アメリカにおける後発医薬品高騰の分析

保健医療経営大学紀要 № 8 69 ~ 74(2015)
<研究ノート(Research Note)>
アメリカにおける後発医薬品高騰の分析
谷島 智徳*
要 旨
先進国を中心とする少子高齢化による医療費高騰の中で、各国により保健制度は異なるが、良質で安価な後発医薬品
の普及は、医療費抑制策のひとつの手段であり、また世界の潮流である。我が国も後発医薬品の数値目標を 2017 年度
末までに、数量シェアで 70%以上とするとともに 2018 年度から 2020 年度末までの間のなるべく早い時期に 80%以上
とする、新たな数量シェア目標 1) を厚生労働省が公表した。2016 年度の次期薬価改定で、後発医薬品の価格引き下
げが予想される。更に 2017 年 4 月の消費税率 10%引き上げに伴う 2017 年度の連続改定では、正しい価格を基に、消
費税率 2%の引き上げ分を正しく反映しなければならない。
本研究では、世界最大の医薬品市場・後発医薬品市場であるアメリカを調査及び研究することにより、我が国の後発
医薬品業界の将来における方向性を考察することを目的とする。
Keywords:後発医薬品、ジェネリック、ANDA、高騰、差別化、医薬品原料
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図表 1 特許切れに市場におけるジェネリックシェア(数量)
1. 後発医薬品の市場規模 2012 年の世界医薬品市場は、約 9600 億ドル
2)
規模で
あり日本は約 11.7% 2) を占めている。また、医薬品市場
は北米 36.3% 2)、欧州 25.3% 2) である。先進国を中心と
する少子高齢化による医療費高騰の中で、各国により
保険制度は異なるが、良質で安価な後発医薬品の普及
は、医療費抑制策のひとつの手段であり、また世界の
潮流である。この世界の後発医薬品の市場は拡大を続
けており、2005 年の世界における医薬品市場に対する
後発医薬品市場は約 667 億ドル(約7兆円:\105/US$
で換算)であり、全世界医薬品市場の約9% の市場規
模であった。2015 年までに約 3070 億ドル(約 32 兆円:
\105/US$ で換算)に達するとの見通しである。また、
2015 年以降は特許切れとなる大型先発薬が減少する
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出所:厚生労働省 医薬品産業ビジョン
ことから、成長速度の鈍化を不安視する向きもある。
「米調査会社の IMS ヘルスによると世界の医薬品市場
は 2014 年、初めて1兆ドル(約 109 兆円)に達する
見通しだ。その後も拡大を続け 17 年には1兆 2000 億
ドルまで増えるという。」 3)
*
保健医療経営大学保健医療経営学部 専任講師 [email protected]
㧖
-69-
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谷 島 智 徳
図表
࿑⴫ 22 グローバルデータマップ
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5)
日本経済新聞電子版「医薬品市場、新興国で2けた増中間層が拡大、保険整備進む」
(平成
9月
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22 22 日)
ᣣ㧕6
2. アメリカにおける薬価
品の供給力問題。④ 採算が悪い薬剤の販売中止の増加。
日本における医療用医薬品の薬価は公定価格が定め
⑤ジェネリックメーカーの M&A。⑥FDA の人員不足・
㧖
られているが、アメリカにおいては薬の値段は需要と
中国からの輸入食品の安全性チェックで薬の審査が遅
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供給のバランスで決まる。アメリカでは処方箋医薬品
れている。
であっても、その価格は日本のように政府が決めるの
アメリカのジェネリックが安いと引用されていた、
ではなく医薬品メーカーが決定する。このため、同じ
プラバスタチン 500 錠瓶入りが 27 ドルから 196 ドル
薬局で同じ処方内容の調剤を受けたとしても、購入時
に高騰。
期により、患者負担額が異なるということが起こって
日本には薬価制度があり、一度下げてしまうと最低
いる。今までは激しい競争により、ジェネリック医薬
薬価まで下がらない限り値上げする事はできないジェ
品の価格は下がる一方だったが、最近ではその需要と
ネリック医薬品メーカーは採算が悪くなると販売を止
供給のバランスに変化が起き、一部の薬剤は数倍にも
める。ジェネリック医薬品の過度な価格引き下げは、
なっている。需要と供給の変化が起きた原因としては
日本においては供給不安の原因になる事を心に留めて
①原料価格高騰。②梱包材料の高騰。③ジェネリック医薬
おく必要がある。
-70-
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アメリカにおける後発医薬品高騰の分析
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図表 33 Generic
GenericDrugs,
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6)
図表
Drugs,Change
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Jan.2015
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3. アメリカにおける後発医薬品の参入による先発品
~ 10%の価格で販売される。その市場規模と成長性か
への影響
ら、アメリカ国内企業、海外企業、先発医薬品企業と
アメリカでは、通常、最初に販売される後発医薬品
競争者の参入が増加し、激しい競争と企業間の価格競
の価格は、先発医薬品の価格より 20 ~ 30%低く設定
争が行われている。
されるが、複数の後発医薬品が販売されるようになる
また、買い手の交渉力も大きく、大手チェーン薬局、
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と価格は急速に下がり、最終的には先発医 薬品の 5
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-71-
谷 島 智 徳
ルオーダー会社、病院などからの価格プレッシャーに
ている。オーゾライズド・ジェネリックとは、先発医
も直面し、後発医薬品の販売価格が低下し、企業収益
薬品そのものを、ラベルを変えて後発医薬品として上
を圧迫しているのが現状である。
市する方法である。いうなれば、中身が全く同じ医薬
この競争を回避するひとつの戦略として、パテント・
品が先発医薬品と後発医薬品として販売されているこ
チャレンジ(特許への挑戦)による ANDA(医薬品簡易
とである。また FDA(食品医薬局)は、オーゾライズ
申請)への申請(ANDA, Paragraph Ⅳ)に対する 180
ド・ジェネリックを先発医薬品であると考えている事
日間の独占販売権の獲得がある。この申請手法は、日
から、通常の後発医薬品のように、ANDA 申請・承認が
本と事情が異なるが、ハッチ/ワックスマン法(Hatch/
要求されていない。このことから、ある後発医薬品企
Waxman Act)における ANDA の規定が深く関わってい
業が 180 日間の独占販売権を獲得し、その後発医薬品
る。アメリカでは、先発医薬品企業に対して、オレン
を販売した際には、先発医薬品企業は自社の後発医薬
ジブックにその先発医薬品の特許情報を提出し、公開
品部門や他社との提携を通じて、オーゾライズド・ジェ
する義務を、また後発医薬品企業には ANDA 申請時に、
ネリックを販売し、その攻防がおこなわれている。
オレンジブックに掲載されている先発医薬品企業の特
この、オーゾライズド・ジェネリックは、先発医薬
許に対して特許証明書を添付する義務を定めている。
品企業による後発医薬品企業への競争上の攻防であり、
この特許証明書は、Paragraph Ⅰ(先発医薬品の特許
後発医薬品企業のパテント・チャレンジの意欲をそぐ
情報はない)、Paragraph Ⅱ(先発医薬品の特許はす
結果となっている。また、先発医薬品企業は自社の後
でに満了している)、Paragraph Ⅲ(先発医薬品の特
発医薬品会社(部門)を通じて後発医薬品事業に進出
許は特定の日に満了する)、Paragraph Ⅳ(先発医薬
しており、これらはブランド・ジェネリック(Branded
品の特許は無効であるか、ANDA 申請する後発医薬品
Generics)ともいわれ、オーゾライズド・ジェネリッ
は特許を侵害しない)、と4つの項目に分類されている。
クとともに、後発医薬品業界にて競争がおこなわれて
ここで、Paragraph Ⅳによる ANDA を申請する場合
いる。このように、アメリカの後発医薬品業界は、国
には、その特許を所有する先発医薬品企業に通知する
内外の後発医薬品企業はじめ、先発医薬品企業の参入
義務がある。その通知を受けた先発医薬品企業は、通
による競争が激化している。アメリカの後発医薬品業
知を受けたその日から 45 日以内に特許侵害の訴訟を
界においては、規模拡大を追求することが、競争を勝
提訴した場合には、30 ヶ月間は ANDA の承認は停止さ
ち抜くことであり、そのためには、継続して新たな後
れる。しかし、その ANDA を申請した企業が勝訴した
発医薬品を販売(申請・承認)して、製品ラインナッ
場合には、すぐに申請の承認が与えられる。このように、
プを拡充する戦略がおこなわれている。
最初に Paragraph Ⅳによる ANDA 申請をした企業には、
ANDA が承認された場合、180 日間の独占販売の優先権
5. アメリカにおける後発医薬品企業の製品差別化
が与えられる。この ANDA, Paragraph Ⅳの承認に対
後発医薬品は、その製品の性格上、先発医薬品と同
するインセンティブである 180 日間の独占販売権の獲
じ製品を持つ多数の企業と競争がおこなわれ、価格競
得により、6ヶ月間は、その承認を受けた会社の後発
争に陥る傾向が高い。アメリカでは、すでに述べたと
医薬品しか存在しないことになり、他の後発医薬品企
おりに、内外の後発医薬品企業と先発医薬品企業が混
業との競争がなく、先発医薬品と競争するのみであり、
在し、激しい競争が行われている。後発医薬品という
最大限の売上と利益を確保することができ高めの価格
製品は、差別化が難しいことから、激しい競争が生じ
設定が可能だが、6ヶ月が過ぎると多くの製品が参入
ている。
するので価格は大幅に下落する。このことから、訴訟
アメリカでは、多数の企業が、同じ後発医薬品を販
と敗訴の場合の賠償金のリスクを負いながらも、ANDA,
売し、価格競争に直面する状況において、このような
Paragraph Ⅳの承認への挑戦と獲得競争がおこなわれ
後発医薬品を、コモディティー・ジェネリック
(Commodity
ている。
-type Generic)
、
トラディショナル・ジェネリック(Traditional
Generics)、あるいは、ミートゥー・ドラッグ(Meet too
4. オーゾライズド・ジェネリック
Drug)とも呼ばれている。アメリカの主要後発医薬品
後発医薬品企業は、先発医薬品会社の後発医薬品会
企業の製品の差別化戦略としては、第一に、組成的に
社(部門)による競争と攻防が激化している。この先
困難な薬剤(Difficult to formulate)や、製造が
発医薬品会社との競争は日本とは事情が異なるが、先
困難な薬剤(Difficult to manufacture)を選択す
発医薬品会社はオーゾライズド・ジェネリック
(Authorized
ること、また医薬品原料の入手が困難な薬剤を選択す
generics)により、後発医薬品市場で競争・攻防をし
ることにより、結果的に競争相手が少ない製品を販売
-72-
アメリカにおける後発医薬品高騰の分析
するという戦略を選択している。この入手困難な医薬
スの取得、買収、ベンチャー企業などへの投資、また
品原料確保のためと、製造コスト削減のために、各社
これらの経験とノウハウの蓄積による自社開発により、
とも医薬品原料メーカー(API)を所有していることに
製品開発を具現化している。これらの製品開発の方法
ある。そして、テバ・ファーマシューティカルズ・イ
としては、新規物質を発見して製品化する、いわゆる
ンダストリーズ社は、従来から医薬品原料事業部を所
新薬(先発医薬品)を開発する手法や、既存の物質(先
有していたが、その他の企業は、この医薬品原料確保
発医薬品)にドラッグ・デリバリー・テクノロジー(薬
のために、マイラン社は、2006 年にインドのマトリッ
物送達技術)を用いて、投与経路の変更や服用回数の
クス(Matrix)社を買収した。バー・ファーマスーティ
減少化を図り患者のコンプライアンスを高める製剤を
カルズ(Vertex Pharmaceuticals)社(アメリカ)2006
開発する方法がある。また、医薬品開発は長期にわた
年にクロアチアのプリバ(Pliva)社を買収したが、
り、その後も特許満了までに相当期間があることから、
テバ・ファーマシューティカルズ・インダストリーズ
その医薬品に付加されている技術が、現在の技術水準
社に買収された。ワトソン・ファーマシューティカル
では陳腐化している場合がある。この古い技術のまま
ズ社はインドの医薬品原料製造工場を買収している。
の薬剤を技術のモデルチェンジを行い、現在の技術水
このように、グローバル・メガ・ジェネリック企業は、
準を応用した開発の方法がある。
医薬品原料工場を所有することがトレンドとなっている。
このように、グローバル・メガ・ジェネリック企業
次に、製品の差別化戦略として各社が最も重要視して
は競争が限られ、また競争者が長らく現れないような
いることは、技術的な価値を付加して、コモディティー・
製品として、新薬開発、ドラッグ・デリバリー・シス
ジェネリックから脱却を図り、製品の差別化を進めて
テムの開発と技術の現代化の開発など、独自の技術を
いることにある。コモディティー・ジェネリックと比
開発して製品の差別化を図っている。
較して、プロダクトライフサイクルの長期化を図る事
このような差別化を進めてきた結果、各社の売上に
ができる事と、企業の持つ技術力をアピールする事が
占める差別化製品の割合は、15% 程度から 30% 程度に
可能となり、最終的に企業のプレゼンスを高める戦略
なっている。また、利益率については、後発医薬品の
が図られている。
利益率が 40% 程度から 45% 程度であるのに対して、差
そこで各社は、デリバリー・テクノロジーである、ドラッグ・
別化製品は 70% 程度から 75% 程度と高い利益率を確保
デリバリー・システム(DDS : Drug Delivery System
している。
-薬物送達技術)を研究・開発している。更に、新薬
開発まで行っている。この技術を実現するために、各
6. M&A
社は、自社による研究開発、および他社との提携や買
後発医薬品企業による M&A については、規模拡大と
収による外部資源の活用をしている。この技術的な価
製品ラインナップの充実を図る事を目的に行われてい
値を付加した製品を販売することにより、競争を避け
るが、相乗効果は余りない。買収する企業と製品構成
て、安定した売上と利益を確保することを戦略として
が重複することにより、1+1=2にならない。M&A
いる。また、将来への戦略として、バイオ医薬品の後
はむしろ、外資や先発医薬品企業、さらに、新規参入
発医薬品であるバイオ・ジェネリック(Bio Generics)
者による M&A が効果的であるとの考えで、世界的な後
への研究・開発や投資を進めている事にもある。
発医薬品業界の再編が現在も進行中である。
これら、各社とも共通している戦略としては、新薬
や先進的薬物送達技術(Advanced Drug Delivery Technology)
、
7. 最後に
また技術的治療手法(Therapeutic Technique)が競合
各社とも後発医薬品を事業のメインにしながらも、
品との差別化につながるとしている。また、各社とも
国内外後発医薬品企業や先発医薬品企業の参入による
事業ドメインを差別化製品、コモディティー・ジェネ
競争激化と、コモディティー・ジェネリックによる価
リックと医薬品原料とに区別をして、差別化製品を明
格競争に対する利益低下から、製品の差別化・ブラン
確に区分けして事業ドメインを設定している事にある。
ド化により競争を避け、また長らく競争者が現れない
この、事業ドメインのひとつである差別化製品である
製品を開発し、売上・利益の安定化を図る戦略を立て
が、コア・コンピタンスを設定し、ニッチ市場におい
ている。この結果、後発医薬品企業は、新薬、ドラッ
ての特定分野・領域と特定技術に資金と開発を集中し、
グ・デリバリー・システムの開発や、現代の技術を応
差別化製品の実現化と競争力を高めている点にある。
用する開発による製品の差別化を実践している。
アメリカにおける主要後発医薬品企業による、差別
化製品の実現の方法には、提携、共同研究、ライセン
-73-
谷 島 智 徳
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