「肺腺癌の発生におけるテロメア長の研究」のお知らせとお願い 現在、肺癌は健康診断や人間ドック等で早期発見に努めているものの、その死亡者数は 右肩上がりで、男女ともに部位別がん死亡数第 1 位であります(2012 年、国立がん研究センタ ーがん対策情報センター) 。 肺癌にはいくつか種類がありますが、その一つ、腺癌は肺癌の中で最も頻度が高い癌腫 で(以下、肺腺癌) 、女性に多く、喫煙歴のない方にも発症しやすい癌です。 癌研究の推進や医学の目覚ましい発展があるにもかかわらず、肺腺癌が発生するまでの 一連の過程は、未だに解明されておらず、その発生源となる領域や原因細胞も同定されて おりません。 細胞の核の中にある染色体の末端に、細胞分裂の回数制限や細胞老化、染色体構造の安 定性にかかわるテロメアと呼ばれる部位があります。通常、細胞が分裂するごとにこのテ ロメアの長さ(以下テロメア長)はある長さまで徐々に短くなっていくのですが、何らか の原因でテロメア長に異常な短縮が生じると、染色体構造が不安定になり、遺伝子の変異 が起きやすくなり、癌の発生源となりうることが知られています。固形がんの一部では、 前癌病変の時点でテロメア長に有意な変化がみられたという報告もあります。 しかしながら、肺においては、肺腺癌の発生過程におけるテロメア長の変化は証明され ておらず、肺を構成する種々の細胞においてすら、そのテロメア長について十分なデータ がないのが現状であります。 私たちの研究は、正常末梢肺、及び前癌病変と考えられている atypical adenomatous hyperplasia(AAH)や肺腺癌の構成細胞において、テロメア長をそれぞれ計測し、肺腺癌の 発生おけるテロメア長の変化について研究を行う予定です。 本研究は、当院呼吸器外科にて、1983 年 1 月から 2014 年 8 月までの間に、肺切除術を 受けられ、切除肺に AAH が認められた方、および 2000 年 1 月から 2014 年 8 月までの間 に、肺腺癌及び転移性肺腫瘍で手術を受けられた方の組織標本及び診療情報を使用します。 組織標本上で、細胞の染色体にあるテロメアの領域に蛍光物質を付加し(Q-FISH 法)、その 光の強さ(蛍光度)を測定します。テロメア長が長いほど蛍光度が高くなる関係にあることか ら、肺の構成細胞や病変部(AAH や肺腺癌)の細胞において蛍光度を測定することで、各細 胞のテロメア長を解析し、これらを比較検討します。 診断後に当院検査部に保存されている、手術時の組織標本を使用しますので、研究のた めの追加検査や、患者さんから新たに検体を採取することはありません。 本研究では、組織標本や診療情報等の個人情報は匿名化によって管理され、個人が特定 されることはありません。公的な発表に関しても、個人が決して特定されないように留意 いたします。 上記の期間に肺の手術を受けられた方で、ご自身の組織標本や診療情報を研究に使用し ないで欲しい、というご希望があれば、下記の連絡先までご連絡頂けますよう、よろしく お願い致します。 尚、研究への使用を拒否されましても、防衛医科大学校病院における診療には全く影響 はなく、いかなる意味においても不利益を被ることはございません。 連絡先:埼玉県所沢市並木 3-2 防衛医科大学校 臨床検査医学講座 TEL: 04-2995-1511 (内線 2275) 研究代表者 亀田 光二
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