FCRAM の民生機器ソリューション コンシューマFCRAM ファミリ

技術解説
R
FCRAM の民生機器ソリューション
コンシューマFCRAM ファミリ
R
FCRAM R コアをベースに開発したコンシューマFCRAM R は,民生
機器向けASM*として脚光を浴びています。本稿では,民生機器
市場における当社コンシューマFCRAM R のメモリソリューションにつ
いて解説します。
*ASM:Application Specific Memory
させたSiP(System in a Package)用コンシューマFCRAMを開発
はじめに
しています。
図2に民生・組込み用DRAMの流れを示します。
近年,民生機器市場では,それぞれのアプリケーションで使用
コンシューマFCRAM の製品概要
R
されるメモリの特性要求が多様化しています。このため,汎用メモ
リと呼ばれるパソコン用SDRAMより,アプリケーションに特化した
コンシューマFCRAMファミリのインタフェースはSDR(Single
ASMの要求が高まってきています。
図1に民生機器市場の要求特性を示します。特に,メモリマス
Data Rate)型を採用しているため,システム設計者は従来のシス
テム構成を活用して容易にシステム設計が行えます。
タが多様化している画像処理機器,パネル画素数が向上している
また,当社は要求特性の多様化に対応するため,次の2製品
PDP/LCD,カーナビゲーションなどの3D画像が要求されるグラフィッ
ク機器では,高いデータ転送レートが要求されています。一方,
をコンシューマFCRAMファミリとして開発・販売しています。
デジタルビデオカメラ,デジタルスチルカメラなどを代表とするバッテ
・高いデータ転送レート特性を持つ16MビットSDR型FCRAM
「MB81E161622」
(パッケージ品)
リ駆動機器では,低消費電力化・基板面積の縮小化が要求され
・高いデータ転送レートと低消費電力特性を両立したSiP用64Mビッ
ています。
当社はこのような2つの方向性がある民生市場からの要求に対
トFCRAM「MB811L646449」
(KTDまたはKTD-Wafer供給)
して,FCRAMコア技術を使用することにより,データ転送レートを
表1にMB81E161622の主要特性を,表2にMB811L646449
の主要特性を示します。
向上させたFCRAMと,低消費電力・基板面積の縮小化を両立
図1
民生機器市場の要求特性の分布
高い
:実装面積縮小化要求
PDA
低消費電力要求
DSC
DVC
CD/DVD
データ転送レート
カーナビゲーション
500MB/s
1GB/s
PVR
PDP/LCD
DTV
低い
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グラフィックス
DVDプレイヤ
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コンシューマFCRAM R ファミリ
タイムが共に高速で,動作周波数が66MHzと低周波数であるにも
データ転送レートの向上
かかわらず,133MHz動作品以上の高速動作が可能です。
図4にファーストアクセスタイムとサイクルタイムの比較を示します。
現状の課題
SiPソリューション
データ転送レートを向上させるためには,バス周波数を上げるか
データバス幅を増やす手法が一般的です。しかし,民生機器は
パソコンと比べて実装面積が小さいため,周波数アップによる電磁
現状の課題
輻射(EMI)の影響や高速動作によるボード設計の難しさがあり,
民生機器のうちバッテリ駆動の画像処理機器(DVC,DSC,
安易に周波数を上げることができません。また,データバス幅を増
PDA等)では,バッテリ寿命延長とバッテリサイズ縮小化による低消
やすとメモリ−ロジック間のデータバス本数を増やすことになるため,
費電力性,画像処理能力向上による高いデータ転送レート,基板
実装面積の増大や実装基板のコストアップを招きます。
縮小に伴う省スペース化の要求があります。
FCRAMによるソリューション
これらデジタル家電に必要な特性を汎用SDRAMで対応する場合,
前述のような課題を解決するには,バス周波数を据え置きしつ
つデータ転送レートを向上させるため,単位クロック当たりのデータ
次のような課題があるためすべての特性を満たすことは困難です。
・汎用SDRAMはパソコン主導の動作電源であるため低電圧動作
転送レートの向上が必要となります。そこで,16MビットSDR型
FCRAMのMB81E161622は,ランダムサイクルの高速化とCL=1
が難しい。
・バス周波数のアップを行うと,EMI対策やボード設計が難しい。
の採用により,汎用SDRAMに対して約3倍のデータ転送レート向
上(66MHz動作時)
を達成しています。
また,周波数アップにより電源電流が増加する。
・データバス本数が増大すると実装面積増となる。
図3に汎用SDRAMとFCRAMのタイミング比較を示します。
SiPソリューション
また,MB81E161622はPC133/2-2-2動作(133MHz,7.5nsサ
前述のような要求をシステム構成上で満足させるために,当社は
イクル,CL=2)
と比較すると,ファーストアクセスタイムとサイクル
SiPソリューションを展開しています。SiPとは,ロジックチップやメモリ
図2
民生・組込用DRAMの流れ
データ転送レートの
向上
性
能
SDRAM
×32
年
SDRAM
×16
EDO
×8/×16
Fast Page
×8/×16
表1
項
目
FCRAM
×16/tRC=30ns
FCRAM for SiP
×64/低電圧
データ転送レート向上のため
多ビット品の採用
(周波数は据え置き)
PCのEDO
SDRAM
の移行による影響
(周波数100MHz)
EDO化
SDRAMでは,PC用の意向に沿って
容量とクロック周波数を向上させる
方向で,民生とは合致しない。
ページモード化
MB81E161622の主要特性
MB81E161622-10
データ転送レートの向上
低消費電力指向
基板面積縮小
表2
MB81E161622-12
項
目
MB811L646449の主要特性
MB811L646449-12
MB811L646449-18
CL=1
CL=2
CL=1
CL=2
tCK
12ns
18ns
15ns
10ns
20ns
12ns
tRC
72ns
108ns
tCK
tRC
30ns
36ns
tRAS
48ns
72ns
tRAC
25ns
34ns
tAC2
9ns
9ns
ICC1
130mA
120mA
ICC1
ICC4
105mA
95mA
データ転送レート
FIND
160mA
5.18Gbps
3.46Gbps
VCC=3.3V±0.3V
電源電圧
VCC=2.5V±0.2V
プラスチック,54ピンTSOP(汎用64MビットSDRAMと同じ)
出荷形態
KTDまたはウェーハ
電源電圧
パッケージ
240mA
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コンシューマFCRAM R ファミリ
チップなどをワンパッケージに搭載し,最適なシステムを構
図3
汎用SDRAMとFCRAMのタイミング比較
築する技術および製品です。SiPは種々の製品やテクノ
ロジの混載を可能にし,SoC(System on Chip)がコス
(動作周波数=66MHz)
0
ト的に有効でない領域をカバーするソリューションと位置
1
2
3
4
5
6
7
付けられます。
図5にSiPソリューションの特長を示します。
SiPの構成に適したFCRAMの使用により,低消費電
SDRAM
(CL=2)
ACT
RD
できます。
SiPのメリットは,ワンパッケージ化による実装面積の縮
ACT
tRC=90ns
力・データ転送レートの向上・基板面積縮小化を実現
SiPのメリット
PRE
FCRAM
(CL=1)
ACT
小化と基板配線効率の向上,端子容量削減による高速
RDA
ACT
RDA
ACT
RDA
ACT
RDA
tRC=30ns
化,低消費電力化,ワイドデータバス採用の容易性です。
当社はコンシューマFCRAMファミリをSiPソリューション
の一員と位置付け,ロジック製品とともにSiPのメリットが
発揮できる製品群を開発しています。
図4
ファーストアクセスタイム,サイクルタイムの比較
SiP向けFCRAMの特長
・FCRAMコア使用による電源電流の削減と電源電圧
の低減
15ns 25ns 30ns
FCRAM(16M/CL=1)
→入出力回路,
メモリセル周辺回路の最適化により実現。
・多ビット出力構成によるデータ転送レートの向上
ファーストアクセスタイム
10ns
26ns
30ns
サイクルタイム(tRC)
FCRAM(16M/CL=2)
→×32ビットと×64ビットの採用,さらに×128ビットも検
15ns
討中。
28.5ns
52.5ns
PC133/2-2-2
・マルチチップ実装への最適なパッド配置
22.5ns
→従来のセンターパッドからエッジパッドに変更すること
43.5ns
67.5ns
PC133/3-3-3
により,プレーン実装,スタック実装が可能。
20ns
36ns
70ns
PC100/2-2-2
低消費電力性
30ns
MB811L646449では2.5V単一電源を採用し,低電圧
PC66/CL=2
tRCD
53ns
ファーストアクセス
80ns
サイクルタイム(tRC)
化を行っています。次世代品では1.8V単一電源の開発
10
を進めています。
20
30
40
50
60
70
80
90
100
時間(ns)
また,出力トランジスタサイズの最適化とデータバス線
の短配線により,I/O部で消費される電力を約50%低減
しています。
図5
SiPソリューション
データ転送レートの向上
MB811L646449では入出力バス構成を64ビットバスとし
現状のシステム構成
SiPによる構成
ています。このワイドバス構成は,SiP構成でデータバス配
線がパッケージ内にクローズでき,実装基板へ面積増大
の影響がないため採用しています。これにより,81MHz
動作周波数でデータ転送レートが5.18Gビット/秒と,
Logic
Logic
SDRAM(×32ビット)品を160MHz以上の動作周波数で
動作させた時と同じ値を達成しています。次世代品では,
動作周波数アップやさらなる多ビット構成を進めています。
SiP構成
FCRAM
FCRAM
SiP
図6にMB811L646449とロジックチップをスタック・マル
チチップパッケージ
(Stacked-MCP)化したSiPの実施例
を,写真1に実装後のボンディング状態を示します。この
図のように,SiPにより実装面積が縮小できます。さらに
SiP向けFCRAMを混載することで,低消費電力化・デー
システムボード
・低電圧動作が困難
・消費電流が増加
・EMI対策,ボード設計が困難
・実装面積が大きい
・低電圧動作が可能
・消費電流が低減
・EMI対策,ボード設計が容易
・実装面積が小さい
タ転送レートの向上を実現できます。
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コンシューマFCRAM R ファミリ
図7に今後の製品展開を示します。
今後の展開
またパッケージ品はもとより,お客様のシステムにおける特性向上
を目指して,SiP向けFCRAMの開発を推進していきます。
今後の当社コンシューマFCRAMの製品展開におけるキーポイン
トは,「低消費電力化」と「データ転送レートの向上」です。これら
当社は今後とも,アプリケーションニーズにマッチしたより良いメモ
リソリューションのご提案・ご提供を行ってまいります。
■
のキーポイントを踏まえ,当社は動作電圧1.8V品の開発と,消費
電流の削減,多ビット品の展開,サイクルタイム高速化等の開発を
*FCRAMは富士通株式会社の登録商標です。
検討しています。
図6
SiPの実施例(MCPで搭載)
ロジックチップ
半田
写真1
実装後のボンディング状態
MB811L646449
図7
今後の製品展開
SiP
32Mb(×32)×2
MB811L646449
32Mb(×32)
64Mb(×128)
High Band Width
PKG
16Mb(×16)
MB81E161622
SiP
64Mb(×32)
16Mb(×32)
1.8V
16Mb(×64)
1.8V
128Mb
Low Power
64Mb(×16/×32)
1.8V
PKG
CY
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2002
2003
Approved
Design
FIND
Vol.20 No.1
2002
Under
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