有機空気電池の作成

東京理科大学Ⅰ部化学研究部 2012 年度秋輪講書
有機空気電池の作成
火曜班
T.Mashimo (1K), M.Tsuno (1K), K.Minamisaawa (1K), S.Shounan (1OK),
A.Itake (1OK), K.Ii (1OK), T.Mikami (1C), S.Nakakuma (1C), Y.Nakajou (1C),
H.Komatsubara (1C), Y.Ono (2K),Y.Hiyoshi (2OK), S,Tsubuk i(2K),
T.Miyazono (2OK), T.Matsumoto (2OK), K.Yasueda (2OK)
1. 背景
現在電池は様々な形で利用されている.特に 2 次電池は携帯やパソコン, 車など生活
に欠かせないものを支えている. 2 次電池ではリチウムイオン電池などの金属を利用し
た電池が主に使われているが, その価格は高く廃棄する際にはリサイクルをしないと環
境に悪い.
そこで, 火曜班ではすでに実用化されている空気電池に注目した.空気電池は正極側
の活物質が酸素なので電池容器内に正極活物質を充填する必要が無く, そのために電池
容器内の大部分の空間に負極側活物質を充填することができ, 放電容量を大きくするこ
とができるという特徴がある.しかし,実用化されている空気電池では負極に金属を用
いているため,2 次電池化する研究ではイオン化した金属を元の形状に戻す際に金属樹
が発生してしまうなどの課題がありうまく進んでいない.
そこで,火曜班では金属を有機物に置き換えた有機空気電池の作成をすることにした.
このなるべく金属を使用しない有機空気電池は仕組みは空気電池であるので放電容量も
大きくすることができ,2 次電池化の問題を克服できる可能性があり, 電池の新たな可能
性として大きな意義のある試みになると思われる.
2. 目的
空気電池の負極側を有機物とし,なるべく金属の使わない有機空気電池の機構を検討
し, 発電の有無を調べる.また, 発電が確認されたらその性能を検証する.
1
3. 原理
3.1 空気電池
空気電池は正極での反応物を空気(酸素)にしたもので, 空気亜鉛電池を例にすると以下
の反応になる.
正極:O2 + H2O + 2e- →
負極:Zn + 2OH- →
2OH- (1)
ZnO + H2O + 2e-
(2)
また, 正極での反応は実際には以下の 2 段階になる.
O2 + H2O + 2e- →
O2H-
O2H- +OH- (3)
→ OH- + 1/2O2 (4)
全体の式は
→ ZnO
1/2O2 + Zn
(5)
この電池ではカソード活物質として無尽蔵に存在する大気からの酸素を直接用いる
ため, 他のカソード活物質を用いる電池系よりも, 原理的にそれだけ小型化,
軽量
化でき, 加えて電気化学的活性の高い軽量な金属アノードを使用できれば, 理論エネ
ルギー密度を極めて大きくできる(チウムイオン電池と比較しても約 20%エネルギー密
度が高い). さらに, 従来の電池の中で最も寿命の長い水銀電池の約 2 倍の放電時間
を示すほどの長寿命という特徴を有する.
Fig.3.1 空気電池
2
3.2 燃料電池
現在使われている主な電池は電池活性物質として固体物質が使われていることが多
い.この活性物質を気相ないしは液相に変えることで活物質を容易に外部から供給す
ることができる.このような外部から活物質を供給する型の電池を燃料電池という.特
徴は外部から供給がある限り発電し続けることができる点である. 問題点はその運転
温度にある. 一番低いものでは室温付近で 発電が行われるが, 高いものになると
800-1000 ℃といった温度になってしまう.また, 一般的によく知られているのは水素
と空気(酸素)によるものであるが, 負極には他にも一酸化炭素, ヒドラジン, メタノ
ールなどが入ることができる.
使用する電解質の種類によって主に 5 種類の燃料電池の方式が研究されていて, ア
ルカリ型, リン酸型, 溶解塩型, 固体酸化物型,固体高分子型である. 特に研究が進
んでいるのは水溶液系電解液である.
今回の実験では運転温度の問題から電解質はアルカリ型か固体高分子型のどちらか
にすることになった.しかし,実験室内では固体高分子の作成は難しいことからアル
カリ型の電池作成をすることにした.
3.2.1 アルカリ型燃料電池
アルカリ電解質形燃料電池は, 水酸化物イオンをイオン伝導体とし, アルカリ電
解液を電極間のセパレータに含侵させてセルを構成している.最も構造が簡単であり,
アルカリ雰囲気での使用であることから, ニッケル酸化物等の安価な電極触媒を利
用することができること, 常温にて液体電解質を用いることからセル構成も単純に
できるため, 信頼性が高く, 宇宙用途などに実用化されている燃料電池である. 一
方, 改質した炭化水素系燃料から水素を取り出す場合, 炭化水素が混入していると
アルカリ性電解液が炭酸塩を生じて劣化する. 同様に空気を酸化剤として用いると
電解液が二酸化炭素を吸収して劣化するため、純度の高い酸素を酸化剤として用いる
必要がある.
3.3 電池反応
ある機構の装置を組んだ際に,低い電圧をかけても定常電流は流れない.この時瞬
間的に電流は流れるが,すぐに減衰してしまう.これは電解質内のイオンの移動が関
係している.
例えば,硫酸水溶液に白金電極を入れたものについて考える.ここに電位差をかけ
ると陽イオンは陰極へ,陰イオンは陽極へ移動する.この時電極表面では過剰の電荷
を打ち消すように反対符号の電荷が現れ,あるところで平衡に達し,イオンの移動が
止まる.この移動によって流れる電流は 0.05 s もすれば実質的に流れなくなる.この
3
電流は化学反応を伴わないので,非ファラデー電流ともいわれる.要するに,システ
ムに加わる電気エネルギーが物質と電極の間で電子をやり取りするためには不十分
なため,反応が進まないのである.
なので,電気を流すためにはさらに電圧をかける必要がある.そして,ある電圧か
ら流れるようになり,その電圧を印加電圧という.
3.3 分極 (過電圧)
分極は以下のように表される.
𝜂 = 𝐸𝑊 − 𝐸𝐼 (6)
EW:電流を取り出しているときの電圧,EI:平衡電圧
𝜂 > 0の時アノード分極と呼ばれ電極の内部電圧が上がり,電解質のそれが下がる.
𝜂 < 0の時はカソード分極と呼ばれ電解質の内部電圧が上がり,電極のそれは下がる.
この現象によって電極のエネルギーが変化し理論的な値が出ないため,実際に発電さ
せるためにはこの分を考慮した上で,印加電圧を超えるようにしなければならない.
また濃度による分極も発生し,これを濃度分極という.電解質などでは拡散層があ
り,それを通しての物質輸送過程があるので,分極の値に応じて濃度が変化する.表
面濃度を Cs,Cb とすると濃度分極は次のようになる.
2𝑅𝑇
𝐶𝑠
𝜂𝑐𝑜𝑛 = − (
) ln ( )
𝑧𝐹
𝐶𝑏
(7)
3.4 モル導電量
電解質溶液中の伝導イオン種は電解質の解離によって生まれるので,一般に,そ
の濃度 C が大きくなれば導電率は増加する.
mol/cm3 当たりの導電率は Λ で表され,
それをモル導電率という.実際にこの値を計算すると濃度の低い領域ではコールラウ
シュの法則に基づき,濃度の増加とともに Λ が減少する.低い領域以降は濃度の増加
に伴い増加するが,高濃度になるとイオンの移動度が阻害されて減少し,Λ は再度減
少してしまう.
4
4. 器具・試薬
器具
アクリル板で作成した電池,ポケットデジタルマルチメーター,導線,木炭,オイルバ
ス,100cm3 ビーカー
試薬
銅
Cu:63.5 g/mol, 沸点 2562 ℃, 融点 1084 ℃, 電気伝導性 (59.6×106 S/m2) 及び展
延性が高く, 赤褐色の遷移金属である.+1 または+2 価の酸化数を取りやすく, 空気中
の酸素と徐々に酸化銅を作る.塩酸,希硫酸とは反応しないがそれ以上の強酸と反応
する.
炭素
C:12.01 g, 非金属元素であり非常に多様な化合物を作る.特に活性炭は炭素のほか
に酸素, 水素, カルシウムを微量に含んでいる.その形状は多孔質で多くの物質を吸着
させる性質がある.
メタノール
CH3OH:32.04 g/mol,融点-97 ℃,沸点 64.7 ℃.無色の液体.引火性,揮発性が
ある.劇薬.誤飲すると失明の恐れあり.化学反応の溶媒や燃料として用いられる.
水酸化カリウム
KOH:56.11 g/mol,融点 360 ℃,沸点 1320 ℃.密度 2.044 g/cm3.水,エタノー
ルに易溶.水溶液は強塩基性を示す.潮解性を持つ.医薬品や洗剤の製造に用いられ
るが,タンパク質に対し腐食作用を示すので劇物に指定されている.
水酸化ナトリウム
NaOH:40.00 g/mol,融点 318 ℃,沸点 1388 ℃.密度 2.13 g/cm3.白色固体.強
い潮解性を示し,空気中に放置すると吸湿して溶液状になる.水に易溶で,水溶液は
強い塩基性を示す.また溶解する際に激しく発熱する.劇物.中和剤など工業的に多
く用いられる.
水酸化バリウム
Ba(OH)2:171.34 g/mol,融点 408 ℃,沸点 780 ℃.密度 4.495 g/cm3.無色結晶ま
5
たは白色粉末.二酸化炭素を吹き込むと炭酸バリウムが析出し白く濁る.劇薬.水溶
液は強い塩基性を示す.
ポリアクリル酸ナトリウム
(C3H3NaO2)n で表される.高吸水性高分子の一種.自重の数百倍以上の吸水性を持つ.
ナトリウムやカリウムなどの陽イオンがあると吸水性が下がる.おむつや保冷剤,芳
香剤などに用いられている.
5. 実験操作
5.1 有機空気電池の材料の選択
5.1.1 空気極の選択
(1)
一般的に知られている空気電池の構造を参考にして以下の構造の装置を作成し
た.
銅板(負極)
硫酸銅
活性炭(空気極)
空気極:活性炭,負極:銅板,電解液:硫酸銅
Fig5.1
炭素の空気極機能の有無の確認
なお,以下のように装置を作成した.
アクリル板から次の 2 つの箱を作った.
6
Fig5.2 装置の作成 1
次に, セロファンを下のように挟みこんだ.
Fig5.3 装置の作成 2
(2)
正極の炭素電極と負極の銅電極を接続し,ポケットデジタルマルチメーターで電
気が発生したのかを調べた.
5.1.2 電解液の選択
(1) 300 cm3 ビーカーに 1.5 mol /dm3 水酸化カリウム溶液 200 ml を入れた.
(2) スポンジに切れ込みを入れ,銅板を以下のように差し込んだ.
Fig5.4 伝導率の確認
(3)
銅版に予め電流を測った電池を接続し,流れた電流を測定した.
(4)
この操作を水酸化ナトリウム,水酸化バリウムについても同様に行った.
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5.2 電池の作成
アクリル板で外側を作成し,空気極として木炭,負極として銅板を用いた電池を作成
した.電解液には水酸化カリウム,負極活性物質としてはメタノールを用いた.
空気拡散層
木炭
銅板
KOH 溶液
メタノール
Fig5.5 装置断面
また,空気拡散層の壁面に穴を空け空気ポンプで空気を循環できるようにした.さ
らに電解液の液漏れを防ぐため,吸水性ポリマーであるポリアクリル酸ナトリウム
に水酸化カリウムを含ませて実験を行った.
5.3 電池の評価
5.3.1 メタノール濃度による変化
(1) 100 cm3 ビーカーにメタノール濃度が 98 % (原液) ,80 %,60 %,40 %,20 %,
0 % となるようにイオン交換水を用いて溶液 100 ml を調整した.
(2) 別のビーカーに 1.5 mol /dm3 水酸化カリウム溶液 100 ml とポリアクリル酸ナトリ
ウム 2.75 g をいれたものを調整した.
(3) 5.2 で作成した装置に各溶液をいれ,濃度による発電量の違いをポケットマルチデ
ータで測定した.
5.3.2 水酸化カリウム溶液の濃度による変化
(1) 98 %メタノール 100 ml を装置に入れた.
(2) 100 cm3 ビーカーに水酸化カリウム溶液濃度が 0,1.0,2.0,3.0,4.0 mol /dm3 と
なるようにイオン交換水を用いて溶液 100 ml を調整した.また,各溶液にポリア
クリル酸ナトリウム 2.75 g をいれた.
(3) 5.2 で作成した装置に各溶液をいれ,濃度による発電量の違いをポケットマルチデ
ータで測定した.
5.3.3 温度による変化
(1) 1.5 mol /dm3 水酸化カリウム溶液 100 ml をポリアクリル酸ナトリウム 2.75 g に含
ませたものと 98 %メタノール 100 ml を装置に入れ室温での発電量を測定した.
(2) オイルバスで装置を 50 ℃まで温め,再度発電量を測定した.
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5.3.4 空気の循環による変化
(1) 1.5 mol /dm3 水酸化カリウム溶液 100 ml をポリアクリル酸ナトリウム 2.75 g に含
ませたものと 98 %メタノール 100 ml を装置に入れた.
(2) 空気ポンプで空気を循環させながら発電量を測定した.
(3) 空気ポンプを止め発電量を測定した.
6. 実験結果
6.1
空気極の選択
装置を作成し導線を接続したところ発電が確認された.
起電圧:
0.15
V
電流: 0.220~0.160 A
電圧はほぼ一定な値をとり安定していたが, 電流は常に変動しており瞬間的には
0.320 A といった値もみられた. また, 装置に硫酸銅を流し込んでからすぐ発電はせず,
1 分ほどかかってから発電がみられた. 電解液では気泡の発生もみられた.
6.2
電解液の選択
各測定結果を下に示す.
Fig. 6.1 導電量の測定
平均値は,KOH が 0.194 A ,NaOH が 0.120 A ,Ba(OH)2 が 0.778 A となった.
使用した電池は KOH が 2.70 A ,NaOH が 2.56 A ,Ba(OH)2 が 2.61 A であった.
9
6.3 メタノール濃度による変化
各測定結果を下に示す.
Fig.6.2
メタノール濃度による発電量の変化
6.4 水酸化カリウム溶液の濃度による変化
各測定結果を下に示す.
Fig. 6.3
水酸化カリウム溶液濃度による発電量の変化
10
6.5 温度による変化
各測定結果を下に示す.
Fig. 6.4
温度による発電量の変化
6.6 空気の循環による変化
各測定結果を下に示す.
Fig. 6.4 空気ポンプの有無による発電量の違い
11
7. 考察
今回の電池作成は原理にも書いたように,実験室内の温度で発電させるためアルカリ
型の構造をとることにした.空気極は扱いやすく,実際に実用例もあることから炭素を
候補としたが,実験 5.1.1 で実験室内でも発電ができたことから空気極として用いるこ
とにした.実験では活性炭を用いたが,活性炭では水分に弱いなどといった問題点があ
ったため,活性炭ではなく,市販の炭素極よりが多孔質な木炭を整形したものを用いた.
次に電解質はアルカリ型電池に用いられる代表的なものとして水酸化カリウム,水酸
化ナトリウムの導電性を調べた.また 2 価の塩基である水酸化バリウムの導電性につい
て調べたが,水酸化カリウムが最も良い結果となった.この理由として,電解質のイオ
ンの大きさが関係していると思われる.イオンの小さいカリウムはイオンの移動をあま
り阻害せず,溶液内で動きやすいために導電性がよくなると考えられる.また,この結
果から電解質として水酸化カリウムを用いることにした.
電池の作成において,5 月の実験では液漏れが大きな問題となっていた.そこで,今
回は外側のアクリル板には隙間を作らず,電極で仕切ることにした.この構造をとるこ
とでセパレーターを必要としないため,セパレーターの材料の問題を解決することがで
き,液漏れもしない構造にすることができた.さらにポリアクリル酸ナトリウムを使う
ことで溶液に粘性を持たせ,液漏れの可能性をより低くすることができた.また,この
機構での発電が確認された.この発電で起きた反応は,
負極:C𝐻3 OH + 𝐻2 O = C𝑂2 + 6𝐻 + + 6𝑒 −
(8)
空気極 (正極):6𝐻 + + 3/2 𝑂2 = 𝐶𝑂2 + 2𝐻2 𝑂
(9)
であると思われ,全反応は
C𝐻3 OH + 3/2 𝑂2 = 𝐶𝑂2 + 2𝐻2 𝑂
(10)
となる.発電の際にメタノールで気泡が見られたことから CO2 の生成も確認できたの
で上記の反応がきちんと進んだものと思われる.電圧は約 0.15 V 付近で安定しており,
電流に比べて値も大きくなった.また,これで第一目標が達成されたので,性能の評価
を行った.
性能の評価ではまずどの条件が一番発電効率が良くなるのかを調べた.まずメタノー
ル濃度の依存性について調べたが,高濃度なほど発電量が良いという結果となった.こ
れは (8) 式でメタノールが用いられるからであり,この濃度が大きいほど反応が進みや
すいためだと考えられる.しかし,反応では水も使われることから濃度が 98~80 %の
間に極大を示す可能性がある.今回は時間がなかったためにできなかったのでここでは
割愛する.
次に水酸化カリウム溶液の濃度の依存性について調べた.結果としては 3 mol/dm3 の
濃度で最大を示した.これは原理 3.4 で書いたような理由であると思われる.温度の依
12
存性については 50℃の方が発電量が 2 倍近く大きくなった.これは温度の上昇によっ
てイオンの移動が活発になったことや,熱エネルギーによって反応の進行が進みやすい
ためだと考えられる. 空気の循環は空気ポンプがあると発電量が上がった.また,ガ
ラス棒でメタノールを撹拌した際にも発電量の上昇が見られた.この理由として撹拌さ
れることで反応がおきる電極により多く反応物が当たり,反応の機会が増えるためだと
思われる.
これらの結果で最も良い結果となった条件で発電を行うと,電流は平均で 0.52 mA に
のぼった.この発電量は一般の電池と比べるとはるかに弱いものとなった.しかし,こ
の機構で発電ができたことが第一の目標だったので,発電ができたことはおおきな 1 歩
であった.
今後の課題としては,まず発電量を増やすことがある.これは,燃料電池で使われて
いる単セルの構造で解決できると思われる.単セルとは 1 つ 1 つの電池を直列に繋げ,
発電量を大きくするものである.今の電池を小型化もしくはスリム化させることができ
れば,より多くつなぐことができ大きな発電量になる.
次に今回の実験で負極に銅板を用いてしまったことである.最初に木炭でも試したが,
十分な発電が得られなかったために銅板にした.しかし,目標はなるべく金属を減らし
た電池作りであったので,残念である.この解決策としては,ニッケル焼結体を用いる
ことが挙げられる.この焼結体は炭素を多く含んだものであり,金属をより減らすこと
ができる.しかし,実験室内の電気炉では目的の温度が出せないことなどから,今回の
実験では用いることができなかった.
最後に寿命の問題である.今回の装置では発電の際に気泡の発生によって炭素極が破
壊されてしまった.これは多孔質な木炭内部で気泡が発生ししたため,層状に剥がれる
ような破壊が起きたと考えられる.この現象によってこの電池の寿命は数時間程度であ
ると思われる.この電池の寿命を延ばすためには,電極の破壊を防ぐことが第一である.
電池の長寿命化は研究においても大きな課題であり,今後の課題として一番難しいと思
われる.
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参考文献
1) 松田好晴,岩倉千秋 共著,電気化学概論,丸善出版,1994 年(第 15 版)
2) 電気化学会 編,新しい電気化学,培風館,1984 年(第 23 版),p28-29,46-49,p59
3) 前田正雄,電極の化学,技報堂、1993 年、p59-66,215-220
4)
渡 辺 正 , 中 林 誠 一 郎 , 電 子 移 動 の 化 学 , 朝 倉 書 店 , 1996 年 ( 第 4 版 ) ,
p37,46-47,66,121-122
5) 藤島昭,相澤益男,井上徹,電気化学測定法,技報堂,1984 年,p213-215
6) 工藤徹一,山本浩,岩原弘育,燃料電池,内田老鶴圃、2005 年
7) 玉虫怜汰 著,電気化学 第 2 版,東京化学同人,1967 年(第 4 版)
8) 電気化学協会 編,若い技術者のための電気化学,丸善株式会社,1983 年
9)
日本セラミックス協会,燃料電池材料,日刊工業,2007 年
10) T.Kudo,K.Fueki,Solid State Ionics,Kodansya/VCH ,1990
11) J.R,Generad and Inorganic Chemistry,Partington ,Macmilan,1966
12) W.Vielstic,A.Lamm and H.A.Gasteiger,Handbook of Fuel Cells Vol.4
Part.4,
John Wiley & Sons,2003
13) W.Vielstic,A.Lamm and H.A.Gasteiger,Handbook of Fuel Cells
Vol.4 Part.6,
John Wiley & Sons,2003
謝辞
半年間,電池作成に手伝ってくれた班員のおかげで発電させることができたことを改
めてお礼申し上げます.
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