第7章 設備に関する知識

ISO機械状態監視診断技術者(振動)
カテゴリーⅠ 訓練講座
直流モータの原理
第7章 設備に関する知識
講
師 : 小 村 英 智
博士(工学)
フレミングの左手の法則
電動機の分類
電動機の構造
モータ構造
直
流
モ
|
タ
永久磁石形
直流モータ
誘導モータ
同期モータ
(直流モータ)
交流整流子モータとして,高
速用(掃除機,電動工具)
電磁石形直流モータ
ブラシ付直流モータ
小型モータとして利用,特に
車載用
ブラシレス付直流モータ
家電品,ファン
かご形
一般産業用ファン,ポンプ等
巻線形
大型機
二相
かご形
ほとんど利用なし
単相
かご形
洗濯機他家電用
三相
交
流
モ
|
タ
用途
永久磁石形
エアコン,電気自動車,サー
ボモータ
電磁磁石形
大型機
レラクタンスモータ
特殊用途向け
ヒステリシスモータ
ほとんど利用なし
ブラシは整流子と接触して電機子巻線と外部の電源とを接続するものである.
このブラシと整流子があるため寿命が短い. 利点は速度制御にすぐれている.
1
フレミングの法則
機械的振動
ブラシに起因する騒音
騒音区分
発生要因
摩擦音
ブラシと整流子表面間の
摩擦係数,摩擦変動
eV   BT  Lm vm / s 
運動
ブラシと整流子間
B
衝突音
各整流子片間の段差
(ハイパー,ローバー)
ブラシと整流子間
ブラシと保持器間
整流子の偏心と変形
L
S
ブラシ圧による摩擦振動
直流モータの振動原因
保持器取付部の振動
v
磁界
N
電流
i
フレミングの右手の法則
モータの振動
電動機の構造
三相交流による回転磁界
(誘導モータ)
N
N
S
S
S
N
N
N
S
誘導電動機は寿命が長い. 速度制御はインバータを使わないとできない.
N
インバータとは直流を交流に変換するもので,その逆はコンバータという.
S
S
2
フレミングの法則
電動機の構造
(誘導モータ)
F N   BT  Lm I A
力
B
L
S
磁界
N
i
F
電流
フレミングの左手の法則
三相交流による回転磁界
◆ 図は誘導電動機の構造を示している.矢印の①から③の部分の適切な
名称にレ点を記せ.
N
N
S
S
① □回転子
□固定子
□冷却ファン □ファンカバー
② □回転子
□固定子
□冷却ファン □ファンカバー
③ □回転子
□固定子
□冷却ファン □ファンカバー
①
S
②
固定子
回転子
N
N
N
③
S
N
S
S
3
誘導電動機の振動
誘導電動機の回転数
吸引力分布
2極モータの場合
吸引力
同期速度Nxは
N極
電源周波数 f の2倍の振動数
の振動が発生
N x  120
回転主磁束
f
rpm
p
fx 
実際の回転数Nと同期速度Nxに差があり,その関係は
s
点a
点a の吸引力の時間変化
Nx  N
Nx
ここで s はすべり率であり N は, N
回転子コア
N  120  1  s 
 N x 1  s 
f
p
f : 電源周波数
p : 磁極数
s : すべり率
すべり周波数(slip frequency) sf は,
0
0.5
1
1.5
2
S極
固定子コア
sf 
主磁束の回転
電源周期
2
f Hz
p
誘導電動機の振動
4極の誘導電動機
吸引力分布
4極モータの場合
吸引力
回転磁界の方向
N極
電源周波数 f の2倍の振動数
の振動が発生
1
N x  N   s  2 f
p
60
回転主磁束
N
点a
S極
S極
点a の吸引力の時間変化
S
S
銅,アルミニュウム
回転子バー
回転子コア
N
0
0.25
電源周期
0.5
0.75
1
N極
固定子コア
端絡環,二次導体の短絡
主磁束の回転
4
◆ 電源周波数が50Hzの環境下で,6極の三相誘導電動機が3%のすべりを生じ
ながら回転している.この場合,電動機の出力回転数(min-1)はいくらか.
◆ 888rpmで回転する8極のモータのすべり周波数(slip frequency)はいくらか.
ただし,電源周波数は60Hzとする.
◆ 電源周波数f (Hz),電動機の極数P,すべり率Sを□内に記して,三相誘導電
◆ 1470rpmで回転している誘導モータがある.このモータの極数はいくらか.
動機の回転数N (rpm)を求める式を完成させよ.
N  120  1 

rpm
◆ 電源周波数が60Hz,4極の三相誘導電動機が1728rpmで回転している.
この電動機のすべり率はいくらか.
◆ このモータのすべり率はいくらか.
5
磁気振動(電気的振動)
空隙不均衡振動(静的偏心)の例
電源周波数の2倍: 2f, 2fr と 2f でうなり
空隙不平衡による振動
電源周波数の2倍: 2f (2frと2fのうなり発生)
軸曲り/回転子偏心: 2f, frが2sfで振幅変調,ミスアライメントなどで
2frがあると2frが2sfで振幅変調
固定子巻線の不平衡
電源周波数の2倍: 2f
回転子巻線の不平衡
frが2sfで振幅変調
電源電圧の不平衡
電源周波数の2倍: 2f
空隙高調波磁束
2f
f
回転子スロット数
固定子スロット数
インバータの不具合
キャリア周波数
誘導電動機の異常
異常
空隙不均衡振動
Air-gap vibration
(静的偏心)
スペクトル,時間波形
空隙不均衡振動(静的偏心)の例
対策 / 備考
2f 成分プラス側帯波,
2fr 成分と2fでうなり.
フレームの変形を戻し電機子を
中心に置く.軸受の過大隙間を
なくして,どんな状態でも回転
f:電源周波数 子が固定子の中心を外さないよ
fr:回転周波数 うにする.
回転子バーの折損
fr 成分と(極数×滑り周
波数sf)の側帯波
回転子の偏心
(動的偏心)
fr 成分,2fr 成分と2f で
空隙振動が起こるかも知れない.
うなりの可能性がある.
柔軟固定子
2fr 成分と2f でうなり.
固定子の構造を硬くする.
回転磁界中心外れ
軸方向に影響あり
原因がスラスト方向の軸の制約
条件や継手に在るかも知れない.
その原因を除去する.
固定子巻線短絡
2f と高調波成分
固定子の交換
緩んだか折損した回転子バーを
交換する.
電源周波数の2倍: 2f, 2fr と 2f でうなり
2f
2f
垂直方向
f
2fr
水平方向
6
誘導電動機の振動速度スペクトルの例
回転子バー通過振動の例
2f
fr×Rb
100Hz
fr
2極
99.56Hz
18.5 kW,
2988 rpm / 60 s = 49.8 c/s
N  N 3000  2988
s s

 0.004
Ns
3000
3000  2988
sf 
 0.2 Hz
60
◆ 回転子が1800rpmの三相モータにおいて,固定子のスロット数が35本,回
転子のスロット数が23本である.固定子のスロットが1本出っ張った.
回転子ロータバー数:Rb 36
◆ 電動機において,回転子中心が固定子中心と一致せずにエアギャップに不
均一が生じた場合,どのような周波数の振動が主に発生するか.
モータ外側にて計測される振動数はいくらか.
□ 電源周波数(f)
□ 電源周波数の2倍(2f)
□ 回転周波数(fr)
□ 回転周波数の2倍(2fr)
□ すべり周波数の2倍(2fs)
◆ 回転子が1800rpmの三相モータにおいて,固定子のスロット数が33本,回
転子のスロット数が21本である.回転子のスロットが1本出っ張った.
このとき,軸振動に生じる振動数はいくらか.
固定子中心
回転子中心
7
往復式ポンプ
永久磁石モータの原理
電機子磁束
S
電機子磁束
N
S
Ld
Lq
永久磁石磁束
回転子鉄心
S
N
バケットポンプ(単動式)
ピストンポンプ(単動式)
N
磁石が鉄を引き付ける力
磁石どうしの引き合う力
リラクタンストルク
永久磁石トルク
永久磁石を鉄心内部へ埋め込み、2つのトルクを活用
プランジャポンプ(単動式)
流体機械の分類
復動ポンプ
回転式ポンプ
往復式
ピストン
流体機械
容積型
一定容積を作
るための機構
の違いで分類
ベーンポンプ
回転式
歯車ポンプ(外接歯車式)
ターボ型
トロコイドポンプ(内接歯車式)
8
回転式ポンプ
斜流ポンプと軸流ポンプ
斜流ポンプ
二葉ルーツポンプ
うず巻ポンプと軸流ポンプの中間
軸流ポンプ
低揚程,大吐出し量
三葉ルーツポンプ
流体機械の分類
遠心ポンプの構造
羽根車
往復式
容積型
渦巻ケーシング
ポリュート
回転式
流体機械
案内羽根
(ディフューザ)
羽根車
羽根車
ポリュート
遠心式
ターボ型
斜流式
回転翼を通過
する流れ方向
の違いで分類
軸流式
羽根車
案内羽根
羽根車
案内羽根
ボリュートポンプ
タービンポンプ
9
比速度nsと羽根車の形状およびポンプの形式
ボリュートポンプ
片吸込み単段ボリュートポンプ
両吸込み単段ボリュートポンプ
ポンプの揚程
◆ 毎分1500rpmの電動機に直結して,流量4m3/min,全揚程30mが得られる
ポンプとしてどんなポンプが適切か.
吐出し揚程
ポンプの比速度 ns は,
1
ns  n 
Q2
3
H4
吸込み揚程
n : ポンプの回転数[rpm]
Q : 吐出し量[m3 / min]
H : 全揚程[m]
10
うず巻ポンプの羽根通過振動数
◆ 9枚のブレードを持ち,896rpmで回転するファンにおいて,ブレードの通過周
波数はいくらか.
羽根車の羽根が舌部を通過する時
の圧力変動による振動が発生する.
羽根車の回転数 : Nr (rpm)
羽根枚数 : nb
羽根切り周波数 : fb
f b  nb 
Nr
Hz
60
舌部
◆ 7つのベーンをもつポンプが1777rpmで回転している.ベーンの通過周波数
はいくらか.
羽根
BPF : Blade (or Impeller) Pass Frequency
◆ ターボポンプの羽根枚数を6枚とし,回転数が1200/minとすると,羽根に起因
する主な振動数はいくらか.ただし運転状態でキャビテーションは発生していな
◆ 三相誘導電動機(電源周波数は60Hz,電動機の極数は4極,すべり率は4%)
が7枚のブレードを持つファンを駆動した.このブレードの通過振動数はいくらか.
いとする.
◆ 前問のファンのブレードの通過振動数をスペクトル分析する場合,
FFT分析器の上限振動数はいくらか.
11
タービンポンプの羽根通過振動数
タービンポンプの羽根通過振動数
案内羽根
(ディフューザ)
羽根車の羽根が案内羽根(ディフューザ)を通
過する時の圧力変動による振動が発生する.
羽根車の回転数 : Nr (rpm)
案内羽根
(ディフューザ)
羽根車の羽根が案内羽根(ディフューザ)を通
過する時の圧力変動による振動が発生する.
羽根車の回転数 : Nr (rpm)
羽根枚数 : nb
羽根枚数 : nb
羽根
案内羽根枚数 : nd
案内羽根枚数 : nd
羽根切り周波数 : fb
羽根
最大公約数 : C
羽根切り周波数 : fb
fb 
nb  nd N r

Hz
C
60
ブレード比周波数 BRF : Blade Rate Frequency
タービンポンプの羽根通過振動数
◆ 羽根車の羽根が6枚で,案内羽根の枚数が8枚のタービンポンプが,
3570rpmで回転している.羽根切振動数はいくらか.
羽根枚数 : nb
案内羽根
(ディフューザ)
案内羽根枚数 : nd
24枚
羽根が1回転する間の
羽根切り回数 : fb
f b  nb  nd
 18  24  432
18  24

 72
6
n n
fb  b d
C
羽根
18枚
◆ 羽根車の羽根が6枚で,案内羽根の枚数が7枚のタービンポンプが
3570rpmで回転している.羽根切振動数はいくらか.
C : 最大公約数
12
タービンポンプの羽根通過振動数
ベーン欠損によるスペクトル
720 rpm(12 cps),9枚の羽根の内1枚欠けた時の振動波形とスペクトル
羽根枚数 : nb
案内羽根
(ディフューザ)
案内羽根枚数 : nd
24枚
羽根が1回転する間の
12×9 = 108 Hz
0
羽根切り回数 : fb
f b  nb  nd
100
200
0
羽根
 17  24  408
-10
dB
17枚
360

 408
0.882
n×fr
-20
-30
-40
0.882°
0
50
100
150
200
Hz
ポンプと配管の異常
異常
スペクトル,時間波形
対策 / 備考
◆ 図に示す構造のポンプの名称として適切なものはどれか.
1.うず巻きポンプ
配管および縦型ポ
ンプの構造的共振
回転周波数が鮮明な振動 固有振動数を変えるか,運転速
か,あるいは羽根通過周 度を変更する.
波数の振動
2.軸流ポンプ
配管の音響的共振
羽根通過周波数が鮮明な 配管の長さを変えるか,または制
振動
振器(材)を取り付ける.
4.ベーンポンプ
3.ピストンポンプ
5.歯車ポンプ
羽根車の偏心
回転周波数が鮮明な振動 新しい羽根車に取り替える.
羽根先端の部分割
れ
羽根通過周波数と回転周
波数の側帯波
新しい羽根車に取り替える.
羽根車と案内羽根
の過大隙間
羽根通過周波数とそれの
整数倍成分
隙間を変更する.
循環
不規則雑音
高効率な点に運転を変更する.
2.軸流ポンプ
キャビテーション
データで不規則雑音不規
則雑音,羽根通過
高効率な点に運転を変更する.
3.遠心ポンプ
リングの摩耗と過大 強大なfr
隙間
◆ 次のポンプの中で流量が最も多いものはどれか.
1.タービンポンプ
4.ピストンポンプ
危険速度,減衰特性,安定特性
の変更に至ることもある.
5.ベーンポンプ
13
◆ ポンプあるいは圧縮機を用いる場合,機器本体および配管の振動損傷を避
◆ 写真中の,電動機に接続された被駆動部の設備名称はどれか.
けるために脈動について注意を払うことが重要であるが,この脈動が大きい
とされる圧縮様式にレ点を記せ.
□容積式
□遠心式
□軸流式
1.渦巻きポンプ
2.油圧シリンダ
3.遠心ファン
4.仕切弁
5.遠心圧縮機
□斜流式
□横流式
◆ 写真の設備は,一般工業用,石油化学プラント,建築設備,パイプライ
送風機,圧縮機の例
ン輸送などに使われている.構造は,水平分割ケーシング内に両吸い込
み遠心羽根車を内臓し,羽根車は水平回転軸にはめ込まれている.回転
軸は両端にある軸受で支えられ,たわみ軸継ぎ手を介して駆動される.
この設備の名称はどれか.
□ 渦巻きポンプ
□ ターボファン
ルーツブロア
□ 軸流ポンプ
□ 多翼ファン
□ 遠心圧縮機
ターボ送風機(片吸込み単段)
P108
可動翼圧縮機
(ベーンポンプと同じ原理)
14
送風機の異常音・異常振動
◆ 図は,一般空調,化学プラント高温ガス用,ボイラ,炉などに使われている
設備の断面図である.羽根車は,主軸によって回転させる.主軸は軸受支
ベルトのスリップ
吐出圧力上昇・吸込圧力上昇
ベルトの張り過ぎ
安全弁の作動
ベルトカバーとベルトの接触
プーリ心出し不良
ベアリンググリスの不足・劣化・不良
基礎不良
ギアオイルの不足・劣化・不良
取付部の締付不良
ケーシング内にミスト付着
配管のねじれ
ロータ干渉
配管の共鳴
持され,Vプーリーを介して駆動される.この設備の名称はどれか.
□ 渦巻きポンプ
□ ターボファン
□ 軸流ポンプ
□ 斜流ポンプ
□ 遠心圧縮機
P112
送風機の異常
異常
スペクトル,時間波形
流体関連振動(単相流)
対策 / 備考
構造的共振
運転速度 / 翼通過周波数
(BP)
振動絶縁器(材)を交換する.
羽根車の構造的割
れ
つり合わせを繰り返す段
階ではない.
羽根車を修理する.
軸と羽根車の緩み
fr 成分とその整数倍,不
規則な位相
軸を修理する.
空気力学的問題
fr 成分,翼通過周波数BP
と不規則雑音
減衰器位置や通気管のやり方を
変更する.
軸受台の非対称と
剛性
fr 成分,水平振幅と垂直
振幅が大きく異なる.
軸受台を硬くする.
ベルトとプーリ
fr 成分, 2fr 成分,ベルト
周波数のパルス成分, fr
成分の垂直・水平の位相
ベルトあるいはプーリを交換する.
音響的ダクトの共振 fr 成分,BP,一枚の翼速
度が鮮明な振動
定常流
外部流
内部流
非定常流
脈動流
乱流
通気管の変更あるいは翼速度を
変更する.
渦励起振動
構造物の強制振動・共振
音響共鳴
音響共鳴
キャビティトーン
空力/流力弾性振動
翼のフラッター・ギャロッピング
管の流力弾性振動
サージング
送風機・ポンプのサージング
配管振動
配管,ベローズ
強制振動
配管内流体の強制振動,定在波共振
音響励起振動
管内流体振動に伴う配管振動
燃焼振動
乱流励起振動
航空機の尾翼振動(バフェッティング)
弁の振動
流れの急激な変化
圧力振動
水撃(ウォータハンマー)
キャビテーション
15
配管流体振動
配管内の定在波

v
f
流量
圧力
f1 
v
4L
L
1

4
f1 
v
2L
f2 
3v
4L
L
3

4
f2 
v
L
f3 
5v
4L
L
5

4
L
1

2
1次
L
2次
f3 
3v
2L
L
3

2
3次
L
(a) 閉−開
配管流体振動
(b) 開−開
◆ 配管全長L=50mにおいて両端が開条件とする液柱が共鳴状態にあり,一次
モードであった.その周波数fを測定すると10Hzであった.配管内を伝播する
圧力波の速度はいくらか.
両開端時の液柱共鳴振動数 f = nv/(2L)
ここで,n : 次数, v : 液柱伝播速度, L : 配管の長さ
◆ 配管が埋没されており,全長が分らない.そこで,管内を空にして両端を開放
し,一端からスピーカにより音を発生させ,気柱一次と二次の共鳴周波数を
求めると,24.9Hzと48.9Hzであった.配管内の音速を340m/sとすると,配管の
長さはいくらか.
16
転がり軸受の構成
◆ 図は内輪が回転軸に固定された転がり軸受の模式図である.次の文中で適切な
用語にレ点を記せ.ただし,軌道輪と転動体の 間にすべりはないものとする.
内輪が時計回りに回転すると,転動体は(□ 時計,□ 反時計)回りに
(□ 自転, □ 公転)しながら軸心の周りを(□ 時計,□ 反時計)回りに
外 輪
(外レース)
転動体
(玉,コロ)
内 輪
(内レース)
(□ 自転, □ 公転) する.
保持器
転がり軸受の損傷
◆ 図の転がり軸受において①,②,③の名称は何か.
①(
)
②(
)
③(
)
ゾーンA
ゾーンB
転がり軸受
欠陥振動数領域
第1段階
ゾーンC
構成部品
共振振動数領域
ゾーンD
打衝撃エネルギー
領域
1x
2x
3x
500Hz
2kHz
gSE
17
転がり軸受の損傷
ゾーンA
ゾーンB
転がり軸受
欠陥振動数領域
第2段階
ゾーンC
構成部品
共振振動数領域
ゾーンD
打衝撃エネルギー
領域
1x
転がり軸受の損傷で初期に現れる徴候は,250kHz∼350kHzの周波数範囲の超音波
である.その後,損傷が進行して周波数範囲がおよそ20kHz∼60kHzに降下する.
このような周波数領域ではスパイクエネルギー(gSE)や高周波検知HFD(g)あるいは衝
撃パルス(dB)などで評価される.HFD : High frequency demodulation
2x
3x
500Hz
2kHz
gSE
実際の測定値は測定環境や運転速度に依存するだろうが,例えばこの図の段階では
スパイクエネルギーのオーバーオール値は0.25(gSE)程度である.
高周波数の包絡線スペクトルを測定すると転がり軸受けが第1段階の損傷か否か確認
できる.
HFD,gSEとは
HFD : High frequency demodulation
HFDは,この波形のオーバーオール値
Hilbert変換 または エンベロープ波形
gSEは,この波形のオーバーオール値
外輪欠陥のある振動加速度波形
IRD社
小さな軸受傷は,軸受を構成する部品を固有振動数fnで鐘のように鳴らす.その主成
分は500Hz∼2kHzの範囲である.
このような固有振動数は軸受を維持している部品の共振かもしれない.
この段階では固有振動数fnのピークの上下に欠陥周波数の側帯波が現れる.
振動加速度のp-p値の波形
スパイクエネルギーのオーバーオール値は,例えば0.25gSEから0.50gSEに大きくなる.
18
転がり軸受の振動加速度スペクトルの例
469.3Hz−391.2Hz = 78.1 Hz
391.2Hz−312.8Hz = 78.4 Hz
391.2Hz
312.8Hz−234.6Hz = 78.2 Hz
469.3Hz
NSK #1302 fr = 20.2 cps
312.8Hz
BPFI = 130.4 Hz
欠陥周波数とその高調波のスペクトルが現れる.
BPFO = 78.2 Hz
234.6Hz
損傷が進行すると,もっと多くの欠陥周波数とその高調波が現われる.
FTF = 7.82 Hz
共に軸受を構成する部品の固有振動数の周りに,これらの側帯波の数が増大する.
BSF = 83.5 Hz
スパイクエネルギーのオーバーオール値は,例えば0.50gSEから1.0gSEのように増える.
Envelopではなく,振動加速度
で欠陥周波数が測れた事例.
この段階では損傷箇所が眼で確認できるようになり,軸受損傷周波数とその高調波お
よび側帯波が明確な場合,その損傷が軸受の周辺に広がっている可能性がある.
高周波数領域の復調HFDや,包絡線スペクトルは第3段階の確認に大いに役立つ.
振動スペクトルで軸受欠陥周波数の振幅が見られる軸受は早急に交換が必要である.
転がり軸受の損傷
ポンプの振動速度スペクトル
第3段階
257.3 Hz → BPFI - 2fr
ゾーンA
ゾーンB
転がり軸受
欠陥振動数領域
ゾーンC
構成部品
共振振動数領域
ゾーンD
打衝撃エネルギー
領域
307.1 Hz → BPFI - fr
356.9 Hz → BPFI
406.8 Hz → BPFI + fr
共振振動数
と 側帯波
BPFO
2x
3x
BPFI
1x
307.1Hz
249.0Hz
×2
257.3Hz
500Hz
2kHz
Envelopではなく,振動速度で
も欠陥周波数が測れた事例.
356.9Hz
406.8Hz
gSE
49.8 Hz → fr
249.0 Hz → 49.8×5
Blade Pass Frequency
19
転がり軸受の損傷
ゾーンA
1x
2x
3x
ゾーンB
転がり軸受
欠陥振動数領域
第4段階
ゾーンC
構成部品
共振振動数領域
転がり軸受の第4段階の例
ゾーンD
打衝撃エネルギー
領域
ランダムな高振動数
の振動
500Hz
2kHz
gSE
包絡線処理と波形
振動加速度センサ
(a)
Charge Amplifier
High Pass Filter
電荷増幅器
>5kHz
Absolute Detector
Low Pass Filter
絶対値検波器
(b)
<1kHz
(c)
故障に至る最終段階である.回転周波数成分の振幅が更に大きくなり,多くの高調波
成分も増大する.
軸受欠陥周波数や構成部品の固有振動成分が消滅し,代わりに広帯域で高周波数の
ランダムノイズが発生する.
スパイクエネルギーとHFDは極端に増大するが,故障の寸前には高周波数のノイズと
スパイクエネルギーは減少することもある.
絶対値処理した波形
振動加速度波形
1
fo
包絡線処理した波形
20
外輪に欠陥のある
内輪に欠陥のある
ベアリングの包絡線処理波形
ベアリングの包絡線処理波形
fr成分のサイドバンド
外輪欠陥の包絡線スペクトル例
内輪欠陥の包絡線スペクトル例
21
転動体に欠陥のある
転動体欠陥の包絡線スペクトル例
ベアリングの包絡線処理波形
fc成分のサイドバンド
転動体欠陥の包絡線スペクトル例
転動体欠陥の加速度波形の例
22
数式の変形
転がり軸受の発生振動数
fi 
接触角 α
fr  B

1  cos  
2 P

fc 
B
P
Nf r
fo
2

Nf r
fi
2
 B

1  cos  
P


fo 
Nf r
2
fi 
Nf r  B

1  cos  
2  P

Nf r  B

1  cos  
2  P

 B

1  cos  
P

  P  B cos   2
 B
 P  B cos  3
1  cos  
 P

3
f o  f o  Nf r
2
fi  f o 
fo 
Nf r  B
 Nf  B

1  cos    r 1  cos  
2  P
 2  P

fo 
Nf r Nf r

 fi
2
2
Nf r
fq
2
fo
等距離
2
f i  Nf r
3
f i  0.6  Nf r
数式の変形
Nf r  B

1  cos  
2  P

f i  f o  Nf r
3 fo  2 fi
fi 
f o  0.4  Nf r
数式の変形
Nf r  B

1  cos  
2  P

Nf r  B

1  cos  
2  P

f i  f o  Nf r

Pf  B 2
f b  r 1  2 cos 2  
2B  P

fi 
fo 
fi
等距離
 B

1  cos  
 P

fc 
fr
2
fc 
fo
 0.4  f r
N
fo P  B 2


fi P  B 3
fo 
Nf r  B

1  cos  
2  P

3 P  3B  2 P  2 B
fb 

Pf r  B 2
1  2 cos 2  
2B  P

fb 

f r 5B 
B2
1 
cos 2    2.4  f r
2 B  5 B 2

P  5B
23
数式の変形
◆ 深溝玉軸受6206(玉数N:9,接触角13.4°)を使用した機械の振動を測定した.
f o  0.4  Nf r
f i  0.6  Nf r
f c  0.4  f r
f b  2.4  f r
図は振動加速度の時間波形である.この時間波形からこの転がり軸受の欠
陥はどこか診断せよ.ただし,回転軸(内輪)の回転数frは30 rpsである.
玉の直径 B = 10 mmφ 玉の公転直径 P = 50 mmφ
玉数N = 10個
軸回転数fr = 60 rps
f o  0.4  Nf r  0.4  10  60  240 Hz
内輪欠陥
f i  0.6  Nf r  0.6  10  60  360 Hz
f c  0.4  f r  0.4  60  24 Hz
f o  0.4  Nf r  0.4  9  30  108 Hz
f b  2.4  f r  2.4  60  144 Hz
f  165 Hz
f i  0.6  Nf r  0.6  9  30  162 Hz
f c  0.4  f r  0.4  30  12 Hz
f b  2.4  f r  2.4  30  72 Hz
◆ 深溝玉軸受6206(玉数N:9,接触角13.4°)を使用した機械の振動を測定した.
◆ ベアリングに関して,適切なものにレ点を記せ.
図は振動加速度の時間波形である.この時間波形からこの転がり軸受の欠
□ 保持器の回転数は,内輪の回転数の半分以下である.
陥はどこか診断せよ.ただし,回転軸(内輪)の回転数frは30 rpsである.
□ ベアリングの状態監視は振動加速度で行われる.
□ ベアリングは潤滑管理も重要である.
155.0mm
□ ベアリングの劣化状態は触覚と聴覚で感知できるので計測器は必要ない.
□ 振動加速度のエンベロープ波形を分析すると欠陥箇所を同定できる.
170.5mm
T
155 40

 6.06 ms
6 170.5
f 
1000
 165 Hz
6.06
24
◆ 内輪が回転軸に固定された玉軸受において,その仕様が下記の場合,
◆ 円筒ころ軸受で支持された回転機の振動を軸受箱で検出したときの振動加速度
「外輪」軌道面の不具合に起因する玉通過振動数はいくらか.
信号を,10kHzのHPFで処理し,その後にエンベロープ回路を通し,その出力を
仕様 : 玉の直径 d = 10 mmφ 玉の公転直径 D = 50 mmφ
FFT した結果が下図である.このFFT 結果からこのころ軸受の欠陥はどこか診
玉数z = 10個
軸回転数 Ω= 60rps
断せよ.ただし,軸(軸受内輪)の回転数は1200min-l,軸受のピッチ円直径は
33.5mm,ころ直径は6.5mm,ころ数は10個である.
◆ 前問の玉軸受において,「内輪」軌道面の不具合に起因する場合の玉通過
振動数はいくらか.
◆ 内輪が回転軸に固定された深溝玉軸受において,「内輪」軌道面の欠陥に
起因する玉通過振動数が360 Hzである.この玉軸受の「外輪」軌道面の欠
転がり軸受のアライメント
陥に起因する玉通過振動数はいくらか.
ただし,玉軸受の玉数は10個で,回転軸の回転数は60 rps である.
◆ 前問の玉軸受において,保持器の回転数はいくらか.
内輪表面と外輪表面が平行であるとき
軸受は心出しされていると看做される.
25
斜めはめ込み軸受
すべり軸受の正常状態の振動
Cocked Bearing
120
1 : 2/6π(rad)
軸方向
2 : 5/6π(rad)
2fr
1
3 : 8/6π(rad)
2
3fr
4 : 11/6π(rad)
4
3
60
0.6
0.5
0.4
2
Displacement [mm]
fr
900.7
位相
スペクトル
150
30
0.3
0.2
0.1
1
0
180
0
-1
-2
210
0
200
400
600
Time[ms]
330
800
240
軸に斜めに取り付けられた転がり軸受は,かなり大きい軸方向の振動を発生させる.
軸受の上下間および左右間で位相が180°異なるひねり運動が起こり,この振動は
軸受箱で軸方向の振動として測定される.
300
270
水平方向の振動波形
軌跡
通常のカップリングで軸心調整をしたり,回転体のつり合せを試みてもこの問題を解
決できない.異常に取り付けられた軸受を外し,正しく取り付け直さなければならない.
すべり軸受の分類
オイルホワール状態の振動
900.8
120
スラスト軸受
軸方向の荷重(スラスト荷重)を受け,垂直な回転軸
に使われる軸受.
動圧軸受
圧力発生による分類
軸などの相手面の運動によって油膜圧力を発生させ
る
静圧軸受
外部から強制的に一定の油膜圧力を発生させる
2
Displacement [mm]
用途による分類
軸に対して垂直方向の荷重(ラジアル荷重)を支える
軸受
60
0.6
ジャーナル(ラジアル)軸受
0.4
150
30
0.2
1
0
180
0
-1
-2
210
0
200
400
600
Time [ms]
330
800
240
300
270
・すべり軸受を用いた高速回転機に多く発生、軸受油膜に基づく自励振動
・一次危険速度以上2倍以下で発生、回転軸の約2分の1の速度の振動発生
・軸のふれまわりは回転と同じ
・振動の発生、消滅に規則性がない
(Whirl:ぐるぐるまわる)
26
◆ 図は,滑り軸受の軸振動を測定したものである.回転数は最初徐々に上げていき,
オイルホィップ状態の振動
途中一定の回転数で廻し,最後は徐々に下げた時のウォーターフォール図(スペク
トルの振幅はリニアスケール)である.
900.8
120
60
図の(a)は(□回転数の1/2の分数調波,□オイルホワール,□オイルホイップ)のス
0.6
Displacement [mm]
2
ペクトルであり,(b)は( □回転数の1/2の分数調波,□オイルホワール,□オイル
0.4
150
1
30
ホイップ)のスペクトルである.括弧の中のどちらかの□にレ点を記せ.
0.2
0
180
Amplitude Spectrum
0
-1
-2
210
0
200
400
600
Time [ms]
330
800
240
(b)
300
270
・すべり軸受を用いた高速回転機に多く発生、軸受油膜に基づく自励振動
(a)
・一次危険速度の約2倍以上で発生、回転軸の一次危険速度の振動発生、発生する
と回転速度を上げても止まらない、発生回転速度、負荷などに対しヒステリシスあり
×1
・軸のふれまわりは回転と同じ
・振動の発生、消滅に規則性がない
(Whip:あわ立てる)
Frequency
オイルホィップ状態の振動
◆ すべり軸受で支えられた回転機械の回転数が3600rpmに上昇したとき,突然
振動が大きくなり,図のような振幅曲線を得た.この過大振動発生時の卓越
振動の振動数はいくらか.
◆ 次の軸受の内,オイルホィップを誘起し難い軸受はどれか.
□ 真円軸受
□ 二円弧軸受
□ 多円弧軸受
□ 圧力ダム軸受
□ ティルティングパッド軸受
27
歯車の異常例
◆ オイルホィップは,突然軸が大きくふれ回る(□自励振動,□強制振動)であ
り,軸の回転数が1次の危険速度の(□1/2以下,□2倍以上)で発生し,ふれ
回りの方向は軸の回転方向に(□一致する,□反対となる).一旦発生する
と,発生した回転数よりも(□高い回転数に増速,□低い回転数に減速)しな
ければ振動がおさまらない.括弧の中のどちらかの□にレ点を記せ.
歯車
22%
その他
32%
要素別
ケーシング
軸
17%
12%
その他
13%
◆ すべり軸受にはその動作原理によって動圧式,(□静圧式,□圧力ダム式,
□油圧式)の区別があり,また受ける荷重が回転軸の方向に対して直角荷
その他
31%
重かスラスト方向荷重かによって(□フォィル軸受,□アンギュラ軸受,
□ジャーナル軸受, □ティルティングパッド軸受),スラスト軸受の区別があ
る.さらに潤滑流体によって油軸受,気体軸受などの区別がある.
摩耗
32%
現象別
変形破壊
55%
潤滑不良
32%
原因別
取付不良
11%
設定不良
26%
括弧の中のどちらかの□にレ点を記せ.
◆ 図に示すように,回転数を昇速し,危険速度を超えた危険速度の2倍以上の
軸受
17%
歯車の典型的異常
回転数のところで時間とともに振幅が大きくなり異常が発生した.振動周波
数は危険速度の回転周波数と一致している.このときの異常はどれか.
大きな歯元クラック
□ 不釣合い振動
□ ラビング振動
局所的な歯面摩耗
□ オイルホィップ振動
□ 転がり軸受異常による振動
□ 歯車異常による振動
バックラッシュによ
る回転速度変動
局所的なピッチ誤差,
歯形誤差
材料欠陥による歯の折れ
28
回転数の振動
Tg=24
Tg=24
Tp=18
fz=180 Hz
Tp=18
fg=7.5 Hz
fp=10 Hz
600rpm
450rpm
fg=7.5 Hz
fp=10 Hz
Id=
s
z
z
s
アンバランスやミスアライメントで発生
かみ合い振動
Tp=18
fz=fg×Tg=fp×Tp=180 Hz
スペクトル
fg
fp
3×GMF
GMF  Tg  f g  T p  f p
2×GMF
歯車が回転することで歯のか
み合いの状態が変化する.
言い換えれば、力を伝達してい
る歯車間のステフネス(強さ)が時
間と共に変化して,かみ合い振動fp=10 Hz
fg=7.5 Hz
が発生する.
GMF
Tg=24
正常な歯車
fg
fp
3.25×GMF
正常なピニオンとギアは,噛み合い周波数(GMF:Gear Mesh Frequency)のスペクトル
があり,GMFの高調波のスペクトルは極めて小さい.
通常,GMFの高調波の両脇に回転周波数の側帯波があるが,その側帯波は低い振幅
であり,そして歯車の共振振動は励起されていない.
29
正常な歯車
歯面摩耗
Tooth Wear
スペクトル
スペクトル
fg
fp
fg
fp fn
3×GMF
2×GMF
GMF
3×GMF
2×GMF
fg
fp
GMF
GMF  Tg  f g  T p  f p
fg
3.25×GMF
3.25×GMF
歯数が分かっている場合は,分析の上限周波数fmaxを少なくてもGMFの3.25倍にするこ
とを推奨する.もし,歯数が不明ならば,上限周波数fmaxを軸の回転数を200倍した値に
すると良い.
GMF自身よりも側帯波の方が摩耗に対して良い指示器であるかもしれない.同じく,
GMFの振幅が許容範囲内であっても,2×GMFあるいは3×GMF(特に3×GMF)の振
幅が高くなることが一般に起こる.
過度な歯荷重
歯面摩耗
Excessive Tooth Load
Tooth Wear
fg
fp
3.25×GMF
fg
fp fn
3×GMF
2×GMF
GMF
3×GMF
fp
スペクトル
2×GMF
GMF
スペクトル
fg
fp
fg
fp
3.25×GMF
噛み合い周波数は荷重に対して非常に敏感である.GMFの振幅が高くても,側帯波周
波数が低振幅で,歯車の共振振動が励起されていないならば,歯車には異常がない.
歯が摩耗すると,歯車の共振周波数(fn)が励起される.その周波数には,摩耗した歯車
の回転周波数の間隔で側帯波が現れる.
これらの分析を有効活用するためには,装置の最大運転荷重でスペクトルの比較を行
なうべきである.
摩耗が顕著になると噛み合い周波数(GMF)の脇に高次の側帯波が大きな振幅で現れ
る.GMFの振幅が変化することも,あるいは変化しないこともある.
30
偏心とバックラッシュ
噛合い歯のミスアライメント
Eccentricity and Backlash
Gear Tooth Misalignment
fp
2fg
fp
3×GMF
fg
2×GMF
fg
GMF
3×GMF
fp fn
スペクトル
2×GMF
fg
GMF
スペクトル
3.25×GMF
噛み合いの不整列(ミスアライメント)は,ほとんどの場合,回転周波数成分の側帯
波を伴ったGMFの2次やそれ以上の高調波を引き起こす.
しばしば,1×GMFの振幅が小さいが,2倍あるいは3倍のGMFの振幅がより大きく
なる.少なくてもGMFの3倍の高調波を得るために十分に高いfmaxにすることが重要
である.
偏心とバックラッシュ
噛合い歯のミスアライメント
Eccentricity and Backlash
Gear Tooth Misalignment
fp
3.25×GMF
2fg
fp
3×GMF
fg
2×GMF
fg
GMF
3×GMF
スペクトル
2×GMF
GMF
スペクトル
fp fn
fp
3.25×GMF
GMFの高調波の周りにかなり大きい振幅の側帯波が現れると,偏心のある歯車,バッ
クラッシュのある歯車,あるいは軸が非並行になり一つの歯車がGMFか他の歯車の
回転速度のどちらかを変化させている状態であることを示唆している.
fg
fg
fg
fp
3.25×GMF
異常がある歯車の回転周波数の間隔で側帯波が現れる.同様に,もし偏心が主な異
常ならば,偏心歯車の回転周波数成分(1×rps)のスペクトルも高くなる.
同じく,2×GMFに伴う側帯波は,しばしば回転周波数の2倍の間隔になることもあ
る.
通常,かみ合いが不適切なバックラッシュの状態ではGMFの高調波と,歯車の共振振
動を励起させる.そして,その何れも回転周波数の側帯波を伴う.
ミスアライメント状態ではGMFとGMFの高調波に伴う側帯波の振幅が左側と右側で
等しくないことに注意すべきである.摩耗のパターンは不均等に発生する.
31
割れや折損のある歯
振動加速度波形のスペクトル
1
Cracked or Broken Tooth
736.25 Hz 0.839m/s2
0.8
スペクトル
728.75 1Hz
0.529m/s2
0.6
0.8
0.4
745.0 Hz 0.299m/s2
0.2
Δt
0.6
0
700
0.4
720
740
760
780
fg
800
Δt
fn
Δt
t 
Δt
Δt
1
or
fg
1
fp
fg
fp
ひび割れているか,あるいは折損した歯の時間波形には,その歯車の回転周期毎に大
きな振幅の波形を発生する.加えて,歯車の共振振動(fn)を励起して,そのスペクトル
は歯車の回転周波数の側帯波を伴う.
0.2
0
0
200
400
600
800
1000
異常の歯が相手の歯車の歯と噛み合う度に,顕著な衝撃波を示す時間波形となり,最
も良く検出できる.
割れや折損のある歯
振動加速度波形のスペクトル
1
Cracked or Broken Tooth
0.8
スペクトル
0.6
0.4
0.2
Δt
0
700
720
740
760
振幅変調
780
800
回転数成分の側帯波
側帯波の位相が異なる
周波数変調
fg
fn
Δt
Δt
t 
Δt
Δt
1
or
fg
1
fp
fg
fp
衝撃の時間間隔(Δt)は異常のある歯車の回転周波数分の1(1/rps)に対応する.
時間波形で,この衝撃のある個所の振幅は,回転周波数(1×rps)成分に比べて10倍∼
20倍になることがあるのでFFT解析では入力レンジに注意を要する.
回転数成分の側帯波
偏芯があり回転周回速度が変化
32
9
軸受緩み
8
Loose Bearing Fits
7
スペクトル
緩みのある軸受
5
6
5
6
6
fp
3×GMF
2×GMF
GMF
fp と高調波
歯車箱
4
5
3
4
1
4
1
3
fg
2
2
3
3.25×GMF
緩みのない軸受
2
このような過度の隙間は大きな軸受け摩耗や,軸と軸受けのはまり合う部位(ジャーナ
ルという)の設置が不適切な軸受けのどちらかによって起こされ得る.
1
放置すると過度の歯車摩耗や他部品の損傷を起こすことになる.
3
4
5
6
1
2
3
4
5
6
8
Loose Bearing Fits
7
スペクトル
緩みのある軸受
6
3×GMF
2×GMF
歯車箱
GMF
2
9
軸受緩み
fp と高調波
1
5
fp
6
5
7
6
4
5
3
4
1
4
fg
1
3
2
2
3
3.25×GMF
緩みのない軸受
歯車軸を支えている軸受に過度の隙間があると回転周波数成分とその高調波成分を励
起するだけでなく,GMF,2×GMF,3×GMFで大きな振幅応答を起こす.
これらの高いGMF振幅は,歯車軸を支持している軸受けの緩みに起因した実際の応答
である.
2
1
33
9
歯数の素数原理
8
Prime Number Theory
7
1.歯数は1,2,3,5,7,11,13,17,19,,,,,,などの
素数に分解できる.
6
7
6
5
1
2
4
4
3
2
3
寿命予測値
1
100%
2
50%
2.噛み合う歯車の歯数の最大公約数が1ならば,
3
33%
駆動歯車の歯は,被駆動歯車の全ての歯と
4
25%
平等に噛み合う.
5
20%
6
16%
7
14%
8
12%
26 = 1×2×13
5
4
1
最大公約数
例えば, 10 = 1×2×5
5
8
6
3
3.最大公約数が1以上であれば,駆動系の歯が
2
被駆動系の特定の歯と多数回噛み合い,歯
車寿命を短縮する.
1
1
2
3
4
5
6
9
Tg = 24
Tp = 18
9
11%
10
10%
24
8
7
7
18
6
8
5
9
6
6
4
5
1
3
4
r
1
5
4
2
3
2
Tp
Tg

NA tp
N A  tg
NA : 最大公約数
3
2
r
1
1
2
3
4
5
6
18 6  3

24 6  4
12
6
1
1
6
12
18
34
組合せ周波数
Tg=24
Tp=18
Gear Assembly Phase Frequency
Assemblage frequency
Tp=18
組合せ振動数
r
Tp
Tg
r

NA tp
N A  tg
18 6  3

24 6  4
fp=10 Hz
f z  18  10  180 Hz
fa  tg  f g  t p  f p 
fa 
Tg = 25 = 5×5
GMF = 300 Hz
4×GAPF = 240 Hz
3×GAPF = 180 Hz
Tp = 15 = 5×3
NA :
最大公約数
fg = 12cps
GAPF 
GMF 300

 60 Hz
NA
5
それは文字通り,歯数TG / NAのギアが歯数TP / NAのピニオンと噛み合うことを意味
しており,NA種類の摩耗パターンを生成する.ここでNAはギアの歯数とピニオンの
歯数に共通に含まれる最大公約数(通常はLCF:Largest Common Factorというが,
ここではAssembly Phase Factorと言う)である.
もし歯車装置の設計不良や歯車の製造で問題があると,GAPFとその高調波が最
初から現われることがある.
600rpm
fg=7.5 Hz
fp = 20cps
もしNA > 1の時,噛み合い周波数GMFの分数周波数の振動成分を励起する.これを
歯車組合せ周波数(GAPF:Gear Assembly Phase Frequency)という.
18 6  3
r

24 6  4
Tg=24
fp
2×GAPF = 120 Hz
fg
GAPF = 60 Hz
スペクトル
また,歯車潤滑油中の金属微片が噛み合い歯の間を通過すると歯面を損傷して,
周期的なスペクトルが突然現れる.
fz
NA
180
 30 Hz
6
35
出力軸受部の振動速度のトレンド
駆動軸側歯車の組合せ周波数の
変動による歯の破損例
タービン駆動の圧縮機の増速装置の状態監視データ
10mm/s
軸受部の軸方向の振動速度データ
5.0mm/s
5枚毎に破損
駆動カップリング側軸受部の
鉛直方向振動速度のスペクトルトレンド
Tg=24
乱調振動数
600rpm
09/28/95
歯数は,50と95の増速装置
入力回転数は,4350rpm
かみ合い周波数は,6.9kHz
r
fg=7.5 Hz
95 5  19

50 5  10
r
Assemblage frequency
fa 
Hunting frequency
Tp=18
95 4350

 1380Hz
5
60
Tp
Tg
r

NA tp
N A  tg
18 6  3

24 6  4
fp=10 Hz
fh 
f z  18  10  180 Hz
fz
N f
 A z
N A  t p  t g T p  Tg
fh 
180
 2.5 Hz
6  3 4
7.5kHz
36
②
①
24
Tp = 18
Tg = 24
③
④
Tg=121
18
Hunting frequency
Tp=30
乱調振動数
①
7200 rpm
fg=7.5 Hz
fp=10 Hz
10
 2.5 Hz
4
7.5
fh 
 2.5Hz
3
12
fh 
6
1
fg=29.75 Hz
②
6
12
18
30 2  3  5

121 11 11
r
Tp
fh 
f p fg
fz


 0.99 Hz
N A  t p  t g Tg Tp
③
1
NA tp
fp=120 Hz
Tg

N A  tg

N 1
振動数が極めて低い
包絡線処理で見つかることもある.
ベルト駆動でもこの理論が成立
乱調周波数
Hunting Tooth Frequency
スペクトル
Tp = 6 = 1×2×3
6
±fHT
6
4
1
4
1
3
±fHT
f HT 
大プーリ
Tg = 7 = 1×7
5
7
5
GMF = 1200 Hz
fp = 20 Hz
fHT = 2.86 Hz
2fHT = 5.71 Hz
fg = 17.1 cps
2
NA :
最大公約数
3
2
fp = 20 cps
GMF  N A 120 1

 2.86 Hz
Tp  Tg
6 7
製造工程で発生したか,フィールドで手荒に扱ったかなどの理由でギアとピニオンの
両方に欠陥がある時,乱調周波数(fHT:Hunting Tooth Frequency)が発生する.
それは非常に大きな振動であるが,主に10Hz以下の低い周波数で発生するので,し
ばしば見過ごされる.
37
◆ 歯車の機能で,適切なものにレ点を記せ.
◆ 歯数22の歯車が3,000rpmで回転している場合のかみ合い周波数fzはいくらか.
□ 回転速度を減少させる.
□ 回転速度を増大させる.
□ トルクを増大させる.
□ 仕事量を増大させる.
□ 回転軸の方向を変える.
◆ 入力軸の歯数が14,出力軸の歯数が24の減速機がある.入力軸の回転数
は3000rpmである.ケーシングで振動加速度波形を計測して周波数スペクト
ルを求めると,700Hzに最大ピークがあり,他に671Hz、729Hzのピークが
◆ 24歯,16歯,20歯,30歯,12歯の平歯車を5枚組み合わせた歯車装置で24歯の
歯車を1200rpmで回したら12歯の歯車の回転数はいくらか.
見られた.考えられる異常部位として最も適切なものにレ点を記せ.
□入力軸側
□出力軸側
□ケーシング
□基礎
□選択肢の中に適切なものはない
30歯
16歯
12歯
24歯
20歯
1200rpm
38
◆ 図のような2段の歯車減速器がある.入力軸を3585rpmで駆動した.
◆ 図の歯車減速器において,入力軸を3575rpmで駆動した.この減速器が発す
出力軸の回転数はいくらか.
るかみ合い振動数はいくらか.
入力軸
11 歯
入力軸
15 歯
26歯
37 歯
31歯
99 歯
◆ 前問の歯車減速機の入力軸の
歯車が発するかみ合い振動数
はいくらか.
101歯
出力軸
出力軸
97歯
遊星歯車減速機
◆ 図のような二段の歯車減速器がある.入力軸を3575rpmで駆動した.
出力軸の回転数はいくらか.
11 歯
入力軸
15 歯
Sun gear
Planet gears
太陽歯車
遊星歯車
歯 数:Ts
回転周波数:fs
歯
数:Tp
37 歯
99 歯
Ring gear
内歯車
出力軸
歯
数:Tr
39
発生する振動
かみ合い
fz
内歯車異常
fdr
太陽歯車
回転周波数:fs
太陽歯車異常
◆ 図は遊星歯車減速機の構造を表したものである.矢印の歯車の
一般的な名称として適切なものはどれか.
1.遊星歯車
2.太陽歯車
3.内歯車
4.中歯車
fds
遊星歯車
5.心歯車
自転周波数:fp
遊星歯車異常
遊星歯車
fdp
公転周波数:fc
ベルトのつなぎ目による振動
◆ 遊星ギアボックスは,(□太陽歯車,□ピニオン,□クラッチ歯車),
遊星歯車,リング歯車およびキャリアから構成されており,大きい減速比と高い
ベルトのつなぎ目
(□効率,□出力トルク)を少ない歯車要素で得ることができる.
括弧の中のどちらかの□にレ点を記せ.
N1
d1
遊星歯車減速機
Planet gears
Sun gear
モータ
遊星歯車
太陽歯車
fb : ベルトのつなぎ目による振動
fb  Zb 
Ring gear
内歯車
2d1  N1
L
Zb : ベルトのつなぎ目の数
N1 : 対象プーリの回転数
d1 : 対象プーリの半径
L : ベルトの長さ
モータとプーリが共通架台に搭載されていると,つなぎ目のよる振動数は2倍
40
ベルトのゆるみによる振動
偏心プーリによる振動
N1
d1
y
×
C
モータ
θ
モータから戻されるベルトの張力が小さくなるため,ベルト軸直角方向に振動
が発生する.対策としては,テンショナでベルトを押さえる方法がある.
O
d
x
対象プーリの回転周波数の振動が発生する
振動の方向はベルトが張られている方向(x方向),y方向には振動は発生しない
プーリの傾きによる振動
◆ 図のようなベルト駆動装置がある.小径のプーリーを1776rpm(r1)で駆動した.
大径のプーリーの回転数(r2)はいくらか.
N1
d1
r1
180mm
r2
300mm
モータ
525 mm
0°
180°
偏角したプーリが1回転する間に2回ベルトが引っ張られる
41
◆ 図のようなベルト駆動装置がある.半径270mmの小径のプーリーを1740rpm
の回転数(r1)で駆動した.その時,大径プーリーの回転数(r2)が1044rpmであ
◆ 図のベルト駆動装置において,小径のプーリーを1776rpm(r1)で駆動した.
ベルトの周回による振動数はいくらか.
った.大径のプーリーの半径はいくらか.ただし,ベルトにすべりはないとする.
1044 rpm
1740 rpm
r1
270mm
r2
r1
? mm
r2
180mm
300mm
525 mm
◆ 図のプーリーAの半径は400 mm,プーリーBの半径は240 mm,プーリーCの半径
◆ 図のベルト駆動装置において,ベルトの長さはおおよそいくらか.
は340 mm,プーリーDの半径は150 mmである.プーリーBとプーリーCは一体で
回転する.1740 rpmでプーリーAを回転させると,プーリーDの回転数はいくらか.
r1
180mm
r2
300mm
1740 rpm
B
240 mm
A
400 mm
525 mm
C
340 mm
D
150 mm
42