ピロリ菌と胃の病気 ① ピロリ菌は人の胃粘膜表面の粘液中に棲みついている細菌です ② 慢性胃炎を起こし胃潰瘍や胃癌を誘発します ③ 50歳以上の日本人では6割以上の人が感染しています ④ 感染の有無は尿検査で簡単にわかります ⑤ 除菌治療は1週間の服薬で済み80~90%の人が成功します ⑥ 利根保健生協ではピロリ菌の尿検査の「班会」を開いています ⑦ ピロリ菌が陽性となった人には、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療だけで はなく、胃癌の予防のために、除菌治療を受けることをお勧めします ※潰瘍の無い人の除菌治療は、現在も健康保険の適用外であるため、 自費での治療の場合には8000円程度の費用がかかっていました。 利根中央病院では2006年10月から自費除菌には後発医薬品(ジェネリック)を採用し、 除菌後の検査込みで5000円※と患者様の負担を軽減し除菌治療の普及を進めています。 (※利根保健生協組合員の方は5000円、組合員以外の方は6000円となります) ピロリ菌研究の歴史 • 1892年 イヌの胃の中に螺旋状の細菌がいることが報告される • 1919年 小林六造らが動物実験での螺旋菌による胃炎と除菌を報告 • 1983年 オーストラリアの Warren と Marshall がピロリ菌の培養に成功 • 1991年 ハワイの日系人の疫学的調査により、ピロリ菌感染者は胃癌にかか りやすいことが判明 • 1992年 浅香らが日本人の感染率に40歳を境とするギャップの存在を指摘 • 1994年 ピロリ菌は胃癌の発生に強く関与していることを WHO が認定 • 1998年 スナネズミの実験でピロリ菌感染単独での胃癌の発生が確認される • 2001年 上村らが、多数の除菌治療例の長期観察により胃癌の発症が抑制 されることを New England Journal of Medicine に報告 • 2001年 畠山らが、ピロリ菌の CagA が胃粘膜上皮細胞の SHP-2 に結合し、 細胞の異常な増殖が生じることを Science に報告 • 2005年 Warren と Marshall がノーベル医学生理学賞を受賞 健康診断受診者での血清抗体測定による年代別のH.pylori抗体陽性率(1992年 浅香ら) 15年前のデータのため現在に換算すると 2001年に呉共済病院の上村医師(現在は国立国際医療センター)らが ピロリ菌陽性および陰性の多数例の長期観察により、ピロリ菌陰性の人 や除菌が成功した人では胃がんの発生が抑制されることを発表 (N Engl J Med 2001;345:784-9を改変) 利根中央病院の胃癌・非胃癌例での出生年代別の鏡検法によるピロリ菌陽性率 ピロリ菌感染の治療方法 • 胃酸分泌抑制剤と2種類の抗生物質の1週間の内服により80~90% の人で除菌治療が成功。 • 初回の除菌治療に失敗した人でも、耐性菌が比較的多い抗生物質の クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更した再除菌により、80~ 90%の人が除菌に成功。(ただし保険適用外) • アメリカでは、NIHが1994年にピロリ菌による胃潰瘍や十二指腸潰瘍 を抗生物質を用いた除菌療法により治療することを勧告。 • 日本では2000年11月から、胃潰瘍、十二指腸潰瘍についてのみ、 ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法 が保険適用となる。 • 胃癌予防のためにピロリ菌による慢性活動性胃炎の患者さんを除菌 治療する場合は、保険適用外。(※2006年10月現在) 抗生物質による除菌治療の経費 胃酸分泌抑制剤 ランソプラゾール(タケプロン) 60mg/日 417.8 円 抗生物質 アモキシシリン(サワシリン) 1500mg/日 93.6 円 クラリスロマイシン(クラリシッド) 400mg/日 234.6 円 1日の薬代→745円 1週間の除菌治療→5215円(+処方箋料)=約6千円 2000年11月より胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんは保険適用となり、 負担はその3割。(潰瘍がない人の除菌は保険適用外) ※利根保健生協では「胃がん予防推進」のため自費除菌を安価に!! 2006年10月から自費除菌に後発医薬品(ジェネリック)を採用し 利根保健生協組合員は除菌後の検査込みで5000円 (※利根保健生協組合員以外の方は除菌後の検査込みで6000円) 胃癌による死亡の減少を • 2004年の日本での胃癌の死亡者の実数は、 男32,851人、女 17, 711人の合計5万人であり、減少は見られておらず、除菌 治療の普及の1年の遅れは、5万人の命に関わる問題。 • 胃癌予防のため、潰瘍の無い患者さんの除菌治療にも保険 適用を拡大し、ピロリ菌感染者を減少させることが必要。 • 利根保健生協では、利根沼田地域が「胃がん死亡が日本一 少ない地域」となることを目指して、後発医薬品の採用により 自費除菌の際の患者負担を軽減し、「ピロリ菌尿検査と除菌 治療+胃がん検診」を普及させる運動を展開しています。 ※利根の保健2001年2月号、2002年7月号、2006年10月号の「医療相談室」をご覧ください (ホームページからPDFファイルでダウンロードできます) 胃癌発症の予防を含む胃がん検診への転換を • 胃癌の高危険群(胃癌になる可能性が高い人)=ピロリ菌 感染者に「がん検診と除菌治療」を勧めることが重要。 • 学校や職場での健康診断、住民健診の際に、検尿により ピロリ菌感染の有無を調べ、高危険群と低危険群に振り 分ける。 • 感染者=胃癌の高危険群には「除菌治療」を勧め胃癌発 生の予防を図り、除菌成功者も最低5年間は「がん検診」 を行い、除菌前に発生していた胃癌の早期発見に努める。 • 生来の非感染者=胃癌の低危険群であり、無益な被爆を 避ける意味でも、40歳以上の全員に毎年の胃透視を実 施する現在の胃がん検診は、再検討が必要。 ピロリ菌に感染している人の胃粘膜の強拡大写真 除菌前 除菌後
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