最終号(2007年8月15日発行) 発行 : 利尻海鳥研究室 利尻町沓形字新湊182 利尻海鳥研究室新聞 ウミネコ巣立ち 調査終了 お世話になりました!! 春、まだ雪の残る利尻に飛来したウミネコ。夏も終わりかけるこの時期、子育てを無事に終えた親鳥 は、冬を越すためヒナと共に南へと旅立ちます。海鳥研究室の調査活動も終了し、私たちもウミネコ と共に島を離れました。これまで研究室をあたたかく見守っていただき、ありがとうございました。 命あふれる営巣地 その陰で… 高い水温 子育てには(>_<)? 子育ても終ろうか 暖冬の影響を受けてか、4 という 7 月、すくす ~7月まで、利尻島周辺の海 くと成長したヒナと 水温は例年より少し高めの状 親鳥たちでごったが 態が続きました。そのせいか、 えした営巣地は、ま ウミネコが持ち帰ってくる魚 さに命にあふれてい はとても大きく(写真:大きな魚をヒナに与える親鳥)、海の中 ます(写真①) 。しか には大きな魚が豊富にいたのではないかと思われます。 し、調査のために営巣地に一歩足を踏み入れると、た しかし、ヒナの成長や子育ての成功率はそれほど良くは くさんの卵殻(同②)、ヒナ(同③)や親鳥(同④) なく、ウミネコにとっては水温が高いことが必ずしも良 の死体を目にします。卵は約3割がカ いわけではないことがわかりました。小さな魚の方が親 ラスに食べられてしまいます。ヒナは 鳥にとってつかまえやすかったり、ヒナにとって食べや オオセグロカモメ(同⑤)に食べられ すかったりするのかもしれません。 (北大・風間) ① ② てしまうほか、餓え、病気、 親鳥同士の縄張り争いに 世界最大級営巣地が抱える問題 ③ 巻き込まれて約半分が死 現在利尻島には 9 万羽近くのウミネコが飛来している んでしまいます。その結 と推定されています。この数は、カモメの営巣地として 果、産まれた卵のうち、お は世界でも最大規模で、利尻のウミネコ営巣地は、世界 よそ 4 割程度しか巣立ちをむかえられません。親鳥自 に誇れる自然豊かな利尻島の象徴的存在だとも言えま 身もハヤブサ(同⑥)など す。しかしながら、営巣地は現在天然記念物などの指定 の捕食者に常に狙われてい を受けているわけではなく、柵もなければ管理人が常駐 ます。一見すると多くの命 しているわけでもありません。そのため、写真撮影のた にあふれる営巣地も、自然 めの踏み込みがあとを絶たず、ウミネコの子育てに深刻 の厳しさの中にあって、実 な影響を及ぼしています。また、ウミネコが増えすぎる は多くの犠牲の上に存在し ことで、昆布への糞害や飛行機の運航障害がますます増 ているのです。ウミネコは えることも懸念されています。私たちは来年度以降も調 最長で 30 年以上生きると言 査を続け、数の増減を把握し、彼らの生態を解明するこ われています。しかし、産 とで、何とかウミネコと人間とが共存できる道を探って いきたいと考えています。 ④ 尾羽 ③ ⑤ まれてからわずか 60 日足ら ずの間に、その半分以上が死んでしまうのです。無 ウミネコが、利尻山ととも 事に大人になり利尻島に子育てに帰っ に、島民の方々にとって真 てくるウミネコたちは、まさに奇跡の ⑥ に誇れる存在となる日が 存在と言えるのではないでしょうか。 来るよう、静かに見守りた (北大・風間) いと思います。 (北大・風間) 利尻海鳥研究室は北海道大学、名城大学(愛知) 、帝京科学大学(山梨)の教官、学生が参加しています。私達の研究成果は海鳥の保護管理に役立てられます。
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