで燃料を供給することで、
大規模化によるスタンド経営の安定化が図れます
●天然ガスの小型トラックや軽自動車などの普及が進んでいる都市内輸送には、引き続き天然ガス自動車が貢献します
16
天然ガス自動車の普及に向けて
天然ガス自動車 の 普及に向けて
③天然ガススタンド拠点整備の方向性
長距離の大型トラックや都市内集配の中・小型トラックが集まる各地の物流拠点に合わせ大型天然ガススタン
ドを整備。
物流拠点
物流拠点
物流拠点
物流拠点
スタンド
注:各点は物流拠点
物流拠点に合わせて整備
将来は水素社会への架け橋 水素ステーションへの発展
CNGスタンド網の拡充
水素ステーション網へ
CNGスタンドの増設・ガソリンスタンドへのパイプライン接続
CNGスタンドへの水素製造装置の設置
現在
石油スタンド
CNGスタンド
石油・ガスでインフラが独立
3.7 都市間輸送の実証事業
⑴ 実証走行実験
日本ガス協会は、「大型天然ガストラックの普及推進事業」として、大型天然ガストラックのモニターを実施して
います。このモニターを通じて、環境性・経済性はもとより、走行性能や乗り心地などの知見や課題を取得、ま
た需要発掘も図ります。
モニター事業の内容
●車両
いすゞ製GIGA(車両総重量25t)を㈱協同(埼玉県)
にて、ディーゼルから天然ガス用に改造。
●モニター
一企業半年程度の期間、車両を無償で貸し出し、実際
の運用における運行記録やガス充填情報等のデータを
取得し、燃費(経済性)、CO₂削減量(環境性)を確
認します。
モニター協力企業
■佐川急便株式会社
■札幌通運株式会社
■サントリーロジスティク株式会社
■三陽輸送有限会社
■シャープ株式会社
■大同貨物自動車株式会社
■トナミ運輸株式会社
■新潟運輸株式会社
■日本通運株式会社
■日本ロジテム株式会社
■パナホーム株式会社(双葉運輸株式会社)
■福山通運株式会社
■有限会社ヤマコン
■株式会社ヤマタネ
■ヤマト運輸株式会社
●期間 平成23年12月から平成26年3月
天然ガス自動車の普及に向けて
17
天然ガス自動車 の 普及に向けて
⑵ 具体的な需要の顕在化
様々な業種の荷主、運送事業者への具体的導入に向け、積極的な働きかけや全日本トラック協会等の業界団
体と連携した普及対策の検討を実施しています。
3.8 主な規制緩和に関する取組み
⑴ 天然ガス自動車用等の高圧ガス容器に関する保安基準への海外規格の追加
行政刷新会議の下の「規制・制度改革に関する分科会」におけるエネルギー分野での検討の結果(平成
24年4月3日閣議決定)を踏まえ、
自動車に搭載される高圧ガス容器の規格について、欧州規則(ECE−R110等)
の規格の安全性が確認された場合には、
高圧ガス保安法等の見直し等に向けた検討を行うこととなりました。また、
車両等の型式認証を相互認証する制度(IWVTA)についての合意内容を踏まえ、経済産業省と国土交通省
の調整により、法律、政令、省令、運用等の法政上の措置を行うこととなりました。
⑵ 天然ガス自動車等のガス容器取付けに関する試験方法の見直し
平成24年4月3日の閣議決定を踏まえ、天然ガス自動車等のガス容器取付けに関する試験方法について、国
際基準調和を図るため、車両等の型式認証を相互に認証する制度に基づく認定規則の妥当性を検証した上で、
欧州規制を国内基準として導入したいと考えています。
⑶ 天然ガスディスペンサーと軽油等給油ディスペンサーの同一アイランド上への設置
現在、消防法や危険物の規制に関する規則等により、天然ガスディスペンサーは給油空地以外の場所に設置
することと規定されているため、ガソリン・軽油ディスペンサーと同じアイランド上へ設置することができません。そ
のため天然ガススタンドをガソリン・軽油のスタンドと併設する際の障害となっています。しかし、欧州などの海外
では、同一アイランド上への設置が認められている事例もあるため、それらの事例を参考に、規制緩和を要望し
た結果、国際先端テストの中で検討され、規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)において、平成
25年度検討開始、平成27年結論、結論を得次第措置されることが決定しました。
⑷ 天然ガス自動車用の車載容器の別車両への転載について
現在、天然ガス自動車に搭載された高圧容器は、15年使用することができますが、自動車が廃車になった場合、
使用期限が残っていたとしても、別の車両に転載することができません。そこで、今後転載する場合の安全性の
確認方法や、取り外し後の保管方法等について検討し、別の車両に転載することができるように要望しています。
18
天然ガス自動車の普及に向けて
天然ガス自動車 の 普及に向けて
4.
日本における天然ガス自動車を取り巻く環境と支援措置
日本 に お ける天 然ガ ス自 動 車 を 取り巻く環 境と支 援 措 置
4.1 天然ガス自動車概略史
年
昭和 12
14
36
59
平成 2.
3.
4.
4.
5.
5.
5.
5.
8
11
4
7
2
4
11
12
月
月
月
月
月
月
月
月
5. 12 月
6. 3 月
6. 4 月
6. 12 月
6. 12 月
7. 3 月
7. 4 月
7. 12 月
8. 4 月
8. 4 月
9. 1 月
9.
4月
9. 12 月
10. 2 月
10. 4 月
10. 6 月
10.
10.
11.
11.
12.
12.
13.
13.
13.
14.
14.
15.
16.
16.
17.
17.
18.
18.
20.
20.
22.
22.
23.
23.
6月
11
3
11
4
10
4
7
11
月
月
月
月
月
月
月
月
9月
10
10
3
3
2
10
6
12
3
7
3
10
3
12
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
月
事 項
京成電気鉄道(京成バス)で天然ガス自動車試験運転。
千葉、東京方面で800∼1,000台の天然ガス自動車が走行。
新潟交通の天然ガスバスが545台となり最盛期を迎える。
東京ガスで天然ガス自動車第1号を試作。(低公害車として天然ガス自動車が再度我国に登場)
通商産業省資源エネルギー庁補助事業「天然ガス自動車実用化調査」開始。
(∼平成7年度)
「天然ガス自動車フォーラム」設立。(※10)
日本ガス協会に天然ガス自動車プロジェクト部を設置。
通商産業省工業技術院補助事業「天然ガス自動車用充填機の実用化開発」開始。(∼平成6年度)
天然ガス自動車が運輸大臣認定車扱いとなる。
天然ガス自動車及び充填所に関する税制上の優遇措置(法人税、自動車税、自動車取得税の軽減)がとられる。
公害健康被害補償予防協会「天然ガス自動車の実用化に向けての要素技術の開発に関する調査」開始。(∼平成7年度)
通商産業省資源エネルギー庁補助事業「低公害自動車普及基盤整備計画(エコ・ステーション2000計画)」開始。
「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx法)
」によりNOx削減強
化開始。
高圧ガス取締法省令等改正により、天然ガススタンド基準等が導入される。
通商産業省資源エネルギー庁補助事業「天然ガス自動車普及促進対策事業」開始。
運輸省補助事業「都市バス先駆的事業」により、天然ガスバスが全国8都市で各1台導入される。
総合エネルギー対策推進閣僚会議において、「新エネルギー導入大綱」が決定され、クリーンエネルギー自動車の導入促進がう
たわれる。
ガス事業法省令等改正により、昇圧供給装置がガス工作物となる。
消防法省令等改正により、ガソリンスタンドに天然ガススタンドの併設が可能となる。
道路運送車両に保安基準の改正により、天然ガス自動車の大臣認定が終了し一般車両として、又低公害車として認められる。
通商産業省資源エネルギー庁補助事業「天然ガス自動車実用化調査」にてLNG車の開発着手。
環境庁低公害車集中利用モデル事業が開始され、自治体による集中導入に補助がなされる。
天然ガス自動車の全国普及台数が1,000台を突破する。
高圧ガス保安法(改正:高圧ガス取締法)省令等の改正により、天然ガス自動車用燃料容器の基準化と天然ガススタンドの設置
合理化他の規制緩和が行われる。
気候変動枠組条約第3回締結会議(COP3、京都会議)に合わせ、天然ガス自動車全国横断キャラバンを実施。
長野オリンピックにて、CNG車60台が活躍した。
容器則の機能性基準化及びオールコンポジット等を含む新CNG容器基準の施行。
一部天然ガス自動車のライン生産が開始される。
「地球温暖化対策促進大綱」が決定され、導入費用補助、税制優遇、低利融資等によるクリーンエネルギー自動車普及促進が
うたわれる。
LNG車、LNGスタンド試作完了。
高圧ガス保安法省令等が改正され、LNGスタンド及びLNG自動車用燃料容器の基準化が図られる。
ケンゾー社デザインのNGV新シンボルマークをフランス大使公邸にて発表。
日産CNG ADバンが日本初の超低排出ガス車(三つ星)に認定される。
パシフィコ横浜にて「国際天然ガス自動車会議・展示会 NGV2000」が開催される。
グリーン購入法が施行される。
経済産業省、
国土交通省、
環境省が、
1,000万台以上の低公害車普及を目標とする「低公害車開発普及アクションプラン」を策定。
天然ガス自動車の全国普及台数が10,000台を突破。
車両総重量25tクラスの超低公害大型天然ガストラックを開発試作する「次世代低公害車開発促進プロジェクト」を開始。(∼16
年度)
自動車NOx・PM法施行。
首都圏(8都県市)ディーゼル車規制開始。
天然ガス自動車の全国普及台数が20,000台を突破。
高効率・超低公害天然ガス自動車実用化開発完了。
次世代低公害車開発促進事業第1期完了。(大型CNG / LNGトラック)
自動車排出ガス規制「平成17年規制(新長期規制)
」施行。
天然ガス自動車燃料用容器の日本ガス協会基準が高圧ガス保安法の例示基準として新たに追加される。
天然ガス自動車の全国普及台数が30,000台を突破。
自動車排出ガス規制「ポスト新長期規制」制定。
北海道洞爺湖サミットにおいて天然ガスバス4台がシャトル運行され、環境に優しい車としてPRされた。
次世代低公害車開発・実用化促進事業第2期完了。(大型CNG / LNGトラック)
自動車排出ガス規制「ポスト新長期規制」一部施行。
天然ガス自動車の全国普及台数が40,000台を突破。
「大型天然ガストラックの普及推進事業」開始。
※10 天然ガス自動車に関する知識の向上及び情報の普及等により天然ガス自動車の理解を深め、天然ガス自動車の普及促進
に寄与することを目的として、設立された団体。
日本における天然ガス自動車を取り巻く環境と支援措置
19
天然ガス自動車 の 普及に向けて
4.2 天然ガス自動車導入の推移
344
35,000
25,000
38,861
40,429
321
37,117
288
350
314
300
34,203
270
31,462
250
27,605
224
24,263
200
181
20,638
20,000
138
15,000
150
16,561
107
12,012
62
7,811
47
0
100
82
10,000
5,000
天然ガススタンド数
天然ガス自動車数
30,000
333 41,463 42,590
311
乗用車
小型貨物(バン)
軽自動車等
トラック
塵芥車
バス
フォークリフト等
天然ガススタンド
342
327
324
40,000
243 24
123
12
49 6
6
421
1991
1992
1993
1994
50
5,252
34
3,640
759 1,211
2,093
1995 1996 1997
1998
1999
2000
2001 2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
0
年 度
図10 普及台数及び充填所数
4.3 全国の普及状況
⑴ 天然ガス自動車
表5 地域ごとの普及台数 平成25年3月31日現在
導入地区
北海道
東北圏
関東圏
東海・
北陸圏
近畿圏
中国・
四国圏
九州圏
合 計
比 率
車
132
106
3,026
1,995
2,840
502
932
9,533
22.4%
車
68
36
659
407
221
102
55
1,548
3.6%
車種
軽
自
乗
動
用
小型貨物(バン)
ト
ラ
塵
ッ
芥
バ
64
96
2,315
1,251
1,420
175
162
5,483
12.9%
ク
478
170
10,069
2,087
4,844
611
424
18,683
43.9%
車
34
10
2,399
317
964
67
42
3,833
9.0%
18
25
838
191
384
77
27
1,560
3.7%
1,516
254
54
10
88
0
28
1,950
4.6%
42,590
ス
フォークリフト等
※
合 計
2,310
697
19,360
6,258
10,761
1,534
1,670
地域別比率
5.4%
1.6%
45.5%
14.7%
25.3%
3.6%
3.9%
※フォークリフト等には、構内運搬車、トーイングトラクター等も含む。
⑵ 急速充填設備(エコ・ステーション、天然ガススタンド)・小型充填機(昇圧供給装置)
表6 地域ごとの充填所数 平成25年3月31日現在
導入地区
種類
東北圏
関東圏
東海・
北陸圏
近畿圏
中国・
四国圏
九州圏
合 計
天然ガススタンド(ガス事業者関与)
7
3
55
32
24
18
15
154
天然ガススタンド(一般資本)
0
1
49
29
36
3
2
120
自
20
北海道
家
1
1
18
5
12
2
1
40
合 計
用
充
填
所
8
5
122
66
72
23
18
314
昇圧供給装置(小型充填機)
2
12
234
142
159
36
27
612
日本における天然ガス自動車を取り巻く環境と支援措置
天然ガス自動車 の 普及に向けて
4.4 関係法令
天然ガス自動車の普及のために以下の通り関係法令が整備されています。
⑴ 天然ガス自動車に関する法体系
法令等の名称
法令等に含まれる内容
道路運送車両の保安基準(国土交通省令)
(以下「保安
基準」)
自動車点検基準(国土交通省令)
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(国土交通
告示)
審査事務規程(自動車検査独立行政法人)
圧縮天然ガスを燃料とする自動車の取扱いについて(通達)
圧縮天然ガス(CNG)自動車の取扱いについて(通達)
圧縮天然ガス自動車の構造基準の一部改正について(通
達)
圧縮天然ガス自動車(CNG自動車)に係わる点検の実施
方法について(通達)
天然ガス自動車の取扱いに関すること
自動車の構造に関すること
燃料装置 保安基準第15条
高圧ガスの燃料装置 保安基準第17条
電気装置 保安基準第17条の2
ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の飛散防止装置
保安基準第31条
自動車の検査に関すること
自動車の点検に関すること
天然ガス自動車に係わる使用・点検・整備・講習に関する
こと
高圧ガス保安法(以下「保安法」)
容器保安規則
容器保安規則に基づき表示等の細目、容器再検査の方法
等を定める告示
一般高圧ガス保安規則
ガス容器及び容器附属品に関すること
保安法第44、45、46、49、56条
ガス容器の刻印・表示に関すること
保安法第45、46、49条
CNG自動車用容器等の再検査期間等に関すること
保安法第48条
ガス容器及び容器附属品の再検査に関すること
保安法第49、50、51、60条
CNG自動車用容器等の使用制限に関すること
容器附属品の刻印に関すること 保安法第49条
ガス容器等に刻印される製造年月日又は検査合格年月日に
関すること
⑵ 天然ガススタンドに関する法体系
法令等の名称
法令等に含まれる内容
高圧ガス保安法
一般高圧ガス保安規則(以下「一般則」)
保安検査の方法を定める告示等
圧縮天然ガススタンドにおける施設の位置、構造及び設備なら
びに製造の方法に関すること
高圧ガス設備、ディスペンサー、スタンド周囲等の遠隔距離
一般則第7条
保安監督者の資格要件 一般則第64条
定期自主検査、保安検査 一般則 第79、83条
消防法
危険物の規制に関する政令等
天然ガスを充填するための設備を設ける給油取扱所の位置、
構造及び設備等に関すること
建築基準法
建築基準法施行令
建築物の敷地・構造・設備の基準に及び制限に関する事項
並びに耐震設計に関すること
⑶ 小型充填機に関する法体系
法令等の名称
法令等に含まれる内容
ガス事業法
ガス導管材料、接合方法、構造、試験方法、保安規定、供
ガス事業法施行令・施行規則
給規程及びガス供給施設の設計・工事・維持管理に関するこ
ガス工作物の技術上の基準を定める省令(以下「技省令」)と
機器の充填能力 技省令60条
安全措置等 技省令61条
設置場所 技省令62条
点検 技省令63条
日本における天然ガス自動車を取り巻く環境と支援措置
21
天然ガス自動車 の 普及に向けて
4.5 政府による支援措置
天然ガス自動車などの低公害車の普及を促進するために、政府による助成や優遇税制等の支援措置が実施
されています。
⑴ 平成25年度天然ガス自動車関係補助(政府等事業予算)
平成25年5月現在(単位:百万円)
事業名
事業概要
物流の低炭素化促進事業
(国土交通省連携事業)
〈環境省〉
H25予算
「低炭素価値向上に向けた社会システム構築支援基金」(H25予算:7,600
百万円)からの補助事業
大型CNGトラックを活用した低炭素中距離貨物輸送のモデル構築に必要な設備
の導入事業であり、CNGスタンド整備と大型CNGトラックによる都市間輸送体制
整備に対する補助
補助額:必要な経費(大型CNGトラック購入費、大型用CNG充填施設の整備
費等)の1/2以内
約800
低公害車普及促進対策費補助
*対象車両:事業用の天然ガス自動車(貨物、車両総重量制限なし)
、天然ガス
〈国土交通省〉
バス(乗車定員11人以上)
*補助額:天然ガス自動車とガソリン車・ディーゼル車との差額の1/2以内(上限あり)
車両
補助対象者
補助率
補助要件
経年車(注1)の廃車を伴う新車購入
1/2
新車のみの購入の
場合、環境対応車
を年 間3台 以 上 導
入すること(注2)
トラック 新車のみの購入
1/3
使用過程車改造
1/3
経年車(注1)の廃車を伴う新車購入
1/2
新車のみの購入
1/3
使用過程車改造
1/3
バス
600
要件なし
(注1)新規登録日から起算した車齢が平成25年度中に10年以上経過している自動車
(注2)グリーン経営認証制度等を取得している者は、1台からの導入を認める。
廃棄物エネルギー導入・低炭素化
促進事業
〈環境省〉
廃棄物収集車の低炭素化を図るため、地方公共団体及び民間事業者を対象と
して、電動式塵芥収集車(パッカー装置を電動化した塵芥車)を導入する事
業への補助
補助額:既存車との差額の1/2
低公害車導入促進助成事業
〈全日本トラック協会〉
事業用トラック(トラ協会員)の導入に対する助成(国との協調が必要)。CNG
車の場合は使用過程車改造への助成もあり。
補 助 額:車両総重量2.5t超のCNG車両(新車)については価格差の1/6
*これに加えて、各地方トラック協会からの助成もあり。
760
⑵ 平成25年度天然ガス自動車関係税制優遇・財政投融資
平成25年5月現在
項 目
内 容
1.税制
⑴固定資産税
低公害車燃料供給設備(1基の取得価額が2,000万円以上)の固定資産税の課税標準
額を最初の3年間2/3とする。
⑵自動車取得税
車両取得時の税を減免。天然ガス自動車は、平成21年排ガス規制NOx10%以上低減した
車両が対象。
新車:非課税、中古車:45万円控除
⑶自動車重量税
新車購入時又は継続車検時の税を免除(1回限り)。天然ガス自動車は、平成21年排ガス
規制NOx10%以上低減した車両が対象。
新車新規検査:免税、2回目車検:50%軽減
⑷自動車税
自動車税を軽減。天然ガス自動車は、平成21年排ガス規制NOx10%以上低減した車両
が対象。
新車登録した翌年度1年間の自動車税が概ね50%軽減
2.財政投融資
⑴日本政策金融公庫
環境・エネルギー対策資金
22
中小企業向けの低公害車取得等に対する融資。貸付限度額は7億2千万円で、4億円ま
では特別利率が適用される。
日本における天然ガス自動車を取り巻く環境と支援措置
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.
参 考 資 料
5.1.1 天然ガスとは
天然ガスは、メタンを主成分とする天然の可燃性ガスで、世界各地
に賦存しており、図11のように地殻にガス単独で存在するガス田ガス、
原油と共存している油田ガス等があります。地層の大規模な褶曲(背
斜)構造に貯まったこれらのガス(「在来型ガス」)がこれまで主に採
掘されてきました。
しかし、図12に示される、これまで商業生産が難しいと考えられて
いたシェールガス(注1)や、図11に示されるCBM(注2)などの「非
図11 ガス田・油田の模式図
在来型ガス」も、近年の技術の進歩により欧米、中国などで採掘され
始めました。米国では2008年に「非在来型天然ガス」の生産量が国
内ガス生産量の50%を超えています。
一方、日本の周辺海域では大量のメタンハイドレート(注3)の存在
が確認されています。産出技術の研究が進められており、2013年日
本は世界で初めてガスの試験採取に成功しています。(図13、14)
天然ガスは日本国内でも産出されますが、国内供給量の約96%は
海外から、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)の状態
図12 シェールガス
で輸入されています。なお、LPガス(Liquefied Petroleum Gas:液
化石油ガス)は石油に随伴して産出されるプロパンやブタンを主成分とするガスで、天然ガスとは異なります。
最新のBSR分布図(2009年)
海洋
BSR面積=約122,000㎢
海底面
BSR
(詳細調査により海域の一部に濃集帯が存在)
約5,000㎢
BSR
(濃集帯を示唆する特徴が海域の一部に認められる)
約61,000㎢
BSR
(濃集帯を示唆する特徴がない)
約20,000㎢
メタンハイドレート
フリーガス
ガス ガス
BSR
(調査データが少ない)
約36,000㎢
図13 日本周辺海域におけるメタンハイドレート
起源BSR分布図 ※11
都市ガスとして供給される天然ガスは、熱量や燃焼性の調
整を行い、また漏れたときに速やかに知覚できるように付臭さ
れています(表7)
。
堆積物
基盤岩
図14 メタンハイドレート賦存状況例
表7 13A都市ガスの組成例(熱量45MJ/Nm³)
成 分
組 成
メタン
エタン
プロパン
ブタン
90%
6%
3%
1%
【注1】シェールガス:薄片状に剥がれやすい頁岩(シェール)の微細な割れ目に封じ込められた天然ガス。
【注2】CBM:炭層メタン、コールベッドメタン(Coalbed methane)のこと。石炭の生成・熟成に伴って発生し
たメタンを主成分とするガスが、炭層中の石炭に保持されているもの。
【注3】メタンハイドレート:メタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている固体結晶で、燃える氷とも呼
ばれる。
※11 BSR(Bottom Simulating Reflector 海底擬似反射面)
:メタンハイドレートが分布する海域には、地震探査記録にBSRと
呼ばれる特殊な反射記録が現れ、メタンハイドレートの存在を推測することができる。
参考資料
23
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.1.2 天然ガスの一般的特徴
⑴ クリーンなエネルギー
天然ガスは、メタンを主成分としたガスで、硫黄分、その他の不純物を含まないため、燃やしてもSOxやススを
ほとんど発生せず、また地球温暖化の原因物質の一つであるCO₂の排出量も石油より約25%少ない事が特徴です。
さらに、光化学スモッグや酸性雨の原因となるNOxの
排出量が少ない環境性に優れたエネルギーです。
軽油
ガソリン
LPG
天然ガス
100
98
87
74
図15 燃料自体のCO₂排出量比較 ※12
⑵ 高い安全性
天然ガスは、空気より軽く、液体燃料のように地上に滞留せず、上方に拡散します。燃焼下限界(燃焼する
ことのできる空気中の燃焼濃度の下限)が、他燃料に比較して高い(約4.5%)こと、自然発火温度も高いこと
から他燃料と比較して安全性が高いエネルギーです。
また、天然ガスにはCO等の毒性物質が含まれていませんので、ガス中毒の心配はありません。
表8 各種燃料の物性比較 ※13
対空気比重(空気=1、15℃)
メタン
プロパン
ブタン
ガソリン
軽 油
メタノール
0.56
1.55
2.09
3∼4
7
1.11
自然発火温度/℃
632
504
430
約300
250 ∼ 260
450
可燃範囲/ vol%
5.0 ∼ 15.0
2.1 ∼ 9.5
1.6 ∼ 8.4
1.4 ∼ 6.0
1.0 ∼ 5.0
6.0 ∼ 13.5
総発熱量/ MJ/ℓ
39.8※
99.0※
128.4※
34.6
37.7
18.1
オクタン価
130
112
94
91
−
120
※メタン、プロパン、ブタンは気体で貯蔵した場合(MJ/㎥)
、他は液体で貯蔵した場合。
5.1.3 供給の安定性
天然ガスは、世界各地に広く豊富に埋蔵されています。埋蔵量は2012年現在で約187兆㎥(非在来型を除く)
が確認され、年間生産量で割った可採年数は55年になります。
さらに新しいガス田が次々に発見され、シェールガスなどの非在来型ガスを含めると回収可能な埋蔵量は約250
年分といわれています。
欧州・東欧・中央アジア
ロシア連邦
北米
32.9
25.5
中東
10.8
日本
0.04
80.5
アフリカ
アジア・大洋州
天然ガス確認埋蔵量
合計
187.3兆㎥
BP統計資料 2013
14.5
中南米
15.5
7.6
(単位:兆㎥)
図16 主な天然ガスの確認埋蔵量の地域構成 ※14
※12 環境省地球環境局「実行計画策定マニュアル及び室温効果ガス排出量算定ガイドライン」 平成19年3月
※13 化学便覧 第6版 応用編 丸善、燃料便覧 コロナ社、他
※14 BP Statistical Review of World Energy June 2013
24
参考資料
天然ガス自動車 の 普及に向けて
中南米
4.1
アジア・大洋州
2.5
欧州・東欧・中央アジア
3.2
北米
5.8
ロシア連邦
5.2
アフリカ
7.7
アフリカ
7.8
アジア・大洋州
8.2
天然ガス
可採年数
約55年
中東
43.0
石油
可採年数
北米
13.2
欧州・東欧・
中央アジア
13.6
ロシア連邦
17.6
約52年
中東
48.4
中南米
19.7
図17 天然ガス、石油の地域別確認埋蔵量構成比と可採年数 ※15
5.1.4 液化天然ガス(LNG)の供給体制
日本国内では、天然ガスは新潟県、千葉県、北海道等で産出されますが、その生産量は年間33億㎥程度と
極めて少ないものです。昭和44年のアラスカLNG導入後、マレーシア、カタール、オーストラリア、インドネシア、
ブルネイ、ロシアなどからLNGが供給されています。
ロシア
エジプト
カタール
アブダビ
(アラブ首長国連邦) オマーン
赤道ギニア
279万t
(3.2%)
ナイジェリア
オマーン
398万t
(4.6%)
ブルネイ
マレーシア
赤道ギニア
インドネシア
オーストラリア
エジプト ペルー
その他
104万t 82万t 180万t
(1.2%) (0.9%) (2.1%)
ナイジェリア
478万t
(5.5%)
オーストラリア
1,591万t
(18.2%)
アラブ首長国連邦
554万t
(6.3%)
ペルー
合計
ブルネイ
591万t
8,731
(6.8%)
インドネシア
616万t ロシア
(7.1%) 831万t
(9.5%)
万t
カタール
1,566万t
(17.9%)
マレーシア
1,461万t
(16.7%)
図18 LNG輸入実績(2012年1月∼ 12月)※16
※15 BP Statistical Review of World Energy June 2013
※16 財務省日本貿易統計
参考資料
25
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.1.5 天然ガス供給エリア(2012年3月現在)
現在、日本全国で209社あるガス事業者が、天然ガス系高カロリー都市ガス(12A、13A)の供給を行ってい
る地域を下図に示します。
大都市圏の大半ではすでに天然ガス系都市ガスが供給されており、天然ガス以外のエリアも順次天然ガス化
が進められています。
石狩LNG基地
(北海道ガス)
函館みなと工場
(北海道ガス)
日本海エル・エヌ・ジー
新潟基地
(東北電力/石油資源開発/北陸ガス 他)
港工場
(仙台市ガス局)
(計画)日立LNG基地
(東京ガス)
姫路製造所(大阪ガス)
築港工場(岡山ガス)
袖ヶ浦工場(東京ガス)
廿日市工場(広島ガス)
扇島工場(東京ガス)
(計画)ひびきLNG基地
(ひびきエル・エヌ・ジー)
根岸工場
(東京ガス・東京電力)
福北工場(西部ガス)
清水エル・エヌ・ジー袖師基地(静岡ガス)
泉北製造所1,2
(大阪ガス)
長崎工場
(西部ガス)
鹿児島工場(日本ガス)
松山工場
(四国ガス)
大分エル・エヌ・ジー基地
(九州電力/大分ガス 他)
高松工場
(四国ガス)
知多LNG共同基地(東邦ガス/中部電力)
知多緑浜工場(東邦ガス)
四日市工場(東邦ガス)
坂出LNG基地
(四国ガス/四国電力/コスモ石油)
天然ガス供給エリア
(12A、13A)
天然ガス以外のガスを
供給する都市ガス供給エリア
図19 天然ガス供給エリア及び都市ガス事業に使われているLNG基地 ※17
※17 都市ガス事業の現況2012より作成
26
参考資料
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.2.1 天然ガス自動車の種類
天然ガス自動車は、燃料の貯蔵方式で分類すると次のようになります。
天然ガス自動車
Natural Gas Vehicle
圧縮天然ガス自動車
(CNG自動車)
液化天然ガス自動車
(LNG自動車)
吸着天然ガス自動車
(ANG自動車)
CNG:Compressed Natural Gas
LNG:Liquefied Natural Gas
ANG:Adsorbed Natural Gas
天然ガス専焼車
天然ガスのみを燃料とす
る車
ガソリン
エンジン
ベース車
ディーゼル
エンジン
ベース車
バイフューエル車
デュアルフューエル車
天然ガスとガソリンの2つ 天然ガスに軽油を少量混
の燃料を切り替えて、ど 合させ、軽油を着火源と
する車
ちらでも走行可能な車
(天然ガス+軽油)
(天然ガス/ガソリン)
ハイブリッド車
天然ガスエンジンに電気
モーターを組み合わせた
車
⑴ 圧縮天然ガス自動車(CNG自動車)
天然ガスを気体のまま、高圧(20MPa)でガス容器に貯蔵する車両で、現在使用されている天然ガス自動車
のほとんどがこのタイプです。また最近、様々な種類の車両が市場に投入され、以下のような車種があります。
①天然ガス専焼車
圧縮天然ガスだけを燃料にする車両で、軽自動車や小型貨物車等のガソリンエンジンをベースにする車両や
トラックやバス等の大型車向けのディーゼルエンジンをベースにする車があります。
②バイフューエル車
圧縮天然ガスとガソリンのどちらの燃料でも走行可能な車両です。日本ではメーカー製造車はなく、後改造
によるものが主流ですが、ヨーロッパの小型乗用車では一般的に普及しています。ガソリンでも走行できるので、
インフラ整備が進んでいない地域でも安心して使用できます。
三菱ミニキャブバン・バイフューエル(三菱ロジテクノ)
トヨタプロボックス・バイフューエル(HKS)
参考資料
27
天然ガス自動車 の 普及に向けて
③デュアルフューエル車
圧縮天然ガスに軽油を混合させ、着火源として使用する車両です。ディーゼルエンジンとほぼ同等の熱効率
で、天然ガスがなくなっても、軽油だけで走行が可能です。海外では、VOLVO TRUCKがこの技術を利用
したディーゼル・デュアルフューエル車を2011年より欧州四ヵ国で販売開始。日本においても排ガス性能の向上
に向けた技術開発が必要です。
④ハイブリッド車
天然ガスエンジンに電気モーターを組み合わせた車両です。これまでは試作車両だけでしたが、2012年か
ら改造車の販売が始まりました。
カムリハイブリッド CNGバイフューエル(エフ・ケイ メカニック) トヨタSAIハイブリッド CNGバイフューエル(HKS)
⑵ 液化天然ガス自動車(LNG自動車)
天然ガスを液体状態(−162℃)で、超低温容器に貯蔵する車両です。日本では、国土交通省の次世代低
公害車開発促進事業において、大型LNGトラックによる公道走行試験を平成21年度に実施しました。1,200km
の無充填走行を達成し、日本ガス協会は『LNG自動車構造基準』を策定しました。長距離移動を必要とされる
北米、豪州、中国等で開発が盛んで実用化もされています。日本ではBOG(※18)処理の課題もあり、まだ実用
化されていませんが、今後技術開発が進めば長距離移動が必要な車両での普及が期待されます。
⑶ 吸着天然ガス自動車(ANG自動車)
天然ガスを、ガス容器内の吸着材に吸着させ、圧力数MPaで貯蔵する車両で、試験研究の段階にあります。
5.2.2 天然ガス自動車の構造
天然ガス自動車の構造は、燃料供給系を除
燃料フィルタ
ガス充填口
いてガソリン車とほぼ同じです。
燃料の天然ガスは、ガス充填口を通して、
自動 車に搭 載されたガス容 器に最 高 圧 力
燃料遮断弁
インジェクタ
20MPaで充填されます。また運転時には、ガ
ス容器から燃料配管を通り、レギュレータ(減
圧弁)で減圧されてインジェクタでエンジンに供
ガス容器
給されます。
燃料配管
レギュレータ
(減圧弁)
図20 小型バン
(例)
※18 BOG(Boil Off Gas)
:LNG貯槽への入熱によりLNGの一部が蒸発して発生したガスのこと。
28
参考資料
天然ガス自動車 の 普及に向けて
三元触媒
ガソリンタンク
電磁弁
ガス容器
ガス容器
エアクリーナ
容器元弁
ガス充填口
インジェクタ
レギュレータ
(減圧弁)
図21 トラック
(例)
ガス充填口
ガソリンインジェクタ
レギュレータ(減圧弁)
ガスインジェクタ
逆止弁
燃料遮断弁
図22 バイフューエル車
(例)
表9 天然ガス自動車の諸元一覧
車 種
通称名
軽自動車 ダイハツハイゼットカーゴ
全長
㎜
全幅
㎜
全高
㎜
車両
重量
㎏
EBD-S321V改
3,395
1,475
1,875
85
車両 乗車
最大
エンジン
積載量 総重量 定員
型式
㎏ (人)
㎏
排ガス
対策
一充填走行
ガス
燃料
(※19)
容器 充填量 距離
km
N㎥
リットル
29[39]/6,400
三元触媒
37.6×2
最高出力
排気量
kW
[ps]
/
cc
rpm
350
1,445
2(4)
(250) (1,455)
KF-VE改
658
15.0
275
CFE-NCP52V
4,195
1,690
1,510
400
1,650
1,140
2(5)
(250) (1,655)
1NZ-FNE
1,496
68[92]/6,000
三元触媒
88
17.6
340
いすゞエルフ
TFG-NJR82ZAN
5,150
1,890
2,810
2,805
1,950
4,920
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
93×2
37.2
180∼220
いすゞエルフ
TFG-NKR82ZAN
5,150
1,890
3,040
2,915
2,000
5,080
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
93×2
37.2
180∼220
いすゞエルフ
TFG-NPR82ZAN
6,475
2,195
3,170
3,495
3,000
6,660
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
150×2
60
300∼350
SKG-FRR90S2改
7,835
2,310
3,390
4,470
3,400
7,980
2
6HF1-TCN
7,790
162[220]/2,400
三元触媒
150×2
60
240∼300
LKG-FTR90S2改
7,835
2,310
3,420
5,150
8,300
13,560
2
6HF1-TCN
7,790
162[220]/2,400
三元触媒
150×2
60
240∼300
マツダタイタン
TFG-LMR82ZAN
6,390
1,890
3,040
3,235
2,000
5,400
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
150×2
60.0
300∼350
UDトラックスコンドル
SFG-BLR82AN
5,050
1,890
2,815
2,790
2,000
4,955
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
93×2
37.2
180∼220
UDトラックスコンドル
SFG-BPR82XAN
6,515
2,195
3,055
3,460
2,000
5,625
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
150×2
60.0
300∼350
いすゞエルフ
TFG-NMR82ZAN
5,295
1,845
2,300
4,500
2,000
6,665
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
93×2
37.2
180∼220
小型バン トヨタプロボックスバン
トラック いすゞフォワード
(※20) いすゞフォワード
塵芥車
(※20)
型式
いすゞフォワード
SKG-FRR90S2改
6,550
2,195
2,480
5,650
2,150
7,965
3
6HF1-TCN
7,790
162[220]/2,400
三元触媒
150×2
60
130∼160
(作業モード)
いすゞフォワード
LKG-FTR90S2改
7,290
2,280
2,745
6,770
5,600
12,535
3
6HF1-TCN
7,790
162[220]/2,400
三元触媒
150×2
60
130∼160
(作業モード)
UDトラックスコンドル
(2t)
SFG-BKR82XAN
5,200
1,845
2,260
4,185
2,000
6,350
3
4HV1
4,570
96[130]/3,200
三元触媒
93×2
37.2
120∼140
中型バス
いすゞ中型ノンステップバス
(※20)
PDG-LR234J2改
8,990
2,300
3,300
8,490
−
11,680
58
6HF1-TCN
7,790
162[220]/2,400
三元触媒
150×3
90
200
大型バス
いすゞ大型ノンステップバス
(※20)
LDG-LV234L3改
10,425
2,490
3,270
10,360
−
14,430
74
6HF1-TCS
7,790
180[245]/2,200
三元触媒
150×5
150
200
02-8FG25
3,690
1,150
2,110
3,920
2,500
(荷重)
−
1
4Y
2,237
38[51]/2,570
三元触媒
63×1
12.6
5時間
2,065
1,500
2,510
(荷重)
−
1
K21
2,065
34[46]/2,200
−
63×1
12.6
5時間
2,074
2,500
3,620
(荷重)
−
1
K25
2,488
40[54]/2,200
−
63×1
12.6
5時間
2,103
3,500
4,660
(荷重)
−
1
K25
2,488
40[54]/2,200
−
63×1
12.6
5時間
389
登坂能力 10度
(最大積載時)
三元触媒
26.2×1
5.2
7.5時間
(市場走行時)
389
登坂能力 10度
(最大積載時)
三元触媒
26.2×2
10.4
15時間
(市場走行時)
トヨタL&Fカンパニー
フォーク ニチユ三菱フォークリフト
リフト
(※20) ニチユ三菱フォークリフト
ニチユ三菱フォークリフト
構内
運搬車
関東機械センターマイテーカー
関東機械センターマイテーカー
FG15CNG
FG25ZCNG
FG35ACNG
V3-CNG-STD-1
V3-CNG-RZ1195-2
3,180
3,630
3,865
3,280
3,280
1,065
1,150
1,290
1,100
1,100
1,800
1,800
740
775
1,000
1,000
1,300
1,325
1
1
GX390
GX390
※19 一充填走行距離は、総発熱量46MJ/㎥(11,000kcal/㎥)の天然ガス使用時の市街地での推定走行距離
※20 トラック、塵芥車、バス、フォークリフトの諸元は、代表的架装例
参考資料
29
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.2.3 天然ガス自動車の安全性
天然ガス自動車の構造は、基本的にガソリン車やディーゼル車と同じであり、異なるのは燃料供給系だけです。
その安全性については、使用部品や装置の機能により、衝突時や火災時にも、以下のように十分確保されています。
⑴ 衝突の場合
①過流防止弁、主止弁、燃料遮断弁など各種の安全装置により、燃料(天然ガス)の漏洩を防止します。
②ガス容器、配管・継手、機器類はすべて衝突に耐えうる強度を持ち、また、損傷しにくいように配置されて
います。
⑵ 火災の場合
ガス容器が破損しないように、ガスを安全に排出する安全弁が作動し、ガス容器内の圧力上昇を防ぎ、破損
を防止します。
また、ガス充填終了後にガス充填ホースを接続した状態で発進した場合、車両及び充填設備の損傷を防ぐた
めに、
車両側のガス充填口の扉を開くとスタータ回路が切れ、
エンジンが始動しないようにした誤発進防止装置(ス
タータインターロックシステム)を装備した車両もあります。
5.2.4 天然ガス自動車の整備
⑴ 燃料供給系の点検
天然ガス自動車の点検は、基本的にガソリン車やディーゼル車と同じですが、燃料供給系に違いがあります。
点検項目の概要を以下に示します。具体的な点検方法は「自動車点検基準(国土交通省令)」等により規定され、
定期点検時に確実に実施する必要があります。
①導管、継手部のガス漏れと損傷:レギュレータ(減圧弁)
、燃料配管、燃料充填口等を目視や石けん水を
使用して、ガス漏れや損傷がないか確認する。
②ガス容器取付部の緩みと損傷:スパナ等で緩みの有無、目視により損傷の有無を確認、点検する。
この車両検査方法のほか、整備事業者の基準や検査設備、天然ガス自動車整備講習の受講義務などの詳
細に関しては、地域毎に「運輸局通達」により運用されている場合が多く、管轄地区の運輸支局、整備振興
会等に確認する必要があります。
⑵ 容器再検査
ガス容器は、高圧ガス保安法関連により、ガス容器とその付属品を一定期間ごとに再検査することが義務付け
られています。この容器再検査は、都道府県に登録された自動車整備工場等の容器再検査所で行います。再
検査の期間や方法の概略は下記のとおりです。
①再検査期間
初回再検査:容器検査の合格の刻印を受けた日から4年以内
2回目以降の再検査:容器再検査後2年1月以内
※車検時に合わせて実施することが望ましい
②再検査方法
ガス容器を車載した状態で、目視による損傷等の外観検査およびガス漏洩検査(12MPa)
③その他留意点
ガス容器はその車両専用で、他用途や他車両への転用禁止
ガス容器の使用期限は容器検査合格日から15年
廃車時にはガス容器を切断等のくず化処分を行う
ガス容器の載せ替えは、新品に限る
30
参考資料
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.3.1 天然ガススタンド整備状況(2013年4月末現在)
近畿地区
滋賀県 2
京都府 8
大 阪 市 20
大阪府下 25
72ヶ所
兵 庫 県 14
奈良県 2
和歌山県 1
中部地区(東海・北陸)66ヶ所
新 潟 県 11
石川県 4
福井県 2
富山県 2
中国・四国地区 23ヶ所
鳥取県
島根県
岡山県
1
1
3
九州地区
福岡県
佐賀県
長崎県
9
3
1
広 島 県 11
香川県 5
愛媛県 2
8ヶ所
東北地区
5ヶ所
宮城県
18ヶ所
熊本県
鹿児島県
北海道地区
岐阜県 3
静岡県 9
名古屋市 12
愛知県下 21
三重県 2
2
3
15ヶ所以上
10∼14ヶ所
5∼9ヶ所
1∼4ヶ所
4
福島県
1
関東地区
122ヶ所
茨城県 3
栃木県 2
群馬県 5
埼 玉 県 26
山梨県 3
千葉県
東京23区
東京都下
神奈川県
長野県
天然ガススタンド数
一般利用スタンド
(エコステーション等)
自家用スタンド
合計
14
32
14
21
2
全国計
274
40
314
図23 全国の天然ガススタンド
5.3.2 天然ガススタンド(急速充填設備)
天然ガススタンドは、ガソリンスタンドと同様に、小型車であれば数分で天然ガスを充填可能で、一般車両へガ
スを充填・販売します。エコ・ステーションや天然ガススタンドという名称で呼ばれており、都市部を中心に全国で
約320箇所整備されています。また、バスやトラック等を多く保有する事業所の自家用設備として導入している場
合もあります。
主な構成機器は、圧縮機、蓄ガス器、ディスペンサーの各ユニットであり、その特徴は以下のとおりです。
圧縮機ユニット ...................... 中圧ガス導管から受け入れた0.1 ∼ 0.6MPaの天然ガスを、通常25MPa程度ま
で昇圧する設備です。標準仕様は250N㎥ /hですが、充填車両に合わせて複
数台設置したり、2倍程度の能力の機器を設置する場合もあります。
蓄ガス器ユニット .................. 圧縮された天然ガスを蓄える貯蔵設備です。蓄ガス器は、1本あたり250リットル
や450リットルの鋼製容器です。
......
ディスペンサーユニット
車両へ充填ノズルを接続して、ガス流量を制御し、充填を行う設備です。また、
充填したガス量を計測して表示する機能があります。
参考資料
31
天然ガス自動車 の 普及に向けて
蓄ガス器ユニット
高圧蓄ガス器
圧縮機ユニット
圧縮機
スナッバータンク
ガスメーター
ディスペンサー
ユニット
低圧蓄ガス器
中圧ガス導管
図24 天然ガススタンド(急速充填設備)の設備構成
5.3.3 パッケージ型充填設備
パッケージ型充填設備は、急速充填設備の各ユニットの機能を簡素
化して一体化した設備です。小型トラック等を保有する事業所、フォー
クリフトや構内運搬車を保有する工場や市場等の自家用設備として導
入されています。従来の天然ガススタンドと比較して、以下の特徴があ
ります。
①圧縮機やディスペンサー等の主要部品を一体化しており、据付や
現地での配管・配線工事等が大幅に簡略化できます。
②現地工事の簡略化による工期短縮やコストダウンが可能です。
③スペースが小さくても設置可能です。
図25 パッケージ型急速充填設備(250㎥ /h型)
5.3.4 小型充填機(昇圧供給装置)
事業所等に設置され、1台又は2台の車両に数時間かけて充填を行
う装置です。家庭等へ供給されている低圧ガスで充填が可能なため、
設置や取り扱いが容易です。
利用できる天然ガススタンドが近くに無い場合や、少数の天然ガス自
動車を運用する事業者に適しています。日本では600台程度の実績で
すが、海外では、アメリカやカナダを中心に1万台以上普及しています。
図26 小型充填機(10㎥ /h型)
衝突防止
ポール
ブレーカー
小型充填機
電源
ガスメーター
低圧ガス導管
図27 小型充填機の設置概略図
32
参考資料
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.3.5 その他の充填設備
L−CNG充填設備
液化天然ガス(LNG)をLNGローリーからLNG貯槽に受け入れ、LNGポンプで昇圧後、気化、付臭を行い、
圧縮天然ガス(CNG)をつくる設備です。ローリー輸送のため、ガス導管のない地域でも天然ガススタンドの設
置が可能になります。圧縮機の代わりにLNG昇圧ポンプを使用するため、設備の運用にかかる電気代を1/10程
度に抑えることができます。日本では既に7箇所設置されています。
図28 L−CNG充填設備フロー図 図29 阿久根(鹿児島)L−CNGスタンド
5.4.1 NGV排出ガス技術指針の動向
平成21年ポスト新長期規制が施行されるに伴い、圧縮天然ガス自動車の排出ガス技術指針(2008)が平成
20年3月28日付けで新たに提示されました。従前の指針(2003)
からの主な変更点は、
3.5t超の車両のNOxが1.0g/
kWhから0.5g/kWhになったことと、中・軽量車の測定モードが10・15+11モードからJC08モードに変更になりました。
参考資料
33
天然ガス自動車 の 普及に向けて
5.4.2 ポスト新長期規制対応圧縮天然ガス自動車排ガス技術指針(2008)
表10 圧縮天然ガス自動車排ガス技術指針(2008)
測定モード
(単位)
自動車の種別
乗用車
※21
(定員10人以下)
トラック・バス
軽貨物
JC08
(g/㎞)
車両総重量(1.7t以下)
車両総重量(1.7t超∼ 3.5t以下)
JE05
(g/kWh)
車両総重量(3.5t超)
平均排ガス値
CO
NMHC
NOx
1.15
0.025
0.025
4.02
0.025
0.025
1.15
0.025
0.025
2.55
0.025
0.035
16.0
0.17
0.5
5.4.3 最新排出ガス規制
表11 軽油を燃料とする車両
自動車の種別
排出ガス基準値(平均値)
トラック・バス
測定モード
(単位)
CO
NMHC
JC08
(g/㎞)
0.84
(0.63)
0.032
(0.024)
JE05
(g/kWh)
2.95
(2.22)
0.23
(0.17)
乗用車 ※22(定員10人以下)
軽量車(車両総重量 1.7t以下)
中量車(車両総重量 1.7t ∼ 3.5t以下)
重量車(車両総重量 3.5t超)
NOx
PM
0.11
(0.08)
0.007
(0.005)
0.20
(0.15)
0.009
(0.007)
0.9
(0.7)
0.013
(0.010)
表12 ガソリン・LPGを燃料とする車両
自動車の種別
測定モード
(単位)
トラック・バス
軽量車(車両総重量 1.7t以下)
JC08
(g/㎞)
NOx
PM ※23
0.08
(0.05)
0.007
(0.005)
0.10
(0.07)
0.009
(0.007)
0.9
(0.7)
0.013
(0.010)
NMHC
6.67
(4.02)
1.92
(1.15)
0.08
(0.05)
4.08
(2.55)
中量車(車両総重量 1.7t ∼ 3.5t以下)
重量車(車両総重量 3.5t超)
CO
1.92
(1.15)
乗用車 ※21(定員10人以下)
軽自動車
排出ガス基準値(平均値)
JE05
(g/kWh)
21.3
(16.0)
0.31
(0.23)
表13 その他燃料車(ガソリン・LPG又は軽油以外を燃料とする車両)
自動車の種別
測定モード
(単位)
トラック・バス
軽量車(車両総重量 1.7t以下)
JC08
(g/㎞)
6.67
(4.02)
1.92
(1.15)
0.08
(0.05)
4.08
(2.55)
中量車(車両総重量 1.7t ∼ 3.5t以下)
重量車(車両総重量 3.5t超)
NMHC
NOx
PM
0.11
(0.08)
0.007
(0.005)
0.20
(0.15)
0.009
(0.007)
0.9
(0.7)
0.013
(0.010)
1.92
(1.15)
乗用車 ※21(定員10人以下)
軽自動車
排出ガス基準値(平均値)
CO
JE05
(g/kWh)
21.3
(16.0)
0.31
(0.23)
※21 乗用車:専ら乗用の用に供する乗車定員10人以下の普通自動車、小型自動車又は軽自動車。
※22 乗用車:専ら乗用の用に供する乗車定員10人以下の普通自動車、小型自動車。
※23 吸蔵型窒素酸化物還元触媒を装着した直接噴射式のエンジンを有するものが対象。
34
参考資料
不許複製
無断転載禁
頒布価格 273円(本体価格 260円)
発 行:一般社団法人 日本ガス協会
天然ガス自動車室
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1−15−12
TEL(03)3502-0215
FAX(03)3502-3676
http://www.gas.or.jp/
初 版:平成 5年9月30日
第十七版
:平成25年7月17日
第 一 刷 天然ガス自動車
この印刷物は再生紙を利用しています。
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(2,700)