「平成 25 年度神戸市政に対する要望」 についての回答 平 成 25 年 4 月 目 次 要望書前文 ・・・・・1 1.企業の節電及び省エネ対策等に対する支援 ・・・・・6 2.中小企業対策の拡充・強化 ・・・・・10 3.観光集客の強化 ・・・・・19 4.魅力ある街並み整備 ・・・・・26 5.交通インフラの整備促進と広域ネットワーク機能の強化・32 要望書前文 神戸経済は、東日本大震災に起因する電力供給不安に加え、長期化する超円高や産 業空洞化の懸念など、先行きへの不透明感が払しょくできず、景気浮揚への道のりは 未だ険しい状況にある。 このような中、地元経済の着実な回復と企業活力の増進を図るためには、その根幹 を成す中小企業の底上げと地域資源の有効活用に重点を置いた予算措置が肝要であ る。 以上の観点から、平成 25 年度の神戸市予算の編成にあたっては、引き続き、行財 政改革を進め、効率的な行政を実現することはもとより、地域経済の活性化を牽引す る「デザイン都市・神戸」や「神戸医療産業都市」「国際コンテナ戦略港湾・阪神港 の競争力強化」「京コンピュータの効果的な利活用」など、従来から地元官民が一体 となって取り組んできたプロジェクトを着実に推進されたい。 また、これらのプロジェクトを引き続き最重要課題として取り扱うほか、「企業の 節電及び省エネ対策等に対する支援」 「中小企業対策の拡充・強化」 「観光集客の強化」 「魅力ある街並み整備」、更には神戸空港の民営化・規制緩和等を含む「交通インフ ラの整備促進と広域ネットワーク機能の強化」の5項目に絞り込んだ下記の要望事項 についても、積極的に取り組まれるよう強く要望する。 「デザイン都市・神戸」 本市では、旧神戸生糸検査所を活用し、 「デザイン都市・神戸」のシンボルとして“創 造と交流”の拠点である「デザイン・クリエイティブセンター神戸」を平成 24 年度に 開設した。センターでは、デザイナーやクリエイターだけではなく、市民にも参加い ただけるワークショップ等を開催し、人材育成に力を注いでいくほか、くらしの中の 様々な課題をデザインの力で解決していくための実験的試みなどを展開する。 また、平成 25 年度は新たに、子どもを対象に創造力を育む「こども+クリエイティ ブ」や、神戸を中心とした中小企業とデザイナーの協働により、デザインによるもの づくりを推進する「ものづくり+デザイン」など、市民や企業に「デザイン都市・神 戸」を身近に体感していただく「デザイン都市・神戸」リーディングプロジェクトに 取り組む。 さらに、デザインを戦略的に活用し、高いブランド力を発揮している企業を顕彰す る「(仮称)デザイン・エクセレント・カンパニー賞」を創設し、経営者のネットワー ク拡充をはかっていく。貴会議所とも連携し、フォーラムを開催するなど、市内企業 との交流の機会を創出していきたい。 また、若手のデザイナーや学生などの活躍の場を広げるための「デザインコンペテ ィション」や、学生による神戸市発行の広報印刷物のデザインなどを引き続き行って いくとともに、貴会議所の「神戸デザイナーズネット」も活用しながら、取り組みを 進めていきたい。 更には、(公財)神戸ファッション協会と連携し、斬新なアイデアとデザインをもつ若 手クリエイターとセレクトショップのマッチングを行う「ドラフト!」や、次代の神 戸ファッションのデザインを生み出す人材を発掘する「神戸ファッションコンテスト」 を実施するとともに、平成 23 年度より、世界を目指す神戸のクリエイターや中小アパ ‐1‐ レル企業の海外進出を支援する「Channel KOBE(チャンネルコウベ)」事業を進めて おり、本年6月には、世界中のバイヤーが注目するパリの展示会(カプセル)に出展を果 たしたところである。また、平成 25 年は、ファッション都市宣言から 40 周年となる 記念すべき年であり、貴会議所のほか、県、(公財)神戸ファッション協会、地元企業と 連携し、4月~12 月にかけて、 「かっこいい!」をテーマに、神戸ブランドによるフ ァッションショーなど多彩な記念事業を実施する。 消費が低迷し、国内外の競争が激化している現下において、市内企業が、ものづく りにデザインを取り入れる、或いは、デザインにさらに磨きをかけることは消費者や 取引先に対して自社製品をアピールするうえで非常に重要であり、今後も、デザイン の力を活用しながら市内中小企業の更なる活性化を図っていきたい。 「神戸デザイナーズネット」… 神戸商工会議所が事務局となり、神戸市内のデザイナーのネットワーク化を図り、デザイナー間の 相互交流や地元企業とデザイナーのビジネスマッチングの機会を提供(平成 20 年 11 月創設)。 現在、登録社数 235 社、734 名のデザイナーが登録。 「デザイン都市・神戸」リーディングプロジェクトの推進(11,000 円) クリエイティブネットワークの充実(13,800 千円) 「デザイン・クリエイティブセンター神戸」の運営(96,259 千円) KOBE デザインハブ事業(14,720 千円) 協働と参画による「デザイン都市・神戸」の推進(15,320 千円) ファッション都市宣言 40 周年記念事業(10,000 千円) 神戸ファッションフェスティバルの開催(ファッションウィーク含む)(25,068 千円) 神戸アパレル活性化プロジェクト-Channel KOBE-(13,000 千円) 地場産業販路開拓支援事業(8,012 千円) ‐2‐ 「神戸医療産業都市」 ・「京コンピュータの効果的な利活用」 神戸医療産業クラスターについては、世界初のiPS細胞による再生医療の臨床応 用が実施段階に入ったほか、高度専門医療機関の集積、スーパーコンピュータ「京(け い)」の共用開始など、神戸医療産業都市が新たなステージへ進んでいることを踏まえ、 「バイオ・クラスター」 「メディカル・クラスター」 「シミュレーション・クラスター」 の3つのクラスターを融合した「神戸医療産業クラスター」として、産学官の協力体 制のもと、再生医療などの革新的な取り組みや創薬・新産業創出などにより、神戸経 済の活性化、市民の健康・福祉の向上を図り、ひいては日本経済を牽引し、国内外の 医療水準の向上に寄与することを目指しており、先端医療センターをはじめ、理化学 研究所発生・再生科学総合研究センター、神戸臨床研究情報センター等の中核施設を 核に、233 社・団体(平成 25 年3月末現在)の医療関連企業・団体が進出・進出決定 している。 平成 18 年度に、貴会議所にもご参加いただき設置した「神戸健康科学(ライフサ イエンス)振興会議」において、医療産業都市構想の将来ビジョンが検討され「神戸 健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン」として提言をいただいた。ビジョンに おいては、関西の産学官の連携と市民の参画のもと、高度医療サービスを提供する「メ ディカルクラスター」の形成について提言をいただいている。 その提言の具体化として、切らずに治療するがんの専門病院「神戸低侵襲がん医療 センター」や早期の回復期リハビリテーションを提供する「西記念ポートアイランド リハビリテーション病院」を平成 25 年 4 月に開設したほか、小児がん患者と家族が 快適に滞在でき、かつ診療所を併設した「チャイルド・ケモ・ハウス」が平成 25 年 度の開設を、生体肝移植・消化器がん内視鏡治療等を柱とする「神戸国際フロンティ アメディカルセンター」が平成 26 年度の開設を、小児医療・周産期医療の全県の拠 点病院としての役割を持つ「兵庫県立こども病院」が平成 27 年度の開設を目指し、 準備を進められているところである。 平成 22 年7月には、貴会議所が中心となり、神戸を舞台に先端医療に関する国際 交流・人材養成を進める「神戸国際医療交流推進協議会」が設立された。本市として も、貴会議所と連携して、国際医療交流の推進を支援していきたいと考えている。 平成 23 年 12 月に指定を受けた「関西イノベーション国際戦略総合特区」において は、 「医療機器等事業化促進プラットフォームの構築」に対して国からの財政支援が決 定しており、今後も引き続き、「PMDA-WEST 機能の誘致」や「メディカルクラスターを 核とした医療機器の事業化」、「高度専門病院群を核とした国際医療交流による日本の 医療技術の発信」等に取り組んでいきたいと考えている。 また、ポートアイランド第2期に立地するスーパーコンピュータ「京」が、平成 24 年9月に共用開始した。 「京」の計算資源の半分は、国が社会的・学術的に大きなブレークスルーが期待で きる医療・創薬や防災、ものづくりなどの戦略5分野と言われる研究に充てられるが、 産業利用についても5%が割り当てられている。産業利用については、公募・審査の 結果、平成 25 年 3 月末現在 27 社 29 件が採択され、地元企業の5件も採択されており、 産業利用の需要は高いと考えている。 ‐3‐ 「 関西イノベーション国際戦略総合特区」においては、「京」は兵庫県播磨地区に ある実験施設、SPring-8、SACLA との連携について、提案した 32 事業の中でも特に関 西で重点的に取り組むべき7事業の1つ「放射光とシミュレーション技術を組み合わ せた革新的な創薬開発の実施」として位置づけられており、貴会議所にも参画いただ いている神戸・播磨地区協議会において、革新的な医薬品・医療機器や次世代の省エ ネ材料開発などの連携に向けた取り組みを行っているところである。 さらに貴会議所にも協力をいただき設置した計算科学振興財団は、平成 23 年度から FOCUSスパコンを導入し、企業のスパコンの産業利用の裾野拡大や、「京」を活 用した研究へのステップアップにつなげるため技術支援などを行ってきており、平成 25 年4月には公益財団法人に移行した。また、「京」の共用開始に合わせて、利用企 業が「京」に直接アクセスすることができるアクセスポイントを、高度計算科学研究 支援センター内に設置し、産業界にとって「京」を効果的に利活用していただくよう 取り組んでいる。 今 後 と も 、 国 の 動 き を 踏 ま え つ つ 、 スーパーコンピュータ「京」の活用や、理 化学研究所/先端医療振興財団にて進められている世界初の iPS 細胞を活用した再生 医療の実用化に向けた取り組みなど、神戸の強みを活かし、 「関西イノベーション国際 戦略総合特区」での特例措置などを積極的に活用しながら、神戸医療産業都市が国際 競争力を有するイノベーションの拠点となるように、引き続き取り組んでまいりたい。 新たなステージに立つ「神戸クラスター」の推進(5,817,874 千円) ‐4‐ 「国際コンテナ戦略港湾・阪神港の競争力強化」 阪神港は、国際コンテナ戦略港湾として民の視点による港湾経営を推進していると ころであり、埠頭公社が平成 23 年4月に株式会社化され、代表取締役社長には株式会 社神戸製鋼所の元代表取締役社長 犬伏泰夫氏を迎えている。さらに、集荷施策を一元 的に所管する部を新設し、邦船社から担当部長を招聘するなど、民間のスキル・ノウ ハウで集荷施策を展開できる体制へと組織体制の充実を図っている。 平成 24 年 10 月には港湾法における特例港湾運営会社として指定されており、同年 12 月には運営を開始しているところである。 今後、平成 27 年に神戸港と大阪港の両埠頭株式会社を経営統合することにより港湾 のポートオーソリティ設立の実現を果たしてまいりたい。大阪湾諸港の国際競争力強 化の観点から、できるだけ早期に実現していきたいと考えており、貴会議所のご支援・ ご協力をお願いしたい。 神戸港の機能強化に向けた取り組みも着実に進めており、ポートアイランド第2期 PC15~17 において3連続大水深(-16m)耐震強化岸壁の整備が完了したほか、22 列 高規格ガントリークレーンの製作にも着手し、高規格コンテナターミナルの整備を進 めている。 さらに、今後、2015 年(平成27年)のパナマ運河拡張に伴う世界のメガキャリアの 船舶の大型化に対応し、神戸港の国際競争力を強化するため、六甲アイランド RC6、 7の高規格コンテナターミナルの整備に着手する予定である。 また、基幹航路を維持・拡大するための貨物集荷の取り組みとして、釜山等海外フィ ーダーに対抗する内航フィーダーの強化を図るため、内航フィーダーへの支援を拡充・ 強化しているほか、景気回復の続く北米や成長著しい東南アジアを結ぶ新たな航路の誘 致、トランシップ貨物の誘致に取り組んでいるところである。昨年 10 月からは、新た に内陸・日本海側の貨物誘致を目的としたインランドコンテナデポの実証実験を大阪港 とともに滋賀県内で実施しており、今後も、西日本からの貨物集荷に向け、内航フィー ダー支援を中心とした集荷施策に取り組み、神戸港への集荷につなげてまいりたいと考 えている。 今後も、国際コンテナ戦略港湾の中間目標とする平成 27 年までに、阪神港として目 標に掲げる外貿コンテナ貨物取扱量 490 万 TEU を達成することを目指し、国策による支 援を得ながら官民一体となって取り組んでまいりたいと考えており、一層のご支援・ご 協力をお願いしたい。 「国際コンテナ戦略港湾」の機能強化に向けた取り組み(10,747,919 千円) ‐5‐ 1.企業の節電及び省エネ対策等に対する支援 (1)節電や省エネ化、再生可能エネルギーの活用に取り組む中小企業への支援 依然として電力の安定供給に対する不安が払しょくされない中、節電・省エネ対策 は企業経営にとって大きな課題としてのしかかっている。 とりわけ資本や人材に制約のある中小企業にとって、現状の対策を続けることすら 困難を極める中、更に取引先の大手企業が節電シフトに取り組めば対応せざるを得な いことから、こうした節電対策等に伴うコストアップに対し助成措置を講じられた い。 また、自家発電やデマンド監視システムなどの省エネ設備や太陽光パネル設置など 再生可能エネルギーの導入に対する支援策を創設されたい。 福島第1原子力発電所の事故後、電力需給が厳しい状況が続いており、本市では、 平成 24 年5月 24 日の関西電力からの節電要請を受けて、平成 24 年6月 12 日に「夏 の節電対策」を公表し、平成 22 年比 15%以上、大飯原子力発電所の再稼動後は節電目 標を 10%に改定して、節電に向けた取り組みを進めた。 あわせて、より一層の節電を進めなければ医療や公共交通など、市民生活や経済活 動に大きな影響を及ぼす可能性のある計画停電が避けられない事態も予想されたこ とから、全庁的な推進体制として「神戸市節電緊急対策本部」を設置し、主に電力不 足による計画停電時の対応を中心に検討した。 本市では、今夏の節電対策として、事業者向けには、貴会議所や兵庫県中小企業家 同友会等の会員の方々向けに、チラシやメールマガジン等で節電を呼びかけるととも に、特に中小事業者向けに、節電の必要性が高まる6月から9月の間、効果的な節電 対策を中心に説明するため、省エネセミナーを計4回開催するなど、広報に努めた。 これらの取り組みをはじめとして、事業者の方々、市民のみなさんにも節電に取り 組んでいただいた結果、関西電力管内では、平成 24 年は一昨年比でピーク時の消費 電力を 11%削減することができ、昨年と比べても大きな削減効果が得られた。 現在、国では、新たなエネルギー基本計画の策定に向けた議論が行われているとこ ろであるが、今後も、大幅な供給力の増加が見込める状況ではなく、事業者の方々に は、引き続き節電に取り組んでいただく必要があると考えている。 本市では、平成 25 年度、 「中小製造業競争力強化助成制度」を新たに創設し、この 中で太陽光発電設備や蓄電池、デマンド監視・制御装置などのエネルギー対策設備の 導入を支援するほか、中小企業の節電を推進するための無料省エネ診断や簡易・安価 な改善策の提案を行う。 また引き続き、環境・エネルギー分野の新事業や新製品の実用化に向けた開発やマ ーケティング調査を支援する「神戸挑戦企業等支援補助」制度の実施や、中小企業融 資である事業拡張転換資金に電力不足対策要件を追加するなどの支援を行う。 今後も引き続き、特に中小企業の方々にも、効果的に節電していただけるよう、広 報・啓発に重点的に取り組んでいくとともに、国の各種補助制度の周知も含め、市内 中小企業の電力対策に向けた取組みを支援してまいりたい。 ‐6‐ 事業者向けエコマニュアルの作成(100 千円) 省エネセミナー・相談会の開催(70 千円) 中小製造業競争力強化助成制度(90,000 千円) 神戸挑戦企業等支援補助(環境・エネルギー分野)(2,000 千円) ‐7‐ (2)省エネ・環境ビジネスに取り組む企業への支援 地元企業が開発した省エネ・新エネルギーに対する新技術を積極的に導入・採用し、 市内企業の環境・エネルギー分野の開発を後押しする土壌づくりに努めるなど、「神 戸スマート都市づくり計画」の実現に取り組まれたい。 本市では、都市活動による CO2排出量の削減とあわせて、 市民の暮らしの質の向上、 地域経済の活性化、都市やまちの環境価値の向上をはかることにより、持続可能な環 境配慮型都市づくりをめざして、 「神戸スマート都市づくり計画」を平成 24 年7月に 策定した。計画では、「土地利用」、「都市交通」、「エネルギー」、「水と緑」、「マネジ メント」の分野ごとの施策展開の方向性と、実現に向けた地域ごとの先導的な取り組 みを示している。 このうち、エネルギー分野では、『多様な建築物の集積を活かした「効率的なエネ ルギー利用」の促進』を目標に、①建築物・建築設備の更新時期にあわせたエネルギ ー消費の削減と利用効率の向上、②未利用エネルギーの活用、③再生可能エネルギー の活用、を方針として掲げており、現在、都市における効率的なエネルギー利用を誘 導するための制度等について検討を進めている。 福島第1原子力発電所の事故後、国では、新たなエネルギー基本計画の策定に向け た議論が行われているところであるが、本市では、環境・エネルギー分野の新事業や 新製品の実用化に向けた開発やマーケティング調査を支援する「神戸挑戦企業等支援 補助」制度の実施するなどの支援を行うとともに、さらに、現在、環境未来都市構想 の実現に向けて、市内企業の有する環境関連技術の活用や新技術の導入などについて も検討しており、今後も引き続き、事業者の省エネルギー対策、地球温暖化対策を促 進するような効果的な施策を実施してまいりたい。 事業者向けエコマニュアルの作成(100 千円) 省エネセミナー・相談会の開催(70 千円) 神戸挑戦企業等支援補助(環境・エネルギー分野)(2,000 千円) ‐8‐ (3)防災・防犯に強い安全な地域づくりへの支援 神戸スマート都市づくり計画における「災害に強く安全な都市」の実現を図るため には、各地域レベルでの防災・防犯対策の普及が重要である。 ついては、商店街の街灯や防犯カメラ設置などを助成する共同施設建設補助事業の 対象団体に工業団地等も追加するなど拡充に努められたい。 本市では、現在、安全・安心な買い物ができ、楽しく時間を過ごせる商店街・小売 市場づくりを進めることを目的に、商店街・小売市場が行う防犯カメラの設置工事費 や街路灯の電力料の補助を行っている。 工業団地等への助成の拡大については、防災・防犯に強い安全な地域づくりという 意味ではひとつのアイデアであると思うが、工業団地が商店街・小売市場と比較する と、一般市民の利用が少ないことなどをから、対象とすることは考えていない。 商店街・小売市場共同施設建設補助(30,740 千円) ‐9‐ 2.中小企業対策の拡充・強化 (1) 海外展開支援の強化 国内需要の縮小に伴い、新興国市場に活路を見出そうとする動きが増加する一方、 中小企業にとっては安易な海外ビジネス展開による事業の失敗が決定的なダメージ となる可能性が高い。 当商工会議所では、海外ビジネスに不慣れな中小企業をサポートするため、今年度 は海外ビジネス経験の豊富な企業 OB 人材を中小企業に一定期間派遣したり、外国公 館等との連携による実務支援や専門セミナー等に取り組むなど成果を上げつつある。 ついては、神戸市が今年度開設した「神戸市アジア進出支援センター」において、 他の支援団体との連携を図りながら、より密度の高い事業構築に努めるとともに、ア ドバイザー派遣に重点を置いた予算増強をはじめ、海外展開に関する制度融資の拡充 や販路拡大支援等に積極的に取り組まれたい。 成長著しいアジア新興諸国への企業進出が加速し、市内の中小企業が生き残るため には、成長する海外市場に進出し、利益を獲得することが重要な選択肢になっている 一方で、中小企業は、海外進出を検討する人・物・情報・ネットワークが不足してい るという課題を恒常的に抱えており、海外進出に関する支援が求められていた。 アジア進出支援センターでは、当面の支援対象を、市内の中小製造業、対象国は、 ASEAN10 か国、インド、中国、韓国を想定しており、進出検討段階から、進出後 までの様々な相談に応じていく。 関係機関に対する信用度を高めるために、市の直営組織として設置し、中小企業の ニーズに対して、適切なアドバイスを行えるように、海外ビジネス経験の豊富な製造 業や商社のOBなど 90 名の登録アドバイザーを擁している。 さらに、海外展開支援については、企業の支援ニーズが多種・多様であり、JET RO神戸、中小機構近畿本部、JICA関西、ひょうご海外ビジネスセンターなど、 他の支援機関と緊密に連携をとりながら支援を行っている。 具体的な支援メニューは、①窓口での相談対応のほか、業界団体・支援機関・企業 への訪問、②海外ビジネス展開に関する情報提供やリスク軽減セミナー等の開催、③ 海外ミッションの派遣等である。 また、市内企業の海外販路開拓の支援として、主に中国とのビジネス拡大を目指す セミナーや個別相談会による情報提供のほか、ビジネスマッチングの機会として現地 での物産展・商談会などの開催、上海での神戸ブランドのPRなどを行ってきた。 こうした取組に加え、平成 22 年度からJETROと連携し、①海外バイヤーと地元 食品メーカー・商社との商談会を開催したほか、②海外での展示会などに出展する際 の留意点を解説する海外販路開拓セミナーや、海外駐在のアドバイザーを招聘した現 地の投資環境セミナーを開催するなど、新たな取組を展開している。 さらに平成 23 年度より、③「海外販路開拓 展示会・商談会等出展支援制度」を創 設し、海外向けの展示・商談会に参加する企業の出展料や輸送費、渡航費などの一部 を補助し、海外に販路を求める企業を後押ししている。 こうした取組を進め、各企業の状況やニーズに応じ、市内企業の国際ビジネスを幅 広く支援していきたい。 なお、融資についても、神戸市内に軸足を置きながら、海外展開を目指す中小企業 者を資金面から支援するため、事業拡張転換資金を平成 24 年度から拡充した。 ‐10‐ 海外市場販路開拓支援(3,000 千円) 中国等ビジネス相談会(1,000 千円) 海外ビジネスセミナー(500 千円) 神戸市アジア進出支援センター(20,472 千円)(一部再掲) ‐11‐ (2)資金繰り支援策の拡充 長引く不況により、小規模企業の資金繰りは依然厳しく、これまでの経済変動対策 資金など緊急融資の継続的な利用により、企業の信用保証協会の実質保証可能枠も少 なくなってきている。更に、中小企業金融円滑化法が平成 25 年 3 月の終了を予定さ れていることから、これらに対応した金融面、経営面での支援策を講じられたい。 ①100%保証のセーフティネット保証取扱期間延長等の国への働きかけ 平成 24 年 9 月末までとされている「100%保証のセーフティネット保証(82 業種 該当)の取扱期間延長」をはじめ、公的融資や民間融資など「種類に拘わらない借換 による複数債務の一本化等による返済負担軽減策の推進」、更には「小口零細企業保 証制度の保証限度額拡大(現行 1,250 万円→ 3,000 万円)」について、国に対し強力 に働きかけられたい。 金融機関のリスク負担のない「100%保証のセーフティネット保証(5号) 」は、リ ーマン・ショック後の緊急避難措置として導入された。中小企業の資金繰りを下支え した一方で、安易な融資で不振企業の延命につながったとの指摘も多く、全国の信用 保証協会が、銀行に代わり全額を肩代わりした金額が 6,407 億円(平成 23 年度)と巨 額に達していることから、国は制度見直しにすでに着手済みである。なお、セーフテ ィネット保証(5号)は、平成 24 年 11 月1日より、業況が改善した業種については 指定業種から外れ、平成 25 年4月1日からは 727 業種(細分類)が指定されている。 神戸市中小企業融資制度の「借換資金融資」については、平成 19 年度より、神戸市 制度融資に加え、保証協会保証付プロパー融資も対象としている。 また、 「小口零細企業保証制度」は、零細企業であって借入総額も少額である小規模 事業者向けに責任共有制度の対象除外となる保証制度として創設されたものである。 中小企業融資制度は、長期・固定金利・低利が特徴であり、厳しい財政状況ではあ るが、社会経済状況及び市内中小企業者の状況を注視しつつ、安定的・継続的な運用 に努めていきたい。 ②神戸市融資制度の拡充・改善 神戸市融資制度について、平成 23 年 7 月 1 日に融資限度額を 500 万円に縮小した 小規模企業おうえん融資等小規模事業者向け 3 融資を、元の限度額に戻すことを含め た融資枠の拡大、金利引き下げ、融資条件の緩和等拡充を図るほか、国の小口零細企 業保証制度の趣旨を汲み、神戸市独自負担による小規模企業向け責任共有制度対象融 資の実質的な全部保証の実現に努められたい。 平成 25 年度予算では、中小企業者の経営改善への取り組みを支援するため、 「こう べ経営力強化資金融資」を創設した。また、「起業家支援資金」を拡充し、「事業拡張 転換資金」の電力不足対策要件や「セーフティネット資金融資」の融資対象者拡充を 1年間延長するほか、小規模事業者向け3融資の信用保証料の全額補助を継続実施す るなど、融資制度の拡充を行った。 なお、小規模事業者向け3融資の限度額については、引き続き、関係機関にシステ ‐12‐ ムの改善を要望しているところである。 また、地公体の制度融資における実質的な全部保証は、責任共有制度の趣旨から外 れるため、非常に困難である。 ③日本政策金融公庫「マル経融資制度」への利子補給制度の創設 商工会議所の指導・調査・推薦を条件として実施されている日本政策金融公庫の「マ ル経融資制度」は、企業の経営改善を図り、資金調達の円滑化を促すことを目的とす る有効な金融支援である。このため金融支援拡充の一環として同制度に対する利子補 給制度を他の自治体の事例を参考に創設されたい。 本市では、小規模事業者向けの3融資について、信用保証料の全額補助を実施して おり、資金調達コストの軽減により小規模事業者の経営安定を図っている。厳しい財 政状況のもと、新たな利子補給制度の創設は困難であるが、今後も、小規模事業者へ の支援策として、信用保証料補助に取り組みたいと考えている。 融資予定総額(40,000,000 千円) こうべ経営力強化資金融資(3,000,000 千円) セーフティネット資金融資(10,000,000 千円) 小規模企業おうえん融資(4,500,000 千円) 借換資金融資(2,500,000 千円) 事業拡張転換融資(2,500,000 千円) ‐13‐ (3)経営相談・支援体制の一本化に向けた取り組み 当商工会議所や神戸市産業振興財団など様々な中小企業支援機関が活動している が、相談内容が多岐にわたる中小企業にとっては、類似する複数の窓口から自社が抱 える経営課題に最適な支援事業を、如何に速やかに見つけ出せるかが課題となる。 ついては、各支援機関が改めて連携の強化と役割分担の整理を行い、顧客である中 小企業が、より速やかに効率的に利用できるよう、当商工会議所を中心とした経営相 談・支援体制の一本化等を検討されたい。 平成 16 年度には、貴会議所中央支部を産業振興センターに移転していただき、中小 企業相談窓口の一本化を図り、金融・経営・法律・企業診断の窓口業務と中央支部業 務を一元的かつ効率的に運営していただいている。 さらに平成 21 年度からは、窓口を拡大していただき、金融・経営相談に加え、中小 企業診断士や弁護士による専門相談を全支部で実施するなど、より一層のサービス向 上が図られている。 今後とも、中小企業者のニーズを見極めながら、会議所の窓口相談との連携を一層 強化することにより、相談者の利便を高めていきたいと考えている。 中小企業相談(5,421 千円) 商工会議所融資受付業務委託(702 千円) ‐14‐ (4)地場産業の振興 ①生活文化産業の振興に向けた支援強化 神戸経済を支える衣食住遊などの生活文化産業の振興を図るため、神戸ファッシ ョン協会や日本ケミカルシューズ工業組合、灘五郷酒造組合、日本真珠輸出組合な どの関係業界団体に対する支援を継続されたい。 特に平成 25 年は、昭和 48 年のファッション都市宣言から 40 周年を迎えることか ら、周年事業の実施等を通じ、神戸ファッションのブランドイメージ強化を図ると ともに、民間が企画する関連事業等への支援を講じられたい。 また、北野工房のまち、シューズプラザ、灘の酒蔵など魅力ある地場産品等が展 示された情報発信拠点を産業観光資源として支援するとともに、内外に向け積極的 に広報されたい。 本市では、昭和 48 年のファッション都市宣言以来、「ファッション都市づくり」に 取り組んできた。生活文化産業の振興は、企業集積、雇用促進といった直接的な効果 に加え、神戸の街そのもののイメージアップをもたらし、観光や市民生活の面でも大 きな役割を果たすことから、本市としても、力をいれているところである。 平成 25 年は、宣言から 40 周年となる記念すべき年であり、貴会議所のほか、県、(公 財)神戸ファッション協会、地元企業と連携し、4月~12 月にかけて、 「かっこいい!」 をテーマに、神戸ブランドによるファッションショーなど多彩な記念事業を実施する。 互いに宣言を行ったときの気持ちに立ち戻って、ともに力を合わせて神戸ファッショ ンのブランドイメージの強化に取り組んでいきたいと考えている。 また、ファッション都市づくりを進める中核組織である(公財)神戸ファッション協会 や、日本ケミカルシューズ工業組合、灘五郷酒造組合をはじめとした地場産業の業界 団体では、地場産業の振興のためさまざまな取り組みを行っており、市としてもこれ らの取り組みを支援しているところである。 (財)神戸ファッション協会との取り組みでは、「神戸ファッションフェスティバル」 として、神戸の食文化をアピールする洋菓子や灘の酒を題材としたグルメイベントや 気軽に真珠に親しむことができるイベントの開催のほか、ファッションをテーマとし た観光振興を図る「神戸ファッションウィーク」などを、各業界と連携しながら開催 し、生活文化産業の消費拡大や都市イメージの向上を推進している。 また、ケミカルシューズに関しては、組合が実施する、ブランド力向上を図る「神 戸シューズ」の地域ブランド化を目指す取り組みへの支援のほか、需要開拓や消費拡 大PR、人材養成事業への支援を行っている。 清酒に関しては、 「北野工房のまち」におけるアンテナショップの運営を支援するほ か、業界の実施するイベントにも支援しており、業界の提唱する「日本酒で乾杯」運 動の推進を支援している。 さらに、 「神戸ブランド販売促進支援補助制度」を通じて、生活文化産業分野におけ る、既存製品や新製品の販売、業界のPRなど、積極的に製品の販売促進を図る業界 団体等の取り組みを支援しているところである。 神戸のファッション産業の魅力は神戸の観光施策にとっても大きな強みのひとつで ある。行政の運営する北野工房のまち・シューズプラザといった施設や灘の酒蔵は、 観光客に神戸のファッション産業の魅力にふれ親しんでいただく絶好の場であるとと ‐15‐ もに、神戸に人を引き寄せることのできる観光拠点のひとつでもあり、神戸のまちの 回遊性や連動性を高めるなどの仕掛けづくりをすすめながら、神戸のファッション産 業をひろく発信していきたい。 今後とも、これまでのファッション都市づくりの中で培われた都市イメージや関係 業界団体等とのネットワークといった資源を活かしながら、神戸ブランドとしての価 値を一層引き上げ、生活文化産業の活性化を図り、神戸経済の持続的な発展に寄与し ていきたい。 ファッション都市宣言 40 周年記念事業(10,000 千円) 神戸ファッションフェスティバルの開催(ファッションウィーク含む)(25,068 千円) 生活文化産業の育成(5,500 千円) ケミカルシューズ販路再構築事業(1,000 千円) ケミカルシューズ販路開拓総合支援事業(28,765 千円) 北野工房のまち「灘の酒蔵通り」運営支援事業)(5,000 千円) 「北野工房のまち」リニューアル事業(22,239 千円) 神戸ブランド販売促進支援補助制度(3,000 千円) ②公共事業予算の拡大及び地元優先発注の徹底と入札制度の改善 幅広い業種が関連し、地域経済に多大な影響力を持つ地元建設関連産業の振興・育 成の観点から、公共事業予算・事業量の拡大に努めるとともに、地元優先発注の徹底、 最低制限価格等の引き上げ、入札参加者の見積能力を反映した入札制度への見直し等 について特段の配慮をされたい。 神戸経済を支える地元産業の元気を確保し、雇用の確保を支援する観点から、市民 生活の安全・安心に直結し、地元産業が受注しやすい投資の確保については、特に意 を用いて予算編成を行っている。 平成25年度は、学校、図書館、体育館、市営住宅など市有建築物の耐震化や改修な どにより、市民の安全・安心をまもるとともに施設の長寿命化をはかるファシリティ マネジメントを本格的に推進し、市民のくらしに身近な投資を大幅に拡充している。 さらに、国の大型補正予算も活用し、道路・橋梁、公園などの補修・改修、耐震化等 を含めた市民のくらしに身近な投資のさらなる拡充と前倒しをはかるため、総額405億 円程度の事業費を計上した結果、平成25年度予算額は、平成24年度2月・3月補正予 算をあわせて、平成24年度の約1.7倍となる約813億円の規模を確保している。 今後とも、景気の動向など市内経済を取り巻く状況を十分に踏まえながら、特に、 市民福祉や市民の安全・安心に関する分野において、地元中小企業の受注しやすい生 活密着型投資を優先して切れ目なく実施することにより、地元中小企業の元気を確保 できるよう努めてまいりたい。 入札制度の件については、本市では、従来より地元企業への受注機会の拡大を図る ため、地元企業で施工可能なものはできる限り地元に発注するとともに、できる限り の分離・分割発注に努めてきた。 ‐16‐ また、大型工事についても可能な限り地元企業の受注機会の増大を図るため、①制限 付一般競争入札において、地元企業で施工可能なものは地元に限定、②地元企業のみ では困難な工事では特定JVを活用し、構成員のうち必ず1社以上を地元とするよう 条件設定する、など、様々な手段を講じているほか地元優先発注のための制度改善等 についても適時適切に行っている。 例えば、総合評価落札方式においては、平成 22 年1月より、地域貢献等の評価項目 として「地元下請率」を追加し、一次下請契約額に占める地元下請契約額の割合につ いてこれまで 70%以上の場合に加点を行っていたものを、昨年 10 月には、これを強 化する観点から、1次下請け契約額に占める地元下請契約額が 90%以上の場合に、さ らに加点を行うなど、地元企業を下請けとする業者が入札に有利となるよう入札制度 の改正を行っている。 さらに、従来から可能な限り下請や資材納入業者として地元企業を使うよう特段の 配慮をお願いしているほか、最低1社は地元企業の参加を条件としている特定JVの 適用範囲を平成 25 年4月から拡大するなど、地元企業育成に配慮した条件となるよう 努めている。 こうした取組みの結果、本市における平成 24 年度第3四半期までの工事の地元発注 率は、件数で約 85%、金額で約 73%となっており、概ね高い水準で推移しているもの と考えている。 地元発注率については、①政府調達に関する協定(WTO)に基づく一般競争入札 には法令上地域要件の制限を行うことができないこと、②特に専門性・技術性の高い 工事については、地元企業での施工が難しい場合もあることもあり、全ての工事を地 元企業へ発注することは困難ではあるが、今後ともできる限りの地元中小企業への受 注機会の拡大に努めたい。 それ以外の、入札制度の見直しについては、予定価格の事後公表を、予定価格5千 万円以上(税込)の格付登録5業種(土木一般・建築一般・電気一般・管一般・造園 一般)や単価契約工事の一部に導入し、入札参加者の見積り能力を反映した制度とす るよう見直しを行っているほか、ダンピング対策については、随時、制度の見直しを 行い、①最低制限価格の対象拡大や、②算出方法の見直しによる上限額の引き上げ、 ③低入札価格調査対象工事に失格基準価格を設定するなどの対応を行っているところ である。 これらの制度改正により、工事契約の平均落札率については、平成23年度は87.1% となっており、22年度の84.1%に比べ、3ポイント上昇している。 今後も低入札価格調査制度、最低制限価格制度の適切な運用と厳格な監督・検査に より契約の適正な履行を確保したい。 市民の暮らしに身近な投資予算(81,300,000 千円) ‐17‐ ③中小企業の産学共同による実証研究への支援 新興国企業との価格・技術競争が激化する中、中小企業が生き残るためには、付加 価値の向上や真似のできない緻密な技術力が必要となっている。 そのため、限られた時間と経営資源の中、中小企業が効率的に技術力を高め、早期 に事業化を果たすためには、大学や試験研究機関等との円滑な連携の下、技術の実用 化や性能評価等を速やかに実証することが、新製品・サービスの開発にとって重要で ある。 ついては、中小企業が産学共同の実証研究を積極的に活用できるよう支援策を講じ られたい。 神戸を拠点に活動している大学・高専や公的研究機関、産業支援機関、行政、さら には中小企業の共同グループなどがお互いに協力し、 「産学官民」の連携によって、神 戸のものづくりをさらに発展させることを目的に「神戸リエゾン・ネットワーク」を 構築し、産学連携に努めている。 具体的には、中小企業と研究機関の産学民と行政の連携による技術の高度化や企業 間ネットワークによる共同研究・開発の取り組みを支援するため、中小製造業が集積 する神戸市ものづくり復興工場において「神戸リエゾンラボ」を運営しており、大学 の研究者が中小企業と共同研究開発を行う「大学サテライト研究室」や3次元 CAD 等 を使った試作が可能な「試作開発支援センター」などを設けている。 さらに、(公財)新産業創造研究機構(NIRO)において、大手企業や大学の技術、 知的財産を地元中小企業に移転し、実用化を支援する取組みを行っており、これらの 支援を通じて、産学連携による新技術・新製品の研究開発や中小企業等への技術支援に 取り組んでいきたい。 神戸リエゾンネットワークの構築(3、100 千円) 技術移転事業の推進(10、000 千円) ‐18‐ 3.観光集客の強化 (1)六甲山系の観光振興策の強化 国立公園である六甲山系は、年齢・性別を問わず幅広い客層に利用される神戸を代 表する観光資源である。 ついては、より安全に六甲山系を周遊できるよう案内サインや登山道の整備等を進 めるとともに、集客による経済効果と環境保全のバランスに配慮した規制緩和に積極 的に取り組むなど、六甲山系の観光振興策の強化に努められたい。 六甲山系は、市街地から身近なエリアに位置しながらも、豊かな自然や夜景などの 眺望が楽しめる魅力的な山であり、毎日登山のように気軽な山歩きから本格的な山登 りまで、また山上には、六甲山地区に阪神電鉄グループを始め民間事業者のレジャー 施設が、摩耶山地区には六甲山牧場や森林植物園など多様な観光施設もあり、市民を はじめ観光客にさまざまな楽しみを提供してくれる神戸の貴重な財産である。 現在も山上施設の個々の取り組みに加え、山上事業者などで構成する六甲摩耶観光 推進協議会などの地域団体や地域住民と行政が一体となって、六甲山・摩耶山のもつ ポテンシャルを有効に活用した取り組みを進め、誘客に努めている。 引き続き、市民や民間事業者と協働しながら山上施設の魅力の向上を図るとともに、 エコロジーや健康、もの作りなどの体験学習や、安全かつ安心して楽しめる山歩きの コースづくりなど、さまざまな「六甲山・摩耶山での過ごし方」を提案していくため、 平成 24 年度からは、山上事業者や行政が連携しながら、エコツーリズムの山として更 なる観光誘客を図るため、エコツーリズムの推進拠点として六甲山上に新たに「六甲 (ろっこう)遊山(ゆうざん)案内処(あんないしょ)」を開設し、体験メニューの開発やコ ーディネートを行うとともに、来山者に観光イベントや自然、施設等さまざまな情報 をワンストップで提供する事業を展開することで「訪れたい山・訪れやすい山 六甲 摩耶」を目指して取り組んでいる。 また、平成 25 年3月 30 日から運行を再開した「まやビューライン」のリニューア ルを契機として、六甲山・摩耶山のさらなる魅力向上と活性化、および六甲・摩耶エ リアの観光入込客数の増加を目指し、市民・事業者など、できるだけ多くの方に参画 をいただき、幅広い視点や発想から、効果的で持続可能性のある活性化策を一つでも 多く創造していくため、新たな社会実験や活性化策の調査・検討・具体化等を進めて いる。この一環で、ケーブルの運行再開に合わせて摩耶山側の情報発信の拠点として 「摩耶ビューテラス702」を摩耶ロープウェー「星の駅」にオープンしたところで ある。さらに、市が維持管理する市内 66 コース、220kmのハイキングコースについ ても、国立公園等の法規制や、民有地との調整など、課題はあるが計画的に路面の確 保や道標・案内板等の整備を行っている。 新たな取組みとして、まやビューラインを挟んだ山麓と山上では、平成 24 年 10 月 から 11 月にかけて、JR・阪急等の最寄り駅から摩耶ケーブルをつなぐ「坂バス」と、 山上の「森バス」の 2 つのバス運行社会実験を行った。 「坂バス」については民間バス 事業者の自主採算による本格運行を平成 25 年4月下旬から開始するほか、「森バス」 については乗り継ぎの利便性を考慮して運行間隔等を見直し、6~7月と秋の年2回、 新たな形で社会実験を実施するとともに、山上の公共バス路線のあり方についても検 討を行う予定である。 また、摩耶山エリアの集客力アップのため、掬星台の案内サイン整備、摩耶山周辺 ‐19‐ ハイキングコースの道標や路面の補修維持、摩耶山史跡公園の整備に取り組むととも に、内外に発信できる掬星台エリアの再整備計画の検討などを進めていく予定にして いる。 さらに、灘区役所が昨年実施した「摩耶山魅力アップアイデア募集」の最優秀賞の 提案を具体化し、地元住民や事業者と協力して、平成 25 年 5 月に「シム記念・摩耶登 山マラソン」を開催する。 一方、六甲山・摩耶山のさらなる活性化や賑わい創出などに資する、事業者自らが 実施主体となって行う事業提案を募集した「六甲・摩耶活性化プロジェクト」では、 平成 24 年 10 月から始まった「六甲山大学」や、六甲・摩耶山上での超小型モビリテ ィの社会実験、山上での自転車ロードレースやJAZZの野外イベント、遊休保養所 を活用した宿泊・研修施設の企画など、全部で 12 の事業を候補事業として選定し、そ のうち4事業に対しては、平成 25 年3月 18 日に第1号の事業指定を行ったところで ある。事業指定した提案に対しては、平成 25 年度から3年間、当該企業・団体等との 協議により、市としてさまざまなサポートを提供しながら、実現をはかっていく。 また、平成 25 年度も引き続き、プロジェクトの候補事業を常時募集していくので、 貴会議所としても事業者への周知等をはじめ、ぜひ積極的なご支援をお願いしたい。 さらに、平成 24 年度に開催した「六甲・摩耶活性化委員会」を発展・改組し、事業 者や有識者、行政等で構成する「六甲・摩耶活性化コンソーシアム」を、貴会議所に もご参画いただき平成 25 年 4 月から発足したところである。 今後、メンバー同士の情報の共有や横のつながりを強化するとともに、より効果的 で持続性のある活性化策を一つでも多く創造することを目指し、できるだけ多くの知 恵や力を結集して、六甲山・摩耶山全体の活性化に向けた協働の取り組みを継続的に 実践していくので、引き続きご支援、ご協力をお願いしたい。 六甲・摩耶観光の振興(緊急雇用創出事業および区局連携事業含む)(20,195 千円) 六甲山・摩耶山のにぎわい向上(470,487 千円) ‐20‐ (2)夜間観光の推進並びに観光アクセスの整備 六甲山からの夜景観賞やナイトクルーズ、グルメ探索、ウィンドウショッピングな ど、神戸らしい魅力ある夜間観光を推進することは、滞在時間の延長や宿泊の増加な ど経済効果の向上に通じる重要な戦略となる。 ついては、夜景観賞やグルメをセットにした滞在型観光事業を積極的に支援すると ともに、多様で豊かな神戸の食文化の育成と、顕彰・発信を行うシステムを整備され たい。また、観光客が安心して夜景スポット等を回遊できるバスコースの設定などア クセスの整備促進にも取り組まれたい。 本市では、神戸観光プランでも「山・まち・海の観光資源を『夜景・灯り』で捉え た観光の推進」として、夜景・灯り自体の魅力を高めるとともに、夜景を楽しむため の環境や機会づくりをすすめていくことになっており、これまでも、ハード面の整備 として、①海洋博物館、錨山、明石海峡大橋など、神戸のランドマークとなる資源の 電飾及びポートタワーのリニューアル、②夜景を見るスポットとして、掬星台、ビー ナスブリッジ、ハーバーランド、ポーアイしおさい公園の整備など夜景の演出に取り 組んできている。 また、神戸の夜景を楽しんでいただくための仕掛けづくりとして、「山」 「街」「海」 の3つのエリアから神戸ならではの夜景を回遊して楽しんでいただくため、スタンプ ラリーや QR ラリーなどの実施(平成 20 年度~22 年度)や、女性にも人気があるス イーツと夜景を組み合わせた「夜景 sweets@KOBE キャンペーン」の展開(平成 23 年 10 月1日~23 年 12 月 31 日)するとともに、12 月に開催される「神戸ルミナリエ」 を中心として、北野クリスマスストリートや南京町ランターンフェアなど、まちをイ ルミネーションで彩る「神戸ロマンチックフェア」や、フルーツ・フラワーパークに おける関西最大級の LED イルミネーションイベント「神戸イルミナージュ 2012」を 実施(平成 24 年 11 月1日~25 年2月 17 日)してきた。 さらに、市街地中心部からビーナスブリッジと神戸ハーバーランドをバスで巡り神 戸の夜景を鑑賞してもらう夜景バスツアーの実施(平成 24 年4月~25 年3月)など に取り組み、好評を得たところである。 平成 25 年度は、引き続き市街地中心部から海エリアや山エリアの夜景鑑賞スポット を巡るバスの運行など、夜景という観光資源を最大限活用できるような取り組みを充 実させることで、滞在型観光をすすめているところである。 観光施設や飲食・物販店などともタイアップして、神戸での夜の楽しみ方のバリエ ーションを増やしていくことが、夜間の滞在時間の延長に効果的であるため、民間事 業者へも協力を求めていきたい。 夜景観光の振興(7,000 千円) ‐21‐ (3)「多機能ポータルサイト」の開設による観光情報の一元化と発信力の強化 スマートフォンの普及や公衆無線 LAN の整備など情報インフラの環境整備が急速 に進む中、様々な団体や企業によるランダムな観光情報を一元化し、観光客が最短か つ最適に、必要とする観光情報を収集できるよう観光情報のワンストップを実現する 新たな多機能ポータルサイトを開設されたい。 観光情報を収集する手段として、インターネットはもはや不可欠なものとなってお り、むしろインターネットを活用したSNSでの口コミやスマートフォンでの街中で の情報収集に、どう対応していくかが重要となっている。 「Feel KOBE」のwebサイトは、平成22年度に全面リニューアルを実施し、閲覧す る時間帯や季節によって背景の映像を変化させたり、言語(英・韓・中(簡・繁))毎 に掲載情報を工夫するなどしている。また、平成23年3月からは、若い女性の目線か ら市内大小さまざまなイベントや個店情報、神戸の「人」の紹介等をしている観光情 報サイト「KOBE funfan.com」も新設している。また、神戸の親善大使である「スマ イル神戸」のブログを掲載しているほか、市内観光施設が発信しているブログを集め、 「神戸ブログ」として紹介している。 さらに、平成24年度には、スマートフォンの急速な普及により情報収集の方法が変 化してきていることへの対応と、神戸の観光客は、神戸に到着してから情報収集する 傾向が強いことから、現地で情報収集がしやすいよう「Feel KOBE」スマートフォン 対応ページを開設した。グルメ、ショッピング、観光、宿泊施設を、エリアや利用シ ーンに合わせて、簡単に手早く検索できるほか、イベント情報やガイドマップなど観 光客に人気の高い情報に現地で素早くアクセスしていただけるように対応した。 今後は、FacebookやツイッターなどSNSの活用や平成24年度に国の受入戦略拠点 事業として実施した新たなWEBサイト構築のノウハウを活かしながら、より効果的 な情報発信を工夫していきたい。 神戸公式観光サイト更新及び維持管理(3,780 千円) ‐22‐ (4)観光資源を最大限に活かす観光プロモーションの創出並びに人材の育成 「KOBE de 清盛」推進協議会が実施した事業を検証し、兵庫津周辺の活性化や歴史 的観光資源の開拓等を図る一方、多様な観光客のニーズに応じた観光コースの充実や 情報発信の強化など、ポスト清盛に向けた新たな観光プロモーションの創出に取り組 まれたい。 また、その新たなプロモーション活動を推進するに当たり、外部からのコーディネ ーター招聘や専門スタッフの強化など、人材育成策も検討されたい。 平成 24 年度の大河ドラマ「平清盛」の放送を契機とした観光キャンペーン「KOB E de 清盛 2012」においては、ドラマ館・歴史館に両館合計で約 57 万人の方にお 越しいただいたほか、周辺の清盛ゆかりの史跡にも多くの人が訪れた。また、従来の 神戸観光が若年層であったのに対し、今回は 40 代以上の中高年層の比率が高く、当初 の狙いでもあった「新たな観光客層」を獲得することができた。 一方、市民においては、清盛と神戸の関わりについて認識が深まったほか、地域にお いても「平野商店街」や「よみがえる兵庫津連絡協議会」など「清盛」に関する自主 的な取り組みが促進され、事業者においては、宿泊プランの作成、公式ロゴマークを 活用したお土産づくり、企画乗車券の発売、ラッピングトレインなど様々な取り組み が展開された。 これらの取り組みにより、本事業による県内への経済波及効果は約 193 億円に達した。 今後の神戸の観光においては、本事業の成果を踏まえ、下記の取り組みを行っていく。 (1)ドラマ館・歴史館展示物の2次利用 ドラマ館・歴史館の展示物については、神戸の歴史的な魅力を継続的に発信し、 観光資源として活用するとともに、市民の「神戸への歴史」への関心を高め、郷土 愛の醸成につなげていくため、今後も引き続き展示を行っていく。特に歴史館の展 示物であった清盛関連パネル等については、清盛ゆかりの史跡が点在する兵庫津エ リアを巡るまちあるきコースに組み込み、観光資源として活用するため、地元の運 営による新たな観光拠点「兵庫津歴史館 岡方倶楽部」を平成 25 年4月に開設し、 歴史情報の発信や観光客のおもてなし等に取り組んでいく。 (2)「おとな旅・神戸」の開催 「KOBE de 清盛2012」をきっかけに神戸を訪れたアクティブシニア層 や歴史好きなどの新たな観光客層に、リピーターとして引き続き神戸を訪れてもら うため、「神戸ならではの」「特別感のある」まち歩きや体験プログラムを 50 プロ グラム程度企画し、イベントとして実施する。 一般向けのプロモーションとしては、就航都市等で開催されるイベント会場や、鉄 道主要駅で神戸市内のさまざまな観光資源や観光スポットを幅広くPRするとともに、 それにあわせた親善大使によるメディアの訪問のほか、取材費助成を活用したテレビ 放映や雑誌への記事掲載、神戸公式観光サイト「Feel KOBE」による、シーズンや時事 に対応した特集や、物販・飲食を含む個店情報など、利用者のニーズに対応した情報 発信の充実などに取り組んでいる。 一方、旅行代理店へのプロモーションとしては、大規模イベントの開催時期や新規 施設の開設予定など、中長期の神戸の新しい動きや情報を提供し商品造成を働きかけ ‐23‐ ている。 今後のプロモーションとしては、九州新幹線が好調な九州エリアや首都圏等のエリ アを引き続き重点的なターゲットとして、JR 西日本と連携した九州新幹線沿線での PR のほか、マスコミ・旅行会社の招聘など効果的なプロモーションに努めていく。 「おとな旅・神戸」の実施(42,000 千円) 全国主要都市での観光プロモーションの展開(2,125 千円) メディアを活用した情報発信(1,700 千円) 広域観光の推進(2,500 千円) ‐24‐ (5)大型クルーズ客船やインセンティブツアーなどインバウンド対策の強化 地元経済の活性化にとってインバウンド誘致が有力な施策として期待される中、平 成 24 年度には「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」をはじめ大型クルーズ船が寄港し、 多くの外国人観光者が地元神戸での観光・ショッピングを満喫した。 ついては、次年度以降も継続的な客船誘致を図るとともに、地元への経済効果の拡 大に一層配慮されたい。また、消費意欲が旺盛な富裕層の誘客やインセンティブツア ーへの補助など戦略的に取り組む体制を整備されたい。 平成 24 年の神戸港への客船入港隻数は、阪神・淡路大震災後で最多となる 110 隻と なり、このうち外国籍客船の入港は 22 隻であった。特に、7月から9月にかけ、神戸 港にとって過去最大となる「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」が計4回入港し、いず れも 3,000 名を超える乗船客が神戸での観光やショッピングを楽しんだ。 平成 25 年度は、神戸港をホームポートとして日本発着クルーズを実施する「サン・ プリンセス」や、日本初寄港となる「クイーン・エリザベス」など、魅力的な外国客 船の入港が多数予定されていることから、受入態勢の強化・充実を図るとともに、神 戸港の玄関口である神戸ポートターミナルについても、さらに魅力的なターミナルと なるよう、全面的な改修工事を実施する。 クルーズ客船は年々大型化が進んでおり、多くの乗船客による消費活動がもたらす 経済効果が期待されることから、今後も寄港地としての魅力向上やおもてなしの強化 を図りながら、大型クルーズ客船の誘致に積極的に取り組んでまいりたい。 また、 「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」入港の機会に、多くの中国人観光客に都心 の商店街を訪れてもらい、商店街の活性化を図るため、商業者が作成する商店街マッ プの中国語版を作成するとともに、三宮や元町などの商業者におもてなし研修を実施 することによって商店街でのおもてなしを向上し、外国人観光客の受け入れ体制を整 える「外国人観光客おもてなし事業」を実施した。 具体的には、横断幕・バナーの掲出による中国人観光客歓迎ムードの演出や、コン シェルジュによる、中国語版商店街マップを用いた都心商店街の案内、などを当日実 施し、都心商店街での買い物・観光のお手伝いを行った。 さらに、おもてなしの観点から、中国語・英語対応が可能な観光案内ボランティア を配置し、観光施設の入場料等がお得になるウェルカムクーポン等を積極的に配布し、 スムーズな神戸観光・ショッピングへの誘導をはかったほか、シャトルバスのバス停 での日差しよけのテントの設置など、旅行者目線でのよりきめ細かい対応を行った。 今後も、様々な機会をとらえ、都心商店街などと連携を図りながら、外国人観光客 の誘客を図り、商店街の活性化や都心での消費拡大、観光客の満足度向上につなげて いきたい。 客船誘致(30,197 千円) 神戸市客船誘致協議会分担金(1,300 千円) 神戸ポートターミナル改修(1,144,000 千円) ‐25‐ 4.魅力ある街並み整備 (1)「デザイン都市・神戸」の玄関口に相応しい三ノ宮駅周辺地区の整備 京阪神の主要駅がリニューアルされる中、神戸の都市競争力を高めるために三ノ宮 駅周辺地区の再開発の早期実現は喫緊の課題である。 ついては、地元経済界や周辺地区内の関係事業者の意見を汲み上げ、デザイン都 市・神戸の玄関口として「景観」と周辺施設への「回遊機能」に優れた再開発となる よう鉄道事業者等に積極的に働きかけ、スピード感をもって推進されたい。 また、神戸の玄関口に相応しく、各交通機関の駅名を三宮(三ノ宮)から「神戸・ 三宮」に変更・統一するよう各方面へのプロモーションを実行されたい。 三宮駅周辺は、 「デザイン都市・神戸」の玄関口であり、神戸市が都市間競争に打ち 勝ち、選ばれる都市であり続けるために、快適で魅力的な都市空間を整備することが 重要となる。 三宮東地域の旭通4丁目地区では、支援してきた民間施行の市街地再開発事業が平 成 25 年3月に竣工した。この再開発ビルの完成により、神戸のシンボル的な存在とし て高さ 190mの都市型住宅と多様な商業施設が配置され、また、歩行者が快適で安全に 利用できる広場や周辺歩道が整備され、今後、当地域がさらに賑わい、周辺の回遊性 が一層向上することを期待している。 阪神三宮駅では、平成 25 年3月 20 日に駅改良事業が完了し、新たに東改札口が整 備されたのにあわせて、ミント神戸とさんちかをつなぐ地下通路が利用できるように なり、また道路を南北及び東西に横断する歩行者デッキ通路とエレベーターも供用開 始された。さらに、再整備された西改札口周辺では、西改札口周辺の天井、壁面など の改修と案内サインの整備を引き続き行うなど、魅力的な地下空間の創出をはかって いきたい。 JR三ノ宮駅では、駅前の限られた空間を有効活用するため、地下・地上・デッキ の3層レベルの公共空間と新たな駅ビルを一体的に計画する必要がある。このため、 交通結節機能の強化はもとより、にぎわい・景観・防災等の視点から、JR西日本と 合同でシンボリックな新駅ビル及び駅前広場のあり方について調査・検討を進めてお り、今年度からJR西日本と『JR三ノ宮駅前再整備事業検討会』を開催し、神戸の 玄関口にふさわしい駅前空間計画を早急にとりまとめていきたいと考えている。 また、鉄道事業者だけでなく周辺の民間事業者等に積極的に働きかけ、ビルの更新 に合わせて、官民連携で回遊機能に優れた歩行者動線のネットワークの整備を進めて いきたいと考えている。 駅名の変更については、神戸の中心地である三宮を広く知らしめるひとつのアイデ アであると考えるが、鉄道が開業した明治時代からの歴史があり、定着された名称で あること、神戸駅という名称が既にあることを勘案すると、慎重に扱う必要があると 考えている。 景観形成に関しては、 「デザイン都市・神戸」の玄関口に相応しい良好なまちなみを 誘導し、質の高い景観形成を図るため、駅周辺の5つのまちづくり団体が主体となり、 景観形成のあり方や屋外広告物に関する新たな自主ルールを検討してきた。その結果、 平成 23 年度末に自主ルールとして「三宮駅前屋外広告物ガイドライン」を策定すると ともに、地域主体の運用組織「三宮駅前景観形成連絡協議会」を設立しており、平成 24 年度からはガイドラインの運用により良好な景観誘導を図っている。 ‐26‐ 今後も、 「デザイン都市・神戸」の玄関口にふさわしく、誰もがわかりやすく、人に やさしい便利で快適な都市空間となるよう、引き続き努力していきたい。 阪神三宮駅西改札口周辺地下空間整備事業(50,081 千円) JR三ノ宮駅前再整備事業(13,000 千円) ‐27‐ (2)回遊性の向上に資する景観・街路等の整備 神戸らしい景観を来街者・観光客等が眺望できるスポットや、回遊したいと思わせ るデザイン性に富んだ空間・街路の整備に努めるとともに、周辺観光施設や店舗など へ円滑に誘引するマップや案内標識の設置等に取り組まれたい。特に、三宮から、デ ザイン・クリエイティブセンター神戸等に繋がる南北動線、メリケンパークやハーバ ーランドに至る東西動線の整備を図るなど、都心ウォーターフロントに通じる回遊性 の改善に取り組まれたい。 また、街の賑わいづくりを図る「ランウェイ」「街バル」など地域全体を舞台とす る商業イベントについては、他都市の事例を参考として、道路使用の規制緩和に取り 組むとともに、事業実施に係る助成制度の拡充にも努められたい。 神戸が、今後も都市間競争に負けない選ばれる都市であり続けるためには、ハーバ ーランドからHAT神戸に至る都心・ウォーターフロントを、「デザイン都市・神戸」 を具現化するリーディングエリアとして新たな魅力と活力にあふれる地域にしていく 必要がある。 そこで、平成 22 年7月に地元のまちづくり団体や臨海部の事業者、関係官庁などか らなる「『港都 神戸』グランドデザイン検討委員会」を立ち上げ、平成 23 年3月に「港 都 神戸」グランドデザインを策定した。 グランドデザインでは、歩行者回遊ネットワークの主な動線を、南北方向は、主要 な鉄道駅からウォーターフロントへのアクセス道路や眺望路等となる主要な道路、東 西方向は、商店街などの歩行者専用道路、HAT 神戸の灘浜脇浜線、新港突堤西地区の眺 望路など各ゾーンのメインストリート、として位置づけている。 市民や来街者などあらゆる人が歩いて楽しいと感じる都心・ウォーターフロントを 形成し、都心とウォーターフロントの空間的な一体感や連続性の向上を図るため、現 在関係各局と連携して検討を進めており、具体的には下記のとおり取り組みを行う。 (1)眺望・景観 グランドデザインでは、昼間の眺望点として8箇所、夜間景観も楽しむことがで きる眺望点として 18 箇所をそれぞれ位置づけている。 また、平成 20 年2月に「神戸らしい眺望景観 50 選、10 選」を、市民公募をもと に選定し、平成 24 年4月に「神戸らしい眺望景観 50 選、10 選」の PR マップを発行 している。さらに平成 24 年 12 月に「都心夜景 10 選」を選定し、平成 25 年 4 月に PR マップを発行している。 (2)回遊性 交通の面では、公共交通を中心に、自動車、歩行者、自転車などがバランス良く 組み合わされた「ひと」中心の交通環境の実現に向け、平成 23 年度には、取り組み の方向性や、展開すべき施策等を盛り込んだ「神戸市総合交通計画(都心・ウォー ターフロント)案」のとりまとめを行った。 この計画では、都心・ウォーターフロントの回遊性向上のためには、駅とまちな かのつながりを高めることや、歩行者動線の強化、また案内サインの充実等の様々 な施策を総合的・戦略的に展開することが重要であると示している。 めざす交通環境の実現に向けて、共に取り組みを進めていくため、平成 24 年度に 地元団体、交通事業者、学識経験者からなる都心・ウォーターフロント総合交通推 ‐28‐ 進協議会を設置し、継続的な議論・検討を進めている。 平成 24 年度からの協議会では、 ①まちのシンボルにもなる新たな回遊拠点の創出、 ②バス等を活用したウォーターフロントの回遊交通の充実等に関する意見交換を行 っている。特に、新たな回遊拠点の創出については、鯉川筋の元町通 1 丁目交差点 周辺を先導的に歩行空間の再構築を行なうべき箇所として、今年度、将来の姿を見 据えた交通社会実験を地域や関係機関との連携・調整の上で実施する。 三宮駅周辺地区では、既に進行している具体的施策として、いくつか例を挙げる と、まず、阪神三宮駅周辺において、駅施設の利用円滑化と交通結節機能の高度化 を図るため、平成 24 年3月 20 日に阪神三宮駅東改札口と地下通路が、平成 24 年7 月 30 日にはミント神戸から中央幹線を横断するデッキが供用開始しており、更に、 平成 25 年3月 20 日、阪神三宮駅西改札口がリニューアルされたところである。 歩行者動線の強化としては、南北方向について、明石町筋が歩道整備されており、 今後は、葺合南 54 号線(フラワーロードの一本東側であり、そごうの東側やジョー シン前を通る南北道路)の個別計画を作成し、整備を推進していく。 また、フラワーロードにおいて、樹木のライトアップなどを行うことにより夜間 景観の魅力を創出し、滞在型観光の促進をはかるとともに、三宮からデザイン・ク リエイティブセンター神戸へのアクセスロードとして、沿道に設置している既存の サイン等に当該施設の内容を付加したところである。 東西方向については、ハーバーランドから HAT 神戸にいたるウォーターフロント の回遊性向上をはかるため、JR 貨物神戸港駅跡地に自転車歩行車道と公園を一体と した緑道を整備するほか、磯上公園の南側を東西に通る磯辺線において、自転車レ ーンの整備を行う。 さらに、歩行者系案内サインの整備として、既存のサインをユニバーサルデザイ ンに対応した構造・デザインに、順次置き換えており、都心の玄関口である三宮・ 元町・神戸駅前での地域サイン(鉄道駅や区役所等の地域拠点に設置し、案内マッ プと併設し、観光案内に資するもの)の改修や回遊性向上のためのプロムナードサ イン(主要な交差点において設置し、周辺地図や道路名称、主要施設の方向や距離 等を表示するもの)の増設は平成 22 年度までに完了し、現在は、既存サインの改修 を行っている。 商業イベント時の道路使用の規制緩和の件については、道路は、公共の財産であり、 また、道路上へ物件を設置すると一般交通の支障となるおそれがあるため、道路法で 占用できるものは限定列挙されている。 そのような中、道路を多様な目的に有効利用したいという社会ニーズの高まりとと もに、国土交通省の規制緩和の一環としてオープンカフェなどが認められてきた。 本市では、国のオープンカフェなどの実施にあたってのガイドラインに沿って①公 共性・公益性に配慮し、特定の者の利害とならないようにする。②住民や沿道店舗、 道路利用者などの地域全体の合意形成がとれる。③広い歩道や交通規制のかかってい る商店街など周辺の交通に大きな影響がない場所である。などの条件が整うところで あれば、地域において道路の管理と活用ルールについて協定を締結し、オープンカフ ェの道路活用を認めてきた。 要望にある「街バル」については、既存の管理活用協定で実施しているオープンカ フェで対応できるものではないかと考えられる。また、 「ランウェイ」については、道 ‐29‐ 路交通法における道路使用許可のみで実施可能な場合もあると考えられる。また、イ ベントに対する助成についても商店街等が主催者となって開催する場合には、事業費 補助や後援を行うケースも考えられる。 「港都 神戸」グランドデザインの推進(区局連携事業含む)(265,300 千円) 夜間景観形成の推進について(3,390 千円) フラワーロード 光のミュージアム(61,100 千円) 神戸都心部の活性化(583,342 千円) 磯辺線自転車レーンの整備(35,700 千円) ‐30‐ (3)景観形成を促進する規制誘導基準の策定並びに助成 三ノ宮駅周辺地区の屋外広告物を含めた景観形成における規制誘導基準の具体化 や運用強化に努めるとともに、景観形成や機能性に優れた案内サインや照明設備など の新増設に取り組む企業に対して財政面からバックアップする景観形成助成等の支 援制度を一層強化されたい。 三宮駅前においては、平成 22 年度より、駅周辺の5つのまちづくり団体が主体とな り、景観形成のあり方や屋外広告物に関する新たな自主ルールを検討してきた。その 結果、平成23年度末に自主ルールとして「三宮駅前屋外広告物ガイドライン」を策 定するとともに、地域主体の運用組織「三宮駅前景観形成連絡協議会」を設立してお り、平成 24 年度からガイドラインの運用により良好な景観誘導を図っている。 また、神戸市では、魅力ある景観を、まもり、そだて、つくる取り組みの一つとし て、良好な景観の形成に貢献する建築物、外構、屋外広告物の整備などを行う場合に、 予算の範囲内で整備費等の一部を助成している。 具体的には、景観計画区域、都市景観形成地域、景観形成市民協定締結区域、眺望 景観形成区域周辺などを対象として、①建築物等の外観意匠の高質化、②案内サイン、 モニュメント、ライトアップ設備など屋外空間の高質な修景、③屋外広告物の外観意 匠の整理、高質化などに関する行為に対して助成している。助成率は、原則として、 補助対象事業費の1/3以下で、限度額が設定されている。 さらに、平成 25 年度より、夜間景観形成支援制度を創設した。平成 23 年度に策定 した「夜間景観形成実施計画」を着実に実行するため、都心・ウォーターフロントエ リアを対象として、実施計画に沿った、照明アドバイザー派遣や整備等へ予算の範囲 内で助成していく。 この助成制度を積極的に活用していただき、景観形成を促進し、神戸のまちの魅力 向上につなげていきたいと考えている。 三宮駅前の景観形成(1,740 千円) ‐31‐ 5.交通インフラの整備促進と広域ネットワーク機能の強化 (1)関西3空港の一体運用に向けた神戸空港の民営化・規制緩和 関西国際空港と大阪国際空港の経営統合がなされた今、平成 26 年度までのコンセ ッション実現に向け新会社の企業価値を着実に高めるためには、神戸空港を含めた関 西3空港の一体運用が不可欠である。 ついては、従来の運営方針を変更し、今年3月に閣議決定された「民間の能力を活 用した国管理空港等の運営等に関する法律案」に基づき、一体化のための条件とも言 うべき神戸空港の民営化に向けた取り組みを進められたい。 また、そうした考え方を提起する一方で、民営化・一体運営が実現するまでの間、 航空利用者の利便性向上と関西全体の航空需要拡大とともに神戸空港の価値を検証 するためにも、地元官民連携のもと、運用時間及び発着枠等の規制緩和を国に対し強 力に働きかけられたい。 関西全体の航空需要をより一層喚起するためには、①利用者の立場にたった利便 性の向上の観点、②関西経済の発展の観点から、関西3空港それぞれの空港の能力 を最大限活用して最適運用を目指す視点が何よりも重要である。 このような観点から、経営統合された関空・伊丹両空港を活用することはもちろ ん、神戸空港についても、運用時間の延長や発着枠の拡大などの機能充実・規制緩 和の実現により、さらなる活用を図ることが関西全体の発展につながるものである。 新関空会社の安藤社長も、3空港を一体運用することが重要であるとのお話をい ただいており、このような認識をもっていただくことは、大変重要である。 関空・伊丹の事業運営権の売却については、新関空会社において売却に向けた準備 が進められていると聞いており、新関空会社が今後どうなっていくのか、関心をも ってみていく必要があると考えている。 一方、神戸空港のような地方管理空港については、ご指摘の法案が成立しなけれ ば、民間事業者が空港を運営することができないが、この法案は平成 25 年 4 月 5 日 に閣議決定され、通常国会に提出されたところである。 引き続き、新関空会社による事業運営権の売却(コンセッション)の見通しや、 法律の成立の行方等を注視していかなければならないと考えている。 これまでも、①運用時間の延長及び発着枠の拡大、②国際チャーター便運航規制 の緩和、③国際便(ビジネスジェット・チャーター便)の利用促進のためのCIQ 体制の充実及び関係省庁の連携について、兵庫県、貴会議所とともに要望を重ねて きたところである。 本市としては、まずは利用者や航空会社からも強い要望をいただいている、運用 時間の延長及び発着枠の拡大を、最優先に実現することが重要であると考えている。 神戸空港の機能充実・規制緩和の実現に向けて、国及び関係自治体・関係団体に 対して、あらゆる機会を通じて強く訴え理解を求めていきたいと考えており、引き 続き貴会議所のご支援をお願いしたい。 神戸空港事業の推進(3,623,023 千円) ‐32‐ (2)大阪湾岸道路西伸部の整備促進 大阪湾岸道路は現在、六甲アイランド以西が未整備のため、周辺道路に慢性的な渋 滞を招き、物流等地域の経済活動に著しい損失を及ぼしているほか、国道 43 号線沿 道の大気汚染の要因ともなっている。渋滞緩和とともに、国際コンテナ戦略港湾・阪 神港と神戸空港、関西国際空港、さらには国内物流拠点とのネットワーク拡充を図る ためにも、西伸部の早期事業化は極めて重要かつ緊急性の高い交通インフラである。 名神湾岸連絡線が計画段階調査となり、同連絡線の効果を最大限引き出すためにも 大阪湾岸道路西伸部の早期着工・完成に向け、これまで以上に積極的に尽力願いたい。 大阪湾岸道路は、全長約 80 ㎞のうち六甲アイランド以西の西伸部 21 ㎞が未整備の 状況で、いわゆるミッシングリンクとなっており、その解消を図ることにより、阪神 高速道路3号神戸線の慢性的な渋滞解消、国際コンテナ戦略港湾(阪神港)の国際競 争力の強化、神戸空港の利便性向上、神戸クラスター(神戸医療産業都市)の推進、 代替機能の確保による災害に強い高速道路ネットワークの構築など、本市だけでなく 関西経済の再生・発展にとっても必要な都市基盤である。 このため、平成 21 年3月の六甲アイランド~駒ヶ林南間の都市計画決定後、早期 事業化に向け、事業予定者である国が中心となって関係機関との協議・調整が進めら れてきたが、未だ事業化には至っていない状況である。 一方、国においては、今後の高速道路の整備、管理、料金、負担のあり方について 幅広く検討するため、平成 23 年3月に「高速道路のあり方検討有識者委員会」が設 置され、平成 23 年 12 月には、「今後の高速道路のあり方 中間とりまとめ」が発表 された。この中では、①大都市におけるネットワーク機能の緊急強化、②国土を保全 するネットワーク機能の早期確保、③大都市部のミッシングリンク解消は有料整備を 基本とし、不足分は事業主体を明確にしつつ税負担も活用することなどについての提 言があった。 また、国の諮問機関である社会資本整備審議会に新たに「国土幹線道路部会」が設 立され、平成 24 年 11 月 20 日から部会が開催されている。この部会では、道路ネッ トワークのあり方をはじめ、料金制度や維持更新等について諮問がなされており、今 後の高速道路施策の方向性について議論されているところである。 今後も、国土幹線道路部会等での議論を注視しながら、未整備区間の早期事業化に 向けて、引き続き、国・県などの関係機関との協議・調整を実施していきたい。 ‐33‐
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